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松江市簡易水道事業の現状と 簡易水道統合の課題
1 資料 7 松江市簡易水道事業の現状と 簡易水道統合の課題 平成27年5月8日(金) 2 松江市上下水道局 2 Ⅰ 松江市簡易水道事業の現状 土木学会選奨土木遺産 認定記念碑 現在の千本ダム(満水時) 3 水道及び水道事業とは 水道とは 水道法3条1項 導管及びその他の工作物により、水を人 の飲用に適する水として供給する施設の 総体をいう。 ただし、臨時に施設されたものを除く。 工業用水道や下水道と区別し、上水道 ともいう。 水道事業 一般の需要に応じて、計画給水人口が と は 100人を超える水道により水を供給する事 水道法3条2項 業をいう。 計画給水人口:水道事業経営の認可に係わる事業計画において、定める給 水人口をいう。 4 水道の区分(水道法による規制を受ける施設) 超える 上水道事業 水道事業 簡易水道事業 水道法 による 規制を 受ける 施 設 計画給水人口 5,000人 以下 水道用水 供給事業 水道事業者に水道用水を供給する事業をいう。 ただし、水道事業者または専用水道の設置者が 他の水道事業者に分水する場合を除く。 専用水道 居住者が101人以上の自家用水道、又水道事 業以外の水道で、20㎥を超える給水能力を持つ 水道(但し、自己水源を持たない水道であって水 槽の容量が100㎥以下であり、なおかつ25㎜以 上の導管の延長が1,500m以下の水道は適用さ れない。) 5 水道の区分(責任を供給規程に定める施設等) 設置者及び 水道事業者 の責任に 関する事項を 供給規程 (給水条例) に適正かつ 明確に定める 簡 易 専用水道 貯水槽 水 道 (水道法により 供給規程の 要件が規定) 水道法による 規 制 を 受けない施設 飲料水 供給施設 簡易給水 施設等 簡易専用 水道以外の 貯水槽水道 (小規模 貯水槽水道) 水道事業から受水した水の みを水源として給水するもので、 受水槽の有効容量の合計が 10㎥を超えるもの。 水道事業の用に供する水道また は専用水道から供給を受ける水の みを水源とする小規模受水槽(受 水槽の容量が10m3以下)を有する 施設。 50人以上(地下水等汚染地域にあっては、この限り でない)100人以下の給水人口に対して、人の飲用に 供する水を供給する施設等の総体をいう。過疎地域 など人口分布が希薄な地域では、簡易水道の布設条 件が整わないこともあり、これらの地域における水道 の普及を目的として、市町村が行う飲料水供給施設 整備事業に対して国庫補助がなされている。 6 簡易水道事業の概要 計画給水人口が101人以上で5,000人以下の 水道事業をいう。施設が簡易ということではなく、 計画給水人口の規模が小さいものを簡易と規定し たものである。なお、簡易水道の布設工事監督者 及び水道技術管理者の資格要件が軽減されてい る。それ以外の水道の施設基準、水質基準などは 当然水道事業として適用される。 公営水道 約 5,494 事業 法適用:23事業体 法非適用:746事業体 そ の 他 約 763事業 7 簡易水道事業の特徴 一般行政機関の特別会計で運営 簡易水道事業は国内約800事業体で運営しており、 その内23事業体のみ地方公営企業法適用企業である。 上水道事業が行き届かず、地理的に条件の悪い 地域などに公衆衛生の向上や公共の福祉を目的に 普及を図ってきたため、経営基盤が軟弱で一般会計 からの繰出しや国からの補助金などによる財政支援 がなければ経営は成り立たない。 8 島根県の市町村合併の状況 松江市 出雲市 隠岐の島町 (大社町) (八束町) 玉 (斐川町) (宍道町) 湯 町 湖湖 (出雲市) (東出雲町) 陵陵 (八雲村) (加茂町) (安来市) 町町 (多伎町) (三刀屋町) 木 (大東町) 次 (佐田町) (広瀬町) 町 (伯太町) ( ( ) 大田市 ) (都万村) (西郷町) 江津市 (大田市) ) (掛合町) (温泉津町) 知夫村 浜田市 (邑智町) (江津市) ) 仁 摩 町 ( ) ( 海士町 (吉田村) (横田町) (大和村) (浜田市) (仁多町) (頓原町) 川本町 (桜江町) (三隅町) (益田市) (金城町) (弥栄村) 奥出雲町 (旭町) (瑞穂町) (羽須美村) 飯南町 雲南市 (美都町) 邑南町 (日原町) 安来市 (赤来町) (石見町) 津和野町 