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カンボジア-雇用労働事情のPDFファイル

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カンボジア-雇用労働事情のPDFファイル
国名:カンボジア(調査大項目 2:雇用労働事情)
作成年月日:2008 年 3 月 5 日
1990 年代以降、カンボジアは、社会経済生産性の向上及び貧困の低減に関して、目覚ま
しい進展を遂げてきた。しかしながら、農業及びサービス分野の生産性の向上は依然と
して鈍く、大多数のカンボジア人労働者の所得の低迷を招いている。経済成長に関して
は、衣料及び観光といった狭い分野に焦点が当てられてきた。
カンボジアの若年世代人口については、2004 年には人口の 39%が 15 歳未満だったが、
これは 1998 年の 43%に比べ減少している。2004 年カンボジア国勢調査では、2004 年
までに中間層に占める子供と老人の従属人口比率は 74%になると示唆している。経済活
動人口の統計に関しては、国際労働機関の 2007 年版アジアの労働及び社会動向に関す
る報告が、2000 年から 2006 年の間に、カンボジアは 52.8%という爆発的ともいえる労
働力の顕著な成長を遂げていることを明らかにしている。
2.1
労働市場の状況
2.1.1 過去 3 年間の労働力人口、就業者数、失業者数及び失業率
経済活動人口に関する統計作成のための調査がいくつか実施されている。例えば、
1993/94 年、1996 年、1997 年、1999 年及び 2004 年版カンボジア社会経済調
査、並びに 2000 年及び 2001 年労働力調査などがある。就業者数の推計につい
ては長年議論がなされているが、こうした就業者数の推計によれば、1993 年に
おける総就業者数は 390 万人となる。農業分野が就業者の 81%を占め、サービ
ス分野が 16%を占めている。2004 年には、総就業者数は 750 万人にまで増加
し、農業分野が約 60.3%を占め、工業分野が 12.5%、及びサービス分野が 27.2%
となっている。
2004 年版カンボジア社会経済調査(CSES2004)によれば、カンボジアでは、
10 歳以上人口 1,010 万人の内、750 万人が労働力となっている。労働力の中で
は男性の数は女性の数より若干多く、男性が 380 万人、女性は 370 万人となっ
ている。しかし、10 歳以上の人口の中に占める割合では、男性(480 万人)は
女性(530 万人)よりも少ない。
表 2-1 は、2004 年のカンボジアにおける 10 歳以上人口の就労率を、地域別、
性別にまとめたものである。
表 2-1
カンボジア
10 歳以上人口の地域別就労率
プノンペン
他の都市部
郡部
合計
74.6%
60.8%
69.5%
77.0%
男性
78.9%
65.1%
73.1%
81.4%
女性
70.7%
56.7%
66.0%
73.0%
1
国名:カンボジア(調査大項目 2:雇用労働事情)
作成年月日:2008 年 3 月 5 日
*出典:国家統計局:カンボジア社会経済調査, 2004 年
2000 年及び 2001 年の労働力調査では、
「失業者」の定義を「調査週間中、仕事
をしておらず職を持たないが、就業に備えていて職を探している労働者」として
いる。失業率は、失業者人口を労働力人口で割って求めている。
2000 年及び 2001 年の労働力調査では、カンボジアの 2001 年の失業率はわずか
1.8%であり、2000 年の 2.5%よりも低下している。これは、労働力人口のうち
の 11 万 5,800 人の男女が失業状態にあることを表している。表 2-2 は、2000
年と 2001 年のカンボジアにおける 10 歳以上人口の失業率を居住地別、性別に
示したものである。
表 2-2
カンボジア
居住地
年
10 歳以上人口の居住地別失業率 2000~2001 年(%)
合計
男性
プノンペン
女性
合計
男性
