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バイオナノチューブとその応用
バイオナノチューブとその応用 内外表面の異なるチューブ状ナノカプセル 脂質分子が自発的に集まること(自 己組織化)によって形成される有機ナ 刺激応答型の放出機能 選択的カプセル化 ノチューブは、内径数 nm ~数百 nm の中空シリンダー状のナノ空間を持ち pH, 温度 ます。この空間にさまざまな分子や材 料を入れてカプセル化したり、そこ 80 nm からこれらを放出することが可能で 80 nm (-) 12 nm (+) 9 nm [1] す 。このため有機ナノチューブは医 療や環境・エネルギー分野での幅広い 利用が期待されています。私たちは ゲストの安定化機能 チューブの外表面が糖、内表面がアミ 薬剤送達機能 ノ基やカルボキシル基などで被覆さ れているという特長をもつ有機ナノ チューブ(バイオナノチューブ、図中 央)を開発し、主にライフサイエンス 分野への実用化に向けた基盤技術の開 バイオナノチューブのさまざまな機能の概念図 発を行っています。 生体高分子を守る nm のチューブでは逆に変性を促進す 質分子の構造最適化と合成手法の簡素 バイオナノチューブはタンパク質や ることもわかりました。内径 10 nm の 化によって、これまでの合成工程を半 DNA などの生体高分子を選択的にカ チューブでの安定化効果は、生体高分 分以下に減らし、さらに再沈殿やろ過 プセル化して安定に保持するという優 子をナノ空間に孤立させることで発現 といった精製プロセスによって効率的 れた機能をもちます(図) 。例えば緑 しているものと推測しています。バイ に脂質ナノチューブを製造することが 色蛍光タンパク質を内径が 10 nm、20 オナノチューブは pH や温度変化など できました。これらを原料として製造 nm、80 nm であるナノチューブにそ の周囲の刺激に応答して薬剤を放出す されるナノチューブ群を公的研究機関 れぞれカプセル化し、その熱安定性を る機能も有しており、薬剤を生体組織 や企業などに広く提供し、オープンイ 調べてみました。その結果タンパク質 や細胞まで送り届けるナノカプセルと ノベーション型の共同研究を進めるこ のサイズ(4 nm)と最も近い内径 10 [3] しての応用が期待されています 。 nm のチューブでは、90 ℃という高温 でも緑色蛍光タンパク質がほとんど変 とでさまざまな用途への実用化を目指 しています。 実用化へ向けて 性しないことを見いだしました [2]。内 実用化を加速するため、さまざまな 径 80nm のチューブではこのような効 ナノチューブ群の合成とそのスケール ナノチューブ応用研究センター 果が全く見られないことや、内径 20 アップも試みています。原料となる脂 増田 光俊 ま す だ みつとし 参考文献 [1] N. Kameta et al .: Soft Matter, 7, 4539 (2011). [2] N. Kameta et al .: Chem. Eur., 16, 4217 (2010). [3] 亀田直弘 他:高分子論文集 , 67, 560 (2010). 10 産 総 研 TODAY 2011-07 このページの記事に関する問い合わせ:ナノチューブ応用研究センター http://unit.aist.go.jp/ntrc/ci/index.html