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(H、I会場)(PDF/約8.9MByte)
H-01
厨房油脂排水の生物学的処理に関する研究
(高知高専専攻科建設工学専攻 1,高知高専環境都市デザイン工学科²
高知高専ソーシャルデザイン工学科 3)
○畠中亮子 1・松浦拓実 2・山崎慎一 3
キーワード:厨房油脂排水,グリストラップ,生物学的処理,メタンガス
1.緒言
飲食店などの排水に含まれる油脂は,汚水管
の詰まりや悪臭発生の原因となるため,グリス
トラップによって油脂分離を行って合併浄化
槽や下水道などで処理される.この分離された
油脂は産業廃棄物として業者が定期的に回収
して,脱水,乾燥,焼却,埋め立ての工程で処
分されるが,油脂の減量化は容易ではないこと,
焼却による CO₂排出による環境影響,埋め立
て地の確保難などの課題を抱えている.
本研究では,食堂厨房施設のグリストラップ
から採取した排水を使用して,オゾン処理後に
嫌気性反応槽と好気性反応槽を組み合わせた
室内実験装置を用いて連続実験を行い,処理水
質の確認とメタン回収の可能性について検討
を行った.
2.実験方法
図 1 に室内連続実験装置の概要を示す.実験
では,高知高専学生寮食堂より排出される排水
を使用した.原水槽では連続的にオゾン含有空
気(4ppm, 42L/min)でエアレーションを行い,嫌
気性反応槽は,1 槽目 5L,2 槽目 7L の 2 槽直
列とした.発生したメタンガスは,湿式ガスメ
ーターで計測し,ガス組成はガスクロマトグラ
フィーで分析した.好気性反応槽は,槽内にス
ポンジ担体を担体内水容量 10.8L で充填した.
実験は平成 28 年 4 月 5 日から 8 月 27 日までの
144 日間行い,HRT を 1 槽目嫌気槽において運
転開始時は 16.8hr,32 日目以降は 8.4hr,70 日
目以降は 5.6hr に設定し,運転期間中は各反応
槽を 25℃以上に維持させた.
⑥
⑥
①
③
⑦
③
⑧
④
②
⑤
⑤
①オゾン発生装置②原水槽③供給ポンプ④沈殿槽
⑤嫌気性反応槽⑥脱硫槽⑦ORP計⑧好気性反応槽
図 1 省エネ型生物処理の室内実験装置
3.実験結果と考察
図 2 に原水及び各処理水の CODcr の変化を
示す.原水は採取日によってその成分や濃度が
異 な り , 全 運 転 期 間 中 の CODcr は 100 ~
800mg/L の範囲で大きく変動した.処理水質は
1 槽目嫌気槽,2 槽目嫌気槽,好気槽の順で向
上し,
最終の好気処理水では,CODcr で 30mg/L
以下の安定した水質を得ることができた.
図 3 に嫌気槽におけるメタンガス発生量の
変化を示す.発生ガスの組成分析は運転 66 日
目より行ったが,原水が低濃度であったため転
換されたメタンが処理水中に溶存流出してガ
スとしての発生量は非常に少なかった.しかし,
131 日目からは,ガスとしてメタンの発生が認
められるようになり,ガス中のメタン含有率は
1 槽目嫌気槽で 60%程度(2 槽目嫌気槽では
30%程度)を確認した.
図 2 原水及び各処理水の
CODcr の経日変化
図 3
嫌気槽におけるメタンガ
ス発生量の経日変化
4.結言
原水濃度の比較的高くなった運転後期に好
気処理水は CODcr 30mg/L 以下の安定した水質
を得ることができた.また,この期間でメタン
ガスの生成を確認し,1 槽目嫌気槽のメタン含
有率は 60%程度を確認した.今後は,CODcr
容積負荷をさらに増加させ,処理水質及びメタ
ンガス発生の変化を確認していく予定である.
なお,本研究は科学研究費助成金(基盤研究
C,課題番号 15K00647)で実施されたもので
ある.
お問い合わせ先
氏名:山崎慎一
E-mail:[email protected]
H-02
簡易のり枠工ののり面補強効果について
(明石高専・都市システム工学科)
○村井臣成・藤澤敦士・鍋島康之
キーワード:簡易のり枠工,斜面崩壊,剛性,のり面補強効果,のり面工低減係数
1.はじめに
現在,斜面の崩壊を防ぐための対策工として
のり枠工が多用されている。しかし,小規模な
斜面にまで適用されるなど費用対効果の面か
ら見直しが必要とされている。そこで,小規模
な斜面に適用するため簡易的なコンクリート
のり枠工が提案されているが,こののり枠工は
既に一部で使用されているものの,その補強効
果は明らかにされていない。よって本研究では
簡易のり枠コンクリート工の表層補強効果の
推定を目的とする。
2.研究概要
本研究では,小規模な斜面崩壊を再現するた
め,切土模型を作製した。試料土にはまさ土を
用い,最適含水比で最大乾燥密度になるように
締固めた。模型斜面の中央には,斜面と平行な
崩壊部(幅 200mm,深さ 165mm)を作製し,
内部には摩擦低減のためビニールを貼り付け
た。斜面崩壊実験ではこの部分を仮想すべり面
として実験を行った。実験ではのり枠工に見立
てた厚さ 0.5,1.0,3.0mm のアルミ板を用意し,
剛性による補強効果の比較を行った。いずれの
ケースも補強材は直径 3mm,長さ 200mm の真
鍮針金を斜面に垂直に 3 行×3 列で挿入し,中
央部の補強材には表面工背後と奥行き 100mm
の位置にひずみゲージを貼り付けた。図 1 に表
面工及び補強材の寸法を示す。
(a) 実験装置の概要及び寸法
(b) 掘削方法
(c) 崩壊時の様子
図 2 斜面崩壊実験の概要
3.実験結果及び考察
今回の崩壊実験では図 2(c)に示すように,表
面工周辺で崩壊が制御でき,補強効果が確認で
きた。図 3 はアルミ板 3.0mm の崩壊実験で得
られたひずみ量と下部掘削量の関係である。
3.0mm の場合,他のケースと比べて徐々にひず
み量が増加する。これは表面工の剛性が大きい
ため,表面工の補強効果が大きく,補強材が
徐々に変形していくことがわかる。のり面工低
減係数を求めたところ,約 0.6 が得られた。
図 1 表面工及び補強材の寸法
図 3 斜面崩壊実験の概要
図 2 は斜面崩壊実験の概要である。図 2(a)
に示すように,補強材は崩壊部中央に補強材 3
本が位置するように挿入した。斜面上に補強材
および表面工を設置した後,図 2(b)に示すよう
に中央部のまさ土下端を 25mm ずつ掘削する
ことで溝内の土塊にすべりを発生させ,このと
きの斜面崩壊状況の観察及び補強材に作用す
るひずみ量を測定した。
4.まとめ
上記の試験結果より,のり枠工の剛性が増加
するほど表層補強効果が増大することがわか
った。のり面工低減係数はアルミ板 3.0mm で
約 0.6 が得られた。
問い合わせ先
氏名:鍋島康之
E-mail:[email protected]
H-03
内部亀裂を有するコンクリートの音響による振動特性
(明石高専・都市システム工学科)
○上杉潤矢・鍋島康之
キーワード:覆工コンクリート,レーザードップラー振動計,音響反射,内部亀裂,維持管理
1.はじめに
近年,建設後 50 年以上が
経過した道路施設が増加し
ている。特に,トンネルに
ついては覆工コンクリート
の剥離などが問題となって
おり,維持管理や補修修繕
が重要な課題となってい
る。覆工コンクリートの内
部点検は打音検査が主流で
あるが,点検の効率化を図
るため非接触・非破壊で検
図 1 LDV
査できる手法としてレーザ
ー ド ッ プ ラ ー 振 動 計 ( 図 1 , Laser Doppler
Vibrometer,以下 LDV)を用いた検査が可能か
を判断する。本研究では,内部亀裂を有したコ
ンクリート供試体に音響による振動を加え,そ
れを反 LDV で測定し,振動特性を検証する。
2.研究概要
本研究で用いる LDV は,レーザーを照射し
ている点の振動速度と変位を検出可能な装置
である。測定点が振動している場合,反射した
レーザーはドップラー効果によって周波数が
変化する。この変化を感知することで検出が可
能となっている。
覆工コンクリートの内部亀裂を模した空隙
を有するコンクリート供試体(100×100×100
mm)を作成した。内部には縦 100mm,横 20mm,
厚さ 1mm の空隙を深さ 5,10mm に配した供
試体と深さ 10mm で空隙の方向に角度をつけ
た供試体を作製した(図 2 参照)。
め,10-6m/s の微小な振動を測定できる。
図 3 試験装置概要
3.実験結果および考察
図 4 に亀裂がない場合(0mm)と亀裂の深
さ 5,10mm の供試体を用いた場合の測定結果
を示す。内部亀裂が無い場合,135,155,175Hz
で振動速度が大きくなる傾向を示し,内部亀裂
が表面から 5mm にある場合は振動速度が大き
くなる周波数は変化しないものの,亀裂が無い
供試体と比べて,155Hz では振動速度が大きく,
175Hz では振動速度が小さくなった。また,亀
裂深さが 10mm の場合は,5mm の場合と比べ
て 165Hz でも振動速度が大きくなる傾向が得
られた。
図 4 亀裂の有無,深度による振動特性
図 2 コンクリート供試体の寸法
図 3 は試験装置の概要を示している。コン
クリート供試体を吸音材を貼り付けた防音箱
内に固定し,斜め下方向から周波数 100~
200Hz のサイン波形の音波をスピーカーから
照射し,その際の供試体表面の振動速度を測
定した(図 3 参照)。LDV の精度は測定距離
に依存するが,今回は近距離で測定したた
4.まとめ
内部に亀裂を有するコンクリート供試体の
音響反射による振動特性を計測した。内部亀裂
の有無による振動特性の差を LDV で検知でき,
基礎的な挙動について確認することができた。
問い合わせ先
氏名:鍋島康之
E-mail:[email protected]
H-04
海水マグネシウム系固化材コンクリートを用いた
舗装の利用に関する検討
(徳山高専専攻科環境建設工学専攻 1,徳山高専土木建築工学科2,宇部マテリアルズ(株)3)
○原田哲志 1・橋本堅一2・阿野憲一3
キーワード:Mg 固化材,Mg コンクリート,ヒートアイランド,表面温度,保水性
1.緒言
ヒートアイランド現象の原因の一つとして,地
表面被覆の人工化による夜間の気温低下の妨害
が挙げられる.本研究で扱うマグネシウム系固化
材(以下,Mg 固化材と示す)は保水性・透水性
に優れ,既に土舗装の固化材として実用化されて
いる.この固化材を用いた土舗装(以下,Mg 土
舗装と示す)はヒートアイランド現象を抑制する
効果が確認されているが,経年変化や環境変化の
影響を受けやすいことや,車両荷重に適さないと
いった問題を有している.そこで, 今回は Mg
固化材をセメントの代わりに結合剤として用い
たコンクリート及びモルタル(以下,Mg コンク
リート,Mg モルタルと示す)を用いた舗装の比
較実験を行い,主にヒートアイランド抑制に対し
てどのような効果があるか検討したのでその一
部を報告する.
上昇が緩やかとなり,Mg コンクリート舗装とモ
ルタル舗装は,Mg 土舗装より表面温度上昇を抑
える効果が得られた.また,保水特性に関しては
20 日経過した時点で保水を終えた Mg 土舗装に対
し,Mg コンクリートと Mg モルタルは1カ月経過
後も保水状態にあった.
45
表
面
温
度
(
℃
)
40
35
30
25
20
8
12
16
20
24
測定時刻(時)
200
2.実験概要
2.1 実験条件
作成する舗装供試体の寸法は 1000×1000×
150mm(W×D×H)とし,Mg 土舗装,セメントコ
ンクリート舗装,Mg コンクリート舗装,Mg モル
タルで表面仕上げを施した Mg モルタル舗装の 4
種類で比較を行った.配合設計について,Mg コ
ンクリートおよび Mg モルタルは既往の研究から
安定して強度とワーカビリティーを得られるも
のを基準とした.また,Mg 土舗装は既に実用化
されているものを使用し,コンクリート舗装はス
ランプ値を基準として配合設計を行った.
2.2
表面温度測定及び保水性試験
ヒートアイランド抑制の効果を検討するため,
表面温度の測定および保水性試験を行った.表面
温度の測定については30分間散水を行い,舗装
表面に取り付けた温度センサーを用いて 1 時間
ごとに 0.1℃まで測定した.また,保水性試験は,
舗装打設時にそれぞれ不透水層を設けた保水性
供試体を作成し,湿潤状態から経過日数ごとの重
量を測定することで保水性を検討した.
減
少
し
た
水
分
量
(
g
)
150
100
50
0
0
5
10
15
経過時間(日)
20
25
図-1(上)表面温度の変化
(下)保水量と保水時間
4.まとめ
今回の実験から,Mg 固化材を用いたコンクリ
ート及びモルタル舗装は一般的なコンクリート
舗装や Mg 土舗装に比べ温度上昇を抑え,ヒート
アイランド抑制に対し優れた特性があることが
確認できた.その要因の1つとして保水期間が長
いことが影響していると考えられる.
舗装の特性について,さらに検討を進めること
で,環境に対して優れた特性を持つコンクリート
舗装の実現が可能である.
