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かけはし会報 Vol.27 2012年 春夏号
関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.27 (2012 年春夏号) Vol.27 関西帰国生親の会かけはし [email protected] 震災から1年経ち、日本は未だ大きな課題を抱えていますが、復興のため献身される方々の姿や、海外か Vol.26 関西帰国生親の会かけはし [email protected] らの励ましなどに心打たれます。一人ひとりの力、そしてつながる力に、今年も向き合いたく思います。 かけはしの活動の一つである教育相談において、海外赴任でお子さんを帯同することや、寮のある学校に お子さんを預けることについて質問をお受けすることがあります。今回の会報では、親子が離れて暮らす場 合の心がけをテーマといたしました。初の試みとして、イギリスの在外教育施設をヨーロッパ在住の会員達 が直接訪問し、学校および寮生活の様子を伺いました。大阪では、在外・帰国家庭の事情に詳しい先生を訪 ねました。そして先生方から、遠く離れた学校との関わり方、家族の絆について考える機会をいただきまし た。また、 「かけはしリポート」では、弊会発行の学校情報誌『帰国生への学校案内《関西》2012』に掲載い たしました在校生や保護者の方々を対象のアンケート調査の結果を基に、 「帰国枠受験への備えに関する」回 答を新たな角度から分析いたしました。学校選択や帰国準備の参考にしていただければと願います。 本年度も多彩な新会員を迎え、今号においても経験をご紹介できますことを嬉しく思います。会報や学校 案内の発行、教育セミナーやレッツトークの開催、海外の最新情報の提供など、会員一同、今後とも力を合 わせて取り組んでまいります。皆さまのご支援に感謝申し上げます。 関西帰国生親の会かけはし代表 青木 真子 目 次 * ご挨拶 * 特集 関西帰国生親の会かけはし代表 青木 真子 1 校長 棟近 稔 2 教育相談員 山岡 莊平 5 それぞれの家族の海外赴任のあり方 「保護者と離れて学ぶ生徒たちと共に」 「家族が離れて暮らすときの心得」 立教英国学院 海外子女教育振興財団 * かけはしリポート (第 5 回) 「帰国枠受験のために準備したこと」 8 * 異文化でドッキリ! <おけいこ編> * 海外の学校を紹介します * 補習授業校の運営委員を経験して * 「関西帰国生親の会かけはし」と他の団体とのつながり 14 * 会員のつぶやき・レッツトーク 2012 in Kobe 実施報告・編集後記 15 11 「フレンチポリネシア・タヒチでの学校生活」 かけはし会員 * 『帰国生への学校案内《関西》2013』 のお知らせ 赤井 那帆 12 上田 牧絵 13 16 かけはし賛助会員のみなさん (敬称略) 1 関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.27 (2012 年春夏号) 「保護者と離れて学ぶ生徒たちと共に」 立教英国学院 校長 棟近 稔 先生 立教英国学院は、イギリスにて 1972 年に設立された私立在外教育 施設です。小学校から立教で過ごされ 50 年、立教大学を卒業後すぐ に渡英し、立教英国学院に赴任されて 35 年という、生粋の立教人で ある棟近稔校長先生にお話をお伺いしてきました。 ― 在外教育施設である立教英国学院の特徴についてご説明ください。 ◆ 朝 7 時の起床から就寝まで、生徒、教員も一日三食をほぼ共に過ごし、大きな一つの家族として生活し ています。学校の敷地内に寮があり、生徒全員が寮生でそれぞれが助け合って暮らしています。「先輩、 後輩分け隔てなくみんな仲がいい」というのが一番の特徴です。 ― 在籍する生徒たちのご両親はどのような国にお住まいでしょうか。 ◆ 一番多いのがイギリスで 31 名、次がフランスで 10 名、ドイツが 5 名、それからスイスやオランダ、遠 いところではロシアや中国、チェコ、南米の方もいらっしゃいます。本校は基本的には保護者が海外在 住の生徒を優先していますが、昨年から定員に余裕のある時には、保護者が日本在住の生徒の受け入れ も始めましたので、現在は日本から直接来られる方も全体の 3 分の 1 いらっしゃいます。 ― 何年生の生徒が在籍していますか。 ◆ 小学校 6 年生から高校 3 年生までが在籍しています。低学年は少ないですが、日本人学校等の中学校を 卒業後に、高校へ入学してくる生徒がいます。また、高校 2 年生を過ぎると日本で受入先を探すのが困 難になることから、保護者が帰国になっても子どもだけこちらへ入れて帰国するという家庭も増えます。 そのため、高校生は各学年 30 名くらいの数になっています。 ― 「海外で日本の教育をする」ということの難しさはどのようなことでしょうか? ◆ 今はインターネットで簡単に情報を入手できる時代ですから、以前に比べると困ることは少なくなりま した。むしろ海外にいると「変な雑音を入れずにきちんとした教育ができる」というよい面があります。 日本にいるといろんな情報が氾濫していて本質を見失うこともあるのではないかと思いますが、海外に いる子ども達は、素直でひねくれたところがないですね。例えば子ども達に「日本の子ども達はもっと 勉強しているぞ」と言うと一生懸命勉強したりして純粋に勉強に向き合うことができていると思います。 ― 寮生活はどのように行われているのでしょうか。 ◆ 非常に規則正しい毎日で、7 時起床を必ず守るようにしています。それを守ることで、夜きちんと寝るよ うになるのです。就寝時間は学年によって違いますが、高校 3 年生でも 12 時には寝かせるようにしてい ます。かつて高 3 で就寝を夜中の1時にしてみたことがあるのですが、そうすると昼間持たないんです ね。授業中に寝てしまったり、夕方寮に戻って完全に熟睡してしまったりする子が出てきて、その上今 度は夜に目が冴えてしまい逆に夜 2 時 3 時まで起きるようになって授業に身が入らない、というような 経験がありました。今は 12 時には絶対に寝て朝 7 時には起きることを徹底して、1 日の生活リズムを作 っています。放課後はクラブ活動や楽器の練習等をして過ごし、夕食後は自習時間になっています。上 級生になると、イギリスのサイエンスの授業やイギリス人による英会話の授業などが増えるので、夜に 2 関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.27 (2012 年春夏号) も授業が行われます。土曜日も午前中は授業があり、日曜日の午前中は全校清掃をしています。 ― 先生方も寮で生徒と一緒に生活されているのでしょうか。 ◆ 独身の教員は構内に居住していて、家族のいる教員は近くの村に家を借りて住んでいます。日直の教員 は朝7時前に学校に来て、夜は早く帰る教員でも 10 時までは残っていますし、上級生の担任は夜 12 時 まで残って生徒の自習のアドバイスをしています。私も朝7時に外に立って、起きてきた子たちに「おは よう」と声をかけ、食事も三食一緒にして、夜も 11 時就寝の子までは、みるようにしています。そして 子どもたちが寮に帰るときに、外に立って「おやすみ」、と言ってから家に帰っています。 夜は教員が交替で寮に泊まっています。当直は決まった人に任せきりにするのではなくて教員全員が順番 に寮の面倒もみることで、生徒一人ひとりの生活の様子を全員で把握していくようにしています。 ― 親と離れて暮らす子ども達の心的ケア、特に低学年の子どもについてはどのようにされていますか。 ◆ 一番気を付けているのは「子どもを教員がよく観察する」ということです。教員は食事も子ども達と一 緒に摂るのですが、そこでいろいろなことがわかるんですね。子どもに変わった様子が見られたらすぐ に声をかけたり、担任に報告して担任から聞いてもらったりしています。また上級生が下級生の面倒を よくみてくれます。「身近なところに信頼できる人がいる」ということが大切だと思います。低学年の担 任は生徒に密着していて、生徒が寝るまでずっとそばにいるので、 「低学年だと寝るまで気が抜けない」 、 というところもありますけれどね。 ― 学校から保護者への連絡、子どもから保護者への連絡はどのようにされているのでしょうか。 ◆ 学校から保護者への連絡は電話もありますが、今はほとんどがメールです。また学校のホームページを 頻繁に、多い時には 1 日に 2 度更新していて、学校の様子を詳しくお伝えするようにしています。保護 者の方もホームページの更新を楽しみにしていらっしゃるようです。 また保護者が学校に文化祭やその他の学校行事で来られた時や、出張などでこちらに来られた時にはいつ でも担任と面談の機会が持てます。高校 3 年生にもなると、わざわざ日本から面談のために来られる 保護者の方もいらっしゃいます。子ども達はいつでも自由時間にパソコンが使えるので、特に女の子は頻 繁に両親とメールのやり取りをしているようです。 ― 保護者の方が、子どもの寮生活に関して、一番心配されるのはどのようなことでしょうか。またその対 処としてご説明されるのはどのようなことでしょうか。 ◆ 一番ご心配されることは健康面ですね。例えば昨年新型インフルエンザが流行った時にはずいぶん問い 合わせがありましたが、幸いにも校内での感染はありませんでした。学校には日本で看護師をしていた 日本人の養護教諭がいますし、イギリス人の元看護師さんにも来てもらっています。そして近所のドク ターに校医をお願いしていて、何かあればすぐに病院に連れていく体制を取っています。保護者の方に は「健康面のフォローはこのように整っているのでご心配ないですよ」ときちんと説明をさせてもらって います。高校 3 年生になるとやはり進学についての相談が多くなってきますが、進学については「まず は生徒が親と話さないといけないよ」ということで、親と子が頻繁にメールや電話でやりとりをして、 先にじっくり親と話をさせるようにしています。 ― 保護者の方たちは「イギリスにある学校に行かせる」ことでどのようなことを期待されていますか。 ◆ やはり「英語力と国際感覚を身につける」ということですね。そのためには「イギリス人との交流を図 る」ことを心がけています。今年は現地の学校から7人が交換留学生としてやって来て、1週間寮に泊 まりました。また、英会話の授業では、中学校 1 年生のまだ英語を習いたての子どもたちを近くの町に 連れて行って、質問だけを教えて何人にインタビューできるか、ということを体験させました。この辺 はイギリスの中でも非常に豊かな地帯で治安もいいですし、住んでいる方たちも裕福な方が多いので、 3 関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.27 (2012 年春夏号) 生活にゆとりがあります。そういう方たちなので、余裕を持ってやさしく接してくれますね。 ― 学校生活・寮生活を含めて、長時間を生徒たちと共有する中で先生方が心がけていられることはどのよ うなことでしょうか。 ◆ とにかく「常に子どもと接する」ことが大切だと思います。生徒は、時には寂しい思いをしていること もあるかと思います。ですから「常に見守っているよ」という安心感を持たせることが大事ですね。長時 間子ども達と過ごしていると教員の拘束時間が長くなって大変なのですが、それだけやりがいがあるの で、教員はみんな一生懸命やっています。信頼関係ができてくると思いがけない相談を受けたりします。 そうなると教員としてもうれしいところですね。 ― 離れて生活している保護者にお願いしたいこと、また子どもに対してフォローしてほしいことはなんで しょうか。 ◆ まずは「保護者と担任との信頼関係を築く」ことですね。全幅の信頼をもってお任せいただきたいという ことです。あとは、お子さんがご家庭に戻ったときのフォローですね。例えば日本語が苦手だったり漢 字が書けなかったりする子どもに学校で毎日漢字を練習させていても、夏休みに親元に帰るとすっかり 忘れてしまう、ということがあります。そういう点はご家庭でも声をかけて継続して勉強させていただ きたいと思います。また生徒は普段親と離れているので、「甘えたい」という気持ちがあると思います。 ですから休みで親元に帰ったときにはしっかりと甘えさせてやって欲しいですね。 ― では最後に国をまたいで家族がやむを得ず離れて暮らしている方々にアドバイスをお願いいたします。 ◆ 父の日や母の日にメールを出したり、電話をしたり、ということを大勢の子ども達がやっていますが、 機会あるごとにお互いに連絡を取り合うことがなにより重要ではないかと思います。連絡があると、 「自 分のことを気にかけてくれているんだな」ということが伝わります。とにかく頻繁に連絡を取る。そし て休みに自宅に帰った時には家族そろっておいしいものでも食べに行く、等の機会を作って、たまに会 った時の楽しい時間をイベント化してしまうといいのではないかと思います。これまで、 「離れているこ とで逆に家族のきずなが強まる」という例もたくさん見てきましたから。 インタビューを終えて 自然に囲まれた広大な敷地の中にある整った施設、そして歴史を感じさせる寮に度肝を抜かされました。 生き生きとした生徒たちの表情を目にして、「ここでの生活は生徒たちにとって生涯忘れえぬものになるの だろうな」と思いました。