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世界最高密度の超多心高密度光ケーブル

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世界最高密度の超多心高密度光ケーブル
多心ケーブル
高密度
R&D
地下設備
世界最高密度の超多心高密度光ケーブル(2000心)技術
NTTアクセスサービスシステム研究所
なかがわ
な お き
に っ た
か ず き
中川 直樹
新田 一樹
はまぐち
し ん や
の が み
まさのり
/浜口 真弥
/野上 雅教
えんどう
ようへい
にしむら
きみよし
/遠藤 洋平
/西村 公敬
し ば た
ゆきひこ
いわどう
て つ や
た な か
/柴田 征彦
りょう
/田中 亮 /
えのもと
/岩堂 哲也
よしたか
/榎本 圭高
光需要の増加により,管路設備の行き詰まりが予想されています.NTTアクセス
サービスシステム研究所では,地下区間において既存設備を有効に活用できる世界
最高密度の超多心高密度光ケーブル(2000心),および関連物品(クロージャ,浸
水検知モジュール)を開発しました. の創出など,さらなる光サービスの普及
開発の背景
拡大と利活用促進による光需要の増加
開発のコンセプト
現 在, 光 フ ァ イ バ を 用 い たFTTH
に伴う地下管路の行き詰まりが懸念さ
行き詰まりの発生が予想される地下
(Fiber To The Home)サービスは2600
れています.ここでは,地下光区間にお
管路区間においては,従来より管路内
万加入を超えており,成熟期を迎えて
ける既存設備の効率的な利用をするこ
の空間を有効活用するために,ケーブ
いますが(1),家庭や地域コミュニケー
とで,さらなる需要拡大に伴う地下基盤
ル保護用可とう管(インナーパイプ)を
ションにおける生活に密着したICTの新
設備の行き詰まりの解消,および管路
布設し,光ケーブルを追加布設する多条
たな利用シーンの創出,Wi-Fiを利用し
増設に必要な基盤設備投資の抑制が可
布設工法が確立されていました(図 1 )
.
たICT利用環境の充実,ビジネスユーザ
能な超多心高密度光ケーブル(2000心)
現行の多条布設工法での 1 管路当りの
向けのサービス開発 ・ 提供,光コラボ
と関連物品(クロージャ ・ 浸水検知モ
最大収容心線数は,既設の1000心ケー
レーションモデルによる新たなサービス
ジュール)を紹介します.
ブルと分割材料として用いたインナー
インドア光ファイバ
架空光ケーブル
引上光ケーブル
局内光ケーブル
NTTビル
お客さまビル
お客さま宅
引上管路
地下管路
マンホール
地下光ケーブル
管路
光ケーブル
インナーパイプ
多条布設技術工法
( 1 管路 3 条収容形態)
図 1 光通信網の構成例と多条布設技術
48
NTT技術ジャーナル 2015.6
とう道
R
&Dホットコーナー
パイプ 2 条それ ぞ れに追 加 布 設した
バテープが国内外で広く用いられてい
1000心ケーブル 2 条を合わせて3000心
ます.しかし,従来の光ファイバテープ
効率化と既存設備との整合性の観点か
でした(2).
は,構造上柔軟に変形しにくいため,
ら 8 心光ファイバテープが不可欠となり
高密度に収納した場合,光ファイバに
ます.よって,低曲げ損失光ファイバ心
今回の開発は,既存の多条布設工法
ブルにおいても光ファイバ接続作業の
である 1 管路 3 条布設技術を適用する
大きな歪が加わり破断や光損失増加の
線 2 本からなるテープ化心線を 4 枚並
ため,インナーパイプに収容可能である
可能性が高まります.このため,光ケー
列させて間欠的に接着した,新構造の
1000心ケーブルと同様の標準外径23 mm
ブルの高密度化においては,歪抑制と
8 心間欠接着型光ファイバテープを開
以下をケーブルの要求条件としました.
一括接続性の両立が重要な課題です.
