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物理現象とセンシングデバイス

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物理現象とセンシングデバイス
計測制御工学入門
4 物理現象とセンシングデバイス
4.物理現象とセンシングデバイス
物理現象とセンシングデバイス
センシングデバイスには様々な特殊な物理現象が用いられている。特に7
つの物理現象に着目して そのセンシングデバイスを紹介する
つの物理現象に着目して,そのセンシングデバイスを紹介する
物理現象
センシングデバイスに利用される効果
光電現象
光電効果,光電子放出効果,光伝導効果,光
起電力効果
熱現象
ゼーベック効果,焦電効果
圧電現象
電現象
圧電効果
電効果
磁気現象
ホール効果,磁気抵抗効果
電子放出現象
熱電視放出効果,電界放出効果,2次電子放
熱電視放出効果
電界放出効果 2次電子放
出効果
超伝導現象
ジョセフソン効果
化学現象
吸着現象,イオン移動
光電現象
物質が光を吸収して自由電子を生
ずる現象を光電効果と呼び 量子
ずる現象を光電効果と呼び,量子
効果のひとつである。
光電効果
外部光電効果
・光電子放出効果
部光 効
内部光電効果
・光伝導効果
・光起電力効果
光起電力効果
光電効果を利用したセンシングデバ
イスは,非常に高感度で,高速性に
優れている。
外部光電効果
金属に光を照射した際に,光の振
金属に光を照射した際に
光の振
動数がある一定値を超えると電子
が外部に放出される。この現象を外
外部 放出される。
現象を外
部光電効果といい,放出された電子
は光電子と呼ばれることから,光電
子放出効果とも呼ばれる
子放出効果とも呼ばれる。
光電管
光電子を放出する光電陰極と光
電子収集用の陽極を組み合わせた
センシングデバイスで,光のオンオ
フを検出するために用いられる。
光電現象
マイクロチャンネルプレート
マイクロチャンネルプレート
(MCP)は電子を倍増する多数の
,
チャンネルをもつセンサで,電子を2
次元的に検出し,増倍する電子増
倍素子である。イオン,真空紫外線,
X線 ガンマ線などにも感度がある
X線,ガンマ線などにも感度がある
ので,それらの検出素子としても利
用される。
内部光電効果
内部光電効果は,半導体に光を
内部光電効果は
半導体に光を
照射したとき光によって励起された
電子が半導体内部に留まったまま
電子
半導体内部 留ま たまま
引き起こす現象で,光導電効果と光
起電力効果に分けられる。
光導電効果
半導体に光を照射した際に 半導
半導体に光を照射した際に,半導
体の電動電子が増加し,電気伝導
度が増加する現象
光起電 効果
光起電力効果
内部ポテンシャルがある(例えば,
pn接合)ときに,光を照射することに
極
より電極間に起電力を発生する現
象
内部光電効果のセンサ
光導電セル
フォトダイオード
光導電セルは光導電効果を用い
たセンシングデバイスで,真性半導
体を用いたイントリンシック形と,n形
やp形半導体を用いるエキシトリン
シック形がある。
フォトダイオードは光起電力効果
フォトダイオ
ドは光起電力効果
を用いたセンシングデバイスで,半
導体の組合せによって,さまざまな
導体
組合
よ
,さまざまな
分光感度特性,周波数特性,安電
流を制御している。
また 層と 層 間 シ
また,p層とn層の間にシリコンを
を
挟んだPINフォトダイオードは1ns以
下の応答性があり 光通信やパル
下の応答性があり,光通信やパル
ス光検出器などに用いられている。
波長範囲
セル材料
(最大感度波長)
600nm以上
(赤外線)
PbS(2.2mm)
PbS(2
2mm)
PbSe(3.8mm)
PbTe,InSb
400~900nm
(可視光線)
CdS(520nm)
CdSe(720nm)
300~400nm
300 400
(紫外線)
ZnS
Z S
赤外線通信
モジュ
ルに
モジュールに
も使われて
いる
内部光電効果のセンサ
フォトトランジスタ
フォトトランジスタも光起電力効果
を利用したセンシングデバイスで,
npn形トランジスタと同じ機構を持ち,
p
機構
フォトダイオードとトランジスタが一
体になったものである。電流増幅機
能を持つため フォトダイオ ドより
能を持つため,フォトダイオードより
