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Multi-user Inscribing Cinema — 時系列共有

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Multi-user Inscribing Cinema — 時系列共有
平成 18 年度 公立はこだて未来大学卒業論文
Multi-user Inscribing Cinema
— 時系列共有インタラクティブ・シネマの制作 —
櫻庭 翼
情報アーキテクチャ学科
指導教員
1203009
迎山和司
提出日 2007 年 1 月 31 日
Multi-user Inscribing Cinema
— Interactive Cinema with Time-line Sharing —
by
Tsubasa SAKURABA
BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007
Advisor: Kazushi MUKAIYAMA
Department of Media Architecture
Future University - Hakodate
January 2007
Abstract–
This report aims at making an interactive cinema of multi-users interaction with ”time shifting” function.
An interactive cinema is movies that audiences’ operation can give a work changes. An interactive cinema is a generic name of a work that has cinematic elements, which content a story or
contextually consecutive images, and interactive elements for audience. An interactive cinema is
generally explained intermediate existence of a movie and a computer game.
Time shifting function is a system that records user’s interaction from the time of user’s
beginning, and reproducing an interaction recorded from another user’s beginning. The users
could share a fixed time mutually by time shifting function. The users can access multi-user
software with the time shifting function at free time without arranging date and time previously
beforehand, because users can share a constant time series mutually even if it is non-real-time.
Recently, a lot of users came to link up by the spread of the Internet. Moreover, by personalizing computers, a communication of information through the Internet became more personal.
A demand for software and contents that user do communications has raised more. Users came
to be able to receive information at their free time on the other hand. For the users to gather in
real time through the Internet is not to happen easily.
An interactive cinema that users do an interaction at the same time of virtual real-time space
was achieved with time shifting function. There were interests based on human’s connection in
a multi-user interactive cinema. Moreover, there were interests of the time sharing that exceeds
the time of users with time shifting function. This report requested to offer an interests with
interactive work to users without restraining time by combining a multi-user interaction with
time shifting.
Multi-user Inscribing Cinema ”One Day”, which was produced in this research, is an interactive
cinema work with time shifting function. ”One Day” is an interactive cinema work that diverges
a scene by a user’s operation. ”One Day” records tracks of user’s mouse cursor from beginning
a movie and displays tracks of a recorded mouse cursor in the same time-line. ”One Day” offers
the users a sense that two or more users are operating at the same time by displaying past user’s
mouse cursor.
This repot enumerates problems of ”One Day”; restraining a user during a fixed time and
