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宮崎県 農水産業地球温暖化対応方針

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宮崎県 農水産業地球温暖化対応方針
宮崎県
農水産業地球温暖化対応方針
宮崎県農政水産部
(宮崎県農水産業温暖化研究センター)
宮崎県農水産業地球温暖化対応方針の概要
地球温暖化対応方針
地球温暖化の進行と県内における影響
■ 地球温暖化の影響
○
○
・
海水面水温(国内)
2010年までのおよそ100年間でおよそ1.3℃の上昇
年平均気温偏差の推移
平均海面水温の上昇温度
○ 県内の実態調査の結果
・ 米の品質の低下
・ 野菜の着果不良、病害虫の多発
・ 果実の日焼け果や着色不良等の発生
・ 花きの生育不良や奇形花等の発生
・ 茶の寒害・霜害の増加
・ 飼料作物の害虫による食害の増加
・ 家畜の繁殖成績や肥育成績等の低下
・ 藻場の衰退や磯焼けの発生 など
米の白未熟粒の発生
野菜の病害の多発
日焼け果の発生
花きの生長点異常
一番茶の霜害
イタリアンのいもち病
藻場の衰退
県内気候の将来予測
■ 温暖化シミュレーションの結果(宮崎気象利用研究会)
○
地表付近の年平均気温
・ 2050年頃には20世紀末より約2℃上昇
・ 2100年頃には20世紀末より約3℃上昇
○ 年間降水量
・ 年間降水量に大きな変化はないが、季節毎の降水量が変化
(春の降水量は減少し、秋の降水量が増加)
○ 台風の変化
・ 接近時期が晩期化し、秋の降水量が増加
このような状況を踏まえ、宮崎県農水産業温暖化研究センターを核にした取組を促進!
平均気温(国内)
・ 1898年以降で100年あたりおよそ1.1℃の割合で上昇
■ 宮崎県農水産業温暖化研究センターの機能強化
○
○
○
国内外の研究成果等の情報収集・発信
大学や民間企業との連携による調査・研究の推進
気象予測に伴う県内産地構造の明確化
■ 地球温暖化の対応に向けた3つの対策
● 「温暖化を活かす」対策
暑さを活かした農水産業を展開するため
暑さを活かした農水産業を展開するため、
○
亜熱帯性・高温性の新品種や新品目の導入・普及
○
温暖化対応の作型への転換や作付地帯の見直し
○
温暖化に対応した養殖魚種の飼育・開発や天然資源の長期的変
動予測技術の開発
など
● 「温暖化から守る」対策
暑さや異常気象等から農水産業を守るため、
○ 地球温暖化に適応した品種や品目、生産技術の開発・普及
地球温暖化に適応した品種や品目 生産技術の開発・普及
○
新たな病害虫防除技術の開発普及や防除体系の確立
○
畑地灌漑施設等の生産基盤の計画的な整備
など
● 「温暖化を抑制する」対策
生産段階における地球温暖化の抑制に資するため、
○
太陽光(熱)や地域未利用バイオマス等による再生可能エネル
ギーを利活用した生産技術の開発
○ 農地土壌の炭素貯留機能の向上に資する技術の開発・普及
農地土壌の炭素貯留機能の向上に資する技術の開発 普及
○
操業の効率化に向けた漁場形成機構の解明や魚海況情報等の提供
など
まえがき
近年、世界各国において、地球温暖化の進行に伴う影響と推測される大雨、豪雨、干ばつや熱
波などの異常気象の発生や台風等の大型化が見られています。
※1
IPCC (気候変動に関する政府間パネル)が2007年に公表した第4次評価報告書では、
気候システムが温暖化していることは、人為起源の温室効果ガスの増加が温暖化の原因とほぼ断
定されております。
一方、国内及び県内に目を向けてみると、全国で大きな気象災害が頻発し、国民生活や社会基
盤に大きな影響を受けているとともに、農水産業においても地球温暖化の影響と見られる米や野
菜等の品質低下や収量の減少、家畜等の肥育・繁殖成績等の低下などが報告されています。
農水産業は、自然環境に最も近いところに位置し、その変化を最も早くかつ直接的に影響を受
ける産業です。このため、地球温暖化に対する適応策や地球温暖化の抑制策を早期に確立すると
ともに、農水産業の生産活動における温暖化適応策・抑制策を体系化し、県内農水産業の持続的
な発展を確保していかなければなりません。
このため、県では、平成20年6月に総合農業試験場内に宮崎県農水産業温暖化研究センターを
設置し、地球温暖化に関する各種情報の収集や発信、適応策・抑制策の開発・実証等の各種プロ
ジェクトに取り組んできているところです。
本対応方針は、平成20年度から実施しておりました「地球温暖化対応産地構造改革モデル実証
事業(平成22年度終期)」の成果等を踏まえ、今後の具体的な取組や将来期待される技術等を明
らかにすることで、本県農水産業の進むべき方向や県内各産地の将来の姿等を検討する際の参考
となることを期待して作成しました。
県としましては、今後とも地球温暖化が本県農水産業に及ぼす影響を正確に予測することで、
先手を打った対応策を開発し、普及していけるよう地球温暖化対策を強化していくこととしてお
ります。
皆様が様々な活動を展開していかれる中で、本対応方針を幅広く御活用いただきますようお願
い申し上げます。
平成24年3月
農政水産部長
※1
岡村
巖
国際的な専門家でつくる、地球温暖化についての科学的な研究の収集、整理のため
の政府間機構
目
序
これまでの経緯
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
宮崎県農水産業温暖化研究センターとは
2
これまでの取組と対応方針の策定
Ⅰ
次
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
地球温暖化の進行等による現時点での影響
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
1
気候の変化
2
地球温暖化以外の異常気象
3
本県農水産業への影響
(1)農業への影響
①
早期水稲
②
普通期水稲
③
野菜
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
ア
ピーマン(施設)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
イ
きゅうり(施設)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
ウ
いちご(施設)
エ
夏秋トマト
オ
さといも
カ
レタス
キ
千切りだいこん
④
果樹
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
かんきつ類
イ
ぶどう
ウ
マンゴー
花き
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
ア
⑤
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
ア
スイートピー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
イ
夏秋ギク
ウ
シンビジウム
エ
ラナンキュラス
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
オ
デルフィニウム
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
カ
ホオズキ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
⑥
茶
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
⑦
葉たばこ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
⑧
飼料作物
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
⑨
畜産
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
ア
肉用牛
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
イ
乳用牛
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
ウ
豚
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
エ
鶏
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
(2)水産業への影響
Ⅱ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
①
底曳網漁業
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
②
定置網漁業
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
③
まき網漁業
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
④
沿岸かつお・まぐろ漁業
⑤
ぱっち網漁業
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
地球温暖化の進行に伴う影響の将来予測
1
地球規模での影響予測
2
将来の県内の姿
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
(1)農業への影響評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
①
年平均気温の変化
②
植物相等の変化
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
(2)水産業への影響評価
○
Ⅲ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
水産資源の変化
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
本県農水産業の持続的な発展に向けた取組
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
1
研究センターの機能強化
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
2
地球温暖化の対応に向けた3つの対策の取組促進
3
対策の推進に係る短期的な取組
(1)農業における具体的な取組
①
水稲
ア
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
高温登熟障害対策
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
(ア)新品種の導入や効率的な水稲生産の検討
(イ)適期・適正な移植の実施
(ウ)適正な水管理の実施
病害虫防除対策
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
施設園芸共通
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
(ア)的確な病害虫防除対策の実施
②
・・・・・・・・・・・・・・・22
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
(エ)土づくり、適正な施肥の実施
イ
・・・・・・・・・・・・・・・21
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
ア
ハウスの降温対策
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
イ
ハウス環境制御の高度化対策
(ア)循環扇・換気扇の活用
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
(イ)かん水技術の高度化
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
(ウ)適切なハウス内温度・湿度管理の実施
③
野菜
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
ア
高温適応性に優れた品種・系統の導入
イ
散水・かん水用水の確保
ウ
土壌管理技術の高度化
(ア)敷わらの導入
果樹
・・・・・・・・・・・・・・・・・23
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
(イ)地温抑制マルチの導入
④
・・・・・・・・・・・・・・・・23
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
ア
遮光対策の実施
イ
適正な結果量の確保と樹勢強化
ウ
的確な害虫防除の実施
エ
秋季高温時の花芽分化対策(マンゴ-)
オ
ヒートポンプや植調剤の活用
カ
温暖化に対応できる品種・系統の導入
・・・・・・・・・・・・・・・・・24
キ
結果不良や肥大不良の原因究明と対策
・・・・・・・・・・・・・・・・・24
⑤
花き
ア
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
・・・・・・・・・・・・・・・・24
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
ハウス・地温の降温対策
(ア)ハウスの降温対策
(イ)地温の降温対策
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
(ウ)施設内の換気改善
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
(エ)夜間のシェードの開放
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
イ
定植時期の調節
ウ
高温適応性に優れた系統の選抜及び品種育成
⑥
茶
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
・・・・・・・・・・・・・・25
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
ア
防霜ファン等の活用による越冬芽の凍害防止対策の実施
イ
秋期防除の徹底及び耐病性品種の導入
⑦
葉たばこ
・・・・・・・・・・・・・・・・・25
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
ア
作柄の早進化による台風回避
イ
排水対策の徹底による病害虫の発生抑制
ウ
病害対策の徹底
⑧
飼料作物
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
耐暑性・耐病性品種等の導入
イ
気象条件に適した栽培体系の開発・推進
家畜
・・・・・・・・・・・・・・・・25
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
ア
⑨
・・・・・・・・・25
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
・・・・・・・・・・・・・・・・26
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
ア
省エネ設備の導入や省エネに繋がる技術の開発・普及
イ
畜舎環境での適切な温度管理技術の普及
ウ
高温下における飼養管理対策の実施
エ
効果的な飼料給与技術等の普及
・・・・・・・・・・26
・・・・・・・・・・・・・・・・26
・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
(2)水産業における具体的な取組
①
海洋環境の変化への対応
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
ア
海洋環境変動の監視と生態系への影響把握
イ
地球温暖化に伴うリスクへの対応
ウ
環境変化に対応した漁業生産体制づくり
②
・・・・・・・・・・・・・・・27
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
地球温暖化抑制に向けた操業技術の改善
ア
省エネ機器等の導入
イ
操業効率化に繋がる技術の開発・普及
(3)共通する基本的な取組
4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
・・・・・・・・・・・・・・・・27
・・・・・・・・・・・・・・・・・27
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
・・・・・・・・・・・・・・・・・27
