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答申第642号

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答申第642号
別紙
諮問第829号
答
1
申
審査会の結論
「○○医師について東京都が行った薬事法違反等に関する調査・指導の内容が記載
された文書」について、その存否を明らかにしないで開示請求を拒否した決定は、妥当
である。
2
異議申立ての内容
(1)異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号。以下
「条例」という。)に基づき、異議申立人が行った「○○医師(登録番号:○○)に
ついて、東京都(福祉保健局健康安全部薬務課監視指導係)が行った薬事法違反等に
関する調査・指導の内容が記載された文書一切」の開示請求に対し、東京都知事が平
成24年10月25日付けで行った非開示決定について、その取消しを求めるというもので
ある。
(2)異議申立ての理由
異議申立書における異議申立人の主張を要約すると、以下のとおりである。
本件公文書は、〇〇医師が行った薬事法(昭和35年法律第145号)違反行為に関す
るものであるところ、○○医師は、異議申立人の名義を冒用して薬事法違反行為を
行ったものであり、同医師に対していかなる調査・指導がなされたかを確認すること
は、異議申立人の名誉、信用及び財産を保護するために必要不可欠である。
よって、本件公文書に記載された情報は、「人の生命、健康、生活又は財産を保護
するため、公にすることが必要であると認められる情報」
(条例7条2号ただし書ロ)
に該当するから、条例7条2号を理由とする本件非開示決定は違法である。
- 1 -
3
異議申立てに対する実施機関の説明要旨
理由説明書における実施機関の主張を要約すると、以下のとおりである。
(1)非開示(存否応答拒否)決定を行った理由
本件開示請求の対象となる公文書は、特定の個人に係る薬事法違反等に関する調
査・指導に関するものであり、開示請求に応じ本件対象公文書の存否を明らかにす
ることは、特定の個人に係る薬事法違反等に関する調査・指導の実施の有無を明ら
かにする結果となる。このことは、条例7条2号に該当する非開示情報を開示する
こととなるため、条例10条の規定によりその存否を明らかにしないで開示請求を拒
否した。
(2)条例7条2号ただし書ロの該当性について
特定の個人に係る薬事法違反等に関する調査・指導の実施の有無を明らかにするこ
とは、特定の個人が識別され、また、特定の個人の信用、社会的評価等が損なわれる
と認められるため、条例7条2号に該当する。
また、条例7条2号ただし書ロの適用除外規定は、公にすることにより保護される
利益が、プライバシーを中心とする個人の正当な権利利益に優越する場合に、人の生
命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることがより必要であると認められ
る情報については、開示する旨定めたものである。
本件対象公文書の存否を答えることで明らかになる情報は、特定の個人に係る薬
事法違反等に関する調査・指導の実施の有無であり、人の生命、健康、生活又は財
産を保護するために公にすることが必要である情報とは認められない。よって、条
例7条2号ただし書に該当しない。
4
審査会の判断
(1)審議の経過
審査会は、本件異議申立てについて、以下のように審議した。
- 2 -
年
月
日
審
議
経
平成25年
1月23日
諮問
平成25年
9月
6日
実施機関から理由説明書収受
平成25年
9月25日
審議(第142回第二部会)
平成25年10月17日
審議(第143回第二部会)
過
(2)審査会の判断
審査会は、実施機関及び異議申立人の主張を具体的に検討した結果、以下のように
判断する。
ア
本件請求文書について
本件異議申立てに係る開示請求は、「○○医師(登録番号:○○)について、東
京都(福祉保健局健康安全部薬務課監視指導係)が行った薬事法違反等に関する調
査・指導の内容が記載された文書一切」(以下「本件請求文書」という。)の開示を
求めるものである。
実施機関は、本件請求文書の存否を答えることは、条例7条2号に規定する非開
示情報を開示することとなるとして、条例10条の規定に基づき、その存否を明らか
にしないで、本件開示請求を拒否した。
イ
薬事監視指導について
薬事監視指導については、都道府県、保健所設置市又は特別区が実施する薬事
監視指導業務の統一的運営とその効率的な実施を図ることを目的に策定された薬
事監視指導要領(平成 19 年 3 月 30 日付薬食発第 0330020 号厚生労働省医薬食品
局長通知。以下「要領」という。)に基づき実施されており、要領には、薬事法
に基づく監督権限の行使に関する監視指導方針及び監視指導事項並びに薬事法令
違反に対する措置等が定められている。
- 3 -
ウ
条例の定めについて
条例7条2号本文は、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関す
る情報を除く。)で特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合す
ることにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又
は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権
利利益を害するおそれがあるもの」を非開示情報として規定している。また、同
号ただし書において、「イ
法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は
公にすることが予定されている情報」、「ロ
人の生命、健康、生活又は財産を
保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」、「ハ
当該個人
が公務員等…である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報である
ときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」
のいずれかに該当する情報については、同号本文に該当するものであっても開示
しなければならない旨規定している。
条例 10 条は、「開示請求に対し、当該開示請求に係る公文書が存在しているか
否かを答えるだけで、非開示情報を開示することとなるときは、実施機関は、当
該公文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。」
と規定している。
エ
条例7条2号及び 10 条該当性について
本件開示請求は、特定の医師について、東京都(福祉保健局健康安全部薬務課
監視指導係)が行った薬事法違反等に関する調査・指導の内容が記載された文書一
切の開示を求めるものであり、本件請求文書の存否を明らかにすることにより、
特定の医師に係る薬事法違反等に関する調査・指導の実施の有無(以下「本件存
否情報」という。)を答えることと同様の結果が生じることとなると認められる。
そこで、本件存否情報が、条例7条2号に規定する非開示情報に該当するか否
かについて検討すると、本件は、個人として薬事法違反等を問われた文書の開示
を求めるものであることから、本件存否情報は、個人に関する情報で特定の個人
を識別することができる情報であり、条例7条2号本文に該当する。
次に、同号ただし書の該当性について検討する。
実施機関の説明によると、薬事法違反に関する公表に係る規定はなく、薬事法
- 4 -
に違反する事実があった場合、都民の健康被害防止の観点から事実を公表する場
合があるが、公表事項は製品の内容に係るものであり、違反者名は公表せず、あ
くまでも製品の危険性を都民に周知するために行っているとのことである。
したがって、本件存否情報は、法令等の規定により又は慣行として公にされ、
又は公にすることが予定されている情報であるとは認められないことから、同号
ただし書イに該当しない。
次に、同号ただし書ロの該当性を検討する。同号ただし書ロは、プライバシー
を中心とする個人の正当な権利利益は十分に保護されるべきであるが、公にする
ことにより保護される利益がそれに優越する場合には、例外的に当該情報を開示
すべきことを定めたものであって、同号ただし書ロに規定する「人の生命、健康、
生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」と
は、人の生命等を保護するため、当該情報を開示請求者以外の者にも広く公開す
ることが必要であると認められる情報をいうものと解され、本件存否情報につい
ては、これを明らかにする公益上の理由があると判断するまでの特段の事情は認
められないことから、同号ただし書ロに該当しない。
また、本件存否情報は、その内容及び性質から同号ただし書ハにも該当しない。
以上のことから、本件請求文書の存否を明らかにすると、条例7条2号に該当
する非開示情報を開示することとなると認められるため、条例 10 条の規定に基づ
き本件開示請求を拒否した実施機関の決定は、妥当である。
よって、「1
審査会の結論」のとおり判断する。
(答申に関与した委員の氏名)
横山
洋吉、中村
晶子、乳井
昌史、山田
- 5 -
洋
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