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第 5 章 固定資産の減損の会計基準

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第 5 章 固定資産の減損の会計基準
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第
5章
固定資産の減損の会計基準
5.1 固定資産とは
固定資産とは、主として、企業が短期の売買を目的とするのではなく長期に渡って保
有している資産のことをいいます。固定資産は大きく分けると、企業の事業活動に属す
る事業目的の固定資産と、金融活動に属する投機目的の固定資産とに分けられます。
事業資産としての固定資産は、有形固定資産と無形固定資産の 2 つに分けて考えるこ
とができます。有形固定資産の具体例としては、建物、工場、機械、車両運搬具、備品、
土地などがあります。無形固定資産の具体例としては、特許権、商標権、のれんなどが
あります。それ以外の固定資産が、金融資産としての固定資産になります。これは、現
在の貸借対照表では「投資その他の資産」と呼ばれており、具体例として投資有価証券、
関係会社株式、長期貸付金などがあります。
5.2 損益計算書中心の場合の固定資産の処理方法
適正な利益計算を目的とする損益計算書中心の会計の下では、棚卸資産と同様に固定資
産も、取得するために要した支出のうち当期の費用とならなかった部分が、貸借対照表に
資産として計上されることになります。固定資産の会計処理における最大の課題は、今年
の費用がいくらであるかを費用配分の原則によって、毎年、定期的に把握していく点にあ
ります。棚卸資産と異なり、固定資産の場合には販売による引き渡しという資産の減少の
事実が目に見えないからです。そのため、決算時には、その固定資産の使用が見込まれる
期間である耐用年数を見積って、一年あたりの資産の減少を把握し、当期の費用を求めま
す。これが減価償却の会計処理です。耐用年数は経営者の判断に基づいて決まります。
5.3 貸借対照表中心の場合の固定資産の処理方法
減価償却の実施によって固定資産の貸借対照表上の金額を求める方法では、実際の資産
価値の急激な下落が起こった時に、貸借対照表と実態が乖離してうまく表現されない場面
が生じます。実態開示を目的とする会計の考え方からすると、値下がりして含み損を抱え
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た資産をそのまま掲載しておくのは不適切であると考えられます。そこで、貸借対照表に
realityを回復させる手法として登場したのが、減損(impairment)という会計処理です。
減損会計の目的は、固定資産の実態の開示にあります。減損処理は、2002年に金融庁企業
会計審議会が公表した「固定資産の減損に係る会計基準」によって規定されています。そ
こでは、減損とは「資産の収益性が低下し、投資額が回収される見込みが無くなった状態」
のことであるとされています。減損処理は、棚卸資産の低価法強制適用の考え方と同様に、
資産の帳簿価額を回収可能価額まで切り下げる会計処理となります。
5.4 回収可能価額と将来キャッシュ・フロー
回収可能価額とは、その資産から将来に回収することができる現金のことです。固定資
産に投資した金額が回収できない事態になった場合、経営者は、その投資を継続するか、
中止するかのどちらかを決定しなければなりません。その場面における合理的な行動は、
投資の継続から得られる収入の合計と、投資の中止から得られる収入の合計とを比較して、
より高い方を選ぶことです。したがって、回収可能価額には、次の2つの意味を持ちます。
1つ目は、その資産を処分したときに回収できる金額である「正味売却価額」という意味で
す。2つ目は、その資産を使用し続けたときに回収できる金額である「使用価値」という意
味です。これらのうちいずれか高い方の金額が回収可能価額となり、その固定資産の経済
的な実態としての「価値」を貸借対照表上で表す数値となります。
正味売却価額は、その固定資産の売却価格と処分費用が分かれば計算できます。しかし、
使用価値を計算するためには、将来の予測や見積りが必要となります。使用価値は、その
固定資産の使用によって得られる将来のキャッシュ・フロー(CF)の合計(割引現在価値
の合計)として求められます。したがって、計算式は、
使用価値 = 1年後のCF + 2年後のCF + ・・・ + n年後のCF
となります。n年後というのは、その固定資産の使用が計画される合理的な年数となりま
す。なお、将来の収入は不確実であるため、現在の収入に比べていくらか割り引いて評価
する必要があります。これを割引現在価値(現在価値、Present Value、PV)と呼びます。
使用価値は、将来の予測を不可避とする計算であるために、それを予測する経営者の主
観的な数値になる可能性があります。また、経済的な実態を貸借対照表に反映させるとい
っても、簿価を切り上げて評価益を計上する処理は行われません。評価益の計上が禁止さ
れているのは棚卸資産と同様に、事業資産が生み出す固有の価値の増加が、生産や販売と
いう過程を経るまで社会的に認められないと考えるからです。
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