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第 2 部

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第 2 部
初版発行:2009 年 1 月 9 日
APU(立命館アジア太平洋大学)のキャンパスから
第2部
ITとキャンパスライフ
1 パソコンで日・英語授業
2 情報化社会の人材育成
3 入学の情報をネットで
4 ネットは “ 生活必需品 ”
5 “ もろ刃の剣 ”…弊害も
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共著
共 同 通 信 社
大分合同新聞社
異文化の風
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パソコンで日・英語授業
「はい、それでは昨日の授業を復習しましょう。皆さん、自分
のモニターに向かってください」
国際学生(留学生)対象の日本語授業で、ヴ・コック・アンさ
ん( )=男性、ベトナム出身、アジア太平洋マネジメント学部
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コンピュータが学習を支援する CAI の日本語授業。講師は学生の疑問や本音を聞き出そうと、積極的に教団を離れ、国際学生の中
に入って行く。この日、学生たちの間では、標準英語をイギリス英語にすべきか、アメリカ英語にすべきかで、議論が白熱した
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異文化の風
(APM)=は、自分の机にあるパソコンのソフトを立ち上げた。
モニター画面は、前日あった「アジア太平洋の言語と文化」の
授業風景を再生し始める。アンさんはイヤホンを耳に当て、習っ
たばかりの熟語や日本語独特の言い回しに注意しながら、授業内
容の再確認にかかった。このシステムがCAI(コンピューター
による学習支援)だ。言語の授業は最大二十人の少人数制で、教
室では学生一人ひとりにパソコンが割り当てられる。
「専門用語などを覚えた上で、繰り返し授業を聞けるので助か
る」とサニー・ウーさん( )=女性、カナダ出身、アジア太平
洋学部(APS)=。
APUでは日本語と英語の授業を実施。一、二年生の科目のほ
とんどは二つの言語で授業があり、語学力に応じてどちらかが選
べる。しかし、三年生以降は「英語のみ」や「日本語のみ」の専
門科目が加わる。
日常会話は別として、大学の講義など高度な知識について最初
から外国語を使いこなせる学生は少ない。そこで授業への理解度
を少しでも上げるため、学術科目と言語教育科目を相互に連動さ
せた〝アジャンクト・モデル〟という独自の手法を導入。
例えば火曜日に外国語による学術科目がある場合、月曜日にあ
る言語の授業で予習をし、水、木、金曜日の授業で復習したり、
授業内容についてクラスで討論する仕組みだ。
学生たちの評判も上々で、アグス・ウィナルトさん( )=男
性、インドネシア出身、APM=は「みんなに遅れないよう、テ
学生と教師の試行錯誤が続く。
文=田中竜、写真=青木茂之
けています」と常勤講師の甲斐朋子さん。
感じることも多い。できるだけ学生の中に入っていくよう気を付
「その場で作った例文などを画面上で見せられるので便利です
が、コンピューターに頼って授業をしていると、学生との距離を
CAIに問題がないわけではない。
います」と話す。
レビやラジオのニュース、新聞を見て言葉に慣れようと心掛けて
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異文化の風
情報化社会の人材育成
「多様な文化の交流が新しい文化や文明、創造的な人材を生み
出し、それが人類の進歩と向上のために貢献してきたことは人類
の長い歴史の中で幾度となく経験してきたことである」
昨年四月の入学式で、坂本和一学長はこう語った。
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情報処理演習の教室。授業のないときは開放されている。学生たちは授業の合間、パソコンで資料を作成したり、インターネット
でデータの取り寄せに利用している。パソコンの得意な学生が苦手在学生に教えることで自然に友達の輪も広がる
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異文化の風