優しく生徒たちを包み込むような、柔らかな口調の棟近校長先生に皆さんがよせ る信頼は厚いことでしょう。これからも生徒たちの親となり子どもたちを支えてあげてください。 英国立教学院 かけはしより ロンドンの南、 車で 1 時間 30 分程度のところに学校はあります。 四季折々 の花の咲き乱れる丘や草原をもつこの学校は、今年で創立 40 年となり、ロ ンドン日本人学校より古いそうです。土曜日にお伺いしたので、大きな食 堂で生徒・教員が揃ってのランチに参加させてもらいました。取り分けら れた料理をみんなで回し、祈りを捧げてからいただきました。同じテーブ ルに座った生徒さん何人かとお話をさせていただきましたが、とっても明 るく楽しげに学校生活、寮生活、買い物などについて話してくれました。 卒業生の登山家の野口健さんは、悩んだときに母校を訪ねて、心を落ち着 けたこともあったそうです。卒業生にとって、この学校での日々は「心のふ るさと」なのでしょう。(写真は女子寮と寮のラウンジです) 4 関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.27 (2012 年春夏号) 「家族が離れて暮らすときの心得」 海外子女教育振興財団 関西分室 教育相談員 山岡 莊平 先生 山岡先生は民間企業に 1 年間勤務の後、教職に就かれました。リマ日本 人学校、バハレーン日本人学校に赴任され、イスラマバード日本人学校で は校長として学校経営に携われました。帰国後は奈良市内の小学校で校長 職を歴任され、現在は財団で教育相談員としてご活躍中です。 ― 相談員になられてから一番ご苦労されていることは何でしょうか? ◆ 校長のときは教育論や学校経営のようなビジョンを話すことが多かったのですが、教育相談は 1 対 1 で す。お子さんやご家族の話をきかせてもらって「私の話は参考としてくださいね。」とお伝えするのです が、自分の一言で揺れていた気持ちに区切りをつけて方向を決められたなと感じることがよくあります。 この子の人生、歩む道を変えてしまったのではないかと責任の重さを感じます。いい加減なことを言っ ているつもりはありませんが、後でずっしりとくるものがあります。 ― 最近特に増えてきた相談内容はどんなことでしょうか? ◆ 小さいお子さんの幼稚園についての相談が多くなっていると思います。駐在員の若年化が反映されてい るのではないでしょうか。「小さい時ほど吸収力があるので英語を覚えさせたいと考えています。」とお っしゃるお母さんが多いです。折角の機会ですからそう考えるのは当然のことだと思うのですが、母語 である日本語への意識が薄いように感じます。生活環境が大きく異なる海外生活のスタートは大人が思 っている以上に、幼児の心と体は大きく動揺していると思います。そのため現地の水や空気に慣れるま で、しばらくお母さんと一緒に過ごし、温かく包み込んで安心感を持たせてあげてほしいと思います。 ゆっくりと情報を集め、実際に見学して、子どもが楽しそう、と思ったところに決めても遅すぎること はありません。 特別支援教育1についての相談も増えています。以前は国内でも特別支援学級への入級には抵抗を感じら れる場合がありました。ましてや海外へ帯同するとの発想は少なかったと思います。今は教育現場では 「障害も一つの個性としてみていきましょう」という考え方が定着しつつあります。支援が必要な子ども が海外でも胸を張って生活してほしいし、それが当然の姿だと皆が思えるようになってきているのだと 思います。 ― 家族が日本と海外で離れて暮らすケースとしてどんな事例がありますか? ◆ お子さんの年齢によることが多いです。せっかく中高一貫教育学校へ入学したばかりなのに海外赴任が 決まった。帯同はしたが受験準備を優先して早期帰国する。お父さんの駐在期間が予想以上に長くなっ てしまった。母親が行きたくない。子どもが行きたくない。等のケースがあります。 ― 子どもが中学生や高校生ともなると、赴任先に連れて行くべきか悩むケースがあると思いますが、その ような場合どのようなアドバイスをされるのでしょうか? ◆ 「中 3 ないし高1以降の帯同は基本的に難しいですね。 」と伝えています。日本語でも難しい勉強を全て 英語で学ばなければならないとなったらこれは大変なことです。でも、「よいチャンスだから挑戦した 注:1 障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的 ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うもの(文 部科学省 HP より) 5 関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.27 (2012 年春夏号) い。」と子どもさんが前向きな姿勢の場合は大いにその気持ちを大事にしてあげてほしいと思います。で も、やる気だけでは結果に結びつかないこともありますから、親として、挫折してしまった場合の対応 を考えておく必要があります。例えば現在通学している学校へ「短期間で帰国することになった時に、 編入学をさせてくれませんか?」と事前に学校へお願いしてみることです。或いは、先ず留学制度など を使って海外生活をスタートすることなどが考えられます。その事をお子さんに伝えるかどうかは、お 子さんの性格等を考えて親御さんに判断してもらうしかありません。全てに前向きで、やる気がある子 だったら、大学受験に繋がる高校卒業の資格は通信教育などで取得することもできます。高等学校卒業 程度認定試験受験も可能です。とは言え、海外に行けばなんとかなるという安易な考えは、高校生の段 階では絶対通用しないと思います。 ― 子どものみを海外の寮のある学校などに入れて保護者が帰国する場合、子どもへのフォローとしてどの ようなことに気をつけたらよいのでしょうか? ◆ 「家族は一緒に生活するのが一番望ましい」というのが基本だと思います。でも条件が合わないときもあ ります。その時は寮に一人だけ残ることの意義をご家族でしっかり話し合って、本人がなぜ、何のため に一人で残るのか、親としては、なぜ残すのかをそれぞれがお互いに充分に理解し納得した上で結論を 出すことが最も大切だと思います。 ― 寮生活を選択する保護者、お子さんへのアドバイスは何かありますか? ◆ ありきたりですが、寮に入れたら一年間お任せではなく、寮や学校と親御さんがきちんと連絡できる体 制をとること、「何かあれば直ぐに連絡してほしい」ということを学校に伝え、親の方からも連絡を取る ことを実践されることです。子どもを日本の寮に入れて保護者は海外駐在というケースで、学年が終わ るころに学校から「お子さんは進級できません。 」と突然連絡があって、急きょ帰国して学校へ駆けつけ たという例もあります。