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はじめての音楽会 2 舞台裏編 コ ン サ ー ト の 舞 台 裏 は ど う な っ て い る の ? M E M O R Y 来北アーティストに、夢を実現するチカラとなった音楽の原点やエピソードをインタビュー! 夢 の チ カ ラ 第 2 回の登場は、2 度目のベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全曲演奏を達成した迫 昭嘉さんです。 コーラスの授業で音楽好きに してきたものが、演奏会場によって環境と楽器が ピアノは幼稚園の頃から音楽教室で習っていま 変わり、自分のコンディションも精神状態も、観客 アーティストの素晴らしい演奏に耳を傾け、 したが、音楽が好きになったのは東京芸術大学の も変わって、毎回違うものが出来上がる。それが面 心癒されるひととき。 付属音楽高校に入ってから。1年生の時にコーラ 白いんです。昨年ベートーヴェンのピアノソナタ 私たちに感動と生の迫力を届けてくれる スの授業があって、皆の声が響き合った時に「すご 全曲演奏を達成して、今はちょっと放心状態。歩く クラシックコンサートの舞台裏では、 くいいな」と思ったんです。それまでは正直嫌々や と耳から音譜が落ちそうなほど大変でしたから(笑) 。 っていたところもありましたが、この時、頭のスイ 今後の目標はまたゆっくり考えますが、指揮の方 ッチが切り替わって音楽が大好きになり、それか ではオペラをやるのが夢です。オーケストラピッ ら半年ぐらい、もう夢中になって音楽を聴きまく トに入りたくて、大学に入る時は指揮科に進むつ どんなスタッフがどんな仕事をしているのでしょうか。 1月に響ホールで行われた 「迫 昭嘉ピアノ・リサイタル」の舞台裏を りました。 「プロの道へ進むんだ」ということを特 のぞいてみました。 Akiyoshi Sako に考えていたわけではありませんが、音楽はずっ 迫 昭嘉 とやっていくだろうなと思っていましたね。自分 (ピアニスト・指揮者:東京都出身) *響シリーズ第 42弾「迫 昭嘉ピアノ・リサイタル」 2004.1.16 が山のようにあって、それをただひたすらやって、 吸収して、みたいな感じでここまできたんです。 “舞台をつくる”ステージマネージャー ピアノのセッティング・撤収等、舞台の準備全般 1980 年にジュネーヴ国際コンクール最高位(1 位なしの 2 位)をいただいてから、仕事の依頼がく たが、最近では指揮の夢もだんだん実現してきて います。僕は、結果としてピアノが仕事になってい たという感じですが、イタリアの諺にこんな言葉 がどうなるかという結果を考えてやってきたので はなく、やりたいこと、やらなければならないこと もりだったんですよ。結局、ピアノの道を選びまし るようになり、プロとして弾けるようになったん です。 があるんです。 「愛情をもってすれば、どんな仕事 もすべて美しい」。音楽の道を目指す人なら、音楽 音楽の喜びは“出会い” 僕にとってピアノを弾く喜びは「出会い」ですね。 コンサートごとに違う出会いがある。自分で準備 に対してずっと愛情をもっていれば、結果はどう なるとしても、音楽と自分との関係はずっと成長 していく。僕はそう思っています。 に関わり、コンサートをどんなスタイルで行うか、 まとめることから仕事が始まります。また、響ホー [ 国 際音楽 祭・教育 プ ログラム ] ルのステージマネージャーは音響・照明の責任者も 兼ねているため、アーティストの希望に沿った照明 をつくる仕事も。本番中は舞台袖に控え、音響・照明 に指示を出したり、アーティスト退場の際に扉を開 けたり、舞台転換がある場合はセッティングを変え ピアノの“音をつくる”調律師 たりと大忙し。 「アーティストがベストな状態で演奏 できるよう舞台をつくり、コンサートを滞りなく進 ピアノ 1 台の調律に最低 2 時間はかかるため、調 律師は当日早くから会場入りします。鍵盤を叩いて ーティストによって音の好みが違うため、標準のピ 行させるのが仕事。トラブルもなく終わるのが当然 音を聴き、整える「調律」と、88 鍵すべてを同じよ ッチ 442 に合わせておき、リハーサルを行うなかで なので、最後まで気が抜けません」。 うな動き・タッチに揃える「整調」、ハンマーのクッ 最終調整。