も高感度にできるが,応答性は悪く
なる。
LEDとの複合デバイスとして,フォト
カプラやフォトインタラプタがある。
カプラやフォトインタラプタがある
熱現象
熱現象を用いたセンシングデバイ
スは当然のことながら温度を対象に
したものが多い。
ゼーベック効果
金属の両端に温度差があると,そ
の両端間に電位差が発生する現象
をゼーベック効果という。これは高
温側の電子が熱運動によって低温
側に比べて高エネルギ状態になり,
低温側に拡散するため,低温側の
電子の密度が増加するために起こ
る。よって,高温側が+になる。
熱電対
種類の金属A,Bを図のように接続
種類の金属A
Bを図のように接続
し,2つ接合点a,bを異なった温度
に保つと,それぞれ異なる熱起電力
保
,それぞれ異なる熱起電力
が発生し,その差から温度を計測す
ることができる。このようなセンサを
熱電対という
熱電対という。
溶着・圧着等
温度T
導体A
導体B
低温
高温
熱現象
サーモパイル
熱電対の温度特性
出力
小型の熱電対を直列に接続して
面上にし,熱放射(熱赤外)による熱
変化を検出するセンサである。
変
電子レンジ,エアコン,放射温度計,
人体存在検知,OA機器,車載温度
センサ,などに使用されている。
サ など 使用され
る
T
K
R S
R,S
温度
種類
+脚
−脚
T
銅
(Cu)
K
アルメル クロメル
(Ni)
(Ni,Cr)
特徴
コンスタン 安 価 だ が 直 線 性
タン
に問題あり
(Cu,Ni)
R S 白金ロ 白金
R,S
ジウム (Pt)
(Pt,Rh)
出力電圧 直線性
出力電圧・直線性
とも中間位
高価だが良直線
性・高温測定可
熱現象
焦電効果
焦電センサ
焦電性結晶や焦電体と呼ばれる
自発分極をもつ結晶は,熱を加える
結晶内 電荷配置 変化し,結
と結晶内の電荷配置が変化し,結
晶表面に正負の電荷が発生する。
通常は大気中の浮遊価電子をとら
えて電気的に中性だが 温度上昇
えて電気的に中性だが,温度上昇
とともに自発分極が減少し,荷電粒
子を放出する。これを焦電効果とい
子を放出する。
れを焦電効果
う。
焦電体への赤外線の照射により
誘起された表面電荷の変化から,
温度や赤外線を検出するセンサを
温度や赤外線を検出する
ンサを
焦電温度センサや焦電形赤外線セ
ンサという。特徴として,絶対的な温
度ではなく 赤外線放射に時間的な
度ではなく,赤外線放射に時間的な
変化があるときのみ焦電電圧が得
られる。
熱
G
圧電現象
ピエゾ効果
圧電性結晶に応力を加えた際に,
圧電性結晶に応力を加えた際に
結晶内に応力に比例した誘導分極
が発生し,結晶表面に正負の電荷
発 し,結晶表面
負 電荷
が現れる現象を圧電正効果という。
逆に,電界を印加して分極させた際
に 電界に比例した応力や歪みが
に,電界に比例した応力や歪みが
現れる現象を圧電逆効果という。こ
れらをまとめて圧電(ピエゾ)効果と
れらをま
め 圧電(
ゾ)効果
いう。
水晶などの単結
晶は高精度だが
高価なため,近年
は高誘電性セラミ
クスに電界を印加
して分極処理した
圧電セラミクスが
用いられている。
力・圧力センサ
圧電正効果を
利用して力や
圧力を電気信
号に変換する
センサである。
音さ式質量センサ
音さに2つの圧電素
子を張り付け,1つは
励振用に,1つは検出
用に用いる 音さに質
用に用いる。音さに質
量が加えられると,固
有振動数が変化する。
この固有振動数の変
化より,音さ上の質量
を検出する。
を検出する
圧電現象
圧電マイク
振動板を取り付けた圧電素子から
音圧を検出できるようにしたものが
圧電マイクである。小型化,軽量化
圧電
イク ある。小型化,軽量化
が容易で消費電力も少ないので,
携帯電話などによく使われている。
圧電ジャイロ
z
y検出
x励振
検出用圧電
セラミクス
励振用圧電
セラミクス
魚群探知機
圧電素子を用いたセンシングデバ
イスは反応が早く,ある特定の音波
などの計測にも利用できる。特に超
な
計測 も利用 きる。特 超
音波などを利用したセンシングは光
度にシステム化され,超音波の透過
や反射強度分布 ド プラ 効果に
や反射強度分布,ドップラー効果に
よる周波数変化を用いたものなど
様
様々である。魚群の有無,大きさ,
ある。魚群 有無,大きさ,
深度,魚種などを検知する魚群探
知機なども,この特性を利用したも
のである
のである。
磁気現象