他の都市部
女性
合計
男性
郡部
女性
合計
男性
女性
2000
2.5
2.1
2.8
2.1
2.5
1.7
3.0
2.4
3.6
2.5
2.1
2.8
2001
1.8
1.5
2.2
1.8
1.4
2.2
2.0
1.9
2.1
1.8
1.4
2.2
*出典:国家統計局: 労働力調査,2000 年 11 月及び 2001 年 11 月
2004 年のデータでは、労働力人口の約 99.2%が雇用されているか、調査週間中
に最低 1 時間以上の仕事をしている結果となっている。労働力人口のわずか
0.8%のものだけが失業の状態にあり、求職活動を行っている。特に郡部の世帯
における就労年齢者は、農業生産や農外活動において、通常最低 1 時間以上の
仕事をするという傾向がある。都市部で生活するものは、賃金、所得、家計収入
のために 1 時間だけの仕事を見つけるのもより困難なようである。また、カン
ボジアでは女性の失業率が男性を上回っている。
以下の表 2-3 は、2004 年のカンボジアにおける 10 歳以上人口の失業率を、居
住地別、性別に示している。
表 2-3
合計
失業率
10 歳以上人口の居住地別失業率 2004 年(%)
男性
0.8
女性
0.8
0.9
プノンペン
他の都市部
3.3
1.3
郡部
0.5
*出典:国家統計局:カンボジア社会経済調査, 2004 年
2.1.2 国際標準産業分類(ISIC 第 3 版)による業種別労働者数
2001 年版労働力調査においては、10 歳以上の労働力人口は、以下の表 2-4 のと
おり ISIC 第 3 版に基づいて産業別に分類されている。
2
国名:カンボジア(調査大項目 2:雇用労働事情)
作成年月日:2008 年 3 月 5 日
表 2-4
10 歳以上の産業別労働力人口
(単位:人)
産
業
就業者数
4,123,188
農業、狩猟及び林業
261,062
漁業
13,525
鉱業及び採石業
544,832
製造業
3,795
電気、ガス及び水道供給業
94,077
建設業
卸売及び小売業、自動車・バイク・日用品修理業
644,307
10,412
宿泊業及び飲食店
169,307
運輸業、倉庫業及び情報通信業
6,119
金融仲介業
16,374
不動産業、賃貸業及び業務活動
149,382
公務、防衛、社会保障
教育業
88,446
医療及び社会福祉事業
24,810
その他の団体、公的及び私的サービス活動
55,431
従業員を雇用する家庭
28,019
海外組織及び団体
10,243
合
6,243,329
計
*出典:国家統計局: 労働力調査,2001 年 11 月
2.1.3 新規学卒者の就職状況
表 2-5 に、2004 年のカンボジアにおける経済活動人口を、教育水準別及び年齢
別に示す。
3
国名:カンボジア(調査大項目 2:雇用労働事情)
作成年月日:2008 年 3 月 5 日
図表 2-5 教育水準別及び年齢別経済活動人口割合(2004 年)
(単位:%、人)
教育なし
年齢層
または
僅少
初等教育
未修了
修了
中等学校
高等学校
高等学校
レベル
レベル
レベル超
合計
10-14
11.3
78.1
10.4
0.2
-
-
100
15-19
13.4
42.2
34.5
8.9
1.0
0.1
100
20-24
18.9
36.3
25.4
11.6
5.7
2.0
100
25-29
23.7
37.0
22.4
9.1
5.3
2.6
100
30-34
21.9
34.0
26.6
8.7
6.0
2.8
100
35-39
26.6
37.5
22.0
7.9
3.9
2.0
100
40-44
32.3
43.0
15.8
6.2
1.3
1.3
100
45-49
31.9
40.7
14.3
9.2
2.6
1.3
100
50-54
32.9
39.1
16.6
8.4
1.8
1.1
100
55-59
37.2
34.1
16.7
9.0
2.3
0.7
100
60-64
49.8
26.2
15.5
6.6
1.8
0.1
100
65+
64.0
