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022 だんぶり長者とイチローの仕事観(2)
だんぶり長者になろう! .0 8.01 成長と貢献と新たな価値の創造をめざす 2013 2013.0 .08 コミュニティ・デザイナー 佐 藤 友 信 2 だんぶり長者と 02 022 イチローの仕事観(2) ルノワール:牛飼いの娘 児玉光雄氏は『マズローの夢実現法則』で次のような人を紹介しています。 「イタリア・アルプスの小さな村に住むセラフィーナ・ヴィノンという76歳の女性の話である。彼女の日課は、若 い時からほとんど変わっていない。それは朝5時からの乳搾りに始まる。その後大家族のためにたくさんの朝 食を作り、牛の群れを連れ出し、果樹園で働き、羊毛をクシで梳く。夏には牧草地で草を刈り、それを数マイル 離れた干し小屋まで運ぶ。夕方は読書をしたり、ひ孫に物語を聞かせたりする。そして週何回かは彼女の家で のパーティでアコーディオンの演奏をする。彼女は何が楽しいかと聞かれた時、これらの日課が楽しいのだと 答え、こう語っている。 『とても楽しいのさ。外にいること、人と話すこと、家畜と一緒にいることがね。植物、鳥、花、動物、何とでも話 をするよ。自然の全部がずっと友達さね。自然は毎日変わっているよ。せいせいするし楽しいねぇ。くたびれて 家に帰るのが残念でね。うんと働かなくちゃいけない時だって素敵だよ。』 普段の労働に彼女は幸福を感じており、完全に満ち足りた生活をしているのである。」 児玉氏は「日常のルーティン(日課・決まりきった仕事)をいつもと同じように仕上げることが、彼女にとっては 一番楽しい作業なのである」また「目の前の作業をキチッとやり遂げることだけで、私達は仕事の中に幸福感 を見出せるようになる」と言っています。これは誰でも経験していることなのですが、日常のルーティンを、同じ ことの繰り返しと思ってうんざりしたりだらだらやったりするのと、集中して取り組み、時間の短縮や効率化など 工夫や改善を加えて、完成度を高めることに喜びを感じながらやるのとでは、長い間に大きな差が生まれま す。 後にだんぶり長者になる若者の働きぶりは柴刈りでしか紹介されていませんが、柴刈りのような仕事でも集 中し工夫改善を続けて完成度を高めれば、名人の域に達するのです。そして若者が柴刈りにだけそのような 集中力を発揮したとは考えにくく、おそらくセラフィーナおばあちゃんのようにあらゆる仕事に集中し楽しんでい たものと思われます。山の植物や動物とも親しみ、人間関係も常に最良の状態にあったことが伺われます。つ まり常に目の前のもの・こと・人に高い集中力で向かい、その関係性の中に最良の状態を築くという、希有な能 力を備えた人物であったと考えることができます。 児玉氏はこのような状態を「フロー体験」とよび、イチロー選手の思考や行動をたどることでこれを明らかにし ようとしています。人は普段3%程度の能力しか使っておらず、潜在意識にはまだ97%の能力が秘められてい るそうですが、「フロー体験」とは潜在意識にアクセスして能力やパワーを現実に引き出すことなのです。イチロ ー選手やアスリート達はその方法を模索しているのです。 児玉氏によると、イチロー選手は小学生のとき「練習には自信があります」と作文に書き、周囲に断言して誰 よりも厳しい練習をこなしたと言います。「今やるべきことはすべてやる」というのが彼の信念だったのです。小 学3年生のころは空振りばかりしていたそうですが、空振りを繰り返すうちにバットにボールがかするようにな り、やがてチップがファールになり、ある日ヒットが飛ぶようになったと言います。素振りやバッティング練習とい う基礎を、プロになっても大リーグに行ってからも飽きずに続けているのです。この「基礎を飽きない」精神こそ が進化のプロセスを形成するのです。 若者の柴刈りには、イチロー選手のバッティングに通じるものがあります。そしてセラフィーナおばあちゃんの 仕事の数々にも。「フロー体験」は何もアスリートやチャンピオンだけのものではありませんし、崇高な仕事だけ にあるのでもありません。よく考えてみたら、このような名人級の人々は私達の周りにもたくさんいることに気が つきました。