だが、さまざまな文化を背負って来た若者たちが授業や生活に
慣れるのは容易ではない。APUは大学運営、教育システムの至
る所でITを活用し、キャンパスライフをサポート。
その根幹を成すのがAPU―Net。学生や教職員など大学関
係者全員が情報ネットワークに参加し、交流や情報の受発信がで
きる独自のシステムだ。
「Webサーバーにアクセスすれば、授業の履修登録やデータ
ベースの検索、休講や試験日程の確認、教員と学生間の連絡、リ
ポート提出などが可能。アクセスに使う端末は学内にあるパソコ
ンでも自前のものでもOKなので、いつ、どこからでも利用でき
る」とAPU総合情報センター。
国際化や情報化社会に対応できる人材を育成するため、情報処
理教育に力を入れる。情報処理関連の授業は一、二年生のカリキュ
ラムに集中的に組み込んだ。必須(す)科目の「情報科学入門」
ではコンピューターの基礎知識、APU―Netの利用法、ワー
プロなどを学び、最後は各自のホームページを作成する。
一クラスは六十人。授業の際、教員をサポートするティーチン
グ・アシスタント(TA)が付く。TAは学生の中でコンピュー
ターの習熟度が高い学生から選抜し、手当を支給する。
韓国出身のチェ・ユン・ヨンさん( )=女性、アジア太平洋
マネジメント学部(APM)=もその一人で、「予習をしている
ので基礎的なことなら大半は教えられます。分からないことがあ
れば、自分の課題としてすぐに復習するように心掛けています」。
同センター副所長を務める永松利文助教授は、「一度もキーボー
ドに触れた経験がない学生もいる。学生によって事情はさまざま
で、例えば画像処理が得意な学生は表計算は苦手。すべてのソフ
トを思い通りにできるのはわずか」と指摘する。
文=田中竜、写真=青木茂之
して先端のITを駆使できる人材が、育っていく。
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以 後、 情 報 処 理 論 の 授 業 や プ ロ グ ラ ミ ン グ な ど を 通 じ て コ ン
ピューター特有の論理的な思考法をマスターすることになる。そ
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異文化の風
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入学の情報をネットで
APUでは、インターネットを利用して願書の取り寄せや入学
に必要な情報の収集ができる。
福 祉 の 国 フ ィ ン ラ ン ド 出 身 の ト ゥ ー ッ カ・ ト イ ボ ネ ン さ ん
( )=男性、アジア太平洋学部(APS)=は、兵役を終えた
あと得意のギターを片手に世界各地を放浪。その過程で日本が気
に入って留学を決意。
「ホームページでいろんな大学を調べた結果、奨学金など留学
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インターネットを通じて入学してきた3人の国際学生。リーさん(左)の母国マレーシア
では、大学入学前に先修班と呼ばれる予備校的な学校に行き、専門科目の基礎学習をする。
トイボネンさん(右)は兵役を終え、いろんな国を放浪した。「日本はいろんな手続きに
関して世界一複雑」と指摘。「米国と全く異なった文化を学びたかった」というナポリタ
ンさん(中央)
。サークル活動で今年4月入学の新入生を支援するためのホームページを
運営している
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異文化の風
生に対する支援策が充実しており、都会の大学に通うのと比べ生
活費が安いことなどが分かった。学費が不要な母国に最も近い環
境なので出願した」
「 自 分 の 国 と は 全 く 違 っ た 文 化 を 学 び た か っ た 」 と 言 う の は、
米国人のニコラス・ナポリタンさん( )=男性、APS=。
エンゴー・リーさん( )=女性、アジア太平洋マネジメント
学部=の出身国、マレーシアでのインターネット普及率は決して
う。
で三十回以上、メールを交換したので不安は全くなかった」と言
「祖父母でも当たり前のように使っている。入学前に大学との間
米国はインターネット先進国で、出身地ミネソタ州でも一般の
ネット回線が無料のため、大半の家庭にインターネットが普及。
力」と話す。
ほか世界中のいろんな言語や文化について学べるのも大きな魅
