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溶着層の厚さのヒートシール強さへの 関与の定量的検証

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溶着層の厚さのヒートシール強さへの 関与の定量的検証
日本包装学会誌vOlLl5jVDJ(2006ノ
殿論文
一一一-一
溶着層の厚さのヒートシール強さへの
関与の定量的検証
菱沼一夫*
ThequantitativeverificationoftheinvoIvementofthemeltinglayer
ofthethicknesstotheheatseaIingstrength.
KazuoHISHlNUMA*
熱溶着層(ヒートシーラント)が軟化半溶融の状態で圧着されると、溶着面にミクロの.食い
込み ̄が起こる。
この状態で冷却すると..食い込み,、部分に摩擦接着が発生し、剥れシール(PeelSeal)となる。
他方、溶融温度より高温域で加熱されたヒートシーラントは液状となり相対するヒートシーラン
トは.`混合状態”となる。
冷却されるとヒートシーラントが一体化するので、引っ張I)応力によってエッジが切れる破れシ
ール(TearSeaDとなる。
3um程度のヒートシーラントでヒートシール強さが完全に完成しているので、ヒートシールは
マイクロメートル以下のレベルで発現していることが予測きれる。
本研究はヒートシーラントとしてPP系のco-polymerを共押し出しで形成した包装材料を使って
PeelSeal領域でのヒートシーラントの厚さとヒートシール強さの発現の関係を溶藩面温度をパラ
メータとして探求したものである。
キーワード:溶蒲面温度測定法、ヒートシール、剥れシール、破れシール、ヒートシーラント、ラミ
ネーション強さ、.・ポリマー
Micro輿interlocking癖iscreatedattheweldingplane,whentheheatsealantisunitedflrmly
attheconditionofhalfmelting・
Thefrictionadhesionarisesat“interlocking”part、whentheheatsealantcoolsdowninthis
condition.andPeelSealisfOrmed
Ontheotherhandwhentheheatse2llantisheatedinhightemperaturerangeaboveits
meItingtemperatureitbecomesliquidstateandtheoppositesealantbecome.`mixedstate颪.
InthisconditionTearSealisappearedinwhichtheedgebreaksbythetensionstress・
becauseitisunitedbycooling.
ltisestimatedthattheheatsealinghasappearedbvthelevelunderthemicrometer、
becausetheheatsealingintensityhasperfectlybeencompletedinheatsealantofabout3江m・
ThispaperinvestigatesthereIationshipbetweenthicknessoftheheatsealantinthePeel
Sealregionandtheheatsealingintensityatdifferentmeltingsurfacetemperatureusing
packagingmateriaIofwhichtheheatsealantisPPcopoIymerbase
Keywords:mMTMS1、HeatSeaI・MeltingSurmceTemperature、PeelSeal、TearSeal,Heatsealant,
LaminationStrengthCo-polymer
、菱沼技術士蠣務所(〒212-0054川崎ili幸区小倉1232):
HISHINUMACONSULTINGENGINEEROFFICE12320guraSaiwai-WardKaw&lsaki2120054Japan
E-mail:RXP10620@nifty・nejp
-29-
瀞ji1Wのルイさのビートシール強さへの関与の定湿的撲り証
1.緒言
切れる破れシール(TearSeal)となる。
熱溶着を適用して包装袋のヒートシールを
熱溶着(ヒートシール)は熱溶融する材料
行う場合には、一定応力で破断するTearSeal
を接着面に相対させて加熱することによって
ではピンホールや破袋が起こりやすいので、
成立する。
ヒートシール線の微細部分に付加される集中
熱溶着はヒートシール線に引き裂き応力を
かけたときに発生する剥がれ又は破れシール
応力を「剥がれ」による分散,/消費できるPeel
Sealの適用が好ましい。!)
