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スライド 1 - フォナック
©Phonak Japan - SoundRecover Applications for Children:FAQs 2010/7/2 小児に対するサウンドリカバーの適用 よくある質問と回答集(FAQ) サウンドリカバーは、子供の聞こえる範囲まで高音域を圧縮し変換します。高域の音と/s/や/sh/や/f/のような摩擦音 の聞こえを改善します。この機能は、女性や子供の音声や環境音をよりよく聞こえるようにし、子供の言語発達を助 けます。大事な点としては、サウンドリカバーは高音域のみを圧縮し、低音域の周波数は圧縮されないままで母音に 影響がないようにしていることが挙げられます。 サウンドリカバーのアルゴリズムは、オーストラリアのメルボルン大学のHugh McDermott教授によって開発されまし た。市場に出される前に、サウンドリカバーは成人・子供両方に対して実験され、評価され、そして市場に出てから も幾度となく評価されてきました。結果的に、査読つきもしくは査読なしの学術論文が報告され、サウンドリカバー がさまざまな年齢層と難聴度の方に有用であることがわかってきました。 全ての文献目録については、http://www.phonak.com/soundrecover/ (英文)をご参照ください。 以下に、サウンドリカバーに関してよくある質問と回答を載せました。また、それを支持する研究結果が掲載された 文献についてもリストアップしました。 質問1:幅広い周波数特性をもつ補聴器にも、サウンドリカ バーは必要でしょうか? 回答:はい。最近の補聴器には、幅広い周波数特性をもつも のがあります。ただし、レシーバの限界もあり、6000Hz以上 の聞こえを提示するのは、軽度難聴の場合でも難しくなりま す(図1と図2)。サウンドリカバーは、従来の周波数特性 に加え、高い周波数の音の聞こえを補償します。 【図1】軽度難聴をもつ小児のオージオグラム 【図2】フォナックを含む3社の補聴器の周波数特性の比較 Page 1 ©Phonak Japan - SoundRecover Applications for Children:FAQs 2010/7/2 図2から、6000Hz以上の音を最大の状態にしてあっても6000 /s/に似た刺激音を出している部分だけに注目してください。 Hz以上の音は提供できていないことが伺えます。Verifit 図3でも、図1のオージオグラムを元にフィッティングした図 Speechmap(訳注:AudioScanという補聴器特性測定装置にあ 2と同じ補聴器を使っています。緑色の線は、フォナック社 る特性表示)では、オージオグラムはSPLに変換され赤線で (Nios)の特性ですが、サウンドリカバーがオフでも広い周 表示されています。音が聞こえるようになるためには、この 波数域特性をもっていることがわかります。 赤線よりも上にあることが必要になります。図2は、10k Hzま 青色の特性は、サウンドリカバーの効果を表しています。サ で音を増幅するとうたっている競合2社の補聴器とサウンド ウンドリカバーがあることによって、/s/音がはっきりと聞こ リカバーがオフになっているフォナック社の補聴器(Nios:国 えるようになることを示しています。このことは、周波数帯 内未発売)の特性です。ここでは、広帯域スピーチノイズを 域が広い場合でも、サウンドリカバーが周波数帯域を広げる 65dB SPLで提示しました。また、緑の十字は、DSLのターゲッ ことができる機能だということを示しています。サウンドリ ト値を示しています。3社ともターゲットに適合されるよう カバーがない限り、これらの音が聞こえることはなかったで に微調整してありますが、一番高い周波数に関しては各社の しょう。 フィッティングソフトで利得を可能な限り最大にしてありま (参考文献:1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9) Page 2 す。ただし、この場合でも3社とも6000 Hz以上で十分な利得 が出ておりません。 質問2: サウンドリカバーのフィッティングを確認する方法は ありますか? 【図3】サウンドリカバーによる周波数圧縮を示した図 回答:はい。どのような小児フィッティングでもいえること ですが、サウンドリカバーの搭載されている補聴器を検証す ることは、処方されたターゲット利得を満たし、ことばの重 要な周波数帯域へのアクセスを確認するためにも大事なこと です。西オンタリオ大学のSusan Scollieが開発したガイドライ ンがありますので、こちらを参考にしてください。 (参考文献:10, 11) 質問3. サウンドリカバーが子供にとって有効であることを示 した研究結果はありますか? 回答:はい。複数の査読つきもしくは査読つきでない学術論 文でサウンドリカバーが成人や子供に有効であったことが報 告されています。例えば、Glista, Scollie, Bagatto, Seewald, 図3は、サウンドリカバーがどの程度、周波数特性の幅を広 げられるかを示した図です。iPFGで設定したカットオフ周波 数よりも上の周波数を低い周波数範囲に圧縮しています。サ ウンドリカバーの圧縮がかかればかかるほど、従来の周波数 特性とは異なってきます。 