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色、応用化学、昆虫

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色、応用化学、昆虫
関心ワード
バイオ・化学部
応用化学科
講義タイトル
色、応用化学、昆虫
昆虫から発色を学ぶ
バイオ・化学部
応用バイオ学科
講義タイトル
色素がなくても美しい色が出る
医薬品、カビ、微生物
「カビ」は未知の能力を秘めたスーパーバイオマシン
無限の可能性をもつカビの物質製造能力
昆虫、特にチョウは、派手な色の羽を持っています。
微生物のなかで、飛び抜けて高等な生物はカビで
その代表格として
「モルフォチョウ」
というチョウがい
す。
ひと口に微生物といっても細菌や酵母、放線菌な
ますが、
そのチョウの羽には色素がありません。
では、
どさまざまな種類があります。
そのなかでカビは、
もっ
どうやって色を出しているのでしょうか。
これは実は、
ている遺伝子の数が飛び抜けて多いのです。
そのため
形で色を出しているのです。
また、
「タマムシ」
も同じく
カビは、多様な酵素反応を起こせます。
このカビの酵
色素を持たず形で色を出しています。
素反応を応用すれば、
いろいろな物質を作ることがで
形で色を出すというのは次のようなことです。虹は、
きるのです。
空気中の水滴によって光が屈折・反射して七色に見
その一例が抗生物質で、
抗生物質は放線菌を使って
えます。空気中の水滴には色素がありません。水滴が
も作ることができますが、
カビのほうが多様性がありま
プリズムの役目をし、入射した光線が波長ごとに別々
す。
現時点でも未知のカビはたくさんあり、
その可能性
に分離・反射して、
それぞれの色を出しているのです。
はほぼ無限大に広がっていると言ってもいいでしょう。
「モルフォチョウ」
の場合は、青の波長の光だけを反射
制御の難しさがカビの難点
するような形状を羽の中に持っているため、鮮やかな
青色を出しているのです。
自然分解が可能な高分子化合物を利用すれば、人に
医薬品製造をはじめとして、
あらゆる工業分野に応
種類程度見つかっています。なかには非常に製造能
応用化学の技術で色を表現する
も環境にもやさしいものができあがります。現在使用
用可能なカビには大きな期待が寄せられています。
し
力の高いカビも見つかっており、
これを活用すれば医
されている色素には人体や環境に有害なものもある
かし、
カビには一つ、重大な欠点があります。
それは培
薬品の生産能力が従来の10倍から100倍程度まで
現在はまだ開発途中ですが、色素を使わずさまざ
ので、
その対策として画期的なものとなるでしょう。
養のコントロールや形態の制御が難しいことです。
高まると期待されています。
まな色を表現する方法が、応用化学の分野で研究さ
実は、チョウやタマムシの反射構造は、
いろいろな
思った通りの形態にカビを培養するのは、簡単なこと
また、
同じ一つのカビから多様な物質が作られる可
れています。
まず反射形状の構造を研究しています
タンパク質で作られている可能性が高いのです。
その
ではありません。そこで開発されたのが新型の「バイ
能性もわかってきました。その詳しいメカニズムにつ
が、構造が分かれば、
その発色方法を別のもので再現
形をつくるための遺伝子情報を利用すれば、
バイオ技
オリアクター」、
すなわち生体触媒を使って生化学反
いては研究が進められているところです。ほかにも植
することが可能になります。応用化学の研究者たち
術が利用できます。人間がわざわざ高分子化合物を
応や発酵生産を行う装置です。
このバイオリアクター
物に寄生するカビなら、
その植物の遺伝子を取り込ん
は、
この形状構造を高分子化合物(分子量の非常に
作らなくても、微生物にそのタンパク質を作らせるこ
を使って抗生物質や医薬品の原料を作るシステムの
で変化することもわかっています。
カビには、未知の能
大きな分子)
で作り出そうと考えています。
とができるのです。
このように応用化学の分野では、
研究が進められています。
力が数多く秘められており、
いずれ画期的な抗がん剤
これが成功すれば、色素を使うことなくさまざまな
昆虫からさまざまなことを学んでいます。
色を表現することができるようになります。今までに
なかった色の絵の具ができるかもしれません。
また、
バイオ・化学部 応用化学科 教授
大澤 敏 先生
先生からのメッセージ
カビを使った画期的な新薬の可能性も
今のところ、抗生物質を作るのに有望なカビが30
興味が湧いてきたら
応用化学が
向いているかも!
私が大学で担当しているのは、応用化学です。
その中でも、バイオ技術と関連が深い分野を担当しています。
自然に
存在する植物や動物から人間にとって有用な成分を発見し、新素材の合成や生体材料の開発をしています。学生た
ちには、
いつも
「自分で考えて実際にやってみましょう」
と言っています。成功する場合もあれば、失敗する場合もあり
ます。
でも、それがおもしろいのです。研究に限らず、
いつも成功していたら何だっておもしろくないのではないかと思
えるのです。
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関心ワード
バイオ・化学部 応用バイオ学科 教授
小田 忍 先生
先生からのメッセージ
の原料を作ることも可能と期待されているのです。
さ
らには、
カビが作った医薬品原料を酵素や有機化学
反応で改良する研究も進められています。
興味が湧いてきたら
応用バイオ学が
向いているかも!
意外かもしれませんが、実はバイオや化学の実験は半分が体力勝負です。実験器具を洗うのにもとても時間がか
かります。体が丈夫でガッツがあることは、科学を学ぶための大切な条件です。
しかも実験にはミリ単位の精度が必
要です。手先が器用であること、一つひとつの作業をていねいに進められることも重要なポイントです。
これら身体面
の条件に加えて、
とにかく知的好奇心が旺盛で、質問好きであることも求められます。教師を質問攻めにするぐらいの
意気込みで、可能な限りたくさん疑問をもちましょう。
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