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宇宙ステーション補給機(HTV)の 再突入に係る安全評価について

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宇宙ステーション補給機(HTV)の 再突入に係る安全評価について
安全3-3-3
宇宙ステーション補給機(HTV)の
再突入に係る安全評価について
平成21年6月12日
宇宙航空研究開発機構
目
次
1.
2.
3.
4.
はじめに
HTV打ち上げ及び再突入に関する安全確保の概要
適用範囲
HTVの再突入飛行の安全対策
4.1 フライトシステムの安全性
4.2 安全管制
4.3 電波リンク
4.4 再突入監視システム
4.5 再突入の実施条件
4.6 軌道離脱
4.7 着水予測区域の設定
5. 航空機及び船舶に対する事前通報
5.1 航空機に対する通報
5.2 船舶に対する通報
6. 安全管理体制
6.1 組織及び業務
6.2 安全教育訓練の実施
6.3 緊急事態への対応
1
1. はじめに
 宇宙ステーション補給機(HTV)に係る安全評価については、平成17年
10月の宇宙開発委員会 において、以下の指針及び基準により調査審
議されることとなった。
• ISSへの接近、係留、離脱に係る安全評価について
「宇宙ステーション補給機(HTV)に係る安全評価のための基本指針」
(平成17年9月)
• 打上げ及び再突入に係る安全評価について
「ロケットによる人工衛星等の打上げに係る安全評価基準」(平成16年
12月)
 今回、HTVの再突入に係る各種安全評価結果の妥当性確認が完了し
たため報告する。
 なお、HTV打上げ時の安全対策についてはH-IIBロケットの飛行安全計
画及び地上安全計画に含めて報告される。
2
2. HTVの打上げ及び再突入に関する安全確保
の概要(1/2)
「ロケットによる人工衛星等の打上げに係る安全評価基準」による、打上げ及び再突入に
関する安全確保の概要は以下の通り。
安全確保の目的
HTVの打上げ作業(注1)及び、再突入における人命・財産の安全を確保すること。
(注1)射場での組立作業、カウントダウン作業、発射から軌道投入までの一連の作業
安全確保の対策
 第3者
• 国内(射場周辺)の住民・財産
• 外国の住民・財産
 宇宙条約第7条: 他の当事国、その自然人、法人に与える損害についての国際
的責任
 宇宙損害責任条約第2条: 打上げ国は、自国の宇宙物体が地表において引き
起こした損害又は飛行中の航空機に与えた損害の賠償につき無過失責任を負う
安全確保の体系
表1にHTVの打上げ及び再突入における安全確保対策の体系を示す。
3
2. HTVの打上げ及び再突入に関する安全確保
の概要(2/2)
表1 HTVの打上げ及び再突入における安全確保対策の体系
作業
フェーズ
打上げ関係者・財産
国内(射場周辺)の住民・財産
組立整備
作業
【基準Ⅱ:保安及び防御対策】
【基準Ⅲ: 地上安全対策】
(ロケットと合わせて対策を行う)
【基準Ⅲ: 地上安全対策】
(ロケットと合わせて対策を行う)
対象外
カウントダ
ウン作業
【基準Ⅱ:保安及び防御対策】
【基準Ⅲ: 地上安全対策】
(ロケットと合わせて対策を行う)
【基準Ⅲ: 地上安全対策】
(ロケットと合わせて対策を行う)
対象外
リフトオフ
~分離
【基準Ⅱ:保安及び防御対策】
【基準Ⅲ: 地上安全対策】
【基準Ⅳ:飛行安全対策】
(ロケットと合わせて対策を行う)
【基準Ⅲ: 地上安全対策】
【基準Ⅳ: 飛行安全対策】
(ロケットと合わせて対策を行う)
【基準Ⅲ: 地上安全対策】
【基準Ⅳ: 飛行安全対策】
(ロケットと合わせて対策を行う)
再突入
対象外
対象外
【基準Ⅳ: 飛行安全対策】
Ⅳ-3:再突入機の再突入飛行の安全対策 [4項
で説明]
・ 正常飛行時の着地予測区域の設定
・ 飛行経路の設定
・ 再突入飛行の可否判断の実施
Ⅳ-4:航空機及び船舶に対する事前通報 [5項
で説明]
全般
【基準Ⅴ:安全管理体制】
・ 安全教育・訓練、防災訓練
・ 緊急事態への対応
【基準Ⅴ:安全管理体制】
・ 安全教育・訓練、防災訓練
・ 緊急事態への対応
本資料での
報告範囲
外国の住民・財産