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
①
地球温暖化に対応する品種・品目の開発及び養殖魚種の開発
②
病害虫防除体系の見直しや新たな防除技術の確立
③
安定生産を支える生産基盤の整備
・・・・・・・・28
・・・・・・・・・・・・・28
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
ア
天候に左右されない安定的な農業生産を支える生産基盤の整備
イ
災害に強い水産基盤の整備
・・・・・・28
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
④
地球温暖化の予測結果に基づく将来の県内地域の生産構造予測
⑤
異常気象に対する対策
・・・・・・・28
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
対策の推進に係る中期的な取組
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
(1)「温暖化を活かす」、「温暖化から守る」ための研究課題 ・・・・・・・・・・・・29
(2)「温暖化を抑制する」ための研究課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
5
対策の推進に係る長期的な取組
(1)将来に向けた革新的な取組
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
①
地熱利用ヒートポンプの開発・普及
②
太陽熱ハウス冷暖房システムの開発・普及
③
地球温暖化に対応したみやざき型の高遮熱断熱ハウスの開発
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
・・・・・・・・・・・・・・・・31
ア
春・秋に涼しく、冬は保温力の高いハウスの開発
イ
全自動フルオープンハウスの耐久性向上
・・・・・・・・・・・・・・・・32
オゾン層破壊物質「臭化メチル」代替技術の開発
⑤
未利用バイオマス資源を活用した施設園芸暖房技術の開発
ア
木質系バイオマスの活用技術
イ
畜ふんの活用技術
・・・・・・・・31
・・・・・・・・・・・・31
④
・・・・・・・・・・・・・32
・・・・・・・・・33
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
⑥
畜舎等の屋根を活用した太陽光発電利活用技術の開発
⑦
その他
○
6
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
・・・・・・・・・・・33
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
体温、行動量等の生体情報を活かした家畜管理システムの開発
地球温暖化の進行に伴う作物別の影響及び対策の一覧
・・・・・・33
・・・・・・・・・・・・・34
(1)作物別の影響一覧
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
(2)作物別の対策一覧
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
【参考】
Ⅰ
地球温暖化の進行に伴う影響の将来予測
1
本県気候資源に対する地球温暖化の影響評価
(1)温度資源の変化
・・・・・・・・・・・・・・・・・36
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
①
年平均気温
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
②
暖かさ指数
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37
(2)水資源の変化
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37
(3)日射資源及び蒸発能の変化
(4)台風の変化
2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
本県農水産業に対する地球温暖化の影響評価
(1)水稲栽培への影響
・・・・・・・・・・・・・・・・・40
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
①
移植日・最適登熟期への影響
②
出穂日への影響
③
高温障害への影響
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
(2)果樹(うんしゅうみかん)への影響
(3)その他、露地作物への影響
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
①
農業地域区分ごとの温暖化の影響
②
最高・最低気温への影響
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42
(4)病害虫分布への影響
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43
(5)園芸ハウスへの影響
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44
(6)家畜の暑熱ストレスへの影響
Ⅱ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45
地球温暖化の進行に伴う農業生産への影響(実態調査結果)
1
実態調査の結果
・・・・・・・・・・・47
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47
(1)平成19年度の調査結果
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47
(2)平成20年度の調査結果
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49
(3)平成21年度の調査結果
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50
(4)平成23年度の調査結果
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51
Ⅲ
地球温暖化の震央に伴う藻場への影響
1
Ⅳ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
地区ごとの藻場の変遷状況
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53
(1)県北部における藻場の変遷状況
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54
(2)県中部における藻場の変遷状況
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54
(3)県南部における藻場の変遷状況
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55
2
県全体における藻場の変遷状況
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56
3
藻場の吸いたいと地球温暖化の関係
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57
宮崎県農水産業温暖化研究センターの運営体制
・・・・・・・・・・・・・・・・・58
序
これまでの経緯
1
宮崎県農水産業温暖化研究センターとは
地球規模での温暖化の進行が叫ばれている中、本県の農水産業においても地球温暖化の影
響と推測される耕種作物の収量や品質の低下、家畜の生産性や受胎率の低下及び藻場の衰退
や磯焼け等が顕在化してきたことから、地球温暖化に向けた対策を早急に講じる必要が出て
きた。
このため、本県では、全国に先駆けて平成20年6月に県総合農業試験場内に「宮崎県農水
産業温暖化研究センター」(以下「研究センター」という。)を設置し、地球温暖化に対応し
た本県農水産業のあり方の検討や温暖化に関する様々な情報等の集積・分析、さらに大学や
民間企業等との連携による各種の調査・研究等の取組を進めている。
【宮崎県農水産業温暖化研究センターの設置】
-1-
2
これまでの取組と対応方針の策定
県では、研究センターの設置に併せて「地球温暖化対応産地構造改革モデル実証事業」(県
単独事業:平成20年度~平成22年度)をスタートさせ、長期的な対策として調査・分析プロ
ジェクトや技術開発プロジェクトを、短期的な対策として各種の現地実証など13のプロジ
ェクトに取り組んできた。
調査・分析プロジェクトでは、本県における地球温暖化の予測や農水産業への影響調査を
実施するとともに、その成果等の積極的な公開に取り組んできた。
特に、地球温暖化の予測については、宮崎気象利用研究会で各種のシミュレーションを行
ってきた(成果の詳細については、【参考】(36頁-46頁)を参照)。
技術開発プロジェクトでは、公募にて採択した「施設園芸用高効率暖房機の開発」と「温
暖化に対応した魚類等の新たな感染症の診断技術の確立」の2つの技術開発課題や木質ペレ
ット施設園芸プロジェクト、バイオマス利活用プロジェクトなどの取組を進めてきた。
また、現地実証試験では、飼料用米の導入実証、園芸作物の秋季高温障害対策の開発、通
気性や採光性を改善した簡易牛舎(通称:サンシャイン牛舎)の導入実証、浮沈式生け簀に
おける基礎データの収集等に取り組んできた。
研究センターでは、これらの成果等を十分に踏まえ、本県農水産業の持続的な発展に向け
た対策の方向性、速効性のある具体的な取組や将来実用化が期待される革新的な取組を取り
まとめ、本対応方針として策定した。
【研究センターのホームページ】
HP アドレス:http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/nosei/ondanka_center/index.html
-2-
プロジェクト等
平成20年度
平成21年度
平成22年度
平成23年度
(※)推進体制の整備
農水産業温暖化研究センター
の設置
○ プロジェクトの進捗管理
○ 温暖化研究体制の整備
設 置
H20.6
○ プロジェクトの取りまとめ
○ 各プロジェクトへの助言
○ 技術開発ニーズと技術シーズ・開発企業等とのコーディネイト
アドバイザー会議の設置
プロジェクト等
平成20年度
平成21年度
平成22年度
平成23年度
(1)調査分析プロジェクト
○ 県内温度資源への温暖化影響の評価
○ 県内降水分布への温暖化影響の評価
○ 県内農業気候資源への温暖化影響の評価
○ 水稲栽培に与える温暖化の影響調査
○ 家畜・家きんの体感温度の予想
○ 家畜・家きん舎の夏期必要換気量の地域分布の解析
○ 園芸ハウスの暖房必要量への気候温暖化の影響評価
○ 気象や生物の変化等の指標となる項目の調査
○ 農業における主要品目の事例調査
○ 気象変化時の農作物への影響のデータ蓄積
○ 気象変化時の農作物への影響のデータ蓄積
○ 現地調査による県中部暫定藻場の精査
○ 未確認藻場の目視補完調査及びライン調査
○ 過去の調査含めた県内藻場のデータベース化
2)現地調査
-3-
○ 気象や生物の変化等の指標となる項目の調査
○ 水産業における主要品目の事例調査
3)藻場調査
○ 航空写真による県北部・南部の暫定藻場の算出
○ 県内424箇所の藻場繁茂状況の調査
○ 全国の温暖化関係情報の収集及び研修成果の情報発信等
4)情報収集
(2)技術開発プロジェクト
1)影響緩和対策研究の公募
公
選
募
定
○ 炭酸ガスを活用した地熱利用
ヒートポンプシステムの開発
○ 夏季冷房運転の検証
○ システムの効率性・経済性の検証
○ 冬季暖房時のデフロスト技術の確立
○ システムの効率性・経済性の検証
○ ブリ類感染症の診断法の開発
○ ウシエビ北上傾向等の調査
○ 奄美クドア感染症の診断法の確立
○ エビ類ウイルスの診断法を確立
○
LAMP法による奄美クドア感染症の診断法確立
2)産学官連携技術の開発・実証
① 施設園芸プロジェクト
○ ヒートポンプを活用したハイブリッド加温
方式の導入実証
○ 木質ペレット加温機の導入実証
○ ハイブリッド加温の経済性の検証検証
○ 木質ペレット加温機の導入実証
② バイオマス利活用
プロジェクト
○ 畜ふんペレットハウス暖房機の開発
○ 畜ふんペレットハウス暖房機の改良
○ 暖房機の性能確認
○ 畜ふんペレットハウス暖房機の改良
○ 暖房機の性能確認
③ エネルギー作物
プロジェクト
○ ナタネ、ヒマワリの生産技術及び作型の確立
○ ナタネ、ヒマワリの生産技術及び作型の確立
○ ナンヨウアブラギリの実証栽培
○ 生産植物油の燃焼試験
○ ナタネ、ヒマワリの生産技術及び作型の確立
○ 県内における搾油体系の確立
本県農水産業が地球温暖化に対応するための対応方針の策定
1)影響調査
Ⅰ
地球温暖化の進行等による現時点での影響
1
気候の変化
気象庁が公表している2010年の世界の年平均気温の1981~2010年平均基準における偏差は
+0.19℃で、1891年の統計開始以降、2番目に高い値となっている。
世界の年平均気温は、長期的には100年あたり約0.68℃の割合で上昇しており、特に、1990
年代半ば以降、高温となる年が多くなっている。
一方、日本の平均気温は、1898年(明治31年)以
降では100年あたりおよそ1.1℃の割合で上昇してお
り、特に、1990年代以降、高温となる年が頻繁に現
れている。日本の気温上昇が世界の平均に比べて大
きいのは、日本が、地球温暖化による気温の上昇率
が比較的大きい北半球の中緯度に位置しているため
と考えられている。
【日本の年平均気温偏差:気象庁】
気温の上昇に伴い、熱帯夜(夜間の最低気温が25℃以上の夜)や猛暑日(1日の最高気温
が35℃以上の日)は増え、冬日(1日の最低気温が0℃未満の日)が少なくなっている。
また、海面水温については、2010年の世界年平均海面水温の1981~2010年平均基準におけ
る全球の平均の平年偏差が+0.13℃であり、世界の平均気温と同様に統計を開始した1891年
以降で2番目に高い値となっている。
世界の年平均海面水温の全球平均の長期的な傾向
としては、100年あたり0.51℃上昇しており、1990
年代後半からは長期的な傾向を上回って高温となる
年が多くなっている。
一方、九州・沖縄海域、日本海の中部及び南部、
関東の南、日本南方海域における2010年までのおよ
そ100年間にわたる海域平均海面水温(年平均)の
上昇率は、+0.7~+1.7℃/100年である。
これらの上昇率は、世界全体で平均した海面水温
の上昇率(+0.51℃/100年)よりも大きな値とな
っている。
【日本近海の海域平均海面水温
(年平均)の長期変化傾向:気象庁】
-4-
本県の気候は、過去100年の観測から気温は最高、最低、平年値ともに上昇しており、特に、
1970年代から温度上昇が顕著になっている。
年間降水量には、一定の傾向は認
められないが、2,000mmを下回る年
が頻発する一方で4,000mmを超す年
が出現するなど振幅が激しくなって
いる。
平成23年3月に気象庁が発表した
新平年値(1981年~2010年)では、
旧平年値(1971年~2000年)と比較
して平均気温が17.4℃で0.2℃上昇、
降水量は2,508mmで102%といずれも
増えている。
月別に見ると、平均気温は1月が0.1℃下がったものの2月(+0.3)、3月(+0.2)、
5月(+0.5)、6月(+0.1)、7月(+0.5)、8月(+0.2)、9月(+0.3)、11月(+0.2)、
12月(+0.2)と、ほとんどの月で上昇しており、特に、5月、7月が大きく上昇している。
降水量は、1月(89%)、4月(98%)、5月(96%)は減少し、2月(101%)、3月
(101%)、6月(103%)、7月(102%)、8月(108%)、9月(105%)、10月(101%)、
11月(107%)、12月(116%)とほとんどの月で増加しており、11月、12月が顕著に増加する
一方で、1月が大きく減少している。
九州南部の梅雨入りは5月31日が29日と2日前進し、梅雨明けは7月14日が13日と1日前
進しており、台風の接近は3.3個が3.6個と増加している。
-5-
地域別に見ると、ここ数年、宮崎、油津が年平均気温18℃代、年平均最高温度22.5℃代、年
平均最低温度は油津が14.5℃代、宮崎が13.5℃代にまで上昇しており、この数値は鹿児島県
指宿の平年値と同じレベルに達している。
-6-
また、過去の気象災害の被害額を見ると、大雨と台風の被害が恒常化する一方で寒害・霜