22.8
8.2
4.3
0.4
0.2
100
23.7
42.4
21.8
7.8
3.0
1.3
100
合計人口 1,773,000 3,177,000 1,635,000
586,000
226,000
合計
99,000 7,496,000
*出典:国家統計局:カンボジア社会経済調査, 2004 年
2004 年のデータでは、経済活動人口のうち、約 90 万人が中等学校、高等学校、
高等学校超または高等教育を受けており、労働力人口の 12%に相当することを
示している。
2.1.4 自発的離職者の現状
調査中
2.1.5 職種別技能労働者数(項目ごとに労働力調査及びその要約を掲載する)
以下の表 2-6 は、2003~2004 年版 CSES に基づいて、10 歳以上人口の就業率
を、職業別、性別に示したものである。
4
国名:カンボジア(調査大項目 2:雇用労働事情)
作成年月日:2008 年 3 月 5 日
表 2-6
10 歳以上人口の職業別性別就業率(%)
カンボジア
主な職業
合計
男性
女性
1. 国会議員及び政府高官
0.7
1.2
0.2
2. 企業経営者
0.1
0.1
0.1
3. 企業管理職
0.1
0.2
0.1
0
0
0
5. 生命科学及び医療従事者
0.3
0.4
0.2
6. 教師
1.4
1.8
1
7. その他専門家
1.1
1.6
0.6
8. 物理及び科学技術の補助的専門家
0
0.1
0
9. 生命科学及び医療の補助的専門家
0
0
0
10. 教師の補助的専門家
-
-
-
0.4
0.5
0.3
0
0
0
13. 接客サービス員
0.1
0.1
0.2
14. 私的及び保安サービス従事者
1.3
1.6
0.9
15. モデル、販売員、実地宣伝員
11.1
6.4
15.8
16. 畑作/野菜/混作作物の生産者:運営者,主に市場用
0.2
0.2
0.1
17. 畑作/野菜/混作作物の生産者:運営者,主に自給用
22.6
26.4
18.8
3.2
2.8
3.7
15.4
10.7
20.3
20. 樹木及び灌木作物の生産者:運営者,主に市場用
0.8
0.9
0.6
21. 樹木及び灌木作物の生産者:運営者,主に自給用
0
0
0
22. 樹木及び灌木作物の生産者:熟練作業員
-
-
-
23. 樹木及び灌木作物の生産者:補助的作業員
0
0
0
24. 植木屋、園芸作物及び苗木の生産者:運営者,主に市場用
0
0
0
25. 植木屋、園芸作物及び苗木の生産者:運営者,主に自給用
0.1
0.1
0.1
26. 植木屋、園芸作物及び苗木の生産者:熟練作業員
0
0
-
27. 植木屋、園芸作物及び苗木の生産者:補助的作業員
-
-
-
28. 市場向動物育成者及び関連従事者
-
-
-
1.5
1
2
4. 物理、数学及び科学技術専門家
11. その他の補助的専門家
12. 事務員
18. 畑作/野菜/混作作物の生産者:熟練作業員
19. 畑作/野菜/混作作物の生産者:補助的作業員
29. 酪農/家畜/養鶏の生産者:運営者,主に市場用
5
国名:カンボジア(調査大項目 2:雇用労働事情)
作成年月日:2008 年 3 月 5 日
カンボジア
主な職業
合計
男性
女性
30. 酪農/家畜/養鶏の生産者:運営者,主に自給用
1.9
2.2
1.7
31. 酪農/家畜/養鶏の生産者:熟練作業員
0.1
0.1
0
32. 酪農/家畜/養鶏の生産者:補助的作業員
2.1
2.4
1.7
33. 養蜂家及び養蚕家:運営者,主に市場用
0
-
0
34. 養蜂家及び養蚕家:運営者,主に自給用
-
-
-
35. 養蜂家及び養蚕家:熟練作業員
-
-
-
36. 養蜂家及び養蚕家:補助的作業員
0
0
-
37. 混合動物育成者:運営者,主に市場用
4.8
4.5
5
38. 混合動物育成者:運営者,主に自給用
0.3
0.3
0.3
0
0
-
40. 混合動物育成者:補助的作業員
1.3
1.6
1
41. 林業/木炭の従事者:運営者,主に市場用
0.7
1
0.4
42. 林業/木炭の従事者:運営者,主に自給用
1.5
1.3
1.8
