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16~17 年度 改訂経済見通し - 三菱UFJモルガン・スタンレー証券

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16~17 年度 改訂経済見通し - 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
景気循環研究所 経済見通し
16~17 年度 改訂経済見通し(16 年 8 月詳細版)
2016 年 8 月 22 日
16 年度の実質経済成長率
見通しは 1.1%
三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券景気循環研究所は、16 年度の日本
の実質 GDP 成長率見通しを、前回 16 年 6 月 8 日時点の 1.2%から 1.1%へ
と下方修正した(表 1)
。政府が 8 月 2 日に閣議決定した総事業規模 28 兆
円超(複数年度)の経済対策を反映して、16 年度中に見込まれる補正予
算の規模を上方修正した半面、①4-6 月期の実質 GDP の下振れ、②円高に
よる実質 GDP 成長率の下押し、③消費税率引上げの再延期に伴う駆け込み
需要の見直し、などの GDP 下振れ要因を織り込んだ。
各種経済対策が景気回復
を後押し
新興国景気の減速や円高など、日本経済を取り巻く環境は厳しいが、各
種経済政策が奏効して、国内景気は緩やかな回復基調を維持している。今
後は、日銀の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を背景とした住宅・
不動産投資の活発化や、大規模経済対策の実施に伴う公共投資および個人
消費の底上げが見込まれる。政府が 6 月に決定した消費税増税の再延期
も、家計負担の軽減のみならず、マインド面から景気回復およびデフレ脱
却を後押ししよう。なお、内需拡大に伴う税収の上振れが見込まれること
9 月に追加緩和を実施へ
もあり、消費税増税の再延期後も政府の財政健全化計画は順調に進捗する
と予想される。
もっとも、物価は引き続き低迷しており、物価目標 2%までの道のりは
主査 嶋中 雄二
景気循環研究所長
険しい。当研究所は、政府が目指す 2020 年までの名目 GDP600 兆円を実現
総括 鹿野 達史
景気循環研究所副所長
80~100 兆円に引き上げる等の追加金融緩和に踏み切ると想定している。
するためにも、日本銀行が今年 9 月に、マネタリーベース年間増額目標を
シニアエコノミスト
表1. 国内総生産(GDP)の予測
(%、%ポイント)
担当(日本経済)
宮嵜 浩
シニアエコノミスト
03-6627-5132
miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp
担当(海外経済)
福田 圭亮
シニアエコノミスト
03-6627-5133
fukuda-keisuke@sc.mufg.jp
景気循環研究所
2016年
2015年度
(実績)
実質GDP
個人消費
住宅投資
設備投資
民間在庫増
政府消費
公共投資
純輸出
輸出
輸入
名目GDP
2016年度
(予測)
2017年度
(予測)
0.8
1.1
1.7
-0.2
2.4
2.1
(0.3)
1.6
-2.7
(0.1)
0.4
0.0
2.2
0.7
8.6
0.9
(0.1)
1.7
3.9
(-0.3)
0.1
1.5
2.0
1.1
0.9
6.9
(-0.2)
0.8
8.2
(-0.2)
2.4
4.1
2.6
2017年
4-6月期
7-9月期
10-12月期
1-3月期
4-6月期
(実績)
(予測)
(予測)
(予測)
(予測)
0.0
0.4
0.6
0.7
0.3
0.2
1.6
2.2
2.8
1.4
0.2
5.0
-0.4
(0.0)
0.2
2.3
(-0.3)
-1.5
-0.1
0.2
0.2
2.3
1.0
(0.0)
0.2
2.6
(-0.1)
1.1
1.5
0.5
0.3
2.4
-0.3
(0.4)
0.3
0.5
(-0.2)
0.6
1.6
0.9
0.2
2.0
1.8
(0.1)
0.3
3.1
(0.0)
1.3
1.3
1.2
0.3
0.1
2.1
(-0.3)
0.2
2.9
(-0.0)
0.6
1.0
0.4
東京都千代田区大手町 1-9-2
GDPデフレーター
1.4
0.8
0.9
0.8
0.7
0.9
1.1
1.0
大手町フィナンシャルシティ
コアCPI
0.0
0.0
1.4
-0.4
-0.3
0.2
0.5
0.9
グランキューブ
(注1)年度は前年度比、四半期は前期比(実質GDPについては上段が前期比、下段が前期比年率)。
(注2)カッコ内の数値は前期比(前年度比)寄与度。GDPデフレーターおよび内需デフレーターは前年比。
(資料)内閣府「四半期別GDP速報」などをもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
1
2016 年 8 月 22 日
各種政策効果が国内
中国など新興国景気の減速や、イギリスの EU 離脱決定を背景にした円高・
景気を下支え
株安の進行など、日本経済を取り巻く環境は依然として厳しい。しかしなが
ら、政府・日銀による各種の経済対策もあり、国内景気は足踏みを見せつつ
も、全体としては緩やかな回復基調を維持している。内閣府が 8 月 15 日に発
表した 4-6 月期の GDP1 次速報によると、同期の実質 GDP 成長率は前期比年率
0.2%となり、小幅ながら 2 四半期連続のプラス成長を維持した。4-6 月期は
輸出が前期比 1.5%減、設備投資も同 0.4%減と弱含む中、住宅投資が同 5.0%
増加し、公共投資も同 2.3%増加した。財政・金融政策による公共投資およ
び住宅投資の押し上げ効果によって、プラス成長が維持された格好である。
住宅・不動産投資が
住宅投資に関しては、日銀のマイナス金利政策による住宅ローン金利の低
好調
下が奏効した可能性が高い。日銀「主要銀行貸出動向アンケート調査」によ
ると、住宅ローンの資金需要判断 D.I.は直近 7 月まで 2 期連続で上昇してい
る(当研究所季節調整値、図 1)。また、マイナス金利導入後、不動産投信
(J-REIT)の市況は、株式とは対照的に好調が続いており(図 2)、オフィ
スビル需給が改善基調を強めていることからみて(図 3)、マイナス金利政
策は不動産投資全般を刺激した可能性が高い。実際、金融機関による設備資
金の新規貸出額は 4-6 月期にかけて急増しており(図 4)、マイナス金利政
策が企業の設備資金需要に少なからず影響を及ぼした可能性を示唆している。
その一方で、マイナス金利政策による利ザヤの縮小が金融機関の株価を引き
下げたことや、14 年 10 月の追加金融緩和(「黒田バズーカⅡ」)以降では
量的緩和の追加がないことが、最近までの円高・株安の一因になっていよう。
図 2. マイナス金利決定後、J-REIT が堅調に推移
図 1. 住宅ローンの資金需要判断が改善
増加
30
(%ポイント)
(年率・兆円)
資金需要判断D.I.
