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平成25年度国際標準化連絡調整事務について - ITU-AJ

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平成25年度国際標準化連絡調整事務について - ITU-AJ
平成25年度国際標準化連絡調整事務について
総務省 総合通信基盤局 電波部 電波政策課 国際周波数政策室
1.はじめに
我が国では無線局の急増により周波数が逼迫している状
②電波の停止命令!
誤発射確認!
直ちに電波の停止
況にあり、これを緩和するためには、電波のより能率的な利
用に資する無線技術を導入することが求められています。ま
た、電波利用の国際的な調和を図りつつ、新たな無線技術
①遭難信号!
誤発射が多い
の国際標準化や国際展開を行っていく必要があります。
このため、我が国の電波のより能率的な利用に資する無線
高度化ビーコン
技術が国際標準として採用されるよう、総務省では、平成21
遭難確認!
救助隊派遣
年度から電波利用料財源により、当該技術の国際動向を踏
まえた国際機関等との連絡調整や当該技術の国際標準化
(国際標準化連絡調整事務)を積極的・戦略的に進めていま
す。
救助船
以下に、平成25年度における取組を御紹介します。
レスキュー
救助機
図1.システムと我が国のビーコン制御技術
(2)79GHz帯等を用いた移動通信技術の国際標準化(4000
2.安全かつ豊かで質の高い国民生活の実現
(1)Cospas-SarsatへのPLBビーコン制御技術の国際標準化
(900万円)
万円)
【背景】
我が国では、高度道路交通システム(ITS)による安全運
【背景】
転支援システムの実現のため、自動車の衝突防止だけでなく
遭難救助用のCospas-Sarsat衛星 システムを利用するビ
歩行者や自転車等の小さな物体の検知に優れた79GHz帯高
ーコン(EPIRB、ELT、PLB※2)の運用は約75%が誤発射で
分解能レーダーや700MHz帯を用いた安全運転支援システム
あり、また、誤発射停止は利用者しかできないシステムとな
(車車間・路車間通信等)の開発・標準化を進めています。
っています。同ビーコンは年間15%の割合で増加が見込まれ
79GHz帯高分解能レーダーについては、利用予定周波数帯
※1
ており、今後の周波数逼迫が懸念されています。
※1 Cospas-Sarsat衛星:Cospas-Sarsatが運営する捜索救助
用衛星システム
※2
EPIRB:船舶用の捜索救助システム。水に浮くことに
より動作。
ELT:航空機用の捜索救助システム。墜落時の衝撃に
より動作。
PLB:個人携帯用の捜索救助システム。ボタン操作に
より動作(日本未導入)
。
【実施内容及び目標】
(77.0-81.0GHz)の一部に国際的な分配がなされていない帯
域(77.5-78.0GHz)が存在しています。
【実施内容及び目標】
79GHz帯高分解能レーダーの標準化及び利用周波数の一
次分配に向けて、国際電気通信連合無線通信部門(ITUR)
、APT WRC準備会合(APG)
、欧州電気通信標準化機
構(ETSI)等の各標準化会合へ参加し、標準化活動を実施
するとともに各国の関係者との意見交換を行い、動向調査
及び仲間づくりを進めます。
我が国の技術が盛り込まれたビーコン制御技術が国際標
準として採用されるよう、Cospas-Sarsat合同委員会(JC)
及び専門家会合(EWG)への参加、関係各国の政府及びビ
ーコンメーカーとの戦略的調整を図ります。
(3)次世代GMDSS(全世界的な海上遭難・安全システム)
要素技術の国際標準化(2000万円)
【背景】
国際海事機関(IMO)はGMDSSの見直しに向けた検討を
