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発表資料 尾崎昌利氏(三井不動産 執行役員 不動産ソリューションサービス本部長)
PRE'公有不動産(とインフラ整備資金の多様化 平成22年10月19日 三井不動産株式会社 執行役員 不動産ソリューションサービス本部長 尾崎昌利 ○公的セクターは、450兆円以上の不動産'PRE(を保有していると推量されます。 不動産 不動産約2,300兆円 約2,300兆円 法人所有、個人所有、国・地方等の公的セクター所有 法人所有、個人所有、国・地方等の公的セクター所有 法人所有不動産 約490兆円 収益不動産 証券化された不動産 約68兆円 約33兆円 公的セクター 所有不動産 約454兆円 出所:国土交通省 土地・水資源局作成資料 1 ○国・地方公共団体が所有する公共建築は、平成14年の調査段階でも、 全国で93万棟超、延床面積で6億平方米強、存在しています。 ○PREの第一歩は、全施設を名寄せし、資産ごとに減価償却、更新履歴、管理コストを 把握することですが、各公的セクターによって管理レベルにばらつきが見られます。 2 ○PREは、公共サービスの提供基盤に留まらず、将来をにらんだ街づくりの観点 からも重要です。企業のCRE'企業不動産(では、以下のようなアプローチで 不動産戦略を見直しています。 企業を取り巻く環境変化 効率化への 要請 国内市場の 成熟 総資産 圧縮 主要な経営課題 不動産保有 見直し 会計 コンバー ジェンス IFRS 対応 不動産の 時価会計 環境規制 対応 環境意識の 高まり 投資資金 確保 不動産への影響 CRE戦略 保有不動産 への適用 新たな 成長戦略 不動産コスト 削減 コストダウン グローバル 競争激化 本社集約化 コミュニケー ション強化 グループ経営 強化 PREにおいても、社会経済環境・行政課題が変化する中、 戦略的な見直しの必要があるのではないでしょうか? 3 CRE(PRE)戦略の重要性 CRE(Corporate Real Estate)およびPRE(Public Real Estate)戦略とは? 企業(公有)不動産について、 「企業価値(行政サービス価値、都市力)向上」の観点から、 経営(行政経営、都市経営)戦略的な視点に立って見直しを行い、 その効率性を高めることで、事業・財務両面で最大限に活かしていくこと。 不動産管理を超え、企業価値(行政サービス価値、都市力)向上に向けた経営資源の マネジメントという観点で取り組む。 保有不動産だけでなく、賃借施設も含み、不動産全般に関して見直す。 不動産に関係する経営形態まで踏み込み、必要に応じ組織再編も行う。 環境変化に機敏に対応し、経営(行政)課題の解決に直結した不動産戦略を実行することで、 価値向上を実現することが可能となります。 4 ○バブル崩壊後、民間企業は、負債・設備・雇用の3つの過剰を解消し、 グローバリゼーションが進行する市場での競争力強化に向け、 不動産戦略を展開してきました。 ○具体的行動を極めて単純化して言うと、 1.不要な不動産は売却する。 2.自用不動産も必要に応じ、保有から賃借に切り替える。 3.保有継続不動産は有効活用'暫定利用含む(により収益化する。 ○不動産投資市場'および不動産証券化市場(の進展により、不動産は、 過去に比べ流動性が増し、財務原資としての有効性が高まっています。 ○民間企業はこれを好機と捉え、売却・有効活用による資金化・収益化を通じ、 リストラ、並びに設備投資やM&Aによる本業強化に向けた、 財務上の原資として有効に利用したと言えます。 ○このような考え方は、PREにも応用できるはずです。 5 ○PREを3つに分類して考えると、 行政サービス基盤および街づくりの核として有効に 利活用されている不動産 管理の効率化、修理更新の適正化を通じ、価値向上を目指します。 但し、更新投資の財源は別途工夫が必要です。 未来の行政サービスおよび街づくりの基盤として 必要不可欠な不動産 定期借地等、民間委託・官民連携を通じ収益化の上、必要な時期まで継続保有します。 当初の行政目的を終え、未利用・低利用の不動産 好機を逃さず売却できるように準備が必要です。 今後もデフレ傾向が継続したり、不動産市場が循環的に動くとすれば、市況下降期に入札不調 にならぬよう、公有地売却にかかる手続きの短縮化や最低入札価格の柔軟な設定を可能とする 制度的な改善も必要と考えます。 ○継続保有不動産が確定しても、更新投資の財源はありますか? 税収増、起債調達以外にどのような工夫が必要になるでしょうか? 6 ○インフラ維持更新費は、今後20年間で2倍'約5兆円→約10兆円(に増加 すると推計されます。 将来の維持管理費、更新投資の必要額 投資額'兆円( 20.0 18.0 16.0 14.0 12.0 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 65 70 75 80 85 維持管理費 90 95 00 05 10 15 更新費 災害復旧費 新設投資額 20 25 30 '年度( 注1(将来推計の対象は、道路、港湾、空港、公共賃貸住宅、都市公園、下水道、治水、海岸の8分野. 