住宅ローン(左目盛)
20
マイナス金利
10
(1月28日終値=100)
16
120
15
115
14
110
0
13
-10
12
マイナス金利決定
109.0
不動産投信(東証REIT指数)
105
100
GDP住宅投資(右目盛)
-20
11
10
減少 -30
10
11
12
13
14
15
16
95
96.7
90
日本株(日経平均株価)
85
2016年1月
(注)資金需要判断D.I.は当研究所季節調整値。GDP住宅投資は実質ベース。 (年、四半期)
(資料)日本銀行「主要銀行貸出動向アンケート調査」、内閣府「四半期別
GDP速報」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
2016年2月
図 3. 設備投資の先行指標
-20
(%)
-10
0
10
20
30
40
50
60
70
80
2016年3月
2016年4月
2016年5月
2016年6月
2016年7月
2016年8月
(資料)Bloombergをもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
(日次)
図 4. 設備資金の新規貸出額
(10年=100)
新築オフィスビル空室率(左逆目盛)
200
180
160
140
120
機械受注(右目盛)
100
80
180
170
160
150
140
130
120
110
100
90
80
(10年=100)
設備資金新規貸出額
GDP設備投資(名目値)
92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(年、四半期)
(注1)シャドー部は景気後退期(内閣府調べ)。
(注2)空室率は東京ビジネス地区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)、直近は16年7月。
機械受注は船舶・電力を除く民需、直近は16年4-6月期。
(資料)内閣府「機械受注統計」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
(注)設備資金新規貸出額は国内銀行銀行勘定(製造業+非製造業)。当研究所季節調整値。
(資料)内閣府「四半期別GDP速報」、日本銀行「貸出先別貸出金」をもとに三菱UFJ
モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
(年、四半期)
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様
ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
2
2016 年 8 月 22 日
物価は引き続き低迷
金融政策が実体景気の回復に貢献しているにもかかわらず、物価の基調は
引き続き弱い。足元の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)はの前年比上
昇率は依然水面下にあり、日銀が物価の基調判断で重視する「生鮮食品・エ
ネルギーを除く総合」の上昇ペースも一段と鈍化している(表 2)。
名目 GDP600 兆円の
もっとも、日銀によるマネタリーベースの拡大が、1 年半程度のタイムラ
実現に向け追加緩和
グを伴って名目 GDP を押し上げるという量的金融緩和の枠組みが否定された
を実施へ
わけではない。少なくとも 15 年度の半ば頃まで、日銀は名目 3%成長と整合
的な資金供給を続けてきた(図 5)。今後は、2020 年までに GDP600 兆円を実
現するべく、日銀はマネタリーベースを年率で 90 兆円を上回る水準まで拡大
させる必要がある(図 6)。当研究所は、日銀が 9 月 21 日の決定会合でマネ
タリーベース増加目標を年率 80~100 兆円に引き上げると同時に、政策効果
等についての「総括的な検証」を踏まえて、買入対象資産を社債や地方債、
政府関係機関債へと拡大すると予想している(表 3)。
表 2. CPI 新旧基準の前年同月比(%)の比較
生鮮食品を除く総合
(コアCPI)
①15年基準
②10年基準
生鮮食品・エネルギーを除く総合
(日銀版コアコアCPI)
差(①-②)
①15年基準
②10年基準
差(①-②)
名目成長率が徐々に高まり、15年1-3月
期に前年比3%となり、その後も3%成
長を続ける経路
510
16年1月
▲ 0.1
0.0
-0.1
0.9
1.1
-0.2
2月
0.0
0.0
0.0
1.0
1.1
-0.1
3月
▲ 0.3
▲ 0.3
0.0
0.9
1.1
-0.2
4月
▲ 0.4
▲ 0.3
-0.1
0.8
0.9
-0.1
5月
▲ 0.4
▲ 0.4
0.0
0.7
0.8
-0.1
470
▲ 0.4
▲ 0.5
0.1
0.7
0.8
-0.1
460
6月
図 5. 名目 GDP と金融政策
(兆円)
520
500
ETF6兆円
名目GDP
490
480
黒田バズーカⅡ
QQE(黒田バズーカ )
12
(資料)総務省「消費者物価指数 2015年基準による遡及結果について」、日本銀行「消費者物価指数の基準改定が総合
(除く生鮮食品・エネルギー)に与える影響」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
マイナス 金利
13
14
15
16
(年、四半期)
(注)名目GDPの16年7-9月期は当研究所予測。
(資料)内閣府資料をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
表 3. 日銀の買入対象となりうる資産
図 6. マネタリーベース(平残)の推移
残高
(兆円)
1000
20年度下期 名目GDP600兆円 達成には、
19年度上期までにマネタリーベースを
676兆円に拡大させることが必要に
(年率92兆円増、20.3%増)
500
日銀保有分
(兆円)
19年度上期
676兆円
15年度下期
354兆円
100
(%)
長期国債
955.0
335.0
35.1
1.5兆円
5.0兆円
社 債
72.1
3.1
4.4
2.0兆円
地方債
76.0
- 社債並みで -
公募地方債
58.9
-
政府関係機関債
78.4
-社債並みで -
財投機関債
( 年度半 期)
(兆円)
【 参考】
追 加緩和 10兆 円
の ケース ↓
34.6
-
3.5兆円
3.3兆円
3.6兆円
3.4兆円
4.0兆円
2.0兆円
2.0兆円
1.0兆円
-
50
2006
2008
2010
2012
2014
2016
2018
2020
(注)名目 GDP(トレンド除去後)のマネタリーベース(同、3 半期前)の変動に対する弾性値(0.09、
92 年度上期~15 年度上期)をもとに推計
(資料)日本銀行、内閣府資料をもとに三菱 UFJ モルガンスタンレー証券景気循環研究所作成
ETF
15.8
8.8
55.6
J-REIT
3.8
0.3
8.7
0.1兆円
(注 1)残高は 16 年 3 月末時点(ETF と J-REIT は 16 年 7 月末時点)、
日銀保有分は 16 年 8 月 10 日時点。
(注 2)地方債と政府関係機関債は、時価ベース。但し、内訳の公募地方債と財投機関債は
簿価ベース。政府関係機関債には政府保証債や地方公共団体金融機構債などを含む。
(資料)日本銀行「資金循環勘定」、「営業毎旬報告」、日本証券業協会「公社債発行額・償還
額等」、投資信託協会「契約型公募投資信託の資産増減状況」をもとに
三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様
ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
3
2016 年 8 月 22 日
経済対策は 16、17 年
一方、積極的な財政政策も国内景気を下支えしている。16 年 4-6 月期の公
度の実質成長率をそ
共投資は、15 年度補正予算の執行に伴い、前期比 2.3%増加した。今後につ
れぞれ 0.3%ポイン
いては、政府が 8 月 2 日に閣議決定した総事業規模 28 兆円超(複数年度)の
ト押し上げ
経済対策が、16 年度および 17 年度の実質 GDP 成長率を押し上げよう(表 4)。
当研究所は、16 年度中に追加される国・地方の歳出を 5.4 兆円程度と見込ん
でおり、公共投資および個人消費を通じた経済対策の需要押し上げ効果は GDP
(15 年度)比で 0.9%と試算される。年度ベースでは、実質 GDP が 16 年度に
0.3%、17 年度には 0.6%押し上げられ、成長率の押し上げ効果は 16、17 年
度ともに 0.3%ポイントとなる(表 5・表 6、2016 年 8 月 10 日付け「鹿野達
史の日本経済の視点『経済対策の需要押し上げ効果 ~16、17 年度の成長率
を 0.3%ポイント押し上げ。懸念材料は円高の影響~』」を参照)。
消費増税先送りはデ
さらに、消費税率の引き上げ(8%→10%)が、17 年 4 月から 19 年 10 月
フレマインド脱却に
へと再延期されたことも、16~17 年度を通じた実質 GDP の押し上げ要因とな
貢献した可能性
る。14 年 4 月の消費税率引き上げ(5%→8%)が深刻な景気悪化を招いたこ