子どもが国内でも海外でも連絡がきっちりとれる学校を選ばなくてはなりませ ん。 ― 海外でなかなか子どもがなじまない場合、母親と子どもが帰国し父親が単身赴任する形に切り替えた方 がよいのでしょうか? ◆ 単純に結論を出せることではありませんね。その様になった要因はどこにあったのでしょうか。帯同す ることに家族が納得できていたのでしょうか。いやいや出国して馴染もうとしていないのか、意気揚々 と行ったのに馴染めないのか、それだけでも対応が違ってきます。もっと他に要因があるかもわかりま せん。先ずはよく話して子どもの現状を理解することが大事です。楽しく過ごせない原因が思いのほか 複雑であったら、帰国してお母さん一人で対応できますか。その場合は少し無理をしてでも現地でお父 さんも一緒に解決していったほうがいいかもしれません。その国での生活に馴染むには、まずこの国が 好きだと思えることです。子どもが、「来てよかったなあ。」と思うようになるのには、お母さんの姿勢 が大きく影響を与えます。お母さんの一言で子どもが変わります。ある出来事に対しても「この国では こうするのね。」と「日本だったらこんなことしないね、この国あかんな。」と言うのでは、子どもにと って現地のイメージが大きく違ってきます。 ― 子どもの帰国時期に関する相談に、どのようにアドバイスされますか? ◆ ご家庭の教育方針が最も重要ですが、制度面から「高 3 と中 3 の帰国の場合は特に注意してほしい」と伝 えています。高 3 での編入学を受け入れる学校はほとんどありません。高 2 の段階で編入試験を受けて 準備しておかなくてはなりません。現地校やインター校の G12(日本での高 3 に該当し、卒業は 6 月)の 4 月や 5 月に帰国すると卒業できませんので大学受験の資格が取得できなくなります。中 3 での帰国編入 学も課題は大きいです。義務教育年齢ですから公立校への編入学は可能ですが、帰国時期によっては高 6 関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.27 (2012 年春夏号) 校入試に支障が生じます。もし高 3 や中 3 の後半に帰国が決まるようでしたら、そうならない方法を検 討しなければいけません。会社の人事の方にその事情を伝えて協力を依頼することも一案です。これか らも機会あるたびに人事の方には、制度上の現状を話し、子どもの将来を左右する大きな問題であるこ とをお伝えしたいと思っています。 ― 受験時期にあわせた母子での帰国も多いようですが、家族が離れた場合の子どもへの心的ケアについて 母親が気をつけなくてはいけないことは何でしょうか? ◆ 当然のことですが、受験間際の心身の健康管理が大切です。帰国後日本の中学校に編入学して高校受験 をする場合には、学校の雰囲気に慣れるためにかなりのエネルギーを要するはずです。帰国後塾に通っ て受験に備えるという考えの方もいます。どちらの場合も、帰国生だから自分はみんなより遅れている のではないかという不安を感じさせないことが大事です。いろいろな経験をしている帰国生として自信 を持たせてあげてください。とまどって、精神的にあせりを感じて負担にならないようにお子さんの様 子をみてあげてください。帰国生をよく知っている学校や塾などに相談して通うのがよいのではないか と思います。 ― 上の子の受験にあわせて帰国する場合、兄弟への対応として親が気遣うべきことはありますか? ◆ 海外生活をしていると家族の絆は強くなっていると思います。「今はお兄ちゃんの受験が大事だからこれ を中心に考えよう、応援しよう」という雰囲気づくりでいいと思います。構えすぎると受験生に必要以上 のプレッシャーがかかってしまいます。下の子が犠牲になっていると思わせるのもよくありません。下 の子にも、自分が同じ立場になった時にはそうしてもらえると感じる雰囲気を普段から作っておくこと が大事です。 ― 特別支援の必要があるお子さんのご家庭で離れて暮らす事例はありますか?あるとすれば、そのような ケースへのアドバイスはありますか? ◆ 離れて暮らす事はあまり勧められませんが、受け入れ態勢ができていない場合は帯同しない選択を勧め ることもあります。アメリカの現地校等では日本以上に制度が整っているようですが、全面的にお勧め しますとは言い切れません。ハンディの種別にもよりますが、いくら制度がよくても言語は英語です。 将来帰国したときに言葉の問題が出てこないかと気になります。また、日本人学校での特別支援学級設 置の実態は国内と同じではありません。「申し訳ありませんが受け入れできません。」と断られることも あります。現時点では制度的にやむを得ないことなのです。海外へ行ってから通学できる学校が決まら なかったら親子共々大変な状況になってしまいます。事前に学校とよく連絡を取って状況をきちんと確 認されることをお勧めします。 ― 最後に、これから海外へ行かれる方や海外で暮らしている方へメッセージをお願いします。 ◆ 海外赴任でも基本的には家族で動かれるのが望ましいと思っています。マイナスに感じる部分があるか もしれませんが、お子さんの一生から見ればきっとプラスになると思います。まず、家族の絆が強くな ります。それから、親の生き方を子どもに伝えるいい機会となります。現地のことを好きになって、住 まわせてもらっているという感謝の気持ちを持ってほしいです。そして、そこでしかできないことをひ とつでも多く挑戦してほしいと思っています。 インタビューを終えて 相談員になられてからの 4 年の間に相談内容が多方面に広がってきたようです。ご自身の海外での子 育て経験も活かしながら対応なさる先生の誠実なお人柄を強く感じました。夏休みと並んで相談が最も 多い年度末の多忙な時期にインタビューをお受けくださりありがとうございました。 7 関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.27 (2012 年春夏号) かけはしリポート (第5回) 「帰国枠受験のために準備したこと」 ・はじめに 「関西帰国生親の会かけはし」では、会員が実際に学校訪問をして、取材・編集を行う『帰国生への学校案 内《関西》 』という関西限定の学校情報誌を、毎年発行いたしております。本誌には、学校情報のみでなく、 学校が求める帰国生像や先生からの受験生へのメッセージなども掲載されております。さらに取材校のご協 力を得まして、それぞれの学校の新入学・編入の生徒とその保護者の方々に自由記述のアンケート調査も行 っております。在校生および保護者の方の声を本誌に反映することで、より読者の方々によりリアルな学校 の様子を感じてもらうことを目的としております。