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2-3 著作権 2-3-1 概説 台湾と日本両国間では国交の断絶状態は当分

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2-3 著作権 2-3-1 概説 台湾と日本両国間では国交の断絶状態は当分
2-3 著作権
著作権法の改正によって、WTO 加盟国所属の国民の著作物は台湾に於いても原則上創作主義に基
づいて著作権が認められて来た。著作権者である事実を立証するための書物や記録を厳重に用意し
て権利行使に生かせることが重要であるほか、ライセンスを与える場合でも複製許諾の範囲と形態
が明確であることを心がける必要がある。
2-3-1 概説
■台湾と日本との条約関係
1945 年台湾は戦後日本統治の終え、中華民国国民政府に接収されてきた。中華民国は 1971 年頃
まで国連の加盟国であり続けたが、中華人民共和国との確執で同年国連から脱退したのをきっかけ
に、国連傘下の国際条約加盟国の資格を殆ど放棄したか剥奪されてきた。
1972 年以降から、日本を含めて西側主要諸国は次々に中国と国交樹立を実現、同時に台湾と国交
断絶を実行するようになった。中華民国と日本との戦後講和条約も、とうとう締結しまわずに日本
から国交断絶されてしまった。国連離脱と国交断絶のなか、台湾は日本等主要国と正式の条約の締
結が極めて困難な状況が現在まで継続している。
国際政治の岐路に立たされる台湾は、国交断絶の前提に実質外交を展開して、特に積極的に米国
や日本等経済大国とは経済貿易関連の双方協定の締結に基づいて国際貿易の活発化を促進してき
た。
特許と商標権の保護と優先権の主張に関する二国間の協定は、台湾と日本の間には既にそれぞれ
1960 年代と 1990 年代より実現されてきたが、著作権保護の相互協定はとうとう台湾の WTO 加盟の
正式発効日の 2002 年が実までになっても実現されていなかった。
台湾と日本両国間では国交の断絶状態は当分改善され難いが、台湾のWTO加盟を機に、多辺条約の
加盟国同士としての協力関係が再構築されつつある。台湾はベルヌ条約でもローマ条約でもの加盟
国でないため、両条約の正式の拘束力を受けていない。
一方、WTO の加盟国に遵守義務が課される TRIPs の内容に合致するために、台湾は著作権法を含
め知的財産法制度と権利行使の効率性全般に関する国際調和を 1990 年代以降の 10 年間以上の複数
の法改正を推進してきた。TRIPs の規定が概ね前期のベルヌ条約とローマ条約の主旨をカバーする
とすれば、台湾の知的財産制度も概してそれぞれの条約に対応しているといえよう。
2002 年元日以降、台湾がWTO加盟する拘束力が正式に発効すると共に、同条約が規定する各分野の
知的財産権の保護に関する加盟国の国民への国民同等待遇の法律効果がが正式に発行した。そのた
め、懸案となった台湾に於ける日本国民や法人の著作権の保護に関する空白の状態が終焉を告げ、
日本の国民と企業がほぼ日本と世界各地域における同等の著作権の権利の主張と保護を受けるこ
とができるようになる。勿論台湾に於ける著作権の内容と権利行使の方式は台湾の法律に従うこと
になる。
35
2-2 台湾の著作権法制度
2-2-1 著作権の概念について
台湾は 1895 年から 1945 年の半世紀に渡る日本殖民統治を経たので、その間の著作権法は日本の旧著作
権法を因襲していた。1945 年大戦終息より、台湾は国民党政府がもたらす法制度を受け継ぐようになる
が、それでも欧州と日本を支配する大陸法体系(civil law)を中心とする法制度の運行が継続された。
従来から成文法に依存する法体系に著作権法が台湾で積極的に改正され、重視されるようになった契
機は、1985 年の著作権法大改正だったといえよう。同年度の改正法では、著作権登録発生主義を廃止し、
創作保護主義を導入することによって画期的な制度面の更新を実現した。著作権業務の主務官庁も元来
の行政院内政部傘下の「著作権審定委員会」より、同部の「著作権委員会」に名称変更された。1999 年に
知的財産権保護を強化する施策の一環としてどう実現された主務官庁の組織再編の一環として、「知的財
産局(Taiwan Intellectual Property Office / TIPO)」が新たに設けられた。同局は、行政院経済部の
直轄機関であり、日本の特許庁と同じく特許と商標の権利取得のための出願業務を管轄するほか、著作
権法関連業務も総括する。従って著作権業務の主務官庁は半世紀以上振りに行政院内政部より知的財産
局に移った。これにより、台湾に於ける著作権の法体制とその運行は、知的財産権を代表する特許、商標
と並んで、従来の文化や教育を支える公的資産の性格を一層希薄化させる上、権利者と産業の資産とし
て保護されるべきビジネス・オブジェクトの性格を強めてきたように思われる。
WTO 加盟を目指して、台湾製府は 1998 年 1 月 21 日付け及び 1001 年 11 月 12 日付け発効の著作権法改
正案を法律化してきたが、何れも WTO の基本要請対応の小幅な修正で、インターネットを利用するデジ
タル通信技術の躍進に対応するための修正は殆どなかった。
2002 年以降では、WTO 加盟後の立法施策の補遺を含め、米国等諸外国の要請と日進月歩のデジタル通
信技術による著作権を取り巻く環境の激変に有効に対応すべく、台湾は著作権法の回改正を二回ほど経
た。最近に行われた法改正は 2003 年 6 月に発行したものである。
日本企業と個人の著作権は、2004 年の著作権法改正で、台湾に於いても一層有効に WTO 加盟国
並みの保護を受けて権利行使も正常に展開できるようになってきました。
2-2-2 著作権の保護対象物について
■前置き
著作物の分類に関して、著作権法は例示の規定を置いてある。主に第 5 条がそれに該当する。
一方、第 5 条を含め著作権法の用語の定義を巡って、本法第 3 条が詳細の規定を設けてある。2003
年 6 月発効の改正法では公開放送の定義を更に明確化するほか、公開伝送と「電子的著作権管理情
報」に関して定義の増設の改正が施されてた。後の 2004 年の法改正は更にデッドコピー防止措置:
著作権者が他人が無断に著作に侵入すること又はそれを利用することを有効に禁止又は制限するた
めに儲ける設備、機材、部品、技術若しくは其の他の科学技術手段に関する規定を増設した。。
2004 年改正著作権法新旧条文対照表
2004 年 8 月 27 日立法院を通過
2004 年 9 月 1 日付総統令公布
(新設 1 ヶ条、修正 13 ヶ条)
改 正 条 文
現 行 条 文
(2004 年 9 月 1 日公布)
(2003 年 7 月 9 日公布)
この法律における用語の意義は下記の通
第3条
この法律における用語の意義は下記の通 第 3 条
りとする。
りとする。
一. 著作物:文学、科学、芸術若しくはその他
一. 著作物:文学、科学、芸術若しくはその他
の学術の範囲に属する創作物をいう。
の学術の範囲に属する創作物をいう。
二. 著作者:著作物を創作する者をいう。
二. 著作者:著作物を創作する者をいう。
三. 著作権:著作物の完成により生じる著作人格 三. 著作権:著作物の完成により生じる著作人格
権及び著作財産権をいう。
権及び著作財産権をいう。
四. 公衆:不特定の者又は特定且つ多数の者をい 四. 公衆:不特定の者又は特定且つ多数の者をい
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う。但し家庭及びそれと正常の社交関係にある
多数の者はこの限りでない。
五. 複製:印刷、複写、録音、録画、撮影、筆記
その他の方法により直接、間接、永久又は一時
的に再製することをいい、脚本、音楽の著作物
その他これに類する著作物の実演、放送を録音
し、又は録画すること、また建築に関する設計
図若しくは模型に従って建築物を完成するこ
ともこれに属する。
六. 公開口述:口述又はその他の方法により著作
物の内容を公衆に伝達することをいう。
七. 公開放送:公衆に直接聞かせ又は見せること
を目的として、有線電気通信、無線通信その他
の設備の放送システムによる送信を行うこと
により、音声若しくは映像を通じて著作物の内
容を公衆に伝達することをいう。原放送者以外
の者によって、有線電気通信、無線通信その他
の設備の放送システムによる送信を行うこと
により、元放送されていた音声若しくは映像を
公衆に伝達することもこれに属する。
八. 公開上映:単一又は複数の視聴機器その他映
像を伝送する方法により、同一の時間に著作物
の内容を現場若しくは現場以外の一定の場所
にいる公衆に伝達することをいう。
九. 公開実演(上演・演奏):演技、舞踊、歌唱、
楽器の演奏その他の方法により著作物の内容
を現場の公衆に伝達することをいう。拡声器そ
の他の装置により元放送されていた音声又は
映像を公衆に向けて伝達するのもこれに属す
る。
十. 公開伝送:有線電気通信、無線通信の電気
十. 公開伝送:有線電気通信、無線通信の電気
通信回路その他の通信方法により、音声又は映
通信回路その他の通信方法により、音声又は映像
像を通じて公衆に対して著作物の内容を提供
を通じて公衆に対して著作物の内容を提供し又
し又は伝達することをいい、公衆が各自に選定
は伝達することをいい、公衆が各自に選定する時
する時間に、又は場所において上記の方法によ
間に、又は場所において上記の方法により著作物
り著作物の内容を受信することを含むものと
の内容を受信することを含むものとする。
する。
十一. 改作:翻訳、編曲、書き換え、映画の撮影
十一. 改作:翻訳、編曲、書き換え、映画の撮影
又はその他の方法により原作品について別途
又はその他の方法により原作品について別途
創作をすることをいう。
創作をすることをいう。
十二. 頒布:有償であるか又は無償であるかを問
わず、著作物の原作品若しくは複製物を公衆の 十二. 頒布:有償であるか又は無償であるかを問
わず、著作物の原作品若しくは複製物を公衆の
取引又は流通に提供することをいう。
取引又は流通に提供することをいう。
十三. 公開展示:公衆に著作物の内容を展示する
十三. 公開展示:公衆に著作物の内容を展示する
ことをいう。
ことをいう。
十四. 発行:権利者が公衆の合理的需要を満足さ
十四. 発行:権利者が公衆の合理的需要を満足さ
せることのできる複製物を頒布することをい
せることのできる複製物を頒布することをい
う。
う。
十五. 公表:権利者が発行、放送、上映、口述、
十五. 公表:権利者が発行、放送、上映、口述、
実演(上演・演奏)、展示その他の方法により
実演(上演・演奏)、展示その他の方法により
著作物の内容を公衆に提示することをいう。
著作物の内容を公衆に提示することをいう。
十六. 原作品:著作物に最初固定されているも
十六. 原作品:著作物に最初固定されているも
のをいう。
のをいう。
十七. 電子的権利管理情報:著作物の原作品又
はその複製物において、又は著作物の公衆への 十七. 電子的権利管理情報:著作物の原作品又
はその複製物において、又は著作物の公衆への
伝達がなされるときに表示される著作物、著作
伝達がなされるときに表示される著作物、著作
の名称、著作者、著作財産権者又はその利用許
の名称、著作者、著作財産権者又はその利用許
諾を受けた者及び利用期間若しくは条件を特
う。但し家庭及びそれと正常の社交関係にある
多数の者はこの限りでない。
五. 複製:印刷、複写、録音、録画、撮影、筆記
その他の方法により直接、間接、永久又は一時
的に再製することをいい、脚本、音楽の著作物
その他これに類する著作物の実演、放送を録音
し、又は録画すること、また建築に関する設計
図若しくは模型に従って建築物を完成するこ
ともこれに属する。
六. 公開口述:口述又はその他の方法により著作
物の内容を公衆に伝達することをいう。
七. 公開放送:公衆に直接聞かせ又は見せること
を目的として、有線電気通信、無線通信その他
の設備の放送システムによる送信を行うこと
により、音声若しくは映像を通じて著作物の内
容を公衆に伝達することをいう。原放送者以外
の者によって、有線電気通信、無線通信その他
の設備の放送システムによる送信を行うこと
により、元放送されていた音声若しくは映像を
公衆に伝達することもこれに属する。
八. 公開上映:単一又は複数の視聴機器その他映
像を伝送する方法により、同一の時間に著作物
の内容を現場若しくは現場以外の一定の場所
にいる公衆に伝達することをいう。
九. 公開実演(上演・演奏):演技、舞踊、歌唱、
楽器の演奏その他の方法により著作物の内容
を現場の公衆に伝達することをいう。拡声器そ
の他の装置により元放送されていた音声又は
映像を公衆に向けて伝達するのもこれに属す
る。
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諾を受けた者及び利用期間若しくは条件を特
定するに足る電子的関連情報をいい、数字、符
定するに足る電子的関連情報をいい、数字、符
号を用いてこれらの情報を表示するものもこ
号を用いてこれらの情報を表示するものもこ
れに属する。
れに属する。
十八. デッドコピー防止措置:著作権者が他人
が無断に著作に侵入すること又はそれを利用す 2 前項第 8 号にいう現場若しくは現場以外の一定
の場所とは、映画館、倶楽部、ビデオテープ若し
ることを有効に禁止又は制限するために儲ける
設備、機材、部品、技術若しくは其の他の科学技 くはレーザーディスクが再生される場所、旅館
(ホテル)の部屋、公衆の使用に供される交通機
術手段。
関その他不特定の者の出入りに供される場所を
含む。
2 前項第 8 号にいう現場若しくは現場以外の一定
の場所とは、映画館、倶楽部、ビデオテープ若し
くはレーザーディスクが再生される場所、旅館
(ホテル)の部屋、公衆の使用に供される交通機
関その他不特定の者の出入りに供される場所を
含む。
2-2-3 ■台湾著作権法の権利保護対象に関する説明
著作権法が著作物として認められるものは①著作物の内容と表現媒体の種類の概念と、②創作段階の
概念など概ね二つのジャンルに分けられている。
著作物の内容と表現媒体の種類で分類するのは第 5 条の規定である。著作権法に列挙された著作物は
十項目あり、その存続期間はそれぞれ異なる。
第 5 条 この法律にいう著作物を例示すると、次の通りである。(著作物として保護される対象)
一 言語の著作物
二 音楽の著作物
三 演劇、舞踊の著作物
四 美術の著作物
五 撮影の著作物
六 図形の著作物
七 視聴覚著作物
八 録音の著作物
九 建築の著作物
十 コンピュ−タプログラムの著作物
(注:撮影、視聴覚、録音及び実演の著作に関する著作財産権の権利期間は著作公表後 50 年間を
経過するまでとする。その他の著作物は原則として著作者の生存している間、及び死後 50 年間
を経過するまでの間、存続する。)
2 前項各号に例示された著作物の内容は、主務官庁がこれを定める。
著作権法第 5 条第 1 項各号の著作物内容例示規則
行政院内政部はかつて 1992 年に著作権法第 5 条で示される著作物の具体内容を例示する規定を頒
布したことがある。
同規則第 2 条によると、次の対象物がそれぞれのジャンルに該当することが分かる。
著作権法第 5 条の分類項目
一 言語の著作物
特別規則の例示対象物
詩、詞、散文、小説、演劇脚本、学術論文、講演原稿、其
の他。
二
音楽の著作物
楽譜、歌詞、其の他。
三
演劇、舞踊の著作物
舞踏、黙劇、歌劇、話劇及び其の他の演劇や舞踏著作物。
四
美術の著作物
絵画、版画、漫画、コミックス、動画、素描、書法、字形
絵画、彫刻、美術工芸品と其の他。
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五
撮影の著作物
写真、スライド写真(投影フイルム)、其の他撮影の制作方
法によって創作される著作物。
六
図形の著作物
地図、図表、科学技術や工程設計図及び其の他。
七
視聴覚著作物
映画、録画、ディスクビデオ、電脳ディスプレイに表示さ
れる映像、及び其の他器械や設備によって表現される系列
映像であれば、音声の付随如何を問わず、あらゆる媒体物
に付することの出来る著作を指す。
八
録音の著作物
あらゆる機会や設備によって表現される系列音声で、それ