【基準Ⅴ: 安全管理体制】 [6項で説明]
・ 安全教育・訓練
・ 緊急事態への対応
4
3.適用範囲
本資料の適用範囲
5
4. HTVの再突入飛行の安全対策
入実施
4.5 再突 定
設
▽ 条件の
脱
▽
軌道離
了
燃焼終
4.2安全管制 4.6 軌
▽
道離
脱
始
準備開
再突入
4.1 フライトシステ
ムの安全性
4.3 電波リンク
再突入運用前の軌道
タンブリング実
施
大気圏
4.7 着水予想区域の設定
飛行経路の分散
離脱初期条件の変動、機体・
飛行特性・大気密度の変動、
風の分散
4.4 再突入監
視システム
5 .1
分解、破片の分散
5
溶融、空力破壊
安全区域
通報
の
機へ
航空
通報
里)
の
へ
=200海
m
k
舶
1
7
3
域 (
.2 船
経済水
排他的
着水予想区域
6
4. HTVの再突入飛行の安全対策
4.1 フライトシステムの安全性(1/3)
HTVの再突入に必要なフライトシステムの機能は、以降に示す通り1故障許
容の構成となっている。また、再突入飛行実施中に異常が発生した場合にお
いても、冗長系統への切り替え及び再突入飛行の継続が可能であることが
試験で検証済みである。
宇宙統合型GPS/INS
誘導制御計算機
姿勢制御スラスタ
(14基)
(3系)
CPU
ISS、Pegasusロケットに搭載
(再突入
では使用
しない)
(2系)
IOC
CPU
CPU
IOC
シャトルのバーニアRCSに搭載
地球センサ
メインスラスタ
(2基)
ETS-VIIと同じ構成
CPU等はETS-VIII等
と同じ設計
緊急離脱制御装置
(ACU)
(再突入では使用しない)
ATVと共通
(2系)
(2系)
人工衛星・惑星探査などに搭載
安全化のためにアボートに使用
(2系)
誘導制御系/推進系
INS:Inertial Navigation System
IOC:Input-Output Controller
RCS:Reaction Control System
7
4. HTVの再突入飛行の安全対策
4.1 フライトシステムの安全性(2/3)
データ処理系サブシステム
通信系
サブシステム
CDP-A
(CCSDSデ
ータ処理)
衛星間
通信機
CDP-1
近傍
通信機
CDP-2
CDP-B
(CCSDSデ
ータ処理)
CDP-1
・・・再突入で
は使用し
ない装置
GCC:Guidance Control Computer
IOC:Input-Output Controller
ACU:Abort Control Unit
CDP-2
BMIU-1
(バスI/F及
び多目的
処理統合
ユニット)
BMIU-2
(バスI/F及
び多目的
処理統合
ユニット)
BMIU-3
(バスI/F及
び多目的
処理統合
ユニット)
通信データ処理系
誘導制御系
サブシステム
GCC/IOC-1
I/Oコントローラ
GCC/IOC-2
I/Oコントローラ
ACU
(緊急離脱
制御装置)
その他機器
・通信データ処理系全体として、
再突入時にも冗長構成でのコマ
ンド/テレメトリ機能を確保
8
4. HTVの再突入飛行の安全対策
4.1 フライトシステムの安全性(3/3)
1次電池電源系
一次バッテリ
1
バッテリ1-1
バッテリ1-2
・・
・・
・
一次バッテリ
2
バッテリ11-1
バッテリ11-2
・・
・
・・
・
電源バス/機器インタフェース
BDCU-1
(バッテリ制
御ユニット)
BDCU-2
(バッテリ制
御ユニット)
・・
・
MBU-1
(主電源
バス)
・・
・
MBU-2
(主電源
バス)
・・
・
・・
・
DB
(ダイオー
ドボックス)
・・各機器へ
・
• 再突入時所要電力
は1次電池/2次電
池のいずれからでも
確保可能。
太陽電池/2次電池電源系
太陽電池
太陽電池
・・
・
PCU
(電力制御ユニット)
電源系
2次
バッテリ
9
4. HTVの再突入飛行の安全対策
4.2 安全管制
HTV再突入の際は、ISSからの軌道離脱待機後2回の再突入準備マヌーバ
を経て安全管制に移行する。安全管制区間では、それまで実施していたテレ
メトリデータ等による監視に追加して、HTV再突入安全監視設備(ROE)によ
るリアルタイムの軌道監視を行う。
離脱
再突入安全管制区間
AE:Approach Ellipsoid