害はほとんど発生していない。寒害・霜害が減少した原因としては、温暖化に加えて本県農
業が施設園芸に特化してきたことが大きな要因と考えられる。
【宮崎県における各種災害による年間被害額(億円)の推移】
宮崎の四季と気象(内嶋善兵衛他)から引用
-7-
2
地球温暖化以外の異常気象
現在発表されている温暖化のシナリオには、世界的な異常気象をもたらすエルニーニョ現
象やラニーニャ現象の発生は織り込まれておらず、今後、その発生頻度をシナリオに反映さ
せる方向で研究が進められている。
日本における一般的な影響としては、エルニーニョ現象が発生している時は、冷夏・暖冬、
ラニーニャ現象が発生している時は、暑夏・厳冬になると言われているが、エルニーニョ現
象及びラニーニャ現象の発生した場合のメカニズムは徐々に明らかとなってきているが、こ
れらの現象がいつ発生するのか、また、温暖化との関連についても依然として不明となって
いる。
観測が始められたこれまでの64年間(1949年~2012年)に、エルニーニョ現象は14回、ラ
ニーニャ現象は15回発生しており、それぞれの現象が交互に発生する傾向にあるが、直近30
年間(1982年~2012年)とそれ以前の30年間(1949年~1981年)を1年間を4季節に分割し
て比較してみると、直近30年間は4.15季節、それ以前の30年間が4.29季節平均での発生とな
っており、発生間隔が短くなる傾向が推察される。
また、ここ数年(2005年~2011年)を見ると、エルニーニョ現象が1回の発生に対して厳
冬の原因となるラニーニャ現象は4回の発生となっており、統計上は厳然として温暖化が進
行しているにも関わらず、近年、厳冬となる年が多くなっていることを裏付けている。
1949年~1960年
1949年
1950年
1951年
1952年
1953年
1954年
1955年
1956年
1957年
1958年
1959年
1960年
春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬
エルニーニョ現象
ラニーニャ現象
1961年~1970年
1961年
1962年
1963年
1964年
1965年
1966年
1967年
1968年
1969年
1970年
春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬
エルニーニョ現象
ラニーニャ現象
1971年~1980年
1971年
1972年
1973年
1974年
1975年
1976年
1977年
1978年
1979年
1980年
春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬
エルニーニョ現象
ラニーニャ現象
1981年~1990年
1981年
1982年
1983年
1984年
1985年
1986年
1987年
1988年
1989年
1990年
春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬
エルニーニョ現象
ラニーニャ現象
1991年~2000年
1991年
1992年
1993年
1994年
1995年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬
エルニーニョ現象
ラニーニャ現象
2001年~2012年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬 春 夏 秋 冬
エルニーニョ現象
ラニーニャ現象
【エルニーニョ・ラニーニャ現象の発生状況】
-8-
一方、県内3箇所(宮崎、都城、高千穂)の観測点における1949年以降の最高気温及び最
低気温の極値については、以下の表のとおりとなっている。
1949年~1963年
気温極値(℃)
(宮崎)
1949年
最高
最低
1950年
最高
最低
1951年
最高
最低
1952年
最高
最低
1953年
最高
最低
1954年
最高
最低
1955年
最高
最低
1956年
最高
最低
1957年
最高
最低
1958年
最高
最低
1959年
最高
最低
1960年
最高
1961年
最低
最高
最低
1962年
最高
最低
35.2 -5.3 35.2 -4.6 36.3 -4.9 36.1 -3.6 35.5 -4.1 34.8 -2.4 35.5 -5.3 35.7 -4.9 35.4 -4.3 35.9 -3.7 36.3 -5.6 34.9 -5.6 36 -4.3 36.1 -4.1
気温極値(℃)
(都城)
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
気温極値(℃)
(高千穂)
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
1964年~1978年
1964年
最高
最低
1965年
最高
最低
1966年
最高
最低
1967年
最高
最低
1968年
最高
最低
1969年
最高
最低
1970年
最高
最低
1971年
最高
最低
1972年
最高
最低
1973年
最高
最低
1974年
最高
最低
最高
1975年
最高
最低
最高
最低
35.5 -7.6 34.3 -7.8
最低
1976年
最高
最低
1977年
最高
最低
気温極値(℃)
(宮崎)
36.4 -3.8 36.8 -4.7 38 -3.5 36.6 -5.5 34.6 -5.3 37.4 -5
気温極値(℃)
(都城)
34.4 -5.6 34.4 -8 35.9 -7.1 35.9 -8.9 34.5 -8.5 35.2 -7.8 35.2 -9.8 35.3 -7.1 34.8 -4.5 34.4 -7.8 33.8 -7.7 34.2 -5.7 34 -9.3 35 -7.4
気温極値(℃)
(高千穂)
1979年~1993年
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
35 -5.8 36.6 -4.3 34.7 -1.8 34.4 -4.6 34.6 -5 35.2 -4.2 35.3 -6.4 36.2 -5.8
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
最高
最低
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
1979年
最高
最低
1980年
最高
最低
1981年
最高
最低
1982年
最高
最低
1983年
最高
最低
1984年
最高
最低
1985年
最高
最低
1986年
最高
最低
1987年
最高
最低
1988年
最高
最低
1989年
最高
最低
1990年
最高
最低
1991年
最高
最低
最高
最高
最低
最低
33.7 -11
1992年
最高
最低
気温極値(℃)
(宮崎)
35.2 -1.5 34.4 -4 35.7 -5.9 34.8 -4.6 37.6 -4 35.7 -4.5 35.3 -5.9 35.6 -3.5 35.4 -2.2 36.5 -2.9 33.8 -2.4 36.9 -3.3 37.5 -3.4 36.1 -1.3
気温極値(℃)
(都城)
34.3 -4.6 34.6 -6.1 34.7 -6.6 34 -7.8 36.7 -7.8 36.1 -6.1 34.6 -7.3 34.6 -5.8 34.1 -5.1 34.9 -5.6 33.6 -4.7 35.8 -5.8 35.3 -6.3 35.2 -3.7
気温極値(℃)
(高千穂)
33.6 -6.1 34 -7.5 32.8 -9 32.6 -7.3 35.7 -9.3 34.7 -8.1 32.3 -9.2 34 -8.4 34.1 -6.1 34.1 -7.9 33 -5.8 35.4 -8.9 33.6 -7.8 34.2 -5.2
1994年~2008年
最高
最高
最低
最低
1994年
最高
最低
最高
最高
最低
最低
1995年
最高
最低
最高
最高
最低
最低
1996年
最高
最低
最高
最高
最低
最低
1997年
最高
最低
最高
最高
最低
最低
1998年
最高
最低
最高
最高
最低
最低
1999年
最高
最低
最高
最高
最低
最低
2000年
最高
最低
最高
最高
最低
最低
2001年
最高
最低
最高
最高
最低
最低
2002年
最高
最低
最高
最高
最低
最低
2003年
最高
最低
最高
最高
最低
最低
2004年
最高
最低
最高
最高
最低
最低
2005年
最高
最低
最高
最高
最低
最低
2006年
最高
最低
最高
最高
最低
最低
2007年
最高
最低
気温極値(℃)
(宮崎)
36.8 -2.8 36.7 -3.9 36.3 -4.1 35.1 -2.2 37.9 -3.7 35.5 -2.6 36.6 -2.8 36.2 -2.4 36.7 -1.1 36 -2.4 37.1 -2.9 37.4 -3.1 36 -3.9 36.4 -1.4
気温極値(℃)
(都城)
37.1 -5 34.8 -6.6 34.3 -7 35.1 -4.3 35.6 -4.9 33.8 -4.3 36.2 -4.9 36.2 -5.4 35 -4.8 35.4 -4.8 36.5 -4.7 36 -4.1 36.3 -5.8 36.7 -6.5
気温極値(℃)
(高千穂)
37.3 -6.3 34.2 -8 33.6 -9.6 33.6 -5.8 34.6 -9.7 33.2 -6.7 34.4 -5.4 36.2 -7.5 33.5 -6.3 35.1 -5.9 34.2 -6 35.1 -5.9 35 -7.2 34.1 -7.7
2009年~2010年
最高
最高
最低
最低
2009年
最高
最低
最高
最高
最低
最低
気温極値(℃)
(都城)
34.7 -5 34.3 -3.1
気温極値(℃)
(高千穂)
33.2 -6.2 34.2 -6.5
最高
最低
最低
最高
最高
最低
最低
最高
最高
最低
最低
最高
最高
最低
最低
最高
最高
最低
最低
最高
最高
最低
最低
最高
最高
最低
最低
最高
最高
最低
最低
最高
最高
最低
最低
最高
最高
最低
最低
最高
最高
最低
最低
最高
最高
最低
最低
最低
36.7 -1.8 35.5 -1.8
最低
最高
最低
2010年
最高
気温極値(℃)
(宮崎)
最高
最高
最高
最高
最低
最低
【県内における最高気温・最低気温(極値)の推移】
これらのデータについて散布図を基に線形近似で表すと以下のグラフのように、平均気温
と同様に年々上昇傾向を示しており、平均気温に限らず最高気温や最低気温の極値について
も上昇傾向となっていることが伺える。
【県内3箇所の観測地点における最高気温(極値)の散布図】
-9-
【県内3箇所の観測地点における最低気温(極値)の散布図】
しかしながら、現実には単純な右肩上がりの上昇ではなく、年ごとに寒暖を繰り返しなが
らの上昇傾向となっている。
このため、今後とも地球温暖化の進行に伴う温暖化の影響への対応だけでなく、これらの
現象を原因とする異常気象等(特に厳冬)への対応も念頭においた取組を引き続き進めてい
く必要がある。
- 10 -
3
本県農水産業への影響
(1)農業への影響
地球温暖化の影響との関係は明確でない事象もあるが、近年の気象異変により本県農水
産業で問題となっているものを取りまとめた。
①
早期水稲
早期水稲では、梅雨時期の日照不足や梅雨明け後の高温等の影響により、白未熟粒の
増加や充実度不足による等級格下げが増加している。
また、カメムシ被害による等級格下げや紋枯病の多発による収量・品質の低下が確認
されている。
②
普通期水稲
登熟期の高温による白未熟粒の増加、充実度不足、カメムシ被害による等級格下げ、
紋枯病の多発による収量・品質の低下が確認されている。
また、越冬害虫によるウイルス病(萎縮病、縞葉枯病等)等が増加するとともに、海
外飛来性害虫(ウンカ、コブノメイガ)の被害が多発している。
【ウンカによる坪枯れ】
③
【高温障害による白未熟粒】
野菜
ア
ピーマン(施設)
秋の高温により促成栽培では、初期に花が着果せず、
草勢が強くなりすぎる傾向にある。
冬季の高夜温時に暖房機の作動時間の短さに起因する
葉の濡れにより、斑点病、黒枯病等が増加している。
晩秋から早春にかけて乾燥する日が多く、うどんこ病
が多発している。
【ピーマンの黒枯病】
イ
きゅうり(施設)
秋の高夜温で茎葉が徒長する傾向にあり、晩秋から早春の乾燥する日が多い時期に、
うどんこ病が多発している。
冬季の高夜温時に暖房機の作動時間の短さに起因する葉の濡れにより、褐斑病等が
増加している。
ウ
いちご(施設)
冬季にも株枯れ症状が発生している。
定植後の高温で活着が停滞し、生育不良がみられる。
エ
夏秋トマト
7月の高温による花落ち(着果不良)が増加している。
- 11 -
オ
さといも
夏季の高温・少雨により茎葉の消耗が早くなり、芽つぶれや水晶症状が増加してい
る。
カ
レタス
球の肥大が早く、変形球が増加している。
冬季にも食葉性害虫及び軟腐病が多発している。
【レタスの変形球】
キ
千切りだいこん
冬季の寒風(強い西風)の吹く日が少なく、乾燥に日数を要する。
冬季にも食葉性害虫及び軟腐病が多発している。
④
果樹
ア
かんきつ類
収穫後の発芽や日焼け果及び浮き皮が増加している。
ゴマダラカミキリの発生が早進化している。
着花、結果が不安定になってきている。
イ
ぶどう
収穫期での着色不良がみられる。
ウ
マンゴー
秋季高温によって花芽分化が遅れ、開花のばらつきや結果不良、出荷開始時期の遅
れなどが見られる。
【うんしゅうみかんの日焼け果】
⑤
【赤色系ブドウの着色不良】
花き
ア
スイートピー
秋の高温による植付け時期の遅延、初期生育不良に
よる出荷開始時期の遅れ、冬の高温強光による成長点
異常、連続した曇雨天時の高夜温による落蕾や花シミ
発生で収量減少・品質低下が発生している。
【スイートピーの成長点異常】
- 12 -
イ
夏秋ギク
夏秋ギクでは、高温による開花遅延や貫生花・奇形花
発生による品質低下が発生している。
秋ギクでは、高温時の直挿し後の発根不良、高温・曇
雨天による生育遅延、品質低下が発生している。
【夏秋ギクの貫生花】
ウ
シンビジウム
夏季の高温により、山上げ時期の早進化と山下げ時期の遅延が発生している。
高温による花飛びも散見されている。
エ
ラナンキュラス
定植前後の高温による初期生育不良や1番花の品質低下、2番花の品質低下、曇雨
天による出荷期の遅れ、花のシミ、灰色カビ病などが発生している。
オ
デルフィニウム
育苗中の高温による早期抽だい、定植後の高温による1番花、2番花の品質低下、
曇雨天により、鮮度保持剤の吸収不良や出荷期の遅れ、花のシミ、灰色カビ病などが
発生している。
カ
ホオズキ
害虫(ダニ、アブラムシ等)の多発、立ち枯れ性病害が多発している。
⑥
茶
秋整枝後の秋の気温上昇に伴う再萌芽による初霜期の凍害や、一番茶芽の寒害・霜害
頻度の増加、降雨間隔の拡大や秋の高温によるダニ類やクワシロカイガラムシ等の害虫
が増加している。
【一番茶芽の霜害】
⑦
【再萌芽の凍害】
葉たばこ
台風接近・襲来の早進化による収穫前の被害が増加している。
高温に伴う強日射による日焼け、枯れ上がりが発生している。
連続降雨に伴う成熟遅れや充実不足、立枯病・疫病等の発生による収量・品質の低下
が確認されている。
⑧
飼料作物
トウモロコシ等の春夏作については、播種が早くなる傾向となっている。
また、高温乾燥による病変がみられる。
- 13 -
イタリアンライグラス等の秋冬作については、高温によりいもち病が発生している。
【トウモロコシの異常雌穂】
【イタリアンのいもち病被害】
夏季にサイレージ調製後の品質低下がみられ
廃棄量が増加している。
飼料作物のほ場では、バッタやイナゴ、カメムシの発生が多くなる傾向にあり、食害
が多くみられる。
また、南方系の有害雑草(ハリビユ、イチビ、ジョンソングラス、オナモミ、ホオズ
キ等)が増加している。
⑨
畜産
ア
肉用牛
夏季における、繁殖雌牛の受胎率等の繁殖成績
等の肥育成績の低下がみられる。
9.5
濃厚飼料摂取量(kg/日)
や子牛の増体量の低下、肥育牛での増体量や肉質
THIが増加 → 飼 料摂取 量が低 下
9
8.5
8
7.5
62.5
65
67.5
70
72.5
75
THI(温湿度指数)
77.5
80
【温湿度指数と濃厚飼料摂取量】
乳用牛
の悪化がみられる。
高温ストレスと思われる乳房炎が発生している。
熱射病等が発生するようになり、乳牛の耐用年数
1,500
50
授精頭数
受胎率
1,000
40
500
30
受胎率(%)
暑熱による夏期の乳量や乳成分の低下、繁殖成績
授精頭数(頭)
イ
が短くなっている。
ハエなどの衛生害虫の発生が増えている。
0
20
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
【乳用牛(泌乳牛)の人工授精
成績(県内2006-2008)】
ウ
豚