があらゆる媒体に付することが出来る著作物を指す。但し
視聴覚著作物に付随する音声はそれに該当しない。
九
建築の著作物
建築設計図、建築模型、建築物及び其の他建築著作。
十
物
コンピュ−タプログラムの著作 直接的に又は間接的に電脳に一定の機能や結果を発生さ
せることを目的とする組み込まれる指令の組み合わせか
らなる著作物を指す。
尚、同規則第 3 条は、著作権法第 6 条及び第 7 条による編集著作物は、それらの性格によって前項
各号の分類に該当することとする。
2-2-4 著作物の創作段階で分類されるものは、原始著作物と相対的な概念で捉えられるもの。
A 二次的著作物
第 6 条は、「原著作物を改作した創作は二次的著作物であり、独立の著作物としてこれを保護する。
二次的著作物の保護は、原著作物の著作権に影響を及ぼさない。」と規定している。
B 編集著作物
第 7 条は「資料の選択及び編集・レイアウトにつき独創性を有するものは、編集著作物であり、独立
の著作物としてこれを保護する。
2 編集著作物の保護は、それに収録された著作物の著作権に影響を及ぼさない。」と規定する。
2-2-5 特殊著作物
A 実演著作物
演劇と舞踊の著作物のほか、演技、舞踊、歌唱、楽器の演奏その他の方法により著作物の内容を現場
の公衆に伝達することを公開実演(上演・演奏)という。拡声器その他の装置により元放送されていた音
声又は映像を公衆に向けて伝達するのもこれに属する。(第 3 条第 9 号)小説は朗読の対象になれるのと、
音楽作品は演出や演奏によって発表されることは従来の概念のとおりの実演だが、拡声器やその他の装
置によって放送するのも実演と見なされることに留意したい。すなわちここで言う「実演」は生やライ
フの演出の形態に限定されていない。
実演著作物に関して、台湾は独立した著作物として扱う。
*第 7 条ノ 1 実演家が現存の著作物又は民俗的創作をもとにした実演は独立の著作物としてこれを保護
する。 2 実演に対する保護は原著作物の著作権に影響を及ぼさない。
また第 26 条により、著作者はこの法律に別段の定めがない限り、その言語、音楽又は演劇、舞踊の著
作物を公に実演(上演・演奏)する権利を専有するとされているが、しかし一旦ある実演かによって(合
法的に)実演されてしまった後、その実演家は、拡声器その他の機材でその実演を公に上演・演奏する権
利を専有する。但し、その実演を複製し、又は公開放送した後にさらに拡声器その他の機材で公開に演
出する場合は、この限りでない。すなわち、原則上実演家は実演の生放送に関してのみ専属はいた件を有
する。
その他第 28 条ノ 1 では、著作権者は、本法に別段の定めがある場合を除き、所有権を移転する方法に
よりその著作を頒布する権利を専有すると規定する一方、実演家は、その実演が録音の著作物に複製さ
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れたものについて、所有権を移転する方法によりこれを頒布する権利を専有する。
B 録音著作物
録音著作物はもとより第 5 条第 1 項第 8 号で著作物として認定されているが、台湾では録音物につい
て他にも多数の条文を以って特段の規定を設けることを注目すべきである。米国を中心とする歌謡曲業
界のアルバム販売権益の保護を重視する行政上の配慮がうかがわれる。
録音著作物権利者の権利と実演家の権利との折り合いは少し複雑な関係にある。
*第 26 条によれば録音の著作物が公に実演された場合、著作者は公開実演をした者に対して利用報酬
(使用料)の支払いを請求することができる。尚前項の録音著作物に関する実演が複製された場合は、
録音著作物の著作者及び実演家が共同して利用の報酬の支払いを請求する。その一方が先に請求したと
きは、利用の報酬を他方に分配しなければならない。
その他第 28 条ノ 1 では、著作権者は、本法に別段の定めがある場合を除き、所有権を移転する方法
によりその著作を頒布する権利を専有すると規定する一方、実演家は、その実演が録音の著作物に複製
されたものについて、所有権を移転する方法によりこれを頒布する権利を専有する。
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2-2-6 著作権保護の実態
下記のたいそう商品に関しては、それぞれ特定種類の著作物に該当して、関連の著作物の権利者が
権利を主張して、台湾で著作権の保護を受けられる。
同一の商品に関して複数の著作権者が平行して権利行使できる状況もありうる。例えば演劇著作物
を視聴著作物に作成して発効される著作物を無断複製するものは、演劇の原著作者と、脚本著作者、
その他振り付け著作者、実演者、視聴著作物の作成者等の著作権者の権利を侵害することになるので、
それぞれの権利者によって権利行使を受けることがある。
実際の商品
出版物:雑誌、小説刊行物、漫
画
特別規則の例示対象物
詩、詞、散文、小説、演劇脚本、
学術論文、講演原稿、其の他。
著作権法第 5 条の分類項目
一 言語の著作物
カラオケ新譜集、カラオケ伴奏、 楽譜、歌詞、其の他。
二
音楽の著作物
宝塚演劇の録画テープや DVD、オ
ペラ公演 DVD
舞踏、黙劇、歌劇、話劇及び其の他
の演劇や舞踏著作物。
三
演劇、舞踊の著作物
漫画本、キャラクター商品、デ
ザイン商品
絵画、版画、漫画、コミックス、
動画、素描、書法、字形絵画、彫
刻、美術工芸品と其の他。
四
美術の著作物
世界の夜景 DVD
写真集、各種百貨図鑑、
写真、スライド写真(投影フイル
ム)、其の他撮影の制作方法によっ
て創作される著作物。
五
撮影の著作物
平面地図集、データ地図商品、
ナビデータ DVD、DVD 電子地図集
地図、図表、科学技術や工程設計
図及び其の他。
六
図形の著作物
映画、
トレンディードラマ DVD・VCD,
漫画動画 DVD・VCD,
コンサート DVD・VCD
宝塚演劇の録画テープや DVD、オ
ペラ公演 DVD
世界の夜景 DVD
映画、録画、ディスクビデオ、電
脳ディスプレイに表示される映
像、及び其の他器械や設備によっ
て表現される系列映像であれば、
音声の付随如何を問わず、あらゆ
る媒体物に付することの出来る著
作を指す。
七
視聴覚著作物
音楽 CD、
名作の朗読 CD
日本おとぎ話 CD
あらゆる器械や設備によって表現
される系列音声で、それがあらゆ
る媒体に付することが出来る著作
物を指す。但し視聴覚著作物に付
随する音声はそれに該当しない。
八
録音の著作物
建築設計図、内装設計図、
建築設計図、建築模型、建築物及
び其の他建築著作。
九
建築の著作物
3D ソフト、各種電脳ソフト、
直接に又は間接的に電脳に一定の
機能や結果を発生させることを目
的とする組み込まれる指令の組み
合わせからなる著作物を指す。
十 コンピュ−タプログラム
の著作物
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2-2-7 著作権の保護対象から除外されるもの
著作権法第 9 条は著作物の権利対象から除外される者を列挙する。次のものは、著作者は著作権を主
張でないとされている。著作財産権のほか、著作人格権の存在も否定されている。著作権の対象から除
外されるものは根本的且つ絶対的に著作物として見なされないので、著作権を前提とする「合理的利用」
の相対的な概念と異なる。
一. 憲法、法律、命令或は公文書。公文書とは、公務員が職務上書き上げた告示文書の原稿、演説の
原稿、新聞の原稿及びその他の文書を含む。
二. 中央或いは地方官庁が前号の著作物について作成した翻訳物或いは編集物。
三. 標語及び通用の記号、名詞、公式、図表、記入用紙、帳簿或いはカレンダー。
四. 単に事実を伝達する新聞報道からなる言語著作物。
五. 法令により行なわれる各種の試験問題及びその予備用の試験問題。
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2-3-1 罰則規定について説明
(1) 各種の罪名の規定
複製権の侵害
営利目的の侵害
*第 91 条 営利を目的として複製の
方法をもって他人の著作財産権を侵
害した者は、5 年以下の懲役、拘留に
処し、又は新台湾ドル 20 万元以上
200 万元以下の罰金を併科する。
非営利目的の侵害
2 非営利目的で複製の方法に
より他人の著作財産権を侵害
し、その複製の部数が五点を超
え、又は摘発された時点で合法
的複製物の時価にしてその侵
害総額が新台湾ドル 3 万元を超
えたときは、3 年以下の懲役、
拘留に処し、又は新台湾ドル 75
万元以下の罰金を科し又はこ
れを併科する。
光ディスク形態の侵害
3 光ディスクに複製する方法
により、第 1 項の罪を犯したも
のは、5 年以下の懲役、拘留に
処し、又は新台湾ドル 50 万元
以上 500 万元以下の罰金を併科
する。
■
例外的な公訴罪
頒布権の侵害
*第 91 条ノ 1 営利を目的として所
有権を移転する方法により著作物の
原作品又はその複製物を頒布し他人
の著作財産権を侵害したものは、3
年以下の懲役、拘留に処し、又は新
台湾ドル 75 万元以下の罰金を科し
又はこれを併科する。
2 非営利目的で所有権を移転 3 第 1 項の罪を犯し、その複
する方法により著作物の原作 製物が光ディスクであるとき
品又はその複製物を頒布し、又 は、3 年以下の懲役、拘留に処
は頒布を意図して公開に陳列 し、又は新台湾ドル 150 万元以
し若しくは所持し、他人の著作 下の罰金を科する。
財産権を侵害した場合、頒布の
部数が五点を超え、又は摘発さ ■ 例外的な公訴罪
れた時点で合法的複製物の時
価にしてその侵害総額が新台 4 前項の罪を犯した者がその
湾ドル 3 万元を超えるときは、 物品の出所を供述し、これによ
2 年以下の懲役、拘留に処し、 り(捜査機関による)検挙が成
又は新台湾ドル 50 万元以下の 功したときは、その刑を軽減す
罰金を科し又はこれを併科す ることができる。
る。
公開口述、
公開放送、
公開上映、
公開実演、
公開伝送、
公開展示、
改作、
編集又は
貸与等の
方法による侵
害
第 70 条「音楽著
作物の強制利
用許諾を得た
ものに対する
複製物の台湾
生きがい輸出
の制限」を違反
する罪と第 87
条「著作権侵害
と見なされる
行為態様」を構
成するものに
課する罪
*第 92 条 営利を目的として公開
口述、公開放送、公開上映、公開実
演、公開伝送、公開展示、改作、編
集又は貸与の方法により他人の著作
財産権を侵害した者は、3 年以下の
懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル
75 万元以下の罰金を併科する。
2 非営利目的で前項の罪を犯
し、その侵害した著作物が五点
を超え、又は権利者が受けた損
害が新台湾ドル 3 万元を超える
ときは、2 年以下の懲役、拘留
に処し、又は新台湾ドル 50 万
元以下の罰金を科し又はこれ
を併科する。
*第 93 条 営利を目的として次に
掲げる場合のいずれかに該当するも
のは、2 年以下の懲役、拘留に処し、
又は新台湾ドル50 万元以下の罰金を
併科する。
一. 第 70 条の規定に違反したと
き。
二. 第 87 条第 2 号、第 3 号、第
5 号又は第 6 号の方法により他人の
著作財産権を侵害したとき。
2 非営利目的で前項の罪を犯し、そ
の複製物が五点を超え、又は権利
者が受けた損害が新台湾ドル 5 万
元を超えるときは、1 年以下の懲
43
役、拘留に処し、又は新台湾ドル
25 万元以下の罰金を科し又はこ
れを併科する。
無断複製、
頒布
公開口述、
公開放送、
公開上映、
公開実演、
公開伝送、
公開展示、
改作、
編集又は
貸与等の
方法による侵
害の常習犯の
罰則
第 112 条「早期
無断翻訳著作
物の継続無断
複製と販売の
罪」
*第 94 条
第 91 条第 1 項、第 2 項、
第 91 条ノ 1、第 92 条又は第 93 条に
定める犯罪を業とする者は、1 年以
上 7 年以下の懲役に処し、並びに新
台湾ドル30 万元以上 300万元以下の
罰金を併科することができる。
2 第 91 条第 3 項に定める犯罪を業
とする者は、1 年以上 7 年以下の懲
役に処し、並びに新台湾ドル 80 万元
以上 800 万元以下の罰金を併科する
ことができる。
第 59 条「電脳
プログラム著
作物の非合理
的複製」と
第 64 条の「合理
的利用の際の
原作出所明示
義務」と「著作
者指名明示義
務」違反の罪
第 80 条ノ 1「権
利管理に関す
る電子情報」を
無断に削除或
いは変更の罪
第 96 条 第 59 条第 2 項又は第 64 条
の規定に違反したものは、新台湾ド
ル 5 万元以下の罰金を科する。
罰金裁量の際
犯人の資力を
斟酌する根拠
規定
*第 96 条ノ 3 本章により罰金を科
するときは、犯人の資力及び犯罪収
益を斟酌しなければならない。犯罪
収益が罰金の最も多い額を超えると
きは、その犯罪収益の範囲内で情状
を考慮して加重することができる。
■例外公訴罪
*第 95 条
第 112 条の規定に違反し
たものは、1 年以下の懲役、拘留に
処し、又は新台湾ドル2 万元以上 25
万元以下の罰金を科し又はこれを併
科する。
*第 96 条ノ 1 第 80 条ノ 1 に違反し
たものは、1 年以下の懲役、拘留に
処し、又は新台湾ドル 2 万元以上 25
万元以下の罰金を科し又はこれを併
科する。
44
(2)没収、提訴条件等関連処分の規定
第 97 条
犯罪関連器具
の没収の規定
削除
*第 98 条 第 91 条から第 96 条ノ 1
までの規定に定める犯罪に関し、犯
罪の用途に供され、又は犯罪により
得た物は、これを没収することがで
きる。但し、第 91 条第 3 項及び第
91 条ノ 2 第 3 項に定める犯罪に関し、
没収し得る物は犯人に属するものに
限らない。
*第 98 条ノ 1 第 91 条第 3 項又は第
91 条ノ 2 第 3 項に定める犯罪を犯し
た行為者が逃げ失せ、確認するすべ
がない場合、犯罪の用途に供され、
又は犯罪により得た物について、司
法警察機関は直接これを官没するこ
とができる。
2 前項官没に係る物について、官没
された金員を国庫に納めるほか
は、これを焼却する。その焼却又
は官没金の処理手続については、
社会秩序保護法の関連規定を準用
してこれを扱う。
第 99 条
削除
親告罪の原則
と例外的な公
訴罪の規定
*第 100 条 本章の罪は告訴をまっ
て論ずる。但し、第 91 条第 3 項、第
91 条ノ 1 第 3 項及び第 94 条の罪は
この限りでない。
認許のない外
国法人の提訴
と告訴権
*第 102 条 認許を受けない外国法人
は、第 91 条から第 96 条ノ 1までの
罪に対して告訴し又は自訴を提起す
ることができる。
(3) 法人の連座刑事責任
法人の連座刑
事責任
*第 101 条 法人の代表者、法人若し
くは自然人の代理人、又は被用者そ
の他の従業員が、業務の遂行により
第 91 条から第 96 条ノ 1までの罪を
犯したときは、各当該規定によりそ
の行為者を処罰するほか、当該法人
又は自然人に対しも各当該条文に定
める罰金を科する。
2 前項の行為者、法人又は自然人の
一方に対して為した告訴又は告訴
の取り下げは、他方にも効力が及
ぶ。
司法警察官の
強制処分権
第 103 条 司法警察官又は司法警察
は、他人の著作権又は出版権を侵害
45
することで告訴され、告発された者
に対して、法によりその侵害物品を
差押え、送検することができる。
第 104 条 削除
46
2-3-2 著作権の登録制度について
著作権の登録制度は 1970 年代から廃止されている。
一方、著作権の出版権は尚残っている。
■ 関連条文一覧
第 4 章 出版権
第 4 章 出版権
*第 79 条 著作財産権がなく、又は著作財産権が消 第 79 条 著作財産権がなく、又は著作財産権が消
滅した文字的著述又は美術の著作物について、出版 滅した文字的著述又は美術の著作物について、出版
者が文字的著述を整理、印刷し又は美術著作物の原 者が文字的著述を整理、印刷し又は美術著作物の原
作品を複写し、印刷し又はこれらに類する方法によ 作品を複写し、印刷し又はこれらに類する方法によ
り複製のうえ最初に発行し、並びに法により登記を り複製のうえ最初に発行し、並びに法により登記を
