Comments
Description
Transcript
デザイン・ロジック分離方式によるWebサイト構築
デザイン・ロジック分離方式によるWebサイト構築 類似したビジネスモデルがしのぎを削る中で、Webサイトに求められるデザイン・ 機能がより高度になる一方、Webサイト構築の短期化を求める声も高まっている。本 稿では、高度なデザインと機能を実装したWebサイトを短期間で構築することを可能 にした、デザイン・ロジック分離方式によるWebサイト構築について述べる。 システム構築に求められる条件 ネットインフォメーションサーバー)+ASP ビジネスのスピードアップを実現するため (アクティブサーバーページス)を採用する に、Webサイト構築の高速化が求められてい 一方、高速開発を実現するために、画面デザ る。その一方、Webサイトのコンテンツに実 インに対してロジックを組み込む手法ではな 装するデザインや機能については、一段と高 く、アプリケーションロジックと画面デザイ 度なレベルが求められるようになっている。 ンの検討・開発を同時並行で進め、後にそれ それらを実現するために、デザイン・ロジ ック分離方式による開発方法が考えられる。 らを統合する分離開発方式を採用した。 この方式を採ることで、サイト構築のスピ この方式を採用し、NRI(野村総合研究所) ードアップに加えて、プログラムの部品化に では、ローン商品比較のビジネスモデルの評 よる再利用性の向上、デザイン・機能変更時 価と検証を目的としたパイロットシステムの の相互干渉によるデグレードの阻止、などの 構築を行った。機能的にも高度であり、6 カ メリットの享受も期待された。 月以上の開発期間が必要とされたシステムを 分離開発方式の採用により、画面構成は画 約 4 カ月間で構築することが求められた。納 面デザイン部(HTMLにより画面デザイン 期などの厳しい条件をクリアしたうえで、こ を表現)とロジック部(ページごとに変化す のパイロットシステムは、当初の目標を上回 るデータを供給)に分けられ、両者のインタ る機能レベルを達成したため、そのまま本番 フェースはASPの変数を利用する形式である。 システムとしてリリースされた。 ①画面デザイン部ソース 画面デザイン用のファイル。データベース デザイン・ロジック分離方式の採用 期間的に非常に厳しかったにもかかわらず、 (DB)の内容など画面上の可変表示は、ASP 変数を使用してロジック部ソースから行う。 サイト構築に着手した時点でデザイン・機能 ②ロジック部ソース ともに概要設計が十分に固まっていなかった。 DBとのインタフェース、計算、判定など このため、構築に当たっては、プラットフォ アプリケーションロジックを記述する。ファ ームとして技術的に成熟したIIS(インター イル自体はデザイン画面ソースに組み込まれ 4 システム・マンスリー 2000年12月 1 つの画面を構成する。 分離開発方式では、 画面デザインを完成さ せる過程で、デザイナ デザイン開発 ロジック開発 【静的な画面】 デザイン要素記述 返済額=ダミー値 金融機関名=ダミー値 【ロジック部ソース】 部品A……返済額計算部品 部品B……金融機関情報取得部品 *統合作業の目印コメント 返済額=変数1 (部品Aを計算) 金融機関名=変数2 (部品Bで取得) 適宜コーディネ ーターが調整 ーの作成した「静的な 画面」に「ロジック部 統合作業 統合作業時 の目印とな るコメント を挿入 ソース」からの変数表 示を組み込む必要があ 【画面デザインソース】 る。この統合作業を円 ロジック部ソース 部品A、部品B…… デザイン要素記述 返済額=変数1が表示される 金融機関名=変数2が表示される 滑に行うことができる かどうかが、この方式 の最も重要な点である。 ロジックの部品化により 統合作業時のソースコー ドの記述を削減 図1 デザイン・ロジック分離開発と統合のイメージ 本サイトの構築では、 NRI(野村総合研究所)のもつ業務的・技術 発できたことで、開発が計画どおりに進んだ。 的なノウハウを活用し、以下のような基準・ そのおかげで開発のピーク時にデザインの全 開発方針・体制に基づいて、開発が進められ 面見直しというハプニングがあったにもかか た。 わらず、当初の予定どおりの期間で開発が完 ①統合作業時の目印となるコメントの記述 了した。さらに、メンテナンス時の修正範 形式・挿入位置について標準化仕様を策 囲・影響が限定され、アプリケーションの再 定し、ロジック部ソースに埋め込む。 利用性が高まるなど、開発スピードの高速化 ②ロジック部ソースで共通化できる部分を 極力部品化し、統合作業を行う際のソー 以外のメリットも当初の期待どおりであった。 今回の手法は「大規模なものは結合度の低 スコードの記述を最小限におさえる。 い部品に分解して管理すべき」という今日の ③デザイン・ロジック双方をコントロール システム開発の常識に合致している。「分離 するコーディネーターを置き、統合作業 開発して統合する」方式を採らない場合でも に支障がでないよう、アプリケーション 「わかりやすいインタフェースでデザイン・ コードの記述方式などの調整を行った。 ロジックを分離しWebサイトを構築する」 という手法には、今後も取り組んでいくだけ 開発手法に対する評価 の価値があると言えるだろう。 画面デザインとロジックをほぼ独立して開 システム・マンスリー 2000年12月 Copyright (C) 2000 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. (野村総合研究所 成田剛史) 5