今回のリポートは、 『帰国生への学校案内《関西》2012』 に掲載されている、在校生および保護者アンケートの結果のうち、「帰国枠受験のために準備したこと」とい う項目に注目し、数値としてまとめてみました。本誌作成に関する多くの方のご協力に感謝しつつ、この結 果が帰国枠受験をされるみなさんのお役にたてれば幸いと考えております。 ・アンケート調査について ① 目的: 「帰国枠受験のために準備したこと」についての調査 ② 実施期間:『帰国生への学校案内《関西》2012』の取材作成期間(2011 年 5 月~8 月) ③ 対象:本誌取材校のうち、アンケート回答のあった、中学生・高校生 120 名、保護者 141 名 ④ 質問内容:「帰国枠受験のために準備したこと」(自由記述) ・結果 帰国枠受験のために準備したこと 帰国生および保護者の回答内容は、自由記述であるために、「受験の準備のためにしたこと」と「実際にやっ た学習内容」の 2 つに分かれていました。内容を分類して、帰国生、保護者と 2 つずつのグラフを作成しまし た。 (図 1~図 4) 帰国生が受験のために行ったこと 日本人学校の 補習 1% 日本語補習校 3% 学校見学 4% 保持教室 1% 特になし 8% 塾 42% 通信教育 8% 家庭教師 8% 英検・TOEFL 自宅学習 10% 15% 図1 図 1 は帰国生が受験のために行ったことの内容詳細です。アンケート結果には、同じ答えをまとめて「複数 回答あり」というものもありましたが、実数がわからないために、1つとして数えてあります。回答数は 74 でした。「塾に通った」というのが一番多く、中には、「現地でも日本の塾に通った」というものもありました。 「自宅学習」の中には親に指導してもらったという回答もありました。「一時帰国のときに学校見学に行った」 8 関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.27 (2012 年春夏号) という生徒も何人かいました。 受験のために学習した内容(帰国生回答) 17 14 11 8 8 5 小 論 ・ 作 文 ・ 英 作 文 過 去 問 ・ 問 題 集 面 接 練 習 算 数 ・ 数 学 国 語 ・ 漢 用字 句・ 古 文 ・ 慣 英 語 ・ 英 文 法 5 受 験 科 目 の 勉 強 3 3 新 聞 日 本 語 5 1 読 書 そ の 他 図2 図 2 は帰国生が受験のために行った学習内容です。項目グラフの上の数字は回答数です。回答数は 80 でし た。帰国生入試でよく行われる、小論文(日本語・英語)対策や面接練習を行う人が多いです。その他では「自 分の海外生活についてまとめた」「新聞やテレビで日本のことについて勉強した」などがありました。 保護者が受験のために行ったこと 英会話教室・ 保持教室 4% 日本語補習校 2% その他 5% 特になし 5% 情報収集 4% 塾 37% 家庭学習 5% 学校見学・調 査 5% 願書・書類整 備 6% 家庭教師 英検・TOEIC・ 10% TOEFL 10% 通信教育 7% 図3 図 3 の「保護者が受験のために行ったこと」の結果では、子どもを「塾に行かせた」「家庭教師にみてもらっ た」という回答が上位にきていますが、「願書・書類整備」、「学校見学・調査」、「情報収集」といった保護者独 自の回答も複数みられました。回答数は 102 でした。「その他」では、「受験のために、早めに母子で帰国した」 「先輩の話を聞いた」といった具体的な行動から「子どもを信じた」「見守った」といった心情的な回答もみられ ました。 図 4 は保護者回答の「受験のために学習させた内容」です。同一親子へのアンケートですので、学習内容は 帰国生の回答とほぼ同じとなっています。「その他」には「国際理解力を高めさせる努力をした」「受験資格がい ただけるように努力した」などといったものもありました。回答数は 73 でした。 9 関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.27 (2012 年春夏号) 受験のために学習させた内容(保護者回答) 21 9 小 論 ・ 作 文 ・ 英 作 文 過 去 問 ・ 問 題 集 8 面 接 練 習 7 国 語 ・ 漢 字 9 5 算 数 ・ 数 学 4 3 3 2 2 英 語 の 本 の 読 書 英 語 受 験 科 目 の 勉 強 基 礎 学 力 を U P 新 聞 そ の 他 図4 ・考察とまとめ アンケートの結果から、帰国生本人のすべきこと、保護者として子どものためにすべきことと役割分担が はっきりみられました。保護者の方々は、自分が子どものためにできることは何であるかと考え、行動され ています。「自宅学習」や「面接練習」には、「親に教えてもらった」、「親と練習した」という回答が複数みられ たことも特徴的です。まさに親子で一丸となり、受験に立ち向かっている姿が目に浮かびます。 入試・編入試験の科目は学校によって様々です。それぞれの学校の受験対策には、皆さんかなりの時間を 費やしているようです。塾に通う、家庭教師にみてもらう、通信添削講座を受ける、問題集や過去問をこな す、小論文・面接の練習をするといったことで自信を深め、英検・TOEIC・TOEFL に果敢に挑戦することで英 語力をさらに磨いています。「特になし」という回答をした生徒も、どこかで努力はしていたことでしょう。 アンケート調査は、合格した親子の成功談ばかりですが、受験ですのですべてがうまくいくとは限りませ ん。かけはしの会員の多くから、「現地で自分の子どもの学力レベルが、実際どの程度なのかよくわからなか ったことが問題だった。」と聞きます。「数年前のイメージから合格できるだろうと思っていた学校が、帰国 後に自分の子どもの学力レベルでは届かないことがわかりショックを受けた。」「受験の情報が錯綜して、混 乱した。」「周りの子と同じ塾に通わせ、同じ問題集をやらせて安心していたが、実は自分の子どもには、そ の方法は合っていなかった。」など苦労をした例も様々です。対策として考えられるのは、現地や一時帰国時 での模擬試験の受験、目指す学校の最新の情報収集や学習方法の確認と再検討などでしょうか。受験に勝ち 抜くためには、もちろん基礎学力、英語力、作文力などが必要ですが、せっかく「海外で学ぶ」という得難い 体験をしているのですから、現地の生活をいかに充実させるかということも重要なことではないでしょうか。 志望理由書や面接において、「海外生活においてどんな活躍をしたか」と聞かれる場合もあります。 インターネットなどの情報網の活用は当然のことですが、海外で生活されている方にとって、最新の受験 情報を満足な形で手にいれることは容易ではありません。日本人学校や補習授業校、現地における日本の塾 などで相談ができる方でも、不安になると思います。