図3では、高い周波数帯域のみに注目するために特別な入力 音を用いています。Verifitで使われている入力音は、1000Hz 以上の音は30dB利得が下げられている以外に6.3kHzを中心周 波数とした1/3オクターブ狭帯雑音を提示して高い周波数特性 だけをみることができるようになっています。このような ノッチ(くぼみ)を作ることによって、男性の発声する/s/に 近い刺激音になっています。低音域と中音域は考慮せず、 Parsa, Johnson (2009)は典型的なマルチチャンネルノンリニア 周波数圧縮変換(サウンドリカバー)を、平均聴力が高・重 度の13名の成人(50~81歳)と11名の子供(6~17歳)を対 象にフィッティングしました。方法としては、音声検出、語 音了解度、アンケートなどの主観的評価を用いました。結果 は、サウンドリカバーを使っているときの単数・複数形の区 別(sの有無)や子音の聞き取りが顕著に改善されました。 重要なことに、母音の明瞭度には変化がなくサウンドリカ バーによる低い周波数への影響が少ないことが示されました。 Glistaらは、これらが有効になる理由を、「従来の補聴器より も低い周波数で提示されるにもかかわらず、高い周波数エネ ルギーに対する聞こえが新たに加わることによるから」と ©Phonak Japan - SoundRecover Applications for Children:FAQs 2010/7/2 Page 3 しています。 は違うということを理解しておくことが重要です。サウンド (参考文献:6,7,8,9) リカバーを強くすることによって音質が悪くなったとしたら、 難聴者はサウンドリカバーによって影響を受ける高い周波数 質問4:サウンドリカバーは聴覚の廃用性症候群を起こすこ とはありませんか? 回答:そういうことはありません。サウンドリカバーの目的 は、乳幼児や子供にとって大事な高い周波数の音を言語発達 のために提供することにあります。逆に、高い音がもっと聞 こえるあるいは聞き分けられることによって、周波数範囲が の聞こえがもともと悪いということです。比較するべきは、 サウンドリカバーの音質と難聴者が感じる音質です。音声の 検出、弁別、音声の発声の改善が示されたという過去の研究 報告からサウンドリカバーが高い音質を提供できることを示 しています。 (参考文献:2, 3, 6, 7, 8, 9, 12) 広がることになります。サウンドリカバーがなければ、この ような高音域の音は全く聞こえないですし、サウンドリカ 質問6:サウンドリカバーを使ってはいけない例はあります バーがない状態の方が廃用性症候群のリスクを考える必要が か? 出てくると思います。乳幼児の実験は、倫理的にも実際は不 回答:ありません。サウンドリカバーは徹底して検証されて 可能なことから、サウンドリカバーの機能が必要であるかど おり、子供の聞こえに対してリスクはありません。適切な うかはもっと大きなお子さんのデータから推測するしかあり フィッティングをすることにより、さまざまな研究からも示 ません。 されている通り子供の発達にとって顕著に有用であるといえ 小児オーディオロジーの分野で国際的にリーダー的な存在で ます。 ある先生方に乳幼児に対してサウンドリカバーをフィッティ (参考文献:2, 3, 6, 7, 8, 9, 10, 11) ングすることに関する意見を聞いてみました。(Prof. Richard Seewald, Prof. Susan Scollie, Dr. Patricia Roush, Andrea Bohnert, Prf. 質問7: サウンドリカバーを軽度難聴にフィッティングした方 Jace Wolfe)意見を聞いた先生全員が、乳幼児は補聴器を がいいという根拠はありますか? フィッティングされる最初の日からサウンドリカバーを使っ た方が良く、通常のモニタリングとフォローアップが必要で あることという意見で一致しました。一例として下記のよう な意見が挙げられました。 「サウンドリカバーを1歳以下の乳幼児に使用することへの懸念 はありません。サウンドリカバーを使うことによって聞こえる 範囲が広がりより多くの情報が提供できます。小さい子供に情 報を十分に与えない方が問題だと考えています。(例えば、雑 音抑制アルゴリズムなど)サウンドリカバーによってより多く 回答:サウンドリカバーの有効性については、軽度から重度 まで報告されています。軽度難聴にフィッティングする際は、 カットオフ周波数が比較的高めに設定されますので一番高い 周波数のみが影響されます。このような音は、オフであれば 入ってこないような音です。サウンドリカバーは補聴器の周 波数特性幅を必然的に広げることになります。圧縮の程度も 小さいですので、聞こえる周波数域を広げることはあっても 音質を変えることはないでしょう。 の情報を提供することに関しては問題を感じません。」(Andrea 「例え聞こえていたとしても、多くの感音難聴者には高い周波 Bohnert, 小児オーディオロジスト/ドイツ ミュンヘン大学) 数の音を弁別することは難しいでしょう。よって、周波数圧縮 http://www.youtube.com/phonakpediatrics/ で彼らの証言をご覧 いただけます。 (参考文献:1, 4, 5, 6, 7, 8, 9) 質問5:サウンドリカバーによって音が歪んだり不自然には なりませんか? 回答:いいえ。