ともあり、今年 6 月の政府による消費再増税の先送り決定は、家計および企
業の景況感に好影響を及ぼした可能性がある。実際、日銀「生活意識に関す
るアンケート調査」をもとにした消費者の期待インフレ率(長期)は、6 月
に急上昇した(図 7)。政府の増税先送り判断は、消費者のデフレマインド
からの脱却を後押ししたとみられる。
表 4. 16 年度経済対策の規模と内訳の想定
経済対策
財源
一億総活躍の関連政策
(最低賃金の引き上げ、保育・介護の受け皿整備・
処遇改善、雇用保険料率の引下げ、育児休暇期
間の延長、給付型奨学金、年金受給資格の短縮)
16年度補正予算(国費)
4.5兆円
税収上振れ
(1.0兆円)
前年度剰余金の繰入
(0.5兆円)
公債金
(3.0兆円)
3.5兆円
21世紀型インフラ整備、中小企業対策
(リニア中央新幹線の全線開業前倒し、整備
新幹線の建設、農産物の輸出拡大に向けた
環境整備など)
復興・防災
(平成28年熊本地震の復興基金を創設)
10.7兆円
3.0兆円
17年度当初予算+特別会計
(国費)
1.7兆円
事業規模:28.1兆円
中小企業向け融資
(英EU離脱に対応したドル融資)
10.9兆円
真水
(国・地方の財政支出:7. 5 兆 円 )
(財政投融資:6.0兆円)
(民間資金:14.6兆円)
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
(%)
図 7. 短期と長期の期待インフレ率
期待インフレ率
今後5年間
13年3月
0.96
0.42
量 的・質 的
金 融緩和
11
12
13
14
4.5
地方の歳出 1.3
0.9 ※
16
(%、%ポイント)
5.4
6.2
15
表 6. 経済対策、円高の経済への影響
うち
16年度追加
国の歳出
0.32
( 年、四 半期)
(兆円)
7.5
マイナス金利
追 加緩和
同・今後1年間
10
表 5. 経済対策の国・地方の歳出
国・地方の歳出
1.02
(注)修正カールソン・パーキン法を用いて当研究所が算出。
(資料)日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」をもとに三菱UFJモルガン・
スタンレー証券景気循環研究所作成
(注)17 年度以降の事業も盛り込まれている。
(資料)各種報道資料をもとに三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券
景気循環研究所作成
歳出規模
16年6月
16年度
17年度
経済対策が実質GDP
(水準)に与える影響
0.3
0.6
経済対策が実質GDP
成長率に与える影響
0.3
0.3
円高(10%)が実質GDP
▲0.1
▲0.4
成長率に与える影響
(注)円高の影響は、16 年 10~12 月期以降、1 ドル=102 円で推移した場合の
111.97 円(日銀短観の企業の想定レート)で推移した場合との比較。
(資料)内閣府資料などをもとに三菱UFJ モルガン・スタンレー証券
景気循環研究所作成
(注)地方の 16 年度追加については、歳出規模に対する 16 年度の比率が
国と同水準として試算。
(資料)内閣府資料などをもとに三菱UFJ モルガン・スタンレー証券
景気循環研究所作成
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様
ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
4
2016 年 8 月 22 日
15 年度の財政健全化
政府の 2 度にわたる消費税率引き上げの先送りにも関わらず、財政健全化
目標は超過達成
計画は順調に進捗している。内閣府が 26 日公表した「中長期の経済財政に関
する試算」によると、15 年度の国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバ
ランス=PB)は対 GDP 比で▲3.2%となり、政府が掲げていた 15 年度の対
GDP 赤字の削減目標(10 年度▲6.6%→15 年度▲3.3%)は、小幅ながら超過
達成された。15 年度は当初、10 月に消費税率の 2%ポイント引上げが予定さ
れていたが、それに先立つ 14 年 4 月の消費税率引上げ後に景気が大幅に下振
れたことを受けて、15 年度の消費税増税が先送りされ、同時に景気対策とし
て 3.3 兆円の補正予算が編成された。増税先送りと財政支出増額にもかかわ
らず、15 年度のPB削減目標が達成された格好である(図 8)。
政府の景気重視スタ
12 年 12 月の安倍政権発足以来の財政運営を振り返ると、積極的な景気刺
ンスと設備投資サイ
激策によって、PB対象経費の増額以上の税収増を生み出すという実績を積
クルの上昇が財政健
み上げてきた(図 9)。景気回復による税収増に軸足を置いた安倍政権の財
全化を後押し
政運営戦略は、現時点まで一定の成果を上げつつある。さらに今後、民間企
業の国内投資が一段と活発化すれば、税収のベースとなる付加価値生産の誘
発効果が高まり、PB赤字の縮小ペースが早まると期待される(図 10)。幸
い、日本経済は現在、設備投資の中長期的な上昇局面にある(図 11)。民間
投資の活発化に政府の景気重視スタンスが相俟って、消費増税先送り後も財
政健全化は順調に進展すると見込まれる。
図 8. 基礎的財政収支(プライマリーバランス)の政府見通し
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
-1.5
-2.0
-2.5
-3.0
-3.5
-4.0
-4.5
図 9. 税収増がプライマリーバランスの改善に寄与
(GDP比、%)
(兆円)
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
黒字化
-1.0
-1.1
-1.7
経済再生ケース
-2.1
-3.3
-2.3
ベースラインケース
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
(GDP比、%)
18
16
0
14
-4
-12
22
20
4
3.4
-1.4
13
14
15
-2.6
16 (年度)
図 11. 現在は設備投資循環の中長期的な上昇局面
設備投資比率(右目盛)
8
-8
2.3
8
6
12
6.6
4.0
(注)国の一般会計ベース。12年8月試算と16年7月試算の比較。15年度は実績見込み、
16年度は見通し。PB=基礎的財政収支(プライマリーバランス)。
(資料)内閣府「中長期の経済財政に関する試算」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー
証券景気循環研究所作成
図 10. 財政健全化と設備投資の関係
(GDP比、%)
税収等の修正幅(12年→16年)
5.1
12
(注)国と地方の基礎的財政収支(復旧・復興対策の経費及び財源の金額を除く)。
(資料)内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(16年1月21日経済財政諮問会議提出)
PB対象経費の修正幅(12年→16年)
7.9
24
(年度)
16
14.3
11.6
(%)
(%)
周期8~12年の波(左目盛)
周期12~40年の波(左目盛)
(ジュグラー・サイクル:10.1年)
(クズネッツ・サイクル:21.8年)
40
35
4
30
2
0
25
-2
20
-4
15
-6
プライマリーバランス
(左目盛)
12
10
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16
(注)国と地方の基礎的財政収支(復旧・復興対策の経費及び財源の金額を含む)。
(年度)
(資料)内閣府「国民経済計算」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環
研究所作成
-8
-10
設備投資比率(名目設備投資/名目GDP、右目盛)
5
1945 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015(暦年)
(注)直近は16年1-3月期~4-6月期平均値。 8~12年および12~40年の波はバンドパス・フィルターにより抽出。
(資料)大川一司他『国民所得』(長期経済統計1)東洋経済新報社、1974年、内閣府『国民経済計算』をもとに
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様
ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
5
10
2016 年 8 月 22 日
表 7. 経済見通し総括表(年度)
(単位:10億円、05年=100、10年=100、 億円、%、%ポイント)
14年度
(実績)
名 目 G D P
[前年比」
実 質 G D P
[前年比]
国 内 需 要
[前年比]
民 間 需 要
[前年比]
個人消費
[前年比]
住宅投資
[前年比]
設備投資
[前年比]
在庫投資
[前年比寄与度]
公 的 需 要
[前年比]
公共投資
[前年比]
政府消費
[前年比]
純 輸 出
[前年比寄与度]
輸
出
[前年比]
輸
入
[前年比]
鉱工業生産指数
