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石油コンビナート等特別防災区域

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石油コンビナート等特別防災区域
用 語
解説
危険物関係用語の解説(第26回)
特定事業所の区分
○石油コンビナート等特別防災区域
冒頭に記載のとおり、特定事業所には第
石油コンビナート等特別防災区域とは、石油
コンビナート等災害防止法(昭和50年法律第84
事業所、第
種事業所の
号。以下「石災法」といいます。
)に定める、石
件はそれぞれ次のとおりです。
油及び高圧ガス等を多量に貯蔵、取り扱う区域
・第
種類があり、その要
種事業所…石油の貯蔵・取扱量及び高圧
をいいます。また、当該区域においてこれら石
ガスの処理量が次式を満たす場合
油等を貯蔵、又は取り扱う事業所を特定事業所
石油の貯蔵・取扱量 高圧ガスの処理量
+
≧
10,000kL
2,000,000㎥
といい、その量によって第
種事業所、第
種
事業所に区分されます。
・第
種
種事業所…第
種事業所以外で、次式を
満たす場合で都道府県知事が指定するもの
石油コンビナート等特別防災区域の要件
石油の貯蔵・取扱量 高圧ガスの処理量
+
1,000kL
200,000㎥
石油コンビナート等特別防災区域について
は、石油コンビナート等特別防災区域を指定す
る政令(昭和51年政令第192号)に定められてお
+
第 類の危険物(石油以外)
その他の危険物
又は
10,000kL
2000t
+
指定可燃物のうち可燃性固体類
10,000t
(
)
り、日本全国で85区域となります。
当該区域となる要件が石災法第
条に定めら
れており、主な要件としては次のいずれかの場
(又は
合であって、災害の発生及び拡大の防止のため
指定可燃物のうち可燃性液体類
10,000㎥
)
の特別な措置を講じさせることが緊要であると
認められるものとされています。
・第
種事業所を含む
+
高圧ガス以外の可燃性ガス
200,000㎥
+
毒物*1
20t
つ以上の事業所が存在
し、かつ、その区域の全ての事業所における
(又は
劇物*2
200t
)≧
石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量が
次式を満たす場合
*
毒物…四アルキル鉛、シアン化水素、フッ
石油の貯蔵・取扱量 高圧ガスの処理量
+
≧
100,000kL
20,000,000㎥
*
劇物…アクリルニトリル、アクロレイン、ア
・上記の式を満足する第
化水素
セトンシアンヒドリン、液体アンモ
種事業所が存在する
ニア、エチレンクロルヒドリン、塩素、
場合
・その他、いずれ上記
クロルスルホン酸、ケイフッ化水素
つの要件のいずれかを
酸、臭素、発煙硝酸、発煙硫酸
満たすことが認められる場合
特に、第
種事業所は、石油の貯蔵・取扱量
及び高圧ガスの処理量が多く規模も大きいこと
55
Safety & Tomorrow No.151 (2013.9)
から、石災法上様々な規制がなされています。
定事業所では、
「大容量泡放水砲用」屋外給水施
後述するレイアウト規制についてもその一例と
設をそれぞれ配置することとされています。
最後に、非常通報設備については、消防署等
なります。
に通報することができる無線設備又は有線電気
通信設備を、全ての特定事業所に設置すること
特定事業者が果たすべき役割
とされています。
前節の特定事業所を設置した者を特定事業者
といい、第
種事業者(第
種事業所を設置し
なお、特定防災施設等の詳細については、今
た者)と第
種事業者(第
種事業所を設置し
後、この用語解説において説明を加える予定と
しております。
た者)に区分されます。
これら特定事業者には、石災法第
⑵
条の定め
自衛防災組織の設置
特定事業者は、特定事業所における災害の発
により災害の発生及び拡大の防止に関し措置を
生又は拡大を防止するために、特定事業所ごと
講ずる責務を有しています。
に自衛防災組織を設置しなければならないとさ
次に、主な措置の具体的な内容について解説
します。
れています。また、自衛防災組織には、実際の
⑴
活動に必要な防災要員及び防災資機材等につい
特定防災施設等の設置
て置かなければならないとされており、その関
特定事業者は、その特定事業所に特定防災施
係のイメージについては、図
設等を設置し、維持しなければならないとされ
のとおりです。
なお、この自衛防災組織を設置した場合は、
ています。
特定防災施設等とは、
消防法において危険物施設に置かなければなら
・流出油等防止堤
ないと規定されている自衛消防組織は原則とし
・消火用屋外給水施設
て置かないものと規定されています。
次に、置かなければならない防災要員の数につ
・非常通報設備
を指し、その基準については、石油コンビナート
いては、配備すべき防災資機材等の種類によって
等における特定防災施設等及び防災組織等に関
決まります。その主なものについて表 に示しま
する省令(昭和51年自治省令第17号。以下「施
す。また、配備すべき防災資機材等は表 のとお
設省令」といいます。
)に詳しく規定されています。
りであり、その配備すべき数量については、主に