気
ホール効果
上図のような導体に電流 I を流し,
を流し
これと垂直方向に磁束密度 B の磁
v
界があったとき,導体内の自由電子
界
あ た き,導体内 自由電子
I
FL
はローレンツ力 FL によって運動方
向が曲げられる。その結果,導体の
B
下面が負に 上面が正に帯電する
下面が負に,上面が正に帯電する
ローレンツ力による自由電子の変動
る自由電
変動
ので,導体内に上面から下面への
電界
界 E が発生する。電界
す
界 E による
力 eE はローレンツ力 FL と釣り合い,
eE
電子が直進するようになる。これよ
V
v
り 下図のように導体の上下面間に
り,下図のように導体の上下面間に,
I
FL
流した電流 I や加えた磁界 B に比
電
電
例した電位差(ホール電圧)V
が生
B
じる。なお,導体がp型半導体の場
ホール電圧の発生
合はキャリアが正孔(ホール)のた
を測定することによって,磁界の大
磁界の大
めに 電界 E がn型半導体と逆方向
めに,電界
が 型半導体と逆方向 を測定することによって
になる。いずれも発生した電位差 V きさや強さを知ることができる。
磁気現象
気
ホール素子
ホール効果を利用して磁界の強さ
ホ
ル効果を利用して磁界の強さ
や半導体の特性を評価するための
センシングデバイスをホール素子と
ンシングデ イ をホ ル素子
いう。
また,ホール素子と増幅器をワン
チップ上に集積したICをホールICと
プ上 集積 た をホ
と
呼び,
・ブラシレスモータ(CD ROM FDD
・ブラシレスモータ(CD-ROM,FDD,
HDD,DVD等の精密小型モータ)
・位置検出センサー
位置検出センサ
・回転数検出センサー(水道,ガス
メーター)
・電流センサー
・その他各種磁気センサー
様々な計測に用いられている。
磁気現象
気
磁気抵抗効果
MR素子
半導体や強磁性体に磁場を加え
強磁性薄膜で作られた磁気抵抗
ると電気抵抗が増加する現象を磁 効果素子である。
気抵抗効果という。半導体の場合は,
気抵抗効果
う。半導体 場合は,
ホール電界により荷電粒子の移動
速度が減少することによる。強磁性
体の場合は 外部磁界によ て比
体の場合は,外部磁界によって比
抵抗が変化するためである。強磁
性体 方 半導体よりも温度係数
性体の方が半導体よりも温度係数
が小さいため,特性変化が直線的
で高温向けである。
磁気現象
気
磁気共鳴
磁気モーメントを有する粒子が静
磁気モ
メントを有する粒子が静
磁界内でそのエネルギ準位が分裂
しているとき,エネルギ準位の差に
し
る き, ネルギ準位 差
対応した電磁に共鳴して吸収する
現象を磁気共鳴という。特に原子番
号と質量数がともに偶数ではない原
子核は核スピン量子数と磁気双極
子
子モーメントをもち,小さな磁石と見
ン をもち,小さな磁石 見
なすことができる。ここに磁界をかけ
ると歳差運動を起こす。この周波数
と同じ周波数で回転磁場を与えると
共鳴を起こす。これを核磁気共鳴
g
( nuclear magnetic
resonance;;
NMR)という。また,これを応用して,
画像化したものが,MRI(magnetic
i
i )
resonance imaging)
NMR-CT
CT(computed
CT(
t d tomography)とは
t
h )とは
断層撮影のことで,NMRを用いて
人体の断面を画像として映すもので
人体
断面を画像 し 映すも
す。
核磁気共鳴装置は 薬品や農薬のような有
核磁気共鳴装置は,薬品や農薬のような有
機化合物,ビニール,ポリエチレンといった高
分子材料,そして核酸,タンパク質のような生
体物質を中心とした炭素,酸素,水素,窒素,
体物質を中心とした炭素 酸素 水素 窒素
リンといった原子からなる有機物の分析に最
も威力を発揮します。特に,その原子のつな
がりである平面構造や立体的構造まで知る
ことができるため,これら有機化合物の分析
では中心的な位置を占めています。
電子放出現象
電子放出
物質中には,外部との境界にポテ
物質中には
外部との境界にポテ
ンシャルエネルギの障壁があり,電
子は物質中に閉じ込められている。
子は物質中
閉じ込められ
る。
電子に何らかの大きなエネルギを
加えると電子はこの障壁を越えて外
部に放出される 放出の手段として
部に放出される。放出の手段として
は,
• 熱電子放出
• 電界放出
