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研究授業と研究協議

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研究授業と研究協議
【Bブロック】
研究授業と研究協議
神戸市立長峰中学校 上 田 元 章
1.は じ め に
Bブックでは、長峰中学校において、研究授業と研究協議を行った。研究協議では、各校の実践報告
や情報交換、意見交換などを行った。
2.研 究 授 業
学 習 指 導 案
指導者:神戸市立長峰中学校 上 田 元 章 1.日 時 平成 20 年 12 月8日(月)第6校時
2.学 級 2年1組(男子 18 名、女子 19 名、計 37 名)
3.場 所 2年1組(東館3階)
4.単元の概要
⑴ 単 元 名 「3章 電流とその利用」
⑵ 指導計画 1.電流のはたらきを調べてみよう 3時間
2.磁石のまわりにはたらく力 3時間
3.なぜモーターは回るのか 3時間(本時は3/3)
4.発電機のしくみはどうなっているのか 2時間
⑶ 単元の目標
電流を利用して熱や光、音などを発生させたり物体を動かしたりできることを見いださせ、電
流の磁気作用や電流と磁界の相互作用など、電流のはたらきについて規則性を理解させる。
5.本時の主題
超簡単クリップモーターの製作
6.主題設定の理由
生徒はすでにフレミングの左手の法則やモーターが回転するしくみについての知識は身につけて
いるが、実際にそのしくみによってモーターが回るということは体験していない。また、電気は現
代社会においてあたりまえのように身近に使われているのにもかかわらず、生徒にとってはその性
質や電化製品のしくみは不透明な部分が多く、電気の授業は身近なものとは感じていない。
本時は、電化製品のうち最も基本的な電動機のしくみを、超簡単クリップモーターを製作するこ
とにより、実体験として肌で感じとらせることを目的とした。そのためには、できるだけ多くの生
徒に、自分で手作りしたモーターが回る瞬間を体験させ、知識として知っていることが現実になる
感動を味わわせたいと考えた。そこで、これまでのクリップモーター製作の問題点を調べ、より簡
単で安定して回るクリップモーターの開発を試みた。
また、クリップモーターを個別に製作させることで、班別実験では把握しにくい個人の実験技能
や実験に対する取り組み方などを正確に評価できるという利点もある。
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7.本時の目標
超簡単なクリップモーターを製作することによって、電気の学習への興味を持つとともに、モー
ターが回転するしくみについてもより深く理解する。
8.本時の展開
過 程
学習内容と活動
指導上の留意点
導
入
・前時までの学習内容を復習する。
・電流が磁界から受ける力(フレミングの
左手の法則)について確認する。
展
開
・クリップモーター製作の手順とポイン
トの説明を聞く。
・エナメル線について説明しておく。
・コイルの軸のエナメルを両端とも全部は
ぐと半回転ごとに逆向きの力がはたらく
ことを説明する。
連続的にクリップモーターを回転させるためにはどうすればよいか?
・コイルの軸のエナメルを一方は全部はが
し、もう一方は半分だけはがすと逆向き
の力がはたらかないことに気づかせる。
・クリップモーターを製作する。
・エナメルを丁寧にはがすように指導する。
(パフォーマンステスト)
・コイルの回転軸は必ず一直線になるよう
に調節させる。
・コイルが自然に回り始めないときは、最
初にコイルを軽くついて回転の勢いをつ
けるように指導する。
・クリップモーターが回転した生徒は、・はやく完成した生徒は、自分たちで工夫
手を挙げて報告する。
するように指導する。
どうすればより勢いよくクリップモーターが回転するだろうか?
円形以外の形のコイルでもクリップモーターは回転するだろうか?