KOS:Keep Out Sphere
DSM:Descending Maneuver
DOM:De-Orbit Maneuver
再突入
10
4. HTVの再突入飛行の安全対策
4.3 電波リンク
再突入時の監視及びコマンド発行に必要なTDRSとの通信リンクについては、実際
の再突入時の軌道や条件(以下)を考慮して可視性を確認した。
(1)ISS高度460/407/350kmのそれぞれの場合に対して、安全区域の西側・東側に
着水する両再突入軌道について確認
(2)機体質量16500kg;メインスラスタ2基運用ケース
(3)姿勢制御誤差を考慮し、「TDRSに対するアンテナ上下角75deg以上で可視」とい
う前提条件を設定
評価結果
軌道離脱マヌーバおよび
その開始5分前~終了70
秒後における区間におい
て、1局のTDRSのみで可
視区間が設定できること
を確認した。
TDRS衛星通信システム
WSC
MCC-H
HTV
(再突入フェーズ)
TDRS: Tracking and Data Relay Satellite
WSC: White Sands Complex
MCC-H: Mission Control Center - Houston
HTVOCS: HTV運用管制システム
HTVROE: HTV再突入安全監視設備
HTVMCR
(HTV Mission Control Room)
HTVOCS
HTVROE
11
4. HTVの再突入飛行の安全対策
4.4 再突入監視システム(1/2)
• HTVの再突入に必要な地上側装置として、ISS近接運用時同様にHTV運用管制シス
テム(HTVOCS)にてテレメトリの監視及びコマンド発行を行う。これらの機能(冗長系
含む)については、ISS運用も含めて検証済みである。
• HTV再突入時にのみ使用するHTV再突入安全監視設備(HTVROE)については、
HTVOCSと結合した機能試験により十分機能が検証されている。
• これらの装置については運用までの間に実施する訓練等でも使用される。
HTVOCS
飛行管制サーバ
(1)テレメトリ工学値変換・モニタ提供
(2)コマンド送信
(再突入許可コマンド含む)
NASAへ
100Base-TX
S/W HUB
外部接続管理装置
HTVROE
(1) 再突入計画評価
(2) 落下域リアルタイ
ム監視
CCSDS装置
飛行計画サーバ
・再突入計画立案・更新
100Base-TX
S/W HUB
100Base-TX
S/W HUB
12
4. HTVの再突入飛行の安全対策
4.4 再突入監視システム(2/2)
(HTV再突入マヌーバ監視~
タンブリング確認)
・ 再突入マヌーバを終了した時点
でHTVの着水予測区域が安全
区域内に収まっていることを確
認。
・ 上記が予定通り終了した場合に
は、タイマーによりタンブリング
が自動実行される。また、タンブ
リングによりリンクが途絶するま
では監視を継続する。
計算された着水予測区域
←↑ROE監視画面
(下は監視画面
拡大図)
13
4. HTVの再突入飛行の安全対策
4.5 再突入の実施条件
HTVの再突入飛行に際しては、以下の条件を考慮して可否判断を行う。
① 再突入直前の計画軌道データに基づき計算した着水分散予測域(3σ分散も
考慮)が安全区域に入ること。
② リソース(推進薬残量及びバッテリ残量)が十分であること。
③ 以下のサブシステム系統について健全性が確認できること。
・ 推進系(推力及び再突入時に使用する機器等の状態が正常であること)
・ 航法誘導制御系(GNC、姿勢制御機器が動作・制御できていること)
・ 通信系(再突入時に使用する機器等の状態が正常であり、テレメトリ・コマンド
回線が確立できていること)
・ 電力系(再突入時に使用する機器等の状態が正常であること)
④ 再突入マヌーバ前に、飛行位置及び姿勢の妥当性が確認できること。
・ 上記①飛行計画立案時の軌道に沿って飛行を続けていること。
・ マヌーバ前姿勢が確立できたこと。
GNC:Guidance Navigation and Control
14
4. HTVの再突入飛行の安全対策
4.6 軌道離脱
軌道離脱(再突入マヌーバ開始)までの流れ
各担当がデータ確認
・ 機体担当(航法誘導担当/推進
系担当/電力担当/通信系担当