した場合には、出版者はその版面につき、複写し、 した場合には、出版者はその版面につき、複写し、
印刷し又はこれらに類する方法により複製する権 印刷し又はこれらに類する方法により複製する権
利を専有する。
利を専有する。
2 出版者の権利は、出版完成時から起算して 10 年 2 出版者の権利は、出版完成時から起算して 10 年
存続する。
存続する。
3 前項の保護期間は、当該期間が満了する当年の 3 前項の保護期間は、当該期間が満了する当年の
最終日を以て期間の終了とする。
最終日を以て期間の終了とする。
4 出版権の譲渡又は信託は、登記を経なければ、 4 第 1 項の登記方法は、信託主務官庁がこれを定
める。
第三者に対抗することができない。
5 出版権登記、譲渡登記、信託登記及びその他遵
守すべき事項の規則は、主務官庁がこれを定め
る。
第 80 条 未修正
第 80 条 著作財産権の消滅に関する第 42 条及び第
43 条の規定、著作財産権の制限に関する第 44 条か
ら第 48 条まで、第 49 条、第 51 条、第 52 条、第 54
条、第 64 条及び第 65 条の規定は、出版権において
これを準用する。
第四章ノ一 権利管理に関する電子情報
*第 80 条ノ 2 著作権者によってなされた権利管理
に関する電子的情報は、これを削除し又は変更する
ことができない。但し、次に掲げる場合のいずれか
に該当するものは、この限りでない。
一.行為時の技術的制限により、著作の
権利管理に関する電子的情報を削除し
又は変更しなければ、当該著作物を合法
的に利用することができない。
二.録音(録画)又は伝送のシステム転
換にあたって、技術上削除又は変更が必
要とされるとき。
2 著作の権利管理に関する電子情報が不法に削除
され又は変更されたことを明らかに知っている場
合は、当該著作物の原作品又はその複製物を頒布
し、又は頒布を意図してそれを輸入し若しくは所持
することができず、また公開放送、公開実演又は公
開伝送をすることもできない。
47
2-3-3 外国人の著作物に対する保護について
日本企業と個人の著作権は、2004 年の著作権法改正で、台湾に於いても一層有効に WTO 加盟国並
みの保護を受けて権利行使も正常に展開できるようになってきました。
台湾著作権法(以下は本法という)は 1928 年 5 月 14 日に施行されて以来、計十回の改正が行われて
きた。近年、インターネットの発達は情報通信及び電子商取引に無限の可能性をもたらす一方、今まで
の著作権法では想定していない事態が生じており、電子ネットワークに流通するデジタル著作物への権
利保護に大きな衝撃を与えている。情報伝達を取り巻く環境が急激に変化し、ボーダレス化が進むなか、
伝統的な法制度ではもはやデジタル化した社会の変革に対応しきれないという現実に、国際社会は直面
している。世界知的所有権機関(WIPO)は IT 社会にいち早く対応するための「WIPO 著作権条約」及び
「WIPO 実演・レコード条約」を 1996 年 12 月に制定し、国際的枠組みにおける著作権保護をより一層充
実させた。ここ数年、同二条約の実施に伴う著作権法改正が各国で進められているが、わが国では、未
だに新たな技術的発展によって生じた諸課題について適切な対応策を打ち出していない。かような次第
で、現下の国際的立法動向を踏まえつつ、インターネットを通じての情報伝達及び電子商取引の活発な
発展を促進し、IT 社会における著作者の権利保護を強化するための、あるべき著作権法制の構築に向け、
新設 14 か条、改正 39 か条、計 53 か条の条文を盛り込んだ本改正案を作成した。今回の改正法は 2003
年 7 月 9 日より施行。
日本の企業や個人にとっては、今回の改正法の施行は従来多種の制限を受ける台湾に於ける日本企業
と個人の著作権の保護と権利行使事項がようやく正常化される画期的な法改正となっています。是非大
にご重視ご活用の程願います。
48
2-3-4 WTO 加盟に伴なう「経過期間」について
改正著作権法が設けた権利行使の「経過猶予措置」
著作権法の改正が日本国民と企業(以下日本人と略す)にとって大きなメリットをもたらしたのは従来
著作権の取得を巡る制限が 2002 年 1 が 1 日をもって大幅に解除されることになり、日本人でも台湾で著
作権を創作主義に基づいて取得できることである。創作主義とは、著作物を創作を完成した時点で創作者
に自動的に著作権が付与される原則である。
2002 年元日は台湾の WTO 加盟の正式発効日となるが、その時点を境に、従来では、日本人の著作物は
台湾で最初の発行をされたもの、或いは台湾以外の地域で発行された場合でもその発効日以降 30 日以内
に台湾で発行されたものでなければ台湾で著作権が与えられないことになり、第三者による海賊品の製
造販売行為に対してもコピーの差止や民事損害賠償請求の追及はできない。同じく、台湾の国民でも日本
で著作権の保護を自動的に受けられなかった。その時代は既に終わった。2002 年元日以降では、日本人
が新規に創作した著作物ならば、創作地を構わず、台湾で著作権の保護が与えられる。他方、2002 年元
日以前に創作された著作物に対しても、原則上著作権も付与される。その辺の著作権が特に台湾に於け
る日本人の著作権保護をめぐって問題を起こすエリアである。一番問題になるのは、2002 年 1 月 1 日以
前から、日本人の著作物を無断コピーを開始した台湾の業者らが、自分らの海賊版印刷物を製造販売する
ための「重大な投資」が、旧に著作権侵害の責任を問われ、継続の使用を差し止められたりするとなると、
酷過ぎるとして、「投資」を回収するために海賊品の製造販売をしばらく継続させてもらうべきとの主張
だった。結局二年間の間はそのまま従来のコピー設備を利用してコピー活動に勤しんでも宜しい旨のい
わゆる著作権保護に関する「経過措置」が導入される運びとなった。無断コピー活動とそのための重大な
投資が 2002 年元日以前から開始されたものなら、2003 年 12 月 31 日まで継続しても、刑事訴追と民事損
害賠償請求を受ける心配がないことである。但し 2003 年 6 月以降の無断コピー品については、損害賠償
とは別の名目の「補償金」を支払う義務がある旨の改正が行われた。
無論他人の原作を無断コピーする海賊品の複製と販売の行為は、開始された時点と関係なく、コピー
品の複製に関わるものは他人の知的所有物をコピーする事実を承知しないままにコピー行為を営むこと
はまず考えられない。しかし、法の見地からすれば、日本人の著作物が台湾でまだ著作権が与えられてい
ない「法律事実」を照らせば、権利すら存在していない対象物に対して誰でも自由にコピーできるはずだ
ろうとの推敲と信頼を主張するのも非難し難い理屈である。権利者不在の状態を確認できる状態で、訴追
されないだろうとの信頼は法律の規定によって生じたものなので、その法律規定がもたらす法律関係を
「信頼」するものは、法律が改正されても、ある程度法律によって最低限の保障を受けられるのはまず
法の正義にかなうと思われる。
かく配慮に基づいて、改正著作権法第 106 条の 1 から第 106 条の 3 は 2002 年元日以前から無断複製行
為を開始したものに対して、二年間の「侵害責任免除の猶予期間」を与えることになった。
早い者勝ちは法の世界でも通用する。不動産でも先占を 20 年すれば自分のものとなり得ると同じよう
に、他人のこぼれ穂を労力をかけて拾い集める人間が拾ったものに対して所有権を主張できるばかりか、
こぼし続けた者が急に緒を締められては生計が立たないことを立証できれば、もうしばらくこぼしても
らうと要求する権利さえ主張できるのと同じである。法律の仕組みから得た既得権利は、法律もまたあ
る程度保障を与える。
2003 年の 12 月 31 日は、たとえ 2002 年元日以前から開始されてきた無断複製海賊行為でも、その日を
以って打ち切らなければならない日付である。海賊品の製造行為の猶予期間の締め切りとなる。一枚 40
元の日本歌手の CD やトレンディードラマの DVD は、これで市場から徐々に消えるだろう。
コピー品の製造行為の猶予期間の締め切りは 2003 年年末ではある一方、が海賊品の在庫の販売は 2004
年 7 月まで延ばされていた。2005 年 2 月現在視察したところ、確かに去年半ば頃まで相当あった廉価日
本語 CD や DVD は殆ど店頭から消えている感じである。
ようやく台湾でも日本の著作権が正常に成立し権利行使が出来る時代に入った。
49
50
▲著作権侵害の摘発に備えるべき物的証拠
①包装箱(パッケージ)、カバーの図面と表記を鮮明に写した海賊版(海賊版)サンプルと写真、
販売店頭や製造工場又は倉庫の様子。
②侵害容疑者によって掲載され、或いは発行された海賊版の広告、日付を証明できるほうがさらに
よい。
③海賊版の販売価格と販売実績を立証できる発売領収書と帳簿。
④海賊版製造又は提供委託の発注書類や契約書、顧客リスト、又は各顧客の発注金額を示した経理
資料。
⑤侵害容疑者の会社情報、主要株主、資本金構成、営業項目乃至主要顧客リストを含む(発注元へ
海賊版の購入を停止するよう勧告するため。但し、公平取引法に引っかかることに要注意)。
⑥複製、印刷、輸送、販売拠点の住所と活動パターン。販売店頭や製造工場又は倉庫の様子。
⑦複製と印刷の設備や機械を提供する者、及びラベルやマークの印刷をする者。
⑧容疑者の故意を立証するための資料:権利者と当該著作権についての通信記録にのコピーや利
用許諾契約書。容疑者が権利者の著作物にアクセスした事実を立証する証拠、例えば係争著作物の
送付領収書等。また、正規品と海賊版の取扱いの違い、収納場所の区別、複数の仕入元の管理形態、
価格設定の格差など。容疑者が海賊版に対する犯罪意識を反映する、手掛かりにできるものならば、
収集すべき情報とみて入手に努めるべきである。
2-3-10近年著作権法の改正法案の重点
2-3-10-1 1998 年の著作権法改正法内容の骨子は大別して次の十項目に分ける。
1.
2.
3.
4.
公開放送の定義を修正し、その範囲を拡大する。
公開実演の定義を修正し、範囲を拡大する。
発行の定義を修正し、複製を要件としない。
実演は保護を受ける著作物であることを明確にし、実演家が著作財産権を享有できる内容を
規定する。
5. 著作権法は思想、概念の表現方法を保護し、思想、概念自体を保護しないという基本原則を
掲示する。
6. 法人の著作は完成された日から 50 年内に(もとは 10 年)に公表されていなければ、その著
作財産権の保護期間は創作が完成された時点から 50 年を経過するまでとする。
7. コンピュータ・プログラムの著作物を含む貨物、機器をレンタルする行為は合理的使用に属
する旨の文言を追加する。
8. もともとは著作権法による保護を受けない著作は、台湾の WTO 加盟実現で保護を受けられる
ように、新たに遡及保護の規定を設ける(第 106 条ノ 1)。
9. 経過措置として二年の猶予期間を与える。WTO 加盟の前に著作権法による保護を受けない外
国の著作物を既に利用していて、WTO 加盟の後、二年内に引き続き利用を継続することを認
める(第 106 条ノ 2)。
10. WTO 加盟の前に著作が改作されことにより作り上げた派生的著作物について、WTO 加盟後に
も引き続きその利用を継続することができるように、二年間の猶予期間を与える。つまり、
WTO に加盟して二年を経過してはじめて使用料を支払う必要がでてくる。(第 106 条ノ 3)
著作権法第 117 条により、「この法律は公布の日から施行する。但し、第 106 条ノ 1 から第
106 条ノ 3 までの規定は、世界貿易機関協定が中華民国(台湾)の管轄区域内において効力を
生ずる日から施行する。」となっている。したがって、前掲 1 7 は 1998 年 1 月 21 日に改正法
が公布されて三日目(1 月 23 日)から施行することになった。一方で、8 から 10 まで遡及保護
に関する規定は台湾が正式に WTO の加盟国になった日から施行する。
このほか、2001 年 11 月にも小幅な改正があった。改正案のうち、TRIPS 協定に関連するのは、
コンピュータプログラムの著作財産権の存続期間を公表後 50 年から著作者の死後 50 年を経過
するまでに延長するところである。また、もう一つポイントとして注目されるのは、水際措置
に関する規定の補完である。第 91 条ノ 1 により、著作権者が自分の著作権を侵害する物品の輸
出入に対して税関に差押えの申立てができ、税関が申立を受理するかどうかは、申立人のその
後の訴訟手続による権利行使に関わるので、受理か不受理かの決定を申立人に通知することに
している。
51
2-3-10-2
2003 年著作権法改正案の重点
*2003 年.03 月.26 日行政院を通過
2003 年 7 月 9 日施行
❒改正の趣旨
日本企業と個人の著作権は、2004 年の著作権法改正で、台湾に於いても一層有効に WTO 加盟国並みの
保護を受けて権利行使も正常に展開できるようになってきました。
台湾著作権法(以下は本法という)は 1928 年 5 月 14 日に施行されて以来、計十回の改正が行われて
きた。近年、インターネットの発達は情報通信及び電子商取引に無限の可能性をもたらす一方、今まで
の著作権法では想定していない事態が生じており、電子ネットワークに流通するデジタル著作物への権
利保護に大きな衝撃を与えている。情報伝達を取り巻く環境が急激に変化し、ボーダレス化が進むなか、
伝統的な法制度ではもはやデジタル化した社会の変革に対応しきれないという現実に、国際社会は直面
している。世界知的所有権機関(WIPO)は IT 社会にいち早く対応するための「WIPO 著作権条約」及び
「WIPO 実演・レコード条約」を 1996 年 12 月に制定し、国際的枠組みにおける著作権保護をより一層充
実させた。ここ数年、同二条約の実施に伴う著作権法改正が各国で進められているが、わが国では、未
だに新たな技術的発展によって生じた諸課題について適切な対応策を打ち出していない。かような次第
で、現下の国際的立法動向を踏まえつつ、インターネットを通じての情報伝達及び電子商取引の活発な
発展を促進し、IT 社会における著作者の権利保護を強化するための、あるべき著作権法制の構築に向け、
新設 14 か条、改正 39 か条、計 53 か条の条文を盛り込んだ本改正案を作成した。今回の改正法は 2003
年 7 月 9 日より施行。
日本の企業や個人にとっては、今回の改正法の施行は従来多種の制限を受ける台湾に於ける日本企業
と個人の著作権の保護と権利行使事項がようやく正常化される画期的な法改正となっています。是非大
にご重視ご活用の程願います。
■2003 年著作権法改正案の重点
*2003 年 3 月 26 日行政院を通過
2003 年 7 月 9 日施行
日本企業と個人の著作権は、2004 年の著作権法改正で、台湾に於いても一層有効に WTO 加盟国並みの
保護を受けて権利行使も正常に展開できるようになってきました。
台湾著作権法(以下は本法という)は 1928 年 5 月 14 日に施行されて以来、計十回の改正が行われて
きた。近年、インターネットの発達は情報通信及び電子商取引に無限の可能性をもたらす一方、今まで
の著作権法では想定していない事態が生じており、電子ネットワークに流通するデジタル著作物への権
利保護に大きな衝撃を与えている。情報伝達を取り巻く環境が急激に変化し、ボーダレス化が進むなか、
伝統的な法制度ではもはやデジタル化した社会の変革に対応しきれないという現実に、国際社会は直面
している。世界知的所有権機関(WIPO)は IT 社会にいち早く対応するための「WIPO 著作権条約」及び
「WIPO 実演・レコード条約」を 1996 年 12 月に制定し、国際的枠組みにおける著作権保護をより一層充
実させた。ここ数年、同二条約の実施に伴う著作権法改正が各国で進められているが、わが国では、未
だに新たな技術的発展によって生じた諸課題について適切な対応策を打ち出していない。かような次第
で、現下の国際的立法動向を踏まえつつ、インターネットを通じての情報伝達及び電子商取引の活発な
発展を促進し、IT 社会における著作者の権利保護を強化するための、あるべき著作権法制の構築に向け、
新設 14 か条、改正 39 か条、計 53 か条の条文を盛り込んだ本改正案を作成した。今回の改正法は 2003
年 7 月 9 日より施行。