外国文化を学べる大学は米国内にもたくさんあるが、「自分の
知らない世界に飛び出してみたかった。APUは日本語、英語の
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高くないが、あちこちに二十四時間営業のインターネットカフェ
があり、だれでも気軽に利用できる。
「Eメールで大学と何度もやり取りしたので、不安のかなりの
部分は解消できた。ただ、入学手続きに必要な書類を整える上で
予想外の苦労を味わった」と振り返る。
APUは書類に使える言語として日本語と英語を認めている。
だが、マレーシアではマレー語が公式。さらに華僑のリーさんは
中学入学前の一年間、マレー語学校に通うなど学歴が複雑だった
ため、証明するのが大変だったようだ。
「インターネットで提供される情報はどれも信頼できるわけで
はないが、APUのホームページは大いに役立った」とトイボネ
ンさん。
日本での学生生活を有意義に過ごそうとする三人にとって、イ
ンターネットは必需品。Eメールを駆使し、母国の仲間や後輩に
文=田中竜、写真=青木茂之
向け、APUや別府市についての情報発信を始めている。
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異文化の風
ネットは〝生活必需品〟
IT(情報技術)が発達、普及した時代に育った若者たち。キャ
ンパスライフも大きく変わってきた。
)=男性、アジア太平洋マネジメント学部(APM)=
「 日 本 人 の 友 達 は あ ま り 利 用 し な い ね。 店 ま で 行 か な く て も、
欲しいものが買えるのに」。韓国出身の金容進(キム・ヨン・ジン)
さん(
大学の入学時には、こたつやパソコンをネットオークションで
は、不思議そうな表情をした。
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学内にあるマルチメディアスタジオ。ビデオ編集機やパソコンな
ど最新の機器が装備されており、授業で使う教材の準備に利用し
ている。情報機器の扱いに慣れた現在の若者たち。教員顔負けの
専門知識を持った学生も多く、ホームページや教育用ソフトの作
製を任されることも多い。自分の特技がみんなのために役立つこ
とを彼らは誇りに思っているようだ
異文化の風
手に入れた。「店だと展示品に限界がある。インターネット上には、
いろんな商品が並んでいるし、値段の比較もできる」とメリット
を強調。
〝情報強国〟を掲げる韓国では、国策によって情報通信用の高
速回線が行き渡り、子供たちは早くからインターネットに慣れ親
しんでいる。「日本では情報通信の環境整備が遅れたことで、若
者の関心がインターネットに向かないのではないか」というのが、
彼の率直な感想だ。
ITはサークル活動にも欠かせない存在。人権や貧困問題につ
いて考え、活動しているグループ(会員二十人)でも、独自のホー
)=男性、アジア太平洋学部=の夢は、貧困にあえぐ母国の農山
発 起 人 の 一 人 で、 ミ ャ ン マ ー 出 身 の ア ウ ン・ リ ン・ テ ィ ン さ ん
ムページを開設し、問題提起や活動報告に利用。
(
村 の 活 性 化 で、 大 分 県 の 一 村 一 品 運 動 を モ デ ル に し た い と 考 え て い
る。
「軍事政権下にあるミャンマーは海外からの投資協力が得にく
く、農山村の実態は想像を絶する。ホームページを通じていろん
な人の意見を集め、夢を実現したい」と言う。
将来の起業家を目指すグループの「アントレプレナーズ」にとっ
ても、講演会、模擬店の出店など幅広い活動をするためにもパソ
コンは必需品だ。「資料を作成したり、メーリングリスト(メー
)
ルの同報通信機能を利用した電子掲示板サービス)を使ってネッ
ト上で会議をするのに重宝している」と代表の小倉譲さん(
=兵庫県出身、APM=。
メンバーの一人、小嶋新さん( )=兵庫県出身、APM=も「身
の回りに書類があふれている。文書をデジタル化してネット上の
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文=田中竜、写真=青木茂之
ITの活用によっては、別府から偉大な起業家が生まれるかも
しれない。
きなときにデータを取り出したり、整理ができる」と話す。
サービスで管理してもらうことも考えている。そうすれば家で好
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異文化の風