松 江 市 ) (布施村) (美保関町) ( (平田市) ( (五箇村) 西ノ島町 (島根町) (鹿島町) 美郷町 (匹見町) (津和野町) 益田市 平成の大合併以前の59市町村(8市41町10村) から現在19市町村(8市10町1村)まで合併 (柿木村) (六日市町) 吉賀町 9 市町村合併に伴う松江市の水道事業認可数の状況 合併前の各市町村の認可数 上水道事業 松 江 市 簡易水道事業 松江鹿島水道企業団 上水道事業 鹿 島 町 簡易水道事業 島 根 町 簡易水道事業 美 保 関 町 簡易水道事業 簡易水道事業 八 雲 村 飲料水供給施設等 上水道事業 玉 湯 町 簡易水道事業 宍 道 町 簡易水道事業 斐川宍道水道企業団 上水道事業 八 束 町 簡易水道事業 上水道事業 東 出 雲 町 簡易水道事業 上水道事業 合 計 簡易水道事業 飲料水供給施設等 現松江市の認可数 1 12 1 2 3 6 4 2 1 1 5 1 1 1 4 3(2) 38 2 統 合 上 水 道 事 業 3 (1) 簡易水道 事 業 26 飲 料 水 供給施設等 2 ( )内は一部事務組合の事業数。松江鹿島水道企業団は松江市と鹿島町の合併で解散。斐川宍道水道企業 団は出雲市と一部事務組合で継続運営。 10 松江市給水区域図 上水道3事業 簡易水道26事業 飲料水供給施設1施設 簡易給水施設1施設 11 松江市の水道事業認可状況 ※ 平成25年度決算値 単位:人 (1)は、一部事務組合 〔2〕は、飲料水供給施設1+簡易給水施設1(給水人口に含む) 「1」は、島根町の一部と鹿島町の一部を給水区域とする鹿島・大芦簡易水道 「1」+ 「1」=1 12 松江市の水道施設数の状況 施 設 水 源 7 36 43 浄水場 6 28 34 ポンプ場 33 49 82 配水池 50 82 132 合 96 195 291 計 上水道 簡易水道 合 計 H24年度末現在(単位:箇所) 13 松江市における水道事業の枠組み(合併時) 平成17年3月31日 8市町村が合併し、 新松江市がスタート ◎上水道事業(2事業、3料金体系、組織及び会計統合) 松江水道事業 松江市水道事業 松江鹿島 水道企業団事業 玉湯水道事業 玉湯町水道事業 斐川宍道水道企業団 斐川町・宍道町 水道企業団 ◎簡易水道事業(34事業、2施設 8料金体系) 松江市からの事務委任により運営 松江地区 12事業 鹿島地区 2事業 島根地区 3事業 美保関地区 6事業 八雲地区 4事業+2施設 玉湯地区 1事業 宍道地区 5事業 八束地区 1事業 14 松江市における水道事業の枠組み(平成27年4月1日現在) ◎上水道事業(3事業、1料金体系) 松江水道事業 玉湯水道事業 東出雲水道事業 斐川宍道水道企業団 H17.3松江鹿島 水道企業団事業統合 H23年度 1簡水統合 H21・22年度 4簡水統合 H23.10 宍道町5簡水移管 ◎簡易水道事業(26事業、2施設 6料金体系) 松江市からの事務委任により運営 松江地区 12事業 美保関地区 6事業 鹿島地区・島根地区 3事業 八雲地区 4事業+2施設 八束地区 1事業 15 16 松江市の簡易水道事業の給水状況 有収水量・有収率 ○有収水量は、2,601千㎥、減少の傾向は継続 ○有収率は、85.6% 17 松江市の簡易水道事業の経営状況 (税込) 給水人口 27,268人(14.09%) (税込) 18 松江市上下水道局が所管する事業の比較 (単位:千円) 上水道事業 料金・使用料収入 簡易水道事業 下水道事業 3,758,351 608,742 3,592,973 建設改良費 935,171 842,746 1,033,707 運転・維持管理費 747,668 402,543 1,633,804 起債残額 9,508,466 10,638,215 71,501,235 元利償還額 700,777 773,673 6,651,225 平成25年度決算値(消費税処理を行わず決算値を記載) 19 Ⅱ 簡易水道統合の取り組みと課題 尾原ダム(平成24年3月31日完成) 総貯水量60,800千m3 20 簡易水道事業の上水道事業への統合 背 景 • 簡易水道は一般的に経営基盤が脆弱である • 地域住民に対するサービス水準の向上等を図る観点から、事業の統合化・広 域化を推進する必要がある • 財務・技術基盤の強化を通じた効率的な経営体制の確立を目指す 国施策 • 簡易水道に対する支援制度を維持しつつ、簡易水道の統合を重点的に促進す る • 「簡易水道等施設整備費国庫補助金交付要綱及び同取扱要領」を一部改正 (平成19年6月) 自治体 • 各自治体は平成28年度末までに上水道事業へ統合する「簡易水道事業統合 計画」を策定 • 承認を得ることで平成28年度末までの簡易水道等の整備は国庫補助を受けら れる 21 松江市簡易水道が抱える課題 合併後の簡易水道 • 施設整備・・・旧自治体の施設整備計画(自己完 結型)を概ね踏襲して施設整備を行ってきた。 • 整備における課題 ① 砂防ダムに水源を依存した整備のため、安 定給水の確保に不安を抱える。 (豪雨時の濁水対応、原水水質の季節変動、砂防ダ ムが土砂で埋まった場合の新たな水源開発が必要) ② 点在する小規模浄水場等の維持管理コスト や更新費用が嵩む。 ③ 高齢化する維持管理職員の負担が大きい。 22 (平成18年・豪雨災害時の状況) 23 (平成5年・豪雨災害時の緩速ろ過池の状況) 24 松江市施設整備計画の見直し 1.合併後の松江市の責任として、安定水源を確保し 安定給水に努める。 2.水需要の減少傾向を踏まえ、施設規模の見直しを 図る。 3.将来の上水道と簡易水道の統合を前提に不安定 水源を県受水(尾原ダム系)等に転換し、広域的な水 融通を図る。 4.小規模な水源・浄水場の廃止により将来の更新費 用や維持管理費用を縮減するとともに、維持管理職 員の負担軽減を図る。 25 / φ 1,000 φ 800 m φ 150 26 尾原ダム(斐伊川水道事業)への参画水量 , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , 27 28 総配水量(夏季) 64,000㎥ 94,170㎥ 能力合計 29 施設整備後の施設数と費用削減効果 (1) 簡易水道施設の統廃合計画 H2 4 年度末 簡易水道施設 水 源 浄水場 ポンプ場 配水池 合 計 簡易水道統合後( H2 8 年度末) 2 6 事業 自己水源が残る 36 28 49 82 195 13 8 8 20 49 5事業 ※ 21事業は、水源、浄水場を廃止し水源転換して上水道へ統合 残る5事業(加賀、野波、美保関中央、枕木、別所)は、水源を残して統合 (2) 費用削減効果 ※ 従来の整備方法では、約146億円の更新費用(水源・ 浄水場)を見込んでいたが、H12~H19実施済み事業費 46億円+水源転換(計画変更分)分H20~H28は42億円 の合計88億円に縮減(58億円の削減効果) ※ 維持管理費は、人件費を含め年間約1億円を削減 30 現在の松江市の簡易水道事業の繰出基準 統 合 前 (現在の基準) 適 用 高料金 高料金 基 準 当該年度 の基準 通 基 準 2分の1 臨時措置 基 準 2分の2 未普及 基 準 3分の2 災害復旧 基準外 全額(交付 税は50%) 過疎債 基準外 70%(交付 税分) 公債費 常 統 合 後 (上水道の国の基準) 基 準 基 準 当該年度 の基準 2分の1 31 地方公営企業繰出金の通知【簡易水道事業】 1. 2. 3. 4. 簡易水道の建設改良繰出金(H25松江市・約3億9千万円)歳入の18% 簡易水道の高料金対策繰出金( H25松江市・約2億3千万円)歳入の11% 簡易水道未普及解消緊急対策事業繰出金(H25松江市・なし) 簡易水道法適化・統合推進繰出金(H25松江市・約450万円)歳入の0.2% 高料金対策繰出金 繰出し基準(平成26年度) 【上水道事業】 末端給水事業のうち前々年度におけ る当該事業の有収水量1m3当たりの資 本費及び給水原価がそれぞれ次の要 件を満たすもの(平成26年度) 【簡易水道事業】 前々年度における当該事業の有収 水量1m3当たりの資本費及び供給単 価がそれぞれ次の要件を満たすもの (平成26年度) ① 資本費 164円以上 ① 資本費 175円以上 (H25松江市 110円) (H25松江市 344円) ② 給水原価 261円以上 (H25松江市 199円) ② 供給単価 159円以上 (H25松江市 234円) 32 松江市の簡易水道事業統合に伴う課題 ① 高料金対策の繰入が無くなる 簡易水道事業は、収益のうち自主財源(使用料収入) の占める割合が3割程度しかなく、残りは補助金、繰入 及び起債などで賄っています。 このうち高料金対策の繰入については、簡易水道を 上水道に統合した時点で上水道の基準となるため、年 間2.3億円あまりの繰入金がなくなることが想定される。 