ITUジャーナル Vol. 43 No. 9(2013, 9)
19
スポットライト
の高い移動体向け放送方式であり、世界各国の関心が高く、
インマルサット衛星
:次世代GMDSS
導入に向けた検討が行われています。ITU-R SG6では、移動
:遭難通信
:海上安全情報通信
体向け地上デジタルマルチメディア放送に関するユーザー要
IT
R
C・L
EG
ット
信
ルサ
マ
ト通
サッ
イン
ル
マ
イン
海岸
地球局
データ
センター
求条件の勧告は存在するものの、当該システムの導入に必要
AIS SAT
な混信保護比等(置局条件)を規定した勧告はありません。
【実施内容及び目標】
次世代
AIS
ITU-R SG6会合でのISDB-Tmmの国際標準化提案に向
コスパス衛星
サーサット衛星
け、他の地上デジタルマルチメディア放送方式に関する混信
次世代
AIS
遭難信号
地上受信局
航空機
SART
救命筏
反映を目指します。
短
通
タ
ム
テ
ス
シ
波
信
ー
波
Fデ 、中短
波
短
超 テム
シス
通信所
比等(置局条件)を規定する勧告策定及び国内基準等への
無
VH
AIS
海岸局
衛星
EPIRB 遭難船舶
(救助信号
の送信)
双
方
線 向
電
話
海上捜索機関
保護比等の情報収集及び今後の動向調査を行い、混信保護
3.我が国の産業競争力の強化
巡視船
航行船舶
(1)次世代移動通信の国際協調(9000万円)
NAVTEX
(気象情報等の海上
安全情報の受信)
【背景】
航行船舶
航行船舶
航行船舶
● AIS(船舶自動識別装置)
AISは、船舶の「名称」
「種類」や「位置」
「速度」
「針路」
「識別信号(MMSI)」など
の情報を定期的に、船舶局間や船舶局と海岸局間で情報の交換を行うもの。
● 次世代AIS
現行のGMDSS要素ではない2チャンネルに加えて、衛星検出用、遭難警報用、
データ
通信用、海上安全情報の放送用等の計6チャンネルで構成されることを想定。
● VHF帯データ通信
VHF帯において、TDMA(時分割多元接続)により、一周波数で複数同時にデータ通
信を行い、周波数の有効利用を図るシステム。
現在、国際的にIMTに特定されている周波数帯域幅は、
増大するトラヒックに対し所要周波数帯幅を満たしていない
状況にあります。そのような中、WRC-15に向け、IMTに要
求される周波数帯幅やIMT候補周波数帯の検討等に関する
議論が加速しています。
【実施内容及び目標】
各国との調整、我が国のIMT関連技術の標準化提案の推
図2.IALAで想定する次世代GMDSS
進を行うとともに、IMT等の無線通信システムに関して、我
行っており、2018年までに次世代GMDSSのシステムや機器
が国の将来の周波数事情と国際的な周波数との調和を実現
の仕様を決定する予定です。一方、ITUはIMOの検討と並行
し、我が国の国際競争力の強化及び周波数有効利用を目指
して、次世代GMDSSに求められる無線通信技術の要件を満
します。また、ITU-R SG5 WP5D会合の日本開催(7月)を
たす無線通信方式の検討を行い、国際航路標識協会(IALA)
はIMOやITUの技術検討を支援するため、初期段階として具
スマートフォン利用者数の増加や、動画等の大容量コンテンツの利
用増加等によりトラヒックが増大している。
体的なシステムや機器を想定した検討を行っています。
【実施内容及び目標】
(Gbps)
次世代GMDSSの要素技術となる可能性の高い次世代船
400
舶自動識別装置(次世代AIS)やVHF帯データ通信につい
350
て、周波数有効利用効率の高い無線通信技術をITU-Rや
300
IALAに提案し、国際標準化と周波数の有効利用を目指しま
250
す。
200
月間平均トラヒック
349.0
1年で
1.