暑熱による夏季の受胎率、発育性の低下、背脂肪厚による上物率の低下がみられる。
エ
鶏
暑熱による夏季の産卵率、発育性の低下や熱射病の増加がみられる。
- 14 -
(2)水産業への影響
1966年度からの沿岸定線調査により、日向灘の水温には有意な昇温傾向が見られている。
海洋気候系のレジームシフトの影響も考慮する必要があるが、気象庁の海面水温解析にお
いても同海域の水温は、長期的に昇温傾向となっている。
多くの水産資源は、水温の季節・年変化とともに回遊し分布を変化させ、現在までの水
温長期変動の範疇では、数十年周期の気候変動による影響の方が大きいと考えられる。
ただし、一部の回遊性資源の来遊量や定着性資源では、負の影響が生じる可能性が高い
と考えられるものもある。
特に、藻場の衰退や磯焼けは、冬季の水温が上昇したことで植食性動物の大型海藻に対
する食圧が増大し、藻場が回復できない状態まで過剰採食されたことが一つの原因である
と考えられる。
また、ホンダワラ類藻場では、増大した食圧によって温帯性種が減少した場所で、植食
性動物の採食に対する高い耐性を持った南方系種が優占、あるいは顕在化する事象もみら
れる。
【植食性魚類の採食の様子】
①
【食べられた跡】
底曳網漁業
ハモ、ヒラメ、イカ類、エビ類などが漁獲対象種で、水温変動の影響が大きいと考え
られている。魚種により増減傾向は異なるが、これら環境変動の影響でクルマエビは漁
獲量の低迷が継続している。また、南方系種のウシエビの漁獲量が増加傾向にあること
が推察されている。
②
定置網漁業
大型産卵ブリの入網状況については、日向灘の定置網漁場の水温が17~18℃台まで下
がると漁期を迎えるが、近年、この時期が遅くなっている可能性がある。
③
まき網漁業
イワシ、アジ、サバ類が漁獲対象種で、未成魚成長域の水温変動等に影響され資源量
が大きく変化する可能性があるが、日向灘における水温変化がこれらの魚種の漁獲量や
回遊量に直接影響を与えている可能性は低い。
- 15 -
④
沿岸かつお・まぐろ漁業
近年、かつおの日向灘への来遊量が減少していることが示唆されているが、水温の上
昇ではなく、資源量の変化によるところが大きいと推測される。
⑤
ぱっち網漁業
イワシシラスが漁獲対象種で、まき網漁業と同様に資源の変動や初期の生き残り率が
漁獲量に影響を与えることから、日向灘の水温変化が漁獲量に直接的な影響を与えてい
る可能性は低い。
日向灘では、2001年頃からハリセンボンの大量来遊が見られ、定置網漁業やまき網漁業
において、魚価の低下や作業コストの増加等の被害が発生した。
今後、温暖化が進行し、予測困難な生態系の変化や特定種の異常繁殖による漁業被害の
頻発も危惧される。
- 16 -
Ⅱ
地球温暖化の進行に伴う影響の将来予測
1
地球規模での影響予測
地球温暖化に関する科学的な評価においては、IPCCが2007年の第4次評価報告書の中
で、気候システムに温暖化が起こっていると断定するとともに、人為起源の温室効果ガスの
増加が温暖化の原因とほぼ断定している。
この中で、将来の予測として、21世紀末の二酸化炭素濃度は、工業化(産業革命)前の約1.
8倍から4.5倍(約490ppmから約1,260ppm)、平均気温上昇が1.1℃から6.4℃(社会シ
ナリオにより変化)、極端な高温、熱波、大雨の頻度の増加等が報告されている。
(参考)IPCCによる第4次評価報告書における温室効果ガス排出シナリオの概要
IPCCが2007年に公表した第4次評価報告書では、温室効果ガス排出シナリオとし
て世界平均気温の上昇量(1980年~1999年との比較)が報告されている。
A1:高成長社会シナリオ
高度経済成長が続き、世界人口が21世紀半ばにピークに達した後に減少し、新
技術や高効率化技術が急速に導入される未来社会。A1シナリオは技術的な重
点の置き方によって3つのグループに分かれる。)
平均気温上昇量
A1FI:化石エネルギー源重視
・・・・・・4.0℃(2.4℃~6.4℃)
A1T
:非化石エネルギー源重視
・・・・・・2.4℃(1.4℃~3.8℃)
A1B
:各エネルギー源のバランス重視
・・・・・・2.8℃(1.7℃~4.4℃)
A2:多元化社会シナリオ
それぞれの地域で独自性を保持するシナリオで、非常に多元的な世界。出生率
の低下が非常に穏やかであるため世界人口は増加を続ける。世界経済や政治は
ブロック化され、貿易や人・技術の移動が制限される。経済成長は低く、環境
への関心も相対的に低い。
・・・・・・3.4℃(2.0℃~5.4℃)
B1:持続発展型社会シナリオ
地域間格差が縮小した社会。A1シナリオ同様に21世紀半ばに世界人口がピー
クに達した後に減少するが、経済構造はサービス及び情報経済に向かって急速
に変化し、物質志向が減少し、クリーンで省資源の技術が導入されるもの。環
境の保全と経済の発展を地球規模で両立する。・・・・・1.8℃(1.1℃~2.9℃)
- 17 -
B2:地域共存型社会シナリオ
経済、社会及び環境の持続可能性を確保するための地域的対策に重点が置かれ
る世界。世界人口はA2よりも緩やかな速度で増加を続け、経済発展は中間的
なレベルにとどまり、B1とA1の筋書きよりも緩慢だがより広範囲な技術変
化が起こるもの。環境問題等は各地域で解決が図られる。
・・・・・・2.4℃(1.4℃~3.8℃)
【21世紀末(2090年-2099年の平均)の気温の変化の予測:気象庁】
(複数の気候モデルによるA1Bシナリオの予測結果を平均したもの)
(1980年-1999年の平均気温からの変化)
2
将来の県内の姿
(1)農業への影響評価
宮崎気象利用研究会が行った「気候統一シナリオver.2」
気候シナリオver.2」
※3
※2
及び「日本域2次メッシュ
の解析による地球温暖化の本県気象資源への影響予測では、温暖
化Ⅰ期間(2031年-2050年)(以下「温暖化Ⅰ期間」という。)における本県の姿は、海岸
に沿って18~20℃域が現れ、14℃以下の低温域は高冷地へと狭まると見込まれている。
これは、沿海地帯は鹿児島県屋久島並の気候となり、県内のほとんどの地域が現在の本
県沿海地帯並の気候になることを示している。
また、降水量は、宮崎平野では約50mm減少するが、高冷地に行くに従って500mm以上降水
量が増加することが予想されている。
特に、宮崎平野では春の降水量が減少するなど季節ごとの雨の降り方も変化するとされ
ている。
気候シナリオでは、温暖化による台風への影響は推測できないため、過去50年間に宮崎
に接近した台風について調査した結果から、最近の台風(1976年~2000年)は、以前(1951
~1975年)よりも遅い時期(8月下旬~10月)に接近するものが多くなっており、9月か
ら10月に接近する台風が多くの雨をもたらす傾向にあるとされている。
- 18 -
※2
気象庁が地域気候モデルを用いて日本付近の気温や降水量などの気候変化を20kmの解像
度で予測したもの
※3
①
農業環境技術研究所による温暖化予測値
年平均気温の変化
温暖化Ⅰ期間には、本県の海岸に沿って18~20℃域が現れ、14℃以下の低温域は、標
高700m以上の高冷地へと狭まってくる。
地表付近の年平均気温は、約2℃上昇すると予測されている。
温度帯別の占有面積率(%)
基準期間
<10.1℃
10.1-12.0
12.1-14.0
14.1-16.0
16.1-18.0
1.2
16.5
25.9
34.1
22.4
1.2
17.7
27.1
35.3
温暖化Ⅰ期間
18.1-20.0
18.8
【基準期間及び温暖化Ⅰ期間における県内の温度帯別の占有面積率】
(基準期間:1981年-2000年、温暖化Ⅰ期間:2031年-2050年)
②
植物相等の変化
植物分布の指標となる暖かさ指数(WI)
※4
は、基準期間で約145℃月であり、温暖化
Ⅰ期間には165℃月まで上昇する。このため、県内の沿岸域では、亜熱帯植物の生息が可
能になると予測されている。
また、現在標高400m辺りまで広がっている照葉樹林が温暖化Ⅰ期間には標高約700m
辺りまで広がる可能性も予測されている。
本県の基準期間における標高0m地点のESTは、5,750℃日であり、温暖化Ⅰ期間で
は、6,500℃日に達すると予測されている。
これにより、例えば、有効積算気温(以下「EST」という。)
※5
が2,500-3,800℃
日といわれているイネは、ESTが5,000℃日超の地域では、2期作が可能となると考え
られる。基準期間では、標高が約200m辺りまでが5,000℃日超となっているが、温暖化
Ⅰ期間では、標高500m辺りまでが5,000℃日超となると予測されている。
また、ESTが6,000℃日超の地域では、亜熱帯・熱帯作物の栽培が可能といわれてい
るが、温暖化Ⅰ期間では、標高約150m地点までが6,000℃日超となることから沿海地域
での栽培が可能となると予測されている。
農業生産や主な作物の栽培帯分布への気候環境の影響を適正に評価するためには、各
作物の気候要求度に関する定量的なデータ(作物の生育・収量と気候・気象条件との並
行観測データ)が不可欠であることから、適宜データの収集に取り組んで行く必要があ
る。
なお、それらの情報が比較的揃っている温州みかん(EST:6,000℃日)の栽培帯分
布を解析してみると、基準期間に沿海地域と都城盆地に限られていたものが、温暖化Ⅰ
期間では、沿海地域を離れて内陸部へと移動すると予測されている。
- 19 -
一方、畜産関係では、家畜の体感温度が、16.3℃の年平均気温の時に、牛が14.1℃、
豚が15.4℃、鶏が15.7℃といわれているが、温暖化Ⅰ期間では、年平均気温18.1℃に対
して牛の体感温度が16.4℃、豚が17.2℃、鶏が17.4℃となり気温との差が小さくなり暑
熱ストレスを受けやすくなると予測されている。
※4
月平均気温5度を基準として、各月の平均気温の5度との差を累積したもの
平均気温が5度より高い月の累積が暖かさの指数となる。
※5
植物の生長に対して有効な最低温度以下の温度を無効として除去し、それ以上の温度
だけを積算したもの
(2)水産業への影響評価
気象庁によると、日本周辺の年平均海面水温は、大気中の温室効果ガス濃度が21世紀末
頃に20世紀末の約2倍となるA1Bシナリオの場合、100年あたり2.0~3.1℃、温室効果濃
度が約1.5倍となるB1シナリオの場合、100年あたり0.6~2.1℃上昇し、海面水温の上昇
は、日本南方海域より日本海で大きいとしている。
また、年平均海面水位(海水の熱膨張による寄与のみ)は、A1Bシナリオの場合、100
年あたり9~19cm、B1シナリオの場合、100年あたり5~14cm上昇するとされており、
漁業生産への影響や潮位変化による漁港施設等への影響に加え、台風の大型化等による影
響が予想される。
○
水産資源の変化
本県の水産資源については、平成20年度に具体的な本県水産業に対する影響調査を行
っており、今後の地球温暖化の進行に伴い、本県水産業の重要種であるマイワシ、カタ
クチイワシ、マアジ等の回遊性資源量の低迷や定着性資源の多い底物類では、種組成の
変化や漁獲時期の変動が著しくなるものと予想され、相当の影響が懸念されている。
- 20 -
Ⅲ
本県農水産業の持続的な発展に向けた取組
地球温暖化の進行による本県農水産業への影響は、平均気温等の上昇といった長期的な気候
変動に着目するだけでなく、気候の変動により、夏季の異常高温や秋季の長雨、暖冬と寒気団
の張り出しによる異常低温、大型台風の襲来といったこれまで特異的な気象災害として位置づ
けられていたものの中に、常態化していくものがあることを正確に把握し、気候変動に遅れを
取らない対策を講じていく必要がある。
このため、今後とも研究センターを核に、「温暖化を活かす」、「温暖化から守る」、「温暖化
を抑制する」の3つの視点からの取組を積極的に進めていく。
1
研究センターの機能強化
研究センターでは、3つの視点に立った国内外の研究成果等の情報収集に取り組むととも
に、情報や研究成果の分析結果等を県内の農水産業者や関係機関・団体等に対してスピーデ
ィな情報提供に取り組んでいく。
また、3つの視点に立った各種の調査、研究、実証等の進行管理や大学や民間企業等の連
携や共同研究・開発等のコーディネートにも積極的に取り組んで行く。
さらに、気象予測等の知見を有する有識者や大学との連携を強化し、将来の県内各地域に
おける平均気温等の変化予測やそれに伴う作物の栽培・飼養適地のシミュレーション等に取
り組み、将来の県内の産地構造を明らかにするための検討を進めていく。
2
地球温暖化の対応に向けた3つの対策の取組促進
(1)「温暖化を活かす」対策では、
地球温暖化による暑さを活かし、農水産業を展開するため、
①
亜熱帯性・高温性の新品種や新品目の導入・普及
②
温暖化に対応した作型への転換や作付地帯の見直し
③
温暖化に対応した養殖魚種の飼育・開発や天然資源の長期的変動予測技術の開発
などの取組を促進する。
(2)「温暖化から守る」対策では、
地球温暖化による暑さや異常気象等から農水産業を守るため、
①
地球温暖化に適応した品種や品目、生産技術の開発・普及
②
新たな病害虫防除技術の開発・普及や防除体系の確立
③
畑地かんがい施設等の生産基盤の計画的な整備
などの取組を促進する。
(3)「温暖化を抑制する」対策では、
農水産業の生産段階において、地球温暖化の進行抑制に資するため、
①
太陽光(熱)や地域未利用バイオマス等による再生可能エネルギーを利活用した生産技
術の開発
②
農地土壌の炭素貯留機能の向上に資する技術の開発・普及
③
操業の効率化に向けた漁場形成機構の解明や魚海況情報等の提供
などの取組を促進する。
- 21 -
3
対策の推進に係る短期的な取組
(1)農業における具体的な取組
①
水稲
ア
高温登熟障害対策
(ア)新品種の導入や効率的な水稲生産の検討
本県では、平成23年に高温登熟障害や倒伏に強い「宮崎45号」、
「おてんとそだち」
を育成しており、今後、「コシヒカリ」や「ヒノヒカリ」の代替品種として普及拡
大を図っていく。
この他、温暖化の中で米の新たな需要に応じた品種や直播栽培に適する品種等の
育成及びこれらの効率的な栽培法の検討・開発を進めていく。
(イ)適期・適正な移植の実施
登熟期の高温障害の軽減を図るため、出穂期を考慮した適期移植の実施と過度の
籾数確保とならないよう適正な裁植密度による移植を行う。
(ウ)適正な水管理の実施
根の活力を維持するため、生育期間を通した間断かん水や適期の中干しを実施す
るとともに、収穫5日まではかん水を行い、早期の落水防止を徹底する。
また、白未熟粒の発生を軽減するため、出穂期以降のかけ流し灌漑や夜間入水な
どに取り組んでいく。
(エ)土づくり、適正な施肥の実施
プラウ耕起の実施等により作土層(有効根域)の拡大を図るとともに、土壌診断
に基づき堆肥や土壌改良資材等を施用する。
籾数過多や登熟期の肥料不足等は、玄米品質低下を助長する場合があるため、前
作物や地力に応じた基肥の施用や茎数及び葉色等に応じた穂肥の施用など、適正施
肥を行う。
イ
病害虫防除対策
(ア)的確な病害虫防除対策の実施
越冬害虫及び海外飛来性害虫の増加、病害の多発や発生消長の変化等が予想され
るため、予察シミュレーションシステムの活用等による予察技術の高度化を図ると
ともに、予察情報に基づく適期防除、適切な農薬の組み合わせ等といった情報提供
を充実する。
②
施設園芸共通
ア
ハウスの降温対策
近年、単収向上のため、定植時期の前進化や収穫の切り上げ時期の延長が進んでお
り、ハウス内の降温技術の開発が求められている。
このため、効果的な遮光・遮熱資材の活用による施設内の気温や地温、葉温の上昇
を抑制し、品質の安定化や収量の向上、生理障害の発生抑制等を図る。
なお、遮光期間や展張時の天候によっては、施設内の光量低下により、収量や品質
の低下を招くことがあるため、品目の持つ光要求性に応じた資材の選択や遮光期間の
設定が必要である。
- 22 -
イ
ハウス環境制御の高度化対策
(ア)循環扇・換気扇の活用
循環扇により施設内の空気の対流を促進し、温度・湿度分布の均一化を図ること
で、暖房効率を高め、夜間の精密な変温管理による省エネルギー化を図る。
また、地球温暖化により暖房機の稼働時間の減少が見込まれることから、天窓や
換気扇等を活用した換気による除湿や結露防止に取り組むとともに、安定して効果
を得るために更なる技術の高度化が必要である。
(イ)かん水技術の高度化
施設内では、かん水によって湿度が高くなりやすいことから、立地条件や品目、
生育状態等を十分に考慮し、かん水は早朝・夕方に実施する。
夜間や曇雨天の日中には換気をするなどして湿度を下げる。
(ウ)適切なハウス内温度・湿度管理の実施
最低夜温が高い日に内張カーテンを被覆すると、暖房機の稼働回数が少なくなり、
ハウス内の湿度の高まりを招き、病害の発生が多くなる。
このため、最低夜温に注意し、内張カーテンの被覆枚数を調整して、適正な夜間
の温度管理を行う。近年は、1~2月の厳寒期にも夜温10℃以上の日が多くなって
きているので注意が必要である。
③
野菜
ア
高温適応性に優れた品種・系統の導入
