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フルブリッジセルを用いたモジュラーマルチ レベル変換器による直流送電

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フルブリッジセルを用いたモジュラーマルチ レベル変換器による直流送電
電力中央研究所報告
電 力 輸 送
フルブリッジセルを用いたモジュラーマルチ
レベル変換器による直流送電システムの制御
保護方式
−直流事故時の事故電流を抑制可能な制御方式の提案−
キーワード:直流送電,マルチレベル変換器,自励式変換器,事故保護
パワーエレクトロニクス
背
報告書番号:R11021
景
従来の自励式変換器 1)を用いた直流送電システムは,直流線路の地絡および短絡事故
の発生時に,変換器による事故電流の抑制が困難である。そのため,交流遮断器を用い
て事故を除去する必要があり,送電再開までに要する時間が長い。変換器による直流事
故の除去が可能となれば,交流遮断器の操作が不要となり,他励式変換器を用いたシス
テムと同等以下の時間で送電再開が可能となる。新しい変換器回路方式であるフルブリ
ッジセル MMC2)(図 1)を用いれば,交流出力電圧を保ったまま直流出力電圧を 0 とで
きるため,交流遮断器操作無しで直流事故を除去できると考えられるが,これを実現す
る制御保護方式はこれまでに提案されていない。
目
的
フルブリッジセル MMC を適用した直流送電システムにおいて,変換器制御のみで直
流事故を除去することで高速な送電再開を可能とする制御保護方式を開発する。
主な成果
1. 直流事故時の事故電流を抑制可能な制御方式の提案
直流事故時の事故電流を抑制可能な,フルブリッジセル MMC を適用した直流送電シ
ステムの制御方式を提案した(図 2)。定常状態では一方の端子を定電流制御,他方を定
電圧制御で運転し(図 2 ①),直流事故が発生した際には,提案制御によって両端とも
に定電流制御に自動で移行させる(図 2 ②)。この定電流制御によって,変換器の直流
側は零電圧になるように制御されるので,直流事故電流を抑制することができる一方,
交流側は交流母線電圧と等しく制御されるので,交流系統からの電流を抑制できる(図
3)。
2. 提案制御を適用した直流送電システム
提案制御により事故継続中も直流電流の制御が維持できるので,事故検出後に電流指
令値を 0 とし,ゲートブロックを行うことで事故を除去する。これらの制御保護動作よ
り,以下のメリットの実現が可能である。
 高速な事故検出を必要としないため,直流送電線保護用の電流差動リレーなど既存
のリレーが利用できる。
 交流遮断器の操作が不要であるため,他励式システムと同等の事故発生後 500 ms で
の高速な再起動が可能となる。
3. シミュレーションによる検証
瞬時値シミュレーションにより,提案制御を組み込んだ制御保護方式の動作検証を行
った(図 4)。変換器制御のみで事故電流を抑制,除去できており,高速な再起動が可能
となっている。
注 1)自己消弧半導体デバイスを用いた変換器であり,従来の他励式変換器と比べ,制御性が高く,高調波フィルタ
や調相設備を削減可能である。本稿では,自励式直流送電システムで一般的な,電圧形変換器を用いたものを
想定している。
注 2) 同一セル(モジュール)を多段接続することにより構成する変換器を MMC (Modular Multilevel Converter)と呼ぶ。
フルブリッジセル MMC とは多段接続するセルにフルブリッジ(単相インバータ)セルを用いたものである。
DC line
Cell
Cell
Cell
Cell
Cell
Cell
Cell
Cell
Cell
フルブリッジセル
MMC
交流系統
交流系統
Cell
Cell
Cell
Cell
Cell
Cell
Cell
Cell
Cell
MMC
図 1 フルブリッジセル MMC を適用した直流送電システム
直流電圧
出力する直流電圧は0
になるように
制御されるため
事故電流を抑制できる
定常時の運転点
上アーム
- V cos (wt)
交流系統
①
定電圧制御
②
Cell
端子2(受電端)
V cos (wt)
②
直流電流
Cell
直流事故発生
端子 1(送電端)
直流事故時には
運転点が電圧0の
点に移行する
定電流制御
(R相のみ表示)
図 2 提案する制御特性
直流電圧 [p.u.]
1
直流電流 [p.u.]







1
下アーム
既存のリレーによる直流事故検出
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
再起動
0.8
0.9
1
1.1
0.8
0.9
1
1.1
事故後も,提案制御により事故電流が抑制できている
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
1.1
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
1.1
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
1.1
1
1.1
10
-1
0
-1
1
0
-1
-2
図4

V cos (wt)
図 3 直流事故時の事故電流抑制原理
電流指令値を0に変更
0
ゲートブロック
直流事故
-1
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
1
消イオン時間  350 ms
10
0
-1
-1
交流系統との電位差が0のため,
交流系統からの電流を抑制できる
時間 [s]
: 順変換器(送電端), - - -: 逆変換器(受電端)
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
提案制御を適用したシステムの直流事故シミュレーション波形
 研究担当者
菊間 俊明(システム技術研究所 需要家システム領域)
 問い合わせ先
電力中央研究所 システム技術研究所 研究管理担当スタッフ
Tel. 03-3480-2111(代) E-mail : [email protected]
報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/よりダウンロード可能です。
[非売品・無断転載を禁じる]
© 2012
CRIEPI
平成24年6月発行
11-047
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