Comments
Description
Transcript
2013 - 東京工業大学
不徴収協定に基づく派遣交換留学終了報告書 所 属 ( 本 学 ) 理工学研究科 応用化学専攻 現 在 の 学 年 修士2年 留 学 先 国 フィンランド 留学先大学 アールト大学 留 学 先 大 学 アールト大学 留 学 期 間 2013 年 8 月 23 日~2014 年 6 月 14 日 ① 留学先大学の概略 アールト大学は、2010 年にヘルシンキ工科大学、ヘルシンキ経済大学およびヘルシ ンキ芸術大学が統合してできた大学である。これは、いわば東工大、一橋大、芸大が合 併するような革命的な大学再編であり、特に今後のフィンランドの教育における中核を 担う機構として、大きな注目と期待が寄せられている。ヘルシンキ工科大学は、同国で は二番目に古い大学であった。今でもキャンパスや校舎には、著名な建築家アルヴァ・ アアルトの設計によるものが多々ある。ガイドブック「地球の歩き方」にも掲載される ような観光スポットにもなっている。ヘルシンキ郊外の、豊かな自然に囲まれた場所に ある。 東工大からの交換留学では、主にオタニエミ(ヘルシンキの中心街からバスで 20 分 ほどのところ)にあるキャンパスで授業・研究を行うことになる。 ② 留学前の準備 留学前は、TOEFL、TOEIC の勉強を繰り返した。TOEIC は 5 年間で、20 回ほど受験し たが、TOEFL iBT は留学 1 年前から 3 回受験しただけである(TOEFL 910, TOEFL iBT )。 また、東工大の短期語学研修や海外インターンシップにも参加した。学内で、積極的に 英語を使うように心がけていた。 現地にはアールト大学の学生会が運営する寮があるので、住居を探すのには全く苦労 しなかった。ただ、部屋の広さやフラットメイトは運次第だと思う。私は、通っていた オタニエミキャンパスの中にある寮で暮らした(個室。キッチン、バスルームを 4 人で シェア。光熱費およびインターネットを含めて月々260 ユーロ。他の留学生も 200 ユー ロから 350 ユーロ程度の量に住んでいた) 。 アールト大学では、前提知識を必要としないコースに参加したため、特別な準備は行 わなかった。 ③ 留学中の勉学・研究 研究活動は全く行わなかった。授業、プロジェクトのみを履修した。 履修登録した科目 Product Development Project (10単位) Knowledge of Strategic Management (3単位) Marketing (3単位) Principles of Strategic Management(3単位) Cross-Cultural Management (3単位) Introduction to Intercultural Communication L(3単位) Multicultural Teamwork and Leadership L (3単位) Workplace Communication Skills (2単位) Get to know Finland (1単位) Finnish 1A (2単位) Finnish 1B (2単位) 事前の計画では、マネジメントの科目を20単位履修する予定だったが、授業がなく なってしまっていたり、フィンランド語の授業であったりした。現地の先生とチュータ ーからのアドバイスを受けて、3科目ほど履修をあきらめて、Product Development Project を履修した。専門の授業では、グループワークが多かったが、現地の学生と同 程度の英語レベルだったので、ストレスをためずに勉強できた。専門の授業に関しては 目標を達成できたと思う。 また、フィンランド語の授業(Finnish 1A, 1B)も履修した。現地のほとんどの人 が英語がペラペラだったこともあり、フィンランド語を学ぶ重要性をあまり感じなくな ったので、後期は履修をやめた。 ④ 留学中に行った勉学・研究以外の活動 経験の浅いスポーツに取り組み、月に2回ほど日本食パーティを企画したり、異文化 交流プログラムに参加したりした。