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下水汚泥のガス化,燃料化等についての 必要エネルギー等に関する研究
蚪 エンジニアリング・リポート 蚪 エンジニアリング リポート 1 下水汚泥のガス化,燃料化等についての 必要エネルギー等に関する研究 資源循環研究部 総括主任研究員 内田 賢治 1 はじめに 計より代表値を設定する。 また,各型式別の違いについては,燃料消費量の算 定方法に実績原単位や計算値等メーカーによる算定レ 下水汚泥の処理は,地球環境保護の観点から従来の ベルの違いがあるため,大まかな燃焼方式別に複数社 エネルギー消費型処理方法からの脱却が求められてお のメーカーアンケートを集計し,比較のための原単位 り,消費エネルギー抑制を主眼に様々な技術が提案さ を設定する。 2 れている。 3 また,国土交通省のLOTUS Project等や当機構と 民間との共同研究をはじめ,複数の技術が開発され, 2.2 アンケート条件の設定 汚泥乾燥施設,炭化施設,ガス化施設,焼却施設の 多様化,複雑化してきており,類似技術の共通事項や エネルギー消費等を把握するための投入汚泥条件は平 特徴,必要エネルギー,N 2Oの発生状況等の違いが 成18年度の下水道統計より全国平均を求め,表−1の 明らかではない。 とおり設定した。 4 本調査は,消化工程の有無と燃料化(中温炭化,低 温炭化,改質乾燥,造粒乾燥),ガス化,焼却の処理 表−1 設定条件 5 方式を対象として,消費エネルギー,生成燃料の持つ エネルギー,処理過程で発生するN 2O等について既 往の技術情報と大まかな燃焼方式別メーカーアンケー トにより比較検討を行い,処理方式別エネルギー収支 等の概要を定量的に示すことを目的とした。 なお,今回は処理工程におけるエネルギー等に限定 した解析を行っており,燃料化生成物の運搬・環境対 1 策等は考慮していない。 本研究は,大阪ガス(株) ,(財)下水道新技術推進 機構の2者による共同研究で行った。 2 研究内容 3 2.1 調査技術の概要 本調査は,①消化脱水+燃料化,②直接脱水燃料化, ③直接ガス化,④焼却の各処理方式を対象とする。 4 入力条件である脱水ケーキ量,性状等は,下水道統 5 アンケートは,各処理工程の①汚泥生成率,②生成 汚泥の発熱量,③電力・燃料消費量,④N 2O排出係 数等の項目について調査した。 また,消化の有無による脱水ケーキ量の違いは, 図−1のように設定した。 蚪 エンジニアリング・リポート 蚪 量474m3/日,濃縮汚泥固形物量16.6t/日相当となる。 さらに濃縮汚泥量から消化脱水の場合の汚泥量等を算 定すると図−3のとおりである。 a)汚泥量の算定(直接脱水) 脱水汚泥量:90t/日×0.8(稼働率)=72t/日 脱水汚泥含水率:78% 脱水汚泥固形物:72t/日×(1-0.78)=15.8t-DS/日 脱水機回収率:95% 濃縮汚泥固形物量:15.8t-DS/0.95=16.6t/日 濃縮汚泥濃度:3.5% 濃縮汚泥量:16.6t/日×100/3.5=474m3/日 図−1 消化の有無による脱水ケーキ量の違い 2.3 アンケート対象技術 燃料化技術を処理プロセスの違いにより分類する と,図−2に示すとおりである。 b)汚泥量の算定(消化脱水) VTS:80%,消化率:50% 消化汚泥固形物量:16.6t/日× (1-0.8×0.5 ) =10.0t/日 消化ガス発生量=濃縮汚泥固形物(t/d)×0.8 (有機分) ×0.55Nm3/kg-VTS×1000 =16.6t/日×0.8×0.55×1000=7,304Nm3/日 加温用消化ガス利用量:5Nm3/m3 加温消化ガス量:474m3/日×5=2,370Nm3/日 余剰消化ガス量:7,304-2,370=4,934m3/日 脱水機回収率:95% 脱水汚泥固形物量:10.0t/日×0.95=9.5t/日 脱水汚泥含水率:81% 脱水ケーキ量9.5t/日/(1-0.81)=50t/日 (2)エネルギー収支 a)算定条件 ①消化工程電力 1 消化工程電力消費は,設計事例から,投入濃縮汚泥 図−2 汚泥燃料化技術の分類 量1m3当たり5.3kWhとして算定した。 ②余剰消化ガスエネルギー 2 上記の各処理技術とガス化技術,焼却技術について, アンケートを実施した。 設計指針から消化ガスの発熱量を22MJ/Nm 3とし て算定した。 ③脱水機消費動力 3 調査結果 脱水機の消費電力は,「高効率型圧入式スクリュー プレス脱水機技術マニュアル 2006年3月」の試算例 から設定した。 4 3.1 消化工程の有無の比較 (1)対象汚泥量の算定 直接脱水:90t/日をベースに消化工程を含めた比較 5 を示す。施設稼働率80%,脱水機回収率95%,濃縮汚 泥濃度3.5%とすると直接脱水90t/日施設は濃縮汚泥 脱水機消費電力:5.8kWh/t-wet(直脱) 20kWh/t-wet(消化脱水) ④乾燥,炭化,ガス化,焼却等消費エネルギー 直接脱水:施設規模90t/日のものとした。 消化脱水:施設規模62.5t/日とし,60t/日の数値を 能力按分して算定した。 蚪 エンジニアリング・リポート 蚪 図−3 消化の有無による汚泥量等の違い 3.2 消化工程の有無とエネルギー消費・生成量 消化,脱水,資源化等の工程を含めたエネルギー消 費量と生成量を図−4に示す。 (1)エネルギー消費量 処理工程で消費する重油を39.1MJ/L,電力を 3.6MJ/kWhでエネルギー消費量に換算した。 直接脱水の場合,燃料消費の多い造粒乾燥,改質乾 燥,低温炭化,中温炭化の順でエネルギー消費が多く, 焼却,ガス化は少ない。 消化脱水の場合,造粒乾燥,低温炭化,改質乾燥の 順でエネルギー消費が多い。焼却,ガス化では,直接 脱水と消化脱水で消化脱水のエネルギー消費量は直接 脱水よりも多くなる。 (2)発生製品エネルギー生成量 製品のもつ発熱量と生成量から発生製品のエネルギ ー生成量を求める。汚泥の一部がガス化される低温・ 中温炭化より,造粒・改質乾燥の製品発生量が大きい ことから,生成される製品量の多い造粒乾燥の熱量が 最も多い。 (3)エネルギー収支 生成製品を燃料代替として利用することを考慮し, 「エネルギー消費−製品発熱量」として算定したエネ ルギー収支を図−5に示す。 消費エネルギーに製品の利用による削減効果を考慮 すると,生成製品熱量の多い造粒乾燥,改質乾燥では, エネルギー消費がマイナスとなっている。また,消化 工程で発生する余剰消化ガスのエネルギーを考慮する 図−4 消化工程の有無とエネルギー消費・生成量 蚪 エンジニアリング・リポート 蚪 図−5 製品利用を考慮したエネルギー収支 と低温炭化,造粒乾燥,改質乾燥でエネルギー収支が マイナスとなった。 3.3 温室効果ガス排出量 消化,脱水,資源化等の工程から発生する温室効果 ガス排出量および製品利用による削減効果を図−6に 示す。 (1)処理工程での排出量 処理工程での燃料消費,電力消費に伴い排出される 温室効果ガスと処理プロセスから発生するN 2Oによ る温室効果ガス排出量を算定した。 焼却のN 2O排出係数は,排出量の少ない高温焼却 対応として算定しているが,他の方式に比べN 2Oの 占める割合が大きく,他の方式よりも温室効果ガス排 図−6 CO2排出量と製品利用による削減効果 1 出量が多くなっている。 (2)製品の燃料代替利用による削減効果 製品の石炭代替利用による温室効果ガス削減効果に 2 ついては,脱水ケーキ当たりの製品量の多い造粒乾燥 の削減効果が最も大きい。 (3)温室効果ガス排出量 製品利用を考慮した温室効果ガス排出量を図−7に 3 図−7 製品利用を考慮した温室効果ガス排出量 示す。 消化−脱水−資源化工程の温室効果ガス排出量に製 品の利用による削減効果を考慮すると,生成される製 4 まとめ 品熱量の多い造粒乾燥,改質乾燥では,温室効果ガス 排出量がマイナスとなっており,造粒乾燥,改質乾燥 本研究では,エネルギー等に限定した解析を行った。 5 では,消化の有無による差は大きくない。また,乾燥 乾燥・炭化に関しては,燃料化後の運搬方法およびそ よりも製品熱量の少ない低温炭化では直接脱水で温室 の際の環境対策も考慮した評価をしなければ,焼却や 効果ガス排出量はプラスとなるが,消化脱水の場合, ガス化と同等の評価とはいえないが,処理工程として 余剰消化ガスによる燃料削減を考慮すると温室効果ガ は,乾燥・炭化のエネルギー消費量,CO2排出量が少 ス排出量はマイナスとなった。 なかった。