3.実験結果
図-1 に表面温度の変化と保水性試験の結果を
示す.散水後しばらくはコンクリート舗装が最も
低温であったが,その後 Mg を用いた舗装の温度
30
お問い合わせ先
氏名:原田哲志
E-mail:[email protected]
H-05
赤外線センサ搭載ドローンによる
鉄筋コンクリート構造物の非破壊検査
(鈴鹿高専電子情報工学科1)
○清水大地 1・板谷年也1
キーワード:赤外線センサ,鉄筋コンクリート,ドローン,非破壊検査
1.緒言
現在鉄筋コンクリートの劣化診断の多くは
危険な場所で長時間かけて行われている。その
ため人に代わる検査用ロボットや現場検証シ
ステムの開発が進められている。これらのロボ
ットで飛行体の場合,外観性状を把握するセン
サはカメラが多いため,鉄筋コンクリート表面
の劣化診断に限られており,鉄筋コンクリート
構造物の内部の鉄筋まで劣化診断可能な方法
が求められている。本研究は,ドローンに鉄筋
コンクリート構造物の内部の鉄筋まで劣化診
断可能なセンサを搭載し,人が簡単に近づけな
い場所の劣化診断ができることを目的とする。
2.ドローンによる劣化診断システムの開発
ドローン,Raspberry Pi,ノート PC,Wi-Fi
ルータ,赤外線センサから構成される鉄筋コン
クリート構造物の劣化診断システムを開発す
る。ドローンは,プロポにより操作し,PC と
Raspberry Pi 間の通信は Wi-Fi ルータを用い
てネットワークし,赤外線センサを制御する。
ネットワークを介すことで劣化のデータを蓄
積することを可能とする。
果,ドローンを上昇させることはできたが,姿
勢維持を行うことまでは難しかった。
3.2 鉄筋コンクリートの加熱実験
縦 180mm,横 200mm,高さ 75mm,表面
から鉄筋までの深さ 20mm の鉄筋コンクリー
トを製作した。ヒーターとコントローラ
(Temperature Controller Omron 社)によって
鉄筋コンクリートを 15 分間加熱し,その表面
温度を赤外線カメラ(C2 FLIR 社)で測定した。
図3に赤外線カメラで取得した鉄筋コンクリ
ートの表面温度分布を示す。ヒーターで加熱し
た部分のみが温度が上昇しており均一に加熱
することは難しかった。
図2:加熱実験の模様
図3:鉄筋コンクリート表面の温度分布
図1:ドローンによる劣診断システム
3.実験
3.1飛行実験
ドローンをブラシレスモーター,ESC(E310
DJI 社),フライトコントローラー(MultiWii
SE V2.5)を用いて自作した。モーターのピッチ、
ロール,ヨー調整し飛行実験を行った。その結
4.結言
現状では赤外線カメラをドローンに搭載し
て飛行できておらず,赤外線カメラを有線で接
続している。今後,ドローンに搭載するために
は赤外線カメラを無線で制御する予定である。
お問い合わせ先
氏名:清水大地
E-mail:[email protected]
H-06
あと施工アンカーの施工部が鉄筋コンクリート部材の
耐久性に及ぼす影響の評価
舞鶴高専
高専専攻
専攻科
総合システム工学専攻建設
建設工学
工学コース
(舞鶴
高専
専攻
科総合システム工学専攻
建設
工学
コース 1,
舞鶴高専建設システム工学科
舞鶴高専建設システム工学科 2)
○福徳真奈美 1 毛利聡 2
キーワード:コンクリート,あと施工アンカー,中性化,鉄筋腐食,耐久性
1.背景と目的
建物の長寿命化に伴い,あと施工アンカーの使
用増加が予想されるが,アンカーが施工された母
材コンクリートの耐久性の検討は十分ではない
のが現状である。そこで本研究では,金属系あと
施工アンカーが施工された部分の鉄筋コンクリ
ート部材の中性化及び内部の鉄筋腐食について
実験的に評価することを目的とする。
2.実験概要
2.1 試験体概要
試験体形状を図 1 に示す(以下,「アンカー試
験体」)。使用したあと施工アンカーの性状を表 1
に示す。試験体は,表 1 のあと施工アンカーを打
設したもの,アンカー孔の穿孔のみしたもの,内
部コーン打ち込み式アンカーのねじ部をシーリ
ング材で補修したもの,アンカー打設等の加工を
していないものを各一体ずつ作製した。
2.3 繰り返し塩水浸漬試験
13 週間の促進中性化試験後,アンカー試験体
側面をエポキシ樹脂で改めてシールし,アンカー
打設面を,塩水を張った水槽に浸漬させる。塩水
は 5%食塩水とする。試験は温度 20℃一定の恒温
室内で行い,浸漬 2 日間,乾燥 5 日間を 1 サイ
クルとし,これを 13 サイクル繰り返す。
試験後,アンカー試験体を割裂二分し鉄筋を取
り出す。鉄筋は発錆状況観察後,錆落としを行い,
質量を測定する。試験前後の鉄筋質量から質量減
少率を求め,発錆の程度を評価する。
3.促進中性化試験結果と考察
図 3 の左に促進中性化 13 週におけるアンカー
試験体の表面から着色部までの距離,右に芯棒打
ち込み式アンカーを打設した試験体における測
定結果を促進中性化期間で比較したものを示す。
A B C D E
d
57
13
シール
さび止め塗布
80
150
コンクリート
鉄筋
20
2
106
146
150
・立断面
20
2
単位:mm
・平面図
図 1 アンカー試験体
表面から着色部までの距離
表面から着色部までの距離(mm)
D
F G H
I
J
A B C D E
K
0
0
10
10
20
20
30
30
40
40
50
50
F
G H
I
J
K
60
60
内部コーン打ち込み
芯棒打ち込み
打設なし
6週目
13週目
表 1 アンカー性状
アンカー種類
ボルト径(mm) 穿孔径D(mm)
心棒打ち込み式
内部コーン打ち込み式
10
10
10.5
13.0
穿孔深さd
埋め込み深さ
(mm)
(mm)
50.0
40.0
40.0
40.0
2.2 促進中性化試験
試験条件は温度 20℃,60%RH ,CO₂濃度 5%
とした。促進中性化試験後,アンカー試験体を割
裂二分し断面にフェノールフタレイン溶液を噴
霧する。図 2 に示す位置の中性化深さを測定する。
15 15 15 15 15 15 15 15 15 15
150
A BCDE FGH I J K
単位:mm
150
図 2 中性化深さの測定位置
図 3 促進中性化試験結果
(左:アンカー別,13 週
右:芯棒打ち込み式アンカー,6・13 週)
図 3 左に示すように,各試験体で中性化が進ん
でいることが確認できる。また,図 3 右に示すよ
うに,6 週と比較して,13 週ではアンカー部周
辺(D~H)の中性化がその他の部分(A~C/I~K)
に比べてより進んでいることが確認できる。これ
らのことから,アンカー部周辺はその他の部分と
比べて早期に中性化が進行する可能性があると
考えられる。
お問い合わせ先
氏名:毛利聡
E-mail:[email protected]
H-07
炭酸ナトリウムを混合した
セメントベントナイト系注入材の開発
(明石高専都市システム工学科 1,明石高専専攻科建築・都市システム工学専攻 2)
○橋本功 1・中瀬悠也2・稲積真哉1
キーワード:炭酸ナトリウム,セメントベントナイト,早期強度発現,材料分離
1.
はじめに
本研究では、セメントベントナイト系注入材の
材料分離抑制及び早期強度発現の効果が期待さ
れる添加剤として炭酸ナトリウムに着目した。炭
酸ナトリウムを混合したセメントベントナイト
系注入材の有用性を検討するため、注入材の流動
性、材料分離、強度特性の観点において炭酸ナト
リウムを混合したセメントベントナイト系注入
材の比較実験を行った。
度発現時期が早いことが確認できる。また、各材
齢強度を比較すると A-20 が A を上回っており、
これらの傾向は配合 B と B-20 の比較においても
同様に確認できる。
2.
試験概要
表-1 の配合条件に設定した供試体に対し、以
下の試験を実施する。配合条件は設計基準強度を
0.5(N/mm2)として設定している。
図-1 一軸圧縮試験
4.
2.1. 一軸圧縮試験および貫入試験
直径 50mm、高さ 100mm の供試体を作成し、
20℃の恒温室で 7、14、28、60、90、120 日間
養生して一軸圧縮試験を行う。また、貫入試験は
試料混合直後から 30 分、1、2、3、4,5,6,7,
8、12、24 時間における抵抗値を、簡易測定器を
用いて計測する。
2.2. ブリージング試験
日本工業規格(JIS A1123)『コンクリートのブ
リージング試験方法』に基づきブリージング率を
求め、材料分離の有無を判断する。
2.3. フロー試験
土木学会基準(JSCE-F521)『プレパックドコン
クリートの注入モルタルの流動性試験方法(P 漏
斗による方法)』に基づき、試料の初期状態にお
ける流動性を評価する。
表-1 配合条件
配合 ベントナイト セメント 炭酸ナトリウム
水
水セメント比
3
3
(%)
№
(㎏/m3) (㎏/m3)
(㎏/m ) (㎏/m )
A
50
240
0
905
377
A-20
50
240
20
897
374
B
50
300
0
886
295
B-20
50
300
20
878
293
3. 炭酸ナトリウム混合注入材の強度特性
図-1 の配合 A と A-20 の材齢 7 日強度の比較よ
り、炭酸ナトリウムを混合した供試体の方が、強
炭酸ナトリウム混合注入材の流動性および
材料分離
表-2 より、フロー試験について、各配合にお
いて P 漏斗降下時間が 7.7 秒前後であり、炭酸ナ
トリウムを混合することによる流動性の低下は
見られず、作業性は確保できているといえる。ブ
リージング試験について、配合 A、B では時間の
経過とともにブリージング率が上昇しているの
に対し、A-20、B-20 では 1 時間後以降ブリージ
ングを起こしていない。
表-2 流動性,ブリージング試験
配合 フロー値
№
(秒)
ブリージング率(%)
1時間後
3時間後
24時間後
A
7.7
3.6
9.3
9.5
A-20
7.6
0.5
0.0
0.0
B
7.8
4.0
9.5
9.8
B-20
7.6
0.4
0.0
0.0
5. おわりに
本研究では、セメントベントナイトに炭酸ナト
リウムを混合することで強度発現の早期化、材料
分離抑制の効果を発揮することが確認できた。今
後は化学的観点から炭酸ナトリウムを混合する
ことによるセメントの硬化機構の解明が必要で
ある。
お問い合わせ先
氏名:橋本功
E-mail:[email protected]
H-08
重金属汚染土壌に対する不溶化処理メカニズムの解明と
不溶化材の高度化に関する研究
(明石高専 都市システム工学科 1,明石高専 専攻科 建築・
都市システム工学専攻 2)
○岡田雄臣 1・納庄一希 2・稲積真哉 1
キーワード:重金属汚染土壌,不溶化,不溶化機構,溶出試験
1.
はじめに
近年,人為的な開発に関係のない有害物質(重
金属イオン等)が土壌内に存在する場合があり,
この自然由来の重金属含有土壌および岩石によ
る土壌汚染が顕在化している。平成 22 年に法改
正が実施されたことにより,法改正建設工事を遂
行するにあたり,自然由来の汚染土壌に遭遇した
場合には,汚染土壌に対する対策が必要である。
本研究では,新規不溶化材を用いて重金属の不
溶化効果に関する溶出試験等を実施し,汚染土壌
中の重金属の不溶化効果とともに不溶化機構を
化学・鉱物学的に解明する。
2.
新規不溶化材の特徴
本研究において配合試作する不溶化材-A は,
石灰を主成分とするため,カルシウム成分が主体
となり,そこに金属元素を混合させたものである。
不溶化材-B は不溶化材-A と比較して,金属元素
の中でも酸を示す金属成分の配合量が増加して
おり,また,マグネシウム成分を新たに配合して
おり,これらが主成分のひとつを構成する。
として不溶化材-A は主成分がアルカリ質である
ことが考えられる。また,不溶化材-B を添加した
場合,土壌 pH が低下傾向にある。この要因とし
て,不溶化材-B は不溶化材-A に比べて、酸を示
す金属成分の配合量が増加していること,そして
マグネシウム成分を添加したことにより、pH 緩
衝作用が働いたことが考えられる。
4.3 長期耐候性試験
図-1 は,酸・アルカリ添加溶出試験結果を示し
ている。不溶化材-A 添加後,酸およびアルカリ
の外的刺激に曝された場合は,砒素の溶出量が土
壌環境基準値を上回っている。一方,不溶化材-B
添加後は,酸およびアルカリの外的刺激に曝され
た場合でも不溶化効果を維持する。
0.010
土壌環境基準値
3.
試験概要
不溶化材の不溶化効果を評価・検討するため,
砒素(As)による汚染土壌に対して,不溶化材‐A
および B を添加し溶出試験,pH 試験そして長期
耐候性試験を実施する。試料土の物理的試験は,
地盤工学会発刊土質試験の方法と解説により実
施した。なお,溶出試験については土壌汚染対策
法,pH 試験は懸濁法,長期耐候性試験は(社)土壌
環境センターの基準により実施した。
5.
4. 試験結果と考察
4.1 溶出試験
溶出試験の結果では,各不溶化材においても,
砒素の不溶化効果を確認することができた。砒素
に対する不溶化要因として,水酸化鉄鉱物と砒素
の表面錯体形成がある。いずれの不溶化材におい
ても,水酸化鉄鉱物であるシュベルトマナイトが
土壌中で生成され,錯体が形成し,砒素が吸着さ
れたと考えられる。
4.2 pH 試験
pH 試験結果は,不溶化材-A を添加した場合,
対象土壌に比べて土壌 pH が上昇する。この要因
お問い合わせ先
氏名:岡田雄臣
E-mail:[email protected]
図-1 外的刺激の条件下における不溶化材-A
および B に対する砒素溶出量
まとめ
不溶化効果に関しては,砒素のみの比較である
が,不溶化材-A および B のともに同等の不溶化
効果が得られた。また,処理後の土壌 pH におい
て,不溶化材-A は上昇傾向にあるのに対し,不
溶化材-B は低下傾向にある。さらに不溶化材-B
は,長期的にも不溶化効果を維持する。今後は,
更なる不溶化メカニズムの解明,他種および複数
種の重金属汚染土壌に対する不溶化効果等の検
討が必要である。
H-09
コンクリート実構造物における温度ひび割れに
関する解析的研究
(徳山高専専攻科環境建設工学専攻 1,徳山高専土木建築工学科2)
○山門健人 1・田村隆弘2・島袋淳2
キーワード:内部拘束,外部拘束,外気温,初期温度
1.はじめに
マスコンクリートでは建設初期段階で温度
ひび割れが発生する。温度ひび割れには 2 種類
あり,セメントと水の水和反応熱により温度上
昇する際の構造物中心と表面との温度差によ
る膨張量の違いによって引張応力が生じ,ひび
割れる内部拘束型ひび割れと温度上昇後の温
度降下において地盤や既設構造物により構造
物下部において拘束を受けることで引張応力
が生じ,主に断面を貫通して発生する外部拘束
型ひび割れである。温度ひび割れの発生の予測
は,長年にわたり国内でも土木学会や建築学会
JCI 等で活発に行われているが,内部拘束,外
部拘束によるひび割れに関して,それぞれ正確
な発生条件が明らかになっていないのが現状
である。また,構造物初期温度や外気温の大き
さの影響による温度ひび割れの起こりやすさ
についても明らかになっていない。
本研究では,解析ソフトを用いた,温度応力
解析を行い,外気温,構造物初期温度の大きさ
が構造物における内部拘束,外部拘束によるひ
び割れの発生に与える影響について明らかに
した。
2.解析概要
温度応力解析には,有限要素法(FEM)を用
いたコンクリート構造物専用の 3 次元温度応
力解析ソフトを使用した。構造物の温度条件,
力学条件を設定し,温度ひび割れについて解析
し考察した。解析における物性値は日本コンク
リート工学会のマスコンクリートのひび割れ
制御指針 20081)に準じて行うものとする。ま
た,解析モデルは内部拘束,外部拘束によるひ
び割れが発生しやすい橋脚形式とした。
3.ひび割れ発生確率
解析におけるひび割れの発生確率はコンク
リートの材齢に伴い大きくなる引張強度とセ
メントの水和反応熱により発生する引張応力
の比である式-(1)に示すひび割れ指数として
定義された。
𝑓𝑡𝑘 (𝑡)
𝐼𝑐𝑟 (𝑡) =
𝜎𝑡 (𝑡)
(1)
ひび割れ指数が 1 のとき引張強度と引張応力
が均衡しているため,ひび割れ発生確率は
50%となる。ひび割れ指数が 0.6 を下回るとひ
び割れ発生確率は 100%となる。本解析では,
このひび割れ指数をもとに構造物のひび割れ
発生確率を明らかにした。
4.解析パターン
表-1 に解析パターンを示す。解析パターン
は,構造物の厚さ,長さ,高さ,外気温,初期温度
をパラメータとした全 180 パターンである。
表-1 解析パターン
長さ(m)
1,2,4
厚さ(m)
1,2,4,8
高さ(m)
1,2,3,4,5,6
初期温度(℃)
15,20,25,30,35
外気温(℃)
15,20,25,30,35
打設間隔(日)
7
5.結論
温度応力解析により得られた結果より,以下
に結論を示す。
(1) 構造物初期温度が高くなると,構造物内部
の最高温度が高くなり,構造物表面との温
度差が大きくなるため,外部拘束によるひ
び割れが発生する可能性が高まる。
(2) 外気温が低くなると,構造物表面が冷やさ
れ,構造物内部との温度差が大きくなるた
め,外部拘束によるひび割れが発生する可
能性が高まる。
(3) 内部拘束によるひび割れは,構造物内部と
表面の温度差の違いによる膨張量の違い
よりも,内部の温度上昇量による膨張によ
って発生する可能性が高い。
参考文献
(1) 日本コンクリート工学会:マスコンクリー
トのひび割れ制指針,2008
お問い合わせ先
氏名:山門健人
E-mail:[email protected]
H-10
波浪による由良川河口砂州の発達動態に関する模型実験
(明石高専都市システム工学科 1,舞鶴高専建設システム工学科2)
○浅井惣一郎 1・上坂すず2・神田佳一 1・三輪浩2
キーワード:河口砂州,河川防災,模型実験,波浪,由良川
1.はじめに
京都府北部に位置する由良川の河口部では,
河川流と海岸波浪の影響による砂州の発達・消
失などの地形変動が活発である.2004 年台風
23 号以降に,河岸両岸から発達していた砂州
が右岸側に集中し,河川流が左岸側に偏奇した
ため,河川防災上の問題が指摘されている.本
報では,現地河道を模した模型実験より,波浪
の波向角度と河口地形が河口砂州の発達,形成
にどのような影響を与えるかを検討する.