の2種に大別できる。熱溶着層(ヒートシー
PeelSealの加熱/軟化状態では高分子の結
ラン卜)が軟化/半溶融の状態で相対する溶
晶構造間に食い込みが起こっていると推定さ
着面が圧着されると、双方の溶着面にミクロ
れるので接着・性の発現はマイクロメートル以
の.食い込み,,が起こり、この状態で冷却す
下のレベルが予測される。
ると“食い込み ̄部分に摩擦接着の剥がれシ
本研究はヒートシーラントにPP系のcopolymer
ール(PeelSeal)が発生する。他方、溶融温
を共押し出しで形成した包装材料を使って
度より高温域で加熱されたヒートシーラント
PeelSeal領域でのヒートシーラントの厚さと
は液状となり相対するヒートシーラントは
ヒートシール強さの発現との関係を溶着面温
轡混合状態〆となる。そして、冷却されると
度21ベースで探求した結果を報告する。
ヒートシーラントが一体化するので、引き裂
き応力によって、ヒートシール線のエッジが
TablelTheeIementrelatedtoheat-sealingstrengthfo「
exceIlentheatsealingmanagement
KindorCommonEI色meunO筐
-Heatm8(MeltingSmhceTbmp麺t、℃)
-HcatCapaciIy(HCaIjngTmIe)
M浬亟型TDDT、璽亡唾rigtic:
-Kindofmaterial,[R⑯actM峡
Nom-rcactjvi呪Co-polymeLMixedMatcuiall
-PolymerizatimINo腓”]ymcUization随tc]
-HeatDCnaturizinglRadicalCharaclcTisljc]
-PeeISCalTbmpeTatu応
」IbarScalTbmpcmtmp
-RigidiIy[PaccofExpm四ioLThickness]
MateTialComposition:
-T1uclme室s
-Laminatior0Spmgth[ThcDillbTCncccmRcGmwth
ofSurfEccMatcTialandHeat-scalant]
HeadilngOperaUcn:
-Heat-sealimgMethod
-Ovcrheat
-Thcpoly“BaU'’
一nck
-UmSuitablCPY℃ssurization[FaultPTpssmizalion,ImsuⅡIcient
Pi=且【n㎡うえ価rDn
-U歴venHeatin8[PT巳ssmizatimnSpols,TbmpemmmeSpots]
2.理論
ヒートシール強さの発現に関係する要素を
材料特性と加熱操作から摘出すると表1のよ
うになる。本研究ではこれらの要素の中から
PeelSealに着目して論ずる゜
2.1Co-polymerのPeeISealの発現メカニ
ズム
ポリプロピレンの重合過程でのエチレン等
の添加によるco-polymerの生成を利用した
PeelSeal温度帯の拡大の努力は古くから行わ
れている。31メタロセン触媒によるcoPolymer
の改質はヒートシール性の改善に寄与してい
る。ljPP系のcOpolymerのヒートシールの発
現では、先ず低温域でPE部位の溶融が始ま
る。加熱温度が上昇すると基材の溶融が発現
するように設計されている。溶着面温度を±
-30-
〃本包装学会誌VDllj5Nb.I(2UD6)
←Thesurface
coursematerial
wh..M・'……i・/、M':bM;ki9淵…i傘
(About3Lfm)
Thohidlcaseofme1tingprobabiIityTheoutbr⑧akofalmostfixedmeItingprobability
◆凸
ThecutbrBakofalmostfixBdmeIting
probability
r、
...;
ltwiIIprcsume,ifadhesivestr⑧ngth
changBswiththeintervaIsofamoIecuI
Fig.1Thep「esumedfigureoftheheatsealingbytheco-poIymerinthepeeIseaIcondilion
1℃程度の精度でヒートシールしたサンプル
3.実験
を引張試験して山/谷の出る引張パターンか
ら最大値、最小値を溶着面温度ベースでプロ
3.1実験用資材の選択
ットすると2種のヒートシーラントのヒート
シール特`性の発現訓を見出すことができる。
本研究では主にヒートシーラン卜の厚さに
注目して実験材料の選択を行った。
技術的には数種を混合して適用することも
サンプルはヒートシーラントと基材のラミ
できるからco-polymerのPeelSealへの適用
ネーション強さの影響を受けにくい共押し出