地域の立地条件や需要動向を踏まえ、品種特性を十分に検討した上で新たな品種・
系統の導入を進める。
なお、異常な高温の際には、高温耐性品種であっても被害を受ける可能性が高いた
め、他の高温対策と組み合わせた取組を推進する。
イ
散水・かん水用水の確保
地球温暖化の影響は、降雨パターンに顕著な変化を及ぼしており、近年、降雨間隔
が長くなる一方で、一回の雨の量が多くなっており、今後ますますこの傾向が強くな
ると見込まれている。
このため、畑地かんがいやため池等の用水の整備・維持を進め、適期に確実にかん
水できる用水の確保に努める。
ウ
土壌管理技術の高度化
(ア)敷わらの導入
土壌表面温度の上昇抑制や土壌水分の低下を抑制する効果が期待できるが、早す
ぎる被覆は、地温低下を招き生育が遅れる場合がある。
また、すき込み後に土壌中の硝酸態窒素が低下するとの報告もあり、基肥の量や
追肥の時期などに注意が必要である。
(イ)地温抑制マルチの導入
地温の上昇抑制や土壌水分の保持、雑草防除等の効果が期待できるが、資材の費
用対効果を十分検証した上で導入する必要がある。
また、展張する際は、通常のマルチ同様にフィルムと土壌の間に空間ができない
よう展張し、風による飛散や土壌水分の不均一を招かないようにする必要がある。
- 23 -
④
果樹
ア
遮光対策の実施
果実の日焼けは、気温が高く直射日光が当たると発生する高温障害で、土壌の極端
な乾燥や着果過多といったストレスにより助長される。基本的な対策は、蒸散を支え
られる十分な細根を確保できる土づくりや適切な摘果や整枝が重要で、特に、日焼け
しやすい品種については、遮光率の高い果実袋の使用等を検討する。
イ
適正な結果量の確保と樹勢強化
着色不良対策として、適正な結果量を確保するとともに、適切な施肥やせん定、適
期間伐等により、良好な樹勢を確保する。施設栽培においては、適切な温度管理を行
うとともに、品目によっては環状剥皮などを組み合わせて着色の向上を図る。
ウ
的確な害虫防除の実施
地球温暖化の進行により害虫の発生消長が変化していることから、トラップ等を用
いた的確な害虫防除を実施する。さらに、昆虫寄生菌などを有効に活用することで、
農薬に対する抵抗性を付与しない防除を推進する。
エ
秋季高温時の花芽分化対策(マンゴ-)
花芽分化を進めるためには、枝の充実が重要である。
このため、せん定時期が遅れないように留意し、併せて適正な施肥やかん水、適期
間伐を進めるとともに、枝葉の充実のための葉面散布や日照確保などを行い、適切な
秋季の温度管理とあわせて花芽分化を促進する。
オ
ヒートポンプや植調剤の活用
秋期の高温によりマンゴーの着花が不安定になる年が増えていることから、ヒート
ポンプによる夜冷や植調剤の活用等の実用化が必要である。
カ
温暖化に対応できる品種・系統の導入
地域の立地条件や需要動向を踏まえ、浮き皮、着色不良等の課題に対応できる品種
・系統の導入を進める。
キ
結果不良や肥大不良の原因究明と対策
近年、連年の着果不良となったり、極端な着花の不良や結果量が少ないにも関わら
ず果実の肥大が不良となる等の事象が確認されており、この原因究明と対策の確立に
取り組んでいく。
⑤
花き
ア
ハウス・地温の降温対策
(ア)ハウスの降温対策
高温による生理障害の発生や収量減・品質低下を抑制するため、定植時期の地温
や栽培期間の施設内の気温の上昇を抑制することが必要である。
特に、遮熱性が高い資材の中には、わい化効果を有するものもあるので、事前に
適性を確認することが必要である。
(イ)地温の降温対策
定植時期の地温上昇を抑制するため、地温抑制マルチを活用した定植後の活着や
初期生育の促進を図り、収量向上や品質の安定化を図る。
- 24 -
(ウ)施設内の換気改善
気温上昇を防ぐため、施設の入口やサイド、妻部分を最大限解放し、換気の改善
を進める。
また、可能な場合は、外天をフルオープン化し、気温の上昇を抑制する。
(エ)夜間のシェードの開放
シェード栽培では、夜間のシェード内の気温上昇を軽減するため、一時的なシェ
ード資材の開放を行う。
イ
定植時期の調節
スイートピーやラナンキュラス等の特に低温性の品目は、猛暑条件下における定植
期の高温抑制対策とともに、定植時期を遅らせる等の対策を行う必要がある。
ウ
高温適応性に優れた系統の選抜及び品種育成
夏秋ギクの奇形花等の発生を抑制するため、生産現場において積極的な系統選抜を
行う必要がある。
⑥
茶
ア
防霜ファン等の活用による越冬芽の凍害防止対策の実施
越冬芽の凍害防止に効果の高い初霜期防霜を行うため、防霜ファンやスプリンクラ
ーを活用した凍害防止対策を実施する。
なお、初霜期の茶芽の耐凍性は、品種やその時期の気温の推移状況によって異なる
ことから、初霜期防霜を実施する茶園においては、茶芽の耐凍性の獲得状況を確認し
ながら、防霜対策の開始時期や終了時期を決定する。
イ
秋期防除の徹底及び耐病性品種の導入
冬期の気温上昇に伴い、越冬する害虫が増加することから、防除体系を見直しなが
ら秋期の防除を徹底する。
また、気温上昇に伴う輪斑病の増加や降水量の増加による炭疽病の増加が予想され
ることから、耐病性品種の導入を進める。
⑦
葉たばこ
ア
作柄の早進化による台風回避
夏季の台風を回避するために、良質堆肥の施用による土づくりの徹底と透明マルチ
の活用による作柄の早進化を進める。
イ
排水対策の徹底による病害虫の発生抑制
近年、集中豪雨型の降雨パターンが増加していることから、強い降雨により感染が
広がりやすい疫病や立枯病等の発生リスクを低減するために排水溝を整備し、ほ場内
に水が溜まらないよう排水対策を講じる。
ウ
病害対策の徹底
ほ場の病害菌密度を低下させるため、残幹のすき込みを避け、早期にほ場外へ搬出
するとともに、収穫後及び冬期に深耕する。
- 25 -
⑧
飼料作物
ア
耐暑性・耐病性品種等の導入
耐暑性・耐病性に優れた草種・品種の導入を推進す
る(飼料用サトウキビ)。
【飼料用サトウキビの生育状況】
イ
気象条件に適した栽培体系の開発・推進
収量の向上や品質の安定化を図るため、作付け時期や収穫時期を見直すとともに、
温暖化を利用した新たな周年作付け体系の確立・普及を進める。
⑨
家畜
ア
省エネ設備の導入や省エネに繫がる技術の開発・普及
畜舎構造にフリーバン方式の牛房やパドックの設置及
び屋根にポリカーボネイトを採用し、牛房内への通気や
採光を多くすることで、畜舎内での除ふん作業回数を減
らし、除ふん機の稼働時間を削減できる畜舎施設の導入
を推進する。
また、太陽光発電の畜舎利用技術について検討を行う。
【サンシャイン牛舎】
さらに、畜舎内の換気扇等を効果的に稼働させる自動調整技術の開発に取り組む。
イ
畜舎環境での適切な温度管理技術の普及
庇陰樹・寒冷紗等の設置、スプリンクラー等による屋根への散水、屋根への石灰塗
布や断熱材の利用などを推進し、畜舎外から畜舎温度を下げる技術を推進する。
また、換気扇・扇風機による送風、細霧装置や、クーリング・パッドによる冷却、
家畜への直接送風・散水などにより畜舎内温度を低下させる技術を推進する。
【庇陰樹を利用する豚舎】
【牛舎屋根への石灰散布】
- 26 -
ウ
高温下における飼養管理対策の実施
家畜に及ぼす温湿度指数を指標化し、視覚的に
認識できる指標計を畜種ごとに開発し普及を進め
る。
適正な密度での飼養、放牧場・パドックの活用、
適正な導入頭羽数の調整による夏期の飼養密度の
低減や夜間の照明管理などを推進する。
体感温度とストレスの低減を図るために、放牧
場・パドックの活用、計画的出荷による適正飼養
密度の確保、夜間の照明管理などを推進する。
【畜産試験場が開発した
乳牛用ヒートストレスメーター】
エ
効果的な飼料給与技術等の普及
飼料の摂取量を維持させるため、冷水の十分な量の給与、良質粗飼料・重曹・ミネ
ラル等給与、給与時間の工夫等の技術を普及する。
また、飼料の変質を防ぐため飼料タンクへの遮熱材の塗装・被覆などを推進する。
(2)水産業における具体的な取組
①
海洋環境の変化への対応
ア
海洋環境変動の監視と生態系への影響把握
地球温暖化による漁業への影響を把握するため、水温等の海洋環境や藻場、生息資
源等の生態系変化等についての把握に努める。
特に、藻場については、地球温暖化の進行に伴い、植食性魚類による大規模な過剰
採食の発生と磯焼けが懸念されることから、囲い網等による核藻場の維持が重要であ
る。
イ
地球温暖化に伴うリスクへの対応
高温耐性や耐病性等の遺伝形質を備えた養殖品種の確立、新奇疾病等に対する適切
な養殖技術の開発、食害に強いホンダワラ類等の増殖技術の開発等、地球温暖化の進
行とともに弊害が予測されるリスクへの対応を図る。
ウ
環境変化に対応した漁業生産体制づくり
海面水位の上昇に加え、地球温暖化により大型化する台風等の被害から本県漁業生
産基盤を守るため、耐波性を有する養殖施設やこれらの環境変化等に応じた設計基準
による漁港施設の整備を推進する。
②
地球温暖化抑制に向けた操業技術の改善
ア
省エネ機器等の導入
各漁業における低燃費機関やLED集魚灯等の省エネ機器の導入を促進する。
イ
操業効率化に繋がる技術の開発・普及
漁場形成予測や漁海況情報等の操業効率化に繋がる技術を開発し、各漁業において
その技術の導入を促進するとともに、漁場形成予測の精度向上や情報の双方向化・迅
速化等の技術の高度化を推進する。
- 27 -
(3)共通する基本的な取組
①
地球温暖化に対応する品種・品目及び養殖魚種の開発
地球温暖化の影響予測を基にした高温適応性や耐暑性・耐病性を有する新品種等や高
温耐性を有する養殖魚種の育成・開発に取り組む。
②
病害虫防除体系の見直しや新たな防除技術の確立
地球温暖化に伴う越冬害虫の増加や病害虫・雑草の発生世代数の増加に対応した防除
体系の見直しや総合的な防除体系の構築を進めるとともに、ICT等を活用した遠隔病
害虫診断や病害虫の発生消長の予測技術の高度化に取り組む。
また、各作物に適合した総合的作物管理技術(ICM)の開発・普及を進める。
③
安定生産を支える生産基盤の整備
ア
天候に左右されない安定的な農業生産を支える生産基盤の整備
地球温暖化に伴う干ばつや豪雨などの異常気象に的確に対応できるよう計画的なか
んがい施設(水田・畑への給排水施設)の整備を進めるとともに、ほ場や農道の整備、
防災施設についても整備を進める。
なお、かんがい施設の整備については、県内の国営かんがい排水事業7地区のうち
5地区が完了し、実施中の尾鈴、西諸地区についても近く完了予定であるため、積極
的に整備を進めていく。
また、畑地かんがい施設の整備と併せて品目ごとの散水マニュアルを作成し、活用
することにより、降雨の少ない時期にも収量・品質を確保できる生産技術の確立及び
普及に取り組んでいく。
イ
災害に強い水産基盤の整備
規模が大型化する台風災害等による被害軽減のため、耐波性を有する養殖施設や環
境変化等に応じた設計基準による漁港施設の整備を進める。
④
地球温暖化の予測結果に基づく将来の県内地域の生産構造予測
県内各地域における平均気温等の変化予測やGISの地図情報とのデータの結合に向
けた取組を進めるとともに、そのデータを活用し、将来の県内各産地の目指す姿を明確
にするための検討を進めていく。
⑤
異常気象に対する対策
産業革命に端を発する地球温暖化と異なり、エルニーニョ現象やラニーニャ現象は、
人知の及ばない現象であることから、常にそのリスク(猛暑、厳冬、資源枯渇)を織り
込んだ栽培技術や品目・品種の導入が求められる。
特に、今後、担い手の減少等により、経営規模の拡大が急速に進むと見込まれること
から、これらリスクに対応できる新しい技術体系のマニュアル化を図り、普及させてい
く必要がある。
- 28 -
4
対策の推進に係る中期的な取組(宮崎県農畜水産試験研究推進構想から抜粋)
(1)「温暖化を活かす」、「温暖化から守る」ための研究課題
重
農業
畜産
水産
点
課
題
名
ア
新奨励品種「おてんとそだち」の安定栽培法の確立と普及支援
イ
施設野菜の気候変動に対処し得る総合的環境制御技術の確立
ウ
亜熱帯性花き(ルスカス・ユーカリ・ジャカランダ)の生産技術の確立
エ
ブドウの着色促進、クリの2次伸長枝の処理技術の開発
オ
ライチ・インドナツメの栽培技術確立
カ
茶越冬芽における耐凍性獲得の解明による初冬期防霜対策の確立
キ
施設園芸ハウスの暑熱・除湿対策技術の開発
ク
露地野菜の肥効調節型肥料・有機質資源を利用した施肥体系の確立
ケ
地球温暖化が本県農業に及ぼす影響予測と対策の確立
ア
温暖化に対応した繁殖技術の確立
イ
夏期における生乳生産向上技術の開発
ウ
温暖化に対応した飼料作物栽培技術の確立
エ
亜熱帯飼料作物の導入と作付体系の確立
オ
豚における暑熱対策技術の開発
ア
ウニ類除去技術など本県沿岸の海域特性を考慮した藻場造成技術の開発
イ
植食性魚類の食害を克服する藻場造成技術の開発
ウ
環境生態系保全活動支援技術の確立
エ
主要浮魚類の漁況予測技術の高度化
オ
日向灘の海況変動機構の解明
カ
時代にあった魚介類の品種改良技術の確立
(2)「温暖化を抑制する」ための研究課題
重
点
課
題
名
農業
ア
イ
ウ
太陽熱ハウス冷暖房システムの開発
土壌由来温室効果ガス計測・抑制技術の開発
産学官が連携した温暖化対応技術の開発
畜産
ア
太陽光発電を活用した畜産経営の確立
ア
イ
ウ
エ
オ
カ
漁場造成技術の開発
増殖場造成技術の開発
高度回遊性魚類の漁場形成機構の解明
主要浮魚類の漁況予測技術の高度化
漁海況情報の充実
日向灘の海況変動機構の解明
水産
- 29 -
5
対策の推進に係る長期的な取組
(1)将来に向けた革新的な取組
①
地熱利用ヒートポンプの開発・普及
地球温暖化抑制プロジェクトとして、八洋エンジニアリング株式会社が「地熱利用ヒ
ートポンプの開発」(平成20年度~平成22年度)に取り組み、冬季極低温状態における
地熱利用によるデフロスト対策を確立した。
この結果、従来のヒートポンプが重油暖房機等とのハイブリッド稼働を前提としてい
たのに比べ、ヒートポンプ単独での稼働によりハウス内の必要暖房温度に保つことが可
能となっている。
今後、システムのコンパクト化、システム導入コストの低廉化を進め、県内施設園芸
への導入・普及を進めていく必要がある。
従来のヒートポンプに比べ、
暖房能力で30%、加温成績係数で13~16%向上
重油ボイラーに比べ、
経費で56%、二酸化炭素排出量で34%の削減
【地中熱利用ヒートポンプとその仕組み】
ボイラー方式
使用料金(円/月)
対ボイラー比較(%)
CO2排出量(kg/月)
対ボイラー比較(%)
汎用HP
高効率HP
50,820
35,525
28,599
100
70
56
1,967
821
664
100
42
34
- 30 -
②
太陽熱ハウス冷暖房システムの開発・普及
三鷹光器株式会社、株式会社日向中島鉄工所、スーパーレジンクラフト株式会社が県
総合農業試験場に太陽熱を活用したハウスの冷暖房システムの実証プラントを設置して、
平成22年度から冷暖房技術の開発に取り組んでいる。
今後、システムの安定稼働に向けた改良、システムのコンパクト化、システムの導入
コストの低廉化を進め、次代の冷暖房技術として県内施設園芸への導入・普及を進めて
いく必要がある。
【太陽熱ハウス冷暖房システムとその仕組み】
③
地球温暖化に対応したみやざき型の高遮熱断熱ハウスの開発
ア
春・秋に涼しく、冬は保温力の高いハウスの開発
外ビニルに赤外線を反射する遮熱資材を用いて被覆し、内
部カーテンに高断熱資材を用いることで、既存ハウスを活用
した熱節減率70%以上のみやざき型高遮熱断熱ハウスを開発
する。
【高断熱カーテン資材】
【内張りカーテン展張時】
【内張りカーテン巻き上げ時】
- 31 -
イ
全自動フルオープンハウスの耐久性向上
積極的に春~秋のハウス環境を改善するため、全自動フルオープンハウスの被覆資
材の耐久性向上対策を確立し、実用化を図る。
【フルオープンハウス断面図】
④
【フルオープンハウス】
オゾン層破壊物質「臭化メチル」代替技術の開発
2012年末で使用できなくなる臭化メチルの代替技術として、
地域バイオマスである焼酎粕加工液やみやざき型改良陽熱消毒
技術等を組み合わせたICM型の土壌病害虫発生抑制技術を確
立する。
焼酎粕加工液は、メロンのつる割病や黒点根腐病、ネコブセ
ンチュウに対して高い抑制効果が確認されており、現在、実証
ほを設置し、他作物や土壌の種類、施用時期等での検証が進め
られており、併せて、その作用機作の解明が求められている。
また、みやざき型改良陽熱消毒技術については、より一層の普及拡大を図るため、技
術の高度化、精密化に向け、国レベルでのプロジェクト研究が検討されている。
この2つの技術を核として、作物残さの腐熟促進による土壌ウイルス病の発生抑制技
術等を組み合わせたICM型の脱臭化メチル技術の確立を進める。
【焼酎粕加工液
【無処理区(写真手前)】
80℃・0.2%処理区】
- 32 -
【宮崎型改良陽熱消毒の作業状況】
⑤
未利用バイオマス資源を活用した施設園芸暖房技術の開発
ア
木質系バイオマスの活用技術
これまで、木質ペレット暖房機の導入・実証に