3.実験結果及び考察
実験結果を図-2 に示す.いずれのケースも
波浪によって海底や河口域の砂が河道部に運
ばれて堆積し河口砂州を形成していることが
分かる.波向き角度の違いによる砂州形状を比
較すれば(図-2(a-1)及び(b-1))
,θ=0°の場合
においては,砂州は河口部の 2m 上流の河道部
両岸に形成されているが,θ=15°の場合には,
河口部左岸から波に平行して帯状に砂州が発
達しており,その堆積量もθ=0°の場合より
も多い.
2.実験概要
河口部右岸に固定マウンドを設置した場合
実験では,図-1に示す幅0.98m,長さ4.13m
(a-2,θ=0°)には,右岸上流部の砂州は消
河道部を水平とし,幅2.88m,長さ1.21m,海
失し,左岸側の砂州も下流側にシフトしている.
底勾配1/20の海岸部を有する実験水路を用い
固定マウンドの上流部では僅かに砂が堆積し
て,海岸線に対する波向き角度と河口砂州形状
ているが,河床位は水面下にある.θ=15°に
の関係について検討した.河道部は河床材料と
なると,
(b-1)と同様に,河口域に大きな砂洲
して,平均粒径d=1.3mmの石炭粉(比重S=1.47,
が(浮州)が形成されるが,その位置は,
(b-1)
限界摩擦速度U*C=1.44cm/s)を11cmの厚さで
の場合よりも上流側にある.
これは,
海底の固
敷き詰めた移動床とした1).初期水深は2cmと
定マウントによって,河道を遡上する流れが左
した.河口部の1.71m下流には,フラッター式
岸側に集中したことによるものと考えられる.
の造波装置を設置し波高1cm,周期0.75sの波
今後さらに,波の特性(周期,波高)と固定
をさせたが,その設置角度を変えることによっ
マウンドの形状等を変化させた実験を行う予
て,海岸線に対する波向き角度θを0〜15°ま
定である.
で5度おきに変化させた.また,波浪を作用す
る以前の初期地形の影響を考察するために,河
口部右岸に高さ0.4cmの台形状の海底地形を
模擬した固定マウンドを設置した実験ケース
も加えた.実験では、造波装置により1時間波
を作用させた後の海岸部及び河口部の河床形
状をレーザー距離計を用いて測定を行った.
図-2 通水後の河床位
参考文献
1)越智尊晴:由良川河口の洪水時における砂州の動態
とその制御, 明石工業高等専門学校 平成 27 年度専攻
科特別研究論文,pp.24-25,2016.
お問い合わせ先
氏名:浅井惣一郎
E-mail:[email protected]
図-1 実験水路
H-11
側壁にジグザグ粗度を設置した湾曲流の
主流速分布特性
(徳山高専専攻科環境建設工学専攻 1,山口大学2)
○塩田洋輔 1・渡辺勝利 1・佐賀孝徳 1・朝井孝二2
キーワード:湾曲流,ジグザグ粗度,二次流,流れの制御
1.はじめに
河川の湾曲部は,河岸の破壊や顕著な河床洗
掘および堆積が生ずるため,洪水時の弱点とな
りやすい.このような河川湾曲部の災害を防止
するには,流れの構造を理解するとともに流れ
を制御する手法を確立することが必要である.
本研究では,ジグザグ状の粗度を用いた流れの
制御手法の確立を念頭に,ジグザグ粗度の湾曲
水路側壁への設置に伴う平均主流速分布の特
性について検討した.
2.実験方法および方法
実験では,直線部と湾曲部から構成された開
水路を用いた.水路幅は 40cm,高さは 25cm
であり、直線部の長さは上流部が 3m,下流部が
2m である.湾曲部の中心線形には図-1 および
式(1)に示すような sine-generated curve を採用
した.水路勾配は水平とした.本水路の側壁に
図-2 に示すような,厚さ 5mm のアクリル樹脂
板で作成したジグザグ状の粗度を直線部およ
び湾曲部の側壁に等間隔(4cm)で設置した.
実験では,流速計測および水面形計測を行った.
流速計測には 2 成分の電磁流速計(KENEK
VP2500)を使用した.流速計測断面は図-3 に
赤実線で示されている.また,計測位置は図-4
に示すように,
1 断面につき 60 ポイントとし,
1 点につき 40 秒間の平均流速を計測した.
3.実験結果および考察
図-5(a)には,側壁が滑面における主流速分
布を示している.直線部断面 M1 では水路中央
部が高速となっている.断面 3,断面 5 では最
大流速点が左岸の極近傍に位置している.図
-5(b)の昇配列における主流速分布では,断面
0 では両岸の低速域が滑面側壁流れと比較し
て拡大し,高速域が水路中央部に集中するよう
な流れ場が形成されている.断面 3,断面 5 で
は左岸側壁側に低速域が形成され,高速域が水
路中央側へ移動している.図-5(c)の合成配列
における主流速分布では,断面 0,断面 1 にお
いて,高速域がほぼ水路中央部に位置し,右岸
側壁付近の高速域は消失している.断面 3,断
面 5 の左岸では,高速域と側壁の距離が他の粗
度と比較して大きく離れている.
4.おわりに
湾曲水路の側壁に 4 種類のジグザグ粗度を
設置し,平均主流速分布特性を検討した.その
結果,昇配列では,比較的低速な流体が水表面
方向へ輸送され,水表面側の顕著な低速化に寄
与することが明らかとなった.合成配列は他の
粗度と比較して最も主流速の湾曲部への偏り
を解消する効果があることが認められた.
y(cm) 8.0
No.M1
4.0
2.0
0.0
-20
-10
0
10
20 z(cm)
y(cm) 8.0
y(cm) 8.0
No.0
   0 sin  (  2s L) (1)
6.0
No.1
2.0
α
L
No.3
S
図-1 sine-generated curve
図-3 流速計測断面位置
No.5
No.7
No.8.5
No.10
0
10
20 z(cm)
2.0
0.0
-20
-10
0
10
0.0
-20
20 z(cm)
y(cm) 8.0
y(cm) 8.0
y(cm) 8.0
6.0
6.0
6.0
4.0
4.0
4.0
2.0
0.0
-20
2.0
-10
0
10
20 z(cm)
0.0
-20
-10
0
10
2.0
0.0
-20
20 z(cm)
y(cm) 8.0
6.0
6.0
4.0
4.0
2.0
2.0
4.0
2.0
0.0
-20
-10
0
10
20 z(cm)
0.0
-20
-10
0
10
0.0
-20
20 z(cm)
y(cm) 8.0
y(cm) 8.0
y(cm) 8.0
6.0
6.0
6.0
4.0
4.0
4.0
2.0
0.0
-20
0
10
20 z(cm)
0.0
-20
-10
0
10
0.0
-20
20 z(cm)
y(cm) 8.0
y(cm) 8.0
y(cm) 8.0
6.0
6.0
6.0
4.0
4.0
4.0
2.0
2.0
2.0
0.0
-20
-10
0
10
20 z(cm)
0.0
-20
-10
0
10
0.0
-20
20 z(cm)
y(cm) 8.0
y(cm) 8.0
y(cm) 8.0
6.0
6.0
6.0
4.0
4.0
4.0
2.0
2.0
0.0
-20
-10
0
10
20 z(cm)
-10
0
10
0.0
-20
20 z(cm)
y(cm) 8.0
y(cm) 8.0
6.0
6.0
6.0
4.0
4.0
4.0
2.0
0.0
-20
2.0
2.0
0
10
20 z(cm)
0.0
-20
-10
0
10
0.0
-20
20 z(cm)
y(cm) 8.0
y(cm) 8.0
y(cm) 8.0
6.0
6.0
6.0
4.0
4.0
4.0
2.0
0.0
-20
0
10
20 z(cm)
0.0
-20
-10
0
10
20 z(cm)
(b) 昇配列
0
10
20
30
0.0
-20
1.0 1.5 1.5 2.0
3.0
3.0
40
20.0
4.0
4.0
図-5 各ケースにおける流速分布
2.0
8.0
2.0
2.0
1.0
(cm)
図-4 流速計測点位置
-10
0
10
20 z(cm)
-10
0
10
20 z(cm)
-10
0
10
20 z(cm)
-10
0
10
20 z(cm)
-10
0
10
20 z(cm)
-10
0
10
20 z(cm)
-10
0
10
20 z(cm)
(c) 合成配列
U(cm/s)
20.0
20 z(cm)
2.0
2.0
-10
10
2.0
0.0
-20
y(cm) 8.0
-10
0
2.0
2.0
-10
-10
y(cm) 8.0
6.0
(a) 滑面側壁
(a)昇配列・降配列
(b)合成配列
図-2 ジグザグ粗度形状
4.0
2.0
-10
y(cm) 8.0
No.2
6.0
4.0
4.0
0.0
-20
y(cm) 8.0
6.0
6.0
お問い合わせ先
氏名:塩田洋輔
E-mail:[email protected]
H-12
加古川・美濃川合流部の河床変動に関する 3 次元数値解析
(明石高専建築・都市システム工学専攻 1,明石高専都市システム工学科2)
○久保裕基 1・神田佳一2
キーワード:河川合流部,三次元解析,固定床流れ
1.はじめに
兵庫県を流れる加古川では,用水の確保や塩水
の遡上防止の為加古川大堰が建設された.その上
流において,堰の湛水及び左支川美嚢川の合流,
上流の河道湾曲により,合流部周辺での右岸砂州
の肥大化や澪筋の左岸への偏向・固定化,水面利
用域の浅水化が進行している.
本研究では,二次元平面解析では再現しにくい
三次元流れの影響の大きい弯曲部及び合流部で
の固定床流れを,三次元解析ソフトの一つである
iRIC-NaysCube を用いて三次元解析を行い,固
定床流れの特性や移動床での河床変動特性を把
握することを目的としている.
2.解析概要
本研究における数値解析の計算格子(図-1)は,
既報 2 ) である模型実験で用いた実験水路を再現
するものであり,縮尺は現地河道の 1/250 として
いる.
図-1 計算格子
計算格子における本川幅は 0.8ⅿ,支川幅は 0.48
ⅿとし,マニングの粗度係数は,固定床セルは
0.01 に、移動床セルは 0.18 に設定し,計算メッ
シュは 3cm に切った.河床材料は模型実験で用
いた石炭紛の諸量を用い,計算時間も模型実験同
様に 3600s とし,計算時間間隔は 0.001 とした.
また,鉛直方向格子分割数を 4 とし,乱流モデル
は二次非線形 k-εモデルを,移流項の空間差分
スキームは三次精度 TVD MUSCL スキームを用
いた.その他計算条件を表-1 に示す.
表-1 計算条件
番号
床の状態
Case1
Case2
固定床
移動床
本川流量
QM
5.0
5.0
支川流量
QT
1.0
1.0
流量比
λ
0.2
0.2
3.解析結果
解析結果を図-2 に示す.表面流速と底面流速
を比較すると,いずれの場合も支川流入の影響に
より,本川流と支川流とが合流する地点において
流れの混合域が確認でき,その内側においては死
水域の形成も確認できる.また,底面流速と河
床図-2 解析結果(Case2)
変動量を比較すると,支川流入の影響により三次
元的な流れが生じている合流部付近では支川流
の流れに沿って洗掘が生じているのが確認でき,
その下流側においては洗掘で生じた土砂が堆積
しているのも確認できた.
二次元平面解析では確認することが不可能で
あった表面流速および底面流速,断面の流速分布
等が確認することが可能になったことを受け,三
次元解析は有用であると考えられる.
4.おわりに
今回の解析結果より支川流入が下流側に偏奇
しているのが確認できた.今後は支川流入が一様
になるように計算格子を再度組む必要性がある.
【参考文献】
1) 一般財団法人北海道河川財団:iRICproject(http:/
/i-ric.org/ja/)
2) 久保裕基,高田翔也,神田佳一,道奥康治:河道
の弯曲の影響を受ける堰上流の合流部の流れ・河
床変動特性に関する研究 土木学会年次学術講演
会講演概要集 2016.9
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氏名:久保裕基
E-mail:[email protected]
H-13
水制による河川合流部の河床変動制御に関する模型実験
(明石高専都市システム工学科1,明石高専専攻科建築・都市システム工学専攻2)
○岡本吉弘1・髙田翔也2・久保裕基2・神田佳一1
キーワード:河川合流部,水制,堰湛水,模型実験
1.はじめに
本研究では,現地河道を模した合流模型実
験水路を用いて移動床実験を行い,水制工の
水理機能とその効果について,模型実験を用
いて検証する.加古川と最大の左支川である
美濃川の合流部では,その上流部における河
道の弯曲及び直下流部に建設された加古川
大堰による湛水の影響を受け,洪水時や平水
時においても複雑な流れ及び河床変動特性
を 呈 し て い る .こ の た め ,合 流 部 右 岸 の 砂 州
の肥大化や澪筋の左岸への偏向・固定化,水
面利用域の浅水化等の河川管理上の問題が
生 じ て お り ,そ の 改 善 の た め ,合 流 部 上 流 左
岸側に水制が設置されている.
2.実験概要
加 古 川 は 兵 庫 県 を 流 れ る 流 路 延 長 96km,
流域面積1,730km2 の一級河川であり,河口か
ら15.8km付近で左岸側からほぼ直角に美嚢
川 が 合 流 し て い る .加 古 川 大 堰 は 河 口 か ら
12.0kmの 地 点 に 位 置 し ,高 さ 5.3m,平 常 時 に
おける湛水区間上流端は,美嚢川の合流部付
近である.本実験では模型の縮尺を現地河道
の1/250としてモデル化し ,実験水路は,長さ
8m, 幅 0.8m の 本 川 に 幅 0.48m の 支 川 が
X=2.83mの 地 点 で 本川に 直 角 に合 流 した も
の で あ り ,水 路 勾 配 は 現 地 河 道 に 合 わ せ て
1/850 と し て い る . 支 川 の 落 差 工 と し て
0.108mの 板 を 合 流 前 0.45mの 位 置 に 設 置 し
た.また,水路下流部には,高さの調節が可能
な堰板を設置し,大堰の操作による湛水効果
を 模 擬 し た .水 制 は ,厚 さ 5mmの ア ク リ ル 板
を重ねたもので,最大幅0.06m,最大長さ0.2m,
高さ0.025mである.これを左岸合流部上端か
ら 0.12m上 流に設 置した.河床 材料は平均 粒
径1.3mm,密度1.47g/cm3の石炭紛を使用し,水
路に0.1mの厚さで敷きつめた状態を初期条
件とした.
流量は本川流量5(ℓ/s),支川流量1(ℓ/s)とし,
下流端堰高を0(cm)とした場合について水制
の有無で結果を比較した.また現地合流部上
流での弯曲後の流れを模擬するため,水路上
流端に水路幅の1/4の長さの板を右岸側に設
置した.実験における通水時間は予備実験に
おいて河床が定常状態となったと判断され
た 60 分 と し た . 通 水 中 の ビ デ オ 画 像 か ら
LSPIV手 法を 用 いて 表面 流 速を 評 価す ると
ともに,レーザー変位計を用いて通水前後で
の河床変動量を計測した.
