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新貸主から賃貸人が 変わったと言われた
弁護士さんに聞いてみよう 弁護士 : 弁護士法人小野総合法律事務所 聞き手 : 三幸エステート コンプライアンス部 3 VOL. 長田誠司氏 百目鬼(どうめき)英明 ∼新貸主から賃貸人が 変わったと言われた∼ 長田誠司(おさだ・せいじ) 平成17年 弁護士登録(58期) 小野総合法律事務所入所 三幸エステートのほか、大手信託銀行の 不動産部門等を担当し、不動産取引に関する 業務を主に取り扱っている。 ─ 百目鬼:あるお客様から、 以下のような相談がありました。 『当社 (D社) は、 A信託銀行が所有する物件をB社から転貸を受けており ますが、 このたび、 A信託銀行と新たな転貸人であるC社の連名で、 「転貸 人がB社からC社に変更されたこと、 従来B社との間で締結していた賃貸 借契約の内容はそのままC社が承継すること、敷金の返還債務もC社が 記載された書面を受け取りました。 当社は、 承諾しないとならないのでしょ うか?』 。 このような相談は良くあるのですが、 そもそもオーナーチェンジに よる貸主変更については、 賃借人の承諾が必要ですか? ─ 長 田:下図をご覧ください。 建物の所有者 (A) が賃借人Dに貸して A 信託銀行 M/ L 転 貸 承 継 承継すること、 今後の賃料は下記C社の口座に振り込んで頂きたいこと、 上記の件について賃借人である当社 (D社) の承諾を頂きたいこと」 などが L M/ B (旧転貸人) C (新転貸人) D (当社) 転 貸 いる状態で、 Aが第三者 (S) に物件を売却するようなケースは、 日常多く 取引されております。 当然ですが、 物件の所有者Aが自分の不動産を第三 者に売却しようとする場合に、 賃借人の承諾が必要であるということはあ りません。 そして、 このような場合、 所有権とともに賃貸人の地位もAから ─ 長 田:原則として必要です。 このような場合には、 先ほど述べたよ 新所有者Sに当然に承継され、 賃借人Dの承諾は必要ないものとされてい うな所有者変更の場合と異なり、 判例理論が確立しているわけではありま ます。 また、 DがAに差し入れていた敷金の返還債務も (DのAに対する未 せん。 したがって、 承継に際して敷金返還債務も含めて債権債務関係を明 払債務があれば、 その分は控除されますが) Sに当然に承継されるものと らかにしておく必要があります。 されています。 ─ 百目鬼:D社が承諾しないとどうなりますか? ─ 長 田:実務上は、 承諾するケースが多いと思いますが、 Dの承諾な くC−D間に賃貸借契約関係が生じるということは原則としてありません。 ただ、 最近では、 もともとB−D間の賃貸借契約書の中にこのようなことを 賃貸人 A (建物所有者) 賃貸借契約 D (当社) 想定して、 D社の事前承諾文言が規定されているケースも多いです。例え ば、信託物件は、真の所有者ともいうべき受益者がおりますので、 受益権 を売買するなどの理由で転貸人を変更する必要が生じることや、信託の 終了に伴いAから所有権を譲り受けた新所有者が直接賃貸することにな 譲 渡 るケースなど、 いろいろな場合を想定して、 あらかじめ (転) 賃貸借契約の 中で手当てしてある場合があります。 ─ 百目鬼:賃貸借契約の中に、 事前承諾文言がなかったような場合、 賃 借人Dは、 承諾要請を断れますか? 賃貸人 S (新所有者) 賃貸借契約 D (当社) ─ 長 田:断れますが、 断った時にどうなるかという問題は複雑です。 そのケースでも、 AやCからDに対する明渡請求が認められることはまず ないと思いますが、他方で、 Dは契約上、誰から借りているのかが不明確 になってしまいますので、 あまり好ましいこととは思いません。 Bとの関係 やCの属性等により承諾したくないケースもあるかもしれませんが、特に 理由がなければ、承諾した方が契約関係をすっきりできると思います。 い ─ 百目鬼:最初のお客様からの相談のように、 所有者は変わらず、 転貸 ずれにせよ、 いろいろなケースがありますので、 一概にこうだと言い切ると、 人が変更されたような場合はどうなのでしょう? この場合、 賃借人の承 読者の誤解を招く恐れがありますので、 ご不明な点があれば、 個別に顧問 諾が必要でしょうか? また、 下図で、 B社の地位をC社が承継するには、 弁護士等にご相談されてご判断されるようお勧めいたします。 D社の承諾が必ず必要でしょうか? ─ 百目鬼:よくわかりました。 本日はありがとうございました。 ※上記は、 平成25年4月16日に弁護士法人小野総合法律事務所にて取材させて頂いた内容をまとめたものです。 何かご不明な点等ございましたら、 お気軽に下記お問い合わせ先に連絡をお願いいたします。 問い合わせ先 [email protected] 取材協力先 弁護士法人小野総合法律事務所 (長田誠司弁護士) http://www.ono-law.jp/