[前年比]
国内企業物価
[前年比]
消費者物価( 生鮮食品を除く)
[前年比]
GDPデフレーター
[前年比]
国内需要デフレーター
[前年比]
経常収支
[前年比]
雇用者報酬(前年比、%)
失業率(%)
新設住宅着工戸数 (万戸)
原油価格 (WTI、ト ゙ル/ハ ゙レル)
ドル・円レート
実 質 G D P成長率(暦年)
成長のゲタ(年度)
米実質成長率(暦年)
15年度
(実績)
489,560
1.5
524,784
-0.9
515,137
-1.5
390,921
-1.9
307,160
-2.9
13,143
-11.7
70,724
0.1
253
0.6
124,115
-0.3
21,779
-2.6
102,318
0.1
11,317
0.6
91,724
7.9
80,407
3.4
98.4
-0.5
105.3
2.7
103.2
2.8
93.3
2.4
97.2
2.1
87,245
264.6
1.9
3.5
88
80.5
109.9
0.0
1.0
2.4
500,535
2.2
529,179
0.8
518,914
0.7
393,858
0.8
306,525
-0.2
13,456
2.4
72,191
2.1
1,759
0.3
124,957
0.7
21,194
-2.7
103,933
1.6
11,688
0.1
92,056
0.4
80,368
0.0
97.4
-1.0
101.8
-3.2
103.2
0.0
94.6
1.4
97.1
-0.2
179,752
106.0
1.7
3.3
90
44.9
120.0
0.5
1.0
2.6
16年度
(予測)
17年度
(予測)
510,304
2.0
534,921
1.1
525,887
1.3
398,359
1.1
308,716
0.7
14,613
8.6
72,859
0.9
2,104
0.1
127,519
2.0
22,021
3.9
105,667
1.7
10,546
-0.3
92,143
0.1
81,597
1.5
98.3
0.9
99.4
-2.4
103.2
0.0
95.4
0.8
97.7
0.6
101,625
-43.5
3.0
3.1
100
43.7
104.4
0.7
0.3
1.6
523,521
2.6
543,824
1.7
536,117
1.9
405,820
1.9
312,110
1.1
14,741
0.9
77,916
6.9
1,053
-0.2
130,297
2.0
23,835
8.2
106,462
0.8
9,406
-0.2
94,316
2.4
84,909
4.1
102.2
4.0
102.0
2.6
104.6
1.4
96.3
0.9
100.1
2.5
107,500
5.8
2.2
3.0
104
48.6
107.5
1.8
0.9
2.9
(注)GDP実額は10億円、実質は05年連鎖価格、GDPデフレーターは05年基準、鉱工業生産、企
業物価、消費者物価は10年基準。経常収支実額は億円(年率)。消費者物価は生鮮食品を除く
総合。実績は内閣府資料などより作成、予測は景気循環研究所。
(資料)三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様
ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
6
2016 年 8 月 22 日
表 8. 経済見通し総括表(半期)
(単位:10億円、05年=100、10年=100、億円、%、%ポイント)
予 測
15年度上期
(実績)
名 目 G D P
[前期比]
[前年比」
実 質 G D P
[前期比]
[同年率]
[前年比]
国 内 需 要
[前期比]
[前年比]
民 間 需 要
[前期比]
[前年比]
個人消費
[前期比]
[前年比]
住宅投資
[前期比]
[前年比]
設備投資
[前期比]
[前年比]
在庫投資
[前期比寄与度]
[前年比寄与度]
公 的 需 要
[前期比]
[前年比]
公共投資
[前期比]
[前年比]
政府消費
[前期比]
[前年比]
純
輸
出
[前期比寄与度]
[前年比寄与度]
輸
出
[前期比]
[前年比]
輸
入
[前期比]
[前年比]
鉱工業生産指数
[前期比]
[前年比]
国内企業物価
[前年比]
消費者物価
[前年比]
GDPデフレーター
[前年比]
499,596
1.3
2.9
528,963
0.4
(0.8)
1.3
519,247
0.7
1.0
394,311
0.8
1.1
306,838
-0.4
0.2
13,459
3.6
1.0
71,714
1.0
2.2
2,435
0.5
0.3
124,840
0.3
0.9
21,752
-0.5
0.4
103,187
0.6
1.2
11,211
-0.3
0.3
91,853
-2.2
2.7
80,642
-0.6
1.4
97.5
-1.5
-0.6
103.2
-2.9
103.4
0.0
94.3
1.6
下期
(実績)
501,631
0.4
1.7
529,256
0.1
(0.1)
0.5
518,432
-0.2
0.5
393,054
-0.3
0.4
306,079
-0.2
-0.6
13,460
0.0
3.6
72,579
1.2
2.2
1,182
-0.2
0.3
125,255
0.3
0.7
20,844
-4.2
-4.7
104,580
1.3
1.9
12,154
0.2
-0.1
92,199
0.4
-1.8
80,044
-0.7
-1.4
96.6
-0.9
-2.4
100.5
-3.6
103.0
0.0
94.8
1.2
16年度上期
(予測)
505,943
0.9
1.3
531,915
0.5
(1.0)
0.6
522,260
0.7
0.6
395,264
0.6
0.2
307,853
0.6
0.3
14,280
6.1
6.1
72,408
-0.2
1.0
824
-0.1
-0.3
126,921
1.3
1.7
21,608
3.7
-0.7
105,379
0.8
2.1
10,970
-0.2
0.0
91,356
-0.9
-0.5
80,385
0.4
-0.3
97.0
0.4
-0.5
99.1
-3.9
103.0
-0.3
95.0
0.8
下期
(予測)
514,766
1.7
2.6
537,819
1.1
(2.2)
1.6
529,176
1.3
2.1
400,981
1.4
2.0
309,502
0.5
1.1
14,937
4.6
11.0
73,192
1.1
0.8
3,350
0.5
0.4
128,195
1.0
2.3
22,336
3.4
7.2
105,859
0.5
1.2
10,225
-0.1
-0.4
93,007
1.8
0.9
82,782
3.0
3.4
99.6
2.7
3.1
99.7
-0.8
103.4
0.3
95.7
1.0
17年度上期
(予測)
520,769
1.2
2.9
542,450
0.9
(1.7)
2.0
534,236
1.0
2.3
404,564
0.9
2.4
311,315
0.6
1.1
14,972
0.2
4.8
76,527
4.6
5.7
1,750
-0.3
0.2
129,673
1.2
2.2
23,416
4.8
8.4
106,256
0.4
0.8
9,783
-0.1
-0.2
94,311
1.4
3.2
84,528
2.1
5.2
102.3
2.7
5.5
100.6
1.5
104.1
1.1
95.9
1.0
下期
(予測)
526,391
1.1
2.3
545,128
0.5
(1.0)
1.4
537,573
0.6
1.6
406,825
0.6
1.5
312,827
0.5
1.1
14,524
-3.0
-2.8
79,099
3.4
8.1
375
-0.3
-0.6
130,748
0.8
2.0
24,172
3.2
8.2
106,575
0.3
0.7
9,115
-0.1
-0.2
94,405
0.1
1.5
85,289
0.9
3.0
102.1
-0.1
2.6
103.4
3.7
105.1
1.7
96.6
0.9
(注)GDP実額は10億円、実質は05年連鎖価格、GDPデフレーターは05年基準、企業物価、消費者物価、鉱工業生産は10年基準。経常
収支実額は億円(年率)。消費者物価は生鮮食品を除く総合。実績は内閣府資料などより作成、予測は景気循環研究所。
(資料)三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様
ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
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2016 年 8 月 22 日
表 9. 経済見通し総括表(四半期)
(単位:10億円、05年=100、10年=100、億円、%、%ポイント)
予 測
15年度
名 目 G D P
[前期比]
[前年比」
実 質 G D P
[前期比]
[同年率]
[前年比]
国 内 需 要
[前期比]
[前年比]
民 間 需 要
[前期比]
[前年比]
個人消費
[前期比]
[前年比]