3.実験結果及び考察
通水後の河床変動量に関する実験結果を
図-1(A)及び(B)に示す.(A)は水制を設置しな
い場合,(B)は水制を設置した場合である.
図-1(A)の水路中央付近にて発生している
堆 積 は (B)で は ,水 制 に よ っ て 右 岸 側 に 偏 向
された流れによってフラッシュされており,
また,水制の前面において局所洗掘が発生し
ている様子が確認できた.今回の実験では本
川 流 量 を 5(ℓ/s)と し た 場 合 ,水 制 の 上 面 を 越
流する流れが確認でき,これによって水制の
下流においても洗掘が発生していることが
分かった.
図-1 河床変動量
Z(mm)
4.おわりに
本研究では,合流部における加古川上流の
弯曲,加古川大堰の湛水効果及び支川美嚢川
の合流の効果を明らかにするため,合流部模
型実験水路を用いた移動床実験を行い,合流
部の河床変化及び表面流況について実験的
に考察した.今後は本川と支川の流量比及び
下流端堰高をパラメータとして実験を行い,
水制の有無で結果を比較するとともに河川
流解析ソフトを用いて解析を行い実験結果
との比較を行う予定である.
参考文献
1) 奥山貴也ら:支川合流の影響を受ける大堰湛
水区間における河川地形の経年変化解析, 2014.
お問い合わせ先
氏名:岡本 吉弘
E-mail:[email protected]
H-14
ハーフコーン魚道内の堆砂特性と
その制御に関する模型実験
(明石高専都市システム工学科 1,明石高専建築・都市システム工学専攻
2
)○福岡美瑳 1・山崎弘美 2・秋山瑶貴 2・神田佳一 1
キーワード:ハーフコーン魚道,土砂堆積特性,水理模型実験
1.はじめに
堰や落差工などの落差を伴う河川横断構造
物には,魚類等の水中生物の移動性を確保す
るため,魚道が設置される.ハーフコーン魚
道は,異なる流速域が形成されること,水位
の変動に対応できることなどの利点がある.
本研究では明石川水系のハーフコーン魚道
を対象として,洪水時における魚道内の流れ
の特性と土砂の堆積特性について模型実験
により考察する.
2.実験概要
本研究で用いる実験装置の概略図を図-3
に示す.実験水路は,全長 8.0m,幅 0.4m,高
さ 0.3m の循環式長方形断面水路で,水路勾
配は 1/20 とする.また,ハーフコーン模型
はモルタル製のものを 14 基設置した.砂の
堆積特性を測定するため,流量 5 ℓ/s で水路
最上流端部より5分間硅砂 4 号を 20ℓ 給砂し
堆積状況を測定する。また,Run2 では,流
量 5(l/s)で 5 分間土砂を投入した後,流量を
3(l/s)として,2 時間通水して,堆積土砂の流
失過程を追跡した。
表-1実験条件
水路床勾配
I
土砂供給量
Qs(ℓ)
1/20
20
流量(土砂投
入時)Q(ℓ/s)
3.0
5.0
7.0
流量(通水時)
Q(ℓ/s)
3.0
3.実験結果及び考察
図-2 に Run3 及び Run5 における土砂の堆積
状況を示す。実験条件は,水路勾配が 1/12,
土砂量が 40(ℓ)で一定であり,流量をそれぞれ
3.0(ℓ/s)及び 7.0(ℓ/s)である。流量が小さい
ほど(Run3)上流に土砂が堆積している。一方,
流量が大きい(Run5)ほど,下流に土砂が流れる
ため,それぞれのコーンにほぼ一定に土砂が堆
積している。また,Run5 より設置方向が同じ
コーン間では,コーンの先端部に土砂が堆積し
ている。設置方向が異なるコーン間では,コー
ン全体に土砂が堆積していることが確認でき
た。
流れ方向
(a) 流量 5.0(ℓ/s),通水時間 T=5(min)
(a)側面図
(b)平面図
(c)ハーフコーン側面図
(d)ハーフコーン平面図 (e)ハーフコーン
図-1 実験概要
(b) 流量 5.0(ℓ/s),通水時間 T=30(min)
4.まとめ
本研究では,ハーフコーン魚道内の土砂堆
積特性について,模型を用いて実験を行い,
考察した。今後,緩勾配として勾配を 1/12
と設定して比較をする。
お問い合わせ先
氏名:福岡美瑳
E-mail:[email protected]
H-15
ハーフコーン魚道内の堆砂特性と
その制御に関する数値解析
(明石高専専攻科建築・都市システム工学専攻 1,
明石高専都市システム工学工学科2)
○秋山瑶貴 1・山崎弘美2・福岡美瑳2・神田佳一2
キーワード:魚道,ハーフコーン魚道,堆砂特性,移動床,数値解析
1.はじめに
堰や床止め工など落差を伴う河川横断構造物に
は,魚類の移動性を確保するために魚道が設置さ
れる。ハーフコーン魚道は,従来の階段式魚道の
様々な問題点を解消すべく開発され,水位の変動
に対応できるなどの優位性を有している。本研究で
は,兵庫県南部を流れる明石川で多用されているハ
ーフコーン魚道に着目し,2 次元移動床数値解析を
行い,洪水時における土砂の堆積特性とその制御
法について考察する。
2.数値解析条件
本研究では,明石川に設置されている数基のハ
ーフコーンの縮尺約 1/5 で作成した図-1 の魚道模
型実験水路を参考として,2 次元移動床数値解析を
適用し,ハーフコーン魚道内の堆砂特性を調べた。
解析にはインターネット上で公開されている汎用ソ
ルバーの Nays2DH を用いた。基礎式には平面二次
元の連続式と運動方程式及び流砂の連続式を適用
し,一般座標系に変換してプログラムが構築されて
いる。移流項の離散化には CIP 法,乱流場ではゼロ
方程式モデルを適用し,掃流砂量式として芦田・道
上の式を用いた。計算格子は、上流側から流下方
向になお,河床材料は,実験装置に用いているもの
と同様の平均粒径 0.88(mm)の珪砂 4 号とした。また、
パラメータとして変化させる水路床勾配及び流量の
計算条件は表-1 に示す。
ハーフコーン
0.3
1.2
低水槽
0.4@13=5.2
1.0
(b)平面図
図-1 魚道模型実験水路の概要(m)
表-1 計算条件
水路床勾配I
1/20
1/12
流量Q(ℓ/s)
3.0
5.0
7.0
3.0
5.0
7.0
3.4
0.0
FLOW
y (m)
x (m)
3.8
4.2
流速
(cm/s) 0.0
2.0
4.6
5.0
5.4
2.6
3.0
4.0
6.0
8.0
10.0
(a)Run 2
3.4
3.8
4.6
4.2
5.0
5.4
0.4
0.2
0.0
FLOW
y (m)
x (m)
流速
(cm/s) 0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0
(b)Run 5
図-2 流速ベクトルの数値解析結果
2.6
2.6
3.0
3.0
3.4
3.4
3.8
3.8
0.4
0.4
4.2
4.2
4.6
4.6
5.0
5.0
5.4
5.4
0.2
0.2
3.0
3.0
0.4
0.4
堆積高さ
(cm) 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0
(a)Run 2
3.4
3.4
3.8
3.8
4.2
4.2
4.6
4.6
5.0
5.0
5.4
5.4
0.2
0.2
0.0
0.0
y (m)
x (m)
0.4
Run No.
Run 1
Run 2
Run 3
Run 4
Run 5
Run 6
3.0
0.2
2.6
2.6
(a)側面図
0.4
2.6
0.4
0.0
0.0
FLOW
y (m)
x (m)
整流板 土砂投入位置
水路床勾配I
P
E
ポンプ 電磁流量計
3.数値解析結果及び考察
図-2(a)、(b)は Run2 と Run5 の河床形状の数値
解析結果(t=300min)を示している。設置方向が同
じコーン間では,水路中央部から下流側のコーン底
部に向かう横断方向の流れにより,下流側コーン底
部に比べ先端部に多く土砂が堆積する傾向が得ら
れた。異なる方向に設置したコーン間では,上流側
のコーン先端部から下流側のコーン先端部へ蛇行
する流れにより,下流側に設置したコーン側面全体
に土砂が堆積することが確認できた。また,同一流量
で勾配を増加させた場合,土砂の流下距離が増加
する傾向が得られた。
FLOW
堆積高さ
(cm) 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0
(b)Run 5
図-3 河床形状の数値解析結果
4.まとめ
本研究では 2 次元移動床数値解析を行い,洪水
時における土砂の堆積特性とその制御法について
考察を行った。今後、数値解析の精度向上を図り,
魚道内の土砂の堆砂特性と制御法の考察を行う。
お問い合わせ先
氏名:秋山瑶貴
E-mail:[email protected]
H-16
買い物支援サービス導入による都市中心部への外出頻度の変
化に関する研究
(和歌山高専専攻科エコシステム工学専攻 1,和歌山高専環境都市工学科 2)
○湊絵美 1・伊勢昇 2・櫻井祥之 2
キーワード:買い物支援サービス,都市中心部,外出頻度,副次的影響
1. はじめに
近年、我が国では、深刻化する買い物弱者問題
解決のため、買い物支援サービスの導入が各地で
進められているが、それらの導入は、人々の買い
物支援ニーズを充足する一方で、様々な副次的影
響をもたらすことが想定される。そこで、本研究
では、買い物支援サービス導入による副次的影響
の一つとして考えられる「都市中心部への外出頻
度の変化」に着目し、1)買い物支援サービス導入
状況を勘案した都市中心部への外出頻度モデル
の構築、2)買い物支援サービス導入による都市中
心部への外出頻度の変化の推計、を行うことを主
たる目的とする。
するサンプルが 306 人と約 4 人に 1 人の割合で
存在することが推計された(表-2)。また、宅配導
入及び移動販売・宅配導入の場合も類似した結果
が得られた。
5. まとめ
本研究を通じて、1)買い物支援サービス導入
状況別の都市中心部への外出頻度の規定要因と
その影響度や、2)買い物支援サービスの導入が
都市中心部への外出頻度の低下をもたらす可能
性を定量的に明らかにすることができた。
表-1 都市中心部への外出頻度モデル(未導入下)
係数
変数
2. 対象都市とアンケート調査の概要
本研究では、1.で記した目的に向けて、個人属
性、地域特性、都市中心部への外出頻度を主たる
項目とし、和歌山県御坊市、美浜町、日高町、日
高川町、印南町、由良町、広川町の住民を対象に
アンケート調査を行った(回収部数:3488 部)。
3. 都市中心部への外出頻度モデルの構築
本研究で取り扱う 4 つの買い物支援サービス
導入状況(未導入下、移動販売導入下、宅配導入
下、移動販売・宅配導入下)のうち、未導入下に
おけるモデルの構築結果を表-1 に示す。
これを見ると、農林漁業を除く有職者及び専業
主婦(夫)、比較的高い身体機能を有する人、自分
が運転する車を保有する人、最寄り鉄道駅までの
距離(都市中心部までの距離)や最寄りバス停ま
での距離が短い人、買い物支援者がいない人、に
おいて都市中心部への外出頻度が高くなる傾向
が読み取れる。これらの特徴は、変数やカテゴリ
ー区分、係数等の詳細についてはやや異なるもの
の、その他の 3 つの買い物支援サービス導入状況
において構築したモデルとほぼ同様の傾向を示
していることが見て取れた。
表-2 都市中心部への外出頻度の変化(移動販売)
1日未満/月
41
1 日未満/月
未導入下
4. 都市中心部への外出頻度の変化の推計
ここでは、買い物支援サービス未導入地域への
買い物支援サービス導入がもたらす都市中心部
への外出頻度の変化を定量的に推計する。移動販
売を導入した場合、都市中心部への外出頻度に変
化が見られなかったサンプルが 817 人と約 7 割
を占める一方で、都市中心部への外出頻度が低下
1.063 ***
60 歳未満
0.652 ***
年齢
60~79 歳
0
80 歳以上
0.368 ***
有職(農林漁業除く)・専業主婦(夫)
職業
0
無職(専業主婦(夫)除く)・農林漁業
0.922 ***
自立以下
介護認定
0
要支援以上
-1.712 ***
3 分程度以下
-1.102 ***
6~9 分程度
-0.345 **
歩行可能時間
12~20 分
説明
-0.227 *
21~45 分
変数
0
45 分以上
0.359 ***
あり
自分が運転する車
0
なし
1.018 ***
1km 以下
0.772 **
1~10km
最寄り鉄道駅までの距離
0.270
10~30km
0
30km 以上
0.736
10km 以下
最寄りバス停までの距離
0
10km 以上
-0.159
いる
買い物支援者
0
(頼める人)
いない
0.258
1 日未満/月
→
1~2 日/月
1.431
1~2 日/月
→
1 日/週
2.555 **
閾値 1 日/週
→
2~3 日/週
3.983 ***
2~3 日/週
→
4~5 日/週
5.090 ***
4~5 日/週
→
6 日以上/週
***:1%有意, **:5%有意, *:10%有意
サンプル数:1170, 疑似 R2:0.070
1~2 日/月
38
移動販売導入下
1 日/週
2~3 日/週
2
4~5 日/週
6日以上/週
1~2 日/月
10
2
1 日/週
15
54
2
2~3 日/週
2
196
702
10
93
10
4~5 日/週
6 日以上/週
問い合わせ先
氏名:伊勢昇
E-mail:[email protected]
H-17
脳波を活用した屋外空間の評価に関する研究
(明石高専専攻科建築・都市システム工学専攻 1,
明石高専都市システム工学科2)
○古家 泉 1・石内 鉄平2
キーワード:脳波,アンケート,リラックス,生体情報,屋外空間
1.研究の背景と目的
従来、都市空間の評価手法としてはアンケート
調査法を用いた主観的な評価が主流であったが、
近年、唾液アミラーゼや脈波といった潜在的な心
理評価を含む生体情報を用いた心理評価が行わ
れている。本研究は、日常的な都市空間でのアン
ケート調査による主観的評価と生体情報の一つ
である脳波の差を検証するとともに、その影響を
図-1 脳波観測結果とアンケート調査結果
受けた要因を検証することを目的とする。
2.調査項目
本研究における研究対象地として、日常生活で
よく利用されると考えられる、道路沿い、駅構内、
公園内の閉鎖的な緑地および開放的な緑地を選
定した。脳波の測定方法は、脳波計を装着後、暗
算(30 秒)→風景鑑賞(60 秒)→動画鑑賞(30 秒)
【この時に脳波測定】の手順である。また、脳波
測定後に当該地点の風景を鑑賞しながらアンケ
ート調査も同時に行った。アンケートの調査項目
は、観測地点におけるストレス度合い、19 種類
の形容詞対を 5 段階評価で問うものである。また、
先行研究では被験者によってリラックスしてい
る場所が異なることが示されている。この原因は
被験者の育った環境や普段の生活環境、空間に対
閉鎖的な緑地においてリラックスすると回答
した被験者は、その理由についてアンケート調査
の自由記述から、
「背の高い樹木の存在」や「街
路樹の多い歩道」
、
「薄暗い森」といった開放的な
緑地でリラックスすると回答した被験者からは
得られない閉鎖的な空間を好む嗜好を把握する
ことができた。
また、駅および道路空間において、脳波とアン
ケート調査結果に大きな不一致が確認された。ア
ンケート結果と照らし合わせることで、日常的に
利用している空間では、アンケート調査でストレ
スを感じると回答していても、脳波結果ではリラ
ックスしている可能性が確認された。
する印象の違いにあるのではないかといった仮
4.今後の課題
本研究で作成した被験者の育った環境や普段
説を立て、本研究ではそれらを問うアンケート調
の生活環境等を問うアンケートシートでは設問
査も並行して行った。
内容が不足していると考えられるため、より内容
を充実させる必要がある。
3.結果と考察
脳波の状態とアンケート調査によるリラック
ス度合いの回答結果を測定地点ごとに比較した
結果を図-1 に示す。
お問い合わせ先
氏名:石内 鉄平
E-mail:[email protected]
H-18
視聴覚刺激の提示時における
心拍変動の傾向に関する基礎的研究
(舞鶴高専専攻科
総合システム工学専攻 建設工学コース 1,
舞鶴高専 建設システム工学科2)
○松下千穂 1・徳永泰伸2
キーワード:生理計測,HF,視聴覚刺激,ストレス
1.はじめに
建築環境工学の分野では,その環境に対する
実験的評価方法として被験者を用いた主観評
価実験がよく用いられてきている.しかし,ヒ
トの生理的反応を直接的に計測し,その反応と
人の受ける刺激やその印象との間に何らかの
関係が得られれば,対象者の回答を介さずに直
接的に心理状態が把握できる可能性がある.本
研究は,音刺激や視覚刺激についてのリラック
ス・緊張状態に関して心電位から得られる生理
指標の有効性を検討することを目的とする.