〝もろ刃の剣〟…弊害も
)=男性、アジア太平洋マネジメント学部(APM)=。
「僕たちがインターネットを一番利用するのは、家族に電話
をするときです」と、シンガポール出身のリー・アルビンさん
(
「マイクとイヤホンをパソコンにつないで、専用ソフトを立
ち上げるだけでOK。通話の音質は落ちるけど、そんなこと気
になりません。だってお金がほとんど要らないんだから」
パソコン同士のインターネット電話は、通話に掛かる料金は
基本的にプロバイダー(接続業者)までの接続料と通話料だけ。
相手が普通の電話でもつながり、その場合はインターネット電
話の提供業者に利用料を払うが、それでも国際電話よりはるか
に安い。
「APU―Netはそれ自体がプロバイダーの役割を果たし
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学生の間でパソコン通で知られるザギー・サイメさん(左)。友人の前で自分のパ
ソコンをいとも簡単に分解してみせた。パソコンは子どものころから独学で勉強
しており、プロクラムの作成や修復はお手の物。彼のように高度な専門知識を持
つ人は〝パワー・ユーザー〟と呼ばれる特別な存在という。父親が日本の大企業
と取引のある会社を経営しており、将来の後継者を目指し、勉学に励んでいる
異文化の風
ます。自宅でもパソコンがあれば、APUへの接続料(三分十円)
だけで済みます」とリーさん。若者は節約のための〝知恵〟を心
得ている。
教室のほか、図書館内のマルチメディアルームや学生寮のAP
ハウスなどに約八百台のパソコンを設置し、学生に開放している。
恵まれた環境のようだが、学生たちには不満も。「全教室を開
放してくれないので、パソコンが必要なテスト前や昼休みなどに
)=千葉県出身、APM=。
混 雑 し ま す。 故 障 し て 使 え な い ケ ー ス も 多 い 」 と、 深 沢 彰 さ ん
(
大学側も問題を認識しており、永松利文助教授は「四月以降、
学生数が現状の二倍になればパソコンの絶対数は足りなくなる。
建設中の第二APハウスをはじめ、学内にパソコンを増やす方向
で検討中だが、海外の大学では基本的には学生自身がそろえてい
る。すべて望み通りにするのが果たしていいことなのか」と言う。
「APU―Netを利用すれば、リポートの提出のほか、大学
や教員のホームページから授業の内容を再確認できます。体調が
)=
悪いときなどは本当に助かります。でも授業に出席しないなど悪
用もできますね」と、カナダ出身のザギー・サイメさん(
男性、APM=。
たばかりだ。
文=田中竜、写真=青木茂之
や知識・学問の向上にどう役立つのか―、APUの挑戦は始まっ
ITは〝もろ刃の剣〟でもある。便利さを追求すると、その分
だけいろんな問題が起きてくるのも事実。IT革命が学生の生活
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異文化の風
■オオイタデジタルブックとは
追加情報を受けながら逐次、改訂して充実発展を
オオイタデジタルブックは、大分合同新聞社と
図っていきたいと願っています。情報があれば、
学校法人別府大学が、大分の文化振興の一助とな
ぜひ NAN-NAN 事務局にお寄せください。
ることを願って立ち上げたインターネット活用プ
NAN-NAN では、この「ふるさとの野の仏たち」
ロジェクト「NAN-NAN(なんなん)」の一環です。
以外にもデジタルブック等をホームページで公開
NAN-NAN では、大分の文化と歴史を伝承して
しています。インターネットに接続のうえ下のボ
いくうえで重要な、さまざまな文書や資料をデジ
タンをクリックすると、ホームページが立ち上が
タル化して公開します。そして、読者からの指摘・
ります。まずは、クリック!!!
大分合同新聞社
別 府 大 学
デジタル版「異文化の風」
第 2 部
2009 年 1 月 9 日初版発行
共著 共同通信社大分支局/大分合同新聞社編集局
原著 2002 年 6 月 17 日発行/発行:大分合同新聞社
/制作・発売:大分合同新聞社文化センター/印刷:佐伯印刷
《デジタル版》
編集 大分合同新聞社
制作 別府大学メディア教育・研究センター 地域連携部
発行 NAN-NAN 事務局
(〒 870-8605 大分市府内町 3-9-15 大分合同新聞社 総合企画部内)
ⓒ 共同通信社・大分合同新聞社
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