93倍
に増加
【背景】
我が国が開発した移動体向け地上デジタルマルチメディア
放送システム(ISDB-Tmm)は、混信に強く、かつ周波数効率
20
ITUジャーナル Vol. 43 No. 9(2013, 9)
+20%
IMTへの
周波数追加の必要性
+17%
+30%
181.3
154.6
+17%
123.5 +25%
105.2 +17%
82.2
+28%
71.2
62.9
100
50
0
+15%
+13%
急増する移動通信トラヒック
H22.06
H22.09
H22.12
H23.03
H23.06
H23.09
H23.12
H24.03
H24.06
H24.09
H24.12
局条件の国際標準化(1000万円)
+6%
274.3
234.8
150
(4)移動体向け地上デジタルマルチディア放送システムの置
328.9
図3.IMTへの周波数追加の必要性
行い、欧米・アジア諸国を含めた各国との連携を図ること
無線電波の強度
で、国際標準化活動を積極的に推進します。
(2)ミリ波帯を用いた高速移動体向け大容量無線通信技術
の国際標準化(1700万円)
通信に必要な
電波強度
強
度
屋内環境の電波雑音を反映した
無線回線設計によってブロードバ
ンド無線機器類の効率的で安定し
た供用が可能となる
屋内環境の電
波雑音強度
《屋内の
無線局》
【背景】
急速に発達するブロードバンド通信に対応するためには、
システム雑音
屋内環境
エリアB
屋内環境
エリアA
30GHz超の周波数帯(ミリ波帯)の未利用周波数帯を利用
し、新たな電波利用システムへの周波数割当てを可能とする
図4.屋内環境の電波雑音を捉えて無線システムが運用されるイメージ
ことが周波数の有効利用及び周波数逼迫対策の観点から必
要です。
【実施内容及び目標】
未利用周波数帯への無線システムの移行の促進及び我が
国の国際競争力強化に資することを目的として、我が国開発
は、我が国の電波の電波有効利用に適したものとはならない
状況にあります。
【実施内容及び目標】
我が国の屋内環境における電波雑音の実測の結果及び既
による40GHz帯を用いた移動体通信システムの周波数有効
に無線システムが使用されている周波数帯において電波雑音
利用技術が国際標準として採用されるよう、関係する国際
を測定する手法について、国際標準への反映を目指します。
機関の会合(APT無線グループ(AWG)
、国際民間航空機
また、そのために電波雑音の測定・分析に関する海外動向
関(ICAO)
、ITU-R)に参加し、国際標準化を目指します。
等の調査を行い、国際標準化提案に必要となる親和性を確
保するための技術的検討等を行います。
(3)固定無線アクセス技術等の国際標準化(2500万円)
【背景】
近年の無線通信の需要増による電波資源の逼迫などから、
それにより、我が国の実態に即した形で国際的な電波の有
効利用(混信検討、通信方式導入等)の議論を促進し、我
が国における電波の有効利用に貢献するとともに、我が国の
ミリ波帯等は、固定無線アクセス等の将来利用が見込まれ
電波利用製品のグローバル展開と国際競争力の強化の貢献
ており、今後の有力な通信手段として注目されています。
を目指します。
【実施内容及び目標】
主要国における固定無線アクセス等の分野の利用状況や
標準化動向の調査、潜在的なニーズの把握から我が国の技
5.おわりに
術の国際標準化までを一体として実施し、国際標準化(電
国際標準化連絡調整事務は、上記の2∼4の各施策のほか
波の建物侵入損失に係る勧告、固定無線システムの利用動
に、国際電気通信連合(ITU)憲章第28条に基づく構成国
向に関するレポート)を目指します。
の義務として行うITUの経費を賄うための分担金の支出、
ITU-Rにおける活動支援のための資金拠出(いずれもITU-R
に係る応分)を行います。これらは、ITU-Rにおける影響を
4.ネットワークの基盤技術の確立
電波の有効利用に係る屋内電波雑音の国際標準化(1100
万円)
【背景】
確保し、周波数共用のための技術及び技術基準の検討等、
国際的な周波数管理の枠組みの見直しやその他各検討作業
の議論を先導し、もって我が国の便益・影響を確保すること
を目的としています。
ワイヤレスブロードバンドによる社会基盤の実現には、無
線システムの利用環境での電波の基本品質の一つである電波
総務省では、以上の施策を実施することにより、我が国の
雑音特性の把握が必要ですが、屋内環境での電波雑音特性
周波数事情に合う周波数利用効率の高い無線システムの導
はITU-Rの研究課題にあるものの、欧州での実測結果が僅か
入・利用促進を行い、我が国の周波数の逼迫対策への貢献、
に勧告に示されているのみです。したがって、勧告に記載さ
電波の有効利用及び我が国の無線技術の国際競争力強化等
れた特性を我が国の無線システムの共用検討等に用いること
を推進してまいります。
ITUジャーナル Vol. 43 No. 9(2013, 9)
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