33 上水統合による繰出金と交付税の影響 上水道統合による繰出金と交付税の影響について 高料金繰出金 単位:億円 市 国 簡易水道 交付税 交付税 繰出金 歳出 歳入 歳出 繰入金 差引 歳入 現行 2.3 2.3 2.3 0.0 2.3 企業会計 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 ▲ 2.3 ▲ 2.3 ▲ 2.3 0.0 ▲ 2.3 差引 繰出基準が上水道の基準(資本費164 円・給水原価261円)となることにより、 全体では基準外(資本費137円・給水 原価240円)となり繰入金(繰出金)が なくなる。 平成26年度繰出金通知 公債費繰出金 市 国 簡易水道 交付税 交付税 繰出金 歳出 歳入 歳出 繰入金 差引 歳入 現行 3.9 3.9 3.9 0.0 3.9 企業会計 2.2 2.2 3.7 ▲ 1.5 3.7 差引 ▲ 1.7 ▲ 1.5 ▲ 0.2 ▲ 1.7 ▲ 0.2 現行では、一般会計が繰出した額に対 し全額交付税措置がなされるが、上水 道統合後は繰出基準の移行により、簡 易水道の繰入金が0.2億円減額になる。 さらに交付税は繰出した額3.7億円に 対し、2.2億円に減額となり、差引1.5 億円の減となる。 影響額 国 市 簡易水道 交付税 歳入歳出 繰入金 歳出 差引 歳入 現行 6.2 0.0 6.2 企業会計 2.2 ▲ 1.5 3.7 ▲ 4.0 ▲ 1.5 ▲ 2.5 合計 松江市全体 ▲ 4.0 億円 企業会計への移行により、交付税が4. 0億円減少する。松江市では、新たに一 般財源の持出分が1.5億円発生し、簡 易水道の繰入金は2.5億円減少する。 34 松江市の簡易水道事業統合に伴う課題 ② 簡易水道が抱える多くの起債残額の影響 上水道事業(給水収益: 37.6億円(税抜)、起債残 額:95億円)と比較し、給水収益が6.1億円(税込)と少 ない事業で、起債残額が106億円と多く、今後の水道 事業全体の経営に影響を及ぼす。 ※給水収益の約17倍の借金 35 松江市の簡易水道事業統合に伴う課題 ③ 公営企業化に伴う新たな経費が発生 地方公営企業法の適用となった場合、独立採算を基 本とする公営企業会計の基準で経営することとなり、 退職金等今まで一般会計の傘の中で賄っていた経費 を新たに捻出する必要があるとともに、大きな一般会 計の資金で経営していた運用資金が局独自の資金で の運用となる。また、起債残額が106億円からすると相 当な額の減価償却費が見込まれる。 36 松江市の簡易水道事業統合に伴う課題 ④ 小規模施設の運転管理費の支出 県受水(尾原ダム系)に水源転換等をはかっている が、今後も小規模な約130施設の運転管理を行う必要 があり、継続的な維持経費の支出が見込まれる。 また、簡易水道施設の維持管理業務を各支所(一般 会計職員)で行っており、新たな人件費若しくは委託料 が発生する。 37 松江市の簡易水道事業統合に伴う課題 ⑤ 小規模集落への給水方法の検討 不安定な砂防ダム等に依存してきた小規模集落の水源を 安定した県受水(尾原ダム系)に転換してきたが、将来的に は限界集落となる可能性もある。 平成24年度に厚生労働省から、小規模集落への給水手 法に関する調査が行われ、報告書が取りまとめられた。 本市においても今後の管路更新等、小規模集落への新 たな投資が必要となる場合には、あらゆる給水方法のあ り方を検討し、費用対効果を検証して進める必要がある。 38 松江市の簡易水道事業統合に伴う課題 ⑥ 不用資産の処分経費 不安定な砂防ダム等の水源を安定した県受水(尾 原ダム系)に転換することにより、生じる不用資産 の処分並びに安全管理に係る費用が見込まれる。 平成20年度以降、日本水道協会、全国簡易水道協議会、 島根県市長会、島根県議長会などを通じて、統合後も引 き続き高料金対策繰入金等の財政支援を要望 (現在も継続して要望中) 39 今後の検討課題(案) 1.財政収支 ①国からの補助金(既存の補助金のあり方) ②繰出金のあり方 ③国への要望(財政支援のあり方) ④適正な料金設定 ⑤簡易水道施設・管路の更新のあり方 ⑥統合後の財政計画(投資計画) ⑦上水道会計への影響 2.施設の維持管理 ①上水道との一体的な維持管理のあり方 ②不用資産の処分と今後の取扱い 3.市内同一サービス同一料金 ①水道料金の統一 ②新規加入分担金の統一 40 ご清聴ありがとうございました