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2006年3月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所

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2006年3月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所
3
ISSN1346-9479
第 5 巻 第 3 号(通巻 3 9 6 号 )
ラ ボバンクの形成と発展
地 方自治体の財政運営
−財政構造・財政規律と地方債務の持続可能性の観点から−
日 米欧州主要銀行の収益性とその背景
超 一流銀行の条件(前編)
地 域別にみた日本経済の景況判断
−地域間の格差は大きいが、ほぼ全地域で緩やかな回復に向けた動き−
中 小企業における新「会社法」の活用ポイント
−会社法の諸制度を経営に活用するという発想が必要−
統計
2006. 3
「信金中金月報掲載論文」募集のお知らせ
○対象分野は、当研究所の研究分野でもある「地域金融」
「中小企業金融」
「協同組織金融」に関
連する分野とし、これら分野の研究の奨励を通じて、研究者の育成を図り、もって我が国にお
ける当該分野の学術研究振興に寄与することを目的としています。
○かかる目的を効果的に実現するため、本論文募集は、①懸賞論文と異なり、募集期限を設けな
い随時募集として息の長い取り組みを目指していること、②要改善点を指摘し、加筆修正後の
再応募を認める場合があること、を特徴としています。
○信金中金月報への応募論文の掲載可否は、編集委員会が委嘱する審査員の審査結果に基づき、
編集委員会が決定するという、いわゆるレフェリー制を採用しており、本月報に掲載された論
文は当研究所ホームページにも掲載することで、広く一般に公表する機会を設けております。
詳しくは、当研究所ホームページ(http://www.scbri.jp/)に掲載されている募集要項等をご
参照ください。
編集委員会 (敬称略、順不同)
委 員 長
堀内昭義
中央大学総合政策学部教授
副委員長
藤野次雄
横浜市立大学国際総合科学部長(兼国際総合科学科長)
委 員
筒井義郎
大阪大学社会経済研究所教授
委 員
濱田康行
北海道大学経済学部教授
委 員
吉野直行
慶應義塾大学経済学部教授
問い合わせ先
信金中央金庫総合研究所「信金中金月報掲載論文」募集事務局(担当:松崎、照沼)
Tel : 03(3563)
7541/Fax : 03
(3563)
7551
2006年 3月号 目次
金融研究会
ラボバンクの形成と発展
研 究
日本大学 商学部助教授
地方自治体の財政運営
長谷川勉
藤野次雄
11
日米欧州主要銀行の収益性とその背景
廣住 亮
27
超一流銀行の条件(前編)
青木 武
46
地域別にみた日本経済の景況判断
丸山 順
61
谷地向ゆかり
88
−財政構造・財政規律と地方債務の持続可能性の観点から−
調 査
−地域間の格差は大きいが、ほぼ全地域で緩やかな回復に向けた動き−
解 説
中小企業における新「会社法」の活用ポイント
−会社法の諸制度を経営に活用するという発想が必要−
信金中金だより
信金中央金庫総合研究所活動状況(1月)
統 計
2
信用金庫統計、金融機関業態別統計
100
101
2006
3
個人名による掲載文のうち意見にわたる部分は執筆者個人の見解です。
投資・施策実施等についてはご自身の判断によってください。
金融研究会
講演録
ラボバンクの形成と発展
日本大学 商学部助教授
長谷川 勉
【プロフィール】
現在 日本大学 商学部 助教授 政府研究会等のメンバー歴任
著書 『協同組織金融の形成と動態』日本経済評論社(2000)
『21世紀の信用組合』信用組合研究会(2002)
論文 「リレーションシップバンキングへの協同組織金融論からの接近」
『信金中金月報』信金中央金庫、第3巻第10号(2004年9月)
「マイクロファイナンスとその組織形態への接近」
『金融構造研
究』金融構造研究会、第24号(2002年5月)その他論文多数
はじめに
の経営資源の蓄積について検証する。
ここで、
なぜ、
「歴史的視座」という概念が必要とな