ましてや、そのような環境におられない方はなおさら でしょう。日本にいても、我が子の受験に対しては、だれでも祈るような気持ちになります。できれば一時 帰国のときに学校訪問をする、または現地からでも電話やメールで学校に直接相談をして、正確な情報を手 にいれるといったことをお勧めいたします。また、私ども「関西帰国生親の会かけはし」は、毎年の学校情報 誌の発行や無料の教育相談などを通して、全世界に関西の教育情報を発信しております。どうぞご活用くだ さい。今回のリポートの最後は「かけはし」の宣伝となってしまいました。 10 関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.27 (2012 年春夏号) 異文化でドッキリ! <おけいこ編> 驚きの異文化でドッキリ!!今回は各国での習いごとに関する話です。 同じアパートの敷地内にロシア出身のピアニスト 中国駐在中、たくさんの習い事に の先生がいると聞いて、素晴らしい!と思い飛びつき チャレンジ。太極拳、習字、中国茶、 ました。が、当時小学 2 年と年中だった息子達。渡米 中国楽器の二胡と楊琴・・・でも家 直後だったこともありロシアなまりの英語が聞き取 族に喜ばれたのは足ツボのマッサー れず・・・さらにあまりに本格的なロシア式の暗い厳 ジ。知識と実践を習得し、 「痛い!」 しい教え方にレッスン中に居眠り! と言うとどこが悪いかわかるので せっかく日本 から持ち込んだ電子ピアノは無駄に終わりました。 「お母さんスゴイ!」と尊敬の眼差 (アメリカ) しの子どもたち。帰国後も「足裏や って」とせがまれ、反抗期なんてど 娘は幼稚園からずっと器械体操をやっていました。 こ吹く風、モテモテの母です。 「お母 試合会場ですらっと手足の長いかわいい子たちが立 さんの習い事で一番良かった」って、 ち並ぶ光景は、さすが、ヨーロッパ。その中にいつも ウン?利用されているだけ?私もや 出っ尻、寸胴、足の短い女の子が一人。試合でがんば って欲しい〜。 (中国) ってもどうしても点数が伸びなかった理由がわかり ました。娘は並んでるだけで減点されてたのね。 息子が地元のスイムチームに所属。こ れはいわゆる日本の選手コース。チーム かわいそうに・・・(ベルギー) の選抜メンバーは決まっているのに、毎 ベ ト ナ ム で 娘 が 習 っ て いた の は 「 ボ ビ ナ ム 」 年なぜか更新があった。それも朝から先 (「武・ヴェトナム」が縮まった?) 。 「運動のため」 着順受付ということで、親が徹夜で並 くらいの軽い気持ちで始めさせてから、上手な人 ぶ。といってもプールサイドにピザやら 達の演武を観に行ってびっくり。2 列にずらっと並 ドーナツやらビールを持ち込んで、前の んだ片方の列の人達がもう一方の列の人の顔に向 日の夕方から歌って踊るのドンチャン かって次々に飛び蹴り・・・と思ったらその足が 騒ぎ。コーチも参加で盛り上がる! 相手の首を挟んで倒す! かなり実戦的な格闘派 婦で参加もめずらしくない。一晩中騒い 武道。どうしよう・・・と思いましたが、小 1 だ で、挙げ句の果てにはデッキチェアで朝 った娘は先生たちに面白がられてかわいがられ、 までみんなで熟睡。(夏だから OK!) くちゃくちゃに遊ばれているうちに帰国となりま ちょっとでも参加が遅れると「早くこ した。でも娘はけっこう気に入っていたらしく、 い」とじゃんじゃん電話がかかってくる 帰国後ボビナム教室をみつけることができなくて 始末。なぜに自動更新でないのか疑問に も他の武道を習うことを潔しとせず、胴着だけを 思いつつ、一年に一度はプールサイドで 大事な思い出としてとっています。 (ベトナム) 野宿をしてしまった。(アメリカ) 11 夫 関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.27 (2012 年春夏号) 海外の学校を紹介します フレンチポリネシア・タヒチでの学校生活 赤井 那帆 私は 2 才から 11 才までの約 10 年間フレンチポリネシアのタヒチに住んでいました。そのため、幼稚園、 小学校、中学校 1 年生まで現地の学校に通っていました。 タヒチの朝は早く、お店などは 5 時ぐらいから開店し、島の人たちは朝食などを買ったりしています。 どの学校も 7 時 15 分から始まります。町の中心地にあるので、毎朝の通勤通学の渋滞にあってしまい、車 での登下校はとても大変でした。 私が通っていたラムネ中高等学校は、主にフランス人やポリネシア人、中国人、アメリカ人などいろい ろな国の人たちが集まっていました。日本人は私一人だったので、ちょっとさみしかったです。生徒は約 2000 人もいるとても大きな学校でした。授業はフランス語で行います。日本の学校と違う所は、英語の授 業が毎日あり、体育の授業は水泳が中心なことです。だから、泳げない子はいません。また、学校行事の 中で一番大きなイベントで学年合同マラソン大会がありました。このマラソンは学年ごとに走る距離は違 いますが、35 度という気温の中で走ることはとても辛いものでした。 昼食は、半数の人が給食で、もう半数の人は持参のお弁当や校内にある売店で昼食を買って食べたりし ています。売店には、フランスパンを使ったサンドイッチ やマグロのお刺身(タヒチのオリジナルソース付き)やポ ワッソンクリュ(生魚と野菜をココナッツジュースのソー スであえたタヒチの伝統的な料理)や、タヒチ産の新鮮な マンゴーや、パイナップルなどのフルーツを使ったフレッ シュジュースもあります。中でも一番人気があるお刺身は すぐに売り切れてしまいます。 放課後は部活動がないため、みんな習い事をしていまし た。タヒチアンダンスや楽器、柔道や合気道、水泳などの 習い事がありました。私はクラッシックバレエを 6 年間やっていました。フランス本国から来た先生たち が多く、とても熱心に教えてくれました。年に一度の発表会はとても華やかなので、私はいつも楽しみに していました。日本をテーマにした年もあり、日本の文化について先生方や友達だけでなく、観客の人た ちもとても日本に興味を持ってくれたことがとても嬉しかったです。 日本とタヒチの距離は約 8500 キロメートルと、とても離れていますが、実はタヒチの特産品の黒真珠が 日本人の技術指導をもとに発展したことや、タヒチの食文化で「刺身」や「寿司」などの言葉がそのままタヒ チで使われていること、柔道や合気道が盛んな様子を見ることで、遠く離れた島にこれほど多くの日本の 文化が伝わっていた事に驚き、日本人として誇らしく思いました。 これからは、タヒチでも経験したことを生かしながら、日本の文化の良さをもっと勉強していきたいです。 