取り組んできているが、低コストな木質ペレット
の確保や木質ペレット暖房機のイニシャルコスト
の低減が課題として残っている。
このため、県内産の良質かつ低価格の木質ペレ
ット製造や木質ペレット暖房機の低コスト化を進
めるとともに、木質ペレット暖房機の排気ガスを
活用したコジェネレーションシステムの確立を進
【県内産木質ペレットと
めていく。
イ
コジェネシステムの試作機】
畜ふんの活用技術
県内で大量に排出される畜ふん(鶏ふん)を燃
料用にペレット化するとともに、その畜ふんペレ
ットを利用したハウス暖房機の開発・普及に取り
組んでいる。
今後、畜ふんペレットハウス暖房機の普及に向
け、暖房機のイニシャルコストの低減や暖房機の
コンパクト化を進めるとともに、鶏ふん以外の畜
ふん(牛ふん、豚ふん)の燃料化及び畜ふんの域
内収集システムの構築に向けた実証・検討を進め
【畜ふんペレットと
ていく。
⑥
畜ふんペレットハウス暖房機】
畜舎等の屋根を活用した太陽光発電利活用技術の開発
畜舎等の屋根においては、強度の関係から住宅用
で普及が進む重量型の太陽光パネルが設置できない
ため、フィルム型の軽量な太陽光パネルを設置し、
コスト・発電効率・耐久性等について実証・検討を
行う。
併せて、温暖化の進行に伴う暑熱ストレス軽減の
の観点から、太陽光パネルの設置による遮熱効果に
ついても検討を行う。
【フィルム型太陽光パネルと
畜舎屋根への設置イメージ】
⑦
その他
○
体温、行動量等の生体情報を活かした家畜管理システムの開発
畜産試験場では乳用牛の暑熱対策として、農家が視覚的に取り組めるTH I 計等の
開発に取り組んでいる。
今後、応用可能な家畜の範囲を広げるとともに、農家がより低コストかつ省力で暑
熱対策が可能な飼育管理機器の開発に取り組む予定である。
- 33 -
6 地球温暖化の進行に伴う作物別の影響及び対策の一覧
(1)作物別の影響一覧
品目別の影響
影響の概要
● 白未熟粒等の発生
水
稲
野
菜
果
樹
花
き
● 充実度不足
● 病害虫の発生
・越冬害虫によるウイルス病(萎縮病、縞葉枯病等)や海外飛来性害虫(ウンカ、コブノメイガ)による被害が増加
● 着果(花)不良
・ピーマンの着果不良やトマトの花落ちが増加
● 生育不良の発生
・きゅうりの徒長、いちごの定植後の生育不良や株枯れ症状、レタスの早期肥大、さといもの茎葉の早期消耗等の発生
● 病害虫の発生
・ピーマンで黒枯病やうどんこ病、きゅうりで褐斑病やうどんこ病、レタスや千切りだいこん等で冬期に食葉性害虫や軟腐病
が多発
● 浮き皮の発生
・かんきつ類で浮き皮の発生の発生が増加
● 着色不良・着色遅延
・ブドウの収穫期での着色不良が増加
● 着果遅延・着果不良
・かんきつ類の着花・結果が不安定、マンゴーの開花のバラツキや結果不良が発生
● 日焼け果の発生
・かんきつ類で日焼け果の発生が増加
● 病害虫の発生
・かんきつ類でゴマダラカミキリの発生が早進化
● 病害虫の発生
・ホオズキでダニ類やアブラムシ等の害虫や立ち枯れ性病害の多発
● 異常花の発生
・キクで貫生花や奇形花が発生
● 生育遅延の発生
・キクで開花遅延の発生
● 花飛び、落花の発生
・スイートピーで落蕾や花シミ、シンビジウムで花飛び、ラナンキュラスで落花、デルフィニウムで落花等が発生
● 生育不良の発生
・スイートピーで初期の生育不良や成長点異常、ラナンキュラスの初期生育不良、デルフィニウムの早期抽だい等が多発
● 凍霜害の発生
・再萌芽による初霜期の凍害や一番茶芽の寒害・霜害頻度の増加
● 病害虫の発生
・ダニ類やクワシロカイガラムシ等の発生の増加
● 収穫前の被害発生
・台風の早期襲来等による収穫前被害の増加
● 生育不良の発生
・日焼け、枯れ上がり、成熟遅れや充実不足等の発生
● 病害の発生
・立枯病や疫病の多発
● 播種の早進化
・春夏作のトウモウロコシ等の播種が早進化
● 飼料調整後の品質低下
・夏期にサイレージ調整後の品質低下が増加
● 病害虫の発生
・イタリアン等の秋冬作でいもち病、バッタ・イナゴ、カメムシが多発
● 雑草の増加
・南方系の有害雑草(ハリビユ、イチビ、ジョンソングラス、オナモミ、ホオズキ等)が増加
● 増体・肉質の低下
・夏期における子牛の増体量、肥育牛の増体量や肉質の低下、豚の発育性の低下や上物率の低下が発生
● 繁殖成績の低下
・夏期における繁殖雌牛の受胎率等の低下、豚の受胎率の低下、鶏の産卵率や発育性が低下
● 乳量・乳成分の低下
・夏期における乳量・乳成分の低下及び繁殖成績の悪化
● 乳房炎の発生
・高温ストレスによる乳房炎の発生
● 熱射病の発生
・熱射病等の多発による乳用牛の耐用年数の短縮化、鶏の熱射病の増加
● 衛生害虫の増加
・ハエなどの衛生害虫が多発
茶
葉
た
ば
こ
飼
料
作
物
家
畜
-34-
(2)作物別の対策一覧
品目別の対応策
・新品種の導入や効率的な水稲生産の検討
・適期適正な移植の実施
水
稲
○ 高温障害対策の実施
・適正な水管理の実施
・土づくり、適正な施肥の実施
施
設
園
芸
共
通
○ 病害虫防除対策の実施
・的確な病害虫防除対策の実施
○ ハウスの降温対策の実施
・品目に応じた遮光・遮熱資材の選択及び遮光・遮熱期間の設定
・循環扇・換気扇の導入や天窓の開閉等の実施
・立地条件や品目、生育状態等に応じた早朝・夕方のかん水等の実施
○ ハウス環境制御の高度化対策の実施
・夜間や曇雨天の日中の通風等の実施
・品目の特性に応じた適切なハウス内温湿度管理の実施
野
菜
○ 高温適応性に優れた品種・系統の導入
・地域の立地条件や需要動向等に適した新品種・新系統の導入
○ 散水・かん水用水の確保
・畑かんやため池等の用水の整備・維持
○ 土壌管理技術の高度化
・敷わらや地温抑制マルチの導入
○ 遮光対策の実施
・果実袋の使用や摘果の実施
○ 適正な結果量の確保と樹勢強化
・適切な施肥やせん定、適期間伐等の実施
○ 的確な害虫防除の実施
・発生時期の変化に対応した的確な害虫防除対策の実施
・適正な施肥やかん水、適期間伐の実施
果
樹
○ 花芽分化対策の実施(マンゴー)
・葉面散布や日照の確保
・秋期の適切な温度管理の実施
・ヒートポンプによる夜冷の実施
○ ヒートポンプや植調剤の活用
・植調剤の活用
○ 温暖化に対応できる品種・系統の導入
・地域の立地条件や需要動向等に適した新品種・新系統の導入
・品目に応じた遮熱資材の選択及び遮光期間の設定
○ ハウス・地温の降温対策の実施
・地温抑制マルチの導入
・施設入り口やサイド、妻部分の開放
花
き
○ 施設の換気改善
・外天のフルオープン化
○ 夜間のシェード開放
○ 定植時期の調節
○ 高温適応性に優れた系統の選抜及び品種育成
○ 防霜ファン等の活用による越冬芽の凍害
防止対策の実施
・生産現場での積極的な系統選抜の実施
・防霜ファンやスプリンクラーの活用
・適期防霜対策の実施
茶
・防除体系の見直し及び秋期防除の実施
○ 秋期防除の徹底及び耐病性品種の導入
・耐病性品種の導入
葉
た
ば
こ
飼
料
作
物
○ 作柄の早進化による台風回避
・土づくりの徹底と透明マルチの活用による作柄の早進化
○ 排水対策の徹底
・排水溝の整備
○ 病害対策の実施
・残幹の搬出、収穫後及び冬期の深耕の実施
○ 耐暑性・耐病性品種等の導入
・作付時期や収穫時期の見直し
○ 気象条件に適した栽培体系の開発・推進
・温暖化を利用した周年作付体系の確立・普及
・フリーバン方式の牛房やパドックの設置
○ 省エネ設備の導入や省エネ技術の開発・
普及
・屋根へのポリカーボネイトの採用
・太陽光発電の畜舎利用技術の検討
・換気扇の自動調整技術の開発
・庇陰樹・寒冷紗等の設置、
・屋根への散水、石灰塗布や断熱材の利用推進
家
畜
○ 畜舎環境での適切な温度管理技術の普及
・換気扇や扇風機による送風、細霧装置やクーリングパッドによる冷却の実施
・家畜への直接送風・散水の実施
・視覚的に認識できる指標計の畜種ごとの開発・普及
○ 高温下における飼養管理対策の実施
・適正な密度での飼養の実施
・放牧場やパドックの活用
・飼料の摂取量維持技術の普及
○ 効果的な飼料給与技術等の普及
・飼料タンクへの遮熱材の塗装・被覆の推進
-35-
【参考】
Ⅰ
地球温暖化の進行に伴う影響の将来予測
1
本県気候資源に対する地球温暖化の影響評価
地 球温暖化 の影響評 価プロジ ェクトと して、宮 崎気象利 用研究 会が「宮 崎農業に 関
する地球温暖化の影響評価」(平成20年度~平成23年度)に取り組んでいる。
この取組では、「気候統一シナリオver.2」及び「日本域2次メッシュ気候シナ
リオver.2」の解析による本県気候資源の変化を予測している。
(1)温度資源の変化
①
年平均気温
基 準 期 間 ( 1981年 ~ 2000年 )( 以 下 「 基 準 期 間 」 と い う 。) で は 、 平 均 気 温 が
最も 高い16℃~18℃地 帯の占有 面積は22.4%となっているが、温暖化Ⅰ期間(20
31年 ~ 2050年 )( 以 下 「 温 暖 化 Ⅰ 期 間 」 と い う 。) に は 、 18℃ ~ 20℃ 地 帯 が 18.8
% 、 16℃ ~ 18℃ が 35.3% を 占 め 、 温 暖 化 Ⅱ 期 間 ( 2081年 ~ 2100年 )( 以 下 「 温 暖
化 Ⅱ 期 間 」 と い う 。) に は 、 18℃ ~ 20℃ 地 帯 が 34.1% 、 16℃ ~ 18℃ が 29.4% に な
ると予測している。
季 節 ご と の 平 均 気 温 は 、 冬 期 ( 2.5℃ ~ 3 ℃ ) > 春 期 ( 2.1℃ ~ 2.8℃ ) > 秋 期
(0.8℃~2.5℃) >夏期( 1.2℃~1.6℃ )の順に 大きくな り、冬か ら春にかけて
の気温変化が大きいと予測している。
ま た、 最低気温 は、最高 気温と同 様の昇温 傾向を示 すが、 より強く 温暖化の 影
響を受けると考えられる。
夏 日 ( 日 最 高 気 温 が 25℃ 以 上 の 日 ) は 、 基 準 期 間 の 118日 か ら 温 暖 化 Ⅰ 期 間 に
は146日間、温暖化Ⅱ期間には168日間に増加すると予測している。
また、 真夏日( 日最高気 温が30℃以上 の日)は 、基準 期間の24日か ら温暖化 Ⅰ
期間には45日間、温暖化Ⅱ期間には73日間に増加すると予測している。
こ のため、 温暖化Ⅰ 期間以降 には沿海 部のほと んどが 、80年後には 都城市の あ
た りまで 、現在の 屋久島に 匹敵する 亜熱帯性 の温度域 に達す ることが 見込まれ て
いる。
【年平均気温の地理的分布への温暖化の影響予測】【平地域の最高・最低気温への温暖化の影響予測】
- 36 -
②
暖かさ指数
温度資源の変化を農業に応用する場合の気候指標として、暖かさ指数(以下「 W
I」という。)
※3
と有効積算気温(以下「EST」という。)
※4
を用いている。
気 候シ ナリオに 基づいて 本県の地 域別、標 高別の解 析を行 うと図の ように変 化
する。
【暖かさ指数の高度分布への温暖化への影響予測】【暖かさ指数への温暖化への影響】
※3
月平均気温5度を基準として、各月の平均気温の5度との差を累積したもの。
平均気温が5度より高い月の累積が暖かさの指数となる。
※4
植物の生長に対して有効な最低温度以下の温度を無効として除去し、それ以
上の温度だけを積算したもの。
(2)水資源の変化
過去 29年 間のアメ ダスデー タの解析 では、秋 の降雨量 が特徴 的に増加 しており 、
総降雨量も増加傾向にある。
一 方、降 雨日数は 減少し、 1回に降 る雨の量 は増加し ており 、特に、 春・夏の 減
少が顕著であった。
気候統一シナリオA2、A1Bの2つのシナリオを比較した場合、地域によって、
降 雨特性に 差があっ たが、秋 の降雨量 が増加し 、特に県 南地域 で顕著に 増加する 点
では一致していた。
【春の降水量予測3次メッシュ分布図】
【夏の降水量予測3次メッシュ分布図】
- 37 -
【秋の降水量予測3次メッシュ分布図】
【冬の降水量予測3次メッシュ分布図】
A1Bシナリオを用いた一ツ瀬川、小
丸川、大淀川、五ヶ瀬川の各流域の水資
源を比較すると、一ツ瀬川、五ヶ瀬川流
域で水資源が減少する傾向にあった。
【A1Bシナリオによる各期間
の月降 水量比較 】
(3)日射資源及び蒸発能の変化
日 射資源 は、温暖 化Ⅰ期間 には若干 減少する ものの、 温暖化 Ⅱ期間に は基準期 間
と同じになると推計されている。
降 水量と 蒸発量の バランス によって 決定され る土壌中 の水分 状態は、 温度要因 と
ともに、土壌生成や植生の分布と生育を決定する重要な気候要素となっている。
蒸 発能は 、日射資 源の変化 を反映し 、温暖化 Ⅰ期間に は若干 減少し、 温暖化Ⅱ 期
間には基準期間と比較して6%増加すると見込まれた。
こ のよう に、現在 発表され ている気 候シナリ オでは、 温度や 降水量の 変化は認 め
ら れないが 、降水量 は季節に よってか なり特徴 的な変化 を示し ているこ とから、 今
後、さらに検討を進める必要がある。
- 38 -
【 全天 日 射量 (月平 均)の年 変化】
【蒸発能の年変化への温暖化の影響】
(4)台風の変化
台 風の発 生・襲来 に関する 予測は難 しく、気 候統一シ ナリオ において も推計は さ
れていない。
この ため、過 去、50年間に みやざき に接近し た台風の 解析を 行った結 果、接近 回
数 は年1~ 2個で変 化してい ないが、 台風の接 近日は、 前半の 25年 間は7月 下旬か
ら 8月下旬 が、後半 の25年間は8 月下旬及 び9月中 ・下旬が 多くな っており 、台風
に 伴う降雨 量も前半 25年 間が大雨 をもたら し、後半 25年 は7月下 旬から 8月上旬と
9月下旬~10月上旬の台風が大雨をもたらしている。
こ のよう に、台風 は接近時 期が晩期 化し、秋 口に多く なると ともに、 秋口の降 水
量を増加させる主要因となっている。
【宮崎に接近した台風の経年変化】
【大雨に占める台風性降雨割合の経年変化】
- 39 -
【台風接近日の変化】
2
【台風接近日毎の平均降雨量の変化】
本県農水産業に対する地球温暖化の影響評価
1 の気候資 源への影 響評価か ら、地球 温暖化が 本県の農 水産業 に及ぼす 影響を評 価
する。
(1)水稲栽培への影響
①
移植日・最適登熟期への影響
温暖化の進行により最早移植時期は、
現 況の 3 月 10日 か ら 温暖 化 Ⅰには 2月2
1日 に 、 温 暖 化 Ⅱ に は 2 月 13日 に前 進 化
すると見込まれる。
一方、最適登熟期は、盛夏期を挟ん
でより低い温度域に移動することから、
早期水稲、普通期水稲はこの温度域に
合致する品種を選択しなければならな
いが、移植日の前進化を支える水資源
の確保や温暖化により秋に強い台風が
多くなることを踏まえた品種選択が必
要となる。
【平均気温の年変化と稲作への
温 暖化の影響】
②
出穂日への影響
水 稲の発育 動態予測 モデル ※5 を用 いて、温 暖化が移 植日か ら出穂日 までの日 数
に及ぼす影響を推測した結果、宮崎地区のコシヒカリを3月15日に移植した場合、
温暖 化Ⅰでは 6日、温 暖化Ⅱで は7日早 くなり、 同地区 のヒノヒ カリを6 月15日
に移植した場合、温暖化Ⅰ、Ⅱとも3日早くなると推測された。
※5
③
堀江・中川(1990)の水稲の発育動態予測モデル
高温障害への影響
水稲の 高温障害 は、出穂 後20日間の平 均気温と の関連 が深く、 一般に27℃を 上
回ると高温障害が発生するとされている。
② の宮崎地 区での予 測出穂日 から20日間の 推定平均 気温は 、コシヒ カリで温 暖
化Ⅰ 、Ⅱと もに1.5℃上 昇し、ヒ ノヒカリ では温暖 化Ⅰ0.8℃、温暖 化Ⅱ1.8℃上昇
- 40 -
する と予想さ れ、特に 、ヒノヒ カリの温 暖化Ⅱで は27.6℃ と高温 障害が確 実に発
生する環境になると予測された。
(2)果樹(うんしゅうみかん)への影響
うんしゅうみかん栽培の温度資源量への影響を
評価した結果、現在、沿海地域に展開している。
産地は、温暖化Ⅰの段階で西に移動し、温暖化
Ⅱでは、ほとんどすべての産地が不適地となると
下
年平均気温(℃)
暖かさ指数(℃月)
有効積算気温(℃)
限
上
限
15
18
120
166
4,700
6,000
推測された。
経済樹齢の長い果樹においては、
現時点でこの温暖化を踏まえた植
栽指導が必要となっている。
【うんしゅうみかんの気候的栽培適地の変化】
(3)その他、露地作物への影響
冬 季の積 雪が無い 本県では 、一年を 通して様 々な作物 が作付 けされて おり、こ れ
ら作物の作付制限要因となる降霜や極高・低温、連続した雨等の発生時期・程度は、
現時点ではメッシュ気候シナリオから推計することは困難である。
こ のため 、現時点 で可能な 農業地域 区分ごと に与える 温暖化 の影響、 最高・最 低
気温への影響について推測を行った。
- 41 -
①
農業地域区分ごとの温暖化の影響
