Comments
Description
Transcript
第28報 オフィス非空調空間の温度特性
日本建築学会大会学術講演梗概集 (関東) 2011 年 8 月 41562 建築エネルギー・環境シミュレーションツール BEST の開発 第 28 報 オフィス非空調空間の温度特性 BEST 非空調室 ○高橋 亜璃砂*1 村上 周三*2 石野 久彌*3 郡 公子*4 正会員 同 同 同 隣室温度差係数 1.序 BEST では、多数室の熱的影響についてゾーン間換気の インテリア 西ペリメータ 東ペリメータ 事務室 機能を利用して計算が可能であり、非空調室を含む隣接 空間の室内温湿度状態を計算し、その熱的影響を考慮す ることができる。本報では、オフィスを対象に、非空調 コア 空間の温度が、空調室の温度や外気温度などにどのよう に影響されるかを解析する。 図1 2.計算対象オフィスと計算条件 計算対象オフィス(A ビル)の基準階平面図を図 1、計 計算対象オフィス(A ビル) 算条件を表 1、計算ケースを表 2 に示す。気象条件は、拡 *本図の方位をコア方位 南とする。 張アメダス標準年気象データ(地点:東京)を用い、年 図1 間熱負荷計算を行った。 3.計算結果 夏期、冬期それぞれ代表週の温度を図 2、空調時間帯の 日平均外気温と非空調室室温の相関を図 3 に示す。とく に夏期には、それぞれの非空調室で室温変動の傾向に違 いが見られた。 空調時間帯、非空調時間帯の年間日別隣室温度差係数 表1 外壁 内壁 窓 事務室 を図 4 に示す。隣室温度差係数(f 値とする)は、隣室温 度差係数=(空調室温-空調室に接する非空調室の室 温)/(空調室温-外気温)の式により、表 2 に示す非空 調室を対象として算出した。空調時間帯は非空調時間帯 と比較して f 値が大きい傾向が見られた。また、夏期は、 冬期や中間期と比較してばらつきが大きいが、室温と外 気温度の差が小さいためと考えられる。ばらつきの小さ い冬期の値を用いて求めた、方位ごとの中央値と全方位 基準階平面図 内部発熱 隙間風 空調時間 設計温湿度 季節 外気導入量 外壁 コア共通 窓 隙間風 窓面積率 ELホール 内部発熱 換気(常時) MR 内部発熱 (空調機室を想定) 換気(外気) 内部発熱 倉庫 換気(外気) 窓面積率 WC 内部発熱 換気(常時) の平均値を図 5 に示す。今回のモデルでは、方位による 計算条件 タイル10mm+PCコンクリート150mm+吹付硬質ウレタン 20mm+非密閉中空層+石こうボード22mm 石こうボード22mm+非密閉中空層+石こうボード22mm エアフローウィンドウ 熱吸ブロンズ(淡色)+透明、ガラス厚6mm 照明20W/m2、在室者0.15人/m2、機器10W/m2 0.2回/h 8:30~22:00 夏期:26℃、60% 中間期:24℃、50% 冬期:22℃、50% 夏期:6~9月、中間期:4、5、10、11月、冬期:1~3、12月 4CMH/m2 タイル10mm+PCコンクリート150mm+吹付硬質ウレタン 20mm+非密閉中空層+石こうボード22mm 透明フロートガラス、ガラス厚6mm 0.2回/h 50% 照明8W/m2 事務室インテリア→ELホール 20CMH/m2 機器10W/m2 15CMH/m2 (9:00~18:00) なし 15CMH/m2 (9:00~18:00) 30% 照明8W/m2 (8:00~22:00) 事務室インテリア→WC 20CMH/m2 表2 計算ケース 差は小さかった。非空調時間帯の f 値は空調時間帯との差 名称 コア方位 ELホール条件 が最も大きい倉庫で、空調時間帯の f 値の 6 割程度であっ CASE1-1 CASE1-2 CASE1-3 CASE1-4 CASE2-1 CASE2-2 CASE2-3 CASE2-4 南 北 東 西 南 北 東 西 た。 空調、非空調時間帯ごとに全方位の平均の f 値を用いて、 隣接する空調室の室温から、年間各時刻の非空調室温の 推定を行った。計算値と推定値の相関を図 6 に示す。倉 庫、MR では、外気を導入している空調時間帯で非空調時 非空調 解析対象とする非空調室 ELホール (隣接する空調室:インテリア) 空調 倉庫、MR、WC (事務室と同条件) (隣接する空調室:ELホール) *事務室を固定し、事務室の一辺にコアを接続した。コア方位はその方位を示す。 間帯より誤差が大きかった。EL ホール、WC は倉庫や 行い、温度特性を示して、隣室温度差係数(f 値)を算出 MR と比較して概ね近い値となった。 した。冬期の平均の f 値を年間の各時刻計算に適用して推 4.