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海岸堤防の被災パターン (1) 裏法尻の洗掘からの被災

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海岸堤防の被災パターン (1) 裏法尻の洗掘からの被災
海岸堤防の被災パターン
現地調査結果に基づき、海岸堤防・護岸の被災パ
ターンを以下のように分類した。
(1) 裏法尻の洗掘からの被災
(2) 裏法肩からの被災
(3) 津波の遡上による波返工の破壊
(4) 直立堤の転倒
(5) 破堤口の拡大
1
(1) 裏法尻の洗掘からの被災
(1) 裏法尻の洗掘
overflow
flow
破壊の進行
(2) 裏法被覆工の流失
津波の越流によっ
てできた溝
overflow
破壊の進行
(3) 堤体の流失
2
1
(2) 裏法肩からの被災
(1) 裏法被覆工の流失
flow
裏法被覆工の流
失
破壊の進行
明瞭な洗掘はない
(2) 堤体土の流失
破壊の進行
(3) 堤体土のさらなる
流失
天端被覆工の流失
3
(3) 津波の遡上による波返工の破壊
(1) 波返工への波力の作用
(2) 波返工の破壊
豊間海岸 (福島県)
4
2
(4) 直立堤の転倒
(1) 直立堤への波力の作用
overturning
(2) 直立堤の転倒
両石漁港海岸 (岩手県)
5
(5) 破堤口の拡大
海岸堤防陸側の溝
引き波
flow
sea
陸
侵食
繰り返し
押し波
sea
陸
侵食
堤防
破堤口付近の侵食
6
3
粘り強い構造の考え方
(海岸における津波対策検討委員会「平成23年東北地方太平洋沖地震及び
津波により被災した海岸堤防等の復旧に関する基本的な考え方」より)
• 「粘り強い構造」の基本的な考え方は、設計対象
の津波高を超え、海岸堤防等の天端を越流した
場合であっても、
• 施設が破壊、倒壊するまでの時間を少しでも長く
する、あるいは、
• 施設が完全に流失した状態である全壊に至る可
能性を少しでも減らす
• といった減災効果を目指した構造上の工夫を施
すことである。
7
粘り強く効果を発揮する海岸堤防の構造検討
対象:通常の海岸堤防(盛土により築造された台形断面の表面(表
法、天端、裏法)を被覆した三面張り構造)
着目点:裏法尻の洗掘と裏法被覆工の安定性
裏法被覆工の工夫・留意点
裏法尻の洗掘対策と
その留意点
8
4
実験施設
水路諸元:長さ40m、幅2m、高さ1.5m、最大流量:0.6m3/s
構造物実験水路(縮尺1/25)
堤防
堤防
側面より(左側が陸側、右側が海側)
高落差実験水路(縮尺1/2)
下流端から上流端を望む
下流端から上流端を望む
水路諸元:長さ45m、幅4.8m、高さ4.0m、最大流量:3.3m3/s
越流状況
9
模型実験等をふまえた構造上の工夫の留意点
(1)裏法および裏法尻での高流速
(2)裏法尻での洗掘と対策
(3)流れの中に置かれた構造物の不陸による構造物の不安定化とその
対策
(4)揚圧力への対応の必要性
(5)浸透水に対する堤防裏法尻での対応
(6)負圧への対応
※災害復旧において構造上の工夫を施すため、上記知見をまとめた技
術速報を本年5月14日、8月10日に発表
10
5
(1)裏法および裏法尻での高流速
(scale:1/25)
450
400
400
350
350
300
250
200
150
100
流速計算値(cm/s)
450
300
250
越流水深12cm
200
越流水深24cm
150
越流水深40cm
100
50
(3)
(4) (5)
越流水深12cm
越流水深24cm
越流水深40cm
50
0
(1) (2)
流速計算値(cm/s)
堤防高: 36cm
堤防高: 24cm
0
(1) (2)
流速
裏法上: 約2m/s (現地換算値:約10m/s)
裏法尻: 2.5-3.0m/s (現地換算値:12.515.0m/s)
(3)
(4) (5)
(3)
(1)
(4)
(5)
h
(2)
11
(1)裏法および裏法尻での高流速
(堤防高 24cm, 越流水深 40cm)
12
6
水位と断面平均流速の縦断方向分布
14
海側
陸側
q/h(m/s):堤防高6m
水位(越流水深1m)
水位(越流水深2m)
水位(越流水深3m)
q/h越流水深1m (m/s)
q/h越流水深2m (m/s)
q/h越流水深3m (m/s)
標高 (E.L.m)、 q/h (m/s)
12
10
8
6
4
2
0
-32
-28
-24
-20
-16
-12
-8
-4
0
4
縦断距離 (m)
