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製品開発における技術者マーケティングの有効性

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製品開発における技術者マーケティングの有効性
2F
製品開発における 技術者マーケティンバの 有効,p生
4
Ⅰ
0
岩間
仁 ,近藤正幸 (横 国人 )
1 . はじめに
製品開発におけるマーケティンバ 部門と技術部門の 役割分担は、 市場姉一 ズ の把握は て
ば
一
ケティン ヴ 部門が行い、 収集した市場ニーズを 技術部門に伝達して、 技術部門がその 二
一ズを 製品化する、 というのがもっとも 一般的な姿とみなされている
(Souder l992) 。
それに対して、 研究者や技術者自身による 直接的な市場調査が 有効であ るとする指摘が
し
し ば なされる (Hame@ and Prahalad ]g91;
eonard ヰ arton 1992; von Hippe@ 1994
Moenaert et al. 1994; Workman, Ⅱ. 1995 ほか ) 。 そうした、 技術者が主な 役割とは別に
」
(1994)
顧客と直に接することで 新製品開発を 有効ならしめる 行動を、 Moenaertetal.
役割フレキシビリティ と 名づけている。
は
しかし、 そのような行動がなぜ 有効なのかについては、 突っ込んだ分析がなされていな
い 。 そこで本稿では、 研究や開発設計など 製品開発に携わる 研究者や技術者
術者と p平ぷ ) が 、 顧客と直に接することにより
( 合わせて
技
自らニーズの 調査をすることを 技術者 マ一
ケティン ヴと 定義し、 技術者マーケティン ヴ がマーケティンバ ( 以下営業と呼ぶ ) 部門に
よる市場調査 ( 営業マーケティン グと 呼ぶ ) に比べてなぜ 有効なのか、 またその有効な パ
ターンについて 考察する。
2. 技術者マーケティンバの 具体的事例
まず、 技術者マーケティン
(1
グ が実践された
具体例をいく っか 列挙する。
初の日本語ワープロ 開発の中心的役割を 果たした東芝の 森健一は、 研究所員だった
ころ顧客であ る毎日新聞社に 出掛けて新聞社のニーズに 当たるなかから、 ワーフロに対す
る ニーズを体感した
( 森 健一・八木橋 利昭 (1989) ワープコ誕生日丸善 ) 。
(2) トョタ が 2003 年に発売した 小型ミニバン「シエンタ」のチーフエンジニア 永井正之
)
了
は、
その開発に当たり 実際にショッピンバモールに 出かけ主婦の 声を直接聞き 取って商品
に 反映し、 「これからの 技術部門は、 営業部門が吸い 上げた意見を 聞いているだけでは ダ
メ
」と述べている
(
日刊工業新聞 2003 年Ⅱ同
5
日「強さの秘密 :
トヨタ」
)
。
(3) キヤノンが 2003 年に発売した 小型のモバイルプリンター「 PlXUS50 Ⅱの開発責任者
だった井上博之は、 販売店の店頭で 顧客の生の声に 触れるなかから、 コンパクトモバイル
機へのニーズの 機が熟したことを 感じたという (PREJlDEN7 2003 年 8 月 4 日号 pp.71) 。
(4) ホンダが 2001 年に発売したフィットの 開発責任者だった 松本宣之は、 小型車の先進
地 であ る欧州の小型車ユーザー や モーターショーを 訪ね、 小型車でも居心地重視へとニ 一
ズが 変化していると 直感し、 燃料タンクを 前の座席上に 埋め込み室内空間を 広げたフィッ
トを 開発した
( 朝日新聞
20 ㎝ 年り 同 30 日「ひと」 ) 。
(5) Leonard-Barton(1992) は、 技術者マーケティン グ の営業マーケティン
一 606
一
グ に対する
優
位 性を以下のように 紹介している。
ある
LAN
メーカ一では、 営業部門が重要な 二一 ズに
何も結果につなげられなかったのに 対し、 技術者が顧客から
に 接することですぐ 実現できた。 また, HP のプリンター・プロジェクトで、
気づきながらも
直接その情報
営業部門は プ
ロトタイフの 顧客反応から 2 「の重要な改善点を 指摘したが実現したのは 5 つのみだった
のに対し、 技術者が直接顧客から 聴取したところ 残りの 1 6 項目すべてが 実現された。
総じて技術者マーケティンバが 有効なのは、
改良・改善型の 製品ではなく 新分野製品や
革新的製品の 開発の場合であ り (Hamel andPrahalad lg91人 特に市場ニーズが 暖昧 ・不明
確な 潜在ニーズ状態にあ るような場合に 有効 (vonHippel l990) 、 と指摘されている。 つ
まり、 ニーズが暗黙 知 状態にあ るときに特に 有効と い える。
3. 技術者マーケティン グ がなぜ有効か
(1
)
コミュニケーション
,インピーダンスとしての営業
顧客のニーズを 製品開発者であ
るという見方があ
スの 問題であ る
る
る技術者に伝えるのに、
営業はむしろその 阻害要因にな
(Workman,Ⅱ. 1995) 。 いわゆるコミュニケーション
,インピーダン
(図 1 ) 0
図「
コミュニケーション・インピーダンスとしての 営業
営業
技術者
顧客
Dougherty(l992)は、 企業の製品イノベーションにおいて、
技術部門と営業部門のように
者の間に営業が
専門分野が異なる 部門間で協働する
場合、
情報に対するそれぞれの
解釈スキーム
( 思考 世
障害になるという。 顧客と技術
入ることで,コミュニケーションの 障害が加算された 形で発生するこ と