今回の金融研究会では、オランダのラボバ
るかであるが、これは資本政策、特にBIS規
ンクの形成と発展をテーマに報告する。主な
制、ガバナンス、リテール戦略との関連性で
視点は、ラボバンクの競争力の源泉が何かと
非常に重要になってくるからである。結論か
いうことと、この競争力の源泉をもとにした
ら言えば、現在におけるラボバンクの競争優
ラボバンクの業務展開を展望することにあ
位の源泉の1つが100年以上前に確立された
る。また、協同組織性の検証を
「ミッション」
、
ライファイゼンの原則にある。無配当の原則
「ガバナンス」という言葉で考えてみるとと
を維持した結果、自己資本が増強され、BIS
もに、最後に日本へのインプリケーションに
規制を難なくクリアし、結果的にはこれが最
ついて考察する。
も高く評価できるポイントとなっている。ラ
1.ラボバンクの競争力の源泉
(1)歴史的視座からみた経営資源の蓄積
はじめに、歴史的視座からみたラボバンク
2
信金中金月報 2006.3
イファイゼンの原則のいくつかが1970年代
くらいまでキープされたために、ほとんど内
部留保されてきたという経緯がある。これが
大きく資本形成を促し、かつ、貸出しにおい
てリスクを大きく取れることが可能となって
ラボバンクには先発組としてのメリットがあ
いる。これ以外にも、重層的なガバナンスシ
り、後発組とはセグメンテーションが相違し
ステムは様々なリスクをコントロールする役
たため、結果的に他の金融機関との競争にお
割を果たしているし、リレバンにおけるメリ
いて無風状態が続くこととなった。
ットを享受することが可能であったというよ
うな点が指摘できる。
ところが、近年は海外の金融機関も進出し
ており、こうしたセグメンテーションが崩れ
歴史的にみた場合、大きなトピックスが
ている。また、オランダ国内のマーケットが
1990年代にあった。この当時、3年間にわた
過熱化してきており、ラボバンクの固定費を
る大論争があり、ラボバンクは組織転換を図
賄うのに十分な収益を確保することがは簡単
っている。ここから読み取れるのは、意思決
ではない市場になってきている。
定が極めて民主的で、コンサバティブである
点である。また、コンセンサス主義がオラン
(3)ラボバンク(中央組織)の傘下にある
ダに広く行き渡っていたこともあり、コンセ
ローカルバンクの戦略
ンサスが得られるまで、徹底的に論争する形
現在385行のローカルバンクはいずれも自
をとっている。この大論争の結果、ラボバン
立し、長期的リレーションシップに重点を置
クはより複雑なガバナンスシステムで運営さ
いている。ローカルバンクはラボバンクから
れている。
卸された商品に、付加価値をつけて提供して
いくことが自分たちに課せられた使命である
(2)機会としての外部環境
ラボバンクの発展を機会としての外部環境
と認識しており、これがローカルバンクに課
せられた戦略的課題の1つとも言える。また、
からみていく。なぜ、ラボバンクが大きく成
ラボバンクを中心に長年にわたりマーケット
長してきたかは、基本的にはオランダ政府の
リサーチを実施し、非常に細かく顧客層をセ
自由放任的政策があって、農業層における政
グメントしている。具体的には、中間層を主
策的金融が機能していなかったことがある。
なターゲットとして、たとえば、公務員、シ
農業政策が貧困であり、経済・金融政策とし
ョップ等に勤務する層、中小企業への勤務者
ての問題と、社会政策の問題の両方がラボバ
または中小企業経営者などにセグメントをし
ンクに委ねられていた。二番目にラボバンク
ている。こうした切分けは、他の大手銀行の
が大きな権限を持ったのは、検査機能が中央
セグメントとは明確に異なっており、今後も
銀行からラボバンクに委譲され、監査する立
他の大手銀行の領域に進出することは考えて
場にあったため、強力な権限を持ち、これが
いないとしており、ローカルバンクは、強固
ラボバンクのグループとしての発展を促すこ
かつ明確なセグメント戦略を重視していると
ととなった。また、
後発組の進出もあったが、
いえる。
金融研究会
3
実態的には、リテール業務で全体の54%
り、
中小企業向けも40%を有している。また、
の収入をあげており、これ以外はホールセー