日本の企業や個人にとっては、今回の改正法の施行は従来多種の制限を受ける台湾に於ける日本企業
と個人の著作権の保護と権利行使事項がようやく正常化される画期的な法改正となっています。是非大
にご重視ご活用の程願います。
■2003 年著作権改正法重点要約
1. 一時的複製の著作権法上の位置付けの明確化及び「複製独占権」の対象外に関する規定の新設;ま
た公開伝送権の定義の排他権限の規定も増設
WTO「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」第 9 条により、加盟国はベルヌ条約
第 1 条から第 21 条までの規定を遵守しなければならない。また、複製に関する権利について、ベルヌ条
約第 9 条第(1)項には「文学的及び美術的著作物の著作者でこの条約によって保護される者は、それらの
著作物の複製(その方法及び形式のいかんを問わない。)を許諾する排他的権利を享有する」とあって、
さらにデジタル化・ネットワーク化の進展に対応するため、2001 年 5 月 22 日に採択されたEC指令「情
報社会における著作権及び隣接権」(Directive 2001/29/EC of the European Parliament and of the
52
Council of 22 May 2001 on the harmonization of certain aspects of copyright and related rights
in the information society)第 2 条及び第 5 条第 1 項規定を参考に、複製の定義について「直接的又は
間接的な、恒久的又は一時的な」複製を含めるようにするとともに、特定の条件が満たされる場合の一
時的複製には著作者等権利者の「複製権」が及ばない範囲を追加する。ここで言う一時的複製は、原則
上著作権の排他効果を受けるべきであるが、インターネットを利用して合法の情報を中継しその合法の
利用のために掛かる必要な過渡的で付随的な独立した経済意義をもたない性格のものの場合は、根本的
に「複製独占権」に触れないとされている。そのため、インターネット経由で伝送されたファイルの一時
的に自分のハードディスクに保存するだけでも、合理的使用の形態に該当しない限り、改正法第 22 条第
3 項に該当せずに、普通の複製に該当するので、著作権の侵害を成立することになる。その辺の区別が
重要である。(改正条文第 3 条第 1 項第 5 号及び第 22 条第 3 項、第 4 項、第 26 条ノ 2)
有線電気通信、無線通信の電気通信回路その他の通信方法により、音声又は映像を通じて公衆に対して
著作権の内容を提供し、又は伝達することを公開伝送と定義する。又は場所に於いて上記の方法により著
作物の内容を受信することを含むものとする。(第 3 条⑩)第 26 条ノ 2 では著作権者の公開伝送専有権を
明記している。第 91 条では無断複製の罰則を設けている。それらの基本定義と規定に基づいて、MP3 の
音楽ファイルを交換する消費者らは、CD のコンテンツを MP3 形態に変更してコピーすること事態がいわ
ゆる 合理的使用 に該当するか否かはともかく、そのコンテンツを無断に伝送することによって音楽
著作権者の公開伝送権を侵害することに該当する。もしある業者が複数の消費者にそれらが所持する MP3
のファイルを交換させるためのぷラットフォルムを提供すれば、それは著作仏殿送検を侵害するものら
の幇助犯に該当する罪が問われるはずである。(参考図 III-3-1)
2. 公開伝達権、頒布権、録音物の公開再生演奏に関する報酬請求権、実演家への貸与権等権利の新設、
53
及び「公開放送」の定義の修正
著作者が現行法第 24 条により享有する権利公開放送権はネットワークにおける伝達に及ばないこ
とから、テレビや放送などといった伝統的なメディアではなく、ネットワークなど情報通信技術の発
展に伴う新しい情報伝達の媒介手段の台頭に応じて、「WIPO 著作権条約」第 8 条、「WIPO 実演・レコ
ード条約」第 10 条及び第 14 条により、公衆への伝達権を新設し、並びに「公開伝達」に当る行為と
の区別を明確にするため「公開放送」の定義を修正する。また、著作者は、販売又はその他の所有権
の移転により、その著作物の原作品又は複製物を頒布する権利を享有すべきであるとして、「WIPO 著
作権条約」第 6 条、「WIPO 実演・レコード条約」第 8 条及び第 12 条により頒布権を新設するほか、
その権利が消尽する条件についても定める。このほか、「WIPO 実演・レコード条約」第 15 条により、
実演家及びレコード製作者に対し、レコードの放送又は公衆への伝達(公開再生演奏)のための使用
について、報酬を請求しうる権利を与える。さらに同条約第 9 条により、実演家はレコードに固定さ
れたその実演について公衆への商業的貸与を許諾する権利を享有する旨の規定を新たに設ける。総じ
て言えば、録音著作物を公開放送するものは、原著作者のほか、録音著作物の著作者と実演者に対し
て共に報酬の支払い義務が発生する。
そのため、例えばデパート、売り場、列車やレスラン等公共場所で不特定の人間を対象に録音著作
をかけて流す場合、まず①音楽著作権者に対してローヤルティを支払う義務が発生するほか、②録音
著作の著作人及び③実演者に対して費用を払う必要も生じる。権利者の数が増えるほど、著作権仲介
団体の介入の必要性も高まる。
(改正条文第 3 条第 1 項第 7 号、第 10 号、第 26 条第 3 項、第 26 条ノ 1、第 28 条ノ 1、第 29 条第
2 項及び第 59 条ノ 1)
3.コピープロテクション等技術的保護手段の回避に係る規制と電子的権利管理情報の改変などの規制
著作権者は、よくビデオ、CD、コンピュータソフト等に施された技術的手段により、他人が権利者
の許諾なくしてその著作物にアクセスし、又はそれを利用する行為を制限したり禁止したりすること
で、デジタル化したインターネットの環境下に置かれた自己の著作に関する権利を守ろうとする。技
術的保護手段に用いられている信号の解読、破壊又はその他の方法により、これらの技術的保護手段
が機能するのを回避するための行為がすべて著作権者の著作物に対するコントロール及び著作財産権
の行使による経済利益の実現を妨げるものとして規制の対象とすべきである。また、技術的保護手段
の回避を目的とする方法を公衆の使用に提供する行為自体は、著作権そのものを侵害する行為ではな
いが、侵害を可能にし、助長する効果を生じさせるおそれがあるので、なおさら規制を加える必要が
ある。そのため「WIPO 著作権条約」第 11 条及び「WIPO 実演・レコード条約」第 18 条に照らして、技
術的保護手段の関連規定をおく予定があったが、結局時期尚早と見られて、著作権のコピー防止の手
段を無断に破壊する行為を罰する規定を著作権法に設けることが見送られてしまった。
一方、刑法第 358 条にその旨と若干関連性のある規制を設けてある。(刑法第 358 条から第 363 条、
第 358 条:(電脳に侵入する罪) 正当な理由なく、他人のアカウント暗証番号を入力する、又は電脳
使用の保護措置を破壊する、或いは電脳システムのすきに付けこんで他人の電脳或いはその関連設備
に侵入する者は、三年以下の有期懲役、交流或いは十万元以下の罰金を単独で若しくは実刑と平行して
課徴する。)その刑法で新たに設けられた 電脳使用を妨害する罪 の章に基づいて、コンピュータの
正当使用者のデータやソフトとハードの保障を図ることが出来ると見られる。
情報のデジタル化・ネットワーク化に伴い、著作権者がその著作の原作品又は複製物を公衆に伝達す
るにあたって、電子的権利管理関連情報(著作者氏名、著作物名称、著作財産権者、ライセンシー、
許諾期間や其の他の利用条件等)を著作物に付記することが多く、かかる権利管理情報を除去、変更
54
し、又はこれらの情報が既に除去、改変されたことを知っていながら、著作物を頒布するなどした場
合、権利者に重大な損害を与えることになる。これに対し、「WIPO著作権条約」及び「WIPO実演・レ
コード条約」はそれぞれ第 12 条、第 19 条に適切かつ効果的な法的保護及び救済を求めると定めてい
ることから、本改正は同二条の趣旨に合致するものとなる関連規定を新たに設け、著作権者の権利保
護を図る。違反するものは第 96 条ノ 1 によって一年以下の有期懲役又は 25 万間以下の罰金に処する。
(改正条文第 3 条第 1 項第 17 号、第 18 号、第 80 条ノ 1、第 80 条ノ 2、第 90 条ノ 3 及び第 96 条ノ 1)
4.専属利用許諾をめぐる疑義を明確にさせる
著作財産権の許諾に関し、現行法(2001 年 11 月 12 日公布)第 37 条第 2 項には「前項の許諾は公
証人が公証して証書を作成した場合、著作財産権者が後にその著作財産権を譲渡し又は再許諾したこ
とにより影響を受けない。」とあって、ベルヌ条約第 5 条第 2 項「権利の享有及び行使には、如何な
る方式の履行をも要しない」に反するのではないかと疑義を生ずるので、この条文を削除すべきであ
る。また、現行規定により、専属利用許諾における利用権者が許諾を受けた範囲内において、著作財
産権者として権利を行使することができるとはいえ、自己の名義を以って訴訟上の行為をすることが
できるかどうかについては明確にされていないため、あわせて利用権者が自己の名義をもって訴訟上
の行為をすることができるように明確に定める。
(改正条文第 37 条)
5.合理的利用に関する規定の修正
その一 合理的利用の範囲を拡大する条文
今回の改正で、著作者に「公開伝達権」を与えることとしながらも、著作者の権利保護と公益の確保との
ハーモナイゼーション、及び国家文化の発展を促進する見地から、一定の制限も場合によって必要となっ
てくる。例えば、
(1)メディア(放送、撮影、録画、新聞紙或いはインターネット等)による時事報道に携わるのに必要範
囲内の(他人の報道著作の)利用 *第 49 条 放送、撮影、録画、新聞紙、ネットワークその他の方法
により時事を報道する者は、報道のために必要と認められる範囲内において、報道の過程で接触した
著作物を利用することができる。
(2) 政府機関文書 *第 50 条 中央又は地方機関又は公法人の名義で公表された著作物は、合理的な
範囲内でそれを複製し、公開放送し、又は公開伝送することができる。
(3) 放送又はテレビ局の一時的録画・録音の物品の保存期間 *第 61 条 新聞紙、雑誌若しくはネット
ワーク上に掲載する政治、経済若しくは社会時事問題に関する論述については、他の新聞紙、雑誌が
これを転載し、又はラジオ放送局若しくはテレビ放送局によって公開放送されること、又はネットワ
ーク上での公開伝送ができる。但し、転載、公開放送又は公開伝送を許さない旨の表示がある場合は、
この限りでない。
(4) 視覚障害者、聴覚障害者の福祉増進を目的の使用 第 53 条 すでに公表された著作物について、視
覚障害者、聴覚障害者のために点字、手話通訳又は文字を付け加えることによりこれを複製することが
できる。
(5) 国内消尽原則の確立
「*第 59 条ノ 1 中華民国台湾の管轄区域内において、著作物の原作品又はその合法的複製物の所有
権を取得した者は、所有権を移転する方法によりこれを頒布することができる。」そのため、台湾国内
で合法的に販売されたものが一旦海外へ輸出された後は、再度台湾国内に売り戻されても、著作権者の
権利に抵触しない。逆に、海外でたとえ合法的に販売されたものでも、元著作権者の許諾なしには、台
湾国内に無断に輸入される場合、著作権法第 87 条第 1 項第 4 号「著作財産権者の同意を得ないで著作物
の原作品若しくはその複製物を輸入した時は著作権を侵害したものと見なす」規定に違反する。
その二 合理的利用の範囲を縮小する条文
従来では、1998 年著作権法修正の際、有線テレビ法第 32 条第 2 項の規定に合わせて、ケーブルテレ
ビ業者が無線放送テレビ局が放送した著作物を中継放送する場合、合理的な利用として認容されてきた
が、元著作権者の許諾権に対する侵害の容疑が高まる中、今回の改正でその旨のケーブルテレビ業者に
与えた特典を廃止することにした。将来、無線テレビ局に元著作権者のサブライセンス許諾が与えられ
ていない限り、ケーブルテレビ業者は別途元著作権者から中継許諾を貰わないと無断に中継放送を行っ
てはならない。
55
その三 合理的利用の判断を客観化する仕組みの確立
視聴覚障害者の利益のための合理的な利用、ケーブルテレビ業者が無線放送テレビ局が放送した著作
物を中継放送する場合の合理的な利用、著作物の原作品の合法的貸与、合理的利用の範囲内における頒
布行為等関連規定は、世界的ルールと食い違ったり、必ずしも周密なものではない。公衆がちょっとし
た不注意で著作財産権を侵害することにならないように合理的利用の範囲に対する認識を深めるため、
著作権者団体及び利用者団体が著作の合理的使用範囲について協議した結論を合理的使用であるかどう
かの判断の基準とする。協議の過程においては、著作権所管機関へ諮問することができる。最近は、音
楽著作物の権利者が、無断にその権利者所有の音楽著作を携帯電話のベル音声に利用するものに対して
賠償金を取り立てた事件がおきたが、まさに著作権者の権利行使の好例となる。
(改正条文第 49 条、第 50 条、第 53 条、第 56 条、第 56 条ノ 1、第 59 条ノ 1、第 60 条、第 63 条、第
65 条)
6.発行権の譲渡又は信託登記に関する規定の追加
信託法第 4 条第 1 項は「登記又は登録を要する財産権を信託の対象とする場合、信託の登記を経な
ければ第三者に対抗することができない。」と定めている。現行著作権法第 79 条により、発行権の取
得については一応登記主義をとっているが、発行権の譲渡又は信託については登記に関する規定がな
い。したがって、発行権の譲渡又は信託の登記に関する規定を追加する。
(改正条文第 79 条)
7.著作権又は発行権をめぐる紛争に関する調停の効力を強化
著作権をめぐる紛争処理には専門知識を要する。著作権所管機関の下の「著作権審議及び調停委員
会」は専門家からなり、この委員会に調停を委ねれば当事者双方が民事・刑事訴訟手続きを取る場合
の手間を省けるし、司法機関の負担軽減にもつながる。しかし、現行法上の調停は民法上の和解と同
じ程度の効力しか持たないことから、十分に機能することが望めない。著作権又は発行権をめぐる紛
争においての調停の効力を持たせ、当事者は同事件についてさらに起訴、告訴又は自訴をすることが
できないように定める。そのため、調解の結果が一旦裁判所の認可を得た場合、民事に関しては確定
民事判決と同等の当事者に対する拘束力を有するし、刑事に関してはその内容が金銭其の他代替物或
いは有価証券の一定額を対象とする場合、その調解書は執行名義と成り得る。
一方、著作権者仲介団体と利用者(テレビ局等)間の報酬を巡る紛争が調解によって解決できない(調
解不成立)場合、改正法では強制的に仲裁の方式にる解決を限定する。しかし、いわゆる「調解不成立」
とは、やはり厳格に両方当事者が既に一旦「調解」に合意した後に、合意できる結果を得られない状況
に限定すべきである。もし当事者の一方が最初から調解方式に合意しないままならば、それなりに訴
訟などのほう手段を展開する権限に妨げないはずである。人民の訴訟権は憲法によって保障されてい
るはずだからである。
(改正条文第 82 条ノ 1 から第 82 条ノ 4 まで)
8.企業の海賊版コンピュータプログラム著作物の使用に関する法律責任;「営利使用」から「営業使
用」へ
旧法では、企業のコンピュータソフトウエアの利用は「(当該企業自身の)直接の営利の使用」に限定
されていた。しかし、このような規定ではあまりにも範囲が狭すぎて、例としては「姓名判断のプログ
ラムを無断に利用して他人に対して姓名判断を行う」位しか考えられない。実務上の適用確立が皆無に
等しかったし、外国の立法例では営利の目的に基づく行為に限らない。したがって、わが国が WTO の
加盟国となった以上、WTO の枠組みの下でのルールに従い現行法の内容を見直す必要性に鑑みて、著
作財産権侵害に係る複製物を営業に使用すれば著作権侵害となるように改める。
改正後の現行法では、コンピュータプログラムの著作財産権を侵害した複製物であることを明らか
に知っていながら、それを「営業の目的」で使用する場合において、著作権侵害とみて処罰する。