q/h(m/s):堤防高6m
16
8
12
16
20
28
32
水位(越流水深10m)
水位(越流水深6m)
14
標高 (E.L.m)、 q/h (m/s)
24
海側
陸側
水位(越流水深2m)
12
q/h越流水深10m (m/s)
q/h越流水深6m (m/s)
10
q/h越流水深2m (m/s)
8
6
4
2
0
-32
-28
-24
-20
-16
-12
-8
-4
0
4
縦断距離 (m)
8
12
16
20
24
28
32
断面平均流速の現地換算値は10m/s程度に達する
13
(2)裏法尻での洗掘と対策
標高 (E.L.cm)
・裏法尻の基礎工近傍50cm(現地スケールで12.5m)ぐらいまでの平均的な洗掘深は,越流水
深とともに大きくなる傾向にある
・裏法勾配1:2より1:3の方が,洗掘範囲における最大洗掘深が小さいものの,洗掘範囲が広くな
る傾向が見られる
45
40
ガラス側壁から50cm(中央)での洗掘深(cm)
35
30
25
20
15
10
初期地形
5
0
-5
-10
-15
-20
-25
-30
-35
-40
-45
-50
-55
-300
-275
-250
-225
-200
-175
陸側
海側
堤体高36cm
越流水深4cm(1:2)
裏法勾配
1:2,1:3
越流水深8cm(1:2)
越流水深12cm(1:2)
越流水深24cm(1:2)
越流水深40cm(1:2)
越流水深4cm(1:3)
越流水深8cm(1:3)
越流水深12cm(1:3)
越流水深24cm(1:3)
越流水深40cm(1:3)
-150
-125
-100
-75
-50
-25
0
25
50
75
100
125
150
175
200
縦断距離 (cm)
14
7
保護工による裏法尻での洗掘防止
40
35
ガラス側壁から50cm(中央)での洗掘深(cm)
25
標高 (E.L.cm)
20
海側
陸側
30
越流水深8cm(現地スケールで2m)
堤体高36cm
裏法勾配1:2
15
10
ケース1(対策無し)[1通水のみ]
5
初期地形
ケース2(ブロック4連結+土被り4cm+フィルター層)
0
-5
ケース3(疑似アスファルト)
-10
-15
-20
-150
-125
-100
-75
-50
-25
0
25
50
75
100
125
150
175
200
縦断距離 (cm)
ケース3
ケース1
保護工による
洗掘防止
基礎工近傍
が洗掘
15
保護工がないケース
基礎工
越流による裏法尻の洗掘(ケース1)
16
8
保護工があるケース
保護工
基礎工
保護工による洗掘防止(ケース3)
17
高流速と洗掘に伴う不陸による保護工の流失
裏法被覆工
(固定条件)
保護工
(2t相当のブロック)
比高6m、越流水深2m(現地換算値)
18
9
裏法尻の工夫案
裏法尻で流れの向
きを変える
裏法被覆工
背後地盤
基礎工
・裏法を流下してきた越流水の流向を,地盤に突っ込まない向き(水平方向など)に完全に変える
ことが,洗掘影響を遠ざける上で重要
・高流速に加えて,流向を変えるための圧力が生じ,この構造体には非常に大きな流体力が作用
する
・大きな流体力による吸い出し等を防ぐという観点からは,構造体を水密性の高い材料から造るこ
とが有利である(ただし、浮力だけでなく,別途,揚圧力に対する構造体の安定性を確認すべき)
19
実験対象の構造(寸法は現地換算値)
5.0m
基礎工
2.25m
2.25m
1.0m
1.0m
5.0m
※裏法被覆のブロックの下にフィルター層(厚さ
0.5m)を設ける
2.25m
地盤改良(無・有)
20
10
裏法尻の平場の狭いケース(小規模実験)
基礎工
(比高20cm、越流水深40cm)
21
裏法尻の平場の広いケース(小規模実験)
地盤改良相
当部分
基礎工
地盤改良相
当部分
(比高20cm、越流水深40cm)
22
11
平場の効果(小規模実験)
(比高20cm、越流水深40cm、越流開始から20秒後の状況)
地盤改良により平場が広いケース
地盤改良なしの平場が狭いケース
平場4cm
平場13cm
裏法尻において越流水の方向が水平に近づい
ている
裏法尻において越流水が地盤に突っ込んでいる
基礎工近傍の洗掘が抑制され、基礎工が流失
しなかった
基礎工近傍の洗掘により、基礎工が流した
23
圧力分布との対比
越流水深が大きくなると、基礎工の平場(長さ1m)は、裏法尻周辺で圧力が局所的に高
くなっている範囲と比べて短くなってしまい、越流水の流向を十分に変えられない。
地盤改良の平場
基礎工の平場
海側
陸側