43. 林業/木炭の従事者:熟練作業員
0.1
0.1
0
44. 林業/木炭の従事者:補助的作業員
0.3
0.3
0.3
45. 漁業従事者:運営者,主に市場用
1.6
2.6
0.6
46. 漁業従事者:運営者,主に自給用
2.5
3.8
1.1
47. 漁業従事者:熟練作業員
0.1
0.2
0
48. 漁業従事者:補助的作業員
0.6
0.7
0.6
49. 猟師:運営者,主に市場用
0
0
0
50. 猟師:運営者,主に自給用
0
0
-
51. 猟師:熟練作業員
-
-
-
52. 猟師:補助的作業員
-
-
-
53. 採掘及び建築業従事者
0.9
1.4
0.3
54. 金属、機械及び関連従事者
0.7
1.2
0.1
55. 精密、手工芸、印刷及び関連業従事者
0.3
0.5
0.2
56. その他の工芸及び関連業従事者
3.8
1.9
5.6
57. 固定式工場及び関連作業員
0.2
0.2
0.2
58. 機械操作者及び組立工
3.5
1.8
5.2
59. 運転手及び移動式工場作業員
1.9
3.7
0.1
60. 販売及びサービスの単純作業従事者
4.1
3.3
4.9
39. 混合動物育成者:熟練作業員
6
国名:カンボジア(調査大項目 2:雇用労働事情)
作成年月日:2008 年 3 月 5 日
カンボジア
主な職業
合計
男性
女性
61. 農業、漁業及び関連作業員
0.1
0.1
0.1
62. 鉱業、建設業、製造業及び輸送業の作業員
3.6
6
1.3
63. 軍人
0.7
1.3
0.1
64. 上記に分類されないその他の職業
0.1
0.1
0.1
65. 職業が不明な回答者
1.7
1.4
2.1
100
100
100
合
計
*出典:国家統計局:統計年鑑 2005 年
2.2
賃金
2.2.1 業種別・職種別の法定最低賃金の最近の動向(コメント及び統計)
カンボジア経済は自由市場経済制度である。そのため、需要と供給及び競争とい
った市場圧力が価格をコントロールしている。しかしながら、労働者が、労働力
の提供の見返りに公正な労働賃金を得ることを保障するために、カンボジア政府
は、最低賃金要件を設定した。現在までに、衣料分野の最低賃金のみが定められ
ている。
カンボジアの労働法には、最低賃金に関する条項がいくつかある。例えば第 107
条第 2 項では、最低賃金は、関係する政府機関、雇用主団体及び労働組合の代
表者で構成される労働諮問委員会と協議の上、労働担当省の大臣命令によって定
められるとされている。
最低賃金に関する最近の動向については、限られたデータしか存在せず、例外的
に先に述べた衣料分野の最低賃金動向があるに過ぎない。例えば、1997 年 3 月
に労働担当省とカンボジア衣料製造業組合(雇用主の団体)が協議の上、衣料労
働者について 1 か月あたり 40US ドルの最低賃金を定めた。この最低賃金は、
2000 年 7 月に労働諮問委員会によって、45US ドルに改定された。そして、2007
年の最新の改定において、50US ドルと定められた。
カンボジア経済研究所(Economic Institute of Cambodia:EIC)が 2007 年 6
月に出版した「輸出の多様化と人間開発のための価値付加」によれば、非熟練労
働者の平均給与は月 70~80US ドルに達し、そのうちの約 30%は時間外労働に
よって得ていることが示されている。しかし、実質賃金については、国際労働機
関(ILO)が 2006 年に作成した別の報告書によると、インフレーションによっ
て実質賃金は 2005 年から 2006 年にかけて 6%減少しているとされる。
7
国名:カンボジア(調査大項目 2:雇用労働事情)
作成年月日:2008 年 3 月 5 日
2.2.2 業種別・職種別の賃金もしくは給与の実態調査結果(コメント及び統計)
以下の表 2-7 は、2000 年及び 2001 年における 10 歳以上の労働者の分布を主な
職業及び月額給料別に示したものである。
表 2-7 職業及び給料別労働者分布(2000~2001 年)
給料合計額(カンボジアリエル)