そのため、従業員が無断複製のプログラムを使用することを知りながらそれを黙認する企業主は、
56
著作権侵害の責任を負うことになる。
(改正条文第 87 条②、第 93 条(2))
9.著作権及び発行権侵害に関する民事・刑事責任
(1) 著作権侵害の民事損害賠償責任金額上限を引き上げ
民事損害賠償の算定基準を引き上げると共に、刑事罰金の金額も引き上げられた。TRIPS 協定第 41
条から 43 条までの規定により、加盟国は、知的所有権の侵害行為に対し、効果的な措置を取らなけれ
ばならない。権利侵害に対し、著作権者が被った損害について民事損害賠償請求により十分な補償が
得られるように、裁判所が侵害の情状により算定する賠償額の上限を引き上げ、一般の侵害は新台湾
ドル 100 万元、故意によりかつ情状が重大な場合は 500 万元に増やすことができる。
(2) 刑事罰の調整
① 実刑の下限規定の撤廃
著作権侵害の刑事責任に関し、現行法上の自由刑の度合いが適当ではあるが、経済犯罪につき金銭
罰を制裁の手段とすることも考えられるので、侵害行為をより効果的に抑止するため、罰金刑を高め
ることとする。海賊版による複製権と頒布権への侵害が著作財産権者に与える損害が最も重大で、国
家や産業の競争力を弱化させるだけでなく、国民のモラルや風紀を乱す悪質な犯罪行為でもある。し
たがって、故意の犯行又は情状重大(光ディスク媒体の無断副生物の製造販売等)の被告に対して、罰
金刑を加重するとともにこうした侵害行為を非親告罪とする。しかし、従来では実刑の上限のほか、
下限も設けてあったが、今回の法改正では常習犯を除き、それを撤廃することになった。そのため、
初犯の場合、従来より軽い、例えば 3 ヶ月ないし 6 ヶ月ほどの実刑判決の言い渡しの多発が予想され
る。刑法第 41 条の「懲役と拘留刑を罰金に変更する規定」によって、6 ヶ月以下の実刑判決を受ける
場合、最高法定刑が 5 年以下の罪に限って、罰金に換算して刑を処することが出来る。その点、従来
より更に執行猶予か罰金換算の判決がよく見られるだろう。
一方常習犯に対しては 1 年以上 7 年以下の法定懲役期間が設けられているので、悪質の犯罪に対す
る威嚇効果は尚強いほうだと思われる。
一方、懲役刑に於いては、一般の著作権侵害では複製とその他の犯行形態と営利目的か個人非営利
の犯行なのか、又光ディスク媒体の著作物を扱うかによって 5 年以下、3 年以下、乃至 2 年以下の法
定刑限度となっているが、営利目的の業務常習犯の場合は 1 年から 7 年以下となる。同時に、刑法の
改正によって、従来の罰金に転換できる最高法定刑限度が元の 3 年から現行法の 5 年に引き上げられた
ことによって、従来罰金転換の対象でなかった罪でも罰金に転換するようになるので、実質上罰金転
換の判決となるケースが増える予想があり、実質上の刑罰の軽減効果につながるだろう。(改正条文
第 88 条、第 91 条から第 95 条まで及び第 100 条)
②特定の従来犯罪行為の無罪化
A 製版権侵害の無罪化
B 著作人格権侵害の無罪化
C 非営利目的の無断複製の条件付無罪化(第 91 条);
原則上複製されるものは 5 部以上に上り、侵害される原著作物の市販価格が NT5 万間を越える場
合に限る。
但し第 44 条や第 65 条の合理的利用に該当しない場合に限る。
D 非営利目的の無断頒布の条件付無罪化(第 91 条ノ 1);条件は C に準ずる。
E 非営利目的の無断複製と無断頒布のほかの犯行(公開放送、公開上映、公開実演、公開転送、公開
展示、無断改作、無断編集、無断賃借等)の条件付無罪化(第 92 条);
10.税関による自発的差押え及び没収、没入に関する規定の追加;一方従来の著作物の並行輸入に関す
る罰則を削除し、但し並行輸入権は原則上著作権者に保留されている
海賊版の市場での流通を防ぐため、税関が職務の遂行に当って、輸出入に係る貨物の外観からみて
著作権を侵害する疑いがあると判断した場合、自ら進んで差押えをすることができるようにする。また、
著作権侵害の継続及び規模の拡大を有効に抑止するため、犯罪の用途に供されていた又は犯罪により得
られた物を没収することができる旨、及び著作者の複製権又は頒布権の侵害に係る海賊版光ディスクに
つき、犯罪者に属するものでなくても没収できる旨を明確に定める。実務上捜査機関が著作権侵害に係
る犯罪行為を取り締まる際、行為者が侵害物品を置き去りにして逃げたため、犯行に使われていた又は
犯罪により得られたものを摘発しても確認が不可能となり、これを事件と共に検察機関に移送すること
もできず、無主物として処理するしかない。一定の公告期間を経て所有者が現れないときは、国庫に帰
属するから、手続きに手間取って社会コストが無駄遣いされることのないように、このような場合にお
いて、司法機関は直ちに没入することができる旨の文言を追加する。没入される金員は国庫に納めるこ
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とになり、その他の部分は焼却するものとする。(改正条文第 90 条ノ 1、第 98 条及び第 98 条ノ 1)一
方従来の著作物の並行輸入に関する罰則を削除し、但し並行輸入件は原則上著作権者に保留されている。
(第 87 条(1)④)
11. 非営業上の著作権侵害の刑事罰則と光ディスク無断複製の罰則加重規程の増設
従来では、原則上営利を目的とする形態の侵害が刑事罰の対象となっていたが、今度の改正法ではデ
ジタルデータの普及に伴う消費者間の商業著作物の無断コピーによる不当既得を規制する見地から、非
営利目的の複製に対する刑事罰の増設を実現した。非営利目的で複製の方法により、他人の著作財産権を
侵害し、その複製の部数が 5 点を超え、又は摘発された時点で合法的副生物の自家にしてその侵害総額が
台湾ドル 3 万間を超えた時は、3 年以下の懲役、交流に処し、又は台湾ドル 75 万間以下の罰金を課し又は
これを併課する。(第 91 条(2)) 又、光ディスクのコンテンツを複製する方法により、営利目的の無断複
製罪を犯す場合は 5 年以下の懲役、交流に書するほか、台湾ドル 50 万元から 500 万元までの罰金を課する
することになる。 しかし一方、非営利目的の侵害形態の構成要件にある 5 点以下 の複製と 侵害
総額が台湾元 3 万元 までとあるものに関しては、数量を確定するための主体の要素と時間の区切り、
それに点数の単位などについてまだ明確な基準が頒布されていない。例えば: (1)新会社は家族同士で
あれば、家族全員が複製した無断コピー品の合計で計算するのか、或いは個人ごとに計上すべきか?違う
コンテンツのものは点数だけ無差別に集計されてもよいのか? (2)無断コピーの点数は媒体で計上す
べきか、それともコンテンツのタイトル数で数えるべきか? (3)無断複製に携わる事件の経過は以下に
区切るべきか?極言すれば特定の人間の生きる間の無断複製したものの点数で集計してもよいのか。
等々明確な定義がまだ欠如する。
12.遡及効の猶予期間中に支払うべき使用報酬及び期間満了後の販売又はレンタルの禁止
WTO 加盟後、TRIPS 協定第 70 条第 4 項により、WTO 協定受諾の日前に開始され、本協定適用後にも
当該行為が継続して行われる場合には、たとえそれが侵害行為となった場合であっても、権利者が利
用しうる救済措置を制限することができる。この場合において、加盟国は、少なくとも遡及保護(遡
及効)が適用されるまでの猶予期間内に衡平な報酬の支払いを定めることが義務付けられている。こ
のため、本法が前回改正された日から 2003 年 12 月 31 日までの間に、法により著作を利用し又は改作
した者は、通常の場合において協議により支払うべき使用料の額に相当する合理的な使用報酬を権利
者に支払うことを定める。使用報酬を支払うべきにもかかわらず、これを支払わない場合であっても、
単なる債権・債務の関係に過ぎず、著作権侵害に係る民事・刑事責任が生じる問題ではない。一方、市
場に出回っている著作の複製物はいったい法により複製された客体に該当するかどうか、頒布権によ
る規制を受けるかどうかを認定するのが困難である。認定をめぐって争議が生じたことににより著作
権者の権益に影響を及ぼし、ひいて法律秩序が不安定になるのを避けるため、二年間の猶予期間満了
後、再び侵害物品を販売することは禁止される。但し賃貸し又は貸し出しはその限りでない。
(改正条文第 106 条ノ 2、第 106 条ノ 3)
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13.本法主務官庁及び著作権所管機関の権利と責務
1999 年 1 月 26 日、知的財産局が発足する以前に、著作権に関連する事務は内政部の所管としてい
たが、その後は経済部が主管することになり、経済部所属の知的財産局は著作権関連事務の「所管機
関」となる。
(改正条文第 2 条、第 56 条、第 69 条及び第 115 条ノ 2)
59
2-3-10-3
2004 年著作権法改正案の重点
2004 年の著作権法改正案成立
コピーガード関連規定新設
2004.09.01 改正公布
著作権法の一部を改正する案は 2004 年 8 月 24 日付の立法院本会議で可決され同年 9 月 1 日付け公布
施行された。
米側は前々から著作権法改正の進捗状況や法案の内容に強く関心を示している。米国商会もついこの
間、立法院議長の王金平氏と会見した際、とりわけ著作権法改正案について審議ペースを速めるよう促
した。今回の改正案でポイントとされている、税関における知的財産権侵害疑義物品に対する通関の一
時的差止め、「営利を目的とする」と「営利を目的としない」の区別、コピーガード装置、最低刑罰へ
の制限等規定はすべて米側が望んだとおりに国会を通過したため、台米間の自由貿易協定締結交渉にプ
ラス材料になるだろうと見られている。
改正案で、複製行為を「営利を目的とする(営利を意図する)」と、「営利を目的としない(五点以
下の著作物又は時価 3 万元を超えない範囲内での頒布は罰しない)」とに分けて定める現行規定が改め
られ、他人の著作財産権を無断で複製して侵害したものは、三年以下の懲役、また販売若しくは貸与を
目的としてこれを行った場合は六ヶ月以上五年以下の懲役に処する、となっている。
また、学生たちがインターネット上の著作物を利用したり資料をコピーしたりすることが営利的行為
なくても罪に問われかねないことを回避するため、特別に法案の中で「たとえ合理的利用の範囲を超え
て侵害を構成した場合でも、検挙するか処罰するかは検察官と裁判官が侵害された物品の金額と数量を
考慮して法により裁量をする」という補充説明を付け加えている。言い換えれば、検察官と裁判官には、
「微罪は検挙しない」、「微罪は罰しない」という裁量の余地が与えられているということである。
このほか、改正案にも「参考に供するための著作物の合理的利用は、著作権侵害を構成しない」とい
うことが明確に定められている。ただ、立法院は付帯決議をもって、「図書館でのコピーや教学用のコ
ピー、教育機関による遠距離教学のための利用などを含めて著作物の合理的利用の範囲をどう限定する
かについて、利用者と権利者団体との協議に所管機関が協力し、また年内に協議を終わらせるように努
めなければならない。」と要求している。
一方、「税関における(知的財産権侵害疑義物品の)通関の一時的差止め」について、現行規定によ
り、まず著作権者が税関に対して差押えの申立てをしてから、税関がその申立てにより著作権侵害疑義
物品を差押えることになっているが、改正後の規定によると、税関は職務の執行にあたって、輸出入貨
物で外観から明らかに著作権侵害の疑いがあるとみられるものを発見した場合、権利者と輸出入業者に
その旨を通知したうえで、権利侵害疑義物品と認められたものに対して、税関は一時的な通関差止め措
置をとることができる。
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2004 年改正著作権法新旧条文対照表
2004 年 8 月 27 日立法院を通過
2004 年 9 月 1 日付総統令公布
(新設 1 ヶ条、修正 13 ヶ条)
改 正 条 文
現 行 条 文
(2004 年 9 月 1 日公布)
(2003 年 7 月 9 日公布)
この法律における用語の意義は下記の通
第3条
この法律における用語の意義は下記の通 第 3 条
りとする。
りとする。
一. 著作物:文学、科学、芸術若しくはその他
一. 著作物:文学、科学、芸術若しくはその他
の学術の範囲に属する創作物をいう。
の学術の範囲に属する創作物をいう。
二. 著作者:著作物を創作する者をいう。
二. 著作者:著作物を創作する者をいう。
三. 著作権:著作物の完成により生じる著作人格 三. 著作権:著作物の完成により生じる著作人格
権及び著作財産権をいう。
権及び著作財産権をいう。
四. 公衆:不特定の者又は特定且つ多数の者をい 四. 公衆:不特定の者又は特定且つ多数の者をい
う。但し家庭及びそれと正常の社交関係にある
う。但し家庭及びそれと正常の社交関係にある
多数の者はこの限りでない。
多数の者はこの限りでない。
五. 複製:印刷、複写、録音、録画、撮影、筆記 五. 複製:印刷、複写、録音、録画、撮影、筆記
その他の方法により直接、間接、永久又は一時
その他の方法により直接、間接、永久又は一時
的に再製することをいい、脚本、音楽の著作物
的に再製することをいい、脚本、音楽の著作物
その他これに類する著作物の実演、放送を録音
その他これに類する著作物の実演、放送を録音
し、又は録画すること、また建築に関する設計
し、又は録画すること、また建築に関する設計
図若しくは模型に従って建築物を完成するこ
図若しくは模型に従って建築物を完成するこ
ともこれに属する。
ともこれに属する。
六. 公開口述:口述又はその他の方法により著作 六. 公開口述:口述又はその他の方法により著作
物の内容を公衆に伝達することをいう。
物の内容を公衆に伝達することをいう。
七. 公開放送:公衆に直接聞かせ又は見せること 七. 公開放送:公衆に直接聞かせ又は見せること
を目的として、有線電気通信、無線通信その他
を目的として、有線電気通信、無線通信その他
の設備の放送システムによる送信を行うこと
の設備の放送システムによる送信を行うこと
により、音声若しくは映像を通じて著作物の内
により、音声若しくは映像を通じて著作物の内
容を公衆に伝達することをいう。原放送者以外
容を公衆に伝達することをいう。原放送者以外
の者によって、有線電気通信、無線通信その他
の者によって、有線電気通信、無線通信その他
の設備の放送システムによる送信を行うこと
の設備の放送システムによる送信を行うこと
により、元放送されていた音声若しくは映像を
により、元放送されていた音声若しくは映像を
公衆に伝達することもこれに属する。
公衆に伝達することもこれに属する。
八. 公開上映:単一又は複数の視聴機器その他映 八. 公開上映:単一又は複数の視聴機器その他映
像を伝送する方法により、同一の時間に著作物
像を伝送する方法により、同一の時間に著作物
の内容を現場若しくは現場以外の一定の場所
の内容を現場若しくは現場以外の一定の場所
にいる公衆に伝達することをいう。
にいる公衆に伝達することをいう。
九. 公開実演(上演・演奏):演技、舞踊、歌唱、 九. 公開実演(上演・演奏):演技、舞踊、歌唱、
楽器の演奏その他の方法により著作物の内容
楽器の演奏その他の方法により著作物の内容
を現場の公衆に伝達することをいう。拡声器そ
を現場の公衆に伝達することをいう。拡声器そ
の他の装置により元放送されていた音声又は
の他の装置により元放送されていた音声又は
映像を公衆に向けて伝達するのもこれに属す
映像を公衆に向けて伝達するのもこれに属す
る。
る。
十. 公開伝送:有線電気通信、無線通信の電気
十. 公開伝送:有線電気通信、無線通信の電気
通信回路その他の通信方法により、音声又は映
通信回路その他の通信方法により、音声又は映
像を通じて公衆に対して著作物の内容を提供
像を通じて公衆に対して著作物の内容を提供
し又は伝達することをいい、公衆が各自に選定
し又は伝達することをいい、公衆が各自に選定
する時間に、又は場所において上記の方法によ
する時間に、又は場所において上記の方法によ
り著作物の内容を受信することを含むものと
り著作物の内容を受信することを含むものと