性は広まっている。co-polymerをヒートシー
しフイルムを採用することにした。
ラントに使ったPeelsealとTearsealの状
態の発現推定モデルを図1に示した。
実質的には表層に接着層を持った一体フイ
ルムでラミネーション強さは材料の固有の結
シーラントのco-polymerのエチレンのブ
レンド割合は8~10数%(モル%)である。
合強さとみなすことができる。ヒートシール
強さのみの測定に着目したいのでヒートシー
Co-polymerの溶融が始まる低温域でのヒー
ル強さより数倍大きい応力でも変形しにくい
トシールの発現距離は高分子の1ユニットの
基材にヒートシーラントの厚さを変えたサン
大きさ`)からl/10~l/100umと推定される。
加熱によってco-polymerの軟化と圧着力
TabIe2ThespecificationforthemateriaIusedfo「the
による食い込みによる接近確率がPeelSealの
発現の大小になると推定した。製造工程の実
test
SamplBCode
SampIeCode
SeaIanttjTi Bkness
WhDIetDmcknBBs
WhoIethickness
A:2OT
3521m
20似、
B:3OT
42
ーラントは数以mもあれば十分であると考え
30
C:50T
6.4
50
られる。
、:60T
75Tl{
60
力を考慮して、PeelSealの完成にはヒートシ
-31-
溶着綴の隠さのヒートシール強さへの側与の定量的検証
恥5tin狸Comdition
◆Heatingtempe「atulpaccumcy:
Absolutevalue;±1.5℃
0.3℃
RBproducibility;
◆Coverplatc:
MetalplatcofOO8mm
◆GapControlAccuracy:
Cover
Plates
一
一一
=10皿、
Sample
PilloW
◆IritialPT己ssPmssuに;
=0.2MP
◆ItcoolsimmcdiatcIyaftcra
hcatmgend=0.03MP
◆SpecdtopullingTと3t;
Theco杖ractionscale
isnotidentiCal
50-100mm/Min.
Fig.21ThespecificationforthematerialusedIorthetest
プルを実験に供したかったが、市販材料では
得にくかった。
本実験ではPPとco-polymerのヒートシー
Rei
ラントを共押し出しで製造した日本ポリエー
rial
ス(株)製の.ニホンポリエース”(型名:
NT)を使用した。
試験材料の仕様の概要を表2に示した。
3.2ヒートシールサンプルの作成方法
ヒートシールは‘0MTMS,キット71を用い
て図2の方法で行った。
サンプルをlum程度の平面性の保証された
Fig3Theattachmentmethodofthereinfo「cement
008mmの金属プレートで挟んで加熱した。
溶融(又は軟化)したヒートシーラントが大
きな圧着圧の影響を受けないように各サンプ
加熱サンプルをJIS法に準じて引張試験機
ルの1枚分の厚さのプレス代ができるように
で引張強さを測定した。TearSeal状態にな
ピロー(スペーサー)を設置してプレスギャ
ると溶着強さが基材の伸び応力より大きくな
ップを設けた。加熱ジョーをPeelSealと
るので、基材の伸びが大幅に発生する。引
TearSealの境界温度を中心に数種類の温度
張試験にかける前にヒートシール面の反対側
に制御して、初期プレス圧を約0.2MPで所定
に薄手の粘着テープを貼り付け補強を施し
時間馴圧着した後、直ちに約0.03MPのプレ
た。引張試験のジョー間の距離を約30mmと
ス圧で冷却した。
し、基材の伸び応力がヒートシール強さの測
定値になるべく影響しないように考慮した。
3.3引張試験の方法
補強材の貼り付け状況を図3に示した。
-32-
〃本包装学会誌
40
WLI51Vnl(2006)
-3.5瓜、
一一3.5皿m
35
Rcinfbrccmcnt
-←4.2〃m
P
30
Px--×
Rcinfbrccmcnt
■
●
●
5
2
●
●
RcinfOにement
-今←7.5瓜、
Rcihforcement
0
2
●
●
×
p
グ、、戸■■■
●●
‐
。
。 ̄
 ̄
ロ。 ̄■■ ̄。
 ̄
1,兵_:藍一週二:=”
。←■■◇卓■◇--つ
5
(EE埠一、z)二葛■●あの石o⑭】③。エ
-a6、4山m
■×
‐
、ザ-
-●-6.4〃m
->中7.5四m
)。
づ
-,4.2皿m
050
ノーロョーーーラョ
 ̄---- ̄
田寸←
E、0⑤0NC⑦sp【つ
。マー
口才 ̄ ̄ ̄Euマ
②⑤一
-
-
②向一
00
-
。剥一
6.