留学当初は「極寒の地で何ができるのか」と心配し ていたが、フィンランドの課外活動の環境は予想以上に充実していた。 冬の間は、アイスホッケーとダンスをそれぞれ週に2,3回練習した。フィンランド では、インドアスポーツ、ウィンタースポーツがともに非常に盛んだ。キャンパス内に アイスホッケーのリンクがあり、ヘルシンキ市内のあちこちにスケート場がある。1月 に入ってからバルト海(フィンランド湾)が凍りつき、海の上を歩いたりスケートをし たりできるようになった。寮の居室から沿岸までは徒歩2分ほどである。海上でのスケ ートが最近の朝の日課になった。ただ、雪が積もるにつれてだんだん滑りにくくなるの で、2月からは海上でのスケートはほとんど不可能になる。日本では1年に1度くらい しかスケートをしておらず、ほとんど初心者だったが、友人と一緒に確かに上達してい ることを実感した。 アイスホッケーというと、自分には無縁のスポーツと考えていたが、素人でも十分に 楽しむことができる。試合をするレベルには全然達していないが、パックをただ打ち合 っているだけでも面白い。アイスホッケーがフィンランドで大人気のスポーツの一つで ある理由がすぐに分かった。 ダンスのレッスンは、ストリートダンス(ブレイクダンス)、アクロバティックダン ス、サルサから社交ダンスなどなど幅広い種類がある。ブレイクダンスをメインにして いるが、これはトレーニングの要素が多い。ブレイクダンスというと、片手で逆立ちを したり、頭だけで体重を支えて回転したりと、人間離れした動きのイメージがあるだろ う。だが、レッスンには女性も3~4割参加していて、基本的なステップの練習ばかり である。傍から見ていると非常に難しいように思えるが、実際に動きを教わると思って いたほど大変ではなかった。 また、フィンランド人、留学生仲間を誘って日本食パーティをしばしば催した。「寿 司の作り方を教えて」と友達に頼まれることが多いのと、自分も日本食が恋しいという こともあって企画していた。初めての企画は、6~7人の小さなパーティだったが、最 近は30人ほどでパーティをする機会もあった。だんだん要領をつかんできたのと、日 本に留学していたフィンランド人の協力もあって、寿司や鍋、からあげなどを振る舞う ことができた。寿司というだけで喜んでくれるし、他の日本食もすこぶる好評だった。 毎回新しい友達を招待しているので、様々な人と交流する機会にもなった。逆に、パー ティに誘ったスペイン人やドイツ人の友達から食事会に誘ってもらえることもあり、交 友関係を広げるのに助かった。 「日本の文化を発信する」という意義もあり、とてもよ かったと思う。 また、Student Family Friendship Program という異文化交流プログラムに参加して いる。これは大学の卒業生の家族と交流できる留学生向けの事業で、月に1回ほどパー トナーの家族と過ごした。ホームステイをしたり、中学生の子供に日本語を教えたりし ている。現地の生活を体験できる貴重な機会であるとともに、日本とフィンランドの違 いを発見できる場であった。 ⑤ 留学を終えて、自分自身の成長を実感したエピソード Product Development Project と呼ばれている、産学連携プロジェクトを履修して いた。学内で知らない人はほとんどいないくらい有名である。留学生や社会人学生の 間でも人気がある。参加している学生は、デザイン専攻、ビジネス専攻、工学専攻と 幅広い。9か月間にわたるプロジェクトで、10名程度のメンバーから成るチーム が、 少なくとも1万ユーロ程度の予算をかけてプロジェクトを行う。保険会社や、ゲーム 会社、ライフルを製造している会社、ノキアなど、15社ほどのスポ ンサーそれぞれ が、一つのチームと連携してプロジェクトを進めている。もちろん、プロジェクト内 容はチームごとによって全く違ったものになる。 過去のチームには、スポンサーを説 得して30万ユーロもの規模でプロジェクトを行った例もあるそうだ。 私の場合、6人のフィンランド人と、ロ シア、スウェーデン、スペイン、オーストラ リアからの留学生がチームメイトだった。Kapseli Oy というフィンランドの会社 がパ ートナーで、新しいタイプの宿泊施設の創出という課題に取り組んだ。