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南アフリカ、雄大な風景を求めて - Bradley Brouwer
南アフリカの新しいデスティネーション― 世界三大渓谷のひとつブライデ・リバー・キャニオンを目指す旅 文・写真:松本光子 南アフリカ、雄大な風景を求めて 2010年サッカーワールドカップ 開催を目指す南アフリカは、イ ンフラとセキュリティー整備、航 空施策、認知度向上のための情 報提供などに全力をあげ、好調 な観光産業のさらなる拡大に向 けて計画を遂行中だ。 日本マーケットに向けては、2006 年に3万1989人だった日本人訪 問者数を2007年は3万5000人に 目標を定め、新しいデスティネ ーション、ムプマランガ州を提案 している。世界3番目の大渓谷 ブライデ・リバー・キャニオンを 抱えるムプラマンガ州の大自然 を巡る旅を現地レポートする。 “陽が昇る地” ムプマランガ州の魅力 ムプラマンガ州は国の北東部に位置し、 東側はモザンビークとスワジランドと接 している。北海道より小さい 7万9490平 方キロの面積で、全体に山地と標高差の ある草原で構成され、息を飲む眺望の自 然景観や、森林河川でのアクティビティ ーが人気だ。国内はもとより欧州ではア ドベンチャー、教育プログラム、エコツ ーリズムのデスティネーションとして人気 がある。 便利な空の便と玄関口 ヨハネスブルグ国際空港から約45分で、 ムプラマンガ州都ネルスプロイトにある クルーガー・ムプマランガ国際空港に到着 した。今後大型機の離発着ができるよう にと、広く長く造られたランウェイが伸 びる。飛行機から降りると、周りに視野 を遮るものが何もない開放感に満たされ たアフリカらしい建築様式のターミナル・ ビルに気持ちも高揚する。この路線は27 席から120席のフライトが毎日10便前後 飛んでいてアクセスはいい。 2008年にはヴィクトリアの滝のゲート ウェイ、リビングストーンからの直行便 や、英国やドイツからの定期便の就航予 定がある。また2010年サッカーワールド カップ開催の際は、ネルスプロイトのス タジアムも利用されることになっている こともあり、今後の利用客増加を見越し て、もうひとつターミナル・ビルを建設す る予定もある。 パノラマ・ルートを行く ムプラマンガ州は多様性に富み、観光 地域が7つに分けられている。クルーガー 国立公園のあるワイルド・フロンティア、 女性の首に真鍮の環を巻き、ビーズのア クセサリーを付けるンデベレ族の文化に 触れることができるカルチュラル・ハート ランド、南アフリカ最大の淡水湖がある グラス&ウエットランドなど。今回訪れた のは、ダイナミックな自然景観を持つパ ノラマ・ルート。空港から北へ1時間のと ころにあるグラス・コップという町の周辺 には、特色ある5つのアイコンが点在し、 旅行者が必ず訪れる観光地になっている。 ブライデ・リバー・キャニオン のエリアに住んでいた酋長マリピ・マシレ の3人の妻の名前が付けられているとい う。展望台に立つと、目の前にこんもり とした緑に覆われたスリー・ロンダベル ス、遥か彼方になだらかな山並み、遥か 800m下方に青い水を湛えた湖が見え、絶 景だ。 ブルクス・ラック・ポットホール Bourke's Luck Potholes 世界でも極めて珍しいシリンダーのよ うに深みのある穴の形に侵食された岩を、 渓谷の間に流れる川にかかる橋の上から 見ることができる。幾つもの丸い穴が川 底に見える様は、大変ユニーク。何千年 もの時間をかけて創り出された自然の造 詣に神秘性さえ感じる。ちなみに名称は、 トーマス・ブルクという人物が穴の底に沈 む金を見つけたことからその名が付けら れている。 スリー・ロンダベルス ゴッド・ウインドウ God's Window 幾つかあるブライデ・リバー・キャニオ ンのビューポイントの中でも、ここは雄 大な光景が見られることで特に有名。断 崖が緩やかなカーブを描きながら数百メ ートル落ち込み、ローフェルドと呼ばれ る緑に覆われた低草原地帯が遥か遠くま で延々と続く様子を、標高1829mの地点 から見渡せる。天気がいい日は隣国・モザ ンビークまで見えるという。そのまま略 すと「神様の窓」という意味だが、あまり に美しく神々しい光景のため神はここか ら世界を創造したとされ、いつしかその 名が付いたという。 Blyde River Canyon アメリカのグランド・キャニオン、ナミ ビアのフィッシュ・リバー・キャニオンに 次いで世界で3 番目に大きい規模の渓谷。 全長27kmのこの渓谷がユニークなのは、 年間降水量が多いため表面が緑に覆われ ているという点だ。グランド・キャニオン は乾いた暗赤色が基調だが、ここは豊か な深緑色の印象が残り「世界最大の緑の 渓谷」というタイトルが付いたりする。ス リー・ロンダベルスと呼ばれる円形テント が3つ並んだような岩がとくに有名で、こ 金採掘の歴史を知る町 ピルグリムズ・レスト Pilgrim's Rest プリグリムズ・レストは、1873年南アフ リカで最初に金の鉱山が見つかった所で、 採掘者が集まるゴールドラッシュが生み 出した町。気候が良いこともあり、わず か1年半の間に 1 万人が暮らすよう になり盛隆を極め た。 