MeltingSur6BceTcmpe7君turc(℃)
Fig4Thetensiletestresult
4.
結果と考察
着テープ補強(ラミネーション)して引張試
験を行った。粘着テープの貼り付け処理の結
4.1ヒートシーラン卜の厚さをパラメータと
果、ヒートシール強さの表示は格段に向上し、
した溶着面温度ベースの引張強さの測定
ヒートシーラントの厚さが3.5~7.5αmのPeel
結果と考察
seal領域での引張強さは15N/15mm付近で同
各加熱サンプルの引張試験結果を図4に示
等の値を示した。
した。このサンプルは125℃より高温の加熱
ヒートシーラントがO4umのサンプルのメ
でヒートシーラントは溶融状態のTearSeal
ーカーが提示しているヒートシール強さを図
になる。JIS法の引張試験では3.5,4.2um
中に併記したが、発現温度や発現パターンに、
の材料に有意さがあるように見える。
材料の基本機能の評価に影響がある程の大き
ヒートシーラントが3.5’mの基材の厚さ
は20umと薄いので125℃以下のPeelSeal状
な相違があり、従来の試験法に課題があるこ
とを示している。
態でも基材の伸びが顕著に現れ、ヒートシー
ル強さが伸び応力の中に埋まりこんでしまっ
4.2溶着面温度をパラメータにした引張強
た。基材の伸びの影響を排除するために、粕
-33-
さの評価結果の考察
トシール強さへのlHV与の定」Iif的検証
糠蒜騨の厚さのと
35
30
-①11BAC
一十②122℃
■。・③124℃
、‘
 ̄④124RCReimbmo
・一天…⑤128℃
5
2
〆 ̄、-。~~
0
2
■◆ ̄
、X
⑤
●
づ
、
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←
1
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ゥ
①
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P
ウ
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0
(EEp←へz)二盆E●」←の-何のの孕呵のエ
->←⑥128℃Roinnov℃。
50
pdIO
ばりピコ●マuD
Cかマピワ ̄r-
ThicknessofHeatSeaIa『た(Um)
Fig5ThemeasurementresultoftherelationbetweenheatseaIantthicknessandtensiIestrength
図4のデータを使って、横軸をヒートシー
ら3~6α程度にco-polymerの結合確率の好
ラントの厚さとして、加熱温度をパラメータ
条件領域が存在していることが伺われる。
としてヒートシーラントの厚さとヒートシー
(図1参照)
ル強さの関係を作成したものを図5に示し
128℃ではヒートシーラントは溶融状態と
た。PeelSealの最高温度の124℃の補強処理
なりヒートシール線の剥離は殆ど起こらず、
データに着目すると、3~6.4umのヒートシー
引張試験では基材を含めた伸びが発生する。
ラントで、ほぼ同等のヒートシール強さを示
4.2um以上サンプルの補強データの引張強さ
しているが7.5umでは少し下がっている。
は、ヒートシール線の破壊強さではなく、サ
金属イオンを含まない非反応系のプラスチ
ンプルの伸び応力であり、破断強さはもっと
ックでは、溶融結合は線状高分子の.絡み合
大きいところにあるが、TearSeal領域なので
い”結合(分子間摩擦力)によると言われて
ピンホールの発生領域となるからヒートシー
いる。PeelSeal状態では相対するヒートシー
ル強さのみでの評価は好ましくない。9’
ラントの“食い込み.,が3~6lumに制限され
この結果からPeelSealは、5αm程度のヒ
て、7αm以上の深さのco-polymerが分子間
ートシーラントで充分完成していると推定さ
摩擦に関与しにくいと推定する。実験結果か
れる。
-34-
日本包装学会誌
30
25
VbLJ5
NuJ(2,05ノ
、
1
5
Rei㎡brccmef辻’
E
NoRBi㎡brc回、、上
0
1
(伝』Eぬくz) 二毬巨遭勗一句⑩⑭満のエ
■ITI÷FEJT二1J
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0