住宅ローンのシェアは25%で、これは近年、
ル21%、保険10%、資産運用7%などとなっ
市場が過熱気味になってきている。住宅ロー
ている。また、預かり資産運用は、ラボバン
ン市場は画一化されているため、競合先が進
クでは貯金額の倍となっている。
出しやすいといった日本でもみられる状況が
中央の役職員は、リテールの複雑性を理解
オランダでも起きている。こうした背景もあ
しており、画一的な商品を提供することの限
って、ラボバンクの預金・貸出金利鞘は1.5%
界を十分に認識している。すなわち、ローカ
程度に低下しており、日本と同様に金融機関
ルでできることが多くあると考えており、画
の基本的な体力を示すマージンはそれほど高
一的、均一的、効率的な商品を中央が開発し、
くは取れていない。
これらをローカルバンクに配ることが効率的
であると奢っているわけではない。
信用リスクの格付けシステムは中央機関で
管理され、ローカルでは複雑な審査を行うこ
さらに、ローカルバンクの興味深い戦略と
とはあまりない。これは、預金市場において
して、ローカルバンク間の情報・コミュニケ
大きなシェアを持っているために、顧客の現
ーションの伝達ネットワークの存在であげら
金の流れがわかるので、複雑なスコアリング
れる。これを活用して、先進事例などが中央
モデルを使わなくても検証が可能となるため
組織を経由することなく、ローカルバンク間
である。スコアリングモデルで貸出額を増加
で相互にやりとりされている。オランダでは
させるために必要なもの、つまり、結果的に
こうした情報伝達の結節点が多数あり、情報
担保を取らずに問題なく貸出を行うには、キ
やコミュニケーションが伝達されるシステム
ャッシュ・マネジメントを上手くできるかに
が構築されている。
かかってくる。キャッシュ・マネジメントは、
2.ラボバンクの展望
(1)貸出
ラボバンクの貸出戦略は、保守的、低リス
メインバンクの地位を維持していれば上手く
いく。すなわち、銀行が顧客の現金の流れを
把握することができれば、複雑なスコアリン
グモデルを使わなくても検証が可能となる。
クが定着している。資産構成は住宅ローン
財務データよりも信用性が高いのはキャッシ
50%、消費者ローン2%、農業向け10%、食
ュモデルであり、スコアリングモデルを考え
品・アグリビジネス産業関連5%(なお、こ
るうえで、キャッシュ・マネジメントとの関
のなかには規模の大きな協同組合向けが含ま
連性が重要であると言える。そのために、貸
れる。)、中小企業15%となっている。一方、
倒れ債権は少なく、引当ても十分である。
オランダ国内市場におけるラボバンクのシェ
また、ローカルバンク同士の相互保証シス
アは、農業が85%と飽和状態になってきてお
テムがあることも特徴であり、これが協同組
4
信金中金月報 2006.3
合原則の1つであるととらえられている。こ
もインターネット利用が増加してきている。
れは、協同組合原則にかなうものとは言えな
また、オランダに占める貯蓄口座シェアは約
いかもしれないが、いずれにせよ、ローカル
4割となっている。
バンク同士が互いに保証をすることによっ
一方、ラボバンクは農業分野を中心に圧倒
て、いわゆる協同信用が生産されていること
的なシェアを持っているが、それだけでは限
は確かである。
界がきており、日本の農協と同じように農業
協同組合は預金を身内から集めて身内に
金融からの脱却を考えている。これは、寄っ
貸し出すといった固定観念が従来からある
て立つ社会関係資本といった経営資源をみた
が、もともと金がなくて始めたのがライファ
場合、既存の組織のメンバーだったものが減
イゼンシステムであり、預金も資本も集めず
少してきているためである。例えば、日本で
に自分たちの土地・生産資本や人的担保で信
は公共事業の減少から建設業の貸出ウエイト
用を生み出して、他所から金を調達してきて
が高い地域金融機関の経営が厳しくなり、ま
貸し出すというのも協同組合の1つの方法で
た、農業層や労組が弱体化しているように、
ある。他方、シュルツェ型は異なり、身内で
オランダでも既存のコモンボンドが弱体化し
預金を集めて不足している人に貸し出すとい
ている。このため、ラボバンクは中小企業金
うもので相互性を発揮したものであるが、ラ