する。
する。
十一. 改作:翻訳、編曲、書き換え、映画の撮影 十一. 改作:翻訳、編曲、書き換え、映画の撮影
又はその他の方法により原作品について別途
又はその他の方法により原作品について別途
創作をすることをいう。
創作をすることをいう。
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十二. 頒布:有償であるか又は無償であるかを問
わず、著作物の原作品若しくは複製物を公衆の
取引又は流通に提供することをいう。
十三. 公開展示:公衆に著作物の内容を展示する
ことをいう。
十四. 発行:権利者が公衆の合理的需要を満足さ
せることのできる複製物を頒布することをい
う。
十五. 公表:権利者が発行、放送、上映、口述、
実演(上演・演奏)、展示その他の方法により
著作物の内容を公衆に提示することをいう。
十六. 原作品:著作物に最初固定されているも
のをいう。
十七. 電子的権利管理情報:著作物の原作品又
はその複製物において、又は著作物の公衆への
伝達がなされるときに表示される著作物、著作
の名称、著作者、著作財産権者又はその利用許
諾を受けた者及び利用期間若しくは条件を特
定するに足る電子的関連情報をいい、数字、符
号を用いてこれらの情報を表示するものもこ
れに属する。
十八. デッドコピー防止措置:著作権者が他人 2
が無断に著作に侵入すること又はそれを利用す
ることを有効に禁止又は制限するために儲ける
設備、機材、部品、技術若しくは其の他の科学
技術手段。
2
十二. 頒布:有償であるか又は無償であるかを問
わず、著作物の原作品若しくは複製物を公衆の
取引又は流通に提供することをいう。
十三. 公開展示:公衆に著作物の内容を展示する
ことをいう。
十四. 発行:権利者が公衆の合理的需要を満足さ
せることのできる複製物を頒布することをい
う。
十五. 公表:権利者が発行、放送、上映、口述、
実演(上演・演奏)、展示その他の方法により
著作物の内容を公衆に提示することをいう。
十六. 原作品:著作物に最初固定されているも
のをいう。
十七. 電子的権利管理情報:著作物の原作品又
はその複製物において、又は著作物の公衆への
伝達がなされるときに表示される著作物、著作
の名称、著作者、著作財産権者又はその利用許
諾を受けた者及び利用期間若しくは条件を特
定するに足る電子的関連情報をいい、数字、符
号を用いてこれらの情報を表示するものもこ
れに属する。
前項第 8 号にいう現場若しくは現場以外の一定
の場所とは、映画館、倶楽部、ビデオテープ若し
くはレーザーディスクが再生される場所、旅館
(ホテル)の部屋、公衆の使用に供される交通機
関その他不特定の者の出入りに供される場所を
含む。
前項第 8 号にいう現場若しくは現場以外の一定
の場所とは、映画館、倶楽部、ビデオテープ若し
くはレーザーディスクが再生される場所、旅館
(ホテル)の部屋、公衆の使用に供される交通機
関その他不特定の者の出入りに供される場所を
含む。
この法律に別段の定めがある場合を除き、第 22 条 この法律に別段の定めがある場合を除き、
著作者はその著作物を複製する権利を専
著作者はその著作物を複製する権利を専
有する。
有する。
2 実演家は、録音、録画又は撮影によってその実 2 実演家は、録音、録画又は撮影によってその実
演を複製する権利を専有する。
演を複製する権利を専有する。
3 前二項規定は、ネットワークにおける中継的伝 3 前二項規定は、ネットワークにおける中継的伝
送又は合法的著作物を利用する場合の技術 的
送又は合法的著作物を合法的に利用する場合の
技術 的操作の過程に必要な過渡的、付帯的かつ 操作の過程に必要な過渡的、付帯的かつ独立した
経済的意義を有しない一時的複製には適用しな
独立した経済的意義を有しない一時的複製には
適用しない。但し、コンピュータプログラムはこ い。但し、コンピュータプログラムはこの限りで
ない。
の限りでない。
4 前項のネットワークにおける合法的な中継伝送 4 前項のネットワークにおける中継伝送の場合の
の場合の一時的複製は、インターネットサーフィ 一時的複製は、インターネットサーフィン、迅速
ン、迅速な読み取りその他伝送の機能を達成させ な読み取りその他伝送の機能を達成させるには
避けて通ることのできないコンピュータ又は機
るには避けて通ることのできないコンピュータ
器本来の技術的なものを含む。
又は機器本来の技術的なものを含む。
第 22 条
*第 26 条 著作者はこの法律に別段の定めがない限
り、その言語、音楽又は演劇、舞踊の著作物を公に
実演(上演・演奏)する権利を専有する。
2 実演家は、拡声器その他の機材でその実演を公
に上演・演奏する権利を専有する。但し、その実
演を複製し、又は公開放送した後にさらに拡声器
*第 26 条 著作者はこの法律に別段の定めがない限
り、その言語、音楽又は演劇、舞踊の著作物を公に
実演(上演・演奏)する権利を専有する。
2 実演家は、拡声器その他の機材でその実演を公
に上演・演奏する権利を専有する。但し、その実
演を複製し、又は公開放送した後にさらに拡声器
62
その他の機材で公開に演出する場合は、この限り その他の機材で公開に演出する場合は、この限り
でない。
でない。
3 録音の著作物が公に実演された場合、著作者は 3 録音の著作物が公に実演された場合、著作者は
公開実演をした者に対して利用報酬(使用料)の 公開実演をした者に対して利用報酬(使用料)の
支払いを請求することができる。
支払いを請求することができる。
4 前項の録音著作物に関する実演が複製された場 4 前項の録音著作物に関する実演が複製された場
合は、録音著作物の著作者及び実演家が共同して利 合は、録音著作物の著作者及び実演家が共同して
用の報酬の支払いを請求する。その一方が先に請求 利用の報酬の支払いを請求する。その一方が先に
したときは、利用の報酬を他方に分配しなければな 請求したときは、利用の報酬を他方に分配しなけ
ればならない。
らない。
第四章ノ一
第四章ノ一
権利管理に関する電子情報及びデッ
ドコピー防止措置
権利管理に関する電子情報
第 80 条ノ 2(新設)
1 著作権者が他人が無断に著作物に侵入すること
を禁止又は制限するために設置したデッドコピー
防止措置は、著作権者の合法許諾を受けるまでは、
誰でもそれを分解、破壊、若しくは其の他の手段で
忌避してはいけない。
2 蒸気のデッドコピー防止措置を分解、破壊、玉
は忌避するための設備、機材、部品、技術又は情報
は、合法の許諾を受けずにはそれを製造、輸入、公
衆に対する提供又は服務の提供の行為を行っては
いけない。
3 前二項の規定は、下記の状況に於いては適用し
ない:
1 国家安全を維持するための場合;
2 中央又は地方機関が行う場合;
3 ファイル保存機構、教育機構、又は一般公衆
開放の図書館等が(著作物の)情報の取得に関する
事前評価を行う場合;
4 未成年者を保護するため;
5 個人情報を保護するため;
6 電脳又はネットワークの安全試験を実施する
ため;
7 インクリプト工程の研究のため;
8 リバース工程を実施するため;
9 其の他主務官庁が定める状況。
4 前項角帽の規定の具体的な内容は、主務官庁が
定める上、定期検討を行うべきである。
第 82 条
著作権所管庁は、著作権の審議及び調停
にあたる委員会を設置して、次に掲げる事項を処理
させなければならない。
一. 第 47 条第 4 項に定める使用料率について審
議すること。
二. 著作権仲介団体と利用者間の使用料をめぐ
る紛争の調停をすること。
三. 著作権又は出版権をめぐる紛争の調停をす
ること。
四. その他著作権の審議及び調停についての諮
問に応じること。
2 前項第 2 号の調停が成立しない場合は、法によ
り仲裁に付する。
3 第 1 項第 3 号に定める紛争の調停が刑事に関わ
るものであるときは、親告罪の事件に限る。
第 82 条
著作権所管庁は、著作権の審議及び調停
にあたる委員会を設置して、次に掲げる事項を処理
させなければならない。
一. 第 47 条第 4 項に定める使用料率について審
議すること。
二. 著作権仲介団体と利用者間の使用料をめぐ
る紛争の調停をすること。
三. 著作権又は出版権をめぐる紛争の調停をす
ること。
四. その他著作権の審議及び調停についての諮
問に応じること。
2 前項第 2 号の調停が成立しない場合は、法によ
り仲裁に付する。
3 第 1 項第 3 号に定める紛争の調停が刑事に関わ
るものであるときは、親告罪の事件に限る。
63
次の各号のいずれかに該当するときは、
第 87 条
次の各号のいずれかに該当するときは、 第 87 条
この法律に別段の定めがある場合を除き、著作権又 この法律に別段の定めがある場合を除き、著作権又
は出版権を侵害したものとみなす。
は出版権を侵害したものとみなす。
一. 削除
一.
著作権者の名誉を侵害する手段で著作物を
二. 出版権の侵害に係るものであることを明ら
利用するもの;
かに知っていながら、それを頒布し、又は頒布
二. 出版権の侵害に係るものであることを明ら
を意図して公開に陳列し若しくは所持してい
かに知っていながら、それを頒布し、又は頒布
たとき。
を意図して公開に陳列し若しくは所持してい
三. 著作財産権者又は出版権者から複製につい
たとき。
ての許諾を受けない複製物又は出版物を輸入
三. 著作財産権者又は出版権者から複製につい
したとき。
ての許諾を受けない複製物又は出版物を輸入
四. 著作財産権者の同意を得ないで著作物の原
したとき。
作品若しくはその複製物を輸入したとき。
四. 著作財産権者の同意を得ないで著作物の原
五. コンピュータプログラムに関する著作財産
作品若しくはその複製物を輸入したとき。
権の侵害に係る複製物であることを明らかに
五. コンピュータプログラムに関する著作財産
知っていながら、営業のために使用したとき。
権の侵害に係る複製物であることを明らかに
知っていながら、営業のために使用したとき。 六. 著作財産権侵害に係るものであることを明
らかに知っていながら、所有権を移転し又は賃
六. 著作財産権侵害に係るものであることを明
貸し以外の方法により頒布し、又は著作財産権
らかに知っていながら、所有権を移転し又は賃
侵害に係るものであることを明らかに知って
貸し以外の方法により頒布し、又は著作財産権
いながら、頒布を意図して公開に陳列し若しく
侵害に係るものであることを明らかに知って
は所持していたとき。
いながら、頒布を意図して公開に陳列し若しく
は所持していたとき。
第 90 条ノ 1 著作権者又は出版権者は、その著作権 第 90 条ノ 1 著作権者又は出版権者は、その著作権
若しくは出版権の侵害に係る物品を輸入し、若しく 若しくは出版権の侵害に係る物品を輸入し、若しく
は輸出した者に対し、あらかじめ税関に差押えを申 は輸出した者に対し、あらかじめ税関に差押えを申
し立てることができる。
し立てることができる。
2 前項の申立ては書面を以てこれをし、侵害の事 2 前項の申立ては書面を以てこれをし、侵害の事
実を釈明するとともに、差押処分を受ける者が差 実を釈明するとともに、差押処分を受ける者が差
押えにより蒙った損害の賠償の担保として、その 押えにより蒙った損害の賠償の担保として、その
輸入貨物について税関が見積った税金完納後の
輸入貨物について税関が見積った税金完納後の
価格又は輸出貨物の本船渡し価格に相当する保
価格又は輸出貨物の本船渡し価格に相当する保
証金を提供しなければならない。
証金を提供しなければならない。
3 税関が差押えの申し立てを受理したときは、直 3 税関が差押えの申し立てを受理したときは、直
ちに申立人に通知しなければならない。前項規定 ちに申立人に通知しなければならない。前項規定
に適合して差押えを行うときは、書面をもって申 に適合して差押えを行うときは、書面をもって申
立人及び差押えを受ける者に通知しなければな
立人及び差押えを受ける者に通知しなければな
らない。
らない。
4 申立人又は差押え処分を受けた者は、税関に対 4 申立人又は差押え処分を受けた者は、税関に対
し差押えられた物件の検査を申し立てることが
し差押えられた物件の検査を申し立てることが
できる。
できる。
5 差し押えられたものについて、申立人が裁判所 5 差し押えられたものについて、申立人が裁判所
の民事確定判決を経て著作権又は出版権の侵害
の民事確定判決を経て著作権又は出版権の侵害
に係るものとされたときは、税関がこれを官没す に係るものとされたときは、税関がこれを官没す
る。官没された物のコンテナ使用期間超過料金、 る。官没された物のコンテナ使用期間超過料金、
倉庫賃貸、積み卸し等の関連費用及び焼却廃棄処 倉庫賃貸、積み卸し等の関連費用及び焼却廃棄処
分に要する費用は、差押処分を受けた者が負担し 分に要する費用は、差押処分を受けた者が負担し
なければならない。
なければならない。
6 前項の焼却廃棄処分に要する費用に関し、税関 6 前項の焼却廃棄処分に要する費用に関し、税関
が期間を限定して納付することを通知しても納
が期間を限定して納付することを通知しても納
付のないときは、法により移送して強制執行を行 付のないときは、法により移送して強制執行を行
う。
う。
7 次の各号のいずれかに該当するものは、税関が 7 次の各号のいずれかに該当するものは、税関が
差押処分を廃止し、輸出入貨物の通関に関連する 差押処分を廃止し、輸出入貨物の通関に関連する
規定により処理するほか、申立人は差押処分を受 規定により処理するほか、申立人は差押処分を受
64
けた者が差押えにより蒙った損害を賠償しなけ
けた者が差押えにより蒙った損害を賠償しなけ
ればならない。
ればならない。
一. 差し押えられたものが、裁判所の確定判決
一. 差し押えられたものが、裁判所の確定判決
を経て著作権又は出版権を侵害したものに当
を経て著作権又は出版権を侵害したものに当
たらないと判断されたとき。
たらないと判断されたとき。
二. 税関が申立人に差し押えの受理を通知した
二. 税関が申立人に差し押えの受理を通知した
日から 12 日内に、差し押えの物件を侵害物品
日から 12 日内に、差し押えの物件を侵害物品
とする訴訟が提起された旨の告知を受けなか
とする訴訟が提起された旨の告知を受けなか
ったとき。
ったとき。
三. 申立人が差押処分廃止の申立てがあったと
三. 申立人が差押処分廃止の申立てがあったと
き。
き。
8 前項第 2 号に定める期間は、必要なときに税関 8 前項第 2 号に定める期間は、必要なときに税関
がこれを 12 日間延長することができる。
がこれを 12 日間延長することができる。
9 次の各号のいずれかに該当するものは、税関は 9 次の各号のいずれかに該当するものは、税関は
申立人の申立てにより保証金を返還しなければ
申立人の申立てにより保証金を返還しなければ
ならない。
ならない。
一. 申立人が勝訴の確定判決を取得し、又は差
一. 申立人が勝訴の確定判決を取得し、又は差
し押えを受けた者との間に和解が成立し、引
し押えを受けた者との間に和解が成立し、引
続き保証金を提供する必要がなくなったと
続き保証金を提供する必要がなくなったと
き。
き。
二. 差押処分廃止後、申立人は、20 日以上の期
二. 差押処分廃止後、申立人は、20 日以上の期
間を定めて差押処分を受けた者に権利の行使
間を定めて差押処分を受けた者に権利の行使
を催告したにもかかわらず、権利行使の行為
を催告したにもかかわらず、権利行使の行為
がなかったことを証明したとき。
がなかったことを証明したとき。
三. 差押処分を受けた者が返還に同意したと
三. 差押処分を受けた者が返還に同意したと
き。
き。
10 差押えを受けた者が、第二項の保証金につき、 10 差押えを受けた者が、第二項の保証金につき、
質権者と同一の権利を有する。
質権者と同一の権利を有する。
11 税関が職務を執行する際、輸出入の貨物の外観
から判断して著作権の侵害の容疑を発覚する場
合、一ヶ日以内に権利者に通知して、且つ輸出入
名義人に合法許諾の資料の提示を要求できる。権
利人が通知を受けたあと、空輸の輸入塚も角場合
は 4 時間以内に、空輸の輸入貨物又は海運の輸出
入貨物の場合は一ヶ日以内に税関に至って貨物
検分の協力を行うべきである。権利人が不明瞭、
又はそれに通知が不能、又は権利人が通知の期限
内に税関まで貨物検分の協力に行かなかった場
