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2008年10月01日 補欠監査役07.02 ∼制度調査部情報∼ 2007 年 2 月
∼制度調査部情報∼ 2007 年 2 月 6 日 全3頁 補欠監査役 07.02 制度調査部 堀内勇世 「会社法」の焦点シリーズ 42 【要約】 ■監査役が欠けた場合などに備えて、補欠監査役を選任することがある。 ■会社法では、この補欠監査役等について、規定が設けられている。 ■そこで、補欠監査役の概略につき説明する。 1.補欠監査役 ○監査役が欠けた場合や会社法や定款で定められた監査役の人数を欠くようになるときに備えて、補 欠の監査役を選任することが実務で行われている。この補欠の監査役を、一般に「補欠監査役」と 呼んでいる。 ○会社法になる前の旧法下では、補欠監査役に関しては規定が存在しなかった。しかし、平成 15 年 (2003 年)4 月に、補欠監査役の選任が可能であるとの解釈を法務省が示して以来、実務でも補欠 監査役の選任が行われてきた(注 1)。 (注 1)以下のレポート参照。 ・「あらかじめ選任される補欠監査役」(堀内勇世、2003.5.21 作成) ・「補欠監査役制度の導入動向」(堀内勇世、2003.9.25 作成) ○現在の会社法では、補欠監査役という言葉はないものの、補欠監査役の選任が可能であることが明 らかとなっている(会社法 329 条、336 条)。 2.会社法における制度 (1)選任の可否 ○会社法 329 条 2 項は、「役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠 くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。」とされている。 ○このときの「役員」とは、取締役、会計参与及び監査役のことである(会社法 329 条 1 項)。 このレポートは、投資の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を意図するものではありません。投資の決定はご自身の判断と責任でなさ れますようお願い申し上げます。記載された意見や予測等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更され ることがあります。内容に関する一切の権利は大和総研にあります。事前の了承なく複製または転送等を行わないようお願いします。 (2/3) ○したがって、会社法では、補欠監査役の選任が可能である。 (2)選任機関 ○株主総会の決議により選任される(会社法 329 条)。その際の決議は、会社法 341 条により次のよ うになる。 定 足 数 原則、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主 の出席。 しかしながら、定款で、上記の「過半数」とあるところを 3 分の 1 以上の 割合を定めて変更することができる。つまり、定足数を緩和する場合には、 3 分の 1 までしか引き下げることができない。 議 決 原則は出席した当該株主の議決権の過半数の賛成。 しかしながら、定款で、上記の「過半数」とあるところをそれよりも大き な割合を定めて変更することができる。例えば、「出席した当該株主の議 決権の 3 分の 2 以上の賛成」(cf.特別決議)とすることも可能である。 ○なお、旧法下では定款の規定が必要とされていたが、会社法では定款の規定は不要とされている。 ○なお、補欠監査役の選任の決議については、会社法施行規則 96 条が存在する。同条 2 項において、 決議事項が以下のように定められている(注 2)。 ①候補者が補欠である旨。特に社外監査役の補欠であるときにはその旨 ②必要に応じて、被補欠者の特定に関する事項(例えば、特定の監査役の補欠とすることや、全 社外監査役の補欠とすることなど)。 ③必要に応じて、補欠監査役の優先順位(例えば、特定の監査役に複数の補欠者が存在する場合 の優先順位)。 ④必要に応じて、補欠監査役の選任の取消しに関する事項(選任の取消しを行う方法をあらかじ め決議していればその決議で決まった方法で取消しをすることも可能とされている。なお、取 消しに関する事項決議しておかなくとも、株主総会で選任の取消しなどを行うことなどは可能 とされている。)。 (注 2)相澤哲(法務省大臣官房参事官)他「新会社法関係法務省令の解説(3) 株主総会 以外の機関」(旬刊商事法務 No.1761〔2006.3.15〕の 12∼23 ページ。特に 12・13 ペ ージ)参照。 (3)選任決議の有効期間 ○選任決議の有効期間については、会社法施行規則 96 条 3 項に次のように規定されている(注 3)。 ・原則、決議後最初に開催する定時株主総会の開始のときまで。 ・ただし、定款の定めによって、延長することも可能。 ・もっとも、定款の定めによって延長した場合も、株主総会の決議で短縮可能。 (3/3) (注 3)郡谷大輔(前法務省民事局付)監修「会社法関係法務省令 逐条実務詳解」(清文社、2006 年)の 175・176 ページ参照。 3.報酬 ○補欠監査役に、報酬または手当て的なものを払うか否かについては、会社法では明確にされていな い。 ○旧法下でも解釈は固まっていなかったようである。大きく「払わないほうがよいのではないか」、 「小額なら払ってもよいのではないか」という 2 つの説に分かれていたようである(注 4)。 (注 4)この点については、社団法人日本監査役協会のホームページに掲載されている、家 近正直(弁護士)監修「補欠監査役選任制度に関するQ&A集」(日本監査役協会事 務局、2003 年 6 月 16 日)のQ23・Q24 参照。 なお執筆時の上記資料の URL は次のとおり。 http://www.kansa.or.jp/PDF/ns_030612.pdf ○そのような中、実務がどのようにしているかは、補欠監査役に限らず補欠役員全体に関するものと なってしまうが、社団法人日本監査役協会が 2006 年 11 月 22 日に公表した、「株主総会前後の役 員等の構成などに関するアンケート集計結果―第7回 インターネット・アンケート《監査役設置 会社版》―」(注 5)の 23 ページから伺い知ることができる。 (注 5)(社)日本監査役協会が、2006 年7月 24 日から 8 月 14 日にかけて、インターネット を利用し、監査役設置会社の会員を対象として行ったアンケート調査の結果である。 http://www.kansa.or.jp/PDF/enquet7_061122-1.pdf 参照。 ○そこには、直近の定時株主総会までに、補欠役員を選任したと答えた会社に対して、「補欠役員に 報酬は支給していますか(支給する予定ですか)。」と質問した結果が掲載されている。そこで上 場会社の部分だけ抜き出すと、次のとおりである。 上場 回答数 % 231 58.5 2.報酬は支払っていないが、代替的な手当てはある 60 15.2 3.月額 5 万円未満を支給している 24 6.1 4.月額 5 万円以上 10 万円未満を支給している 44 11.1 5.月額 10 万円以上を支給している 13 3.3 1.報酬は支給していない 回答社数 395