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移民と気候と個性が育む食文化
大らかな空気がそうさせるに違いない、どこか大ざっ ぱな気がするカリオカ食だが、一方で世界のグルメを うならせるおしゃれな高級店も次々開店している。 移民と気候と個性が育む食文化 強いこだわりで絞り込まれたパワフルなカ リオカの伝統食。音楽も文学も芸術もエネ ルギーの源はここだ。 豆はブラジル人のアイデンティティ カリオカ、食のスタンダードといえば ブラジルの国民食フェイジョアーダ。以前は、 奴隷が農場主の食べ残しの肉（耳や足や舌など） を豆と煮込んだものが世間に広まったとまこと しやかにいわれていたが、最近の研究では、ポ ルトガル北部がその発祥といわれている。黒豆 と豚肉や牛の塩漬け肉、腸詰などを煮込んだも ので、1800 年代半ばの文献にはすでに“ブラジ ル的食べ物”とされている。これにご飯や炒め たケール、オレンジを添えたスタイルは“フェ イジョアーダ・フルセット”と呼ばれ、当時首 都であったリオで名を上げたため、フェイジョ ご飯とケールを添えて食べるのがブラジル流フェイジョアー ダ。カイピリーニャとサンバはセット。このトリプルでこられ ると 1 日があっという間に終わってしまう。1 人前で 25 ～ 50 レアル（約 750 ～ 1500 円） アーダは全国的な食べ物でありながら、リオらし い料理のひとつとなった。もともと脂っこい料理 なので、近年は低カロリー版や塩分オフ版など、 工夫が凝らされるようになった。 リオでは金曜日と土曜日がフェイジョアーダを食 べる日となっている（サンパウロでは水曜と土曜）。 そして、肉。飽かず懲りずたくさん食べる。付 け合わせにポテトフライというのがリオで最も好ま れる組み合わせなのだとか。肉の部位、塩の選定な このくらいの量なら 2 人でペロリ。肉はカリオカのスポーツだ（？）。 2 ～ 3 人前で 98 レアル（約 2940 円） 36 カリオカの「食」 どにこだわりがあり、文化として確立している。 Copyright(c)2016 JETRO. All rights reserved. カリオカ豆物語 ブラジル人にとって豆は食卓に欠かせない 食材だ。毎日の食事にフェイジョアーダみた リオグランデドスール州の 4 州だけがカリオ カ豆より黒豆びいきなのだそうだ。 いにゴテゴテしたものは食べられないが、さっ さて、パウリスタが好きなカリオカ豆、カ ぱり煮た豆は毎日ご飯にかけて食べる。この リオカが好きなわけでもないのに、なぜカリ 生の豆をポルトガル語でフェイジョンといい、 オカという名がついているのか。 ご飯にかける煮た豆もフェイジョンという。 フェイジョン用に使われる豆は地域によっ 70 年代、サンパウロ州の、とある農場で何 かの拍子に交配して新種の豆ができた。表面 に模様があり、それが当時飼育されていた豚 て好みが違う。 ブラジルで最も消費されているのは、フェ のブチによく似ていた。そのブチのある豚の イジョン・カリオカと呼ばれる豆で、ブラジ 品種名がカリオカだったので、その豆をカリ ル全豆の 60％を占める。しかし紛らわしいこ オカと名付けた。 とに、当のカリオカが好んで食べるのはこれ 一説に、豆の模様がコパカバーナ海岸の舗 ではなく、フェイジョン・プレットという黒 道の波模様に似ているから、というそれらし い豆。フェイジョアーダに使う豆だ。リオ州、 い話があるが、正解ではない。 エスピリトサント州、サンタカタリーナ州、 ←こっちがフェ イ ジ ョ ン・ カ リ オカで私がカリ オカ豚です カリオカが愛好するのはこちらのフェイ ジョン・プレット リオのビーチで食べるものといえば 伝統的にビスコイト・グローボ＆マテ茶 ということに相場が決まっているのだとい う。