feedback to a user’s operation was limited only to turning points of a scene. A theme of a
cinema that doesn’t restrain users time was searched and way of interaction at the time of
arbitrary of users was considered in a second work In addition, a second work is made users to
actually feel the time shifting function more, by changing a method of presenting the date and
time of recording past tracks.
Multi-user Inscribing Cinema ”One Day” was evaluated for an interactive work with the time
shifting function. A multi-user content that was able to share artificial real time was produced
by from the time shifting function. A new possibility of interactive content was searched in this
report.
Keywords: Interactive cinema, Multi-user, Time shift, Interaction history
概 要:
本研究は、タイムシフト機能を用いた複数人のインタラクションによるインタラクティブ・シネ
マを提案するものである。
インタラクティブ・シネマとは、鑑賞者が映像に働きかけをし、変化を与えることが出来る映
像作品である。インタラクティブ・シネマとは、物語性、あるいは文脈的に連続した映像・画像と
いう映画的な要素を持ち、ユーザの操作により映像、あるいは物語が変化する作品を総称であり、
一般的に映画とコンピュータゲームとの中間的な存在と説明される。インタラクティブ・シネマの
ようなユーザにバーチャルリアリティを提供する映画は、コンピュータが発展していない映画史の
初期から存在していた映画の最終目標のひとつであった。
タイムシフト機能とは、ユーザのインタラクションを特定の開始時点から時系列に記録し、別の
ユーザの開始時点から記録されたインタラクションを再現することで、ずれた時間軸でユーザ同士
が一定時間を共有することのできるシステムである。タイムシフト機能により、非リアルタイムで
もユーザ同士が一定の時系列を共有することができるため、マルチ・ユーザを想定したソフトウェ
アでも各ユーザは事前に日時を示し合わせることなく、自分の自由な時間にアクセスすることがで
きる。
近年、インターネットの普及により、多くの人間同士がつながりを持つようになった。また、情
報端末の個人化によってインターネットを通した情報の送信、受信がよりパーソナルなものにな
り、ユーザがコミュニケーションを行うマルチ・ユーザを想定したソフトウェアやコンテンツの需
要がより高まっている。一方で、情報端末の個人化により、個人の任意の時間に情報を送受信する
ことが可能となった。インターネットを通してリアルタイムにユーザ同士が集まるということは起
こりにくいことである。
タイムシフト機能を用いることで、複数人が擬似的なリアルタイム空間で同時にインタラクショ
ンを行うインタラクティブ・シネマを実現する。複数人が同時にインタラクションを行うインタラ
クティブ・シネマに、人間同士のつながりを基本とした面白さがあると考えた。また、タイムシフ
ト機能自体に、ユーザ同士の時間を越えた擬似的なリアルタイムの共有という面白さがある。複数
人によるインタラクションと、タイムシフト機能を組み合わせることで、ユーザにインタラクティ
ブ作品の新しい面白さを時間的に拘束することなく提供することを求めた。
本研究で制作した Multi-user Inscribing Cinema「One Day」は、タイムシフト機能を用いたイ
ンタラクティブ・シネマ作品である。One Day はユーザの操作によってシーンが分岐し、途中経
過、エンディングが変化するインタラクティブな映像作品である。One Day ではユーザのマウス
カーソルの軌跡をソフトウェア中の映像の開始時点から記録し、記録されたマウスカーソルの軌跡
を同時系列で再生する。過去のユーザのマウスカーソルを表示することで、複数のユーザが同時に
操作を行っているような感覚をユーザに提供しようと考えた。
また、本論分では One Day の問題点として、ユーザを一定時間拘束しなければならない点と、
ユーザの操作に対してのフィードバックがシーンの分岐点のみに限られていたことを挙げ、改良案
として第 2 次作品を提案する。第 2 次作品ではユーザを時間的に拘束しない映像のテーマを探り、
ユーザの任意の時点でのインタラクションを考察する。さらに、過去の軌跡を記録した日時の提示
方法を変更することで、タイムシフト機能をより実感させるものにする。
本研究を通して、インタラクティブ作品にタイムシフト機能を用いることに対する評価を頂い
た。タイムシフト機能を用いることで擬似的なリアルタイムを共有できるマルチ・ユーザシステム
を制作でき、インタラクティブなコンテンツの新しい可能性を探ることができた。
キーワード: インタラクティブ・シネマ, マルチ・ユーザ, タイムシフト, インタラクション・ヒス
トリ
Multi-user Inscribing Cinema
目次
第 1 章 序論
1.1 背景 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1.2 目標 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1
1
2
第 2 章 インタラクティブ・シネマ
2.1 インタラクティブ・シネマとは . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2.2 ジャン=ルイ・ボワシエのインタラクティブ・シネマ作品 . . . . . . . . .
3
3
5
第 3 章 タイムシフト機能
3.1 タイムシフト機能とは . . . . . . . .
3.2 タイムシフト機能を使用した関連研究
3.2.1 VirtualSynchroChat . . . . .
3.2.2 Video Comments plug-in . .
3.2.3 ニコニコ動画 . . . . . . . . .