主な職業
合計
15 万未満
15 万以上
200 万未満
200 万以上
2000 年
2,177,288 1,674,535
合計
[0] 軍人
499,228
3,522
0
0
0
0
[1] 国会議員、政府高官、企業管理職
1,879
925
954
0
[2] 専門家
5,384
2,696
2,582
104
10,256
5,902
4,353
0
1,135
253
881
0
279,337
163,485
115,004
848
1,658,680 1,376,409
280,982
1,289
[3] 技術者及び補助的専門家
[4] 事務員
[5] サービス業、店頭、市場販売員
[6] 農業及び漁業の熟練従事者
[7] 工芸及び関連業従事者
118,712
79,279
39,433
0
[8] 工場工、機械操作者、組立工
68,736
25,394
42,059
1,281
[9] 単純労働者
33,169
20,192
12,977
0
1,013,552
612,121
400,137
1,295
[0] 軍人
38,806
36,581
2,225
0
[1] 国会議員、政府高官、企業管理職
41,270
34,216
7,055
0
[2] 専門家
60,247
47,673
12,444
131
102,275
83,882
17,230
1,164
[4] 事務員
22,731
13,064
9,666
0
[5] サービス業、店頭、市場販売員
75,614
53,723
21,890
0
[6] 農業及び漁業の熟練従事者
29,729
17,428
12,302
0
[7] 工芸及び関連業従事者
182,482
36,438
146,044
0
[8] 工場工、機械操作者、組立工
101,674
22,892
78,781
0
[9] 単純労働者
358,726
266,223
92,502
0
2001 年
合計
[3] 技術者及び補助的専門家
*出典:国家統計局: 労働力調査, 2000 年 11 月及び 2001 年 11 月
8
国名:カンボジア(調査大項目 2:雇用労働事情)
作成年月日:2008 年 3 月 5 日
2.2.3 役職別給与体系のサンプル
役職別の給与に関しては、非常に限られたデータしかない。しかし、最近の HR
INC(カンボジア)社によって、衣料産業部門における給与の調査が実施された。
この調査は、HR INC 社、カンボジア衣料製造業組合(Garment Manufacturers'
Association in Cambodia:GMAC)及び衣料製造業生産性本部(USAID によ
る補助プロジェクト)の共同作業によって行われた。HR INC 社の調査によれ
ば、カンボジアの衣料産業部門における役職別給与体系は、表 2-8 のとおりであ
る。
表 2-8 カンボジア衣料産業部門における役職別給与体系
KESAR レベル
役職
手取月間給与の平均(US ドル)
レベル 1
取締役
1602
レベル 2
業務担当役員
1013
レベル 3
部課長
609
レベル 4
上級管理者
435
レベル 5
統括責任者
324
レベル 6
管理者
174
レベル 7
職員 (熟練労働者)
91
レベル 8
助手 (経験労働者)
85
レベル 9
労働者
73
レベル 10
非熟練労働者
50
*出典:HR INC (カンボジア)社: 衣料産業給与調査 2007-8 年
調査の実施にあたって HR INC 社は、KESAR 方法論を用いた。KESAR の要素
は、知識(Knowledge)、環境(Environment)、技能(Skills)、適性(Aptitude)、
及び責任(Responsibility)である。調査では現在の地位及び収入に対する詳細
な情報が集められた。この調査によれば、地位及び収入レベルは表 2-8 に示すと
おり、10 の KESAR レベルに分類される。
ASEAN 加盟諸国が ASEAN 経済共同体計画の草案を策定したことは、注目され
るべきである。この経済計画によれば、ASEAN 加盟諸国は 2015 年までに、す