結 オフィスの非空調空間を対象として年間熱負荷計算を 定した非空調室室温に対して、BEST で計算した室温との Development of a Building Energy and Environment Simulation Tool, the BEST Part 28 A Characteristics of non-airconditioned space temperature in the office 相関を示した。 TAKAHASHI Arisa, MURAKAMI Shuzo, ISHINO Hisaya, KOHRI Kimiko ― 1151 ― 外気 35 インテリア 倉庫 WC MR 35 ELホール 7/29(土)~8/4(金) 空気温度 30 31 25 29 20 室温[℃] 温度[℃] 33 27 15 25 外気 温度[℃] 25 インテリア 倉庫 WC MR 10 ELホール 2/11(土)~2/17(金) 空気温度 20 5 15 0 ELホール WC 倉庫 MR 0 10 5 10 15 20 外気温[℃] 25 30 35 5 図 3 空調時間帯の外気温と非空調室室 温の相関(CASE1-1) 0 図2 夏期 中間期 0.80 冬期 ELホール(空調 時間帯) 0.70 0.5 倉庫(空調時間 帯) 0.60 0 倉庫(CASE2-1) WC(CASE2-1) MR(CASE2-1) ELホール(CASE1-1) -0.5 -1 -1.5 1.5 隣室温度差係数[-] 中間期 冬期 1 空調時間帯 中間期 冬期 隣室温度差係数[-] 隣室温度差係数[-] 1.5 夏期、冬期代表週の温度変動(CASE1-1) 夏期 冬期 中間期 WC(空調時間 帯) 0.50 MR(空調時間 帯) 0.40 ELホール(非空 調時間帯) 0.30 倉庫(非空調時 間帯) 0.20 WC(非空調時 間帯) 1 0.10 MR(非空調時 間帯) 0.5 0.00 0 南 倉庫(CASE2-1) WC(CASE2-1) MR(CASE2-1) ELホール(CASE1-1) -0.5 -1 北 東 西 平均値 図 5 冬期の隣室温度差係数の方位ごと の中央値と全方位の平均値 非空調時間帯 -1.5 図 4 年間日別隣室温度差係数(各日該当時間帯平均値) 35 35 倉庫 MR WC ELホール 25 倉庫 MR WC ELホール 30 非空調室温推定値[℃] 非空調室温推定値[℃] 30 20 15 10 5 25 20 15 10 5 非空調時間帯 空調時間帯 0 0 0 5 10 15 20 25 30 35 非空調室温計算値[℃] 0 5 10 15 20 25 非空調室温計算値[℃] 図 6 非空調室温計算値と推定値の相関(コア方位南) *1 *2 *3 *4 株式会社大林組 建築研究所 理事長 工博 首都大学東京大学院 名誉教授 工博 宇都宮大学 准教授 工博 30 35 【謝辞】 本報は、 (財)建築環境・省エネルギー機構内 に設置された産官学連携による環境負荷削減のた めの建築物の総合的なエネルギー消費算出ツール 開発に関する「BEST コンソーシアム」・「BEST 企 画委員会(村上周三委員長)」および専門版開発委 員会(石野久彌委員長)、行政支援ツール開発委 員会(坂本雄三委員長)、統合化 WG(石野久彌主 査)の活動成果の一部であり、関係各位に謝意を 表するものである。統合化 WG 名簿(順不同) 主査:石野久彌(首都大学東京名誉教授)、委 員:一ノ瀬雅之(首都大学東京)、内海康雄(宮 城高等専門学校) 、大西晴史(関電工)、木下泰斗 (日本板硝子)、工月良太(東京ガス)、郡公子 (宇都宮大学)、菰田英晴(鹿島建設)、佐藤誠 (佐藤 ER)、芝原崇慶(竹中工務店)、新武康 (清水建設) 、菅長正光(菅長環境設備事務所) 、 高橋亜璃砂(大林組)、田中拓也(大成建設) 、長 井達夫(東京理科大学)、二宮秀與(鹿児島大 学)、野原文男、長谷川巌、二宮博史、丹羽勝 巳、久保木真俊(以上、日建設計)、保木栄治 (東京電力) 、柳井崇、品川浩一(日本設計) 、事 務局:生稲清久(建築環境・省エネルギー機構) *1 Obayashi Corporation *2 Chief Executive, Building Research Institute, Dr.Eng. *3 Emeritus Prof., Tokyo Metropolitan Univ., Dr.Eng. *4 Associate Prof., Utsunomiya Univ., Dr.Eng. ― 1152 ―