具体的には、 空港や被災地に設置できる、カプセルホテルのような宿泊施設を目指した。 このプロジェクトでは、企業の人たちとの関わりが非常に深い。毎週ミーティングを 行うだけでなく、実際に工場を見学したり、プロジェクトに関わっている投資家や政 治家が参加するマイルストーンパーティに参加したりできた。ミーティングや、フォ ーマルなパーティの場で、自分たちで考えたプランを示して、それが実際に評価され たことが、この留学で得ることができた経験と自信につながっていると思う。ベンチ ャー企業と協力していたが、1年を目途に製品を実際に市場に投入すると聞いたとき は非常にうれしい気持ちと、達成感があった。 ⑥ 留学費用 渡航費:ロンドンで行われた東工大の海外インターンシップの後、直接フィンランド へ渡航した。往復で700ユーロ程度。 生活費:学食は2.6ユーロ(学割)で食べ放題。自炊するより安い。交際費を含め て月に200ユーロくらい 住居費:アールト大学の寮で月々260ユーロ。敷金は全額戻ってきた。 保険料:東工大が包括契約している、一番安いプランで10万円程度だった。 奨学金:経団連グローバル人材育成スカラーシップを受給していた。 現地での生活で、およそ140万円使った。ヨーロッパ内で1週間程度の旅行を4度 したので、およそ30万円使ったと思う。 他、東京の下宿を引き払ったり、引っ越したりしたので、それにも15万程度かかっ た。 フィンランドは授業料が無料だが、東工大に授業料を修める必要がある。 ⑦ 留学先での住居 ヘルシンキの学生寮は2種類ある。HOAS と AYY と呼ばれている。 私は、AYY(アールト大学 学生会)に申し込んだ。インターネットで申し込みが可 能。室内にシャワーとトイレがほしい等、きちんと要望を伝えた方がよい。早く申し込 んでいた学生ほど、いい部屋が充てられていた気がする。HOAS よりも AYY の方が、キ ャンパスに近くてよい。 フラットメイトはフィンランド人1人、パキスタン人2人だった。バスルーム、キッ チンが共同だった。初めは、正直めちゃくちゃ汚く、12月にはキッチンにネズミが出 て驚いた。2月からフラットメイトの2人が入れ替わってから、見違えるほどきれいに なり、自炊しやすくなった。フィンランド人は、たいていきれい好きだが、留学生はい ろいろな人がいる。居住環境は運次第だと思う。 個室は11m^2 程度の広さで、キレイだった。 ⑧ 留学先での語学状況 授業、生活ともに英語だけで十分だった。現地の人は、学生からおばちゃんまで、た いていの人がしっかりとした英語を話す。趣味でフィンランド語を教わったが、あまり 使わなかった。 留学前に TOIEC スコア910だったが、十分であった。英語ディベートの経験もあり、 授業でも積極的に参加できた。現地学生との会話に、特に問題はなかった。ただ、英語 がネイティブの留学生もいるので、語学力はできるだけ伸ばしてから旅立った方がよい。 ⑨ 単位認定、在学期間 在学期間の延長を行う予定なので、単位認定を行う予定はない。 ⑩ 就職活動 就職活動は1年遅らせる予定。 留学先では、将来自分が何をやりたいのかをよく考えるようにした。ボストンキャリ アフォーラムに参加したり、一時帰国して内定を勝ち取ったりしている交換留学生もい た。 ⑪ 留学先で困ったこと(もしあれば) 留学初日、空港で出迎えてくれるはずのチューターが急に来られなくなり、60 kg の荷物を1時間ほどかけて寮まで運ぶのに苦労した。物価が安いわけではないので、お 金を節約する必要があった。また、寮の共通スペースが汚かった(他の日本人留学生は みなきれいなところだったが) 。 ⑫ 留学を希望する後輩へアドバイス 経団連グローバル人材育成スカラーシップ奨学生によるブログ「世界の大学から ver.2」をぜひ読んでください。 フィンランドでは授業だけでなく、プライベートも充実した1年間になると思います。 直接お話ししたい方は、Facebook やメールでぜひ連絡してください。 【日本食パーティ】 【大学図書館のリラックススペース】 【Product Development Project のグループワーク】 【アールト大学本館】