合、又は権利人の検分協力によって係争貨物が権
利を侵害していないことが判明する等の場合に
於いては、其の他痛感関連規定に違反していなけ
れば、税関が貨物を通関させるべきである。
12 検分の結果、著作権侵害の容疑のある貨物に対
しては、税関は通関を中止(差し控える)措置を取
るべきである。
13 税関が通関を中止する場合、権利人が三ヶ日以
内に、本条第 1 項から第 10 項までの規定によっ
て、税関に差押えの請求をしない場合、又は権利
を保全する民事も地区は刑事訴訟手続きを取ら
ない場合、其の他通関関連の規定に違反していな
ければ、通関させるべきである。
第 90 条ノ 3 第 80 条ノ 1 又は 80 条ノ 2 の規定に違
反して著作権者に損害を生じさせたものは、賠償責
任を負う。数人が共同して違反したときは、賠償の
連帯責任を負う。
2 第 84 条、第 88 条ノ 1、第 89 条ノ 1 及び第 90 条
第 90 条ノ 3 第 80 条ノ 1 の規定に違反して著作権
者に損害を生じさせたものは、賠償責任を負う。数
人が共同して違反したときは、賠償の連帯責任を負
う。
2 第 84 条、第 88 条ノ 1、第 89 条ノ 1 及び第 90 条
65
ノ 1 の規定は、第 80 条ノ 1 の規定に違反した場
合において準用する。
ノ 1 の規定は、第 80 条ノ 1 の規定に違反した場
合において準用する。
第 91 条 1 無断に複製の手段によって、他人の著作
財産権を侵害するものは、三年以下の有期懲役、又
は拘束のほか、選択的に NT75 万元以下の罰金を科
する若しくは併科する刑に処する。
2 販売又は貸し出しの目的で無断に複製の手段に
よって他人の著作財産権を侵害するものは、6 ヶ
月以上 5 年以下の有期懲役の上、選択的に NT20
万元以上 200 万元以下の罰金を併科する刑に処す
る。
3 光ディスクに複製する方法により、第 1 項の罪
を犯したものは、6 ヶ月以上 5 年以下の懲役、拘
留に処し、又は新台湾ドル 50 万元以上 500 万元
以下の罰金を併科する。
4 個人参考用又は合理的仕様の著作物(の複製)は
著作権侵害にならない。
第 91 条 営利を目的として複製の方法をもって他人
の著作財産権を侵害した者は、5 年以下の懲役、拘
留に処し、又は新台湾ドル 20 万元以上 200 万元以
下の罰金を併科する。
2 非営利目的で複製の方法により他人の著作財産
権を侵害し、その複製の部数が五つを超え、又は
摘発された時点で合法的複製物の時価にしてそ
の侵害総額が新台湾ドル 3 万元を超えたときは、
3 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 75
万元以下の罰金を科し又はこれを併科する。
3 光ディスクに複製する方法により、第 1 項の罪
を犯したものは、5 年以下の懲役、拘留に処し、
又は新台湾ドル 50 万元以上 500 万元以下の罰金
を併科する。
第 91 条ノ 1 所有権を移転する手段で著作物の原
作品又はその複製品を頒布して、他人の著作権を侵
害するものは、3 年以下の有期懲役、拘束、又は NT50
万元以下の罰金を科する若しくは併科する刑に処
する。
2 著作財産権を侵害する服製品の事を知り、それ
を頒布する又は頒布の意図で公開陳列する或い
はそれを所持するものは、3 年以下の有期懲役系
のほか、選択的に NT7万元以上 70 万元以下の罰
金を併科する刑に処する。
3 前項の罪を犯して、その複製物が光ディスクで
ある場合は、6 ヶ月以上 3 年以下の有期懲役のほ
か、選択的に NT20 万元以上 200 万元以下の罰金
を併科する罪に処する。但し、第 87 条第 4 号の
規定に違反して光ディスクを輸入する場合は、こ
の限りでない。
4 前 2 項の罪を犯したものが、その物品の出所を
供述し、これにより(捜査機関による)検挙が成功
した時は、その刑を軽減することが出来る。
第 91 条ノ 1 営利を目的として所有権を移転する方
法により著作物の原作品又はその複製物を頒布し
他人の著作財産権を侵害したものは、3 年以下の懲
役、拘留に処し、又は新台湾ドル 75 万元以下の罰
金を科し又はこれを併科する。
2 非営利目的で所有権を移転する方法により著作
物の原作品又はその複製物を頒布し、又は頒布を
意図して公開に陳列し若しくは所持し、他人の著
作財産権を侵害した場合、頒布の部数が五つを超
え、又は摘発された時点で合法的複製物の時価に
してその侵害総額が新台湾ドル 3 万元を超える
ときは、2 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台
湾ドル 50 万元以下の罰金を科し又はこれを併科
する。
3 第 1 項の罪を犯し、その複製物が光ディスクで
あるときは、3 年以下の懲役、拘留に処し、又は
新台湾ドル 150 万元以下の罰金を科する。
4 前項の罪を犯した者がその物品の出所を供述
し、これにより(捜査機関による)検挙が成功し
たときは、その刑を軽減することができる。
第 92 条
無断に営利を目的として公開口述、公開 第 92 条
営利を目的として公開口述、公開放送、
放送、公開上映、公開実演、公開伝送、公開展示、 公開上映、公開実演、公開伝送、公開展示、改作、
改作、編集又は貸与の方法により他人の著作財産権 編集又は貸与の方法により他人の著作財産権を侵
を侵害した者は、3 年以下の懲役、拘留に処し、又 害した者は、3 年以下の懲役、拘留に処し、又は新
は新台湾ドル 75 万元以下の罰金を併科する。
台湾ドル 75 万元以下の罰金を併科する。
2 非営利目的で前項の罪を犯し、その侵害した著 2 非営利目的で前項の罪を犯し、その侵害した著
作物が五つを超え、又は権利者が受けた損害が新台 作物が五つを超え、又は権利者が受けた損害が新
湾ドル 3 万元を超えるときは、2 年以下の懲役、拘 台湾ドル 3 万元を超えるときは、2 年以下の懲役、
拘留に処し、又は新台湾ドル 50 万元以下の罰金
留に処し、又は新台湾ドル 50 万元以下の罰金を科
を科し又はこれを併科する。
し又はこれを併科する。
第 93 条
営利を目的として次に掲げる場合のいず 第 93 条
営利を目的として次に掲げる場合のいず
れかに該当するものは、2 年以下の懲役、拘留に処 れかに該当するものは、2 年以下の懲役、拘留に処
し、又は新台湾ドル 50 万元以下の罰金を併科する。し、又は新台湾ドル 50 万元以下の罰金を併科する。
一. 第 15 条から第 17 条までの著作人格権を侵
一. 第 70 条の規定に違反したとき。
二. 第 87 条第 2 号、第 3 号、第 5 号又は第 6 号
害したもの;
66
の方法により他人の著作財産権を侵害したと
二. 第 70 条の規定に違反したとき。
き。
三. 第 87 条第 2 号、第 3 号、第 5 号又は第 6 号
のいずれの方法により他人の著作財産権を 2 非営利目的で前項の罪を犯し、その複製物が五
つを超え、又は権利者が受けた損害が新台湾ドル
侵害したとき。但し第 91 条ノ 1 第二項及び
5 万元を超えるときは、1 年以下の懲役、拘留に
第三項の情況はその限りでない。
処し、又は新台湾ドル 25 万元以下の罰金を科し
2 非営利目的で前項の罪を犯し、その複製物が五
又はこれを併科する。
つを超え、又は権利者が受けた損害が新台湾ドル 5
万元を超えるときは、1 年以下の懲役、拘留に処し、
又は新台湾ドル 25 万元以下の罰金を科し又はこれ
を併科する。
第 96 条ノ 1 以下の状況の何れに該当する場合、1 第 96 条ノ 1 第 80 条ノ 1 に違反したものは、1 年
年以下の有期懲役、拘束、又な NT2 万間以上 25 万 以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 2 万元以
間以下の罰金をかする若しくは併科する罪に処す 上 25 万元以下の罰金を科し又はこれを併科する。
る:
1 第 80 条ノ 1 に違反したもの;
2 第 80 条ノ 2 第 2 項に違反したもの。
67
2-3-11 付録 著作権関連実務問題と論点
1
台湾の著作権法整備の概観
台湾は 1990 年代以降著作権権利行使の整備を含めて知的財産権法制度の強化を推進してきたが、現
行の著作権法と旧来の著作権法を重点的に比較する表を参考資料として添付する。
新旧著作権法権利行使関連規定の比較表----従来法律の規定を基準に改正法を評価;
▲は従来法より向上の意 ▼は従来法に劣る意
2003 改正著作権法
従来法 (比較の対象)
特に規定されていない
権利侵害品目の没 ▲
第 98 条
入規定
第 91 条から第 96 条ノ 2 までの規定に定
める犯罪に関し、犯罪の用途に供され、又
は犯罪により得た物は、これを没収するこ
とができる。但し、第 91 条第 3 項及び第
91 条ノ 2 第 3 項に定める犯罪に関し、没収
し得る物は犯人に属するものに限らない。
第 98 条ノ 2
第 91 条第 3 項又は第 91 条ノ 2 第 3 項に
定める犯罪を犯した行為者が逃げ失せ、確
認するすべがない場合、犯罪の用途に供さ
れ、又は犯罪により得た物について、司法
警察機関は直接これを官没することがで
きる。
2 前項官没に係る物について、官没され
た金員を国庫に納めるほかは、これを焼却
する。その焼却又は官没金の処理手続につ
いては、社会秩序保護法の関連規定を準用
してこれを扱う。
光ディスク海賊品 ▲
特に規定されていない
関連罰則;特別加 *第 91 条 営利を目的として複製の方法を
重と公訴罪化
もって他人の著作財産権を侵害した者は、
5 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾
ドル 20 万元以上 200 万元以下の罰金を併
科する。
2 非営利目的で複製の方法により他人の
著作財産権を侵害し、その複製の部数が
五点を超え、又は摘発された時点で合法
的複製物の時価にしてその侵害総額が
新台湾ドル 3 万元を超えたときは、3 年
以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ド
ル 75 万元以下の罰金を科し又はこれを
併科する。
3 光ディスクに複製する方法により、第 1
項の罪を犯したものは、5 年以下の懲
役、拘留に処し、又は新台湾ドル 50 万
元以上 500 万元以下の罰金を併科する。
*第 91 条ノ 2 営利を目的として所有権を
移転する方法により著作物の原作品又は
その複製物を頒布し他人の著作財産権を
侵害したものは、3 年以下の懲役、拘留に
処し、又は新台湾ドル 75 万元以下の罰金
を科し又はこれを併科する。
2 非営利目的で所有権を移転する方法に
より著作物の原作品又はその複製物を
68
頒布し、又は頒布を意図して公開に陳列
し若しくは所持し、他人の著作財産権を
侵害した場合、頒布の部数が五点を超
え、又は摘発された時点で合法的複製物
の時価にしてその侵害総額が新台湾ド
ル 3 万元を超えるときは、2 年以下の懲
役、拘留に処し、又は新台湾ドル 50 万
元以下の罰金を科し又はこれを併科す
る。
3 第 1 項の罪を犯し、その複製物が光デ
ィスクであるときは、3 年以下の懲役、
拘留に処し、又は新台湾ドル 150 万元以
下の罰金を科する。
4
前項の罪を犯した者がその物品の出所
を供述し、これにより(捜査機関による)
検挙が成功したときは、その刑を軽減す
ることができる。
罰金の上限は最高 30 万元までだった。
権利侵害に関する ▲
罰金の金額の引き 罰金を全面的に引き上げる;営利目的の光
ディスク媒体の海賊品複製の罪に関して
上げ
は、罰金金額は最低 50 万元から最高 500
万元までに向上。他の形態の侵害に関する
罰金も大幅に引き上げられた。
公訴罪罪名拡大
税関措置
執行猶予規定
▲
光ディスク媒体海賊著作物複製等の侵害
に対する公訴罪化
=従来の規定と変更なし
=
従来は常習犯を中心にのみ公訴罪化
従来から同制度が既に導入された。
従来では懲役刑の実刑の上限のほか、6
ヶ月ほどの懲役刑下限も設けてあったが、
今回の法改正では常習犯を除き、それを撤
廃することになった。一方、出向猶予の判
決に関しては、もとより二年以下の初犯或
いは前回の懲役刑を服してから 5 年以内に
再度有期懲役経緯条ノ刑の宣告を受けて
いない被告に対する実刑判決に限定され
ているので、今回の改正で執行猶予の確立
が高まるようになるとは思えない。
著作権権利侵害に ▼
従来では実刑の上限のほか、下限も設け
関する刑事懲役刑 今回の法改正では常習犯を除き、それを撤 てあった。
最低刑度
廃することになった。そのため、初犯の場
合、従来より軽い、例えば 3 ヶ月ないし 6
ヶ月ほどの実刑判決の言い渡しの多発が
予想される。刑法第 41 条の「懲役と拘留
刑を罰金に変更する規定」によって、6 ヶ
月以下の実刑判決を受ける場合、最高法定
刑が 5 年以下の罪に限って、罰金に換算し
て刑を処することが出来る。その点、従来
より更に執行猶予か罰金換算の判決がよ
く見られるだろう。
一方常習犯に対しては 1 年以上 7 年以下の
法定懲役期間が設けられているので、悪質
69
の犯罪に対する威嚇効果は尚強いほうだ
と思われる。
非営利侵害罰則
▼
従来と異なって、原則上少量の非営利目的
の無断複製と頒布などの利用形態は刑事
責任を負わないようになる。一方民事上の
権利侵害責任は免除されない。しかし消費
者による非営利目的の少量の無断複製な
どの無罪化の改正は、当該行為がいわゆる
「合理的使用」に該当するとの錯覚を与え
る懸念も高い。消費者が複製又は頒布或い
は他の侵害行為にかかる著作物の部数が
五点を超え、又は摘発された時点で合法的
複製物の時価にしてその侵害総額が新台
湾ドル 5 万元又は 3 万元を超えるなけれ
ば、刑事責任のほか民事責任も不問となる
ことを誤解しないように、指導する必要が
ある。
従来では刑事罰則が特に営利目的の無断
複製に限定していなかった。
第 91 条 無断で複製の方法を以て他人
の著作財産権を侵害した者は、6 ヶ月以
上 3 年以下の懲役に処し、並びに新台湾
ドル 20 万元以下の罰金を併科すること
ができる。
2 販売又は貸与を意図して無断で複製
の方法を以て他人の著作財産権を侵害し
た者は、6 ヶ月以上 5 年以下の懲役に処
し、並びに新台湾ドル 30 万元以下の罰金
を併科することができる。
刑法の罰金転換基 ▼
準
従来では実刑の上限のほか、下限も設け
てあったが、今回の法改正では常習犯を除
き、それを撤廃することになった。そのた
め、初犯の場合、従来より軽い、例えば 3
ヶ月ないし 6 ヶ月ほどの実刑判決の言い渡
しの多発が予想される。刑法第 41 条の「懲
役と拘留刑を罰金に変更する規定」によっ
て、6 ヶ月以下の実刑判決を受ける場合、
最高法定刑が 5 年以下の罪に限って、罰金
に換算して刑を処することが出来る。その
点、従来より更に執行猶予か罰金換算の判
決がよく見られるだろう。
一方常習犯に対しては 1 年以上 7 年以下
の法定懲役期間が設けられているので、悪
質の犯罪に対する威嚇効果は尚強いほう
だと思われる。
一方、懲役刑に於いては、一般の著作権
侵害では複製とその他の犯行形態と営利
目的か個人非営利の犯行なのか、又光ディ
スク媒体の著作物を扱うかによって 5 年以
下、3 年以下、乃至 2 年以下の法定刑限度
となっているが、営利目的の業務常習犯の
場合は 1 年から 7 年以下となる。同時に、
刑法第 41 条の改正によって、従来の罰金に
転換できる最高法定刑限度が元の 3 年から
現行法の 5 年に引き上げられたことによっ
て、従来罰金転換の対象でなかった罪でも
罰金に転換するようになるので、実質上罰
金転換の判決となるケースが増える予想
があり、実質上の刑罰の軽減効果につなが
るだろう。
2 ナイトマーケットでの海賊版販売が公訴罪に該当するかどうか不明な点がある問題
----海賊版著作物商品の販売を巡る責任は、販売行為が発生する時間と販売行為の態様と販売対象の種
類等三通りの要素によって決まる。
70
(1)先行無断複製行為の継続実施による海賊著作物
2003 年の著作権法改正法によって、2002 年元日以前から開始されてきた著作物の無断複製行為によ
って製造された(海賊)著作物は、2004 年 6 月までも販売が許される。この種類の早期無断複製行為の