住宅投資
[前期比]
[前年比]
設備投資
[前期比]
[前年比]
在庫投資
[前期比寄与度]
[前年比寄与度]
公 的 需 要
[前期比]
[前年比]
公共投資
[前期比]
[前年比]
政府消費
[前期比]
[前年比]
純 輸 出
[前期比寄与度]
[前年比寄与度]
輸
出
[前期比]
[前年比]
輸
入
[前期比]
[前年比]
鉱工業生産指数
[前期比]
[前年比]
国内企業物価
[前年比]
消費者物価
[前年比]
GDPデフレーター
[前年比]
4~6月
7~9月
(実績)
(実績)
498,148
0.0
2.2
527,680
-0.4
(-1.7)
0.7
518,546
0.0
0.5
393,506
-0.2
0.3
306,140
-0.7
0.1
13,388
1.7
-3.2
71,452
-0.9
1.3
2,645
0.3
0.1
124,933
0.5
1.3
21,963
1.2
2.1
103,061
0.3
1.3
10,537
-0.4
0.2
90,694
-4.2
1.9
80,157
-1.8
0.8
98.0
-1.3
-0.8
103.7
-2.2
103.4
0.1
95.6
1.4
501,045
0.6
3.6
530,246
0.5
(2.0)
1.8
519,948
0.3
1.5
395,117
0.4
1.8
307,536
0.5
0.4
13,531
1.1
5.9
71,975
0.7
2.6
2,226
-0.1
0.6
124,747
-0.1
0.6
21,541
-1.9
-0.7
103,314
0.2
1.2
11,885
0.2
0.2
93,012
2.6
3.1
81,128
1.2
1.5
97.0
-1.0
-0.9
102.6
-3.7
103.4
-0.1
93.0
1.8
16年度
10~12月 16年1~3月
(実績)
499,688
-0.3
2.2
527,922
-0.4
(-1.7)
0.7
517,443
-0.5
0.7
392,569
-0.6
0.9
305,033
-0.8
-1.0
13,468
-0.5
4.8
72,831
1.2
4.0
1,449
-0.2
0.6
124,763
0.0
0.1
20,835
-3.3
-5.2
104,111
0.8
1.6
11,890
0.1
-0.1
92,149
-0.9
-0.9
80,259
-1.1
-0.5
97.1
0.1
-0.8
101.2
-3.7
103.4
0.0
96.2
1.5
(実績)
503,575
0.8
1.1
530,591
0.5
(2.0)
0.2
519,422
0.4
0.2
393,540
0.2
0.0
307,125
0.7
-0.3
13,452
-0.1
2.0
72,327
-0.7
0.6
915
-0.1
-0.1
125,748
0.8
0.7
20,854
0.1
-4.7
105,048
0.9
2.2
12,418
0.1
-0.1
92,248
0.1
-2.5
79,830
-0.5
-2.0
96.1
-1.0
-1.6
99.8
-3.4
102.6
-0.1
93.4
0.9
4~6月
7~9月
(実績)
(予測)
504,745
0.2
1.3
530,845
0.0
(0.2)
0.6
520,988
0.3
0.5
394,344
0.2
0.2
307,622
0.2
0.4
14,118
5.0
5.6
72,059
-0.4
0.6
748
0.0
-0.4
126,494
0.6
1.4
21,331
2.3
-2.8
105,295
0.2
2.2
11,077
-0.3
0.1
90,856
-1.5
-0.1
79,779
-0.1
-0.6
96.1
0.0
-1.9
99.2
-4.3
103.0
-0.4
96.4
0.8
507,140
0.5
1.2
532,986
0.4
(1.6)
0.5
523,533
0.5
0.7
396,184
0.5
0.3
308,083
0.2
0.2
14,443
2.3
6.7
72,758
1.0
1.1
900
0.0
-0.3
127,349
0.7
2.1
21,886
2.6
1.6
105,463
0.2
2.1
10,864
-0.1
-0.2
91,855
1.1
-1.2
80,992
1.5
-0.2
97.8
1.8
0.9
99.0
-3.5
103.1
-0.3
93.7
0.7
17年度
10~12月 17年1~3月
(予測)
511,789
0.9
2.4
535,956
0.6
(2.2)
1.5
527,382
0.7
1.9
399,660
0.9
1.8
309,131
0.3
1.3
14,789
2.4
9.8
72,539
-0.3
-0.4
3,200
0.4
0.3
127,722
0.3
2.4
21,995
0.5
5.6
105,727
0.3
1.6
10,159
-0.2
-0.4
92,407
0.6
0.3
82,247
1.6
2.5
98.7
0.9
1.7
99.7
-1.5
103.6
0.2
97.1
0.9
(予測)
517,742
1.2
2.8
539,682
0.7
(2.8)
1.7
530,971
0.7
2.2
402,303
0.7
2.2
309,873
0.2
0.9
15,085
2.0
12.1
73,845
1.8
2.1
3,500
0.1
0.5
128,668
0.7
2.3
22,677
3.1
8.7
105,991
0.3
0.9
10,292
0.0
-0.4
93,608
1.3
1.5
83,316
1.3
4.4
100.5
1.8
4.6
99.7
-0.1
103.1
0.5
94.4
1.1
4~6月
7~9月
(予測)
(予測)
519,930
0.4
3.0
541,506
0.3
(1.4)
2.0
533,060
0.4
2.3
403,522
0.3
2.3
310,926
0.3
1.1
15,100
0.1
7.0
75,396
2.1
4.6
2,100
-0.3
0.3
129,538
0.7
2.4
23,335
2.9
9.4
106,203
0.2
0.9
10,020
0.0
-0.2
94,169
0.6
3.6
84,149
1.0
5.5
101.8
1.3
5.9
100.3
1.1
103.9
0.9
97.4
1.0
521,608
0.3
2.9
543,393
0.3
(1.4)
2.0
535,412
0.4
2.3
405,605
0.5
2.4
311,704
0.3
1.2
14,844
-1.7
2.8
77,658
3.0
6.7
1,400
-0.1
0.1
129,807
0.2
1.9
23,498
0.7
7.4
106,309
0.1
0.8
9,545
-0.1
-0.2
94,452
0.3
2.8
84,907
0.9
4.8
102.7
0.9
5.0
101.0
2.0
104.3
1.2
94.5
0.9
10~12月 18年1~3月
(予測)
524,809
0.6
2.5
544,767
0.3
(1.0)
1.6
537,039
0.3
1.8
406,714
0.3
1.8
312,452
0.2
1.1
14,517
-2.2
-1.8
78,745
1.4
8.6
1,000
-0.1
-0.4
130,325
0.4
2.0
23,803
1.3
8.2
106,522
0.2
0.8
9,290
0.0
-0.2
94,452
0.0
2.2
85,162
0.3
3.5
102.8
0.1
4.2
102.6
2.9
105.2
1.5
97.9
0.9
(予測)
527,973
0.6
2.0
545,489
0.1
(0.5)
1.1
538,106
0.2
1.3
406,937
0.1
1.2
313,202
0.2
1.1
14,531
0.1
-3.7
79,454
0.9
7.6
-250
-0.2
-0.7
131,170
0.6
1.9
24,541
3.1
8.2
106,629
0.1
0.6
8,940
-0.1
-0.2
94,358
-0.1
0.8
85,417
0.3
2.5
101.5
-1.3
1.0
104.2
4.5
105.1
1.9
95.3
0.9
(注)GDP実額は10億円、実質は05年連鎖価格、GDPデフレーターは05年基準、企業物価、消費者物価、鉱工業生産は10年基準。経常収支実額は億円(年率)。消費
者物価は生鮮食品を除く総合。実績は内閣府資料などより作成、予測は景気循環研究所。
(資料)三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
みやざき
(16.8.22 宮嵜
ひろし
浩)
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様
ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
8
2016 年 8 月 22 日
海外経済の展望
米国経済~FRB の慎重な引き締め策の下、17 年後半にかけて拡大基調が続く見通し。
米国経済は、16 年春頃までの停滞から抜け出し、足元では製造業を中心に
17 年後半にかけ、景