発し,これを高密度に実装しました. 8
本要求条件を満たすことにより, 1 管
この課題を解決するために,②を開発
心間欠接着型光ファイバテープは高密
路当りの収容心線数を拡大することで,
しました.架空に用いられている光ケー
度実装時に光ケーブル内で柔軟に変形
管路増設による基盤設備投資の抑制,
ブルにおいては,現行広く用いられて
できるため,歪を抑制することが可能で,
設備の運用性向上を目指します.
いる外径0.25 mmの低曲げ損失光ファイ
かつ従来の光ファイバテープと同様に
バ心線 4 本を並列させて間欠的に接着
一括接続が可能です(図 3 )
.
超多心高密度光ケーブル
(2000心)
した, 4 心間欠接着型光ファイバテー
一方,今回開発した光ケーブルは,
プを採用し,光ケーブルに実装すること
現行地下光スロットケーブルと比較し
で,細径 ・ 高密度化を実現しています(3).
て,心線集合構造が異なるため,心線
イバの適用によるケーブル構造の最適
しかし,地下に用いる多心用光ケーブル
識別性の観点からケーブル構造を設計
化,②新構造の光ファイバテープの開
には現在 8 心の光ファイバテープが用
することが重要です.心線集合構造は,
発の 2 つの技術により1000心ケーブル
いられており,今回開発した2000心ケー
8 心間欠接着型光ファイバテープ10枚
本光ケーブルは,①低曲げ損失光ファ
と同外径に光ファイバ2000心を高密度
実装しました.
①については,光ファイバを高密度に
集合するため,光ファイバに加わる微
小な曲げなどによる光損失を抑制する
(b) 新規開発光ケーブル(2000心)
(a) 現行地下光スロットケーブル(1000心)
テンションメンバ
テンションメンバ
切り裂き紐
切り裂き紐
標準外径
:23 mm
ことが重要な課題でした.また,光ファ
イバは,引張りなどの歪による破断力が
加わることにより光損失が発生すること
があります.そのため,現行の光ケーブ
ルは,スロットロッドによって光ファイ
バを外力から保護するよう設計されて
スロットロッド
いました.本光ケーブルは,国際規格
図 2 ケーブル構造
に準拠する曲率半径R15の低曲げ損失
光ファイバを新たに採用すること,およ
び光ファイバにかかる外力を保護する
ために外被厚を調整するなどケーブル
構造の最適化を図ったことで,スロット
ロッドを使用せず安定したケーブル特
性を確保することができました(図 2 )
.
(a) 一括接続時
(b) ケーブル実装時
接着部
曲げやねじりなどの
力のイメージ
2 心テープ× 4
また,多心光ケーブルを用いて光通
信網を構築する場合,光ファイバ接続
作業の効率化のため,複数の光ファイ
光ファイバが平面状に並び,一括接続が可能
柔軟に変形し,歪などの増加を抑制
バを一括して接続する技術が不可欠で
す.そのため従来から複数の光ファイバ
図 3 新構造の 8 心間欠接着型光ファイバテープ
を並列させ一括被覆を施した光ファイ
NTT技術ジャーナル 2015.6
49
を束ねて80心ユニットとし,それを25ユ
トの溝番号の代わりに, 2 色の着色バ
ニット撚り合わせて,外周に外被を施
ンドルテープを交差して巻き付けること
ルテープの巻き付けは,ケーブル化後
すことで2000心ケーブルとしました.こ
で識別することとしました(図 4 )
.2
の特性に影響を及ぼすことが考えられ
のケーブル構造に対して,心線識別性
色の着色パターンとしては,10色のバン
ます.そこで,基本的な伝送特性,機
を確保するためには,ユニットおよび間
ドルテープを 5 色× 5 色で組み合わせ
械特性,温度特性などについて評価を
欠テープそれぞれの識別性を確保する
ることで25パターンとし,それぞれを各
実施しました.結果としては,安定した
よって識別することとしました.バンド
必要があります.従来ケーブルでは,ス
ユニットに割り当てることで,ユニット
特性を有することを確認することができ
ロットの溝番号によりユニットの識別を
識別を行います.なお,各間欠テープ
ました.