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第4章
4.1
4.2
4.3
Multi-user Inscribing Cinema
コンセプト . . . . . . . . . . . . . . .
実装方法 . . . . . . . . . . . . . . . . .
作品「One Day」 . . . . . . . . . . . .
4.3.1 タイムシフト機能の実装 . . . .
4.3.2 画面遷移 . . . . . . . . . . . . .
4.3.3 シーン分岐とインタラクション
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11
11
12
12
12
12
第5章
5.1
5.2
5.3
考察と今後の展望
「One Day」の評価と考察 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
改良案と今後の展望 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
結言 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
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BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007
Tsubasa SAKURABA
Multi-user Inscribing Cinema
第 1 章 序論
本章では、1.1 節で本研究の背景を述べる。1.2 節で本研究の目的を述べる。
1.1
背景
近年、情報端末のモバイル化、個人化により、ソフトウェアを通した個人同士の情報の
共有、交換の需要が高まっている。インターネット、情報通信機器の普及により、個人が
情報ネットワークを通してより多くの個人とつながりを持つことが可能となった。総務省
の発表した「平成 17 年通信利用動向調査の結果」[1] によると、2005 年末時点では、6 歳
以上でパソコン、携帯電話、ゲーム機等により過去 1 年間にインターネットを利用したこ
とのある人口は推計 8529 万人で、インターネットの人口普及率は推計 66.8 %となって
いる。2005 年末の人口普及率は 2004 年末の結果から 4.5 ポイントの増加となっており、
1997 年から一様に増加傾向にある。また、2005 年末時点での情報通信機器の世帯保有率
は、パソコンが 80.5 %、携帯電話が 89.6 %であり、「大半の世帯に普及」と述べている。
インターネット対応型のゲーム機器に関しても、11.1 %であり、ほぼ 10 人に 1 人が所有
しているという結果がでている。パソコンや携帯電話、インターネット対応型のゲーム機
器などの端末をほぼ 1 人が 1 端末を持つまでに普及したことにより、ネットワーク上での
1 端末が 1 個人を表すようになった。
インターネットを通した情報の送信、受信がよりパーソナルなものになり、ブログ、SNS
などの Web2.0 コンテンツの人気も高まって来ている。本論文で述べるコンテンツとは、
プログラムやデータなどの中で、見える、聴こえるなどの人間の感覚で解る形によりユー
ザに提示される内容のことを指す。2005 年 5 月に総務省が発表した「ブログ・SNS(ソー
シャルネットワーキングサイト)の現状分析及び将来予測」[2] によると、2005 年 3 月末
時点の国内ブログ利用者数は約 335 万人、SNS 利用者は約 111 万人であり、さらに 2007
年 3 月にはブログ利用者は 782 万人、SNS 利用者は 1042 万人になるという予想を述べて
いる。また、ネットワーク端末は PC に限らず、機能を限定したモバイルな端末の開発・
普及により、場所、時間を選ばずに個人の任意なタイミングでの情報の送受信が可能とな
り、ソフトウェアを通した個人同士の共有はより身近なものとなった。ゲームという分野
でいうと、携帯電話の通信アプリ、任天堂のニンテンドー WiFi コネクションなどがある。
一方で、端末の個人化により、個人の任意の時間に情報を送受信することが可能となっ
た。インターネットを通してリアルタイムにユーザ同士が集まるということは起こりにく
いことである。
1
BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007
Tsubasa SAKURABA
Multi-user Inscribing Cinema
1.2
目標
本研究では、複数人が同時系列でインタラクションを行うインタラクティブ・シネマ作
品「Multi-user Inscribing Cinema」の制作を行う。
複数人のインタラクションにより変化するインタラクティブ・シネマを考えるとした場
合、ユーザは同じ時間にリアルタイムでインタラクションを行う必要がある。本研究では、
ユーザのインタラクションを映像の開始時点から時系列に記録し、次のユーザが映像を開
始したときに過去のユーザのインタラクションを同時系列に再生するソフトウェアを制作
する。ユーザは同じ時間に映像を開始しなくても、他のユーザと擬似的なリアルタイムを
共有することができる。
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BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007
Tsubasa SAKURABA
Multi-user Inscribing Cinema
第 2 章 インタラクティブ・シネマ
本章では、2.1 節でインタラクティブ・シネマについて述べる。2.2 節でインタラクティ
ブ・シネマ作品を紹介する。
2.1
インタラクティブ・シネマとは
インタラクティブ・シネマとは、鑑賞者が映像に働きかけをし、変化を与えることが出
来る映像作品である。インタラクティブ・シネマは一般的に映画とコンピュータゲームと
の中間的な存在と説明される。映画のように、物語性、あるいは文脈的に連続した映像・
画像という要素を持ち、コンピュータゲームのようにユーザの操作により映像、あるいは
物語が変化する作品を総称してインタラクティブ・シネマと呼ぶ。インタラクティブ・シ
ネマとは総称であり、どの程度まで映画的、或いはインタラクティブな要素を持っていれ
ばインタラクティブ・シネマなのかという定義は統一されてはいない。
インタラクティブ・シネマについてまとめた論文に、イギリスのヨーク大学の卒業生で
あるブラディ・ハモンド(Brady Hammond)の”HOW I LEARNED TO STOP WORRYINGAND LOVE INTERACTIVE CINEMA”[3] がある。ハモンドは論文内でアンド