拡大基調を強めている。4、5 月に見られた労働市場の減速も、春までの景気
気は加速へ
減速を反映した一時的なもので、既に雇用増加数は春先以前のペースに戻り
つつある。今後は、堅調な労働市場を背景とした個人消費の加速により、米
国景気は回復の動きを強めると予想する。景気は 17 年後半にかけて堅調に推
移すると考えられる。政策金利の引き上げは、16 年 12 月、17 年 6 月、12 月
と半年に 1 回程度の緩やかなペースで実施されるとみられる。18 年初には、
それまでの金融引き締め効果や在庫の循環的な動きにより、景気は一旦減速
感するものの、調整は軽微にとどまり、18 年 4-6 月期には再び拡大基調を取
り戻すと予想する。
16 年 7-9 月期は在
16 年 4-6 月期の成長率は、前期比年率 1.2%と、1-3 月期の同 0.8%から加
庫、政府支出の反動
速したものの、市場予想を大きく下回った。ただし、4-6 月期の低成長の主
増が見込まれる
因は、在庫投資や政府支出の下振れによるもので、国内需要の基調といえる
民間国内最終需要は、前期比年率 2.7%と、1-3 月期の同 1.1%から大きく加
速した。個人消費は、自動車販売の持ち直しに加え、家具や食品などその他
の費目も堅調に推移したことから、前期比年率 4.2%と 6 四半期ぶりの高い
伸びとなった。機械設備投資は、3 四半期連続の減少となったものの、輸送
機器の減少幅は縮小した上、ソフトウェア投資などの増加もあり、復調の兆
米国経済見通し
表1.米国GDP総括表(単位:10億㌦、%、%ポイント)
実質GDP
15年
16年
17年
15年
(実績)
(実績)
(予測)
(予測)
1~3月期
15982.3
16397.2
16656.3
17143.4
16269.0
個人消費
16374.2
16454.9
16490.7
16525.0
16575.1
16698.3
16826.8
16961.5
17089.3
17206.6
17316.1
17343.4
2.6
3.0
2.0
2.2
0.9
1.9
0.8
1.6
1.2
1.2
3.0
1.5
3.1
2.0
3.2
2.6
3.0
3.1
2.8
3.0
2.6
2.9
0.6
2.3
12007.0
住宅投資
設備投資
在庫投資
(寄与度)
純輸出
10~12月期
17年
1~3月期
4~6月期
7~9月期
10~12月期
18年
1~3月期
4~6月期
7~9月期
10~12月期
1~3月期
1.6
2.9
10868.9
11214.7
11513.9
11861.3
11102.4
11181.3
11255.9
11319.3
11365.2
11482.8
11559.5
11648.1
11740.2
11824.4
11903.4
11977.1
2.9
3.2
2.7
3.0
2.4
3.6
2.9
3.4
2.7
3.1
2.3
2.6
1.6
2.4
4.2
2.7
2.7
2.7
3.1
2.9
3.2
3.3
2.9
3.0
2.7
3.0
2.5
2.8
1.0
2.3
505.4
564.5
602.0
642.0
538.0
556.9
573.7
589.5
600.7
591.3
601.4
614.5
626.4
637.8
648.0
655.9
660.8
3.5
11.7
6.6
6.7
13.3
9.9
14.8
10.7
12.6
13.0
11.5
13.1
7.8
11.7
-6.1
6.2
7.0
4.8
9.0
4.2
8.0
4.3
7.5
7.9
6.5
7.7
5.0
6.7
3.0
5.5
2155.6
2200.2
2187.3
2287.2
2187.9
2196.6
2217.5
2198.8
2179.7
2167.3
2186.0
2216.0
2246.9
2275.6
2302.4
2324.0
2335.5
1.6
2.5
3.9
1.4
-3.3
0.8
-3.4
-0.4
-2.3
-1.3
3.5
-1.4
5.6
0.8
5.7
3.1
5.2
5.0
4.8
5.3
3.8
4.9
2.0
3.9
93.8
70.9
56.9
40.7
-8.1
12.6
16.8
29.4
37.8
42.1
42.1
-5.7
6.0
2.1
-0.6
4.6
1.3
3.6
57.7
84.0
15.5
37.9
114.4
(前期比年率)
(前年同期比)
7~9月期
2.6
(前期比年率)
(前年同期比)
4~6月期
2.4
(前期比年率)
(前年同期比)
16年
2.0
3.3
(前期比年率)
(前年同期比)
予 測
14年
-0.1
0.2
-0.4
0.1
1.0
-0.5
-0.6
-0.4
-0.4
-1.2
0.5
0.1
0.3
0.2
0.1
0.0
-1.1
-425.7
-540.0
-568.5
-568.5
-521.2
-525.0
-547.2
-566.6
-566.2
-556.3
-567.6
-583.7
-604.8
-618.5
-630.2
-633.7
-614.1
-0.1
-0.7
-0.2
-0.3
-1.7
-0.1
-0.5
-0.5
0.0
0.2
-0.3
-0.4
-0.5
-0.3
-0.3
-0.1
0.5
15924.6
16313.2
16640.8
17105.5
2.5
17393.1
2.4
18036.7
2.0
18558.2
2.8
19370.1
16154.6
1.1
2.8
17783.6
16280.4
3.2
2.7
17998.3
16384.0
2.6
2.2
18141.9
16433.8
1.2
2.0
18222.8
16484.3
1.2
2.0
18281.6
16583.2
2.4
1.9
18437.6
16685.7
2.5
1.8
18664.2
16810.0
3.0
2.3
18849.3
16932.2
2.9
2.7
19020.5
17051.5
2.8
2.8
19286.2
17164.5
2.7
2.9
19512.3
17274.0
2.6
2.8
19661.3
17349.1
1.8
2.5
19715.0
(前年同期比)
4.2
3.7
2.9
4.4
2.1
4.5
4.9
4.1
3.2
3.3
1.8
3.0
1.3
2.8
3.5
2.4
5.0
2.9
4.0
3.4
3.7
4.0
5.7
4.6
4.8
4.5
3.1
4.3
1.1
3.7
(前年同期比)
1.8
1.6
1.1
1.4
1.3
1.6
1.5
1.8
1.1
1.4
1.1
1.4
1.0
1.3
1.1
1.4
1.2
1.6
1.2
1.6
1.4
1.7
1.4
1.7
1.4
1.8
1.5
1.8
1.5
1.8
1.4
1.7
1.4
1.6
-0.5
2.4
5.6
-0.7
0.4
5.4
0.4
0.1
5.2
-0.8
-1.6
5.0
-0.5
-1.6
4.9
-0.3
-1.2
4.9
0.9
-0.7
4.8
1.0
1.2
4.7
1.1
2.8
4.6
0.9
4.0
4.5
0.8
3.9
4.4
0.6
3.4
4.3
-0.1
2.2
4.3
(寄与度)
最終需要
(前期比年率)
(前年同期比)
名目GDP
(前期比年率)
GDPデフレータ
コアPCED (前年同期比)
(注)寄与度は前期比年率ベース。実質値は00年連鎖価格。水準は年率換算値。
表2.主要経済指標
鉱工業生産(前期比、%)
(前年比、%)
失業率(期中平均)
2.9
0.3
-0.6
3.5
6.2
5.3
4.8
4.4
(資料)米商務省「GDP」、米労働省「Employment Situation」、FRB「Industrial Production」。見通しは、景気循環研究所。
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様
ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
9
2016 年 8 月 22 日
しがみられた。輸出はドル高の影響が一巡したとみられ、4四半期ぶりのプ
ラスに転じた。政府支出は、6 四半期ぶりの減少となったものの、国防費の
一時的な減少によるものと考えられる。16 年 7-9 月期の成長率は、在庫投資
や政府支出の反動増や企業景況感の改善を背景とした設備投資の持ち直しか
ら、前期比年率 3%程度の成長となると予想する。
在庫循環は 17 年後
半にかけ上昇局面
景気の先行きについて、在庫循環の観点からみると、出荷・在庫バランス
(前年同月比ベース)は上昇局面の初期段階に位置しているとみられ、過去
の平均的な上昇局面の期間を勘案すると、成長率は 17 年後半にかけて加速す
ると予想される。
財政政策は 16、17 年
度ともに拡張的に
財政政策については、16 年度、17 年度ともに、拡張的となるだろう。議会
予算局の推計によると、16 年度の財政赤字は GDP 比 2.7%と 15 年度の同 2.5%
から 0.2%ポイント拡大し、17 年度は同 2.8%とさらに 0.1%ポイント拡大す
る見通しである。財政赤字の拡大要因は、15 年 12 月に成立した投資減税の
恒久化、さらに、同 10 月に成立した裁量的支出の上限(キャップ)引き上げ
や海外緊急作戦費の積み増しによるもので、いずれも、景気の押し上げに寄