行っていましたが,本ケーブルはスロッ
の心線識別は,従来と同様に光ファイ
トロッドを使用していないため,スロッ
バ心線の外周に施した被覆の着色に
これらの技術および新たな心線識別
方法の確立により,世界最高密度とな
る地下光ケーブルを開発しました.
関連物品
■地下光クロージャ
前述の超多心高密度光ケーブルの開
発に合わせ,地下光クロージャにおける
8 心間欠接着型光ファイバテープ×10
効率的な設備構築を実現する 3 つの物
着色識別テープ
品を開発しました(図 5 )
.基本コンセ
プトとしては,既存品であるTNクロー
図 4 ユニット構成
ジャ(4)の筐体を活用すること,従来と同
大容量収納トレイ
高密度収納トレイ
テンションメンバ導通金具
開発物品
超多心
ケーブル
2000心
2000心
《最大収納時》
収納トレイ
2000心
超多心
超多心
ケーブル ケーブル
2000心
2000心
2000心
1000心
2000心
200心
《最大収納時》
収納トレイ
クロージャ
搭載イメージ
図 5 開発物品と適用イメージ
50
NTT技術ジャーナル 2015.6
既存
ケーブル
1000心
1000心
400心
R
&Dホットコーナー
等の施工性を実現することを目指して
金具の小型化を目指しました.
バが使われているため,光ファイバに曲
開発を進めました.
■浸水検知モジュール
げを加える曲げ部の形状を見直しました.
光ファイバ接続部が長期間,浸水す
新型の浸水検知モジュールを図 7 に示し
超多心高密度光ケーブルの全接続機
ると光損失の増加や機械的強度が低下
ます.加えて,従来と同様に浸水検知モ
能に特化した大容量収納トレイを開発
します.そこで,地下の接続部には通
ジュールの両サイドにストッパーを設
しました.本品ではクロージャ内部にお
信用とは別の光ファイバ心線に浸水検
け,挟み込んだ光ファイバの間に一定
(1) 大容量収納トレイ
いて光心線の収納に用いる光心線収納
知モジュールが設置されています.浸
の間隔を保持し,過度な圧力がかかる
トレイの大容量化を図り, 1 トレイ当り
水検知モジュールは図 6 に示すように
のを抑制しました(6).
最大400心収納可能な構造としました.
光ファイバを挟み込む構造となってお
試作した浸水検知モジュールを取り
合わせて開発した取付金具へ最大15枚
り,万が一接続部に水が入った場合,
付けた模擬線路に対してOTDRで測定
取り付けることで, 1 クロージャ当り最
浸水検知モジュール内の膨張材が水に
を行ったときの測定波形を図 8 に示し
大6000心(超多心高密度光ケーブル 3
反応して膨らむことで,光ファイバに曲
ます(測定波長:1650 nm,パルス幅:
条)の収納を実現しました.
げ 損 失 を 与 え ま す.OTDR(Optical
100 ns)
.図 8 において 2 カ所浸水して
Time Domain Reflectometer)で定期的
も,その先の区間を測定することができ
に測定することで,各接続部の浸水の
ました.
(2) 高密度収納トレイ
分岐点等において,大容量な心線を
収納 ・ 接続するために,光心線収納数
有無を監視することができます(5).
を拡大した高密度収納トレイを開発しま
今回の間欠接着型光ファイバテープに
した.収納トレイ以外の構成品はすべて
は,曲率半径R15の低曲げ損失光ファイ
今後の展開
今回の多心高密度化したケーブルの
従来品を活用し,光心線収納トレイの
高密度化を図ることで, 1 トレイ当りの
光心線収納数を従来品の 2 倍となる80
心収納可能な構造としました.クロー
ジャ内部において,従来と同等の作業
スペースを確保することで,施工性を担
保しつつ, 1 クロージャ当り最大3200心
曲げ損失
受光
レベル
の高密度収納を実現しました.本品に
ついては,既存の心線収納トレイと比
較してコスト面で優位であり,既存の光
ケーブルにも活用できることから,先行
距離
して導入される予定です.
