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ヘリビデオ画像を活用した線路沿い斜面の 災害要因の抽出手法の評価

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ヘリビデオ画像を活用した線路沿い斜面の 災害要因の抽出手法の評価
全地連「技術 e-フォーラム 2003」さいたま
ヘリビデオ画像を活用した線路沿い斜面の
【54】
災害要因の抽出手法の評価
東日本旅客鉄道㈱
アジア航測㈱
石黒進也,友利方彦
○小林
公一,三谷琢司,小山田博之,水谷信之,二木重博,河村和夫
1.はじめに
3.撮影方法
列車の安全運行を確保するために行われる土工等設
道路や鉄道を含めて従来のヘリビデオによる調査と
備の検査では,線路沿線からの徒歩巡回による目視検
しては,主にビデオカメラのズームアップ機能を利用
査が行われているが,検査範囲や検査箇所が膨大であ
したのり面や落石発生源の点検などがある。これらは,
ること等により,多大な労力を要している。また,地
対象地をさまざまなアングルと焦点距離(縮尺)で詳
上からの巡視では一度に確認できる範囲は限定されて
細に撮影するため,飛行時間がかなり長くなる。その
いるため,災害要因を的確に把握することが困難な場
ため,撮影飛行の前にあらかじめ撮影のポイントを絞
合も多い。そこで,上空からの検査手法の一つとして,
り込んでおく必要が生じている。
ヘリコプターより撮影したビデオ画像を用いた検査方
法について検討した。
本調査では,なるべく短い飛行時間で線路沿いの斜
面やのり面をより長い区間に渡り撮影することを主眼
本稿では,ヘリコプターより撮影したビデオ画像を
用いて,土工等の検査および災害要因の把握を効率的
においた。
画面は,線路から斜面の上端(尾根筋)まで収まる
かつ精度よく行うための検討結果を報告する。
ようにし,部分的なズームアップはしないこととした。
2.使用したビデオ機器の諸元
また,線路沿いの地形形状を認識しやすいようにカメ
ビデオ機器は年々高性能化してきている。画像の記
ラの向きは,線路と直交方向かつ斜面に対して斜め上
録もアナログ方式からデジタル方式が主流となり,編
方となるように設定した。即ち,ヘリコプターは,線
集やダビングによる画像劣化が小さくなっている。ま
路沿いの斜面が画面からフレームアウトしないように
たパソコンでの画像データの加工も容易となっている。
注意しながらカメラを機体真横の斜め下に向けたまま
本研究で使用したビデオ機器を表-1 に示す。
線路に沿って飛行することになる(図-1)
。この撮影
方法では,ビデオ画像から撮影対象がオーバーラップ
表-1
撮影に使用したビデオ機器
ビデオカメラ
レンズ
した静止画像を 2 枚切り出すことができ,任意の地点
ソニーBVW-550
でのステレオ立体視が可能となる。
ニコン S20×8B1
4.検証方法
(f:8~160mm)
データ記録方式
DVCAM
架台
ウェスカム防振架台
対象地についての地形地質学的な知識を持っていな
い者が,ビデオ画像と縮尺 1/2,500 線路平面図のみを
用いて斜面やのり面上の災害要因の判読をおこなった。
ここでいう災害要因とは,崩壊地形,地すべり地形,
谷地形,露岩などである。それらの抽出された災害要
因が実際に存在するのかを現地にて遠望観察を含めた
踏査により確認し,その規模をポールやテープで計測
した。また同時に判読漏れになった災害要因について
も確認した。
画像による災害要因の認識のし易さは,対象物の大
きさと植被の状況などにより変わることが容易に予想
されるが,ここではこれらを定量的に比較することは
困難であるので,植生の種類や粗密が地形判読に与え
る影響に関する定量的,あるいはパターンごとの検証
は実施しなった。
5.画像作成・判読作業
図-1
撮影方法概念図
判読は,動画を再生しておこなうだけでなく,静止
画像によるステレオ立体視によっても実施した。静止
全地連「技術 e-フォーラム 2003」さいたま
のを 1/30 秒刻みで選ぶことがで
きる。
判読結果は,ステレオペア画像
の一方に判読記号を書き込んだ
(写真-1)。また抽出した地形要
素のなかから,現地で検証する箇
所をあらかじめ選定しておき,そ
の地形要素の判読根拠を明らかに
しておいた。
6.現地検証
崩壊地は幅約 15m,高さ 30m
の規模のものが,地すべり地形も
幅数十 m のものが判読で抽出で
きていることが確認された。露岩
は,広葉樹林のなかで,高さ約 4m,
写真‐2 撮影方向
幅約 10m の規模のものが抽出で
写真-1
ビデオ画像からキャプチャーした静止
きた。
幅 2m,深さ 1m 程度までの谷地
画像に判読結果を図示
形を判読できていることから,この
規模が判読において認識できる地形の起伏差の
限界であると考えられる。
一方で,潅木林と伐採地との境界などにみられ
る樹高の違いを斜面傾斜の変化点として判読し
ている誤りも確認された。また,盛土崩壊や水ミ
チとして抽出したものが,実は植生の違いを判読
したという誤りもあった。
これらの誤りは,解像度不足というよりも,植
生による影響のほうが大きいと考えられる。小規
模な露岩や崩壊地などは,周辺の樹木の陰に隠れ
てしまい,銀塩写真であっても抽出することは困
難で,これは可視光による遠隔探査の弱点である。
7.適用性の評価
線路沿いの斜面の下端から上端(尾根)まで収
写真-2
現地状況(下から見上げただけでは不
定地形はわかりにくい)
画像は,ビデオ画像をキャプチャリングしてパソコン
に取り込み,レベル補正やシャープネス調整などの処
理を施して作成した。これらの処理は,一般に購入可
能な機器やアップリケーションで行った。
判読手法は,空中写真のステレオ立体視による方法
と同じで「空中写真判読基準カード・斜面管理図作成
マニュアル」1)に準じて実施した。
解像度は,1ピクセル当たり 0.2~04m 程度で,6×
7 判の銀塩写真と比べて不鮮明な印象を与えるが,立
体視判読作業上は特に問題はなかった。また動画を観
ることにより,大局的な地形や個々の微地形の広がり
を把握することが可能である。立体視のペア画像は,
対象とする斜面に対して適切な角度から撮影されたも
まるように一定の高度,一定のアングル,一定の焦点
距離という条件で撮影したビデオ画像をキャプチャー
した 0.2~0.4m/ピクセルの解像度をもつ静止画であれ
ば,斜面の地形状況を大局的に把握し,地すべり地形
や崩壊地形を抽出することは十分可能と考えられる。
滑動した時期が古く,植生がある程度回復し,また
規模が大きい地すべり地形や崩壊地形を,地表踏査で
その全体像を把握することは困難なことが多い(写真
-2)ので,上空からの探査はこの点で優れている。
また,ステレオ立体視には慣れが必要であるが,動
画であれば,立体視に不慣れなものでも容易に理解で
きるという利点がある。
《引用・参考文献》
1)鉄道総合技術研究所編:空中写真判読基準カード・
斜面管理図作成マニュアル,1996
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