ま と め
・クリップモーターが回転するしくみや
より勢いよく回転させる方法などにつ
いてレポートにまとめる。
・後片付け
・時間があれば、自分で工夫したことなど
を発表させる。
9.評価の観点
1.クリップモーターの製作に意欲的に取り組む(関心・意欲)
2.クリップモーターをより勢いよく回転させる方法などを自ら工夫して見いだすことができる(科
学的思考)
3.クリップモーターを正確に製作することができる(実験技能)
4.モーターが回転するしくみについて理解し、知識を身につけている(知識・理解)
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3.授業後の反省と研究討議
〈授業者より〉
・クリップモーターの製作をテーマにした理由は、「時間があれば全員に作ってもらう。」と生徒と約
束していたこともあるが、私自身で工夫した部分も多く、参観に来ていただいた先生方にも参考に
していただける部分があるのではないかと思ったからである。
・今までのクリップモーターの製作では、回転子に対する工夫に重点がおかれ、軸受け側に対する工
夫があまりなされていなかったため、今回は軸受け側の工夫に力点をおいた。
・乾電池ボックスとワニ口クリップとの間に家具用のフェルトを貼り、クリップがより安定するよう
に工夫した。
・従来の授業では、50 分間で半分程度の生徒しか回らなかったこともあるが、今回は 20 分間でほ
ぼ全員の生徒がクリップモーターを回すことができた。(34 人中 31 人)
・回らなかった生徒用に、アルニコ磁石を用意していたが、時間の関係で使用できなかった。
・教室の一人机での実験であるため、パフォーマンステストを兼ねることができ、評価にもつなげや
すい。また、一人で製作するため、モーターが回ったときの感動も大きかったようだ。
・早く回った生徒にコイルの形を自由に工夫させたことで、より発展的な思考をさせることができた
のではないかと思う。
〈参加者より〉
・プリントのコイルが実物大であったため、生徒にとってつくりやすいと思った。
・生徒たちの反応がよく、互いに刺激し合うところが良かった。
・授業者の説明が丁寧で、生徒との日頃の関係づくりが良いことがわかった。
・大きなモデルを使っての説明が大変わかりやすかった。
・個々での作業が一人一人のモチベーションを高めることにつながり、個人の技能もみることができ
た。
・家庭で手に入るものだけで行うことができれば、さらに良いのではないか。
・実験をすることの大切さがよく分かった。実際にさせてみて分かるところもある。
・実験する時間がなければ、演示でする実験も場合によっては必要である。
・生徒たちがどんどん授業に入っていくのがよくわかった。
〈各校での工夫〉
・選択理科の授業で、ヌマムツを捕獲し、観察・飼育を行ってきた。
・食物の消化と吸収の単元では、「私は食べ物・消化の旅」という生徒が興味をひくプリントづくり
を行っている。だ液の実験は、個人で行わせいてる。
・学校の現状では、定着をはかるために説明を重視しているが、大切なところは演示実験を行い印象
づけている。
・普段から理科室にスポンジと水を入れたペットボトルを置いておき、生徒に自由に試させている。
・フィルムケースにエナメル線を巻いたものやU字型磁石を理科室に置き、生徒に自由にさわらせて
いる。
・保健室から一斗缶をもらい、大気圧を体感する演示実験を行った。
・「ミジンコ天国」という実験水槽をつくったり、3年目の実験水槽を置いたりして生態系や自然の
浄化作用がみられるようにしている。
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・だ液の実験で、だ液の提供を嫌がる生徒がいるが、だ液のかわりに市販の酵素を使用することもで
きる。
〈指 導 助 言〉
・今回の学習指導要領の改訂で理科は指導内容が増えるので、実験器具を新しく準備する必要が出た
り、教師自身が体験していない実験をさせることもあると思う。各校で対応できるよう準備してお
いてほしい。
・自然への「驚きの感覚(sence of wonder)」を大切にしていけば理科嫌いを少なくしていけるの
ではないか。さまざまな現象を実際にみて感じることが、理科のスタートになるのではないか。「な