与するものと考えられる。オバマ大統領は、アフガニスタンからの撤退計画
を遅らせる見通しであり、海外緊急作戦費は更に拡大する可能性もある。17
年度以降の財政政策は、次期大統領に誰が選出されるかによって違いがでる
だろう。民主党の候補であるヒラリー・クリントン候補は、大きな政府を目
指す民主党らしく、5 年で 2,750 億ドルのインフラ投資を提案している。他
方、小さな政府をめざすはずの共和党候補のトランプ氏も、8 月に入ってか
ら、5 年で 5,000 億ドルを超えるインフラ投資を提案している。いずれの候
補が当選しても、財政面からの景気押し上げが期待できる。
個人消費が 3%を上
回る成長を維持へ
17 年後半にかけては、個人消費が全体を牽引すると予想する。4-6 月期の
実質個人消費は、高い伸びとなり、1-3 月期の落ち込みが一時的だったこと
が示された。16 年前半の伸び率は、年率で 2.9%(16 年 4-6 月期と 15 年 10-12
月期の比較)と、15 年通年(15 年 10-12 月期と 14 年 10-12 月期の比較)の
2.6%を上回り、個人消費が徐々に加速していることがわかる。16 年 4、5 月
に労働市場の改善ペースが落ち込んだことで、16 年前半の実質可処分所得は、
年率で 2.1%(同上)と 15 年通年(同上)の 3.0%から減速したものの、既
に、6、7 月の雇用増加数が市場予想を大幅に上回る結果となっており、同可
処分所得の伸びが 15 年のペースに回帰するのにそれ程の時間は要さないと
みられる。足元では、賃金に加速の動きが広がっており、雇用者数の増加と
相まって、所得は今後一段と加速するだろう。個人消費は、17 年にかけ、所
得環境の改善を背景に実質で 3%を上回る伸びが続くと予想する。
住宅市場は、引き続
住宅投資は、9 四半期ぶりに減少した。前回減少した 2013 年は、バーナン
き堅調維持の見通し
キ前 FRB 議長が量的緩和による資産購入額の縮小を示唆したことをきっかけ
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様
ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
10
2016 年 8 月 22 日
に、長期金利が急騰し、住宅ローン申請が減少した。今回は昨年後半から今
年前半にかけて金融市場が混乱したことで、先行き不透明感が高まり、耐用
年数が長く高額商品である住宅購入に影響が出た可能性がある。ただし、住
宅着工許可件数は、4-6 月期に持ち直しており、調整は 1-3 月期のみにとど
まると予想する。中古住宅市場では、6 月の販売件数のうち、初回購入者の
購入割合が過去 4 年で最高となり、住宅購入が投資目的から実需に一段とシ
フトしていることが示された。今後は、堅調な労働市場、順調に伸びる世帯
数、歴史的に見て低水準にとどまる住宅ローン金利、不況期に長期にわたっ
て蓄積された需要の顕在化などを背景に、住宅市場は 17 年にかけて堅調に推
移するとみられる。
FRB は、16 年 12 月、
FRB は、15 年 12 月に今局面における最初の利上げを実施してから、政策
17 年 6 月、12 月と利
金利を据え置いている。16 年 5 月頃には、多くの FOMC メンバーから、利上
上げへ
げの条件が整いつつあるとの発言があり、6 月利上げは、ほぼ確実とみられ
ていたが、6 月初旬に発表された 5 月分の雇用統計が厳しい内容となり、FRB
は、一転、利上げに対し慎重姿勢となった。さらに、6 月 23 日に英国の国民
投票で英国のユーロ圏離脱(ブレグジット)が決定し、FRB には一段と慎重
な姿勢が求められることとなった。その後発表された 6 月分、7 月分の雇用
統計が良好な内容となったことで、市場では、再び早期利上げを予想する向
きが出てきた。しかし、7 月の FOMC 声明文で、「世界経済と金融経済のリス
クを注意深く監視する」との文言が残ったことで、FRB は、性急な利上げに
踏み切る可能性は低いとみられる。FRB が目標とするインフレ率の 2%達成は
FRB の当初見通しよりも遅れる可能性が高く、利上げは、半年に 1 回程度の
ペースとなると予想する。FRB の次回利上げは、16 年 12 月と予想され、その
後、17 年 6 月、12 月と政策金利は引き上げられると予想する。
欧州経済~16 年成長率は 1.7%、17 年は 1.9%となる見通し。
海外景気の改善、金
欧州経済は、ブレグジットなどの下振れリスクを抱えながらも、ECB の追
融緩和で景気拡大へ
加的な緩和政策や海外経済の持ち直しを背景に、17 年後半にかけて、拡大基
調を強めると予想する。
4-6 月期の減速は、
1-3 月の反動
ユーロ圏の 4-6 月期の成長率は、前期比 0.3%となり、1-3 月期の同 0.6%
から減速した。ただし、1-3 月期の高成長は暖冬などの特殊要因によって押
し上げられたもので、反動減は事前に予想された通りだった。主要国の成長
率は概ね減速したものの、その中でも、ドイツやスペインは、比較的高い成
長を維持した。一方、フランス、イタリア、ポルトガルなどは、低下幅も大
きく、弱い結果となった。ドイツとスペインが全体を牽引し、フランス、イ
タリアがその足を引っ張るという近年のパターンが今回も明確に現れた。各
国をみると、ドイツは、1-3 月期に暖冬で建設投資が押し上げられた上、特
殊要因とみられる資本財の生産の急増があり、4-6 月期はその反動が出た形
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ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
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2016 年 8 月 22 日
である。ただし、4-6 月期は個人消費が加速した上、輸出の増加が成長を下
支えした。スペインは、テロの発生したフランスの代替旅行先として観光需
要が増大し成長率を押し上げたとみられる。フランスは、個人消費や設備投
資が減速、輸出も 2 四半期連続で減少した。欧州のサッカーイベント・ユー
ロ 2016 に関連したチケット販売や宿泊施設の予約により 1-3 月期が押し上げ
られた反動もあった。足元の経済指標をみると、ユーロ圏製造業 PMI は 16 年
7 月に低下したものの、6 月 23 日のブレジット決定を勘案すると、低下は小
幅にとどまったといえよう。独 ZEW 景気期待指数は、16 年 7 月にブレジット
決定を受け大幅に低下したが、16 年 8 月には早くも反発した。
英国はブレグジット
欧州経済については、英国のユーロ圏離脱(ブレグジット)決定の影響が、
決定でも景気後退は
今後どの程度の広がりをみせるかがひとつの焦点となろう。英国は、貿易協
回避へ
定の締結に向けた不透明感などから、既に、企業景況感や消費者マインドが
大きく損なわれており、景気は大きく減速するリスクがある。ただし、英国
中銀は、ブレグジットを受ける形で、8 月の金融政策委員会で市場の期待を
大きく上回る金融緩和策を発表した。市場予想では、政策金利の引き下げに
とどまると見られていたが、量的緩和(資産購入)の拡大にも踏み切った。
政策金利の 0.25%の引き下げに加え、6 ヵ月で 600 億ポンドの国債購入の増
額、18 ヵ月で 100 億ポンドの社債購入、銀行向け貸出スキームの新設(1000
億ポンド)を決めた。これらの金融緩和策もあり、英国経済は景気後退には
至らないと考える。
個人消費が引き続き
欧州景気を牽引
16 年後半以降のユーロ圏経済は、英国の景気減速が限定的なものにとどま
るなか、拡大基調が維持されると予想する。景気拡大は、引き続き個人消費
が主導すると考える。ドイツを中心とした雇用環境は引き続き堅調に推移し
ている。16 年 6 月のドイツの失業率は、5 月に続き 6.1%と、東西ドイツ統
一以降で最低の水準となっている。賃金も順調に伸びている。4 月には公務
員労組が 2 年間で計 4.75%、5 月には最大労組の IG メタルが 2 年間で 4.8%
の賃上げ協約を妥結した。フランスとイタリアの失業率も低下傾向にあり、
雇用環境は改善している。ただし、これらの国の労働コストは、ドイツに比
べると、依然として高止まったままであり、今後も雇用コスト抑制による競
争力回復が必要であることから、賃金の伸びはしばらく低いままとみられる。
それでも、エネルギー価格の低下などの恩恵もあり、実質個人所得の伸びは、
改善基調である。
財政再建と成長促進
経済政策面では、追加的な金融政策が難しくなる中、財政政策の重要性が
のバランスのとれた
ますます高まっている。ドイツは、引き続き財政健全志向が強く、2020 年ま
政策を模索
で均衡財政を維持する予算案を閣議決定した(16 年 7 月)。ただし、予算案
では、交通インフラ、国防関連、社会保障関連に加え、難民対策など歳出を
3%近く拡大する方針である。スペインとポルトガルは、財政規律が緩んだと
して、一旦、ユーロ圏史上初の罰金が決定したが、その後、過度の規律強制
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2016 年 8 月 22 日