2.実験方法
年齢 19 歳~21 歳の男女 6 人を対象に心電位
の計測を行った.心電位の計測には心電位計
(TOSHIBA Silmee Bar type Lite)を使用し,鎖
骨の約 3cm 下で計測を行った.実験では,刺
激を提示する前後に標準状態としてクレペリ
ン検査を行ってもらった.刺激には,リラック
ス状態への誘導を想定した流水音(DVD「せ
せらぎ」
)
,緊張・不快状態への誘導を想定した
黒板のひっかき音を使用した.実験は図 1 に示
すシステムで行い,流水音を提示する際は映像
も同時にモニターで提示した.音刺激の提示に
ついては,イヤホン(AKG IP2)を用いた.
HF の値が大きくなり,リラックス状態への遷
移を示している.これは,クレペリン検査で負
荷がかかっているため,それぞれの刺激に変わ
った際に負荷から開放され,リラックスを示し
たと考えられる.それぞれの刺激に対する傾向
として,被験者によっては,黒板のひっかき音
提示の 2 分目に急に HF の値が下がり,ストレ
ス状態を示しているものも見られる.また,刺
激提示の 1 分目から 2 分目の値の変動により,
流水音でリラックス状態,黒板のひっかき音で
ストレス状態を示しているものも見られた.被
験者によって値の変動に差はあったものの,ほ
とんどの被験者で流水音提示時にリラックス
状態となり,黒板のひっかき音提示時に緊張状
態となった.
図 2 黒板のひっかき音提示時の HF
図 1 実験システム概要
3.結果
本研究では,副交感神経の活性度を表す HF
の値を比較する.図 2 に黒板のひっかき音を提
示した時の HF,図 3 に DVD「せせらぎ」を
提示した時の HF を示す.一般に,リラックス
状態では HF の値が大きく,緊張状態では値が
小さくなると言われている 1).
これらの図より,ほとんどの被験者でクレペ
リン検査からそれぞれの刺激に変わった際に
図3
DVD「せせらぎ」提示時の HF
参考文献
1)菊池正 編,感覚知覚心理学,pp.231-232,
朝倉書店,2014.
お問い合わせ先
氏名:松下千穂
E-mail:[email protected]
H-19
発災 5 年経過時点における宮城県を中心とした
まちづくり協議会の動向と課題について
(仙台高専専攻科生産システムデザイン工学専攻 1,仙台高専建築デザ
イン学科2)
○小林祐也 1・坂口大洋2
キーワード:東日本大震災,震災復興,まちづくり協議会
1.背景と目的
東日本大震災の発災から約 5 年が経過し,現在
も被災地では復興事業が進捗している。各地では,
住民のニーズの把握や合意形成を担う組織とし
て,まちづくり協議会(以下「協議会」という)
が設立された。
本稿では復興まちづくりに取り組む協議会を
対象として,組織体制や検討項目などの動向から
協議会の課題を整理することを目的とする。
2.研究方法
宮城,岩手県における各自治体 HP による文献
調査及び志津川地区,鹿折地区,閖上地区を対象
にヒアリング調査を実施した。
3.まちづくり協議会の動向と課題整理
3.1 文献調査による動向整理
宮城県内と中心とした協議会の概要について,
文献調査を通して整理したものを表 1 に示す。多
くの被災地で協議会を確認できた。
拠点の所有が確認できた協議会は少ない。活動
の活発化や住民のニーズ把握に向け,拠点整備は
課題となる。構成は支援者,事務局,行政から成
るものが多い。しかし,支援者の参画期間や詳細
な支援内容まで把握出来なかった。活動は部会活
動,情報発信を行っており,集中的な検討がなさ
れていた。検討項目は,地区計画や災害公営住宅
整備など,住環境の項目を軸に,商業,公共施設
整備に対する項目が多く取り上げられていた。
3.2 ヒアリング調査による動向の整理
事業の進捗や検討項目,組織体制,今後の課題
について調査を実施した。3 地区を比較すると組
織構造や合意形成の手法に特徴が見られた。検討
項目には土地利用等のハード面の検討から自治
組織の形成など,ソフト面の内容へと変化が見ら
れた。特に,どの協議会も住民の参画方法や事業
完了後のまちづくりについて,課題が挙げられた。
4.まとめ
事業進捗により,自治組織の形成などのソフト
面の検討課題が生じる。今後は専門家や行政の支
援やその制度づくりが重要になると考えられる。
お問い合わせ先
氏名:小林祐也
E-mail:[email protected]
表 1 東日本大震災における宮城県内を中心としたまちづくり協議会の概要
市町
団体名
村名
内湾地区復興まちづくり協議会
鹿折地区まちづくり協議会
気仙
階上地区まちづくり協議会
沼市
設立
2012.6.6
2012.10.6
復興事業
土地区画整理事業(約11ha)
土地区画整理(約42ha)
防災集団移転事業
2013.7.24
災害公営住宅整備事業
防災集団移転事業
岩松まちづくり協議会
2013.7.28
災害公営住宅整備事業
土地区画整理
志津川地区まちづくり協議会
2012.9.1
集団移転促進
南三
防災集団移転事業
伊里前地区まちづくり協議会
2011.12.11
陸町
災害公営住宅整備事業
防災集団移転事業
戸倉地区まちづくり協議会
2012.1.31
災害公営住宅整備事業
女川 女川町まちづくり推進協議会
2011
2012
町 まちづくりワーキンググループ
コンパクトシティいしのまき・街なか創 2011.12.20
土地区画整理事業(約29.6ha
石巻 湊東地区まちづくり協議会
公営:540戸、1440人
市
山下地区協働のまちづくり協議会
2014.9.7
雄勝地区震災復興まちづくり協議会 2011.5.20 防災集団移転促進事業
新山下駅地区まちづくり協議会
2013.11.26 防災集団移転事業(約38ha
山元
宮城病院周辺地区まちづくり協議会 2013.11.26 防災集団移転事業(約8ha
町
新坂元まちづくり協議会
2013.11.26 防災集団移転事業(約10ha
荒浜地区まちづくり協議会
2010.12
逢隈地区まちづくり協議会
亘理
吉田西部地区まちづくり協議会
2010.10.3
町
吉田東部地区まちづくり協議会
2011.12.17
亘理地区まちづくり協議会
防災集団移転事業(286戸)
あおい地区まちづくり整備推進協議会 2012.11.21
災害公営住宅整備事業(273
防災集団移転事業(92戸)
矢本西地区まちづくり整備協議会
2012.12.19
災害公営住宅整備事業(40戸)
東松
防災集団移転事業(41戸)
牛綱地区まちづくり整備協議会
2012.12.20
島市
災害公営住宅整備事業(27戸)
防災集団移転事業(51戸)
宮古地区復興まちづくり委員会
2013.6.11
災害公営住宅整備事業(24戸)
防災集団移転事業(296戸)
野蒜地区復興協議会
2012.11.25
災害公営住宅整備事業(263
防災集団移転事業(171戸)
岩沼 玉浦西地区まちづくり検討委員会
2012.6.11 災害公営住宅整備事業(210
市
戸)
玉浦西まちづくり住民協議会
2014.1.18 事業完了
名取
土地区画整理事業(約57ha)
閖上地区まちづくり協議会
2014.5.11
市
防災集団移転事業
組織構成
拠点 行政 支援者 事務局
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
提言
活動概要
検討項目
現状
情報発信
計画 住宅 商業 公共 福祉 教育 コミュニティ 防災 H28.12現在
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H-20
体育施設における市民参加型の計画プロセス
に関する研究―青森県M市を事例として―
(仙台高専専攻科生産システムデザイン工学専攻)
○渡辺響介・坂口大洋
キーワード:体育施設,市民参加型,多目的利用
1.背景
体育施設は老朽化や耐震基準を満たしてい
ないなどの問題から、近年建替えなどの整備
が各地で行われている。また、地方都市にお
いては体育施設をスポーツ施設に限らず、多
目的に利用することが模索されている。本研
究では具体的な建替え計画に参画し、特にワ
ークショップや地域ニーズを調査対象として、
人口10万人以下の地方都市における市民参
加型の体育施設の計画プロセスについて報告
し、考察するものとする。
方を具体的にし、隣接する施設との連携やイ
ベント時の使い方、集約施設として利用する
イメージを会場内で共有した。これにより規
模や配置計画に関する意見が得られた。
3.1.3.第3回市民ワークショップ
具体的な平面図を元に、大会時や練習時の
利用方法や運営方法、トレーニング施設など
の機能といった、ハードとソフトの両面から
意見が得られた。
3.2.基本設計・実施設計
3.2.1.第1回市民ワークショップ
体育施設の多目的な利用を考えたプランニ
2.調査概要
ングに対する意見が得られた。国際大会を誘
平成27年11月7日から平成28年12
致するための施設規模や季節ごとのイベント
月10日の期間、5回のワークショップを実
を市内における一年の流れと共に把握し、ス
施し、意見を調査した。
ポーツ施設としての利用に限らない多目的な
今回の調査では、スポーツ競技団体をはじ
利用イメージの形成が行われた。また、観光
めとし、商工会や観光協会、行政といった市
地として地域の活性化を図るために体育施設
民と管理者を含めた場において意見の収集を
でイベントを行うことを検討した。
行っている。また、旧体育館を利用してきた
3.2.2.第2回市民ワークショップ
住民に限らず、将来的に体育施設を利用する
今後、新しい体育施設を利用すると考えら
と考えられる中学生や高校生を対象としてい
れる中学生と高校生を対象とし、アリーナや
る。設計事務所と仙台高専がワークショップ
トレーニング室の利用方法を検討した。これ
によって複数の立場から意見を調査し、要求
までの大会時における使用方法を踏まえ、日
されている機能や設備といったハードの側面、 常的な利用方法を模型と図面を用いることに
市民の活動状況や運営方法といったソフトの
より具体的なイメージとして提案した。
側面を把握し、計画に反映することを目的と
する。
4.まとめ
スポーツ競技を行う場面に加え、体育施設
3.計画プロセス
を日常的な場面で利用するイメージを模型や
平成27年度に基本構想・基本計画に関す
平面図を用いることで具体的にし、ワークシ
るワークショップが行われ、平成28年度に
ョップ形式によって住民と共有した。
は基本設計・実施設計に関するワークショッ
地方都市の体育施設整備計画策定において、
プが行われた。
スポーツ競技団体に限らず、商工会、観光協
3.1.基本構想・基本計画
会、行政、中学生・高校生といった複数の側
3.1.1.第1回市民ワークショップ
面から要求される機能、設備、運営方法につ
旧体育館の課題とスポーツ団体の日常的な
いて把握することが重要であると考えられる。
活動状況、新体育館に対する要望とアイディ
また、要求される事柄に対して柔軟に計画を
アを把握した。
変更し、対応していくことが求められる。
3.1.2.第2回市民ワークショップ
体育施設のボリューム模型を用いて配置計
お問い合わせ先
画を検討した。青森県内の既存体育施設の事
氏名:渡辺響介
例を用いることにより新しい体育施設の使い
E-mail:[email protected]
H-21
置屋根支承部の損傷メカニズムに与える屋根勾配の影響
(仙台高等専門学校専攻科 1,同・建築デザイン学科 2
○猪股史也 1・藤田智己 2
キーワード:鉄骨置屋根構造,柱頭損傷,屋根勾配,地震応答解析,鉛直増幅
1.はじめに
東北地方太平洋沖地震において,空間構造物
の屋根トラスと RC 下部構造の接合部(以降,
置屋根支承部とする。)の損傷(以後,柱頭損
傷とする。
)が確認された。
空間構造物では,屋根勾配の影響により屋根
面が大きく上下方向に振動する現象が生じる
ことがわかっており,[1]この屋根面の上下応答
は,置屋根支承部に作用する曲げ応力(以降,
柱頭モーメントとする。)を増大させる可能性
がある。本研究は,有限要素解析ソフト
ABAQUS6.9 を用い,屋根勾配をパラメータとし
た地震応答解析を実施し,置屋根支承部の損傷
メカニズムに与える屋根勾配の影響を明らか
にすることを目的としている。
2.解析概要
本研究では,被害を受けた建物の一つである
宮城県の N 市民体育館を基にモデル化し解析
を行った。解析パラメータが屋根勾配 0%,
10%,20%の 3 ケースあり,屋根勾配 0%の立
体解析モデルを図1に示す。本建物は y 軸方向
にメインフレームが通り,1 通り,11 通りにほ
ぼ全面にわたって耐力壁で構成された妻構面
を有する。2~10 通りにおいては 2 階のギャラ
リー部から約 9m の RC 柱が立ち上がっている。
今回,解析では 1~6 通りまでの 1/2 モデルで
解析を行った。
3.解析結果と考察
ここでは,代表的な例として Elcentro 地震
の EW 波の C 通り側の結果を図 2 に示す。各通
りの屋根頂点から支承部にかけての中点にお
ける鉛直加速度を図 2(a)に示す。各通りの
柱頭モーメントの最大値を図 2(b)に示す。
M[kN・m]
a[m/s2]
50
20
M
0%
0%
40
10%
15
20%
10%
20%
30
10
20
5
10
0
0
1
2
3
4
5
6
通り名
(a)屋根面上下応答加速度
1
2
3
4
5
6
通り名
(b)柱頭モーメント
図 2 各通りにおける最大応答値
屋根面の鉛直方向の加速度は 1 通りでは屋
根勾配 0%が 20%の約 1.3 倍で最も高く,2 通
りではあまり変化が見られなかった。一方で 3
~6 通りでは屋根勾配 20%が 0%に比べて平均
して約 2.1 倍高かった。また,柱頭モーメント
は 1 通りでは屋根勾配による差が見られなか
った。2 通りは屋根勾配が上がる毎にモーメン
トが低減していた。3~6 通りは屋根勾配 20%
が 0%に比べて平均して約 1.5 倍の増加が見ら
20%
れ,既往の研究[1]と同様の結果を確認出来た。
10%
3~6 通りの中央構面においては屋根勾配が
上がる毎に屋根面の鉛直方向の加速度と柱頭
モーメント共に増加している傾向が見られ,相
関性がある事を確認した。しかし,屋根面の鉛
直方向の加速度応答の増加に対して,柱頭モー
メントの増加は少なく,その原因としては屋根
z
面の重量が軽量であった事が考えられる。
y(NS)
発表の際は,検定比及び各通りの柱頭モーメ
ントの違いについても合わせて報告する。
x(EW)
参考文献
図1 立体解析モデル
[1]日本建築学会,空間構造の動的挙動と耐
解析は,屋根勾配について前述した 3 ケース, 震設計,2006.3
入力地震動について ELcentro 地震(1940),
KernCountry 地震(1952),十勝沖地震(1968), お問い合わせ先
氏名:猪股史也
宮城県沖地震(1978)の各地震波の NS 及び EW
E-mail:[email protected]
の 8 種類の計 24 種類行った。
H-22
高強度高靱性セメント系複合材料の
耐凍害性に関する基礎的研究
(仙台高専専攻科生産システムデザイン工学専攻 1,仙台高専 2)
○大坂進太郎 1,権代由範 2
キーワード:UHP-HFRCC,耐凍害性,養生条件,空気連行,自己修復
本研究の範囲では、空気連行による耐凍害性
の改善は確認されなかった。
UHP-HFRCC は凍結融解作用下においても
自己修復性能を発揮する。
2)
3)
表 1 調合表
W/B
SP/B
SP/B'
D/B
S/B
Wo
(Wt.%)
N,W,C
AE
15
0.003
1.4
OL
HDR
(Vol.%)
0.02
35
13
1
1.5
W:水,B:シリカフューム混合セメント,SP:AE 減水剤,D:消泡剤,S:細骨材
Wo:ワラストナイト,OL:ストレート鋼繊維,HDR:フック加工鋼繊維
表 2 実験ケース
養生
方法
記号
N
C
AE
W
ひび
割れ
─
〇
AE 剤
─
蒸気
〇
─
水中
凍結融解
40×40×160mm
〇
気泡間隔
φ100×200mm
〇
─
─
〇
110
相対動弾性係数(%)
100
90
80
70
60
50
N
AE
40
C
W
30
0
50
100
150
サイクル数
200
250
300
図 1 凍結融解試験結果
気泡間隔係数(µm)
はじめに
高強度高靱性セメント系複合材料(以下、UHPHFRCC:Ultra High Performance - Hybrid Fiber
Cementitious Composites)は、優れた靱性や歪硬化
特性に加え、自己修復性能を有するセメント系材
料であるが、耐凍害性に関する検討事例は少ない。
そこで本研究では、UHP-HFRCC の凍結融解抵抗
性について、養生条件および空気連行をパラメー
タとした実験的検討を実施するとともに、凍結融
解作用下における自己修復性能の検証を行った。
2. 実験概要
表 1 に調合表を、表 2 に実験ケースを示す。実
験ケースは、養生条件を変化させた「N(蒸気)」と
「W(水中)」に加え、空気連行が凍結融解抵抗性に
及ぼす影響を検討するため AE 剤を添加した
「AE」、自己修復性能を検討するために予めクラ
ックを導入した「C」を設定した。これらを対象に
JIS A 1148 A 法による凍結融解試験および ASTM
C 457 による気泡組織測定を実施し、実験ケース
「C」については、凍結融解 5 サイクル毎に、導入
したクラックの閉塞状況の観察を行った。
3. 実験結果および考察
3.1 養生条件の違いが耐凍害性に及ぼす影響
図 1 に凍結融解試験結果を示す。W および C
において、凍結融解サイクルの進行に伴う、相対
動弾性係数の増加が確認された。何れも残存する
未水和セメントの再水和によるものと考えられ
るが、W は N に比し未水和セメント量が多く、C
は凍結融解試験によりクラック内部へ水が供給
され自己修復作用が活性化したためと思われる。
3.2 空気連行が耐凍害性に及ぼす影響
図 2 に気泡間隔係数を、図 3 に気泡数を示す。
気泡組織測定の結果から、空気連行が耐凍害性に
及ぼす影響は確認できなかった。UHP-HFRCC の
練り混ぜ時間の長さに起因する気泡の逸脱が、気
泡組織の改善を阻害した可能性が示唆される。
3.3 UHP-HFRCC の自己修復性能
図 4 に自己修復の推移を示す。凍結融解開始直
後から、クラック内部に析出物が確認され、200
サイクル程度で概ね閉塞が確認された。一方で、
90μm 以上の粗大な開口については 300 サイクル
終了時においても閉塞は確認できなかった。
4. まとめ
1) 水中養生およびクラック導入供試体におい
て、凍結融解サイクルの進行に伴う、相対動
弾性係数の増加が確認された。
1.