レ・バザン(Andre Bazin)の”Myth of Total Cinema.”[4] を引用し、インタラクティブ・
シネマはバザンの Total Cinema の近似であると述べている。アンドレ・バザンは 20 世紀
中期のフランスの映画評論家、理論家であり、映画評論の代表的人物である。バザンが唱
えた Total Cinema とは、現実世界のイメージの全てを完全に再構成することであり、さ
らに Total Cinema において鑑賞者は作り手の意思や時間の非可逆性に遮られることなく
自身のイメージで自由に世界を再構築することができるとした。バザンの完全映画という
思想は、簡単に言い換えると、仮想現実を疑似体験させる「バーチャルリアリティ」の考
え方である。
バザンは映画の最終的目標を文章によって提唱した最初の一人に数えられるが、バザン
の提唱した完全映画のような鑑賞者にヴァーチャルな現実空間を提供しようとする考えは、
まだコンピュータが発展していない映画史の初期の段階から存在していた。1995 年の秋
にに NTT インターコミュニケーション・センター [5] から発行された「季刊インターコ
ミュニケーション No14 特集 映像メディアのアルケオロジー」[6] の中の特集「映画の出
現が意味するもの 小松弘」では、フランス人ラウール・グリモワン=サンソン(Raoul
Grimoin-Sanson)が映画技術によって鑑賞者に擬似現実体験を与えようとした一人であ
ると書かれている。グリモワン=サンソンは 1900 年のパリ万国博覧会で、10 台の映写機
により 360 度方向に映像をパノラマ投映する「シネオラマ」という装置を発表した。(図
2.1)パリ万国博覧会で発表されたシネオラマの映像は、グリモワン=サンソンが気球に
乗って上空から撮影した映像であり、スクリーンの内側中央に作られた気球を模した場所
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Tsubasa SAKURABA
Multi-user Inscribing Cinema
から鑑賞者が映像を観るという作品であった。360 度方向に投影された上空からの動く実
写映像は、鑑賞者にあたかも現在自分が気球旅行をしているのではないかという錯覚を体
験させた。
図 2.1: シネオラマ
現在行われているインタラクティブ・シネマ研究の中にも、シネオラマと同様に 360 度方
向に映像を投影するインタラクティブ・シネマ装置”AVIE”[7] がある。AVIE(Advanced
Visualisation and Interaction Environment)は 2004 年にオーストラリアのニューサウス
ウェールズ大学の The iCinema Centre for Interactive Cinema Research によって制作さ
れた。AVIE はインタラクティブな映像の制作を想定して作られたものであり、巨大な円
筒形のスクリーンにプロジェクターによって 360 度方向に映像を映し出し、鑑賞者は円筒
形の内側を自由に歩き回って映像を観る。さらに、鑑賞者の位置をセンサーにより特定し、
それにより映像に変化をもたらす仕組みである。(図 2.2)
図 2.2: AVIE
また、アメリカのマサチューセッツ工科大学の MIT Media Laboratory the Interactive
Cinema Group[8] では、コンピュータによって自動的に物語を作成するツールや作品の制
作という視点からインタラクティブ・シネマ研究を行っていた。物語を自動で作成する作
品においては、映像の再生中は鑑賞者は単に映像を観るだけである。しかし、映像の開始
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Tsubasa SAKURABA
Multi-user Inscribing Cinema
時点で自動生成することを鑑賞者のインタラクションと考えることにより、物語を自動で
作成する作品もインタラクティブ・シネマのひとつの形と言える。
2.2
ジャン=ルイ・ボワシエのインタラクティブ・シネマ作品
ジャン=ルイ・ボワシエ(Jean-Louis Boissier)はフランスのメディア・アーティスト
である。ボワシエはグラフィックデザイン、写真、実験映画などを背景として、芸術表現
におけるインタラクティビティ影響を研究し、1980 年代からコンピュータによるインタラ
クティブな芸術作品を発表してきた。
ボワシエのインタラクティブ・シネマ作品に、18 世紀のフランスの思想家であり詩人で
あるジャン・ジャック=ルソー(Jean-Jacques Rousseau)を基にした「ルソーの時」[9, 9]
がある。「ルソーの時」はルソーの詩作品をソフトウェア上で本のように表現したもので
あり、文章と共にその情景を撮影した映像を表示した作品である。(図 2.3))映像は一定
のシーンをループしており、マウスカーソルをロールオーバーさせると映像のシーンに変
化が起こる。文章の中の特定の単語にマウスカーソルをロールオーバーさせると、その単
語から連想される別の文章へとリンクがされるという仕組みになっている。また、文章の
改ページはマウスカーソルを本をめくるように左右に移動させて行うというインタフェー
スとなっている。
図 2.3: 「ルソーの時」の画面
ボワシエの別のインタラクティブ・シネマの試みとして、2005 年に行われたワークショッ
プワークショップ「Instants en suspens: クロノ・インタラクティヴによる点と線」があ
る。
(図 2.4)このワークショップで作られたインタラクティブ・シネマ作品は「緊張」をモ
チーフとした短い映像作品である。作品は時間的に連続した実写画像で構成されており、
鑑賞者が映像と繋がれたデバイスを操作している間は映像の中の時間が正の方向へ進んで
行き、操作を止めると映像の中の時間が負の方向へと戻っていく仕組みとなっている。ま
た、映像が特定の時間まで進むと、その後は鑑賞者の操作に関わらず映像が進行していく。
この仕組みと、緊張をテーマとした映像を組み合わせることで、鑑賞者は自分が映像の中
の出来事に直接触れて影響を及ぼしているような感覚を作り出そうとした。
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Multi-user Inscribing Cinema
図 2.4: ワークショップの風景
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Multi-user Inscribing Cinema
第 3 章 タイムシフト機能
本章では、3.1 節でタイムシフト機能について述べる。3.2 節でタイムシフト機能を使用
