Comments
Description
Transcript
『マララ・レポート』
徳島こども新聞制作プログラム2012 特集プログラム活動報告 『マララ・レポート』 ナーサリー富田幼児園 徳島県徳島市富田橋5-15 TEL:088-653-4872 FAX:088-653-4877 MAIL:[email protected] http://nurserytomida.com 徳島こども新聞制作プログラム2012 特集プログラム活動報告 『マララ・レポート』 〒770-0937 徳島県徳島市富田橋5-15 TEL 088-653-4872 FAX 088-653-4877 http://nurserytomida.com ナーサリー富田幼児園 園長 落合輝紀 活動概要 女性教育活動家マララ・ユスフザイさんの銃撃負傷事件について調べ、まとめた記事を 徳島こども新聞特集ページで紹介します。 実施背景 2012年10月9日、パキスタンで14歳の女性教育活動家マララ・ユスフザイさん がスクールバス乗車中に襲撃され、頭部に銃撃を受けるという事件が起こりました。 マララさんは、女性教育を認めないイスラム武装勢力『パキスタン・タリバン運動(TTP) 』 をネット上で批判し、14歳ながら国内外でも広く知られた存在でした。 不足なく学習機会を得られる日本社会において、国外の学ぶ自由を制限する文化・宗教 的背景について私たちはあまりに無知かつ無関心でした。 新聞制作を通して考えを述べてきた園児にとって、歳の近い少女に起きた奇禍を深く掘 り下げて学ぶことは、国際社会の問題を身近に感じ、異文化理解と自発的な学習意欲向上 につながると考えます。 目的 (1) 自発的な情報収集を通して、適切な情報収集手段の選択能力と、情報の選別能力を 高めます。 (2) あらかじめ決められたレポート結論を用意しないことにより、自由な学習の広がり を期待します。 (3) 自らの意見をもつ主体性が、複雑な国際情勢を学ぶ中でどのように育っていくのか を検証し、結果を今後の学習プログラム構築に活かします。 1 内容 (Day0) ・事前情報収集 銃撃事件に関する記事を新聞各社に問い合わせ、図書館で該当ページをコピー。 先行して活動していると思われる国内NGOの動きを調べる。 ▽学習に結びつけることができそうなNGOの動きを見つけることができず。 新聞記事を使ってオリエンテーションを行い、出てきた意見から学習の方向性を決めて いくことにする。 (Day1) ・12月新聞部8名に、特別招集した男の子1名、あわせて9名でオリエンテーション実 施。3名の特別調査チームを選出。 ▽新聞記事と拡大した写真を見せながらの口頭説明となったが、頭を銃で撃たれるという ショッキングな内容と、ベッドに横たわる痛々しい報道写真に「こわい」という意見が でる。日頃から事件や国際問題に関心を寄せる男の子1名(特別招集児)に加え、手を あげた女の子2名をチームとして決定する。 (Day2) ・ショートミーティング 新聞記事を読み、感じたこと、疑問点を出し合う。 世界地図・国旗の絵本を使い、パキスタンの基礎情報を調べる。 ▽なぜ、女の子は勉強したらだめなのか?パキスタンとは?疑問が噴出するも、知識量が 圧倒的に不足しており、疑問を解消するに至らず。宗教的な考え(多神教と一神教の違 いを説明)で女子教育が制限されていると説明したため、とくにイスラム教に関する意 見が多くでる。詳しい人に聞いてみないと分からないという結論に。詳しい人を探すと いうことでミーティング終了。 ≪意見≫ 「日本の神様と戦えばいい」 「ミサイルでやっつける」 「勉強しなくていいからラッキー」 「僕は男の子だから勉強できる」 「パキスタンはこわい」「日本のこどもも勉強したら銃 で撃たれる?」 「日本はパキスタンをやっつけたらいい」 ▽県内在住のパキスタン人、イスラム教にくわしい人を探す。留学生、パキスタン料理 店、モスク、大学教授などを検討するが、1 週間しか学習時間がないので段取りに手間 取る。 国際協力事業団に、イスラム教の国に海外青年協力隊員として2年間滞在していた男 性を紹介してもらう。 2 (Day3) ・ショートミーティング(キッズテント内) 詳しい人に聞く質問事項を考える。 →パキスタンの神様はどんな神様? →パキスタンにはどうやって行きますか? →パキスタンは怖いですか? →パキスタンは遠いですか? →イスラムの国で何を見ましたか? →こどもは逃げますか? →パキスタンはどんな仕事をしていますか? ▽集中力を高めるために、こども用のテント内でミーティングを実施。狭い空間で意見が よく出るものの、資料が見にくく、息苦しくなって短時間でミーティング終了。 (Day4) ・ショートミーティング 宗教の問題について、イスラエル情勢の新聞記事を使って説明。 ミサイルが発射され、学習当時連日のように報道されていたイスラエルとパレスチナの 新聞記事を用いて、宗教による対立を考える。 ▽サンタクロースはキリスト教の聖人という話になり、キリスト教の概要を説明。美術百 科事典でキリストの磔刑、ロンギヌスの槍の絵を探す。十分な図版がないため、スマー トフォンで画像検索。 ≪意見≫ 「ミサイルは日本まで飛んでくるの?」「どうやって十字架に人をつけるの?」「やりは日 本のサムライも持っている」 「やりって何?」 「マララさんは治った?」 (Day5) ・取材。イスラム教・中東南アジアに詳しい男性から直接話を聞く。 ・用意した質問に答えてもらう。 ▽講師の先生にコーラン、砂漠の砂、ラグマット、写真、地図など、多くの資料を用意し てもらい、資料に質問が集中。コーランを中心に話が深まる。コーランを学ぶ学校で過 激な思想を教わる例や、貧富の格差が教育に影響する話もする。 ▽イスラム教国家に多い、緑色を使った国旗に込められた願いについて教えてもらうと、 興味をひかれたようで、国旗絵本を使って緑色の旗の国を探す。一般的に厳格な決まり があると思われているイスラム教の教えは、厳しい自然環境の中で人が集団生活をおく るために作られてきたという話はこどもにもよく伝わった。 ▽イスラム教について教わる。 『アッラー』の発音に興味をひかれる。細かい話も丁寧に教 3 えてもらうが、こどもの興味は次々と別にうつり、話がよくそれる。 ▽マララさんの住んでいる街について、地図で教わる。パキスタン国内でも、都市部は商 業活動が活発に行われ、他国と変わらない日常が営まれている。 ▽疑問が次々と出てくる取材の様子を見て、実際に見聞きした大人から海外の様子を教わ ることは幼児でも異文化理解に十分な効果が見込めると感じた。質問に関しては、数問 聞いただけで時間がなくなってきて、集中力も途切れてきたために省略。 (Day6) ・記事・意見をまとめる。 ▽取材したことを文章にする。事件の概要をまず書こうと指示。聞いた話を順に羅列して いく。下書きをして内容を検討。こどもによって書字の得意不得意があるので、内容を 考える子と書く子に分ける。 全体的な文章量が少なく、説明部分が大半でマララさんに関する部分は少なくなる。 ▽特別調査チームが男女混成だったため、『僕は勉強できるけど、私は勉強できない。』こ とがよく理解できていた。 『勉強しないと好きな仕事ができない』『好きな仕事をしたい から勉強したい』という文章の大まかな流れが出来上がる。調査チームの女の子に、マ ララさんと同い年の姉がおり、遠い別世界の話ではないということがチーム内の共通認 識になっていた。 ・特集ページ制作 必要なイラストを描く。新聞記事、文章を紙に貼る。 ▽こども新聞は新聞記事のコラージュを元に作るが、マララさんがどんな人かよく伝わる ように、イラストを描く。同様に,話をしてくれた男性と、パキスタンの地図、国旗も 描く。字を書くのが得意な子、絵を描くのが得意な子、チーム内で役割分担をすること によって集団としてまとまっていけるように工夫した。 ▽制作の一部は、調査チーム以外の子もたくさんいる教室内で行った。、いただいた砂漠の 砂に人だかりができる。関心をもって話しかけてくる子や、国旗絵本を見る年少児にチ ームの子が解説をするなど、学習に広がりがみられた。文章の一部をチーム以外の年長 子が代筆するなど、年長児全体で新聞制作に対する意欲的な態度が育っている。 実施体制 [対象児] 年長児3名(女の子2名男の子1名) ※12月新聞部8名から立候補で女の子2名選任。男の子1名は新聞部以外から指名。 4 [担当職員] 落合輝紀 [取り組み期間および時間] 2012年11月15日~28日 12:00~12:30(給食後の自由時間を利用) [使用教材] 徳島新聞・読売新聞・朝日新聞・国旗絵本・世界地図・美術百科事典・スマートフォン [協力] 国際協力事業団 講師・徳島県青年海外協力協会会長 井原宏さん [アドバイス] 徳島新聞・読売新聞・朝日新聞・NIE全国センター・ユネスコアジア文化センター・日 本ユニセフ協会・プランジャパン・国立女性教育会館・徳島大学国際センター 学習公開 ・園ホームページ(園ブログ)を使い、保護者と一般の方に向けて取り組みを公開。 ▽宗教・武力勢力についてなど、繊細な配慮が必要と思われる内容を含んだ学習のため、 取り組みの進捗状況をできるだけ詳細に公開することを心がけた。 (公開内容・別紙参照) 5 徳島こども新聞平成24年12月1日号 6