12 関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.27 (2012 年春夏号) 補習授業校の運営委員を経験して かけはし会員 上田 牧絵 デトロイト補習授業校は、1973 年に当地在住の日本人駐在員の方々が集まり、子どもたちのために自主的 に創立されました。現在は、非営利団体である「デトロイトりんご会」 が設置する私立の学校となっています。 毎週土曜日年間 42 日の授業日は、小学校 3 年生までは国語・算数、 4 年生からは社会が加わり、中学生からは理科も学習します。高校生は、 これまでの 4 教科に加え英語など選択科目を履修することができます。 授業のほかに、運動会や音楽会、現地校の先生方を招待してのオープン ハウスなども行われます。 私が父母会の役員として運営委員をした当時は、生徒数約 1000 名、51 学級もあるマンモス校でした。主 に土曜日の授業をされる先生方以外に、平日フルタイムで事務をされるのは、現地で採用された 7 名の方と 日本から派遣された校長先生と教頭先生 2 名。これだけの人数でこのマンモス校の運営はできません。経営 にあたる理事会・運営にあたる運営委員会・学校の様々な活動の支援をする父母会などボランティアが縁の 下の力持ちとして支えています。父母会は補習校に在校生を持つ保護者で構成されていますが、運営委員会 にはりんご会法人会員から選任された主にお父さんたち、父母会から母親役員 2 名、学校からは校長先生と 事務長、総勢 21 名の委員が所属しています。 委員会は平日の午前中と土曜日の補習校授業時間内の月 2 回行われ、予定の 2 時間を超えることもしばし ば、熱い議論で盛り上がることもありました。この委員会で決定したことが理事会の承認を得て運営されま す。運営するための予算作成および執行、教職員の採用、教室や備品の確保等、校内で発生した諸問題の対 処にあたるなど、広範囲にわたり担当します。この委員会以外に、各担当のワーキンググループの会議もあ ります。また、入園入学式などのパイプいす並べ、運動会の後には使ったブルーシートを干して片付けると いったことや、音楽会の舞台セッティングなどなど、体力勝負のお仕事もたくさんありました。一番の大仕 事は、図書管理システムの変更による約一万五千冊もの蔵書すべてのバーコード張り替え作業でした。 当時の課題は教員の確保でした。国際結婚して永住されている先生もいらっしゃいましたが、駐在員の家 族としてこられた奥様、大学の留学生など滞在に期限のある先生も多く、長期で勤めていただけません。幼 稚園年長さんから高校生までそれぞれ専門性がありますし、学校側の希望と先生方の希望が合わないことも ありました。苦肉の策で、生徒の家庭調査書にご両親の教員資格や経験を記入していただく欄を設け、相談 させていただくこともありました。 補習校に子どもを通わせる目的は家庭によりそれぞれです。大半は駐在員として 3 年から 5 年ほど滞在さ れ、帰国後の学校にスムーズに入れるようにという家庭です。しかしながら最近では、英語と日本語の両方 を身につけてほしいという国際結婚の家庭も増えてきているようです。そのため、学校に求める授業内容も 様々です。高学年になるにしたがって、習熟度別クラスが必要だといった意見がありましたが、予算や教員 の確保といった問題もあり、残念ながら実現できませんでした。 一年の最後には、学校から立派な額に入った感謝状と事務長からハグをしていただき、運営委員の仕事を 無事終えました。子どもたちのため、多くのボランティアの力で運営される補習校ならでは の貴重な経験ができた一年でした。 13 関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.27 (2012 年春夏号) 「関西帰国生親の会かけはし」と他の団体とのつながり かけはしの活動は、多くの団体ともつながっています。他の団体との関わりを通じ、私どもは学び、共に 考え、時には私どもの海外経験が役に立つこともあります。2011 年度の対外活動をご報告します。 【講師派遣】 * 兵庫県海外子女教育・国際理解教育研究会『多文化共生・国際教育セミナー』(2012年3月3日) この 4 月から海外へ派遣される先生方とご帰国された先生方に、保護者として海外で感じたこと困ったこと などかけはしのアンケート結果とともに、親の思いと「保護者の先生に対する高い期待」「先生方の教材の工 夫」「先生のとまどい」「進学指導」「日本企業の方々との関係」についてお話させていただきました。先生方には、 メモをとりながら、親の思いに耳を傾けていただいて感謝します。(Y.E. & Y.Y.) * 海外赴任渡航前セミナー・個別アドバイス(日本通運㈱、ヤマトロジスティクス㈱、その他)(通年) 【会合参加】 * 京都教育大学附属桃山中学校 『帰国学級講演会“帰国子女でよかった!”』(2011年9月30日) 帰国生が将来どのような職業で活躍できるのかについて、TBS プロデューサーの和田のり子氏を迎え、海外 での様々な経験をいかに仕事に生かしてきたのか苦労したことなどを興味深く伺いました。 (Y.A.) * 全国海外子女教育・国際理解教育研究協議会『第22回近畿ブロック大会』(2011年10月29日) 在外教育施設に派遣された先生方の実践発表にて、現地理解教育や、ご帰国後に携わっておられる在日外国 人教育について伺い、「世界の人々と生き、共に協力する子ども」を育まれるご様子を学びました。 (M.A.) * 帰国子女教育を考える会『第61回研究例会』(2011年11月19日) 椹木一彦先生は赴任先のロサンゼルス補習校と神戸市立生田中の JSL 教室の現場体験を、奥様の椹木由紀先 生は海外子女・帰国児童の保護者体験と神大附属中等教育学校住吉校舎の帰国子女教育担当現場体験を具体 的に話され、共に「帰国生徒と外国人生徒の教育で連携できる点がある」と示唆されました。(Y.M.) * 大阪海外子女教育・国際理解教育研究会『在外教育施設派遣予定者研修会』(2012年2月25日) 4 月に大阪府から世界各地の日本人学校や補習校へ赴任される先生方のための研修会。「かけはし」会員でも ある派遣帯同経験者によるアメリカでの体験を基にした講演もありました。送り出す側の期待、赴任間近の 先生方の熱い想いを拝見して、新任地でのご活躍を心から祈念いたしました。(Y.O.) * 豊中市教育委員会『豊中市国際教育フォーラム』(2012年3月3日) 「持続可能でどの学校にも可能であること」を前提とした国際教育への取り組みが紹介され、講演では「地球市 民」として考え、行動できる子どもを育てることが必要というお話に感銘を受けました。