べてのサービス分野における熟練労働者の自由な移動を促進すべきとしている。
ASEAN 内における専門家及び熟練労働者の自由な移動を促進するために、各加
盟国は、他の ASEAN 加盟国で受け入れられるべき専門家及び熟練労働者の資
格要件を認証しなければならない。ASEAN 域内の国々の間での相互認証に関し
ては、これまで多くの努力が払われてきた。例えば、技能水準の資格の相互認証
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国名:カンボジア(調査大項目 2:雇用労働事情)
作成年月日:2008 年 3 月 5 日
については、ASEAN 加盟諸国間で数回にわたり議論されている。その議論の結
果、多数の ASEAN 加盟諸国から、4 段階の技能水準資格の枠組みが提案された。
すなわち、レベル 1:準熟練労働者/助手/補助者、レベル 2:熟練労働者、レベ
ル 3:高度熟練労働者及びレベル 4:統括責任者、である。この技能水準資格は、
労働者の賃金を決める決定要因の一つとなる。
カンボジアは、提案された ASEAN の資格の枠組みと整合する国家資格の枠組
みを採用することを選んだ。そのため、長い目で見れば、HR INC 社が策定し
た分類法は、この国家方針と部分的にしか適合しなくなるだろう。
2.3
労働時間の現状
2005 年版統計年鑑のデータでは、全カンボジア人の平均労働時間は週 43 時間とさ
れている。有給労働者は週平均 51 時間であり、雇用主の 45 時間、自営業者の 46
時間及び無給家事労働者の 37 時間よりも長時間働いていることになる。平均的に、
都市部の労働者(46 時間)は、郡部の労働者(42 時間)よりも長く働いているこ
とが分かった。
2.4
労使関係の現状
2.4.1 全国規模の労働組合及びその特徴の現状
労働者は、事前承認の有無に関係なく、学習、利益の促進及び権利の保護並びに
精神的・物質的利益といった排他的な目的の選択に関して、共同あるいは個人的
な、専門の組織を結成する権利を有しており、その組織の構成員の範囲は組織の
規則で定められる(労働法第 266 条第 1 項)。労働者の専門組織は「労働組合」
と呼ばれる(労働法第 266 条第 2 項)。
労働・職業訓練省実績報告によれば、2004 年から 2006 年までの期間に 4 つの
組合連合を含む 534 の労働組合、12 の労働組合連合会及び 518 の地方組合が省
庁に登録された。さらに、2007 年には、244 の労働組合が省庁に登録されてい
る。
2.4.2 労働争議の現状(発生の傾向や実例、相談先名)
2004 年から 2006 年までの労働・職業訓練省実績報告、2007 年及び 2008 年の
労働指針によると、労働争議の主な原因は、賃金の不適切な支払い、時間外労働
の強制、法定の公休の取得不許可、不法な解雇といった、企業・団体による法令
に違反する不適切な労働条件の履行であるとしている。また、労働争議のほとん
どは労働ストライキにつながっているとも報告書には付け加えられている。スト
ライキの原因としては、雇用主がストライキ実施労働者の代表と話し合うのが遅
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国名:カンボジア(調査大項目 2:雇用労働事情)
作成年月日:2008 年 3 月 5 日
かったことや、労働者が法令を誤解している場合が多いことなど、いくつか挙げ
られる。
重要なことは、労働争議が 2 つのタイプ、すなわち個別労働争議と集団労働争
議に分類されることである。
個別労働争議は、雇用主と 1 人ないしそれ以上の労働者・実習生との間で個別
に生じるものであり、労働契約・実習契約条件、団体協約の条項、または効力の
ある規制や法令についての解釈や履行に関するものである。(労働法第 300 条)
集団労働争議は、1 社ないしそれ以上の雇用主と一定数の社員との間での、労働
条件、労働組織の認可された権利の実行、企業内の労働組織の認可及び労使関係