融にシフトしてきており、これにより店舗配
イファイゼン型は外部から資金調達をするた
置が大きく変化してきている。ラボバンクは
めの協同という相互性である。ライファイゼ
「農業の銀行」ととらえられては困ると認識
ン型は典型的に中央機関を作り、中央機関の
しており、新たなメンバーを創造したいとい
信用をもとに外部から資金調達するものであ
う意味合いから顧客価値へのフォーカスを図
る。したがって、資本市場のどこから調達し
っている。
ようとかまわないという発想を持っている。
デリバリーチャネルがマルチ化しているこ
そういう意味では、中央機関が格付けをとる
とを背景に、顧客関係性マネジメントシステ
ことはなんらおかしいことではなく、資本市
ムの開発に多くの投資をしており、ラボバン
場と接点をもっていなければ当然ながら、外
クはFace to Faceを維持するためのデバイス
部資金を調達することはできない。
としてICT(Information and Communication
Technology:情報コミュニケーション技術)
(2)預金、総合金融
はとらえている。リレーションシップコスト
ラボバンクの預金はインターネット預金が
をどう吸収していくかについて、ラボバンク
全体の43%になり、顧客が店舗を訪問する
ではそのコスト吸収手段の1つとしてデバイ
ことは減少している。年齢別でみると、若い
スをどう活用していくかということに重点を
人の利用が多いのはもちろん、高い年齢層で
置いている。結果的に顧客から得られた情報
金融研究会
5
をどう利用、加工するかが重要であり、利用・
ると、協同組合と言うよりも投資事業組合に
加工をいかに簡素化できるかである。信用金
近く、調達は協同組織で、運用はバラバラと
庫において情報が集まりにくいケースは、集
いうような姿が浮かび上がるが、この点も論
めた情報の整理・加工・利用が支店内で上手
争の事項となっており、ここをどう整理する
くできていないからである。このため、情報
かが議論になっている。
が陳腐化する、隠匿する、あるいは囲い込み
海外からの総利益はグループのなかで7%
をするといったケースがみられる。ラボバン
と着実に進捗している。
なぜ伸びているかは、
クの取組みは、IT化が進むと情報が上手く
カントリーバンキングを基本としており、オ
整理されてくるという1つのモデルになり得
ランダで蓄積された農業に関する専門知識を
るのではないか。
活用しているためである。まだ、検証には至
ラボバンクの利益構成を確認すると、60%
が金利収入、15%が手数料となっている。
ってはいないが、北米からの収入が多い理由
は、北米ではパブリックな農業金融が弱く、
ラボバンクは、ヨーロッパ協同組織金融機
大資本農業のために中小農家向けのカントリ
関のネットワークを使って、ビジネスを広げ
ーバンキングが手薄であり、結果的にうま
ていきたいことを強く考えており、ビジネス
くニッチを攻めたことが要因として考えられ
モデルの再構築の最中である。ヨーロッパ協
る。なお、日本には農協があるため、進出不
同組織金融の中央機関は年々強化されてお
可能と明言しているように、農業の専門的知
り、これはヨーロッパの統合に合わせている
識を使うとしても、ニッチが存在しないと成
ことと、膨大なEU指令でめまぐるしく業務
り立たないモデルと言えよう。
を変えていかなければならないためであり、
ヨーロッパにおいて1つで対応した方が効率
的であるといった事情がある。
(4)資本政策
ラボバンクグループの資本政策と資金調
達 を み る と、Tier1が11.4 %、 資 本 利 益 率
(3)国際的展開
10.1%となっている。Tier1合計の226億ユー
東京にラボバンクの支店があるように、ラ
ロのうち、準備金の123億ユーロは無配当の
ボバンクは積極的に海外展開を図っている。
結果である。また、メンバー資本38億ユー
現在、37か国に244の海外支店がある。資産
ロは、ここ数年発行されたメンバー向け劣後
規模としては信用金庫の半分であるが、これ
債である。自己資本の半分は準備金であり、
だけの海外支店を持っているのは、極めて驚
かなりリスクを取れる体制になっている。準
異的なことである。地域別の収入割合をみる