ここでは、これら特定防災施設等を設置する
石油等の貯蔵・取扱量や設置されている屋外貯
蔵タンクの種別や大きさ等によって定めがありま
条件について紹介します。
まず、流出油等防止堤については、第
す(防災資機材等の規格などの詳細については
類の
危険物を貯蔵する容量が10,000kL以上の屋外
施設省令に規定されています。
)。
タンク貯蔵所がある場合に設置することとされ
なお、類似の用語として、
つの特別防災区
域の中で複数の特定事業所が共同で設置するこ
ています。
次に、消火用屋外給水施設については、次項
とができる「共同防災組織」
、 つ以上の特別防
に解説する防災資機材等のうち大型化学消防車、
災区域の間の特定事業所が共同で設置できる
甲種普通化学消防車、普通消防車、小型消防車
「広域共同防災組織」があります。
又は大型化学高所放水車を配備しなければなら
⑶
防災管理者の選任
ない特定事業所では、
「消防車用」屋外給水施設
特定事業者は、上述の自衛防災組織を統括さ
を、大容量泡放水砲を配備しなければならない特
せるための防災管理者を選任することとされて
Safety & Tomorrow No.151 (2013.9) 56
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図
表
自衛防災組織と防災要員及び防災資機材等との関係(イメージ)
主な防災資機材等と防災要員数
防災資機材等
( 台当たり)
必要な防災要員の数
大型化学消防車
人
大型高所放水車
人
泡原液搬送車
人
甲種普通化学消防車
人
乙種普通化学消防車
人
普通消防車
人
小型消防車
人
普通高所放水車
人
大型化学高所放水車
オイルフェンス展張船
表
石災法に定める防災資機材等の一覧
・大型化学消防車
・大型高所放水車
・泡原液搬送車
・甲種普通化学消防車
・乙種普通化学消防車
・普通消防車
・小型消防車
・普通高所放水車
・大型化学高所放水車
・オイルフェンス及びオイルフェンス展張船
・油回収装置及び油回収船
・大容量泡放水砲等
・送泡設備付きタンク
・泡消火薬剤
・送泡設備用泡消火薬剤
・可搬式放水銃等
人
小型船舶操縦者の
ほか 人
います。また、単に選任するだけでなく、選任
る副防災管理者についても防災管理者同様に選
したことを遅滞なく市町村長等に届け出ること
任するとともに、防災管理者が不在の際は副防
も義務化されています。
災管理者に自衛防災組織を統括させることが義
特に、第
務づけられています。
種事業者は、防災管理者を補佐す
57
Safety & Tomorrow No.151 (2013.9)
における通報について時間を要する事案も散見
さらに、特定事業者には、これら防災管理者・
されたことから、
平成23年度に消防庁において、
副防災管理者に対して、防災業務に関する能力
の向上に資する研修の機会を与える努力義務が
「異常現象発生時における通報の迅速化に係る
検討会」を開催し、迅速な通報を確保するため
課せられています。
このため当協会では、これら防災管理者等が
の方策等について検討がなされました(なお、
行う研修の場の一つとして、
「防災管理者研修
当 該 検 討 会 の 内 容 に つ い て は、Safety &
会」・
「副防災管理者研修会」
・
「フォローアップ
Tomorrow No.139「異常現象発生時における通
研修会」を毎年開催し、主として防災管理者、
報の迅速化について」をご参照下さい。
)。
この検討会の結果を受け、消防庁から「異常
副防災管理者の皆様に受講頂いております。
⑷
現象の発生時における迅速な通報の確保につい
防災規程の策定
特定事業者は、上述の自衛防災組織が行うべ
て(通知)
」
(平成24年
月30日 消防危第62号)
き防災業務に関する事項について防災規程を定
が発出されており、適切な通報体制の確保、異
めて、市町村長等に届け出なければならいとさ
常現象への対応に関する事項等について通知さ
れています。
れています。
防災規程に定めるべき具体的な事項は施設省
したがって、特定事業者には、これらの法令上
令に規定されており、表 に記載した事項に関
の規定や通知等を踏まえ、異常現象が発生した場
することとされています。
合の通報を適切に行うことが求められています。
⑸
⑹
異常現象の通報
災害応急措置
石災法第23条には、異常現象の通報義務につ
特定事業者は、その特定事業所において出火
いて規定されています。この異常現象の発生時
石油等の漏えい等の異常な現象が発生した場合
表
施設省令に規定される防災規程に定めるべき主な事項
・防災管理者、副防災管理者及び防災要員の職務
・防災管理者、副防災管理者及び防災要員の職務代行者
・防災要員の配置及び防災資機材等の備付
・自衛防災組織の編成
・防災要員に対する防災教育の実施
・自衛防災組織の防災訓練の実施
・防災用の施設、設備、又は資機材等の整備状況及び整備計画
・特定防災施設等及び防災資機材等の点検
・異常現象等における事業所の事業実施の統括管理者の消防機関への通報
・災害発生時等の自衛防災組織の防災活動
・事業所の主要な施設、設備を明示した書類、図面の整備
・防災に関する業務を行う者の職務及び組織
・防災規程に違反した防災管理者、副防災管理者及び防災要員に対する措置