など)及び再突入監視担当が、
再突入の実施条件が整っている
ことを確認。
・ 目標ポイント(高度120kmに設定
する再突入I/F点)計算による機
NoGo
体側最終誘導計算結果および
姿勢変更結果を見て、最終確認
を実施。(送信しなければ再突入
中止)
シーケンス
開始コマンド送信
機体
マヌーバ
準備
目標ポイントの設定
姿勢変更
再突入マヌーバ
実施最終確認
Go
再突入マヌーバ
Goコマンド送信
再突入マヌーバ開始
15
4. HTVの再突入飛行の安全対策
4.7 着水予測区域の設定
再突入後の着水予測区域の算出については、ロケット等の評価でも使用して実績の
あるツールを使用している。また、その際以下を誤差要因として加味しており、それで
も安全区域に対して十分小さい領域であることが確認できているため問題ない。
なお、実際の着水予測域の位置は、再突入を実施するタイミング等によって異なり安
全区域内で一定ではない。
安全区域(他国の排他的経
済水域外になるよう設定)
緯度(度)
誤差要因
・ 機体の再突入時
初期条件の変動
・ 大気密度の変動
・風
経度幅で30~35度程度
着水予測区
域の目安
安全区域から200海里
(370.4km)の位置を示す線
(この内側に陸地は無い)
経度(度)
16
5. 航空機及び船舶に対する事前通報
5.1 航空機に対する通報
• HTVの再突入に関しては、日本の国土交通省が所管する領域の
通過が想定されていないため、ノータムの通知及び調整は(国交
省は関与せずに)直接影響国(ニュージーランド及びチリ)の関係
機関に行う。
• 両国への申請手続きに間しては、ATVで同様の調整を実施した
ESA/CNESから具体的な手続きの手順等の情報を入手済みであ
る。
17
5. 航空機及び船舶に対する事前通報
5.2 船舶に対する通報
• 海上保安庁は、国際海事機関(IMO)決議の世界航行警戒業務
システムに基づき、日本航行警報として日本語のインターネット
や無線電信等による情報配信を再突入実施の5日前から行う。
• また、海上保安庁は、船舶交通の安全運航のための水路通報
として、必要な情報をインターネット及び印刷物にて関係機関に
配布する。
• HTVの着水予測区域となる海域はチリとニュージーランド当局
の所管であるため、両国関係当局が実施するNAVAREA航行警
報(インマルサットによる情報配信)のために、5日以上前に両国
当局に情報通知を行う必要がある。
18
6. 安全管理体制
6.1 組織及び業務
実施責任者を長とした主任会議を適宜実施
し、運用状態の監視及び必要に応じて課題
事項等の審議/意思決定等を行う。
運用管制班の組織
19
6. 安全管理体制
6.2 安全教育訓練の実施
• HTVの運用管制については、ISSへの接近及び離脱運用も含めて
各種故障を模擬した運用シミュレーション訓練を実施している。
• 運用シミュレーションには6.1項で示されるJAXAの運用管制班の
他、必要に応じてNASAの運用チームも参加し、運用時の情報伝
達、指揮系統の確認の他、異常時の対応も含めた総合的な訓練
を実施している。
<これまでの訓練実績>
飛行訓練:国内訓練33回、日米合同訓練35回。計68回
係留訓練(参考):国内訓練18回、日米合同訓練7回。計25回
• HTV再突入運用に対しても上記の飛行訓練の一環として運用シミ
ュレーション訓練を実施中している。この中でマヌーバ実行判断に
係る各種故障を模擬した訓練(現在1回実施)を行っており、今後
も数回の訓練を計画している。
20
6. 安全管理体制
6.3 緊急事態への対応
【本部】
本部長:理事長
本部長代理:副理事長
【事務局】
経営企画部
有人宇宙環境利用ミッション本部
事業推進部
関係省庁
国会関係者
国際関係者
プレス 等
【対外対応チーム】
チーム長:総務担当理事
チーム長代理:総務部長
対外対応班
事故に至らない一般的な緊急事態への対応は、
実施責任者を長とした通常の運用組織で行う。
【調査検討チーム】
チーム長:有人宇宙環境利用ミッション
本部理事
チーム長代理:ISSプログラムマネージャ
情報連絡班
事故調査班
現地対応班
事故対策本部体制
21
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