九 州農政局 が示す本 県の10農業地 帯区分ご とに年平 均気温 、年間降 水量、年 間
日射量への温暖化の影響を見ると、やはりいずれの地帯も年平均の上昇が顕著で、
沿海 地帯は温 暖化Ⅰで 年平均気 温が18℃を超 え、中央 沿海、 南沿海で は温暖化 Ⅱ
で19℃に達すると推測された。
作物の作付制限要因となる極温や降霜は、地形の影響を大きく受けることから、
海 陸風の 影響を受 けにくい 南盆地や 北盆地な どでは、 さらに 詳細な検 討が必要 で
ある。
1 の( 2)水資 源の変化 で記述し たとおり 、年間降 水量は どの地帯 も変化が 少
な いもの の、季節 降水量は 地域ごと に大きく 変化する と見込 まれてい る。特に 、
季 節降水 量の変化 は温室効 果ガス排 出シナリ オによっ ても大 きく変わ ることが 判
っており、今後さらに検証を進める必要がある。
【県内各 農業地域の気候予測】
②
最高・最低気温への影響
温 暖化 による年 平均気温 の上昇は 、最高・ 最低気温 の上昇 によるも のである こ
と か ら 、 温 暖 化 に よ る 季 節 毎 の 最 高 ・最 低 温 度 の 昇 温 度 を 推 計 し た 結 果 、 次 の こ
とが明らかになった。
※
昇温度=最高・最低気温(温暖化Ⅰ・Ⅱ)-最高・最低温度(現況)
・
最低気温の昇温度は、最高気温の昇温度よりも若干大きい
・
最高・最低気温の昇温度は、標高の増加に伴い傾向的に大きくなる
・
温 暖 化 に よ る 昇 温 度 は 、 冬 季 (12~ 2 月 )≒ 春 季 (3 ~ 5 月 )> 秋 季 (9 ~ 11
月)>夏季(6~8月)の順になる
また、 夏日(最高気 温≧25℃)、真 夏日(最高気温≧30℃)、熱帯夜(最低気温≧2
5℃)を年 平均気温 との関係 ※6 か ら推測す ると、夏 日、真夏 日は温 暖化Ⅰで 20%、
- 42 -
温暖 化Ⅱで30%増 加し、熱 帯夜は温 暖化Ⅰで 2倍、温 暖化Ⅱ で3倍に なると推 測
された。
これら のことか ら、特に 、内陸盆 地地域で は、猛 暑日(最高気温 ≧35℃)や熱 波
日 (2~ 3日以上 の連続猛 暑日)の 発生が多 くなると 予想さ れ、農作 物等の生 産
に大きな影響を及ぼすと推測される。
※6
内嶋・平木(2009)
【最高・最低気温の昇温への温暖化の影響】
現況(1981-2000平均) 温暖化Ⅰ(現況+2℃)
夏
温暖化Ⅱ(現況+3℃)
日
115
138
150
真夏日
49
60
66
熱帯夜
12
26
34
【温暖化による夏日・真夏日・熱帯夜日数の変化】
(4)病害虫分布への影響
近 年、温 暖化の影 響と考え られる病 害虫の発 生消長の 変化や 新規病害 虫の発生 が
頻 繁に報告 されてお り、ウイ ルス病等 も含めて 海外から の進入 について は厳戒体 制
で阻止する必要がある。
こ こでは 、作物、 野菜、果 樹類に深 刻な被害 を与える 南方系 のミナミ アオカメ ム
シの分布に与える影響について推計した。
- 43 -
ミナミアオカメムシは、最寒月の
平均気温が5℃以上必要とされてい
る こ と か ら 、 温 暖 化 Ⅰ 、温 暖 化 Ⅱ で
の 分 布 域 を 推 計 す る と 、温 暖 化 Ⅰ の
段階で県内の主要産地は全てその分
布域に覆われることが明らかになっ
た。
【ミナミアオカメムシの発生予測】
(5)園芸ハウスへの影響
温暖化により最低気温が上がり、
園芸ハウスの暖房必要日数は、最低
温度15℃の場合、温暖化Ⅰに90%、
温暖化Ⅱに84%に減少し、年間の必
要暖房燃料量の指標となる暖房デグ
リーアワーは、最低温度15℃の時、
温暖化Ⅰで63%、温暖化Ⅱで61%に
減少する。
最低温度10℃の場合の暖房デグリ
ーアワーは、温暖化Ⅰで55%、温暖
化Ⅱで46%と15℃の場合よりも削減
【月 最 低 気温 と 最大 暖 房 デグリ-アワーの変化 】
効果が高い。
現
況
温暖化Ⅰ
温暖化Ⅱ
このことは、ハウスの保温力を高めるこ
Tc=20℃
290
260
250
とで、温暖化の影響をより効果的に取り込
Tc=15℃
220
200
185
むことができる。
Tc=10℃
155
130
120
【暖房必要日数への温暖化の影響】
地域別にこの燃料節減効果を検証すると、西臼杵地域のハウスは、温暖化Ⅰの段階で現
在の宮崎市など中部地域の暖房デグリーアワーとなると推計されたが、園芸ハウスは被覆
資材を含め石油資源への依存度が高く、世界情勢が緊迫の度合いを高める中、価格高騰が
収まる気配はないこと、また、東日本大震災に伴い原子力発電の発電ウェイトが下がり、
今後電力価格が上昇すると見込まれることから、施設園芸の振興に当たっては、エネルギ
ー情勢を踏まえて検討していく必要がある。
- 44 -
【年間最大暖房デグリーアワーへの気候温暖化の影響 】
(6)家畜の暑熱ストレスへの影響
家畜や家きんの生産性は、気温・湿度・日射量に
強く影響され、また、家畜自体から発する顕熱と潜
熱は、舎内温度に強く影響され、温暖化の進行とと
もに家畜の暑熱ストレスが増加することから、標高
50mの畜舎で飼育する乳牛を現在と同じ暑熱ストレ
スで生産するためには、温暖化Ⅰでは標高200m、温
暖化Ⅱでは標高300mの地点に畜舎を移転させる必要
がある。
【家畜・家禽の体感温度の
年変 化と日変化】
- 45 -
【気候温暖化と標高による乳牛の暑熱デグリーアワーデーの変化】
- 46 -
Ⅱ
地球温暖化の進行に伴う農業生産への影響(実態調査結果)
1
実態調査の結果
平成22年度については、実態調査を実施していない。
(1)平成19年度の調査結果
作物名
水稲
早期
生産現場における影響
発生地域
倒伏、白穂、青枯れ
登熟不良
( 早期栽培地帯)
病害の多発(紋枯病等)
水稲
普通期
県内全域(普通
4,000
紋枯病やウンカ類等の病害虫被害の多発
期栽培地帯)
5,000
2,400
発芽不良及び生育遅延
県内全域
きゅうり
100
第一次腋花房の分化遅延(促成)
県内全域
-
芯止まり(促成)
中部地区の一部
-
着果不良(抑制、促成)
県内全域
-
収穫期間の短縮(夏秋露地)
ピーマン
-
着果不良、害虫の多発(夏秋雨除け)
中山間地域
-
着果不良、日焼け果の発生(促成)
沿海地域
-
着果不良(夏秋雨除け)
中山間地域
-
初期花房の不着果(促成)
県内全域
-
ほうれんそ
発芽不良、結球異常、分球、害虫の多発
県内全域
-
う
(露地)
レタス
結球異常(露地)
県内全域
-
たまねぎ
分球(露地)
県内全域
-
葉菜類
害虫の多発(露地)
県内全域
-
ごんぼう
発芽不良(露地)
県内全域
-
にんじん
発芽不良(露地)
県内全域
-
ショウガ
根茎腐敗病の発生(露地)
中山間地域
-
うんしゅう
着色遅延(露地)
沿海地域
みかん
日焼け果の発生(露地)
トマト
果樹
150
20
茎葉の枯れ上がり及びしわ粒の発生
いちご
2,000
登熟不良
さび病やハスモンヨトウ等の多発
野菜
1,800
800
玄米の充実不足
大豆
(ha)
9,000
県内全域
カメムシ多発
発生面積
22.4
372.4
収穫後の芽発生による翌年の着花不良
-
(露地極早生)
花芽分化の遅延(ハウス)
-
日向夏
日焼け果の発生(露地)
沿海地域
41
きんかん
す上がり果の発生(露地・ハウス)
沿海地域
100
へベす
秋芽発生期間の長期化(ハウス)
県内一部地域
- 47 -
-
作物名
果樹
花き
生産現場における影響
発生地域
発生面積
(ha)
かんきつ全
日焼け果の増加(露地)
沿海地域
-
般
害虫の発生期間の長期化(露地)
県内全域
450
かき
着色遅延、日焼け果の発生(露地)
県内一部地域
10.4
くり
結果母枝の充実不良(露地)
県内一部地域
53
ぶどう
着色遅延(雨除け)
県内一部地域
1.6
もも
着果不良(ハウス)
県内一部地域
1
ぎんなん
着色遅延、収穫時期の遅延(露地)
県内一部地域
60
マンゴー
花芽分化の不安定化(ハウス)
県内全域
10
花き全般
アザミウマ類、夜蛾類の発生
県内全域
35
キク
育苗時の病害発生、初期の生育遅延(年
県内一部地域
0.3
末出荷)
開花遅延、貫生花の発生(8~10月出荷) 県内全域
0.5
キク・苗物
害虫の多発(9月)
県内全域
1
シュッコン
短小開花の発生(年内出荷)
県内一部地域
-
スイートピ
生育不良、生長点の発育異常、花落ち(冬
県内全域
20
ー
春出荷)
スターチス
ロゼット化(促成)
県内全域
0.2
デルフィニ
早期抽だい、短小開花、クロロシスの発
県内全域
-
ウム
生(年内出荷)
トルコギキ
ロゼット株、早期抽だいの発生(年内・
県内全域
-
ョウ
年明け出荷)
バラ
短小開花の発生(周年)
県内全域
-
ポインセチ
生育の前進化、草姿の乱れ(10月)
県内一部地域
-
ホオズキ
着色不良の発生(8月出荷)
県内一部地域
-
茶
秋芽生育停止時期の遅延
早場地帯
30
芽揃いや生育の不揃いの発生
早場・山間地帯
44
病害虫被害の増加
県内全域
カスミソウ
ア
工 芸
作物
211
飼 料
飼料全般
南方系の有害草や害虫による被害の増加
県内一部地域
-
作物
飼料用トウ
播種時期の早進化
県内一部地域
-
モウロコシ
牧草
イタリアン
いもち病の発生、播種遅延
県内一部地域
-
家畜
肉用牛
熱射病の発生、ハエ等の衛生害虫の増加
県内全域
-
乳用牛
熱射病の発生、乳量の低下、採食量の低
県内全域
-
県内全域
-
下
養豚
産子数の減少、採食量の低下
- 48 -
(2)平成20年度の調査結果
作物名
水稲
早期
生産現場における影響
カメムシの多発
発生地域
県内全域
発生面積
(ha)
2,638
( 早期栽培地帯)
大豆
さび病やハスモンヨトウ等の多発
20
登熟・落葉の遅延
200
野菜
トマト
着果不良の発生(夏秋雨除け)
中山間地域
-
花き
花き全般
病害虫被害の増加
県内全域
-
キク
育苗時の病害発生(年末出荷)
県内全域
-
高温による定植遅延(12~2月出荷)
沿海地域
-
開 花 遅 延 の 発 生 、 貫 生 花 の 発 生 ( 8 ~ 10
県内全域
-
県内全域
-
県内全域
-
県内全域
-
-
月出荷)
スイートピ
生育不良、生長点の発育異常、花落ち、
ー
花シミの発生(冬春出荷)
デルフィニ
早期抽だい、短小開花、ロゼット株の発
ウム
生(年内出荷)
トルコギキ
ロゼット株、早期抽だいの発生(年内・
ョウ
年明け出荷)
ラナンキュ
生育不良の発生(冬春出荷)
中山間地域
バラ
短小開花の発生(周年)
県内全域
ホオズキ
着色不良の発生(7・8月出荷)
県内一部地域
茶
秋芽生育停止時期の遅延
早場・山間地帯
332
芽揃いや生育の不揃いの発生
早場・山間地帯
17
病害虫被害の増加
県内全域
ウラス
工 芸
作物
-
719
飼 料
飼料全般
南方系の有害草や害虫による被害の増加
県内一部地域
-
作物
飼料用トウ
播種時期の早進化
県内一部地域
-
モウロコシ
牧草
イタリアン
いもち病の発生、播種遅延
県内一部地域
-
家畜
肉用牛
熱射病の発生、ハエ等の衛生害虫の増加
県内全域
-
乳用牛
熱射病の発生、乳量の低下、採食量の低
県内全域
-
県内全域
-
下
養豚
産子数の減少、採食量の低下
- 49 -
(3)平成21年度の調査結果
作物名
水稲
早期
大豆
果樹
生産現場における影響
カメムシ多発
発生地域
( 早期栽培地帯)
カメムシ食害による登熟・落葉の遅延
県内全域
発生面積
(ha)
-
-
さび病やハスモンヨトウ等の多発
-
紫斑病による登熟・落葉の遅延
-
かんきつ全
日焼け果の増加、果実の着色遅延、害虫
般
の発生期間の長期化(露地)
うんしゅう
花芽分化の遅延(ハウス)
みかん
収穫後の芽発生による翌年の着花不良
沿海地域
-
沿海地域
-
-
(露地極早生)
花き
きんかん
ス上がり果の発生(露地・ハウス)
県内全域
-
へベす
秋芽発生期間の長期化(ハウス)
県内一部地域
-
くり
結果母枝の充実不良(露地)
中山間地域
-
ぶどう
着色不良の発生(雨除け)
県内全域
-
マンゴー
花芽分化の不安定化(ハウス)
県内全域
-
キク
育苗時の病害発生(年末出荷)
県内全域
-
苗 不 足 に よ る 定 植 遅 延 の 発 生 ( 12~
沿海地域
-
県内全域
-
県内全域
-
県内全域
-
県内全域
-
2月出荷)
花 芽 分 化 の 異 常 や 遅 延 の 発 生 ( 8 ~ 10月
出荷)
スイートピ
生育不良、花落ち、花シミの発生(冬春
ー
出荷)
デルフィニ
早期抽だい、短小開花、ロゼット株の発
ウム
生(年内出荷)
トルコギキ
ロゼット株、早期抽だいの発生(年内・
ョウ
年明け出荷)
ラナンキュ
定植後の生育不良の発生(冬春出荷) 中山間地域
-
バラ
短小開花の発生(周年)
県内全域
-
ホオズキ
着色不良の発生(8月出荷)
県内全域
-
茶
越冬芽の被害増加
早場地帯
-
病害虫被害の増加
県内全域
-
飼料全般
南方系の有害草や害虫による被害の増加
県内一部地域
-
牧草
イタリアン
いもち病の発生
県内一部地域
-
家畜
肉用牛
熱射病の発生、ハエ等の衛生害虫の増加
県内全域
-
乳用牛
乳量の低下、採食量の低下
-
養豚
産子数の減少、採食量の低下
-
ラス
工芸
作物
飼 料
作物
- 50 -
(4)平成23年度の調査結果
作物名
水稲
普通期
発生地域
発生面積
(ha)
10,000
玄米の乳白米粒等の発生
普通期栽培地帯
株の青立ち症状(莢数の減少)の発生
県内一部地域
10
ほうれ んそ う
発芽不良の発生(秋冬)
県内一部地域
20
レタス
奇形球の発生(秋冬トンネル)
県内一部地域
2
たまねぎ
分球の発生(露地)
県内一部地域
3
ゴボウ
発芽不良による収量の低下(露地)
県内一部地域
10
にんじん
発芽不良による収量の低下(露地)
県内一部地域
5
いちご
第1次腋花房の分化遅れの発生(促成)
県内全域
きゅうり
着果不良の発生(ハウス抑制・促成)
大豆
野菜
生産現場における影響
ピーマン
76
167
収穫時期の短縮化(夏秋露地)
県内全域
80
着果不良、品質の低下、害虫の多発(夏
県内一部地域
22
秋雨除け)
着果不良、日焼け果の発生(促成)
県内全域
195
トマト
初期花房の不着果の発生(促成)
県内全域
60
トマト、ミ
花落ちによる着果不良(夏秋雨除け)
県内全域
28
うんしゅう
花器形成不良による生理落果の増加
県内全域
みかん
(露地)
ニトマト
果樹
785
生理落果増に伴う結果不良(露地)
マンゴー
県内全域
90
県内全域
45
県内全域
90
育苗時の病害発生(年末出荷)
県内全域
-
苗 不 足 に よ る 定 植 遅 延 の 発 生 ( 12~ 2 月
沿海地域
-
県内全域
-
県内全域
-
県内全域
-
県内全域
-
枝の充実不良による花芽分化不良、開花
期の遅れ、結果不良の発生
秋梢発生に伴う花芽分化の遅れの発生
秋梢発生に伴う花芽分化のばらつきによ
る着果不良
結果母枝の緑化遅れと秋梢発生に伴う発
芽、開花期の遅れの発生
花き
キク
出荷)
花 芽 分 化 の 異 常 や 遅 延 の 発 生 ( 8 ~ 10月
出荷)
貫生花、花弁のねじれの発生(7~9月
出荷)
スイートピ
成長点の生育異常、心止まり、落蕾・落
ー
花、花シミの発生(冬春出荷)
デルフィニ
早期抽だい、短小開花、不萌芽の発生(年
ウム
内出荷)
- 51 -
作物名
花き
生産現場における影響
トルコギキ
ロゼット株、早期抽だいの発生(年内・
ョウ
年明け出荷)
ラナンキュ
発生地域
発生面積
(ha)
県内全域
-
定植後の生育不良の発生(冬春出荷)
中山間地域
-
バラ
短小開花の発生(周年)
県内全域
-
ホオズキ
着色不良の発生(8月出荷)
県内全域
-
茶
生育遅延と芽数の減少
県内全域
-
越冬芽の被害増加
県内一部地域
病害虫被害の増加
県内全域
-
肉用牛
発情微弱や受胎率の低下
県内全域
-
乳用牛
乳量、受胎率、飛び出し乳量の低下
県内全域
-
養豚
発情微弱や受胎率の低下
県内全域
-
鶏
増体量、肉質の低下
県内全域
-
採卵率及び卵重の低下
県内全域
-
ラス
工芸
作物
家畜
- 52 -
Ⅲ
地球温暖化の進行に伴う藻場への影響
地球温暖化の影響評価プロジェクトとして、県では、航空機写真や潜水調査等に
より宮崎県沿岸の藻場分布及び構成種を調査するとともに、過去に実施された昭和
51年 度 調 査 及 び 平 成 10~ 12年 度 の 藻 場 干 潟 調 査 結 果 と 比 較 す る こ と に よ り 、 本 県 沿
岸の藻場の実態と変遷を把握し、藻場の衰退と地球温暖化との関係について考察し
た。
1
地区ごとの藻場の変遷状況
県 全 域 の 藻 場 面 積 及 び 箇 所 数 は 、 昭 和 51年 度 調 査 時 ( 1 回 目 ) が 2,334万 ㎡ 及 び 1
96箇 所 、 平 成 10~ 12年 度 調 査 時 ( 2 回 目 ) が 596万 ㎡ 及 び 205箇 所 、 平 成 20~ 21年 調
査 時 ( 3 回 目 ) が 936万 ㎡ 及 び 304箇 所 で あ っ た 。