・主要な地震(東南海・南海地震など)に関する特措法により地震防災対策強化(推進)地域とされた
地域に存する事業所については、それら地震に関する避難の確保、防災訓練の実施
Safety & Tomorrow No.151 (2013.9) 58
など
⑴
には、自衛防災組織等に災害の発生又は拡大防
石油コンビナート等防災本部の設置
石災法では、石油コンビナート等特別防災区
止のために必要な措置を行わせなければならな
域が所在する都道府県には、石油コンビナート
いとされています。
この場合の「自衛防災組織等」とは、特定事
等防災本部を置くこととされており、後述の石
業所ごとに設置されている自衛防災組織のほ
油コンビナート等防災計画を作成するほか、災
か、先述の「共同防災組織」や「広域共同防災
害が発生した場合において、当該都道府県や関
組織」も含まれており、異常現象が発生した際
係機関等が実施する災害応急対策等の連絡調整
には、これらの防災組織が設置されている場合
などの事務を行うこととされています。
には、特定事業者は、共同防災組織や広域共同
当該本部は、都道府県知事を本部長とし、本部
防災組織にも必要な措置を行わせなければなら
員は関係する行政機関の長等により構成されます。
ないことになります。
⑵
石油コンビナート等防災計画の策定
上述の石油コンビナート等防災本部は、当該
都道府県内の特別防災区域に係る石油コンビ
その他石油コンビナート等特別防災区域に
おける防災体制
ナート等防災計画を作成する義務を有していま
前節のとおり、石災法において、特定事業者
す。また、作成するだけではなく、毎年この計
に対し災害の発生及び拡大の防止に関する様々
画に検討を加え必要に応じて修正する義務も
な義務が課されているところです。
負っています。
石油コンビナート等防災計画に定めるべき具
当然ながら、行政機関等についても、石油コ
ンビナート等特別防災区域における災害の発生
体的な事項は、表
に記載した事項に関するこ
及び拡大の防止等に関する義務が課されてお
ととされています。
り、そのうち主なものについて次に示します。
表
石油コンビナート等防災計画に定めるべき主な事項
・関係機関等の処理すべき事務又は業務の大綱
・関係機関等の防災に関する組織の整備、防災に関する事務等
・特定事業所の職員等の防災教育及び防災訓練
・特定事業者間の相互応援
・防災のための施設、設備等の設置、維持、備蓄、調達、輸送等
・災害の想定
・災害が発生した(又はそのおそれがある)場合の情報収集、伝達、広報
・自衛防災組織等の活動の基準
・石油コンビナート等現地防災本部の設置及びその業務の実施
・火事、爆発、石油等の漏えい等の事故による災害に対する応急措置の実施
・地震、津波等の異常な自然現象による災害に対する応急措置の実施
・災害時における避難、交通規制、警戒区域の設定等
・災害時における関係機関以外の地方公共団体等に対する応援要請
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Safety & Tomorrow No.151 (2013.9)
⑶
なお、高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)
消防法等における許可申請時の対応
石災法では、消防法の規定により市町村長が
第
種事業所に係る届出の受理、許可、命令等
を行った場合には、当該市町村長が都道府県知
の規定により都道府県知事が第 種事業所に係る
届出の受理、許可、命令等を行った場合には、市
町村長に対して通知する義務を有しております。
最後に、防災体制等についての関係性につい
事に対して報告する義務を有しております。
報告する必要のある許可等の行為は、石油コ
てまとめたものを図
に示します。
ンビナート等災害防止法施行令(昭和51年政令
レイアウト規制とは
第129号)に規定されていますが、消防法に関係
第
するものについては、次のとおりです。
種事業所のうち石油及び高圧ガスの両方
・製造所等の設置及び変更の許可
を貯蔵、取り扱う事業所については、石油コン
・製造所等の完成検査
ビナート等特別防災区域における新設事業所等
・基準維持命令
の施設地区の配置等に関する省令(昭和51年通
・使用停止命令
商産業省・自治省令第
・緊急使用停止命令
ることとなっています。
号)による規制を受け
具体的な規制の内容としては、事業所内の施
・無許可貯蔵等の危険物に対する措置命令
・製造所等の設置及び変更の許可の取り消し
設地区の区分に応じて、その面積、配置、通路及
・製造所等の使用制限
びその幅員等について制限がなされており、そ
・製造所等の廃止の届出の受理
の主な内容については表 のとおりとなります。
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図
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石油コンビナート等特別防災区域における防災体制(イメージ)
Safety & Tomorrow No.151 (2013.9) 60
表
施設地区の区分及び主なレイアウト規制の概要
施設地区の区分及び概要
主な規制の概要
製造施設地区