表面圧力・水位測定結果:堤防高6m
16
ピエゾ水頭(越流水深10m)
水位(越流水深10m)
14
ピエゾ水頭(越流水深6m)
標高 (E.L.m)
12
水位(越流水深6m)
ピエゾ水頭(越流水深2m)
10
水位(越流水深2m)
8
6
4
2
0
-32
-28
-24
-20
-16
-12
-8
-4
0
4
縦断距離 (m)
8
12
16
20
24
28
32
24
12
大規模実験のビデオ映像
裏法被
覆工
裏法被
覆工
基礎工
裏法被
覆工
基礎工
ケース1
(地盤改良無し)
基礎工
ケース2
(地盤改良有り)
ケース3
(地盤改良無し)
25
ケース1(正方形ブロック、地盤改良なし)
裏法被覆工が移動
射流
裏法被覆工
基礎工が移動
基礎工
越流前
越流開始から20秒後
39秒後
41秒後
26
13
ケース2(切り欠きブロック、地盤改良あり)
跳水が基礎工に
近づいていく
基礎工
射流
地盤改
良部分
越流前
越流開始から30秒後
越流開始から40秒後
地盤改良部分、基礎工とも流失せず、裏法被覆工は原形を留めた
27
ケース3(切り欠きブロック、地盤改良なし)
基礎工、裏法被覆工とも流失
ブロックが跳ね上
がる
切り欠き
ブロック
ブロックのような
ものが通過
基礎工
越流前
越流開始から100秒後
越流開始から105秒後
28
14
地盤改良有無の比較(洗掘・流失過程)
ケース2
地中及び被覆工等に設置した自記式加速度
計により、洗掘の進行状況及び被覆工等の流
失のタイミングを把握
越流開始から
10秒後
20秒後
30秒後
40秒後
50秒後
ケース3
100秒後以降に移動
越流開始から
30秒後
100秒後
60秒後
29
(3)流れの中に置かれた構造物の不陸による構造
物の不安定化とその対策
裏法被覆工に凹凸が生じると,流れによる力を
受ける
流体力をまともに受ける面を作らないこ
とが重要
凹凸がない場合
流下方向の抗力は
発生しない
逆段差の例
凹凸がある場合
流下方向の抗力が
発生する
隙間がある場合
流下方向の抗力が
発生する
ブロック形状の工
夫の一例
30
15
(4)揚圧力への対応と必要性
2cm×22.8cm
×1000kgf/m3
=4.56kgf/m
~
(2+8)cm×22.8cm
÷2×1000kgf/m3
=11.4kgf/m
空気圧の上昇
9cm
3cm
2cm
浸潤面の上昇
11cm
2cm×22.8cm
×2100kgf/m3
=9.576kgf/m
水圧
2cm
空気による揚圧力
5cm
~
11cm
2~8cm
水位差
保護工の自重
+水圧
揚圧力
裏法尻の保護工
跳水に伴う水位差による揚圧力
・空気圧を有害なレベルまで上げずに浸潤面上昇に伴う排気を許すような透過・透気性を被覆工
に持たせるという検討と工夫が重要
・裏法尻の保護工に水密性材料を用いる場合,跳水によって保護工の直上よりその陸側の方が
水位が高くなることによって揚圧力に対する考慮が必要
31
跳水に伴う水位差による揚圧力の影響
跳水に伴う水位差による揚圧力
32
16
(5)浸透水に対する堤防裏法尻での対応
津波の越流水位が堤防天端まで降下した時点において(高水位を経験した直後),裏法尻付
近の浸潤線が高くなって,浸透水が裏法尻付近から浸出し、この付近が泥状になり,裏法被覆
工が被災することも考えられる
→浸潤線の上昇を低減する構造とするなどの対策の検討が必要
陸
海
浸透水の浸出
裏法尻付近での浸潤
線の上昇
浸潤線
浸透流ベクトル
33
裏法尻からの吸い出しの例
残留水位による裏法尻からの吸い出しの例
34
17
(6)負圧への対応
裏法肩で負圧が発生している
裏法
表面圧力・水位測定結果:堤防高6m
16
天端
表法
海側
陸側
水位(越流水深10m)
ピエゾ水頭(越流水深6m)
14
水位(越流水深6m)
12
標高 (E.L.m)
ピエゾ水頭(越流水深10m)
ピエゾ水頭(越流水深2m)
水位(越流水深2m)
10
8
6
4
2
0
4
8
12
縦断距離 (m)
16
20
※現地換算値
負圧が発生する範囲を参考にして、天端被覆工と一体化する裏法被覆工の範囲を検討する
ことが望ましい
35
負圧に対する法肩部分の工夫例
流失
表法被覆工
天端被覆工
裏法被覆工
表法被覆工
法肩のブロックを天端被覆工と連結しないケー
ス
天端被覆工
裏法被覆工
法肩のブロックを天端被覆工と一体化したケー
ス
流失
法肩部分を
天端被覆工
と一体化
負圧に対する法肩部分の工夫案
36
18
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