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I. I. MECA vol.72 掲載案内
I.I.MECA アイ . アイ . メカ (Idea & Information of Mental Care Association) メンタルケア協会 平成 26 年 5 月 1 日発行 発行責任者 吉 村 博 邦 財団法人 VOL. 72 〒 150-0001 東京都渋谷区神宮前 2-5-8 カーデ青山 201 TEL 03-3405-7270 FAX 03-3405-8580 E-mail:[email protected] http://www.mental-care.jp/ 現代社会の特性と危機に立つ子どもたち 講 師 二 宮 皓 (広島大学名誉教授、比治山大学学長) 1 人口増社会か人口減社会か ベビーブームや人口爆発が懐かしく感じる。路地には子どもの遊び声が響き、活気があっ た時代は終焉を迎え、人の息遣いを失った団地。2060 年には人口が今の 60%になる。数百 年もすれば世界の中でも日本人だけが地球から消えようとしている。アメリカではアメリカ の土地で生まれたものは誰でもアメリカ国籍がもらえる(21 歳までには最終的に一つの国 籍を選択するが)が、日本人は日本人の子弟として誕生しなくては日本人になれない。そ うした属地主義と属人主義の違いや移民政策の違いが日本の人口減社会の悲観的将来像を もたらす。 2 なぜ日本では子どもが拒否されるのか 出生率が 2.4 以上でないと人口増には結びつかないそうである。今のデータは 1.24 と極端 に低く、人口減に拍車がかかっている。なぜか。少子化担当大臣をおいたり、待機児童ゼ ロをめざしたり、子ども手当などとさまざまな施策が展開されるが一向に改善の気配がな い。有史以来の初めての経験で、歴史から学ぶ知恵が浮かばないのが事実であろう。 最大の原因は、現代社会が子どもへの興味関心を喪失し、最大の関心が「自分」にある という大人世代の誕生にある。自分が一番大切である、とする自己中心性である。自分が どう思うかが意思決定の中心にあり、「自分」「自分」ばかりである。自分が幸せか、自分 が何をしたいか、自分を大切にしているか、・・・。周りの人は「自分」のためにいるとさ え錯覚している。結婚し、親になり、家族を形成することに関心を失い、その意義さえ見失っ ている。恋愛や人を本気で好きになることはもはやないのだろうか。恋い焦がれる気持ち はどこに行ってしまったのか。 3 危機にたつ子どもたち 銀も金も玉も何せむに まされる宝 子にしかめやも(山上憶良)。現代社会はもはや子 どもは一番の宝ではないようだ。OECD 統計では世界で 12 番目に貧困率が高い。15%強で ある。アメリカやドイツも移民が多く、貧しい家庭が少なくないし、貧富の格差が拡大定着 化している。アメリカが5人に一人、日本が7人に一人の子どもが貧困である。それは相 対的貧困であって、豊かな子どもが多くいる中で貧しい自分がいるという構図である。皆 I.I.MECA 2014 vol.72 −1− I .I .M E C A VOL. 72 が貧困であるという絶対的貧困(アフリカのチャドなど)とは意味が違い、一層貧しさを 実感させ、自分たちを恨むことになる。 給食費が払えない(1%程)、学力が身につかない(7%程度)、高校を中退する(2~ 3%)、大学を中退する(2~ 15%)、就職内定がとれない(20 ~ 10%)、転職を余儀なく される、失われた 20 年(正社員になれない時代)、と子どもや青年(今や成人になっている) が社会のひずみの犠牲者となっている。 瀬戸際に立ち、危機に瀕する子ども(At Risk)の本質は、 「自分で自分が好きになれない」 ことにある。自分さえ大切にできない子どもたち。それこそ現代社会の特性であろう。 これ等のはらむ現代社会において、心のケアの専門職精神対話士におかれては、子どもた ちの心のケアに積極的にかかわり、暖かく成長を見守っていただくことを切に希望し、期 待いたします。 