・地区の面積は原則80,000㎡以下・概ね7,000㎡毎に幅
主として、危険物等(可燃性ガス含む)を製
造、又は原料とする施設等が設置されている
地区

貯蔵施設地区

危険物等を貯蔵するための施設又はその制御
をするための施設等が設置されている地区

入出荷施設地区

・地区の面積は原則90,000㎡以下
・地区の外周全てが特定通路
・火気を使用する施設地区との地盤面の高低差をつける

・地区の外周長さの概ね / 以上が特定道路と接する
製造施設等に供給される不活性ガス、スチー
ム等を製造、又は製造施設等に供給、制御す
る施設等が設置されている地区

事務管理施設地区

mの通路で分割
・地区の外周全てが特定通路
・外周から内側に m( m)セットバック
・地区の外周長さの概ね / 以上が特定道路と接する
危険物等を船舶又は車両により受け入れ、送
り出す施設又はその制御をするための施設等
が設置されている地区
用役施設地区

員
主として、当該事業所の管理事務所、集会所、
駐車場等これらに類する施設が設置され
ている地区

・地区の外周長さの概ね / 以上が特定道路と接する
・公共道路に面する境界線に近接して配置
・特別防災区域の境界線に近接して配置
※特定道路は、主に次の項目を満足することとされている。
○施設地区の面積に応じて幅員が ∼12m以上
○両端が他の幅員 m以上の通路に接続
○ 以上の地点で公共道路に接続
○公共道路から入出荷施設地区又は事務管理施設地区への通常の通行に使われる道路は製造地区又は貯
蔵施設地区と接しない
近年、これらレイアウト規制に関して、消防
コンビナート災害の低減に向けたレイアウト規
庁では「石油コンビナート災害の低減に向けた
制の合理化に係る検討結果について」をご参照
レイアウト規制の合理化に係る検討会」を開催
下さい。
)を踏まえつつ、石油コンビナート等特
して検討が行われており、この検討結果(詳細
別防災区域における災害の発生及び拡大の防止
については、Safety & Tomorrow No.130「石油
に努めていく必要があります。
61
Safety & Tomorrow No.151 (2013.9)
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