界や組織ルーチンの 違い ) が 組織間コミュニケーションの
|
なりかれないのであ る。
ただし 図 「に示すように 営業は顧客との 接点が多いだけに、 顧客と技術者とを 適切なタ
イミングで繋ぐというニーズの 把握に際して 重要な役割を 担っていることに 注意を要する。
(2) 暗黙 知 としてのニーズの 体感
特にニーズが 潜在ニーズのような 暗黙 知 段階にあ
るときは、
営業が仮に暗黙 知 としての
三一 ズを 把握したとしても、 暗黙 知 ゆえにそれを 技術者に伝えるのは 容易ではない。 その
点で、
肌で感じ取る、 すなわち体感す
可能になる。 顧客が言
葉 にしにくい暗黙 知 としてのニーズは、 顧客の発する 言葉 ( 形式 知 ) 以外の、 たとえば表
情・しぐさ・ 声の調子などといった 非言語コミュニケーションにより、
あ るいは顧客の 行
動や顧客の置かれている 周囲環境の観察などによって 体感することが 可能なのであ る。
Daft&Lengel(1986)は、 多義的で暗黙の 前提を含むような 知識の移転は、 手類などによ
っては難しく、 対面コミュニケーションが 有効と指摘している。 同様なことを、 本田技術
研究所の大塚紀元は、 開発当事者と 顧客との直接対話としての「 ス シバー・アナロジー」
技術者が直に 顧客に接して 暗黙 知 レベルのニーズを
ることに ょ
り、
それを製品の 開発設計にダイレクトに 生かすことが
一 607
一
(1999 年 8 月 18 日ケーススタディ 研究会講演会 ) 。
ニーズの体感が 製品の開発設計に 役立っのは以下の 事由による。 技術者は製品企画仕様
に 基づいて設計を 進めるのだが、 製品企画事には 設計に必要な 情報のすべてが 記載されて
として紹介している
いるわけではなく、 その行間を読むという 感じで設計を 行っている。 逆に、 企画段階では
仕様をあ まり細かく決めすぎないことが 望ましい場合や、 設計してみないと 仕様が決めら
れないというような 場合があ って,設計を走らせながら 柔軟に仕様を 考え決めるのが 望ま
しい、 ということがあ る。 そのような場合に、 技術者マーケティン グ により技術者自身が
企画 害 に盛り込まれていないような 暗黙 知 べ ー スの体感ニーズが 役立っのであ る。
C3) 専門知識によるニーズへの 気 づきと深堀り ( サーチライト・メタファ 一 )
技術者がニーズに 直に接する際に、 技術者のもつ 専門知識がニーズへの 気 づきやその 掘
下げを可能にする。 たとえば、 医者はレントゲン 写真を見て、 素人には単なる 白い影 と
しか見えないものを、 腫瘍と判断することができるよ う に。 また、 ニーズの深堀りをする
のにアクティブ・リスニンバ 法 という深層心理を 探る手法が応用されることがあ るが、 こ
り
実践面からの 指摘もあ る ( 岩間 旭 97) 0
コンセプトを 暗闇のなかにあ るものを照らし 出すサーチライトとする Parsons(1949) の
比倫 に 倣えば、 専門知識としての 技術というサーチライトをもった 技術者が、 暗闇のなか
れを実施するときに 技術知識が役立っとする
にあ る潜在ニーズを 照らし出すことで、 その存在に気づき 易い立場にあ る。 それに対して、
一般に技術知識の 乏しい営業による 市場調査は、 暗闇のなかで 光源を持たずにニーズを 手
探りするようなものといえる。
4.
技術者マーケティン グ が有効なパターン
:
情報の粘着性概念の 適用
技術者マーケティンバが 有効性を示すパターンを、
von Hippel(1994) による情報の 粘着
性の概念を使って 分析する。 情報の粘着性は、 あ る情報を、 情報を求める 者が利用可能な
形で、 特定の場所へ 移転するのに 必要な増分コストとして 定義され、 このコストが 低いか
高いかで、 情報の粘着性がそれぞれ 低いまたは高いということになる。
暗黙 知 状態にあ るようなニーズ と 技術に対する 情報の粘着性の 高低をイメージ 的に図 2
に 示す
( 実線 )
。
ニーズ・技術に 対する情報の 粘着性
業
企
図 2
業
営
律ィ
者
〒
技
図 中 右端
一 608
@
いと考えられる。
を 表わす。 ニーズに対する 情報
近い立場にいるだけに、
技術者
、 技術者にとっては 低く、 顧客
結
。 一方、 技術に対す る 情報
言容 性で
い古由Ⅱ
も低く、 企業側は高 ぃが営
さには
の 面積は情報の 粘着 性 の 相
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2 で、 丸 や
顧客
ぶ パスは、 顧客内でニーズ およ
び 技術の両方で
ラユーザ一
似の関係
情報の粘着性が 低い場合、 ユーザー自身がイノベーションを 起こせるとい
イノベーション (vonHippel 20 ㎝ ) を示している。 図中の大実線はこれと 類
( 三一 ズと
技術の情報の 粘着性が双方低いパスの 連結 ) を示している。 これは、
ニーズに対する 情報の粘着性の 低 い 顧客と技術に 対する情報の 粘着性の低
接の関係をもつことにより、
い 技術者が
、 直
高い、
イノベーションを 起こす可能性が 他の関係の場合よりも
すなわち技術者マーケティンバが 有効なパターンであ ることを示唆する。
一方、図 2 で点線の楕円で 示すよ う に営業のニーズに 対する情報の 粘着性が低い 場合 ( 改
良 ・改善型の製品など ) 、 点 直線で示すような 営業経由のパス ( 営業マーケティンバ ) が
有効になるのであ る。
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