(A.K.) * 立命館大学主催 第1言語としてのバイリンガリズム研究会共催『バイリンガリズム研究学術講演会・ワ ークショップ』(2012年3月4〜6日) Bilingual First Language Acquisitionの研究で知られるAnnick De Houwer教授を招いての国際シンポジウ ム・ワークショップで、言語獲得の基本やとらえ方を学ばせていただきました。(M.T.) * そのほか、(財)海外子女教育振興財団『帰国生のための学校説明会・相談会』(7月21日)、とよなか国際 交流センター『多文化フェスティバル』(11月27日)にも参加しました。 【寄稿】 ・『月刊グローバル経営』(一般社団法人 日本在外企業協会) 2011年5月号 「中高生を連れてサウジ駐在」 ・『帰国便利帳』(Y’s Publishing Co., Inc.) Vol.12 14 2011-12 秋・冬号 「お母さんの日記帳」 関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.27 (2012 年春夏号) 会員のつぶやき 日本に帰国し、はや 4 年。時間の急流に驚く毎日です。4 年前を振り返ると口コミって大事だなと。紹介 文だけで決めた大病院はある日突然閉鎖。確かに予約の対応はひどかった。職場や保育士から薦めてもらっ た娘の保育所や主治医の素晴らしかったこと。人の感じ方に国境はないって思っています。(ひらふぃら) この正月 8 ヶ月ぶりに飛行機に乗りました。CA さんに英語で「お飲み物は?」と聞かれ、ホットコーヒ ーを頼みました。彼女の眉間に皺が。「アイス?ですよね?」と言われ、「いえ、ホットです!」と私。 3 分後なまぬるいコーラが・・・「coffee と coke」の違いも伝わらなかった海外生活 2 カ国 16 年の私。そ の後滞在国でコーヒーが怖くてオーダーできませんでした。(ブンガラヤ 2011) 帰国してもうすぐ 1 年。慣れてはきましたが、毎日の生活で腑に落ちないことも多々ありました。あん なことこんなこと。でも一番は・・・ どこに行くにも車の生活だったアメリカから帰ってきて、車のない、 毎日歩く生活。なのに体重は増えるばかり。おかしい・・・何かが間違っている・・・!!(Mrs. Covington) 三度目の赴任から帰国して早 7 か月。慌ただしい中、子ども二人の受験を終えて、ようやく安堵できる かなぁ。美味しい食事に気心知れた仲間♪日本での生活は、心落ち着くはずだけど、何故か漂う虚無感・・・ (-_-;) 心のどこかで四度目の赴任を待ち望んでしまう私です。(sighthound lover) 「高いなぁ」 、美味しいバゲットを求めてわざわざ車で訪れたブーランジュリーで感じた事です。ならば 自分で作ろう!と分け入ってしまったパン作りの道。石窯オーブン、天然酵母生種、発酵バターに有機ドラ イフルーツ・・・そう、自分で作っても充分高いのです。原価を考えず今日も精進いたします。 (ほっぺっぺ) 日本から遠い彼方の南国に 10 年暮らし、帰国後初めて日本での冬を越しました。美味しいお鍋に、体を 温めるお風呂、ふかふかのお布団・・・寒さ故に冬を満喫できるもので、改めて日本の冬の良さを思い出し ました。でもこれも忘れてました!毎日のお風呂掃除の大変さと、お布団の上げ下ろし!!!(イアオラナ) 『レッツトーク 2012 in Kobe』 実施報告 2012 年 2 月 15 日に「レッツトーク 2012 in Kobe」を開催いたしました。神戸での開催は初めての試みで したが、今回もたくさんの帰国ママ、またこれから海外へ行かれる方をお迎えすることができました。帰国 後の日本で、海外での話を思い切りすることができる機会は、残念ながらそう多くありません。ですから、 滞在地や滞在時期や年数が違っても、それぞれのお国事情にびっくりしたり、そうそう!と頷いたりして、 楽しくなごやかな時間を過ごすことができました。母親ですから、気になるのは やはり子どもの教育や語学保持のことです。先輩ママから経験談を聞いたり、 同じ学校や興味がある学校のママと話したり、あっという間の 2 時間でした。 渡航前の方には、現地での生活や学校などのお話をしてエールを送りました。 話が尽きることはなく、引き続き場所を移してのランチ会でも、楽しいおしゃ べりが続きました。私たち会員にとっても、いろいろなお話を聞いたり話した りすることができた有意義なひとときでした。次回もまた、たくさんの方々の ご参加をお待ちしております。 (レッツトーク 2012 実行担当) *写真はプライバシー保護の ために画像処理しています 編集後記 ☆オリンピックなのに盛り上がりに欠けるロンドンが心配だ。でもチケットは手にはいらない(ままったり) ☆コンタクト&メガネを新調。PC とにらめっこしすぎ? 歳には克てない?(トホホの母) ☆会報作成でヒ-ヒ-言ってるところに花粉症のダブルパンチ!はたして、乗り切れるか・・・(ごくみ) 15 関西帰国生親の会かけはし会報 Vol.27 (2012 年春夏号) 2012年秋 発売予定 関西圏学校情報誌 『帰国生への学校案内《関西》2013』 ◆帰国生の親が実際に訪問取材した、情報満載の学校案内です ◆近畿 2 府 4 県の小・中・高 約 70 校と教育委員会を詳しく紹介 新しくなったレイアウトで、おかげさまでご好評をいただいております。 ますます充実した内容を目指して、今年度も制作を開始いたしました。 ☆編集テーマ ☆掲載予定内容 「帰国生の個性をのばすには」 ・受験情報、学校紹介、先生のお話、在籍帰国生と保護者の声 ・出国から帰国までの学校基礎知識:受け入れ状況、必要な準備、問い合わせシート ・かけはしセミナー「帰国生を取り巻く環境の変化の中で親ができること」要旨 ・特別リポート「学校に期待すること-帰国生と保護者の比較-」 ・帰国生入試実施大学と大学入試解説 ・新企画! ・保持教室、塾、通信教育リスト ・関西圏小中高学校リスト 帰国体験談「帰国生あるある」 海外発送もいたします。ご予約お申し込みはかけはし事務局まで [email protected] イラスト ひらいあきこ かけはし賛助会員のみなさま ・パナソニック株式会社 ・川崎重工業株式会社 ・須磨学園高等学校・中学校 ・京都聖母学院小学校 ・関西インターナショナルハイスクール ・朝日塾中等教育学校 ・Time Educational Network Co., Ltd.(泰夢) ・匿名(個人1名) ・梅花中学校・高等学校 <関西帰国生親の会かけはし編> Email: [email protected] URL :http://www.ne.jp/asahi/kakehashi/kikoku/ copyright © 2012 関西帰国生親の会かけはし All Rights Reserved 16