した関連研究を紹介する。
3.1
タイムシフト機能とは
本研究で述べるタイムシフト機能とは、ユーザのインタラクションを特定の開始時点か
ら時系列に記録し、別のユーザの開始時点から記録されたインタラクションを再現するこ
とで、ずれた時間軸で複数のユーザ同士が一定の時間を共有することのできるシステムの
ことである。タイムシフト機能により、非リアルタイムでもユーザ同士が一定の時系列を
共有することができるため、マルチ・ユーザを想定したソフトウェアでも各ユーザは事前
に日時を示し合わせることなく、自分の自由な時間にアクセスすることができる。
タイムシフト機能の特徴はユーザの操作を「時系列に記録する」ことと、ユーザの自由
な時間に「参加」できることにある。チャットや掲示板、ブログや或いは得点を記録する
ゲームなど、現行あるシステムでユーザの操作を記録するものの多くは、単純にユーザの
結果を記録するものが多い。ユーザの結果を記録するだけのものと、タイムシフト機能で
のユーザの操作の記録との違いを、簡単に道に付いた一人の人間の複数の足跡という例を
使用して説明する。道に着いた足跡は、過去のユーザが歩いた結果の記録である。後から
足跡を見るユーザにとって、過去のユーザの結果だけが見えるのであり、その過去のユー
ザが実際にはどのような順番で足跡を付けたのかまでは解からない。複数の足跡を付ける
という行為は、間違いなく時系列に発生する行為だが、時系列に記録しない限りにおいて、
実際に同じ日時に同じ場所に居合わせなければ、別のユーザがその時系列を共有すること
はできない。
時系列にインタラクションを記録し、且つ、ユーザが参加できるものでなければならな
い。時系列に記録された情報という観点では、映画のフィルムや音楽の CD など、現在に
も多く存在する。しかし、通常においてユーザは映画や音楽に参加するのではなく、観る、
聞くという第 3 者の立場で利用する。足跡の例を使用すれば、道に足跡が付いていく映像
が画面上に写し出されただけではユーザは参加できない。足跡の映像のすぐ近くに実際の
足跡があったとしても、ユーザが出来ることは付いた足跡の上から自分の足跡を付けるこ
としか出来ないのであり、この場合、ユーザは結果を書き換えただけで、参加したとは言
い難い。もし道の足跡にタイムシフト機能を利用するならば、ユーザが道の前に立った時
点で、過去のユーザの足跡が道の上に時系列に付いていくというシステムになる。掲示板
など現在多くあるユーザの操作を記録するものにおいても、時系列の記録ということは時
間的に細かく結果を残すことで可能ではある。しかし、細かく行う分で記録に手間が掛か
るという点と、後から来た別のユーザの行える操作は過去のユーザの結果のすぐ下に自分
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の操作を追加するということだけであるので、その別のユーザは同じ時系列に参加したと
いうことにはならない。
3.2
タイムシフト機能を使用した関連研究
タイムシフト機能を用いた関連研究として、VirtualSynchroChat[11]、Video Comments
plug-in[12]、ニコニコ動画 [?] を紹介する。
3.2.1
VirtualSynchroChat
VirtualSynchroChat とは、チャットログを時系列に記録、再生するチャットシステムで
ある。(図 3.1)
ユーザの発言と、ユーザがチャットルームに入室した時点からの発言のタイミングを記
録し、別のユーザが入室した時点から過去のユーザのチャットログを同じタイミングで表
示することで、ユーザに過去のユーザと同時にチャットをしている感覚を与える。
図 3.1: VirtualSynchroChat のチャット画面
3.2.2
Video Comments plug-in
Video Comments plug-in とは、WordPress というブログシステム用の映像表示のため
プラグインであり、映像に対するコメントの発言のタイミングを記録するシステムである。
(図 3.2)
発言されたコメントは一覧で表示されるが、発言が行われた実際の年月日や時刻順に
ソートされるのではなく、映像の開始時点から発言されるまでのタイミングによりソート
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Multi-user Inscribing Cinema
される。コメントは映像と対応されており、映像の時間軸が発言されたタイミングにくる
とコメントがハイライトされる。また、コメントがタブになっており、コメントをクリッ
クすることで、そのコメントが発言された時間軸に映像をシークすることができる。
図 3.2: Video Comments plug-in の画面
3.2.3
ニコニコ動画
ニコニコ動画は、映像とコメントとを一つまとめた web 上での動画再生とコミュニケー
ションのためのシステムである。(図 3.3)
ニコニコ動画では過去にコメントが発言されたタイミングを映像中の時間軸と対応させ
て記録しており、映像を再生することでユーザは発言された同じタイミングでタイムシフ
トされたコメントを観ることができる。コメントの表示方法に特徴があり、過去に発言さ
れたコメントは映像上にテロップのように表示される。コメントによるテロップの提示方
法はユーザによって選択することが可能であり、文字の色や大きさの選択、右から左へと
スクロールして表示する、映像の下部に表示するなどをユーザはコメントする際に選択す
ることが出来る。
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図 3.3: ニコニコ動画の画面
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Multi-user Inscribing Cinema
第 4 章 Multi-user Inscribing Cinema
本章では、4.1 節で Multi-user Inscribing Cinema の作品コンセプトについて述べる。
4.2 節で Multi-user Inscribing Cinema の制作に使用したツールについて述べる。4.3 節で
Multi-user Inscribing Cinema の具体的な作品内容について述べる。
4.1
コンセプト
複数人によるインタラクションと、タイムシフト機能を組み合わせることで、インタラ
クティブ作品の新しい面白さを求めた。ユーザのインタラクションをソフトウェアの開始
時点から時系列に記録し、次のユーザがソフトウェアを開始したときに過去のユーザのイ
ンタラクションを同じ画面で同時系列に再生することで、一定時間を過去のユーザと現在
ソフトウェアを実行したユーザとで擬似的なリアルタイムを共有する。