継続実施による無断服製品の取り扱いは、原則上刑事罰則に抵触することはない。但し 2003 年 6 月
以降からはその期間における販売実績に応じて著作権者に対して合理的な使用料の支払いの義務が
発生する。(著作権法第 106 条ノ 3)
(2)光ディスクの著作物の営利目的による無断複製や頒布による侵害行為も例外的に公訴罪になる
複製権の侵害と頒布件の侵害はそれぞれ基本的に著作権の侵害行為に該当するが、中にも光ディスク
を媒体として発効される著作物の侵害物権を複製すること又は侵害となる無断服製品を頒布する場
合、デジタル複製の容易性とそれに関係する暴利に因む非難性の高さに鑑みて、特別に公訴罪として
規定されている。
*第 91 条 複製権の侵害
営利を目的として複製の方法をもって他人の著作財産権を侵害した者は、5 年以下の懲役、拘留に処
し、又は新台湾ドル 20 万元以上 200 万元以下の罰金を併科する。
2 非営利目的で複製の方法により他人の著作財産権を侵害し、その複製の部数が五点を超え、又は摘
発された時点で合法的複製物の時価にしてその侵害総額が新台湾ドル 3 万元を超えたときは、3 年以下
の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 75 万元以下の罰金を科し又はこれを併科する。
3 光ディスクに複製する方法により、第 1 項の罪を犯したものは、5 年以下の懲役、拘留に処し、又
は新台湾ドル 50 万元以上 500 万元以下の罰金を併科する。
■
例外的な公訴罪
*第 91 条ノ 頒布権の侵害
1 営利を目的として所有権を移転する方法により著作物の原作品又はその複製物を頒布し他人の著
作財産権を侵害したものは、3 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 75 万元以下の罰金を科し又
はこれを併科する。
2 非営利目的で所有権を移転する方法により著作物の原作品又はその複製物を頒布し、又は頒布を意
図して公開に陳列し若しくは所持し、他人の著作財産権を侵害した場合、頒布の部数が五点を超え、
又は摘発された時点で合法的複製物の時価にしてその侵害総額が新台湾ドル 3 万元を超えるときは、2
年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 50 万元以下の罰金を科し又はこれを併科する。
3 第 1 項の罪を犯し、その複製物が光ディスクであるときは、3 年以下の懲役、拘留に処し、又は
新台湾ドル 150 万元以下の罰金を科する。
4 前項の罪を犯した者がその物品の出所を供述し、これにより(捜査機関による)検挙が成功したと
きは、その刑を軽減することができる。
■ 例外的な公訴罪
(3)著作権侵害の常習犯を成立する場合、例外的に公訴罪になる
著作権侵害を構成する物品を複製することやその不法複製物を対象とする無断の頒布、又は公開の口
述、放映、上映、実演、伝送、展示或いは改作編集若しくは貸借等の方法による侵害行為、又は第 70
条「音楽著作物の強制利用許諾を得たものに対する複製物の台湾生きがい輸出の制限」を違反する罪と
第 87 条「著作権侵害と見なされる行為態様」を構成するものに課する罪を業とする常習犯に対しては、
例外的に公訴罪とされている。
第 93 条
第 70 条「音楽著作物の強制利用許諾を得たものに対する複製物の台湾生きがい輸出の制限」
を違反する罪と第 87 条「著作権侵害と見なされる行為態様」を構成するものに課する罪
営利を目的として次に掲げる場合のいずれかに該当するものは、2 年以下の懲役、拘留に処し、又は
新台湾ドル 50 万元以下の罰金を併科する。
一. 第 70 条の規定に違反したとき。
二. 第 87 条第 2 号、第 3 号、第 5 号又は第 6 号の方法により他人の著作財産権を侵害したとき。
2 非営利目的で前項の罪を犯し、その複製物が五点を超え、又は権利者が受けた損害が新台湾ドル 5 万
元を超えるときは、1 年以下の懲役、拘留に処し、又は新台湾ドル 25 万元以下の罰金を科し又はこれを
併科する。
71
*第 94 条 無断複製、頒布、公開口述、公開放送、公開上映、公開実演、公開伝送、公開展示、改作、
編集又は貸与等の方法による侵害の常習犯の罰則
第 91 条第 1 項、第 2 項、第 91 条ノ 1、第 92 条又は第 93 条に定める犯罪を業とする者は、1 年以上 7
年以下の懲役に処し、並びに新台湾ドル 30 万元以上 300 万元以下の罰金を併科することができる。
2 第 91 条第 3 項に定める犯罪を業とする者は、1 年以上 7 年以下の懲役に処し、並びに新台湾ドル
80 万元以上 800 万元以下の罰金を併科することができる。
■例外公訴罪
3
求刑最低制限の取消し問題
実刑の下限規定の撤廃
著作権侵害の刑事責任に関し、現行法上の自由刑の度合いが適切ではあるが、経済犯罪につき金銭
罰を制裁の手段とすることも考えられるので、侵害行為をより効果的に抑止するため、罰金刑を高め
ることとする。海賊版による複製権と頒布権への侵害が著作財産権者に与える損害が最も重大で、国
家や産業の競争力を弱化させるだけでなく、国民のモラルや風紀を乱す悪質な犯罪行為でもある。し
たがって、故意の犯行又は情状重大(光ディスク媒体の無断副生物の製造販売等)の被告に対して、罰
金刑を加重するとともにこうした侵害行為を非親告罪とする。しかし、従来では実刑の上限のほか、
下限も設けてあったが、今回の法改正では常習犯を除き、それを撤廃することになった。そのため、
初犯の場合、従来より軽い、例えば 3 ヶ月ないし 6 ヶ月ほどの実刑判決の言い渡しの多発が予想され
る。一方常習犯に対しては 1 年以上 7 年以下の法定懲役期間が設けられているので、悪質の犯罪に対
する威嚇効果は尚強いほうだと思われる。
一方、懲役刑に於いては、一般の著作権侵害では複製とその他の犯行形態と営利目的か個人非営利
の犯行なのか、又光ディスク媒体の著作物を扱うかによって 5 年以下、3 年以下、乃至 2 年以下の法
定刑限度となっているが、営利目的の業務常習犯の場合は 1 年から 7 年以下となる。同時に、刑法の
改正によって、従来の罰金に転換できる最高法定刑限度が元の 5 年間から現行法の 3 年間に引き下げら
れたことによって、罰金に転換するケースが増える予想があり、実質上の刑罰の軽減効果につながる
だろう。(改正条文第 88 条、第 91 条から第 95 条まで及び第 100 条)
4
科学技術保護措置が完全に取消されたことへの懸念
著作権者は、よくビデオ、CD、コンピュータソフト等に施された技術的手段により、他人が権利者
の許諾なくしてその著作物にアクセスし、又はそれを利用する行為を制限したり禁止したりすること
で、デジタル化したインターネットの環境下に置かれた自己の著作に関する権利を守ろうとする。技
術的保護手段に用いられている信号の解読、破壊又はその他の方法により、これらの技術的保護手段
が機能するのを回避するための行為がすべて著作権者の著作物に対するコントロール及び著作財産権
の行使による経済利益の実現を妨げるものとして規制の対象とすべきである。また、技術的保護手段
の回避を目的とする方法を公衆の使用に提供する行為自体は、著作権そのものを侵害する行為ではな
いが、侵害を可能にし、助長する効果を生じさせるおそれがあるので、なおさら規制を加える必要が
ある。そのため「WIPO 著作権条約」第 11 条及び「WIPO 実演・レコード条約」第 18 条に照らして、技
術的保護手段の関連規定をおく予定があったが、結局時期尚早と見られて、著作権のコピー防止の手
段を無断に破壊する行為を罰する規定を著作権法に設けることが見送られてしまった。
一方、刑法第 358 条にその旨と若干関連性のある規制を設けてある。(刑法第 358 条から第 363 条、
第 358 条:(電脳に侵入する罪) 正当な理由なく、他人のアカウント暗証番号を入力する、又は電脳
使用の保護措置を破壊する、或いは電脳システムのすきに付けこんで他人の電脳或いはその関連設備
に侵入する者は、三年以下の有期懲役、交流或いは十万元以下の罰金を単独で若しくは実刑と平行して
課徴する。)その刑法で新たに設けられた 電脳使用を妨害する罪 の章に基づいて、コンピュータの
正当使用者のデータやソフトとハードの保障を図ることが出来ると見られる。
5
非営利の合法化への懸念
2003 年度の著作権改正法によって、下記複数種類の権利侵害行為が刑事上の無罪化を受けられた。
A 製版権侵害の無罪化
B 著作人格権侵害の無罪化
C 非営利目的の無断複製の条件付無罪化(第 91 条);
原則上複製されるものは 5 部以上に上り、侵害される原著作物の市販価格が NT5 万間を越える場
合に限る。
但し第 44 条や第 65 条の合理的利用に該当しない場合に限る。
D 非営利目的の無断頒布の条件付無罪化(第 91 条ノ 1);条件は C に準ずる。
E 非営利目的の無断複製と無断頒布のほかの犯行(公開放送、公開上映、公開実演、公開転送、公開
72
展示、無断改作、無断編集、無断賃借等)の条件付無罪化(第 92 条);
それらの動きによって、著作権侵害が更に深刻化するではないかと懸念する向きも多いが、検察当局
は凶悪化、常習化と専門化の犯罪訴追を重視する一方、非営利の個人レベルの初犯を大目に見る傾向が
あるので、実体法の無罪化改正が専門化の常習犯罪者でない非営利の侵害行為者に対する権利行使に関
する悪影響は実質上それほどないかと予想されている。
6
7
ソフトプログラム侵害の立証責任----企業秘密保守と合理性の反省
付随プログラムの侵害は本体タイトルの侵害に関する自認によって推定され得るか?(シナリオタイ
トルとドライブプログラム)
専属ライセンシーの告訴権の明文合法化
著作財産権の許諾に関し、現行法(2001 年 11 月 12 日公布)第 37 条第 2 項には「前項の許諾は公
証人が公証して証書を作成した場合、著作財産権者が後にその著作財産権を譲渡し又は再許諾したこ
とにより影響を受けない。」とあって、ベルヌ条約第 5 条第 2 項「権利の享有及び行使には、如何な
る方式の履行をも要しない」に反するのではないかと疑義を生ずるので、この条文を削除すべきであ
る。また、現行規定により、専属利用許諾における利用権者が許諾を受けた範囲内において、著作財
産権者として権利を行使することができるとはいえ、自己の名義を以って訴訟上の行為をすることが
できるかどうかについては明確にされていないため、あわせて利用権者が自己の名義をもって訴訟上
の行為をすることができるように明確に定める。
(改正条文第 37 条)
8
おとり捜査による容疑者逮捕の問題
マイクロソフト社から派遣のスタッフが顧客に成りすまして、経済状況が悪いとか、学生だからお
金がないと偽って他人の同情心に訴え、同社のソフトウェアを無料でコンピューターにインストール
するようとしつこくせがんで、相手が承諾してくれれば、早速警察に通報してその場で犯罪の証拠を
キャッチするのが、MS 社の海賊版ソフトに関する証拠収集の手法である。あるコンピュータ販売業者
は、MS 社が仕掛けた罠とも知らずにまんまとはめられ、MS 社の通報を受けてやってきた警察の捜査で
インストールに使う海賊版ソフトが押収され、さらに MS 社から台湾ドル 1000 万元を超える損害賠償
を求められたことが最近明らかになった。
捜査機関のものがおとりを使いまた自らおとりとなって、売春や賭博、覚せい剤等麻薬取引等犯罪
に関わる者を検挙するときによく利用される捜査方法である「おとり捜査」は、もともと犯罪を実行
する意図のないものが、おとりとなった捜査機関の者の明示或いは暗示にそそのかされて犯罪に及ん
だということから問題となる。おとり捜査に引っかかった一度限りの犯行の場合は特にそうである。
■証拠の取得についての合法性要求−−囮捜査の合法性
台湾では米国のように証拠の合法性についての要求は厳格的ではない。従来、後日の訴訟における
証拠の収拾と確保のため、権利を侵害する完成品や部品を製造販売する人に興味を示して、問題の製
品を購入しようとする買い手と偽って、模造品不法製造者を誘い寄せてオッファー書類や領収書を取
得したり、アルバイト工員として模造品製造の工場に潜り込んで、半ヶ月間密かに証拠収集に励んで
からさっさと辞めるような所謂囮捜査は、興信所の証拠集めの常套手段として見取られて、今までは
未だ裁判所にも別に問題とされていない。但し営業秘密法及び電脳処理個人資料保護法など企業や個
人の情報を保障する法律の成立に依って、従来のような放任主義も多少修正させられるようになるで
あろう。また、弁護士と調査会社の調査人員など法律によって司法警察の身分を持たない者による強
制捜査と押収が不法と主張され、証拠物と証言を否認する被告も増えているので、証拠収集の段階の
合法性への配慮が重要である。
又、無断に録音したテープが証拠としての合法性はあるが、合成処理などの抗弁が信憑性を弱化す
る場合が多い。調査会社よりの情報の持ち込み;契約していない場合でも、著名企業の場合には調査
会社からアプローチがある。
尚、2004年最近の実例で見られたおとり捜査の合法性の判断基準もジャン換算工価値がある。海賊
版ソフトウエーアの製品を販売するものは、大手振って海賊製品を掲示などしないで内緒に販売を携
えるのが普通である。そのため、販売行為を立証するための証拠は入手しにくい。販売者の口頭のオッ
73
ファーを証拠にするために警察官が顧客を扮してそれを誘致する手法を使う場合もある。しかし、顧客
と偽った警部が自発的に海賊版の商品を尋ねて開示してもらう要請をする場合、たとえ販売側がそれ
に応じて海賊商品を提示して見せて取引を成立させたとしても、その取引は証拠を収集するための警
察官の 誘致 によって誘発或いは教唆されたものとして、その誘致自体の合法性の問題を取り上げて
取引によって入手した証拠の合法性を否定する裁判所の見解がある。例えば「正規品が高いから海賊版
はないのか?」とたずねるのは勿論教唆になる。「正規品が高いから他に易いものはないのか?」と言っ
ても海賊版品を購買する意欲が明らかだから犯罪教唆を免れない。その手のおとり捜査は合法性の問
題が濃厚で起訴や有罪証拠に使われにくい。
犯罪の教唆と一画して著作物の海賊版商品を販売する行為の証拠集めの手法として、偽りの顧客は
積極的且つ直接に海賊商品の提示を養成するのを避けて、間接的に海賊品を提示するような意欲を引
き出すまでの言動までしか取らないのがポイント。例えば、「予算が限られているので、もうちょっと
負けてほしい」とか、「この値段ではどうにもならないから、他の商品はないのか?」や「負けても
らえなければ買うのを諦めるしかない」と海賊品の購買の示唆を避けて、値切りを強請ることに一点
ばる口説きに徹するほうが、陥害教唆の疑いなしに海賊品を販売する証拠を集められる。
9
MP3 音楽ファイル P2P 形式の提供のサイト KURO が権利者の訴追を受ける
台北地検が音楽ファイル交換サイトKUROを起訴 住民投票を唱えるユーザー
IFPIの声明発表にKUROが猛反発
50 万人の加入会員を誇る P2P 音楽配信サービスサイト、
「KURO(飛行網)」が著作権法違反として台
北地検に起訴されたことについて、IFPI(國際レコード産業連盟)は昨日、8 項目にわたる声明を発
表し、権利侵害行為の即時停止を求めるとともに、P2P サイトの利用を止めるようユーザーに呼び掛
けた。声明以外に KURO の投資者及び使用料徴収代行業者に関する情報も公表された。これに猛反発す
る KURO は IFPI の挙動を商業活動を抑圧したものだと批判する一方、ネット上に P2P の是非を問う論
戦が広がり、住民投票を通じて消費者の声を伝えようと行動を促す意見もチャット仲間の間から出て
いる。
KURO が発表した声明によれば、
「多くの消費者は KURO が提供するソフトを利用して家庭用か個人的
に使用する目的で MP3 ファイルをサーチしたり交換したりする。これらの行為は著作権法に定める「合
理的利用」の範囲に含まれており、適法性に問題はないはずである。」という。IFPI が記者会見で「飛
行網」の投資者等関連情報を公表したことについて、法的手段を借りて商業活動を抑圧しようとする
ものだと IFPI のやり方に疑問を投げた。
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