注2( 2000年暦年基準で算定した粗ベースの推計結果 出所(内閣府「日本の社会資本」、国土交通省「国土交通白書」より作成 7 ○地方公共団体においては、平成14年の調査段階でも所有建物の高齢化が 進んでいます。 建築後20年以上経過した建物 の比率は、 棟数で63%、 延床面積で55% 8 ○一方、国・地方の財政状況は、 ・国債・地方債の残高は約850兆円'2009年( ・地方自治体の経常収支比率は90%超が継続。 地方自治体の経常収支比率及び借入金残高の推移 国債・地方債の残高推移 250 100 900 借入金残高(兆円,左軸) 国 地方 95 経常収支比率(%,右軸) 800 197 '単位:兆 円(700 200 90 85 600 150 80 500 75 400 100 70 653 300 65 200 50 60 100 55 0 0 1970 1973 1976 1979 1982 1985 1988 1991 1994 出所(財務省資料より作成 1997 2000 2003 2006 2009 50 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 0 1 2 3 4 5 6 7 注(経常収支比率(%)=人件費、扶助費、公債費等に充当した一般財源/経常一般財源'地方税+普通交付税等('※( '※(2001年度以降については、減税補填債及び臨時財政対策債を加算 出所( 総務省資料より作成 厳しい財政制約の下、インフラ整備・更新の財源確保が喫緊の課題であり、 民間資金活用など、調達の柔軟化が必要と考えます。 9 ○PREを、事業面・財務面の経営資源と考えるにあたり、用途上の特徴に着目する 必要があります。利用者からの料金収入で支えられるPREもあると推測されます。 10 ○公共インフラは、用途上の特性から、「経済インフラ」と「社会インフラ」に大別されます。 「経済インフラ」 '上下水道、有料道路、空港、港湾など( ・利用者から利用料収入を得るインフラで一定の収益性が見込めます。 「社会インフラ」 '庁舎・官舎・教育施設・病院など( ・公共が利用料を負担するインフラで高い収益性は見込めません。 ○経済インフラと考えられるPREは、流動化の対象になり得ます。 また、コンセッション'事業譲渡(方式のように、所有権を留保したまま民間への事業譲渡 により資金調達し、合わせて民間に事業委託することも考えられます。 ○コンセッション方式やPREのセール&リースバックなどを通じて得られた民間資金を、 公共インフラの新設・更新に充当する考え方は、PPP'官民連携事業(の一手法として 大いに検討の余地があると思料します。 11 ○PPPの一類型として、主に経済インフラに投資するインフラファンドがありますが、 その市場規模は世界で約10兆円と言われています。 ○先進国を中心とした財政余力の減少や、年金のオルタナティブ投資の対象として インフラファンドのリスクリターン特性が好ましい点などが成長の要因と考えられます。 (単位:10億円( インフラファンドの世界市場規模推移 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 その他, 31.1% 公的年金基金, 23.7% 2,000 0 2005 保険会社, 7.2% 民間年金基金, 12.3% 2006 2007 2008 2009 年金投資比率 36% ファンド・オブ・ファ ンズ マネー ジャー, 7.9% アセットマネー ジャー, 8.3% 銀行, 9.5% 2009 Preqin Infrastructure Review から作成 12 ○PPPへの民間資金導入に関して、以下の提言がなされています。 国土交通省成長戦略会議 第6回'平成22年1月15日開催( 福田隆之委員提出資料「成長戦略とインフラにおけるPPPの活用について」 PPP事業におけるペイスルー等の優遇課税の導入 インフラファンドのEXITを可能とし、個人投資家の資金を社会資本と直接結びつけるために、 REITにおける投資法人のような税制優遇された器'導管体(を社会資本の分野にも応用できる ようにする必要がある。 不動産証券化協会'ARES(の提言 「成長戦略としての大都市の再生・地域活性化に関する提言」 -民間資金等の活用促進策 PFI事業によるインフラ施設等の整備に不動産証券化スキームを活用可能にする制度改正 ・不動産証券化スキームを用いたSPCがPFI事業者になれるように要件を変更 ・一定の条件を満たすPFI事業者に対する出資持分の譲渡制限の緩和 13 ○提言された施策が実現しても、インフラファンドの投資対象は、収益性の高い経済インフラ に限られる可能性があります。 ○収益性は低いが社会的有用性の高い社会インフラに資金を呼び込む方策も必要です。 ○日銀副総裁の西村清彦氏が2004年に著作にて提唱した「社会投資ファンド」の考え方 が参考になります。 <社会投資ファンドのスキーム例> 対象事業資産 <社会投資ファンド> 収益 購入代金・運用 ① 収益性が低く、民間事業としては成立しにくいが、 利払 ② 高い外部性から社会的に実現が求められる事業を 社会投資 ③ 投資家に税額控除等インセンティブを与えることで、 ファンド ④ 民間事業として成立させ、民間投資市場における 借入 配当 '民間主体( 資金調達を可能とする仕組み。 