タイムシフト機能を用いることで、ソフトウェア上で一つの作品に対する人間同士のコ
ミュニケーションを実現したいと考えた。さらに、一つの作品に対する人間同士のコミュ
ニケーションにより、コンテンツ制作の可能性を求めた。特にインターネットを利用した
コンテンツ上で、ユーザ同士が出会う条件は限定されている。システムが大規模なもので、
参加ユーザが多数なものの場合では、ユーザが入れ替わりで常時一定数以上のユーザ数
を期待できる。しかし、常時一定数以上のユーザを期待できるコンテンツはインターネッ
ト上にある全てコンテンツの中の極限られたコンテンツであり、多くの場合は 1 人以上の
ユーザが常時存在していることまでは期待できない。タイムシフト機能を使用することで、
ユーザ数の少ないコンテンツにおいてもマルチ・ユーザのコンテンツを擬似的に作り上げ
ることができる。
4.2
実装方法
Multi-user Inscribing Cinema の制作には、Adobe Flash[14] と Java 言語を使用した。
Adobe Flash はアメリカの Adobe Systems 社(旧 Macromedia 社)により開発されたベ
クターグラフィックによるコンテンツ制作ツールである。元来はアニメーション制作ツー
ルであったが、ActionScript と呼ばれるスクリプトによりコンテンツを制御でき、ゲーム、
インタフェース、広告バナーと幅広いコンテンツの制作が可能である。インターネットと
の親和性によってインターネット上で多く用いられるようになった。Adobe Flash コンテ
ンツの再生には Flash Player が必要となる。Java 言語は、アメリカの Sun Microsystems
社 [15] によって開発されたオブジェクト指向プログラミング言語である。Java 言語にある
org.eclipse.swt.ole.win32[16] という eclipse プラグインを用いて、java アプリケーション上
で swf ファイルを再生し、Adobe Flash と Java 言語間で変数の受け渡し行う。Adobe Flash
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Tsubasa SAKURABA
Multi-user Inscribing Cinema
の ActionScript2.0 で行うことのできないファイルの書き出し処理を Java 言語で行った。
4.3
作品「One Day」
Multi-user Inscribing Cinema「One Day」は、タイムシフト機能を用いたインタラク
ティブ・シネマ作品である。One Day は物語がひとつだけではない映像作品となってお
り、ユーザの操作によってシーンが分岐し、途中経過、エンディングが変化する。
4.3.1
タイムシフト機能の実装
One Day はユーザのマウスカーソルポインタの軌跡をソフトウェア中の映像の開始時点
から記録する作品である。また、One Day では記録されたマウスカーソルの軌跡を同時系
列で再生することでタイムシフト機能を実装し、複数のユーザが同じ時間に操作を行って
いるような感覚をユーザに提供しようと考えた。ユーザのマウスカーソルの x 座標と y 座
標を時系列に記録していき、別のユーザが映像を開始させたときに、記録した x,y 座標上
に同じ時系列でカーソルポインタを表示する。表示するカーソルポインタは、現在のユー
ザと同じシーンにある過去のユーザの軌跡のみであり、シーン分岐によって別のシーンを
辿っているカーソルポインタは表示されない。マウスカーソルの軌跡は 1/30 秒単位で記
録、表示する。
4.3.2
画面遷移
One Day には大きく分けて 3 つの画面がある。各画面を、「ようこそ画面」「ロビー画
面」「映像画面」とする。
ソフトウェアを起動すると、ようこそ画面が表示される。(図 4.1)ようこそ画面では
ユーザにユーザ名を入力することを促す。入力されたユーザ名により、ユーザのカーソル
ポインタの色が決まる。ユーザ名を入力するとロビー画面に遷移する。
(図 4.2)ロビー画
面では現在記録されている過去のユーザのマウスカーソルの軌跡について、記録された日
時などの情報を見ることができる。ロビー画面でプレイボタンを押すと映像画面へと遷移
する。
(図 4.3)映像画面は、ユーザのインタラクションをおこなう画面であり、Multi-user
Inscribing Cinema の基本となる画面である。映像が終了すると、ソフトウェアは自動で
現在ユーザのマウスカーソルの軌跡を保存する。軌跡の保存後、ようこそ画面へと遷移し、
別のユーザの入力を待つことになる。
4.3.3
シーン分岐とインタラクション
ユーザのソフトウェアとのインタラクションは特定のシーン遷移のタイミングで特定
の座標域をクリックするかしないかにより行われる。映像画面でのシーン分岐は図 4.4 の
通りとなっている。シーンは全部で 6 つあり、1 つのオープニングから 3 つのエンディン
グへと分岐し、映像には 4 通りの辿り方がある。各シーンの時間は表 4.1 の通りである。
4.3.1 で述べた通り、過去のカーソルポインタは現在シーンと同じシーンを辿っているも
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Tsubasa SAKURABA
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図 4.1: 「One day」ようこそ画面
図 4.2: 「One Day」ロビー画面
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図 4.3: 「One Day」映像画面
ののみが表示される。そのため、シーン分岐を多くし過ぎると、カーソルポインタが広く
散らばってしまうため、現在ユーザに提示されるカーソルポインタの数が少なくなる。し
かし、シーン分岐を少なくすると、ユーザがインタラクションを行う機会も少なくなる。
カーソルポインタの表示数と、インタラクションの機会数とを考え、6 シーンとした。
表 4.1: 各シーンの時間
シーン 時間
1
2
3
4
5
6
0:12
1:06
1:03
1:12
0:16
0:35
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図 4.4: 「One Day」シーン遷移
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Multi-user Inscribing Cinema
第 5 章 考察と今後の展望
本章では Multi-user Inscribing Cinema の評価、考察と今後の展望を述べ、結言を述べ