それらの音を、村山さんはすべて耳だけ ションで音の出方を揃える「整音」の 3 つが調律の作 毎年秋に開催される「北九州国際音楽祭」。 フィルの各パート11人からなる “小さなウィーン・ 幼稚園を訪問。ヴァイオリン奏者の幸田聡子さん 国内外からトップアーティストを迎え、他で フィル”と呼ばれるスーパーアンサンブル「ウィ とピアノ奏者の藤満健さんが八幡みなみ幼稚園 は聴けないオリジナルプログラムもふんだ ーン・ヴィルトゥオーゾ」が出演。 を訪れ、 「ユーモレスク」などのおなじみの曲を んに、毎年、豪華で多彩なメニューが繰り広 11 月 11 日には、中学生鑑賞教室としては、初 演奏してくださいました。 げられます。 めてオーケストラ(シンシナティ交響楽団)を取 園児たちは、心のこもった飾りつけで奏者をお 音楽祭で見逃せないメニューの一つが「教 り上げ、ふだん見ることのできないリハーサルを 招き。間近での生演奏に、目を輝かせていました。 で判断するのです。演奏中は、弦が切れたりなどの 育プログラム」。未来の文化の担い手である 特別に公開していただきました。 クラシックのすばらしさを園児たちの心の中に 業。 「暖かくなると枠が膨張して音が変わるし、湿気 アクシデントに備えて舞台袖に待機。コンサートが 子どもたちに、トップアーティストが奏でる が多いと鍵盤の動きが悪くなる。夏や冬は温度コン 終わるまでが仕事です。 「その日のアーティストの演 生のクラシックを体感してほしい。豊かな情 トロールが大変です」と、この道 26 年の村山さん。 奏のための音をつくり上げるのが調律師。仕上がり 緒を育んでほしい。 「教育プログラム」は、そ 演奏会の環境は、24 ∼ 25℃、湿度 50%前後がベス を不安に思っていると、その不安がピアニストにも んな想いを込めて行っています。 トだそうで、ピアノの上に温湿度計を置き、本番と 伝わってしまいます。ですから、いつも最高の状態 同じ環境に落ち着くのを待って調律を始めます。ア でアーティストをお迎えできるよう務めています。」 この 2 つの鑑賞教室では、音楽評論家の奥田佳 道さんが、子どもたちにわかりやすく解説してく ださいました。 しっかりと届けたコンサートでした。 胸一杯の感謝の気持ちを込めて。八幡みなみ幼 稚園の園児たちが手作りのプレゼントを幸田さ 小学生の鑑賞教室は10月16日に行われました。 んと藤満さんに贈りました。 九州初上陸となったオンド・マルトノという不思 議な電子楽器を世界的奏者ハラダタカシさんが 演奏。楽器にまつわる歴史や音の出し方などの説 コンサートを陰で支える舞台裏スタッフたち 明もあり、またとない貴重な体験となりました。 ……このほかにも、ホール調整係や舞台裏、当日券販売、受付など約20人のスタッフが、舞台の表で裏で、コンサートを支えています…… ● ● ● 園児の真剣なまなざしが印象的 アーティストがコンサートホールを飛び出し、 1 2 3 4 5 6 7 8 ①楽屋係:アーティストが到着するまでに軽食、飲み物などケータリングの準備をします。リハーサルや本番などの用件をアーティストに伝える連絡係、タクシーの手配なども。②チラシ折 込:近隣の文化施設の告知チラシ(平均 10 種類前後)を、スタッフ総出でパンフレットに折り込みます。③ミーティング:折り込み終了後、役割分担、スケジュール、注意事項などの説明が行 われます。そして開場の 10 分前には各自担当のポジションへ。④クローク:コートや傘など、貴重品以外の手荷物を預かります。⑤ドアマン:扉の内と外に待機していて、ドアの開閉や席への クラシックファンがため息をもらす 豪華なプログラムを体感 ● ● ● 音楽ファンがためいきをもらすほど豪華な内 2003 年の「教育プログラム」では、高校生・ 容の教育プログラム。この体感が彼らにとって大 中学生・小学生の鑑賞教室や幼稚園訪問コンサー 切な宝物になってくれることを願いながら、すで トが行われました。 に次回の計画が進行中。今年の秋にもまた、子ど 案内などをします。やむなく遅れて来た場合は、曲間のタイミングをみてドアを開けます。⑥音響、⑦照明:音響・照明卓の前には薄く透けた黒いカーテンがかかり、そこから舞台が見渡せま す。⑧花束係:花束を舞台袖に用意、観客の皆様を代表しアーティストへの賛美の意を込めて手渡します。 10 月 10 日に行われた高校生鑑賞教室では、 世界の2大オーケストラのひとつであるウィーン・ 7 もたちの心の中に、芸術文化の種をまく教育プロ グラムが行われます。 8