I.I.MECA 2014 vol.72 −2− I .I .M E C A 精神対話士としての覚悟 VOL. 72 < 3.11 東日本大震災被災者支援活動を通して> 精神対話士 杉山 晴美 東日本大震災より三年余りがたちました。三陸鉄道が全線開通するなど、被災地より復興の ニュースが届く中、福島第一原発事故処理に関しては、大きな進展をみないいまま今に至ってい ます。 私たち精神対話士は、そのような福島から避難されたご家族が多く暮らす、東京都江東区の公 務員宿舎「東雲(しののめ)住宅」で“ほっ!と相談”という心のケア活動を続けています。 私自身は平成 24 年 11 月より、この活動に参加しています。お話しを伺った方々の中には、新 しい住まいを見つけ、移住されたり、東京で仕事につき、新たな生きがいを見出された方もいらっ しゃいます。しかし、まだまだ多くの方が、震災直後と何ら変わらぬ「不安」、ともすればその 頃より増大した困難の中にいらっしゃるのです。 ご主人とお二人で避難された A さん(女性・75 歳)のお宅に、先日もお伺いしてきました。 手先の器用な A さんは、東京に出てきてから自治体の主催するワークショップなどで裁縫を習 い、小物を沢山作っていらっしゃいます。素敵な作品を、笑顔で見せてくださいましたが、じっ くりお話しを伺うと、「裁縫もいいけれど、本当にしたいのは、福島の自宅の庭樹や花を手入れ したり、家庭菜園で土をいじりたい」と、本音を明かしてくださいました。そして、まさか自宅 を離れることになるとは思っていなかった為、家の写真など一枚もなく、想い出しながら書かれ た自宅の見取り図や、周辺風景を描いた貼り絵を、見せてくださいました。懐かしそうに絵を見 つめる目に涙があふれてきます。そして「もう二度と住むことは叶わない」と、おっしゃいまし た。“三年たって悲しみは、より深いものになっている”そう感じました。 私たちは精神対話士として、そういった皆さまの真の声や、奥底の悲しみにまで心を寄せ、こ れからもお話しを聴き続けていかねばならないと、強く思いました。 I.I.MECA 2014 vol.72 −3− I .I .M E C A VOL. 72 精神対話士日記 精神対話士 吉松 佳代 クライアント A さん(80 代・女性)との対話は、5年5カ月続きました。たくさんの思い出 をいただきました。その中のひとつに「手と手の対話」があります。 はじめてお会いしたときの A さんは気難しいお顔をされていました。私もどうしていいかわ からず、ご高齢の方が好みそうな本を持って行ったり、A さんの故郷の写真集をお持ちしたり、 お若い頃の話を聞いてみようとしたり・・・。 A さんに、「誰かが暖かい関心を持ってそばにいる」ということを感じてほしいとの思いがあ りました。そこで、A さんの手をさすってみたのです。“手と手が重なる”ということは、遠く で優しく声を掛けられるよりも、近くで声だけ掛けられるよりも、確実に「ここに人がいる。」 という暖かさと安心感があります。A さんがベッドでお休みになっているときも、一緒にテレ ビを見ているときも、食事がくるのを待っているときも、ずっと手をさすっていました。 ある日、A さんの手を少し強くギュッと握ってみたのです。そうすると A さんがギュッと私 の手を握り返しました。もう一度ギュッと握ると、ギュッと握り返されます。ギュギュギュッと 3 回握ると、ギュギュギュッと3回握り返されます。なんだか手と手で話しをしているみたいで す。おかしくなって二人で顔を見合わせて笑いました。手と手の対話はそのあともずっと続きま した。 A さんがお亡くなりになる少し前、私はベッドに横になっている A さんのそばに座っていま した。A さんの手や指にはいろいろな医療器具が付いていました。それで手をさするのを遠慮 して、ただ傍らに座っていました。すると A さんが「手を… さすって… くれんですか… 。」と おっしゃいました。