(3) テンションメンバ導通金具
超 多心 高 密 度 光ケーブ ルのノンス
ロット構造に適応した,テンションメン
NTTビル
OTDR
バ導通金具を開発しました.ケーブル
クロージャ
の挿入方向に依存せず取付けが可能で
あり,テンションメンバの突出し ・ 引込
み現象を防ぐために,これまでテンショ
ンメンバ把持力として規定していた規
光ファイバ
格値をケーブルとテンションメンバの接
膨張
着により担保することにより,テンショ
ンメンバ取付作業性の向上を実現しま
(a) 通常時
(b) 浸水時
した.また,クロージャの大容量化 ・ 高
密度化を実現しつつ,超多心高密度光
図 6 浸水検知モジュール
ケーブルの心線識別性を確保するため,
NTT技術ジャーナル 2015.6
51
曲げ部
光ファイバ
膨張材
(a) 通常時
ケーブル技術,
” NTT技術ジャーナル,Vol.24,
No.12, pp.48-51, 2012.
(4) 宮岸 ・ 原野 ・ 中嶋 ・ 濱岡 ・ 沼田 ・ 髙見沢:“施
工性および信頼性を向上させた新たな地下光
クロージャ の 開 発,
” NTT技 術 ジャー ナ ル,
Vol.21, No.12, pp.61-63, 2009.
(5) 有居 ・ 東 ・ 榎本 ・ 鈴木 ・ 荒木 ・ 宇留野 ・ 渡邉:
“拡大する光アクセス網を支える光媒体網運用
技 術,
” NTT技 術ジャーナル,Vol.18, No.12,
pp.58-61, 2006.
(6) 山根 ・ 中澤 ・ 榎本 ・ 荒木 ・ 藤本:“光設備運用
の高度化を図る所外光配線設備識別技術,
”
NTT技術ジャーナル,Vol.21, No.11, pp.4245, 2009.
曲げ部
光ファイバ
膨張材
(b) 浸水時
図 7 新型浸水検知モジュール
波長:1650 nm
パルス幅:100 ns
浸水個所を検出
(後列左から)
西村 公敬/ 岩堂 哲也/
5 dB/div
通常時
浜口 真弥/ 野上 雅教/
遠藤 洋平
(前列左から)
柴田 征彦/ 新田 一樹/
浸水時
500 m/div
図 8 測定波形例
開発と関連物品の技術開発により,既
存設備の有効活用 ・ 基盤設備投資の抑
制を実現することで,事業への貢献が
期待できます.
■参考文献
(1) http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/new/
52
NTT技術ジャーナル 2015.6
index.html
(2) 豊田 ・ 安 齋 ・ 山本 ・ 鉄 谷 ・ 白木 ・ 髙見沢 ・ 小
川 ・ 榑松:“新たな多条布設技術および細径
1000心光ケーブルの開発,
” NTT技術ジャーナ
ル,Vol.20,No.12,pp.55-58, 2008.
(3) 山田 ・ 角田 ・ 高橋 ・ 鈴木 ・ 柴田 ・ 清末 ・ 濱岡 ・
金子 ・ 白木 ・ 髙見沢:“アクセスネットワークの
効率的な構築を可能とする超細径高密度光
榎本 圭高/ 田中 亮/
中川 直樹
国際規格に準拠した光ファイバを収容し
た本光ケーブルは,実用化ベースで世界最
高密度の光ケーブルであり,今後の大規模
光需要に向けてより効率的な設備構築が可
能となります.
◆問い合わせ先
NTTアクセスサービスシステム研究所
光アクセス網プロジェクト
TEL 029-868-6370
FAX 029-868-6400
E-mail nakagawa.naoki lab.ntt.co.jp
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