●[つ。
 ̄里皀昌劇圏園冨留胃寺専辱
PeelDistance(x1/2)[mm]
Fig.6
4.3
TheelfectofheatseaIingstrengthoftheIaminationst「cngthonthereinforcement
実際に測定しているヒートシール強さ
の複合要素の解析と考察
に基材が伸び、ヒートシール線の破れは発生
していない。
補強に使用した粘着テープの剥離強さ(デ
ラミ強さ)は3~4N/15mmと計測された。
表面が加工処理をしてないプラスチック材
の粘着/剥離強さは粘着テープのメーカーに
関係なくほぼ同等であり、真空接着が主体に
よるものである。
ヒートシーラントが6.4αm、130℃のヒー
トシールサンプルの引張パターンを図6に示
した。この図に補強材として使った粘着テー
プとサンプルとの剥離強さ併記した。補強材
の剥離力は、ほぼ3N/15mmであった。補強
なしの引張パターンは約17Nまで上昇した後
従来の評価法IC1.111ではこの17N/15mmを
ヒートシール強さと評価している。補強材を
表層材、試験材を内層材のラミネーション材
としてラミネーション強さの考察を行う。
補強によるヒートシール強さは28N/15mm
まで増強する。見かけ上のヒートシール強さ
は約10N/15mmも向上する。この場合でも
ヒートシール線の破れは発生していない。
補強材とサンプルとの粘着力の3N/15mm
に対して引張強さ制御の向上は10N/15mm
あり、補強材の粘着力の3倍程度になってい
る。引張試験の観察から、剥離(デラミ)の
-35-
溶着層の厚さのヒートシール強さへの関与の定量的検証
Fig7Themechanismofthede-laminationwhichisgene「atedattheheatseaIpa「t
形成ざれ本体側のヒートシーラントと表層材
の間には[(引張強さ)xCOtO]のデラミカ(2)
メカニズムを図7に示したように解析した。
引張試験によって、ヒートシール線のマーク
した点から発生するデラミネーションは、表
層材の伸びとヒートシーラントのシール線か
ら発生する伸びの相違によって生じる。“三
角形”のフイン部と本体面に相当する二辺が
が発生する。この実験の場合、ヒートシール
強さは、17N/15mmから28N/15mmへと約
10N/15mm向上している。補強材の粘着力
(ラミネーション力)の約3倍のデラミカ(2)
となっているので、この時の角度は71~72゜
と計算できる。形成された三角形はヒートシ
,`デラミカ,,に関与している。図7にはサン
プルと補強材のデラミカ(1),(2)に注目した解
ーラントが破断するまで拡大する。
析を行っている。
この考察結果からTearSealの従来のヒー
ヒートシーラントの伸びが“ゼロ.,の場合
トシール強さは①ヒートシーラントの「伸び
のデラミカは二辺ともゼロである。引張応力
力」、②「ラミネーション強さ」、③「ヒートシ
ール強さ」そして引張試験の進行で15mm巾
に引張力が均一にかからなくなって発生する
はヒートシール線の数以mの巾にかかるので
先ずヒートシーラントのヒートシール線側に
応力が発生し、ここから伸びが発生する。
フィン側の補強材の粘着面にかかる初期引
④"タック”の「複合」結果を測定していた
張応力は、ほぼ直角になるので、フイン側表
層材にはデラミカ(1)が発生して実験サンプル
の場合は3N以上で容易に剥離が始まる。
実際のこの部位のラミネーション強さはヒ
ートシールの加熱を受けるので、熱処理前の
ラミネーション強さより小さくなることに留
ことが分かった。
すなわち引張力に対して上記に定義した三
角形が形成されなければデラミは発生しない
ことになる。
意が必要である。
この結果ヒートシールのコーナー三角形が
-36-
関連要素を以下のように表現すると
ヒートシール強さ:FII(N/15mm)
ヒートシーラントの初期伸び力
(応力がかかった直後の):FMN/15mm)
日本包装学会誌WLl5jVbL1(zU06ノ
(1)(2)(3)-1(3)-2(4)
Fs>FH
FL.k>Fk>Fs
Fh>FL。k>FsFh>FL.k>FsFH>Fs>FL.k
(Fc>FH)(FH>Fc)
FH:HeatseaIstr℃ngU1FS:TheelongaticnfCrcetheinitiaIstageoftheseaIant