その言葉を聴いて私は一生懸命手をさすりました。 手と手で話しが出来る そのことを教えて下さった A さんに心から感謝しております。 A さんとの対話は私にとって大切な思い出です。 I.I.MECA 2014 vol.72 −4− I .I .M E C A VOL. 72 協会ニュース 東京都が「専門家アドバイザリースタッフ」に精神対話士を登用 平成 26 年度「東京都 専門家アドバイザリースタッフ」に精神対話士が登用 され、委嘱を受けました。 公立学校などに出向き、いじめ、不登校、集団不適応の子どもたちや保護者、 教員の方々への対応が始まります。これからの活動が期待されます。 「メンタルケア・スペシャリスト養成講座」福井会場 開催 平成 26 年 11 月より、北陸地区における「メンタルケア・スペシャリスト養成 講座」に新たに「福井会場」が開設されます。 福井県 大本山永平寺 I.I.MECA 2014 vol.72 −5− I .I .M E C A VOL. 72 お知らせ 「第 9 回日本精神対話学会」「精神対話士研修会」を次の要領で開催いたします。 奮ってご参加ください! 参加申込みは協会あて、電話、FAX、E-mail でお願いいたします。 TEL:03-3405-7270 FAX:03-3405-8580 E-mail : [email protected] ◆ 第9回日本精神対話学会 日 程 平成 26 年 11 月 2 日(日)・11 月 3 日(月・祝) 会 場 東京大学駒場キャンパス「 5 号館」 ◎論文の投稿もお待ちしております。(締切:平成 26 年 9 月 10 日(水)必着) ※詳細は、ホームページをご覧ください。 ◆ 精神対話士研修会 仙台会場 日 時 会 場 広島会場 平成 26 年 8 月 31 日(日)PM 1:00 〜 4:20 日 時 フォレスト仙台(宮城県教育会館) 会 場 第 5 会議室(2F) 交通案内 JR「仙台」駅より地下鉄南北線「北四番丁」駅 市役所前下車 徒歩 7 分 〈市内バス〉広島バス吉島営業所行 名古屋会場 時 会 場 厚生年金会館前下車 徒歩 1 分 平成 26 年 9 月 7 日(日)PM 1:00 〜 4:20 名古屋国際会議場 4 号館 436 室(3F) 札幌会場 (名古屋市熱田区熱田西町 1 − 1) 交通案内 地下鉄名城線「西高蔵」駅または「日比野」駅 日 時 平成 26 年 9 月 14 日(日)PM 1:00 〜 4:20 会 場 北海道大学学術交流会館 第 4 会議室(1F) (札幌市北区北 8 条西 5 丁目) 徒歩 5 分 交通案内 JR「札幌」駅北口より 徒歩 10 分 地下鉄南北線「北 12 条」駅 徒歩 5 分 東京会場 日 時 会 場 平成 26 年 9 月 21 日(日)PM 1:00 〜 4:20 国立オリンピック記念青少年総合センター 大阪会場 〈センター棟〉402 室(4F) 日 会 (東京都渋谷区代々木神園町 3 − 1) 交通案内 JR「広島」駅から 〈市内電車〉宇品行(紙屋町経由) 徒歩 7 分 日 アステールプラザ 中会議室(4F) (広島市中区加古町 4 − 17) (仙台市青葉区柏木 1 − 2 − 45) 交通案内 平成 26 年 9 月 6 日(土)PM 1:00 〜 4:20 時 平成 26 年 9 月 23 日(火・祝)PM 1:00 〜 4:20 場 エル・おおさか 南館 103(10F) (大阪市中央区北浜東 3 − 14) 小田急線「参宮橋」駅 徒歩約 7 分 地下鉄千代田線「代々木公園」駅 徒歩約 10 分 交通案内 地下鉄谷町線・京阪電車「天満橋」駅 徒歩 5 分 京王バス * 新宿駅西口(16 番)より 代々木 5 丁目下車 ○ テーマ 「精神対話士のためのメンタルケア論」 ○ 費 用 6,170 円(当日会場受付でお支払いください) 〔各会場共通〕 * 渋谷駅西口(14 番)より 代々木 5 丁目下車 I.I.MECA 2014 vol.72 −6− −7−