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(c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会 http://eureka.kpu.ac.jp/~myama
中国英語 映画タイトル Rush Hour 3(ラッシュアワー3) DVD 情報 日本で入手可 (91 分) 製作年 2007 年 (アメリカ) 監督 ブレット・ラトナー 映画について 小林めぐみ 1998 年に公開された『ラッシュアワー』が米国でヒット、この映画でジ ャッキー・チェンは米国での人気を不動のものとしました。本作は、そ のシリーズ第 3 弾。 主要キャスト ジャッキー・チェン(リー捜査官役)、クリス・タッカー(カーター刑 事役) 、真田広之(ケンジ役) 、ノエミ・ルノワール(ジャンビエーブ役) 、 チャン・ジンチュー(スーヤン役) 、工藤夕貴(ジャスミン役) 、マック ス・フォン・シドー(レイナール委員長役)、イヴァン・アタル(ジョ ージ役) 、ジュリー・ドパルデュー(ジョージの妻役) 、ツィ・マー(ハ ン大使役) 、ロマン・ポランスキー(レビ警視役)ほか あらすじ ロサンジェルスで中国人マフィア組織を撲滅しようと発言していたハ ン大使が、突然何者かに銃撃され、警護にあたっていたリーは、犯人を 追跡する。一方交通整理係になっていた「相棒」のカーターも事件を聞 きつけ現場へと向かい、リーに合流する。二人は結局犯人を取り逃がし てしまうが、リーは、その男が兄弟のように育ったケンジであることに 衝撃を受ける。彼らは首謀者とみられる師潘(シャイセン)の後を追う べくフランスに向かうが… 英語の特徴 本作の登場人物は国際色豊かで、主役のジャッキー・チェンの中国(香 発音・文法・語 港)英語を始めとして、クリス・タッカーのアフリカ系アメリカ人の英 彙 語、日本英語(真田広之、工藤夕貴)、フランス英語などを聞くことが できます。ただし、真田広之らは、相当な訓練を受けたこともあってか、 かなりネイティブに近い発音で英語を話しており、日本語話者らしい特 徴のある英語を聞くことはできません。また、マックス・フォン・シド ーはスウェーデン人俳優ですが、ここではフランス大使として登場し、 英語も特段スウェーデン語話者らしい特徴は見られません。 ジャッキーの英語はどうでしょうか。ジャッキーはハリウッドに進出 した当初は英語もあまりできなかったそうですが、この映画では英語を 使いこなしている様子が伝わってきます。とはいえ十分に中国語話者ら しい響きのする英語で、様々な特徴が見られます。 まず、映画の序盤で、相棒のカーターから電話を受けたリー(ジャッ キー)のセリフを見てみましょう(0:02:56)。“I can’t talk now. I’m in the car (c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会 http://eureka.kpu.ac.jp/~myama/worldenglishes/ with Ambassador Han… I don’t want to talk about that.” … “My mom says hi.” 全体的印象として、それぞれの音節が同じ長さで強弱のリズムが弱いと いう点が挙げられます。また with の/ð/が、語末のせいか曖昧に聞こえ ます。さらに、says が「セイズ」のように発音されています。 リーがケンジについて語るセリフも見てみましょう(0:43:18)。“We kept each other alive. … He was like my brother. … This fight is personal.” ま ず、/v/が/f/で代用されていて alive は「アライフ」となり、like では語末 の子音が脱落して「ライ」のように聞こえます。そして personal の/l/は 母音化して「ウ」のように聞こえます(中国人話者によく起こる現象で す。 ) 発音の苦労は NG シーンでさらによく伝わってきます(1:21:56~) 。ジ ャッキーの映画はエンドロールの NG シーンがお約束でもありますが、 本作の NG シーンでは、secret service がうまく言えず、なぜか seafood service と言ってしまうジャッキーの様子が取り上げられています。 (Seafood も「シーフー」 、service も surface のように聞こえます。 )何度 もセリフを練習している様子を見て、人はジャッキーにさらに親しみを 感じるのではないでしょうか。 なお、第 1 作で登場したハン大使の娘スーヤンが本作でも登場するの ですが、第 1 作目では 10 歳という設定で、英語もネイティブのように 話していたのに、約 10 年後の本作では中国語訛りの英語を話している のはおかしいと指摘されています。これは成人したスーヤン役に中国人 女優が起用されているからですが、視聴者はこういった矛盾に素早く反 応するということ、それだけ人はことばに敏感なのだということを改め て気づかされます。 最後に、本作では英語以外にも中国語、日本語、フランス語など多言 語が使用されていて、中国人の話すフランス語、真田広之とジャッキー の日本語によるやり取りも聞くことができます。 映画のみどこ 作品の出来としては、1 作目のラッシュアワーのほうが、勢いもあり、 ろ クリス・タッカーとジャッキー・チェンのやりとりも新鮮で面白みがあ ります。本作はストーリーも 1 作目の焼き直しで、アクションもトーク もキレが悪いという印象がぬぐえません。ただ、遊び心いっぱいのシー ン(ロマン・ポランスキー監督の友情出演、シスターによるフランス語 通訳、Yu という名前と you の混乱騒ぎなど)もあり、特にことばに興 味をもつ人にとっては、そういった観点から見ると面白い部分も含まれ ています。 (c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会 http://eureka.kpu.ac.jp/~myama/worldenglishes/