世界最大の 3kgの金塊もここ で採 掘 されてい る。1971年に鉱山が閉鎖されてからは一 時ゴーストタウンのようになってしまった が、「当時のままの建物が残る歴史的な 街」として保存され、観光素材として復 活。今やムプラマンガ州でもっとも人気 のある観光地のひとつとして数えられる。 見どころは山と谷に挟まれた田舎道の 周辺に広がる、当時のままの町並み。鉱 山のオーナーたちが住むアップタウンと 労働者が住むダウンタウンの2つのエリア に分かれていて、アップタウンにはヴィク トリア調のロイヤルホテル、レストラン、 博物館などがある。ジャカランダの並木 道もあり、紫の花をつける10月に訪れる といい。ダウンタウンには、当時雑貨屋 だった味のあるアンティークの店があり、 1杯10ランド(約170円)で珍しいジンジ ャービールが飲める。 シャンガーナ・カルチュラル・ビレッジ Shangaana Cultural Village 南アフリカに来たならば一度は訪ねた いのが、伝統的な暮らし方を今も続ける その土地に長く住む人々の村。ここはい わゆる観光目的に作られた所ではなく、 本当にそこで家族単位で暮らし、畑を耕 し、工芸品を作りながら生活している村 だ。観光客はあくまでも、村のチーフの 許可を得てから訪問するという形をとる。 シャンガーナ族はズールー族から枝分 かれした部族で、今年77歳になるチー フ・ムタバジータ氏は、3人の妻と36人の 子供を持つ大家族の大黒柱だ。本人が狩 ったヒョウの毛皮を着て椅子に座る様は、 偉大なチーフそのもの。昔から今も変わ らず何もかも手作りの物に囲まれた生活 は、現代人には大変興味深い。サンゴー マという祈祷師が今も活躍し、ハーブや 木の根などから作られた薬を調合し、動 物の骨を投げて運勢を占う様子も見るこ とができる。南アフリカの少数民族の文 化に触れられる、大変貴重な経験だ。 シャンガーナ族のチーフ セレブが愛したコロニアル・スタイルのロッジと 乗馬トレイルが楽しめるロッジ 山を切り開いて造った果樹園やコーヒー農園の中にひっそりと、 されど広大な敷地を持つロッジが、フォーエバー・リゾート・ブルー マウンテン・ロッジ。まるで個人の大邸宅に招かれたような感覚で 滞在できる。アフリカらしく毛皮の敷かれたリビングルーム、ビリ ヤード台とバーカウンター、テラスなど、どれもシックな調度品に 囲まれた優雅な空間だ。マンデラ元大統領をはじめ欧州の皇太子な どセレブに愛されており、ラグジュアリー・マーケットに最適だ。 一方、若者やファミリー層、MICEに向くのがフォーエバー・リ ゾート・ブライデ・キャニオン。国立公園内の広い敷地内にコテージ が点在し、自然を楽しむ長期滞在 者向けに造られている。敷地内に 設けられた乗馬コースでは、草原 の中の一本道をゆっくりと登って いくと、ブライデ・リバー・キャニ オンのビューポイントに出る。 ブライデ・リバー・キャニオン 南アフリカ観光局、東京と大阪でワークショップを開催 業界専用サイト開設、情報発信と関係構築に重点 南アフリカ観光局(SAT)主催で6月15日、都内ホテルにて「南部アフリカワークシ ョップ」が開催された。14日の大阪開催に続くもので、南アフリカ観光局をはじめ、 地方観光局や現地サプライヤーのほか、ジンバブエ観光局も加わり、南部アフリカを 一帯としたプロモーションの展開を行った。南アフリカでは2010年のサッカーワール ドカップ開催を控え、現地のインフラ整備が着々と進められており、観光局としても 日本からの観光客誘致を強力に推し進めるとともに、旅行会社へ向けた情報発信を強 化していく方針だ。 その一環として、SATはホームページ上に業界専用サイトの「トレード・エキストラ ネット」を開設、現在は英語表示のみだが、数ヶ月以内には日本語でもサービス提供 を開始する計画だ。同サービスでは観光素材の紹介をはじめ、最新情報やイベントカ レンダー、イメージ画像の提供など幅広い情報を取り揃えるほか、南アフリカ観光エ キスパートプログラムの“FUNDI”育成コースなども用意している。サービス利用には メンバー登録が必要。 同観光局によると、2006年の南アフリカへの年間日本人訪問者数は、05年比17.2% 増となる3万1989人を記録。ここ数年は右肩上がりで成長を続 けており、今年も1月は前年同月比9.4%増の1943人と順調な伸 び。2007年累計では約9%増の日本人3万5000人を目指す方針 だ。また、2006年の総訪問者数は前年比13.9%増の839万5833 人で、同国政府は2010年までに年間訪問者数1000万人を目標 に掲げている。 ワークショップ開催に合わせて来日したSATアジア・豪州地域担当のゾレルワ・ムコ ゾ統括本部長は、 「この結果に甘んずることなく、日本の旅行会社との協力関係をより 一層密にし、目標達成に向かって努力していく」との考えを強調。さらに、 「近距離圏 ではないデスティネーションは、持続的な情報提供が不可欠」との認識を示し、今後も 情報発信を重視していくとした。 また、ブラッドリー・ブラウワーSAT日本地区代表は、 「南アフリカの魅力をより深 く知っていただくために、研修旅行を積極的に実施していく」として、旅行会社との関 係構築に活動の重点を置くことを強調した。