500
500
400
400
300
300
200
200
100
100
気泡径(µm)
301201-300
101-200
0
0
AE
N
W
図 2 気泡間隔係数
0Cyc.
0-100
100Cyc.
AE
N
W
図 3 気泡数
200Cyc.
図 4 自己修復の推移(40µm)
お問い合わせ先
氏名:大坂進太郎
E-mail:[email protected]
300Cyc.
H-23
主成分の異なる空気連行剤が
コンクリートの耐凍害性に及ぼす影響
(仙台高等専門学校専攻科 1,同・建築デザイン学科 2)
○石川峻己 1・権代由範 2
キーワード:凍結融解,スケーリング,凍害,空隙構造,細孔構造
表 1 コンクリートの調(配)合
Case
55-A
55-B
55-C
W/C
Air
(% )
(%)
55
4.5
単位量(kg/m3)
W
C
S1
S2
G
混和剤
Ad
Ad1
Ad2
Ad3
165 300 660 173 1004 3.00
100
5.0
95
4.5
55-A
55-B
55-C
4.0
90
スケーリング量(kg/m2)
相対動弾性係数(%)
Case 55-A:Ad1(天然樹脂酸塩系)を添加
Case 55-B:Ad2(アルキルエーテル系陰イオン)を添加
Case 55-C:Ad3(高アルキルカルボン酸陰イオン)を添加
85
80
75
55%-A
55%-B
55%-C
70
65
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
60
0.0
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
凍結融解サイクル数(ASTM C 672)
0
60
120 180 240 300
凍結融解サイクル数(JIS A 1148)
図 1 凍結融解試験による耐凍害性
100
95
耐久性指数(%)
1.はじめに
コンクリートの耐凍害性を確保する為には、
コンクリート中に適切な空気を連行すること
が重要とされている。しかし、同程度の空気を
連行した場合でも、耐凍害性は異なることが指
摘されている。本研究では、連行空気泡の質に
着目し、主成分の異なる空気連行剤を用いた供
試体を対象とした実験を行い、気泡の質と耐凍
害性との関係について、基礎的な検討を行った。
2.実験概要
本研究では、三種類の空気連行剤を添加した
供試体を作製し、
JIS A 1148 および ASTM C 672
法による凍結融解試験を行うとともに、細孔構
造特性評価および気泡組織測定を行った。なお、
全ての供試体において、フレッシュ時の空気量
を 4.5±0.5%に統一した。使用した空気連行剤
を調合と併せて表 1 に示す。
3. 実験結果および考察
3.1 凍結融解試験
図 1(左)に凍結融解サイクル数と相対動弾
性係数の関係を示す。相対動弾性係数の低下は、
55-C が最も小さく,次いで 55-B,55-A という
序列関係を示した。質量減少率も同様の傾向を
示し,何れの評価においても Ad3 を添加した
55-C の良好な凍結融解抵抗性が確認された。
3.2 スケーリング試験
図 1(右)に凍結融解サイクル数とスケーリ
ング量の関係を示す。スケーリング量は、55-C
が最も剥離量が少なく、次いで 55-A、55-B と
いう序列関係を示した。
3.3 細孔構造特性評価
コンクリートの細孔径分布からは、添加した
空気連行剤の主成分の違いによる細孔構造の
際立った違いは確認することができなかった。
3.4 空隙構造特性評価
図 2 に気泡間隔係数と耐久性指数の関係を
示す。両者には良好な相関関係が見られ、優れ
た凍結融解抵抗性を示した 55-C の気泡間隔係
数が最も小さい値を示した。また、55-C は直
径 150µm 以下の微細気泡の数も最も多く、
“150µm 以下の微細気泡が多く、気泡間隔係
数が小さいほど耐凍害性は向上する”とする既
往の見解とも一致する。以上より、フレッシュ
時の空気量が同じ場合でも、異なる空気連行剤
を用いることによりその空隙構造は変化し、耐
凍害性に影響を及ぼすことが明らかとなった。
y=-0.2707x+136.1
R2=0.9466
90
85
55-A
80
55-B
75
55-C
70
150
160
170
180
190
200
210
気泡間隔係数(µm)
図 2 気泡間隔係数と耐久性指数の関係
ただし、気泡組織測定を実施した 3 ケースとも、
フレッシュ時と硬化後の空気量に乖離があり、
本研究における実験の信頼性の観点から、サン
プル数を増やした検証実験を行う必要がある。
4. 結論
1) フレッシュ時の空気量が同程度の場合で
あっても、耐凍害性は微細気泡数や気泡間
隔係数に依存して変化するため、空気量に
加え、気泡の質の管理が重要と思われる。
2) 空気連行剤の主成分の違いは、
空隙構造を
変化させ、耐凍害性に影響を及ぼす。
お問い合わせ先
氏名:石川峻己
E-mail:[email protected]
H-24
高砂町銀座商店街における住民主体のまちづくりの現状
(明石高専建築学科)
鈴木康平・水島あかね
キーワード:高砂町,銀座商店街,地方創生,まちづくり
1. 研究背景・目的
昨今、日本では東京一極集中や、それに伴った
地方における人口減少が問題化している。こうし
た問題に対して、2014 年に元総務大臣、増田寛
也「2040 年までに 896 の自治体が消滅する」と
いう発表により、行政による地方創生総合戦略注
1
が策定された。これにより、現在全国で地方創
生の動きが展開されている。その一方で、行政で
はなく、住民主体でまちづくりや地域課題を解決
していく動きが見られる。このようなローカルな
動きは地域によって様々で、それぞれの地域の特
色に合った動きを見せている。兵庫県高砂市高砂
町もそのような町の一つである。
本研究では、兵庫県高砂市高砂町の特に銀座
商店街を対象にする。銀座商店街の住民主体の
まちづくりの現状を把握し、その課題を整理す
ることを目的とする。また、それを踏まえてこ
れからの銀座商店街に必要な動きを考察する。
2. 研究方法
研究方法として、まず文献調査により、高砂
町の歴史、文化を把握する。そして、フィール
ドワーク、ヒアリングにより、イベントやまち
づくり活動の実態について調査をする。
3. 銀座商店街のまちづくり
3-1. 銀座商店街について
高砂市高砂町は、瀬戸内海に面した町で、江
戸時代からの港町として古い町並みが残る地
域である。現在、まちづくりを中心に行ってい
る場所に銀座商店街がある。近年、空き店舗の
増加が問題となっている。
3-2. 調査目的・方法
銀座商店街のまちづくりの現状を把握する
ことを目的とする。そしてヒアリング調査によ
り、銀座商店街を中心に起こっているまちづく
りの現状を把握する。
3-3. 調査結果
① 地域発信拠点「高砂や」
2013 年より NPO 法人 Renaissance 高砂注2に
より開かれた複合文化施設である。主に、イベ
ント・展示や、貸しスペースとしても使われて
いた。パートを雇い運営していたが、市の補助
金や「高砂や」の収入だけでは、給料を払うこ
とができずスタッフの入れ替えが多く、2015
年 3 月にスタッフ 3 名が退職し、現在は運営が
ままならない状態にある。
② 朝ごぱん市
「朝ごぱん市」は 2013 年より、20 歳代から
30 歳代のボランティアグループ「朝市楽しみ
隊」と商店街の店主 3 人の計 10 人が実行委員
となって、月に一度開いているイベントである。
回を重ねるごとに、規模が大きくなり、それに
伴い、スタッフ不足が問題として表れている。
3-4. まとめ
このように、銀座商店街において、地域の担
い手不足という問題は顕著に表れてきている。
地域外からやってくる人も、地域に定着せず、
一定期間で出て行く人が多い。それに伴い、担
い手の固定化による負担は増加し、まちづくり
の動きも、停滞している。
【注釈】
注1. 人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課
題に対し政府一体となって取り組み、各地域がそれぞ
れの特徴を活かした自律的で持続的な社会を推進する
ことを目指した施策。
注2. 高砂市内で新しい事業を始める起業家や芸術家並びに
高砂市民に対して、高砂市内の空き家空き店舗を有効
活用する事業やこれらの活動を支援する事業および高
砂の街づくりに関する事業を行い、広く高砂地域の活
性化に寄与することを目的とする法人。
【参考文献】
1) 高砂市〈http://www.city.takasago.hyogo.jp〉 (入手
2016-05-31)
2) 高砂市商店連合会『高砂あきんどマガジン夏号』 2016
年
お問い合わせ先
氏名:水島あかね
E-mail:[email protected]
H-25
兵庫県南あわじ沼島の空き家の現状 (明石高専建築学科) ○藤岡拓己・水島あかね
キーワード:沼島,空き家,離島
1.はじめに
沼島は兵庫県南あわじ市に属する面積 2.63
3.研究結果
㎢、人口 488 人の小さな離島である。近年、本
となっていることが明らかになった。総務省統 土との地理的格差などから人口減少や空き家
計局が平成 25 年に発表した日本の空き家率は 増加など様々な社会問題が進行しているが、本
13.5%であるため、沼島の空き家率は大変高い
講演では沼島の空き家の現状を報告する。 といえる。建物の状況の分類に関しては、A が
2,研究目的・方法 50.9%、B が 31.6%、C が 17.5%となった。約
現在の沼島の空き家を把握することを目的
半数が A であったが、この理由は島民の方々へ
として平成 28 年 9 月 24 日、25 日に空き家調
のヒアリングにより、祭りやお盆、休暇の際の
査を行った。 み、帰省して利用する季節居住者が多いからで
空き家の判断基準は①人がいるかどうか、②
あると明らかになった。空き家の分布は図 1
生活している様子があるかどうか、③電気メー
ターやガスメーターが動いているかどうか、の
3 つである。さらに空き家を、A(住み家と遜色
のない状態)、B(簡単な修繕で再居住が可能な
状態)、C(再居住が厳しい状態)の三項目に分類
した。判断が難しい建物に関しては、適宜、島
を散歩する島民の方々へヒアリングを実施し、
空き家かどうかを判断した。 建物 454 件のうち 166 件の 36.5%が空き家
に示す通りである。 【参考文献】 1)兵庫県教育委員会文化課『沼島地区民俗資料緊急調査報告
書』兵庫県教育委員会 1971 年 2)沼島壮年会『沼島物語』 1970 年
3)中桐規碩『離島研究−瀬戸内の社会学−』高文堂出版社 2004
年
4)榎本頁『沼島の概要』沼島センター 2016 年
お問い合わせ先
氏名:水島あかね
E-mail:[email protected]
図 1 沼島の空き家の分布
H-26
ボランティアワークを活かした古民家再生
ー兵庫県篠山市を事例にー
(明石高専専攻科建築・都市システム工学専攻 1)
○高橋治 1
キーワード:古民家再生,ボランティア,篠山市,マネジメント
1.はじめに
近年、文化財保護法などの法制度が設けられ
古い建物が残せるようになってきている。古民
家もそのうちの一つであり、古民家を再生(保
存・活用)したカフェやレストランなどができ
るなど各地で古民家再生の動きが広がってき
ている。本研究の対象地である兵庫県篠山市は
古民家再生が盛んにおこなわれている地域で
ある。
一方で、古民家を再生するにあたって、障害
となる問題はコストである。この問題を解決す
るために、様々な対策が行われており、ボラン
ティアワークを取り入れる方法が着目されて
いる。本研究におけるボランティアワークは、
自発的な参加者の労働力としている。しかし、
このボランティアワークを取り入れた事例は
少ない。本研究では、ボランティアワークを取
り入れた手法を活用した事例として篠山市で
行われている「古民家再生プロジェクト」につ
いて取り上げる。
2.研究目的・方法
古民家再生プロジェクトの活動実態を明ら
かにする。活動実態は以下の通りである。
①文献・資料や運営団体へのヒアリングをもと
に活動の履歴・変遷を明らかにする。
②文献・資料や運営団体へのヒアリングをもと
に、プロジェクトと活動のスキームを明らかに
する。
③建築関係者やボランティアへのヒアリング
から、古民家に関わる人々の思いを明らかにす
る。
これらから、他地域での古民家再生を行うた
めのポイントを提言したい。
3.古民家再生プロジェクト
3.1.古民家再生プロジェクト
兵庫県篠山市で行われているプロジェクト
であり、古民家再生の作業ワークショップを開
催している。活動を始めてから 10 年が経過し
た今でも、毎月 2 回土曜日が活動日であり、
250 回を超えるワークショップを開催してい
る。これまでに 20 棟以上の再生を手がけた。
図 1
古民家再生時のスキーム
図 1 に古民家再生時のスキームを示す。これ
までプロジェクトで再生してきた多くの古民
家のうち、通しでボランティアを入れた方法で
多いのが図 1 のスキームのかたちである。再生
時の作業をボランティアが行うというかたち
である。
作業自体は、片付け・清掃、解体などから床
張りなどの木工事、左官などできることはすべ
て行っている。作業内容は、施主と設計士の打
ち合わせから決定している。
3.2.ボランティア
作業に参加しているボランティアは、アクセ
スの良さから、京阪神の地域からの参加者が多
い。また、弱冠 20 歳の学生から 70 代の老人
まで年齢層も幅広い。男女比は基本的に男性が
多いが、女性もほぼ必ず参加している。
4.まとめ
古民家再生プロジェクトは、
10 年以上で 250
回を超えるワークショップを開催し、20 棟以
上の再生に関わっている。作業にボランティア
を入れることで再生を行っている。ボランティ
ア参加者の属性は学生から老人まで多様性が
見られた。
お問い合わせ先
氏名:高橋治
E-mail:[email protected]
H-27
舞鶴赤れんが倉庫 3 棟の
構造性能評価と木質架構の構法について
(舞鶴高専総合システム工学専攻建設工学コース 1・
舞鶴工業高等専門学校 建設システム工学科 助教・博士(工学)2)
○河崎克伸 1・渡部昌弘 2
キーワード:赤れんが倉庫,組積造建築物,常時微動測定,重量算定,時刻歴応答解析
1.概要
京都府北部の丹後地域沿岸部には、近代に軍用
倉庫として建築された組積造建築物群が存在す
る。これらは大部分が観光施設となっているが、
一部は未整備のままである。
本研究では、未整備の赤れんが倉庫 3 棟を対象
として、既往調査と実測調査から重量算定を、常
時微動測定の結果から振動特性を明らかにし、時
刻歴応答解析を行った。また、ほぼ同一の架構形
式にも拘わらず、振動特性には差異があるため、
構法調査を基にその要因について検証を行った。
2.目的
歴史的組積造建築物である赤れんが倉庫を対