ぜだろう」と考えることが大切。そのときは分からなくても、後で色んな知識が入ってきたときに、
それと結びつき理解が深まることがある。実際に実験をしたときに、模範的な実験結果と異なる結
果が出ることがある。そのような体験をして、さまざまな現象の誤差についても科学的な判断がで
きるようになるのではないか。
<超簡単クリップモーターを作ろう>
1.ね ら い
今回の実験は、電化製品のうち最も基本的な電動機のしくみを、超簡単クリップモーターを製作する
ことにより、実体験として肌で感じとらせることを目的とした。そのためには、できるだけ多くの生徒
に、自分で手作りしたモーターが回る瞬間を体験させ、知識として知っていることが現実になる感動を
味わわせたいと考えた。そこで、これまでのクリップモーター製作の問題点を調べ、より簡単で安定し
て回るクリップモーターの開発を試みた。
2.準備するもの
・エナメル線(直径 0.5㎜,50㎝) ・フェライト磁石(N極とS極が片面ずつに分かれているもの)
・ワニ口クリップ2個 ・単一乾電池1個 ・乾電池ボックス ・紙やすり ・ニッパ
・単三乾電池1個(コイルを巻くときの芯として使う。試験管でもよいが乾電池のほうが割れる心配がない)
3.これまでのクリップモーターの問題点
クリップモーターの作り方は、インターネットなどでも様々なものが紹介されており、そのほとんど
が回転子の作り方に対するコツであった。しかし、実際に生徒に作らせてみると、どんなに回転子を丁
寧に作っても、多くの生徒が時間内に回すことができないという現実があった。
その原因を調べてみると、確かにエナメルのはがし方に問題があったり、コイルの回転軸が一直線に
調整されていなかったりなど、回転子そのものに問題がある場合も多かったが、半分程度の生徒がゼム
クリップで作った軸受け側に問題があった。クリップモーターというネーミングのためか、これまでの
ものはそのほとんどがゼムクリップを軸受けとして利用している場合が多かったが、そこに大きな落と
し穴があるように思われる。以下にその問題点をあげてみた。
⑴ ゼムクリップで軸受けを作ったり、軸受けを微調整したりするだけで時間がかかってしまう。(最
大の問題点)
⑵ ゼムクリップを乾電池に直接セロハンテープで固定する場合も、消しゴムや粘土などを使って土台
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に固定する場合も、針金が根もとから回転してしまって不安定になりやすい。
⑶ ゼムクリップを伸ばして使用するため、元の形がどうしても残ってしまい、ひずみが生じやすい。
⑷ 土台に固定する場合は、リード線が必要となる。(リード線を取り付けるだけでゆがんでしまう。)
⑸ 土台に固定する場合は、ゼムクリップとリード線の接続に不備が起こりやすい。
⑹ 強力な磁石を利用したくても、ゼムクリップがひきつけられて倒れてしまうため難しい。
⑺ 持ち運びをするだけで、軸受けにひずみが生じてしまう。
4.改良点と利点
以上のような軸受けの問題点を解決するために、乾電池ボックスとワニ口クリップを使用した超簡単
クリップモーターを考案した。これには、いくつかの優れたところがあるので、以下にあげてみた。
⑴ 軸受けは、ワニ口クリップを乾電池ボックスのつめにはさむだけなので、製作時間が全くかからない。
⑵ ワニ口クリップを乾電池ボックスのつめにはさんでいるため、大変安定している。
⑶ ワニ口クリップには、元々数個の穴が開いているため、穴を開ける必要もなく、ひずみもない。
⑷ リード線もセロハンテープも必要なく、分解や後片付けも非常簡単である。
⑸ ゼムクリップよりもワニ口クリップのほうが接触部分の面積が大きいため、接続の不備がない。
⑹ 強力な磁石を利用しても、ひきつけられて倒れる心配がない。
⑺ 持ち運びをしても、安定しており、再調整もしやすい。
⑻ すべて理科室にあるものだけで準備することができる。
⑼ 円形の穴が軸受けになるため傾けることができ、回転しやすいポイントを探りやすい。
<参考資料>
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