地区
藻場タイプ
1回目調査
(昭和51年度)
箇所数
県北部
県中部
県南部
県全域
面積(㎡)
2回目調査
(平成10~12年度)
3回目調査
(平成20~21年度)
箇所数
箇所数
面積(㎡)
アラメ場
9
1,231,800
14
191,000
ガラモ場
27
930,800
18
301,500
77
576,056
アマモ場
3
174,400
7
127,300
11
246,612
その他
50
6,470,200
30
313,950
34
232,651
北部合計
78
7,758,900
46
679,200
130
1,066,418
アラメ場
6
3,137,900
2
1,000
2
6,143
ガラモ場
6
3,274,800
0
0
0
0
アマモ場
0
0
1
8,000
1
3,186
その他
9
2,472,600
70
2,247,750
8
2,228,376
中部合計
9
3,668,700
53
2,220,100
11
2,237,705
アラメ場
1
21,500
3
5,600
10
114,639
ガラモ場
46
3,869,800
26
488,775
92
1,228,076
アマモ場
0
0
2
58,500
3
19,170
その他
69
8,996,900
104
2,816,425
153
6,002,438
南部合計
109
11,913,600
106
3,056,675
163
6,057,447
アラメ場
16
4,391,200
19
197,600
45
447,725
ガラモ場
79
8,075,400
44
790,275
169
1,804,132
アマモ場
33
面積(㎡)
326,943
3
174,400
10
193,800
15
268,968
その他
128
17,939,700
204
5,378,125
195
8,463,465
全域合計
196
23,341,200
205
5,955,975
304
9,361,570
【藻場種別面積整理結果一覧表】
注)1.表中の値は、各回調査報告書に基づきGIS入力した属性データの集計値である。
2.それぞれの藻場タイプ別の値には、混生藻場の重複分を含めている。
3.合計は、この重複分を除いた値である。
4.ただし、昭和51年度と平成10~12年度については、次の2点から重複面積を平成20~21年度と同精度では算
出できない。
・平成20~21年度のように混生藻場としての範囲が把握されていない。
・藻場区画の範囲はおおよその範囲であり、各藻場区画の面積と一致していない。
このことから、重複している藻場をGIS上で目視判定し、面積の小さいほうの面積を重複分として差し引いた
- 53 -
(1)県北部における藻場の変遷状況
-アラメ場-
箇 所 数 は 、 経 年 的 に 増 加 し た が 、 面 積 は 、 昭 和 51年 度 調 査 か ら 平 成 10~ 12年
度 調 査 ま で の 間 に 減 少 し 、 そ の 後 、 平 成 20~ 21年 度 調 査 ま で の 間 に や や 増 加 し
た。
-ガラモ場-
箇 所 数 は 、 平 成 20~ 21年 度 調 査 で は 大 幅 に 増 加 し た 。 面 積 は 、 昭 和 51年 度 調
査 か ら 平 成 10~ 12年 度 調 査 ま で の 間 に 減 少 し 、 そ の 後 、 平 成 20~ 21年 度 調 査 ま
での間に増加傾向に転じた。
-アマモ場-
箇 所 数 は 、 経 年 的 に 徐 々 に 増 加 し た 。 面 積 は 、 昭 和 51年 度 調 査 か ら 平 成 10~
12年 度 調 査 ま で の 間 に や や 減 少 し た が 、 そ の 後 、 平 成 20~ 21年 度 調 査 ま で の 間
に 増 加 し 、 昭 和 51年 度 調 査 を 上 回 っ た 。
-その他の藻場-
箇 所 数 は 、 昭 和 51年 度 調 査 か ら 平 成 10~ 12年 度 調 査 ま で の 間 に や や 減 少 し た 。
面 積 は 、 昭 和 51年 度 調 査 か ら 平 成 10~ 12年 度 調 査 ま で の 間 に 大 幅 に 減 少 し た 後
に 、 平 成 20~ 21年 度 調 査 で は わ ず か に 減 少 し た 。
200
120
【県北部】
その他
アマモ場
ガラモ場
アラメ場
800
藻場面積(万㎡)
藻場箇所数(箇所)
160
1,000
【県北部】
その他
アマモ場
ガラモ場
アラメ場
80
40
600
400
200
0
0
昭和51年度
平成10~12年度
平成20~21年度
【県北部における藻場箇所数の変遷】
昭和51年度
平成10~12年度
平成20~21年度
【県北部における藻場面積の変遷】
(2)県中部における藻場の変遷状況
-アラメ場-
箇 所 数 は 、 昭 和 51年 度 調 査 か ら 平 成 10~ 12年 度 調 査 ま で の 間 に 大 き く 減 少 し
た 。 面 積 は 、 昭 和 51年 度 調 査 か ら 平 成 10~ 12年 度 調 査 ま で の 間 に 1 万 ㎡ 以 下 に
まで大幅に減少し、その後も低い水準のままであった。
-ガラモ場-
昭 和 51年 度 調 査 で は 確 認 さ れ た が 、 平 成 10~ 12年 度 以 降 の 調 査 で は 確 認 さ れ
なかった。
- 54 -
-アマモ場-
昭 和 51年 度 調 査 で は 確 認 さ れ な か っ た が 、 平 成 10~ 12年 度 調 査 及 び 平 成 20~
21年 度 調 査 で は い ず れ も 1 箇 所 ( 都 農 港 内 ) で 確 認 さ れ 、 面 積 は 1 万 ㎡ 以 下 で
あった。
-その他の藻場-
箇 所 数 は 、 昭 和 51年 度 調 査 か ら 平 成 10~ 12年 度 調 査 ま で の 間 に 増 大 し た が 、
面 積 は 昭 和 51年 度 調 査 か ら 平 成 20~ 21年 度 調 査 ま で の 間 に 大 き な 変 化 は 認 め ら
なかった。
100
60
【県中部】
その他
アマモ場
ガラモ場
アラメ場
800
藻場面積(万㎡)
藻場箇所数 (箇所)
80
1,000
【県中部】
その他
アマモ場
ガラモ場
アラメ場
40
20
600
400
200
0
0
昭和51年度
平成10~12年度
平成20~21年度
【県中部における藻場箇所数の変遷】
昭和51年度
平成10~12年度
平成20~21年度
【県中部における藻場面積の変遷】
(3)県南部における藻場の変遷状況
-アラメ場-
箇 所 数 は 、 経 年 的 に 増 加 し 、 面 積 は 、 平 成 20~ 21年 度 調 査 ま で に 11万 ㎡ 程 度
増加した。
-ガラモ場-
箇 所 数 は 、 昭 和 51年 度 調 査 か ら 平 成 10~ 12年 度 調 査 ま で の 間 に 減 少 し た が 、
そ の 後 、 平 成 20~ 21年 度 調 査 ま で の 間 に 増 加 し 、 昭 和 51年 度 調 査 を 上 回 っ た 。
面 積 は 、 昭 和 51年 度 調 査 か ら 平 成 10~ 12年 度 調 査 ま で の 間 に 大 幅 に 減 少 し た が 、
そ の 後 、 平 成 20~ 21年 度 調 査 ま で の 間 に 増 加 傾 向 に 転 じ た 。
-アマモ場-
昭 和 51年 度 調 査 で は 確 認 さ れ な か っ た が 、 平 成 10~ 12年 度 以 降 の 調 査 で は 南
郷 町 外 浦 地 先 や 串 間 市 本 城 地 先 で 確 認 さ れ 、 面 積 は 平 成 10~ 12年 度 調 査 が 6 万
㎡ 程 度 、 平 成 20~ 21年 度 調 査 が 2 万 ㎡ 程 度 で あ っ た 。
-その他の藻場-
箇 所 数 は 、 経 年 的 に 増 加 し た が 、 面 積 は 、 昭 和 51年 度 調 査 か ら 平 成 10~ 12年
度 調 査 ま で の 間 に 大 幅 に 減 少 し 、 そ の 後 、 平 成 20~ 21年 度 調 査 で は 増 加 傾 向 に
転じた。
- 55 -
300
200
1,000
150
100
800
600
400
50
200
0
0
昭和51年度
平成10~12年度
平成20~21年度
昭和51年度
【県南部における藻場箇所数の変遷】
2
【県南部】
その他
アマモ場
ガラモ場
アラメ場
1,200
藻場面積(万㎡)
藻場箇所数(箇所)
250
1,400
【県南部】
その他
アマモ場
ガラモ場
アラメ場
平成10~12年度
平成20~21年度
【県南部における藻場面積の変遷】
県全域における藻場の変遷状況
-アラメ場-
箇 所 数 は 、 経 年 的 に 増 加 し た が 、 面 積 は 、 昭 和 51年 度 調 査 か ら 平 成 10~ 12年 度
調 査 ま で の 間 に 大 幅 に 減 少 し 、 そ の 後 、 平 成 20~ 21年 度 調 査 ま で の 間 に や や 増 加
した。
-ガラモ場-
箇 所 数 は 、 昭 和 51年 度 調 査 か ら 平 成 10~ 12年 度 調 査 の 間 に 減 少 し た が 、 そ の 後 、
平 成 20~ 21年 度 調 査 ま で の 間 に 増 加 し 、 昭 和 51年 度 調 査 を 上 回 っ た 。 面 積 は 、 昭
和 51年 度 調 査 か ら 平 成 10~ 12年 度 調 査 ま で の 間 に 大 幅 に 減 少 し た が 、 そ の 後 、 平
成 20~ 21年 度 調 査 で は 増 加 傾 向 に 転 じ た 。
-アマモ場-
箇所数・面積ともに、経年的に増加傾向であった。
-その他の藻場-
箇 所 数 は 、 昭 和 51年 度 調 査 か ら 平 成 10~ 12年 度 調 査 ま で の 間 に 増 加 し た 。 面 積
は 、 昭 和 51年 度 調 査 か ら 平 成 10~ 12年 度 調 査 ま で の 間 に 大 幅 に 減 少 し た が 、 そ の
後 、 平 成 20~ 21年 度 調 査 で は 増 加 傾 向 に 転 じ た 。
500
300
【県全域】
その他
アマモ場
ガラモ場
アラメ場
3,000
2,500
藻 場 面 積 (万 ㎡ )
藻 場 箇 所 数 (箇 所 )
400
3,500
【県全域】
その他
アマモ場
ガラモ場
アラメ場
200
2,000
1,500
1,000
100
500
0
0
昭和51年度
平成10~12年度
昭和51年度
平成20~21年度
【県全域における藻場箇所数の変遷】
平成10~12年度
平成20~21年度
【県全域における藻場面積の変遷】
- 56 -
昭 和 51年 度 以 降 の 藻 場 の 変 遷 を 総 合 的 に み る と 、 平 成 10~ 12年 度 調 査 ま で の 間
に大きく衰退し、その後は低い水準のまま維持されている。藻場箇所数について
は、海域や藻場区分によって、近年増加が確認されたが、これは藻場が衰退して
いく過程で、かつてひとつの大きな藻場であったものがいくつかの小規模な藻場
に分断されたか、調査精度の向上により、これまで存在が知られていなかった藻
場を認識できるようになったことによるもので、藻場の回復を示すものではない。
藻場面積についても、県全域でみた場合、アマモ場以外の区分では、近年の状況
は 昭 和 51年 度 調 査 と 比 較 し て 低 水 準 で あ る 。
特 に 、 県 中 部 の ア ラ メ 場 及 び 県 南 部 の ガ ラ モ 場 に つ い て は 、 昭 和 51年 度 調 査 か
ら 平 成 10~ 12年 度 調 査 ま で の 間 に 劇 的 に 衰 退 し 、 そ の ま ま 低 水 準 で 推 移 し て い る 。
3
藻場の衰退と地球温暖化との関係
藻場の衰退の直接的な要因については、県中部のアラメ場の衰退の過程で、ブ
ダイ等の植食性魚類の過剰な採食が影響したことが指摘されているほかは、よく
解っていない。
全国的にも、藻場の衰退要因について明らかにした事例は乏しく、沿岸海域に
おける濁度の増加や着生初期の幼体への漂砂の影響、貧栄養化、ウニ類や魚類等
の植食性動物の過剰な採食の影響等が指摘されているにとどまっている例がほと
んどである。
一方、藻場の回復を制限している主要な要因の一つとして、本県沿岸において
は、植食性動物の食圧が海藻の生産量を上回っているためであると考えられる。
例えば、かごや漁網で植食性動物の進入を防いだ事例や魚類の進入が少ない場所
において高密度で生息するウニ類を駆除し、ウニ類の密度を低減した事例では、
クロメやホンダワラ類が成育し、藻場が再生することが実験的に明らかにされて
いることは、海藻の成育に必要な光や栄養塩類、水温などの条件が本県沿岸にも
整っていることの証拠であり、藻場の衰退に植食性動物の採食が大きく影響して
いることを示すものである。
藻場の衰退を地球温暖化との関係でみると、変温動物である植食性動物の採食
行動には、水温が強く影響しており、多くの海藻類の成長時期である冬季の水温
の変動は、植食性動物の採食活性に影響を与えるという点で、藻場の変遷に影響
を与えるものである。宮崎県沿岸の水温は、長期的にみた場合、昇温傾向が認め
られ、その傾向は、特に冬季において顕著である。すなわち、近年では、海藻の
成育に重要な冬季に、十分な水温低下が起こらず、植食性動物の採食活性も比較
的高いままで維持されることにより、海藻の生産量を上回る採食が引き起こされ
るため、衰退した藻場の回復が制限されていると考えられる。従って、今後、よ
り温暖化が進行する場合、藻場の回復は一層難しくなるものと考えられる。
- 57 -
Ⅳ
宮崎県農水産業温暖化研究センター運営体制
区
分
宮崎県農水産業温暖化研究センター長
運営会議
議
長
副議長
職
名
総合農業試験場長
総合農業試験場副場長(技術担当)
畜産試験場副場長(技術担当)
水産試験場副場長(技術担当)
会議員
農政企画課
課長補佐(総括担当)
農政企画課
課長補佐(技術担当)
地域農業推進課
課長補佐(技術担当)
営農支援課
課長補佐(技術担当)
農産園芸課
課長補佐(農産・特産担当)
農産園芸課
課長補佐(園芸担当)
畜産課
課長補佐(技術担当)
畜産課家畜防疫対策室
室長補佐
農村計画課
課長補佐(計画・技術管理担当)
農村整備課
課長補佐(技術担当)
水産政策課
課長補佐(技術担当)
漁村振興課
課長補佐(技術担当)
総合農業試験場各部長及び支場長
畜産試験場各部長及び支場長
水産試験場各部長
環境森林課
課長補佐(地球温暖化対策担当)
林業技術センター特用林産部長
- 58 -
プロジェクト班名
推進チーム名
調査分析
プロジェクト
影響調査
班
員
(農業部門)
リーダー:営農支援課課長補佐(技術)
営農支援課職員(広域担当)
農政企画課職員
農産園芸課職員
畜産課職員
総合農業試験場職員
畜産試験場職員
西臼杵支庁及び各農林振興局の担当職員
病害虫防除・肥料検査センター担当職員
各家畜保健衛生所担当職員
(水産部門)
リーダー 水産政策課課長補佐(技術)
水産政策課職員
水産試験場職員
情報収集
技術開発
プロジェクト
リーダー:総合農業試験場企画情報室長
総合農業試験場企画情報室職員
(畜産試験場及び水産試験場の研究企画主幹
を含む。以下この表において同じ。)
研 究 課 題 の 公 リーダー:農政企画課課長補佐
募
総合農業試験場企画情報室長
農政企画課職員
地域農業推進課職員
営農支援課職員
農産園芸課職員
畜産課職員
水産政策課職員
総合農業試験場企画情報室職員
技 術 の 開 発 ・ リーダー:総合農業試験場企画情報室長
実証
総合農業試験場企画情報室職員
畜産試験場職員
水産試験場職員
農政企画課職員
地域農業推進課職員
営農支援課職員
農産園芸課職員
畜産課職員
水産政策課職員
- 59 -
アドバイザー
所属等
役
職
氏
名
学識経験者
元宮崎公立大学長
お茶の水大学名誉教授
内嶋
善兵衛
(財)日本気象協会
宮崎営業所
マネージャー
岩倉
尚哉
(財)宮崎県産業支援財団
科学技術
コーディネイター
高橋
保雄
宮崎大学
副学長
産学・地域連携センタ
ー長
堀井
洋一郎
(株)みやざきTLO
代表取締役社長
永田
雅輝
JSTイノベーション
サテライト宮崎
技術参事
西垣
好和
- 60 -
【県シンボルキャラクター「みやざき犬」】
宮崎県農水産業地球温暖化対応方針
発行
宮崎県農水産業温暖化研究センター
宮崎県農政水産部農政企画課
〒880-8501
宮崎市橘通東2丁目10番1号
TEL
0985-26-7123
FAX
0985-26-7307
宮崎県総合農業試験場
〒880-0212
宮崎市佐土原町下那珂5805
TEL
0985-73-2121
FAX
0985-73-2127
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