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August 2014
水痘ワクチン
開発までの軌跡
40
開発
周年
8
水痘ワクチンは今年で開発40周年(承認からは28年)
を迎え、10月からは定期接
種に導入されます。水痘ワクチンウイルス
(岡株)は大阪大学名誉教授 故・高橋
理明博士らによって世界に先駆けて開発されました。水痘ワクチン開発までの道
のりをご紹介します。
◆開発のきっかけ∼長男の水痘罹患
1963∼65年の米国留学中、博士の3歳の長男が水痘にかかりま
した。全身に水疱が拡がり、高熱が3日も続きましたが、当時は対
症療法しかなく、博士は夜も寝ずにただ見守ることしかできませ
んでした。水痘は身近な軽い病気と考えられていましたが、重症
化する場合もあることを経験し、水痘ワクチンの開発を決意する
きっかけとなりました。
◆臨床試験(1974年∼)
臨床試験は健康児だけでなく、ハイリスク者である白血病児やネ
フローゼ児に対しても実施されました。
「免疫抑制者に接種する
のは危険である」
との反対意見も多くありましたが、着実に試験
成績を積み重ね、1986年、国内においてようやく認可され、1987
年に田辺製薬(現、田辺三菱製薬)から販売が開始されました。近
年では年間100万本近く供給されています。
◆水痘ワクチン開発の難しさ
水痘ウイルスは細胞親和性が強く、cell-freeのウイルスを得にく
いこと、
またヒトのみを宿主とすることから、
その他の動物細胞で
は増殖しづらい等の問題があり、
ワクチンの開発は容易ではあり
ませんでした。
◆岡株水痘ワクチン海外での実績
水痘ワクチンの開発は海外で
も大きな反響を呼び、米国お
よびヨーロッパでも試験接種
が実施され、認可されました。
現在では世界80カ国以上で使
用され、1億人以上の人が接
種を受けています。世界中で
使用されている水痘ワクチン
は全て高 橋 博 士 が 開 発した
『岡株』
を元に作られています。
◆水痘ワクチンウイルス岡株の誕生
様々な細胞を調べた結果、モルモットの胎児細胞ではある程度
の増殖が確認できたため、水痘ウイルスをヒト細胞およびモル
モット胎児細胞で数代継代して弱毒化したものをワクチンウイル
ス候補株としました。
この際用いたウイルスは、採取された少年
の名にちなみ、
『岡株』
と名付けられました。
ワクチンを接種する高橋博士
水痘ワクチンの製造方法
① 細胞培養
② ウイルス接種
③ ウイルス培養
④ ウイルスの採取
ウイルスを増殖させるため
の細胞(ヒト二倍体細胞)
を
培養し、増殖させます。
凍結保存してある弱毒生水
痘ウイルス(岡株)を取り出
し、細胞に接種します。
細胞の中でウイルスを増殖
させ、感染細胞とします。
衝撃を与えて感染細胞をバ
ラバラに細かくし、中のウイ
ルスを取り出します。
拡大写真
拡大写真
ざく
!
ひぃ∼!
ぼく細胞!
水痘ウイルス参上!
!
ざく
感染細胞
⑤ 精製・原液
⑥ 最終バルク
⑦ 小分け
⑧ 凍結乾燥
遠心機でウイルスと細胞の
カケラを分離し、
ウイルスの
みを集めます。
原液に安定剤等を加え、混
ぜ合わせます。
バイアル瓶に充填します。
凍結し、水分を蒸発させた
後、
キャップで閉じます。
⑨ 目視検査
⑩ 国家検定
⑪ 包装・出荷
製品に異常がないか、異物
が混入していないか、全て
のバイアル瓶を検査します。
厚生労働省の機関に送ら
れ、注射用水とともに品質
試験を受けます。
国家検定に合格した小分け
品は、検定合格証紙が貼ら
れ、出荷されます。
原液完成!
かん
せい
完成
!
ま〜す
いってき
水痘・インフルエンザワクチン工場見学
ウェブページで動画公開中!!
http://www.biken.or.jp/kengaku/
企画編集:一般財団法人 阪大微生物病研究会(http://www.biken.or.jp) 発行:一般財団法人 阪大微生物病研究会/田辺三菱製薬株式会社
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