このビスコイトというのは、マンジオ カ芋のデンプンでできた軽いスナック菓子。 薄甘いのと塩味がある。カリオカはビーチに 行くと条件反射的に欲しくなるという。グ ローボ社は創業以来 60 年以上にわたってカ リオカを虜にしてきた。 サンパウロにも進出したがビーチがない 1 袋 5 レアル（約 150 円）。 37 カリオカの「食」 Copyright(c)2016 JETRO. All rights reserved. そして、もれなくついてくるファロッファ ブラジル料理でも最も古く、植民地時代か らある食べ物で、ブラジル人が最も愛好する もののひとつがファロッファだ。主に肉や魚 料理の付け合わせとして添えられる。 マンジオカ芋の粉（地域によってはトウモ ロコシの粉）にベーコン、腸詰、卵、タマネギ、 バナナなどを投入して油で炒めたもの。好み で何を入れてもいいし、また入れなくてもい 粉を食べる、というのがなんとも奇妙に思えるが、食べるとすぐには まる食べ物のひとつ い。マンジオカは炭水化物を多く含み、それ を油で炒めるので高カロリーになる。 マンジオカ芋はブラジルのネイティブな食 料で、先住民インディオの主食だ。お腹をふ くらませるのにいいので、ポルトガル人の奥 地開拓隊がいち早く取り入れた。食料事情の 悪い地域にとっては、米と変わらない、単な る付け合わせ以上の存在だ。 ポルトガル、イタリア、ブラジル北東部 リオの食に移民や移住者の影響が垣間見え るとすると、わかりやすいのがポルトガルや イタリア、ブラジル北東部からやってきた 食べ物だろう。すっかりリオになじみ、リ オ名物になりつつある。同じように移民 社会であるサンパウロにも同様のものが もちろんあるが、 ガレット。もともとイタリア料理といわれている若鶏の炭火焼き。600 グラム程度の若鶏でなければならず、大きく育ってしまったものはた だの鶏焼き。ブラジル南部に多いというが、リオにも多い。専門店で 気軽に食べられる。1 人前 20 ～ 30 レアル（約 600 ～ 900 円） タピオカはマンジオカ芋のデンプンを利用した食べ 物。粉を焼くとモチモチに固まる。コンデンスミル クやココナッツ、クリーム状のキャラメルな ど甘～いもの、またはハム、ベーコン、 チーズなどをのせて半分に折りたた む。北東部の人たちの必需品 どことなくそれぞ れ違うものに進化 している。 北東部のアフロ系の食、アカラジェ。 これもフェイジョン・フラジーニョ という豆から作られる。1 個 10 レ アル（約 300 円） 38 →ポルトガルからブラジルに根付 い た ス ー プ（10 レ ア ル ／ 約 300 円）、カルド・ヴェルデと鱈のコ ロッケ、ボリーニョ・デ・バカリャ ウ（1 ダース 30 レアル／約 900 円） カリオカの「食」 Copyright(c)2016 JETRO. All rights reserved. 飲み物にもリオ流あり とにかく暑いので水分補給が大切。スポーツ、 ビーチ、仲間との語らい、その場に合わせたこ だわりの 1 杯がある。 リオの気候に合っているアセロラ 種類豊富なフレッシュジュース スポーツを愛好する人たちに人気のアサイーは じめ、クプアスーやグラビオーラ、マンガーバな どエキゾチックなトロピカルフルーツのジュース が、街角のスタンドで種類豊富に売られている。 それらは実はアマゾンや北東部で生産 されている果物だが、リオの気候に合 うのか、カリオカたちのお気に入りだ。 スポーツウェアで立ち寄るのがかっこ いい。 おなじみのフルーツにアマゾ ンフルーツをミックス。好み の味を見つけよう。1 杯 6 ～ 10 レアル（約 180 ～ 300 円） 地ビール求めて山で一杯！ ビーチの冷えたビールはこたえられないが、 山でも一杯いかがだろうか。近年各地で盛ん な地ビール生産、スーパーでも地ビールコー ナーを設けたり、専門のバーができたりと、 一味違うビールを楽しむのが人気だ。 リオ市から車で 1 時間半ほど郊外へ行くと、 かつてブラジル皇帝の避暑地だったペトロポ リス市に着く。この辺りは 2000 ｍ級の山が連 なる美しい自然が魅力だ。良質の水が湧くペ トロポリス、テレゾーポリスなど周辺の市に は大小さまざまなビール製造所があり、それ を巡るツアーがある。製造工程の見学やビー ルの種類の説明を聞いた後、ゆっくり食事を しながら飲むこともできる。サントス・ドゥ モン空港から出発するツアーもある。http:// スーパーの地ビールコーナー。1 本 5 ～ 15 レアル（約 150 ～ 450 円） 生ビールにもあるカリオカとパウリスタ ブラジルの生ビール Chopp（ショッピ） rotacervejeirarj.com.br/ は、日焼けした体にグリースを塗った髪のサー ファーでカリオカ、その反対に白い肌に濃い色の に は 普 通 の 明 る い 色（Claro) と 黒 ビ ー ル 髪をのせているのがパウリスタなのだそうだ。か （Escuro) があり、この 2 色の配合で微妙な なり強引な理由づけな気はするが、いずれにして 味わいを楽しむことができる。 黒ビールに明るいビールの泡をのせたもの 39 カリオカの「食」 もいい泡がのっている生ビールはどこで飲んでも おいしい。1 杯 8 ～ 12 レアル（約 240 ～ 360 円）。 Copyright(c)2016 JETRO. All rights reserved. カフェの時間です、は何度でも 「カフェ・カリオカ」といったら、薄めのコー ヒー。元来リオでは若干薄めで飲む習慣がある。 もっとも、これはサンパウロでの言い方で、逆 にリオで濃いコーヒーがほしい時には「カフェ・ パウリスタ」と言って注文する。 ブラジル人の飲み方にもそれぞれ好みがあっ て、細かい注文の仕方があるが、基本はだいた い以下のようになっている。 ■普通にコーヒーといえば 【カフェジーニョ】 一般的総称だが、布フィルターで 濃く出すのがブラジル流。最初か ら砂糖を入れちゃうことも ■ミルク入りは 【エスプレッソ】 エスプレッソマシンが人 気。ミルクなしをプーロ という 【メジア】 【カフェ・コン・レイテ】 【ピンガード】 一般にミルク入りの総 ミルクが少し説とコー ミ ル ク と ミ ル ク の ヒーが少し説がある。 泡をのせる 称。カフェオレ よくコップでくる ■濃さでいうと 【カフェ・クルト】 濃く抽出した強いコー ヒー。直訳、短いコーヒー 【カフェ・ロンゴ】 薄めで抽出したやや弱いコー ヒー。直訳、長いコーヒー ■薄め具合でいうと 【カフェ・カリオカ】 【アメリカン】 【シャフェ】 水多めで抽出、または ブラジル人からいうと シャ（お茶）のように お湯で少し薄める ずいぶん薄い 薄くてほとんど味のな いコーヒー ポルトガル移民が始めたカ フェ・コロンボは創業 122 年、 世界十指に入る美しいカフェ。 首都時代のベルエポックを今 に残す 手巻き屋フィーバー 日本食ブームはもはやブームではな く、一定の地位を確保しつつ、人気の サーモンの手巻き 16 レアル （約 480 円） 火は衰えない（もはや和食とは言えな いかもしれないが） 。リオで特に人気の 手巻きフランチャイズ Koni はブラジル 南西部を中心に 115 店舗を展開してい る。奇抜なメニューとクーポンアプリ バナナ＆チョコ春巻 10 レアル（約 300 円） 40 カリオカの「食」 で若者たちを引き付けている。 Copyright(c)2016 JETRO. All rights reserved.