申請 金融機関 投資家 出資'特例税制等を活用( 税額控除決定 監督 社会投資監督委員会 '公的機関( 出典:西村清彦・山下明男編「社会投資ファンド PFIを超えて」'有斐閣(をもとに作成 14 ○この考え方を敷衍して、強い社会貢献・地域貢献意識を有する個人の篤志家的資金を 社会インフラ整備に活用することも有意と考えます。 ○その際、要求利回りの低い資金を効果的に集めるために、やはり投資家に税額控除等 のインセンティブを与えることが重要なファクターです。 アセットマネージャー 税額控除等の一定の優遇措置を付与するので、出資と寄付の中間形態。 インフラ投資ファンド 言わば「パブリック・エクイティ」 デット インフラ 施設 出資 エクイティ 投資家 出資 投資家 出資 投資家 収益性は低いが高い外部性を有するインフラ'PREや公的事業( ・PPP/PFI事業によって整備され、 高い公共性を有し、独立採算型で成立しにくい 等の要件を満たすインフラ施設に投資する ファンドに関しては、その投資家に一定の範囲内で 税制上の恩典'投資額の税額控除、損失繰り延べ、 損失の一部補完等(を与える。 15 ○PREを対象に、利回りは低いが、社会貢献・地域貢献的な投資をするかどうか、 個人投資家にアンケートをしてみると、美術館・博物館・図書館・病院に対し、 20%前後の協調を示しました。 潜在的投資家層における投資してみたい用途 (単位:%, N=11,247, MA) 美術館 博物館 図書館に 21%強が、 公立病院に 18%強が 協調 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 いずれにも投資したいとは思わない 35.0 40.0 34.7 美術館・博物館・図書館 21.2 公立病院 18.4 動物園・水族館 15.3 テーマパーク 13.9 公立学校 12.2 スポーツ施設 11.5 集合住宅 11.0 一般的なオフィスビル 9.6 百貨店、商業施設 9.3 ホテル、温泉旅館 9.3 文化会館・市民ホール 一般的不動産(CRE) 8.9 都道府県または市区町村の庁舎 8.5 展望台・電波塔'東京タワーなど( 7.2 公民館・コミュニティセンター 6.7 老舗企業の本社ビル 5.9 国家公務員または地方公務員の宿舎 5.7 公営住宅 5.5 その他 30.0 0.8 16 ○続いて、篤志家的な地域住民資金のPRE投資に、出身地域志向があるのか調べると、 何れの地域でも、30~40%の人々が出身地域志向を持つことが確認されています。 潜在的投資家層における投資してみたいエリア 45.4 2.2 9.3 16.8 2.6 3.6 5.1 0.9 1.8 いずれにも投資 したいとは思わ ない 1.8 40.3 6.1 30.5 13.1 26.1 3.9 3.6 3.9 1.3 3.4 3.8 44.7 100.0 6.3 4.9 29.2 36.1 4.4 3.5 3.0 2.1 3.7 4.9 44.2 100.0 5.1 2.7 20.8 44.3 3.3 3.0 4.8 2.1 2.8 3.3 44.2 100.0 5.0 2.4 31.2 32.6 3.6 3.6 4.0 1.4 2.8 3.5 46.9 100.0 6.6 2.3 17.8 33.4 6.4 5.6 4.8 1.0 2.7 3.1 50.4 100.0 3.4 1.7 8.2 22.6 9.2 41.4 7.5 2.4 3.4 2.7 40.4 100.0 4.4 1.6 7.8 21.8 41.1 3.5 5.5 1.3 2.0 2.6 41.5 100.0 4.5 1.8 7.5 19.5 4.6 3.4 35.5 1.7 3.1 3.9 47.1 100.0 2.4 1.3 7.8 23.5 3.7 1.7 11.7 30.7 3.3 8.1 41.7 100.0 5.8 2.3 7.0 20.9 2.6 2.0 11.6 3.5 31.3 4.3 45.5 100.0 4.0 1.6 9.2 23.2 4.6 2.6 6.9 2.4 2.5 39.3 42.3 100.0 7.7 0.0 0.0 15.4 0.0 0.0 7.7 0.0 0.0 0.0 76.9 100.0 6.7 3.7 14.7 27.4 8.8 4.3 11.6 3.5 3.7 6.7 44.6 100.0 札幌 ファンド 出 身 地 域 北海道 (N=548) 東北 (N=609) 北関東 (N=432) 東京都 (N=1652) 南関東 (N=1594) 甲信越 (N=482) 北陸 (N=292) 東海 (N=1429) 近畿 (N=2200) 中国 (N=703) 四国 (N=345) 九州・沖縄 (N=948) その他 (N=13) 合計 仙台 ファンド 関東 ファンド 東京 ファンド 名古屋 ファンド 金沢 ファンド 大阪 ファンド 広島 ファンド 松山 ファンド 福岡 ファンド % 100.0 17 ○ 財政逼迫の中、 民間のノウハウに加え、 年金や個人の篤志家的資金など多様な民間資金をベースに、 PREを有効に活用しつつ、 日本の公共インフラを支える新たな官民連携事業を、 政・官・学・民一体となって構築することは、 大いに今日的な意義があるものと考えます。 ~ご静聴ありがとうございました。 18