サウンドリカバーの初期設定の音質は、聞こ えに問題ない人にとっても悪くありません。それよりも、聞 こえがいい人にとって音質が良くともその聞こえは難聴者と は高音がほとんど聞こえないような聴力型だけではなく様々な 聴力型に適応できると思います。」(オーストラリア、メルボル ン、The Bionic Ear Institute, Hugh McDermott教授) (参考文献:6, 12) 質問8:どのぐらいでサウンドリカバーの音に子供は順応で きるのでしょうか。 回答:経験から、自発的に許容される率が高いことがわかっ ています。改善度がすぐに測定できるほどになっている場合 ©Phonak Japan - SoundRecover Applications for Children:FAQs 2010/7/2 もありますし、4~8週間適応するために必要なこともありま 質問9:家族や本人に渡せる資料でサウンドリカバーを支持 す。長期間の使用後にさらに改善されることもあります。例 している資料はありますか? えば、Glistaら(2009)(9)の臨床結果では、時間をかけて子 回答:学齢期の子供、保護者、教師に渡せる資料として、日 供たちの聞きとりの改善があったことを示しています。“おそ 本語のジュニアレポート、カウンセリング資料がiPFGから印 らく、成熟によるものか、順応によるものか、それとも両方 刷できます。 ともなのか” で改善したとしています。 Wolfeら(6)は、5歳~13歳の中等度~高度難聴までのお子 さんにサウンドリカバーを試してみたところ、15分後にすで に良い結果が出たとしています。 「最初のフィッティングで、主観的評価としてのコメントや、 単数・複数形の弁別、個々の評価から良い結果を示した。主観 的評価では、12名のうち誰もノンリニア周波数圧縮変換に対し 質問10:フォナックは今後もサウンドリカバーが搭載された 製品を持続して開発し続けるのでしょうか? 回答:はい。サウンドリカバーが軽度~重度まで効果がある ということがわかりましたので、この機能は将来の製品にも 搭載されます。 て嫌がることはなかった。実際は、多くの子供がことばの聞き 取りの改善を報告した。」 (参考文献:6,7,9) 参考文献リスト: 1. McDermott (2010). Background Story. SoundRecover: The importance of wide perceptual bandwidth. http://www.phonak.com/soundrecover/ 2. Simpson A., Hersbach A.A., McDermott H.J. (2005). Improvements in speech perception with an experimental nonlinear frequency compression hearing device. International Journal of Audiology 44(5): 281-292 3. Simpson, A.; Hersbach, A.; McDermott, H. (2006) Frequency-compression outcomes in listeners with steeply sloping audiograms. International Journal of Audiology; 45:619-629 4. Stelmachowicz, P., Hoover, B., Lewis, D.K., Pittman, A. (2000). The relation between stimulus context, speech audibility and perception for normal-hearing and hearing-impaired children. Journal of Speech, Language and Hearing Research, 43 (4), 902-914 5. Stelmachowicz, P., Pittman, A., Hoover, B., Lewis, D. (2002). Aided perception of the /s/ and /z/ by hearing-impaired children. Ear and Hearing, 23 (4), 316-324 6. Wolfe J, Caraway T, John A, Schafer E, & Nyffeler M. (2009). 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Available on http://www.phonak.com/soundrecover/ 11. Glista, D.; and Scollie, S. (2009). Modified Verification Approaches for Frequency Lowering Devices. Audiology Online, November 2009 12. Boretzki, M.; Kegal, A. (2009). The benefits of nonlinear frequency compression for people with mild hearing loss. Audiology Online November 2009 Page 4