に関する問題についての紛争であり、その紛争は企業の効率的な操業や社会の平
穏をも危うくし得るものである。(労働法第 300 条)
労働法の条項によれば、個別労働争議は労働担当省によって調停されるか、紛争
当事者は裁判所で法的措置を取ることもできる。集団労働争議は、労働担当省が
指定した調停人によって調停されなければならない。もし調停が不調に終われば、
集団労働争議は解決のために仲裁委員会に付されなければならない。
表 2-9 は、2004 年から 2006 年までの個別労働争議の数を示している。
表 2-9
2004 年から 2006 年までの個別労働争議数
(単位:件)
年
調停された
労働争議
調停されなかった 無効と考えられる
紛争
紛争
紛争
2004
88
47
33
8
2005
96
43
53
-
2006
80
32
46
2
*出典:労働・職業訓練省: 2004 年から 2006 年までの実績報告及び 2007 年
及び 2008 年の労働指針, 2008 年 1 月
2007 年には、労働・職業訓練省の労働争議局が扱った労働争議は 61 件で、そ
のうちの 37 件の個別紛争が調停された。
集団労働争議に関して、以下の表 2-10 は 2004 年から 2006 年までの 3 年間に
おける紛争の数を挙げている。
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国名:カンボジア(調査大項目 2:雇用労働事情)
作成年月日:2008 年 3 月 5 日
表 2-10 2004 年から 2006 年までの集団労働争議数
(単位:件)
年
労働争議
調停された
調停されなかった
仲裁委員会に
紛争
紛争
付された紛争
2004
229
157
72
72
2005
148
82
66
66
2006
217
142
75
75
*出典:労働・職業訓練省: 2004 年から 2006 年までの実績報告及び 2007 年及び 2008 年の労働指針,
2008 年 1 月
加えて、省庁未公表の 2007 年の報告書では、2007 年に 186 件の集団労働争議
があったと報告され、労働・職業訓練省の労働争議局で扱われた。上述の件数の
うち、103 件の労働争議が調停され、83 件が未調停となった。未調停の 83 件の
労働争議は、仲裁委員会に付された。
2.5
募集、採用、雇用、解雇の現状
調査中
2.5.1 就業規則の例等
調査中
2.6
転職(Job-Hopping)の現状
調査中
2.7
その他の雇用慣行
調査中
2.7.1 企業の慣行
調査中
【参考文献】
1.
ASEAN 事務局, ASEAN 経済共同体計画, 草案, ヤンゴン, 2007 年 4 月
2.
カンボジア経済研究所, 「輸出の多様化と人間開発のための価値付加」, 2007 年
6月
3.
ILO, 「カンボジア衣料産業:1 年後」, 2006 年
12
国名:カンボジア(調査大項目 2:雇用労働事情)
作成年月日:2008 年 3 月 5 日
4.
ILO, 「ASEAN における労働及び社会の傾向」, バンコク, 国際労働事務所, 2007
年
5.
カンボジア王国, 労働・職業訓練省, 「2004 年から 2006 年までの実績報告、2007
年及び 2008 年の労働計画」, 2007 年 1 月
6.
カンボジア王国, 労働・職業訓練省労働争議局. 「2007 年の実績報告及び 2008
年 8 年の労働計画」, 2007 年 12 月
7.
カンボジア王国, 国家統計局, 「カンボジア労働力調査」, 2000 年 11 月
8.
カンボジア王国, 国家統計局, 「カンボジア労働力調査」, 2001 年 11 月
9.
カンボジア王国, 国家統計局, 「2004 年カンボジア国勢調査中間年人口調査」,
一般報告, 2004 年 11 月
10. カンボジア王国, 国家統計局, 「2005 年統計年鑑」, プノンペン, 2005 年
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