は、政治的にも経済的にも好ましくないとして、罰金は回避された。南欧諸
国は、財政再建を基本路線としながら、成長と雇用、投資のバランスのとれ
た政策を模索している。
政治リスクには注意
景気の先行きについては、まず、政治リスクに注意が必要である。英国が
ユーロ圏離脱を決定したことで、欧州各国で、経済改革やグローバル化に反
対する大衆迎合的な政治風潮が高まる懸念がある。スペインについては、英
国国民投票直後に総選挙が実施されたが、英国の混乱がかえって現状維持志
向を強めたとみられ、中道右派の与党が善戦した。一方、イタリアではブレ
グジット後にリスクが高まっている。反体制派政党「五つ星運動」の支持率
が高まる中、レンツィ首相は指導力拡大を目指し、上院の権限を大きく制限
する憲法改正について、秋に国民投票を実施する。同首相は、国民投票で否
決された場合は、辞任することを表明しており、これまでの政治改革が頓挫
する可能性がある。
イタリアの銀行の不
その他の注目すべきリスクとしては、銀行の不良債権問題が挙げられる。
良債権問題は、同政
ドイツ等の大手銀行の不安もあるが、目先最も懸念されるのは、イタリアの
府と欧州委員会で落
銀行である。7 月末に発表された欧州の銀行ストレス・テストでは、イタリ
としどころを探る展
アのモンテ・パスキ銀行が、リセッションに見舞われるシナリオの下で、資
開か
本がマイナスになると評価された。イタリアでは、他にも多数の中小行で今
後の対策が不可避になるとみられる。イタリアの不良債権比率は 18%と高い
水準となっている。スペインやアイルランドは、欧州債務危機当時に抜本的
な対策を講じたのに対し、イタリアは、それらの国ほど状況がひどくなかっ
たため対策が遅れた。スペインやアイルランドは、政府が公的資本の注入な
ど立て直しを主導したが、その後、税金による銀行救済への批判が高まり、
銀行の投資家による負担(ベイルイン)が大原則となってしまった。そのた
め、欧州委員会は、イタリア政府による資本注入などを認めない方針である。
今後は、劣後債などで投資家負担を課した上で、リテールの投資家には政府
で補償するなどグレーな解決が図られるとの見方もある。
消費者物価は当面、
ECB の目標に届かず
ユーロ圏の消費者物価は、15 年以降、前年比ゼロを挟んで上下する展開と
なっている。16 年は、原油価格が昨年に比べ低い水準にあったことから、2
~5 月は、マイナス基調での推移となったが、その後原油価格の反発もあり 6
月は前年比 0.1%、7 月は同 0.2%と、プラスに転じた。今後のインフレ率は、
昨年後半のような原油価格の急落を想定していないことから、しばらくの間、
同水準で推移した後、昨年の裏が出る形で、秋以降、1%に向けて大幅に上昇
すると予想する。コアインフレ率は、今後需給ギャップの縮小にあわせて、
次第に上昇するとみられるものの、ユーロ実効為替レートの緩やかな上昇に
伴う輸入物価の下落も見込まれ、横ばい圏で推移すると予想される。
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2016 年 8 月 22 日
ECB は、9 月にも追加
緩和の可能性
ECB は、ブレグジット決定後の 7 月の会合で、金融政策を現状維持とした。
ドラギ総裁は、金融市場の混乱が予想外に小さかったこともあり、「ブレグ
ジットの影響を判断するのは時期尚早」とした。ただし、次回の理事会では、
スタッフ見通しを見た上で、必要なら行動する準備があると明言したことか
ら、9 月 8 日の会合では、資産購入期限の延長(17 年 3 月末→17 年 9 月末)
と購入資産の買い入れ対象の拡大(中銀預金金利以下の債券購入の制限を撤
廃)が予想される。
EMU経済見通し
予測
予測
(%)
15
16
17
18
4-6 7-9 10-12 1-3
4-6 7-9 10-12 1-3
4-6 7-9 10-12 1-3
(実績) (予測) (予測) (予測) 1-3
0.6
0.4
0.3
0.4
0.5
0.3
0.5
0.6
0.5
0.4
0.3
0.3
0.2
0.9
1.6
1.7
1.9
1.3
1.6
1.6
1.7
1.7
1.6
1.7
1.9
1.9
2.0
1.9
1.7
1.3
2014年 2015年 2016年 2017年
実質GDP
鉱工業生産
消費者物価
(同、コア)
0.9
0.4
0.8
2.0
0.1
0.8
1.6
0.4
1.0
3.4
1.9
1.5
1.3
1.9
-0.2
0.7
0.1
1.8
0.2
0.8
0.4
2.5
0.2
0.9
0.1
2.0
0.3
1.0
0.8
1.4
0.1
1.0
-0.4
0.9
0.0
0.8
0.8
1.3
0.5
1.0
1.4
2.7
0.8
1.2
1.1
3.0
1.6
1.3
0.8
4.3
1.9
1.5
0.4
3.8
2.1
1.6
0.0
2.4
2.1
1.7
-0.2
1.0
2.0
1.7
(注1) 上段は前期比、下段が前年比。物価は全て前年比。コア物価は、エネルギー・食品・酒・煙草を除く。(注2) EMUは、EURO参加16ヵ国。予測は景気循環研究所。
アジア経済~中国の景気が持ち直す中、17 年後半にかけ、成長率は緩やかに加速へ。
アジア経済は中国の
回復を背景に加速
アジア景気は、今後、中国経済が持ち直す中、17 年後半にかけて、徐々に
加速すると予想する。
中国は製造業を中心
16 年 4-6 月期の中国の成長率は、前年比 6.7%となり、1-3 月期から変わ
に回復の兆し。16 年
らず横ばいとなった。年初に懸念されたような中国経済の大幅な減速は回避
半ばを底に成長率
されたとみられる。鉱工業生産や企業景況感指数をみると、むしろ、足元で
は、持ち直すと予想
は、製造業を中心に景気は持ち直しの動きをみせている。固定資産投資は、
足元で減速しているものの、これは昨年の企業利益の減少を反映した一時的
なものとみられ、足元の企業利益の回復を考慮すると、年後半の設備投資は
上向く可能性が高い。加えて、中国政府は、インフラ投資を通じた積極的な
財政政策を講じており、固定資産投資を下支えしている。個人消費について
も、1-3 月期に落ち込んだ賃金の伸びが、4-6 月期に反発したことで、年後
半の持ち直しが期待できる。政策面では、16 年 5 月より税制改革が実施され、
中国政府によると、対象企業に、5000 億元の減税効果が見込まれるとしてい
る。また、昨年 10 月よりスタートした小型車の取得税を半減する措置は、16
年末まで実施されることから、引き続き自動車販売を下支えするだろう。金
融政策面では、人民銀行は、16 年 2 月 29 日に預金準備率を引き下げて以降、
様子見を続けているものの、8 月 3 日には中国国家発展改革委員会から「追
加緩和が必要」との声明が出されており、近々追加の預金準備率引き下げの
可能性がある。中国経済は、景気対策による押し上げ効果もあり、16 年半ば
を底に、徐々に加速すると予想する。東アジア諸国・地域は、欧州・中国向け
輸出の回復を背景に、回復基調を強めると予想する。
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14
2016 年 8 月 22 日
アジア経済見通し
(前年比、%)
→ 予 測
14年
(実績)
15年
(実績)
16年
(予測)
17年 15年
(予測)
1~3月期
16年
4~6月期
7~9月期
10~12月期
17年
1~3月期
4~6月期
7~9月期
10~12月期
1~3月期
4~6月期
7~9月期
10~12月期
韓国
3.4
2.6
3.2
3.4
2.4
2.2
2.8
3.1
2.8
3.2
3.2
3.4
3.4
3.5
3.5
台湾
3.9
0.7
1.2
2.7
4.0
0.6
▲ 0.8
▲ 0.9
▲ 0.3
0.7
2.0
2.2
2.5
2.8
3.0
3.0
2.5
NIEs
3.4
2.1
2.4
3.1
2.8
1.9
1.8
1.9
1.7
2.3
2.7
2.9
3.1
3.2
3.3
2.8
ASEAN4
4.3
4.5
4.6
4.5
4.5
4.4
4.5
4.6
4.6
4.8
4.4
4.5
4.6
4.6
4.7
4.2
インド
7.0
7.3
7.6
7.3
6.7
7.6
7.7
7.2
7.9
7.4
7.5
7.6
7.5
7.4
7.3
7.2
中国
7.4
6.9
6.7
6.9
7.0
7.0
6.9
6.8
6.7
6.7
6.7
6.8
6.8
6.9
6.9
6.8
Total
5.8
5.3
5.3
5.5
5.4
5.3
5.2
5.1
5.2
5.3
5.3
5.5
5.5
5.6
5.6
5.4
(注) NIEs、ASEAN4、10ヵ国・地域の値は、各国・地域の値を、05年 のドル建て名目GDPのウエイトで加重平均したもの
(資料)各国統計資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
(16.8.22
福田
(以
圭亮)
上)
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15
2016 年 8 月 22 日
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