象に構造部材及び継ぎ手部分の構法調査、時刻歴
応答解析を行い、振動性状を把握することを目的
とする。
3.実験方法
文献 1 及び実測データを用いて、赤れんが倉庫
の BIM モデルの作成を行い、寸法の整合性の確
認を行う。
また、文献 2 から比重を参考にし、BIM モデル
のデータから赤れんが倉庫の重量算定を行う。
次に文献 3 と文献 4 で記述されている減衰率、
1 次固有振動数及び重量を用いて時刻歴応答解
析を行う。模擬地震波に関しては日本建築センタ
ーレベル 1 波(BCJ_L1)、レベル 2 波(BCJ_L2)
の加速度波形を用いるものとする。
4.結果
赤れんが倉庫の BIM モデルを細部まで再現し、
3D モデルを用いて赤れんが倉庫の重量算定を行
った。表 1 より赤れんが倉庫 1 棟あたりの重量は
1203t、1 階の重量が特に全体の 5 割を超えている
ことがわかる。
時刻歴応答解析の結果、応答波形が入力波形の
4 倍になっていることがわかった。
表 3 より L1、L2 の加速度波形の応答を用いて
層間変形角を出した結果、L1、L2 関係なく分母
が 1 桁になった。層間変形角の規定値である
1/200 より大きいため、倒壊する可能性は十分で
あることがわかった。
表1
重量算定結果
1階
2階
小屋組み
各層における
重量[t]
688
370
145
合計
1203
階
表2
A 棟のばね係数および減衰定数
方向
桁行
梁間
表3
全体重量
割合[%]
57.2
30.8
12.0
ばね係数[kN/m]
2 階床上 2 階梁上
271
106
59
23
減衰定数[%]
0.67~1.27
0.55~1.40
A 棟の最大層間変位及び層間変形角
模擬波形
方向
桁行
BCJ_L1
梁間
桁行
BCJ_L2
梁間
階
2F
1F
2F
1F
2F
1F
2F
1F
最大層間
変位[cm]
120
74
248
146
135
82
274
166
層間変形角
[rad]
0.284(1/4)
0.148(1/7)
0.584(1/2)
0.292(1/3)
0.317(1/3)
0.164(1/6)
0.647(1/2)
0.335(1/3)
参考文献
[1] (財)建築研究協会(2006)
,
「舞鶴市赤レンガ倉庫(B
棟)現況調査報告書」
,(財)建築研究協会
[2] 社団法人 日本建築学会,建築物荷重指針・同解説
(2004),社団法人 日本建築学会
[3] 西山由ほか,近畿地方の近代組積造建築物の振動
性状に関する研究,日本建築学会大会学術講演梗概集
(関東),pp. 902-903,日本建築学会,2015
[4] 西山由,舞鶴市の組積造倉庫軍の振動性状に関す
る研究,舞鶴工業高等専門学校平成 27 年度特別研究
論文,2016
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氏名:河崎克伸
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H-28
教科センター方式の実態
~福井市安居中学校と坂井市立丸岡南中学校を事例に~
(明石高専建築学科1)
○阪根歩実1・水島あかね1
キーワード:教科教室型、教科センター方式、福井市安居中学校、坂井市丸岡南中学校
1.1 研究背景
近年、学校の教育環境を見直す動きに伴って
新しい教育プログラムに注目が集まっている。
その一つが教科センター方式である。教科セン
ター方式とは、教科教室型の中でも各教科専用
の教室に教科センターを付随させたユニット
(写真 1) 教師の居場所、(写真 2) 教科センター
で構成する計画のことをいう。教科教育の充実
2.22 福井県福井市安居中学校
や生徒の主体的な学びを狙いとした計画と言
〈全学年一体型教科センター方式〉
える。しかし、こうした利点の一方で、生徒の
「全学年一体型教科センター方式」とは、小
生活の居場所の確保などの課題も少なくない。
規模な安居中学校に採用されたコンセプトで
1.2 研究目的
ある。具体的には全学年のホームの中心に風の
本研究では教科センター方式の実態を調べ、
広場と呼ばれる広場を配置することで学年を
分析する。そして、教科センター方式の効果に
超えて一体感をうみだした計画である。風の広
ついて考察することを目的とする。
場は全校生徒がお互
1.3 研究方法
いの気配を常に感じ
本研究では資料・文献調査と事例調査を行う。
ることが可能であり、
事例調査は福井県に位置する福井市安居中学
集会や学校行事など
校と坂井市立丸岡南中学校を対象に行う。また
にも利用される生徒
校長先生にヒアリングを行い、最先端と言われ
の「生活の中心」で
ている教科センター方式の実態を分析する。
ある。
2.1 教科センター方式のヒアリング結果
〈学びと生活のメリハリ〉
本研究の事例調査の対象である丸岡南中学
(写真 3) 風の広場から見たホーム
安居中学校は風の広場を中心に全学年のホ
校は、福井県で初めて教科センター方式を取り
ーム、動的な活動を支える「学びのひろば」、
入れた中学校である。また、安居中学校は教科
技能系教科教室の「ラボ」などが同心円状に広
センター方式の中でも最新の全学年一体型教
がる。学びと生活の空間にメリハリをつけ、そ
科センター方式を取り入れた中学校である。
れらを生徒の活動の中で有機的に繋げること
2.21 坂井市立丸岡南中学校
で生き生きとした空間構成がうみだしている。
〈自律・主体的な学び〉
教科センター方式の主な特徴の一つに生徒
の教室移動がある。授業ごとに自ら行動し、移
動することで「学びに行く」という主体的な意
識が引き出されているという。
〈教科センター〉
教科教室の側に設けられたメディアセン
ターは教科ごとの特色ある授業形態に対応
する。また、教師にとっては職員室以外の居場
所となり、生徒との触れ合いや、教師同士の学
び合いに貢献している。
(写真 4) 学びのひろば、(写真 5) 教科教室
【参考文献】
1) 福井市安居中学校:生徒が主役の学校づくり,福
井市安居中学校 2015
問い合わせ先
氏名:水島あかね
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H-29
日本における葬儀と火葬の変遷と今後の課題について
(明石高専建築学科)
福岡
優、水島あかね
キーワード:葬儀,火葬,葬祭
1.研究背景と目的
現代の日本社会において、遺族がおらず誰に
も弔われない無縁仏が年々増加している。無縁
仏は行政によって火葬され、葬儀が行われるこ
とはない。
本研究の目的は、葬儀と火葬の変遷から見る
無縁仏の弔い方の考察である。本講演では文献
調査によって得られた、これまでの日本の葬儀
と火葬の歴史、葬儀に伴う空間の変遷とこれか
らの課題について報告する。
になった。これによって煤煙を透明化し、臭気
の除去が可能となったため煙突が大幅に短く
できるようになる。煙突がある典型的な火葬場
の外観イメージを払拭した火葬場が登場した。
図.葬儀と火葬を行う空間の変遷
4.考察
2.葬儀空間の歴史について
本研究における「葬儀」とは、仏式葬儀のこ
とを意味する。明治時代初期に、葬祭業という
業種が生まれ、葬具屋が葬具の貸し出しなどを
行うようになる。大正時代になると、それまで
行われていた「葬列」が廃止される。これは、
都市部において交通を妨げることへの批判な
どが原因としてあげられる。高度経済成長期の
時代になり、それまでは地域の共同体によって
執り行われてきた葬儀の一切を葬儀社が執り
行うようになる。また、元々葬儀は自宅や寺院
で行うのが主だが、葬祭業者が経営する民間斎
場で行うのが主流となる。これにより、音楽や
映像などの演出や葬祭業者によるサービスが
多様化した。
3.火葬空間の歴史について
8 世紀以降、貴族や僧侶、武士は仮設的な小
屋で火葬を行った。庶民は土葬や風葬がほとん
どであったが、庶民の中で火葬を選択した場合
の火葬空間は「野焼き場」であった。江戸時代
になり、仏教寺院の境内に「火屋」と呼ばれる
炉を要する火葬施設が設けられるようになっ
たが、煙や悪臭による周辺住民への悪影響が問
題となった。これに対して、公衆衛生上の配慮
から火葬場の近代的な改善が進んだのは明治
時代以降である。 瓦を用いた燃焼室や煙突を
備えた「火葬炉」が登場し、臭気や煙などの近
隣の住空間に及ぼす悪影響を改善した。1970
年代後半からは燃料に灯油、ガスを用いるよう
葬儀・火葬ともに、大きな変化を遂げたのは
明治時代以降である。檀家制度がなくなり、葬
儀を行う場が自宅から斎場に変化し、火葬場へ
の移動手段は葬列から霊柩車へ変化している。
また、執り行うのは寺院ではなく葬儀社である。
これらは日本社会の近現代化によって、生活や
交通の都市化に合わせた変容を遂げたと言え
る。火葬場に関しては空間が屋内空間へと変化
していったと言える。
【参考文献】
1)芳賀登:葬儀の歴史,雄山閣出版,1996
2)薄井秀夫,柿ノ木坂ケイ,葬祭業界で働く,ぺりかん社,2015
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氏名:水島あかね
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H-30
6 次産業の事例調査による現状と課題
(明石高専建築学科)
西本昌平・水島あかね
キーワード:6 次産業, 農業, 地方都市
1.1 研究背景
現在、日本の農業人口は著しく高齢化してい
る。農林水産省によると、基幹的農業従事者(以
下販売農家)の人口は、年々減少し、その平均
①純全作業型
年齢は上がり続けている。同様に、同省は担い
②一部連携・提携型
手の不足と新規就農者の減少も公表しており、
今後生産性を維持しつつ、農産物の質をいかに
保つかということが問題となってきている。 この問題の改善策の一つとして、6 次産業(1
③一部委託型
があげられる。既に多くの事例が存在し、政府
④一部連携提携かつ委託型
図 1 全作業実践タイプ
もこれを推奨している(2 ことから、今後更に 6
次産業が人口減少時代の農産業を支える手段
として発展していくことが予想される。 1.2 研究目的・方法
6 次産業を経営者が、どのような作業体系で
活動しているか、またどの分野から 6 次産業化
をどのような動機で行ったか、を調査し、それ
らの関連から、事例調査による 6 次産業の実態
と課題を明らかにすることを目的とする。 調査は農林水産省「6 次業化の取組事例集」
(2016)に挙げられている事例を分析し、6 次産
業の実態と課題を把握し、考察する。 2.1 3 項目による分類
基本の作業体系を把握するため、全作業タ
イプ(図 1)と流れ構築タイプ(図 2)の 2 タ
イプに分類した。そこからさらに具体的に分
類した(図 1①〜④、図 2⑤〜⑥)。また、6
次産業化以前の活動と 6 次産業化の動機の 2
⑤2、3 次産業実践型
⑥プロジェクト化型
図 2 流れ構築タイプ
2.2 事例調査からみる 6 次産業の実態と課題
・経営者側の一時的な都合による 6 次産業化
が、その他課題解決的な動機等より比較的多い。 ・1 次の知識が他の活動の知識より必要と考え
られ、特に以前の活動の知識を活用しない人に
とっては流れ構築タイプが生産的かつ経済的。 ・6 次産業化が個人、1 企業の単位での担い手
不足解消の直接的なきっかけになっていない。 【注釈】
1) 今村奈良臣:第 6 次産業の想像を 21 世紀の花形産業に
しよう, 月刊地域づくり, 野村総合研究所, 1996.11 より
2) 農商工等連携促進法と企業立地促進法、6 次産業化法ま
た農商工等連携事業計画と農商工等連携支援事業計画。
【参考文献】
農林水産省 HP, http://www.maff.go.jp/, 2016/10/05 閲覧
項目によっても分類した。3 項目の関係を整
理し、6 次産業の実態と課題を明らかにし、
考察を行った。 お問い合わせ先
氏名:水島あかね
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I-01
Palladio が理想とした建築の研究
(明石高専 建築工学科)
○大塚知広 東野アドリアナ
キーワード:建築書,比例,Palladio、ルネサンス、Villa
1.はじめに
本研究では Quatrro Libri に記載されている
建物の平図面と記載されていない Palladio 計
画の建物の平図面を比較し、形態分析と考察を
行う。これより建築書に記されている建物の特
徴と Palladio が建築書を通して伝えようとし
た理想の建築のありかたを明らかにする。
本論では Palladio に関する先行研究を紹介
する。その後 Palladio が関わった建物を取り
上げ、形態分析、比較について述べる。
2.Quattro Libri に関する先行研究
Quattro Libri に関する研究は数多くあるが、
日本では 1986 年桐敷真次郎氏が Quattro Libri
の日本語訳を行った。同書では原本において欠
損部分のある図面を修正しており、本研究では
その図面を中心に形態分析を進めていく。なお
Quattro Libri に記載されていない図面に関し
てはイタリアの建築家で Palladio の計画やデザ
インについての研究で有名な Ottavio Bertotti
Scamozzi(1719-1790)が作図したものを使用
している。
3.Quattro Libri の平面図の形態分析
Palladio の計画した平面図を正方形、長方形、
円形に置き換える。図の構成が幾何学形態の重
合または分割からなるかを分析する。以下に分
析した一部を示す。
・Villa Chiericati-1542 年
Quattro Libri に記載されていない Villa の
1つである。居室は正方形、長方形によって構
成されており、長方形は黄金比とそうでないも
の両方が見られる。中心の正方形から延長した
線で黄金比の長方形を分割すると、隣接する居
室と同じ正方形が見られるが、図形が出てくる
のみで平面の構成においてその正方形が利用
されている部分は見られなかった。
・Villa Ragona-1554 年
Villa Ragona は Quattro Libri に記載されて
いる Villa である。主室部分は正方形で構成さ
れている。入り口部分の階段から、最奥の壁ま
でを繋げた長方形は黄金比となっており、その
内部にも黄金比の長方形が二つ見られ、その長
方形は壁や左右対称となるための中心軸、で分
割すると正方形が現れ、黄金比の特徴を用いて
二回分割されている。
4.分析結果の比較
Quattro Libri に記載されているものと、そ
うでないものの分析結果を比較すると、記載さ
れていないものは正方形や黄金比を用いた長
方形を見られるものもあるが、それぞれ平面に
配置されているだけで、部屋や建物全体の構成
に利用されていない図形が見られるが、
Quattro Libri に記載されているものは正方形