る。5.1 節で研究室展覧会にて、実際に Multi-user Inscribing Cinema をユーザに体験し
てもらった結果と考察を述べる。5.2 節で Multi-user Inscribing Cinema の改良案と今後
の展望について述べる。5.3 節で本研究の結言を述べる。
5.1
「One Day」の評価と考察
2006 年 11 月 27 日から 12 月 1 日まで公立はこだて未来大学にて行われた「アート・コ
ンピューティング迎山和司研究室作品展」にて展示し、ユーザの操作している様子を観察
した。(図 5.1)
図 5.1: 作品展の風景
展覧会を通して、インタラクティブ・シネマにタイムシフト機能を用いることに対して
は面白い試みであるという意見を頂いた。しかし、実際に One Day を操作しているユー
ザの様子を観察した結果、ユーザが映像の終わりになる前に席を立っていたことが見られ
た。原因として、One Day がひとつのストーリーを持った作品のため、ユーザを一定時
間拘束しなければならない点がある。また、別の問題点として、ユーザの操作に対しての
フィードバックが、シーンの分岐点のみに限られており、シーンの分岐点以外の時間では
ユーザはただ映像を観ているしかなかったこともある。さらに、タイムシフト機能として
表示されていたカーソルポインタについても、ユーザの多くにカーソルポインタが過去の
ユーザの軌跡である事を理解することが難しいという意見も頂いた。改良点として、ユー
ザの鑑賞時間を自由にすることと、ユーザと映像とのインタラクションを変更することが
ある。
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Multi-user Inscribing Cinema
5.2
改良案と今後の展望
One Day の評価を元に、改良案として Multi-user Inscribing Cinema の第 2 次作品を提
案する。One Day の問題点として挙がったユーザとソフトウェアとのインタラクション
について、ユーザの任意の時点でのインタラクションを実現する。また、映像のテーマを
ユーザを時間的に拘束しないものへと変更し、ユーザの鑑賞時間を任意の時点で終了させ
ることのできるものへとする。One Day では、開始のシーンと終了のシーンを厳格に決め
ていたが、どのシーンで終了しても違和感を覚えさせないテーマを選択する。さらに、タ
イムシフト機能への理解を強くする点として、One Day ではロビー画面でのみ表示してい
た過去のユーザのソフトウェア起動日時を映像中でも表示することで、過去の軌跡として
表示されているカーソルポインタと現在時刻との相違を提示するものにする。
ユーザの任意の時点でのインタラクションに関して、ユーザがシーン間を任意の時間に
遷移できるようにする。One Day では開始のシーンから終了のシーンまでをひとつの流
れとして提示したため、各シーンの終了時点でのみインタラクションが限られていた。第
2 次作品ではユーザの操作によってシーンを遷移するようにする。シーンの遷移を図 5.2
に示す。図 5.2 は画面上の手の形状が変化するのではなく、手が 4 本用意されていて、マ
ウスカーソルが空間的に移動してシーンが変わることを示す。シーンは全部で 4 つあり、
ユーザはマウスカーソルを画面端側へ持っていくことにより次のシーン、或いは前のシー
ンへと遷移していく。
画面上の手の形状が変化するのではなく、マウスカーソルが空間的に移動する
図 5.2: 第 2 次作品のシーン遷移案
また、各シーンの中にもインタラクションを行うことの出来るギミックを用意する。画
面上の特定範囲をマウスクリックすることによって、特定のアクションをするようにする。
(図 5.3)映像はシーン遷移によってのみ進行するのではなく、マウスクリックによるアク
ションを加えることで進行していくものとする。アクションは基本的に 2 極になっており、
状態 1 のときにマウスクリックすると状態 2 となり、状態 2 のときにマウスクリックすると
状態 1 になる、ということを繰り返す。状態から状態へ変化している最中はマウスクリッ
クを受け付けない。なお、過去のユーザのマウスポインタもインタラクションに影響する
ので、タイムシフトによるインタラクションの相乗効果が期待される。
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Multi-user Inscribing Cinema
図 5.3: マウスクリックによる手の変化例
5.3
結言
本研究では、タイムシフト機能を用いたマルチ・ユーザを想定したインタラクティブな
作品「Multi-user Inscribing Cinema」を制作した。また、インタラクティブ作品にタイム
シフト機能を用いることに対して良い評価を頂いた。
タイムシフト機能を用いることで、ユーザは自由な時間にマルチ・ユーザコンテンツを
楽しむことができる。近年、コンピュータの発展により、ユーザが任意の時間にアクセス
できるコンテンツが多くなった。ユーザは自分の生活サイクルに合った時間にコンテンツ
を起動できることに利便性を覚えている。そのため、マルチ・ユーザコンテンツを考えた
とき、同日時刻にユーザ同士が出会うことは起こりにくいこととなった。また、ユーザに
日時を指定するコンテンツは常時アクセスできるコンテンツと比べて不便であると言える。
タイムシフト機能は、インタラクションの時系列な記録と再生による擬似的なリアルタイ
ムの共有により、ユーザの時間を束縛しないマルチ・ユーザコンテンツを可能にした。
Multi-user Inscribing Cinema では、ユーザのマウスカーソルの動きを記録していくこと
で複数のユーザが同時にソフトウェアを操作しているような感覚を表現した。マウスカー
ソルはユーザの操作が直接的に反映されるものであり、マウスカーソルの動きを記録する
ことで計算された動きではなく、迷いなどの人の意思が感じられるインタラクションを表
現した。また、時系列で連続的に動く操作を再生することにより、ユーザにソフトウェア
を操作している人間を意識させることを期待した。評価として行ったソフトウェアの展示
では、ユーザのほとんどが表示されるマウスカーソルの動きが別のユーザによるものであ
ることを理解した。
タイムシフト機能により、ユーザは時間差で擬似的なリアルタイムを共有でき、インタ
ラクティブなコンテンツに複数のユーザを参加させることが出来る。本研究で、インタラ
クティブ・コンテンツの新しい面白さを探ることが出来ると感じた。
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Tsubasa SAKURABA