FL:LaminationstrengthFc:meeIongationfbにethei腕itialstageofthecoatmaterial
k:TheandeconstantinthBdelaminatinRgeneraticn
Fig8TheexpIanationfigu「eofmechanismofthegenerationofthedelaminating
②F1!>Fcの場合
ラミネーシヨン強さ:F,1N/15mm)
表層材の初期伸び力:FMN/15mm)
→表層材とシーラントの伸びの差がデラミ
デラミ発生の角度定数:k(3~4程度)
の発生応力となる。伸びは大、デラミ
の発生は小
各要素とデラミの発生の関係は次のように
(4)Fli>Fs>FLkならば
なる。
→ヒートシール線の剥離と破断はなし
(1)Fs>F1,ならば
ヒートシール線を起点に伸びの発生
→ラミネーション強さに関係なくデラミの
→デラミの発生は犬
発生なし
→ヒートシール線の剥離
以上の関係の図解を図8に示した。
(2)F,,。k>F1,>Fsならば
(2)が最強の接着状態となるが(FLk>F1I)
→デラミの発生なし、表層材によるヒート
の条件は作りにくいものと考えられる。
シーラントの伸びの抑制/補強作用
→ヒートシーラントの部分破断
(3)F1!>FLk>Fsならば
PeelSeal領域では引張強さはヒートシール
面の熱溶着状態に依存するので「複合」要素
の影響を受け難く(1)のようになる。
①R>F側の場合
→表層材による伸びの抑制/補強作用
(l)はPeelsealの条件下でのヒートシールに
よって容易に制御ができる。
デラミの発生は大
(F1,>Fs)の発現条件は溶融接着のTear
-37-
溶春層の厚さのヒートシール強さへの関与の定量的検証
6.謝辞
sealの場合が該当する。この時、デラミネー
ションは種々の条件で発現の仕方が異なる。
剛性の大きい厚手(70~80↓1m)のPPのヒ
本研究に当たり技術士/小山武夫氏のご指
ートシーラントを適用したレトルトパウチの
導・鞭捷、サンプルの提供を戴いた日本ポリ
Tearsealを施したケースのような場合がこ
エース(株)に紙面より謝意を表す。
れに相当する。
材料の伸びエネルギーを「剥離エネルギー
<参考文献>
理論」いと同様な論理を利用して、TearSeal
1)角田光弘、菱沼一夫、第12回日本包装学会
状態でも破断力にマージン付与できる破袋制
御への応用性を示唆している。
年次大会予稿集、p86,6月2003年
2)菱沼一夫、日本包装学会誌14(2)‘pl24
これらの知見はラミネーションフイルムの
設計上の有効な指針となるであろう。
(2005)
3)GLHoh、U、S・Patent43461965-7(1982)
4)大森浩、第33回日本包装学会シンポジュー
5.結論
ム要旨集、p33(2004)
5)菱沼一夫、第13回日本包装学会年次大会予
(1)非反応系プラスチックのヒートシーラント
稿集、p90(2004)
の厚みとヒートシール強さの関係を定量化
6)Osswald/Menges,武田邦彦訳監修、プラス
チック材料工学、シグマ出版、p、74(1997)
できた。
(2)非反応系のプラスチックではヒートシール
7)菱沼一夫、日本包装学会誌14(2),p、129
のPeelSealは5~6amの厚さのヒートシ
(2005)
ーラントで完成すると推定できる。
8)菱沼一夫、第14回日本包装学会年次大会予
(3)従来の(TearSealにおける)ヒートシー
ル強さは材料の「伸び応力」、「ラミネーシ
稿集、p94(2005)
9)菱沼一夫、第14回日本包装学会年次大会予
ョン強さ」、伸びで発生するタックの「複
合力」の測定であることが分かった。
稿集、p,18(2005)
10)JISZO238:7項(1998)
(4)ラミネーシヨン強さ(直角剥離力)のJIS
U)ASTMDesignation:F88-00
法のヒートシール強さに及ぼす効果は3~
(原稿受付2005年9月16日)
4倍あることが分かった。
(審査受理2005年12月19日)
(5)実際の破袋制御において、ヒートシール強
さのみに依存することなくエッヂ切れやピ
ンホールの発生を留意して、PeelSeal、材
料の伸び、デラミネーションエネルギーを
総合的に利用するのが得策である。
-38-
Fly UP