や黄金比の長方形が建物全体の構成や居室の
形、配置に多く利用されており、それらの図形
を用いることで平面が作られている。
5.考察
比較の結果から Palladio の理想とした建築
のありかたを考察する。正方形や黄金比の長方
形が基本となり、それらの分割や集合によって
建築物全体が構成されているものが美しい建
築物と考えていたのではないか。黄金比は自然
の中に多く見られる比率である。建築物の構成
において、その比率を利用した図形が基本とす
ることで、建物全体を自然と調和させるという
ことが重要としていたと考えられる。
6.まとめ
Quattro Libri に記載されている図面と記載
されていない図面の平面を形態分析し、その結
果を比較、考察することで、Palladio が理想と
した建築のあり方を明らかにした。
【参考文献・注釈】
1) パラーディオ「建築四書」注解:桐敷真次
郎 編著、中央公論美術出版、総ページ数
583p 1988 年発行
2) パラーディオ:福田晴虔 著、鹿島出版会、
総ページ数 331p 1979 年
3) 建築ガイド パッラーディオ:Caroline
Constant 著、福田晴虔 訳、丸善株式会社、
2008 年
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氏名:大塚知広
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I-02
イエズス会活動に関する近世ヨーロッパ出版本から
広まった日本のイメージを知る (明石高専建築学科 1 ,明石高専 2 ) ○河田江梨那 1 ・東野アドリアナ 2
キーワード:イエズス会史料,日本建築,16 世紀日本
1.はじめに
イエズス会史料を用いた研究は過去に幾度
か行われている。しかし、それらは空間イメー
ジや教会建築について述べているものの、膨大
な史料の数に対して十分ではない。 そこで本研究では、近世ヨーロッパで書物と
して高い人気を得たイエズス会の書簡を中心
に分析・考察を行い、当時の日本の姿が宣教師
たちによってどのようにヨーロッパに伝えら
れたかを調べる。これにより、日本の文献から
は得られない、ヨーロッパの視点から見た日本
のイメージがどのようなものであったかを明
らかにし、分析・考察を行うことで、それらに
ついての解釈を提示することを目的とする。 2.イエズス会関連史料の収集と整理 イエズス会関連の書物を収集し、それらに収
録された書簡について表にまとめて整理した。 宣教師たちが記した書簡の中には、複数回に
わたり繰り返し出版されたものがある。出版さ
れた回数が多かったものは、高い人気を得たと
考えられる。本研究では、それらの書簡の中で
出版された回数がより多い数点を選定し、内容
を翻訳する。 書簡の選定にあたり、上智大学図書館、ポル
トガル国立図書館の二つの web 版図書館から、
15 冊の出版本を収集した。これらはそれぞれ
複数のイエズス会書簡を収録しているが、目次
は存在しない。複数回出版された書簡を選出す
るには、各書簡の情報の整理が必要である。そ
のため、個々の書簡の文中に記された[年月
日・場所・作者]を読み取り、それぞれの書物
に振り分けた[書物番号]と共に書き出して整
理した。
3.ヨーロッパで広く知られた書簡
整理した書簡のうち、3 回以上収録されたも
のを表にまとめた。
収集した 15 冊の書物のうち『エヴォラの手
紙』と呼ばれる 2 冊は同様の内容であり、重版
されたものであると考えられる。その為、これ
ら 2 冊のみに収録された書簡は、1 回収録され
たと考える。その上で、3 回以上収録された書
簡を表にまとめた。中でも 4 回以上収録された
ものは表 1 に示す 3 通であった。
表 1 4 回以上収録された書簡
出版年月日
場所
作者
a 1549/11/05 Kagoshima
M.Francisco
b 1559/09/01
Japan
Gaspar Vilela
c 1559/11/01
Bungo
Baltazar Gago
4.4 回以上収録された書簡の内容について
表 1 に示す 3 通の書簡の内容について、下
記に概要をまとめた。
a)ザビエルの書簡
日本についての最初の書簡。ザビエルから見
た日本人の性格、政治の仕組みなど、日本の印
象について詳細に記述。
b)ヴィレラの書簡
ヴィレラの来日後 1 年間の近況報告。布教を
禁じられ都へ向かおうとするヴィレラの様子。
c)ガゴの書簡
宣教活動の様子や日本国内の様子について広
く記述。宣教活動中に建てた教会、病院や博多
の街についての記述も見られる。
5.まとめ
調査の結果、日本についての詳細な情報が記
述された書簡や娯楽性に富む書簡がヨーロッ
パで広く好まれ、複数回にわたり出版されたこ
とが分かった。これらの書簡によって中世ヨー
ロッパで広まった日本のイメージの中には、都
市や建築に関係するものもあり、宣教師から見
た日本の建築形態がどのようなものであった
かについて触れられている。
6.参考文献
1)ピーター・ミルワード 「ザビエルの見た日本」 松本たま訳 講談社学術文庫 182 ページ
1998-2012 年
2)松田毅一・川崎桃太 「完訳フロイス日本史」 中央公論社 全 12 巻 1977-1980 年
お問い合わせ先
氏名:河田江梨那
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I-03
舞鶴市西地区における町家の
外観に着目した意匠の記録・分析
舞鶴高専専攻科総合システム工学建設コース専攻
○森下泰地
キーワード:町家,外観,意匠,分類
1.研究背景・目的
対象地域である舞鶴市西地区では,旧城下町
を活かしたまちづくりに取り組んでいる.まち
づくりにおいて歴史的な町並みは地域特性を
確立するだけでなく,今後のまちづくりの方針
を示す上でも重要な役割を果たす.そのため,
町並みを形成する町家の保存改修が望まれる.
本研究では,町家の改修の指針となる資料の
作成を目的に,対象地域に残存する町家のファ
サードに着目した意匠の記録・分析を行う.
2.研究方法
本研究では、対象地域は京都府舞鶴市西地区
の竹屋町・丹波町を対象に研究を行う.本研究
方法は以下である.
方法 1:既往文献を用い,舞鶴西地区に既存す
る町家についての調査を行う.
方法 2:残存する伝統的な町家のファサードの
分類を行う.
方法 3:現地調査から対象地域に既存する伝統
的な町家の意匠から地域特性を明らかにする.
3.研究結果
方法 1 では,舞鶴市西地区に建てられた町家
の特徴として,屋根形状は平入屋根,建物形状
は中二階建て,特徴的な意匠として虫籠格子作
りなどが多いことが明らかとなった.
方法 2 では,ファサードの類型化(表,1)を行
った.ファサードは 3 つのタイプに分類できた.
タイプ 1 は,建物形状が中二階建て.
タイプ 2 は,建物形状が二階建てかつ,下屋が
ない.
タイプ 3 は,建物形状が二階建てかつ,下屋が
出ている.
丹波町ではタイプ 1,竹屋町ではタイプ 3 が
最も多い結果が得られた.
方法 3 では,間口・軒高・二階壁面の測量.
また,外観の構成要素である意匠を戸・柵・壁・
屋根・窓の項目に分け,チェックシート(表,2)
の作成を行った. チェックシートを用いて,開
口部の建具を中心に現地調査での記録・分析を
行った.調査により,間口にはガラス戸が多く
用いられ,二階窓が虫籠窓の町家は中二階が多
い結果が得られた.
表 1:ファサードの分類表
タイプ
1
2
3
17
1
1
2
15
2
11000
2227
1354
丹波町
15011
2386
2127
丹波町
4800
2701
2227
丹波町
トレース
No.
タイプ
写真
間口(mm)
軒高(mm)
二階壁高(mm)
分布
表 2:チェックリスト
4.今後の課題
今後の課題として,引き続き対象地域における
意匠の記録.また,得られた結果から対象地域に
おける改修の指針となる資料の作成があげられ
る.
参考文献
(1)舞鶴市「舞鶴市史 通史編(上)」(1993,3)
p930-p931
(2)舞鶴市教育委員会,「舞鶴の民家」(2003,3)p34
−p43
(3) 日向進 加藤実郁代,「舞鶴市西地区歴史的
建造物調査報告書-城下町田辺の町並み-」,
(1993,3)p53-p54
お問い合わせ先
氏名:森下泰地
E-mail:[email protected]
I-04
NewForestArtschool(設計)
イギリス Dorset 地方 NewForest 国立公園において
(明石高専専攻科建築・都市システム工学専攻 1 )
○入江貴道
1
キーワード:Dorset 地方,NewForest 国立公園,ランドアート,学校, 集落
1.計画の背景
日本の中山間地域の農山漁村を対象に、人と
自然の相互作用の活動により生まれた環境の
保全や持続に取り組むにあたり、人口の流出と
高齢化による過疎化を目の当たりにした。そし
て過疎化の進む農山漁村地域の対策として、先
進的な取り組みが行われていることで知られ
るイギリスの事例を対象にした。イギリスの南
部 Dorset(ドーセット)地方に位置する Sway(スウ
ェイ)に NewForest(ニューフォレスト)国立公園(以
下 NFNP)がある。湿地、牧草地の自然環境が残
っていることから、国立公園として認定されて
いる。その国立公園の中にも集落を見ることが
できるが同じく過疎化が進んでいる。
2.計画の目的
NewForest 国立公園を対象にした、学生や
住民のための学校の計画を目的とする。過疎化
の問題を解決することを期待し、地元の学生や
住民、アーティストなどを取り巻いて現代アー
トや建築のランドアートのプロジェクトなど
を促進することを目標とする。
3.計画の手法
① イギリスと Dorset 地方のランドスケープ条
令やマスタープラン等の文献で調査し、国や
地域のランドスケープに関する方針を整理
する。
② 現地調査をもと NFNP 内でどこを保存場所、
改善場所と位置付けているのかを図で示す。
③ 地元の学生や住民、アーティストがどのよ
うにして今までこの土地でのアート活動に
参加し、これからの活動に何を求めているの
かを調査し作品を集め、これまでの成果と課
題を示す。
④ 調査結果をまとめ、国立公園を拠点とした
アートスクールを中心のランドアートを計
画し提案する。
4.事例調査
設計案の計画に当たり、事例調査として2つ
の美術館の調査を行った。新潟県十日町市に位
置するキョロロとドイツの郊外に位置する
MuseumInselHombroich である。それぞれの
建物のコンセプトや森の中で展開する美術館
を調査した。この調査により実際に参加者が森
の中に入り、自らの手で触れて足を踏み入れて
体験する事にニーズがある事が分かった。
5.設計案の計画
NFNP の中でも沿岸部に位置する EightAcre
Pond と呼ばれる池の周囲に残る集落の空き家
の残る地域を計画の対象地とする。森林や湿地、
牧草地などの自然環境が充実している事から
生徒達が肌で自然を感じることの出来る学校
の計画を行った。図 1
森の中、海の上にある教室や、牧草地を利用
したグラウンド等を設けた。空き家となった建
物に合わせてレンガの塊のようなブロックを
点在させるデザインとした。
図 1.配置図
6.まとめ
NFNP で学校を展開することによって、地元
の学生やアーティストを含む住民たちが積極
的にアート活動に参加することで、地域の活性
化に繋がる計画を提案することを目標とする。
本研究で明らかになった事は、日本の中山間
地域で起きている問題を解決するための提案
に繋がることを期待する。
お問い合わせ先
氏名:入江貴道
E-mail:[email protected]
I-05
天守閣の幾何学分析
(明石高専建築学科)
○濱本豊・東野アドリアナ
キーワード:城郭建築,天守閣,幾何学分析
1.はじめに
本研究では、形態分析の手法の一つである幾
何学分析を用いて、現存天守閣の分析を行う。
天守を並列に比較することでその形態の持つ
意味を読み解くことを目的としている。
研究方法としては、 修理報告書をもとに図
面を収録した日本建築史基礎資料集成 十四
城郭Ⅰ1、十五 城郭Ⅱ2 に収められた平立断面
図を用い、幾何学分析を行い、各図を比較、考
察する。また、丸亀城、備中松山城、松山城天
守の図面は、修理報告書の図面を用いる。
2.日本の天守の形態
日本の城の形態については、1576 年、織田
信長が築城した安土城から大きく変わったと
いえる。池田輝政が築いた姫路城や豊臣秀吉が
築いた大坂城など安土城以降に築かれた城は
比較的低地にあり、天守は高く、見た目にも絢
爛豪華な装飾を持つようになり、明らかに領民、
外敵へ、自身の権力をアピールするような形態
になっている。また、安土城以降に作られた天
守の立面図と断面図の不一致が見られる。この
ことから、立面のデザインは機能性を追求した
ものではなく、政治的象徴としての建築を目指
していたことが考えられる。
3.天守の幾何学分析
9 城の幾何学分析を行った結果、各天守の平
面は正方形に近いものが多くを占めた。また、
立面においては正方形や 4:5、1:1.1 など 1~1.4
までの正方形に近い比率が多く使われていた。
また、天守ごとに共通して使われている比が多
くみられ、何らかの意図を持ってつくられたで
はないかと考えられる。図 1 は 4:5 を赤枠、
1:1(正方形)を青枠、1: 2(白銀比 3)を緑枠と
した長方形で表現した姫路城南立面図の分析
結果である(図 1)。姫路城の立面幾何学分析で
は、4:5 の比例を持つ長方形が圧倒的に多く、
窓や破風、そして地上面からの立面全体が全て
4:5 比率の長方形の組み合わせで構成されてい
る。4:5 の比率は音階の一つである長 3 度とい
図 1 姫路城南立面図分析
う音律に見られる周波数の比率である。長 3
度は西洋の音楽で使われ、建築のデザイン比例
として用いられていたことも多い。一方、断面
に関しては、立面とは違い、共通した比率を得
られることはほぼなかった。これは、断面は機
能性を重視したことに対して立面は見られ方、
すなわちデザインを重視したことを表してい
ると考えられる。
4.まとめ
本論では、日本の城の形態について先行研究
を提示した後、日本の城の幾何学分析結果を述
べた。結果としては平面図が共通する正方形、
立面図には各城ごとに全体をまとめる比率が
存在した。
【柱脚、参考⽂献】
1) 太田博太郎 「日本建築史基礎資料集成 十四 城
郭Ⅰ」 中央公論美術出版 1982 年
2) 太田博太郎 「日本建築史基礎資料集成 十四 城
郭Ⅰ」 中央公論美術出版 1983 年
3) 1:1.414 の比のこと。法隆寺五重塔など日本の歴
史的建造物に多く見られる。
お問い合わせ先
氏名:濱本豊
E-mail:[email protected]
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