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謝辞
本研究を進めるにあたり、ご指導いただいた迎山和司助教授(公立はこだて未来大学)
に深く感謝いたします。また、本研究に多くの助言を頂いた迎山研究室の、古川千尋さん、
芳賀匡平さん、加藤瑞樹さん、宮腰麻知子さん、中村俊介さん、中谷洋輔さんに感謝いた
します。
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Tsubasa SAKURABA
Multi-user Inscribing Cinema
参考文献
[1] 『総務省(報道資料)平成 17 年通信利用動向調査の結果』
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060519 1.html
[2] 『総務省(報道資料)ブログ・SNS(ソーシャルネットワーキングサイト)の現状
分析及び将来予測』
http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/050517 3.html
[3] Brady Hammond:『HOW I LEARNED TO STOP WORRYING AND LOVE INTERACTIVE CINEMA』
http://www.interactivecinema.org/files/bjh25IC.pdf
[4] Andre Bazin. ”What is Cinema? Volume I”. Translated by Hugh Gray. Berkeley:
University of California Press, 1967.
[5] 『NTT インターコミュニケーション・センター』
http://www.ntticc.or.jp/
[6] 『InterCommunication No.14 1995. Autumn』NTT 出版
http://www.ntticc.or.jp/pub/ic mag/ic014/contents j.html
[7] 『AVIE』
http://www.icinema.unsw.edu.au/projects/infra avie.html
[8] 『the Interactive Cinema Group』
hhttp://ic.media.mit.edu/
[9] ルソーの時―インタラクティヴィティの美学伊藤 俊治 (著), レイモン ベルール (著),
白井 雅人 (著), ジャン=ルイ ボワシエ (著), 永守 基樹 (著), Raymond Bellour (原著),
Jean‐Louis Boissier (原著)
[10] ”Moments de Jean-Jacques Rousseau”
http://www.gallimard.fr/multimedia/html/Rousseau.html
[11] 『VirtualSynchroChat』
http://www.limo.fumi2kick.com/fbbs/lmwiki.rhtml?topic=VirtualSynchroChat
[12] 『ITP Research ≫ Video Comments, a WordPress Plugin』
http://itp.nyu.edu/research/?page id=34
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Tsubasa SAKURABA
Multi-user Inscribing Cinema
[13] 『ニコニコ動画 (β)』
http://www.nicovideo.jp/
[14] 『Adobe Systems Incorporated(アドビ システムズ社)』
http://www.adobe.com/jp/
[15] 『Sun Microsystems』
http://www.sun.com/
[16] 『org.eclipse.swt.ole.win32(Eclipse Platform API Specification)』
http://download.eclipse.org/eclipse/downloads/documentation/2.0/html/plugins/
org.eclipse.platform.doc.isv/reference/api/org/eclipse/swt/ole/win32/packagesummary.html
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Tsubasa SAKURABA
Multi-user Inscribing Cinema
図目次
2.1
2.2
2.3
2.4
シネオラマ . . . . . .
AVIE . . . . . . . . .
「ルソーの時」の画面
ワークショップの風景 .
.
.
.
.
.
.
.
.
3.1
3.2
3.3
VirtualSynchroChat のチャット画面 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8
Video Comments plug-in の画面 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9
ニコニコ動画の画面 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10
4.1
4.2
4.3
4.4
「One
「One
「One
「One
5.1
5.2
5.3
作品展の風景 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16
第 2 次作品のシーン遷移案 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17
マウスクリックによる手の変化例 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18
day」ようこそ画面
Day」ロビー画面 .
Day」映像画面 . .
Day」シーン遷移 .
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4
4
5
6
13
13
14
15
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Tsubasa SAKURABA
Multi-user Inscribing Cinema
表目次
4.1
各シーンの時間 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14
23
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