• 2次電子放出
• 光電子放出
あ 。
がある。
電離真空管
金属や半導体に熱を加えると,固
金属や半導体に熱を加えると
固
体内の電子が表面から放出される。
これを熱電子という。
電離真空管は,熱陰極から放出さ
れた熱電子によって気体分子を
イオ 化
イオン化し,コ
レクタで集めら
れた陽イオン
によるイオン
電流から圧力
を測定するセ
ンサである。
撮像管
熱電子を陽極で加速した電子ビー
ム(電子銃)を光導電体膜にあてる
ことで,撮像画像を電気信号に変換
する。
電子放出現象
走査形トンネル顕微鏡
電界放電は,導体や半導体に強
電界放電は
導体や半導体に強
い電界を与えたときに障壁が変形し
たり,厚さ 減少する
たり,厚さが減少することで,電子が
,電子
トンネル効果によって放出する現象
である。
トンネル効果
STMで観察したAu(100)表面の原子像
超伝導現象
超伝導は,多くの金属やある種の
金属酸化物などの物質の直流電流
抵抗が,その材料固有の転移温度
(臨界温度)以下で0になる現象であ
る。
マイスナー効果
ジョセフソン効果
2つの超伝導体の間に薄い酸化
膜などの絶縁層を挟みこんだとき,
トンネル効果によって流れる超伝導
ンネル効果 よ
流れる超伝導
電流がオームの法則に従わずに特
徴的な振る舞いを示す現象をジョセ
フソン効果という。
フソン効果という
超伝導現象
SQUID
超 伝 導 量 子 干 渉 素 子 ( SQUID;
SQUID
superconducting quantum interference device)は超高感度の磁束計
度
であり,半径1mm程度の超伝導体
の輪の一部に,1個または2個の
ジ セフソン接合を組み入れた構造
ジョセフソン接合を組み入れた構造
をしている。誘導コイルと組み合わ
せて,脳や心臓からの微弱な磁束
,脳や心臓 ら 微弱な磁束
の検出による生体の診断に利用さ
れている。
化学現象
吸着効果
セラミック湿度センサ
吸着現象は,液相や気相の溶質
吸着現象は
液相や気相の溶質
や気体分子が,それが接している他
の液相や固相に取り去られる現象
液相や固相 取り去られる現象
である。吸着には物理吸着と化学吸
着がある。
物
物理吸着は,分子間力(ファン・デ
着
デ
ル・ワールス力)による吸着で,吸着
量は圧力と温度に依存する。
化学吸着は,分子間の化学結合
による吸着で,物質の組合せに依
存する。
湿度センサには,多孔質で水蒸気
湿度センサには
多孔質で水蒸気
を吸着しやすいセラミックが多く用い
られる。物理吸着であるイオン伝導
られる。物理吸着
あるイオン伝導
形と化学吸着である電子伝導形に
分類される。
化学現象
イオンの移動
固体電解質形酸素センサ
電解質に電界を印加したり,化学
電解質に電界を印加したり
化学
ポテンシャルに差があると,電解質
内をイオンが移動して電気伝導性を
内をイオン
移動し 電気伝導性を
示す。
固体電解質の両側に接触している
気体の酸素濃度が異なると,高酸
素濃度側の表面において触媒(白
素濃度側
表面 お
触媒(白
金)により酸素がイオン化される。化
学ポテンシャル差により,この酸素
イオンが低酸素濃度側へ移動して
電子を放出する。
酸素センサは,自動車の燃料噴射
装置の制御に必要な排気ガス中の
酸素濃度の検出に利用されている。
生物現象
生物のセンシングシステムはとて
も高度なので 生物そのもの もしく
も高度なので,生物そのもの,もしく
はその一部の反応を利用したセン
サも存在する。
水質センサ
酵素センサ
酵素センサのもととなる酵素反応
には,酸素を消費または生成する
反 ,光を発す 反
反応,光を発する反応などいろいろ
あるため,目的物質を認識する酵素
の反応形式によって使用するトラン
スデ
スデューサとの最適の組み合わせ
サとの最適の組み合わせ
を求める必要がある。グルコース,
ラ
ラクトース,尿素,アミノ酸用の酵素
,尿素,
酸用 酵素
センサは,医療計測や食品工業な
どに利用されている。
微生物セ サ
微生物センサ
酵素センサに比べ実用化されてい
るものは少ないが,酵母を用いたB
るものは少ないが 酵母を用いたB
ODセンサやアンモニア酸化細菌を
用いた水質計が開発されている。主
として環境計測の分野(毒物の検
出)で利用されている。
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