備金が十分に積み上がったため、90年代に
と、オランダから77%、北米から10%、ユ
無限責任を廃止している。その理由は準備金
ーロから9%を得ている。こうした統計をみ
によって十分に負債を賄うことができるであ
6
信金中金月報 2006.3
ろうという経済的な判断からである。その証
に メ ン バ ー が い て、Co-operative member
拠として無株主=自己所有型法人という言い
Rabobanks があり、この下に中央機関があっ
方をしている。それでも貸出が増加している
て、これに子会社がぶら下がるといった形態
ため、外部デットファイナンスを導入しなけ
となっている。
ればならず、株では調達できないので優先出
ガバナンスでは、
メンバーバンクがあって、
資 で 調 達 し て い る。MTN(Medium Term
その下に日本でいうと地区協会に近い組織が
Note)市場や劣後債市場でいろいろな取
ある。この地区協会が意思決定システムの大
組みをして、MTN市場ではかなり優位性を
きな担い手になっており、さらにこの地区協
持っている。これは、協同組合の宿命として
会が集まって中央の会議が開かれ、この会議
資本政策が非常に制限され、債券市場技術が
はクリンゲ(Kringe)と呼ばれている。実は、
精緻化していたためであり、スプレッドが低い
このガバナンスシステムは、隠れた意思決定
なかで、そこに特化したことにより、MTN市
システムであり、これには、ムーディーズや
場での調達技術の向上が図られたと言えよう。
S&Pも認識しておらず、したがってこのシ
ステムについては、ラボバンクのガバナンス
(5)ガバナンスと意思決定システム
を検証する際の分析対象にはなっていない。
ラボバンクグループの組織をみると、上
図表
binding regulations
協力の規約
member bank
メンバーバンク
member bank
メンバーバンク
Regional Delegates Assembly
地区代表者会議
member bank
メンバーバンク
Regional Delegates Assembly
地区代表者会議
delegates
代表者
delegates
代表者
advive
助言
centrale kringvergadering
地区協会中央会議
algemene vergadering
総会
concerted action
協力行動
Executive Board
執行役会
appoints
任命
appoints
任命
Supervisory Board
取締役会
(出所)ラボバンク内部資料
金融研究会
7
一方、オフィシャルな形でのガバナンスは、
にメンバーバンクの運営方針に参加するよう
メンバーバンクの資産の大きさで投票権が変
にサポートとコミットメントしている。
また、
わるものであり、中央機関の理事を選ぶと
コンセンサス主義を採っており、合意しなけ
か、総会における意思決定の票の配分は、各
れば進まないという主義であり、基本的にコ
メンバーバンクの資産に応じて変化するよう
ンサバティブな主義を採っている。
になっている。これは、極めて株主型に近い
と言える。一方、ローカルバンクでは従来ど
おり、一人一票の原則を保っており、これで
(6)メンバーシップ
メンバーシップについてみると、理事会、
メンバーバンクのトップを選ぶが、メンバー
監事会、各種の会議など、地区にいろいろ
バンクは資産の大きさに応じて投票権を与え
な集会、会議を作り、メンバーをそこに参
られて、中央機関の政策に関与する形態とな
加するように促しており、
“Commitment to
っている。
society”を非常に重視している。メンバー
しかし、多くの重要な中央機関の決定事項
になると、知識セミナーやメンバーバンクの
は、地区協会が集まった中央の会議で決定さ
政策にかかわる会議への出席が可能となる。
れている。なお、ここでは、地区協会に出る
また、若者・老年層向け組織や地域活性化会
メンバーバンクもあれば、出ないメンバーバ
議などを創設している。
ンクもある。これは資産の大きさに応じて決
ここで興味深いのは、ラボバンクの場合は
まっているわけではなく、非常にあいまいな
メンバーのロイヤリティが非常に高いことで
決まり方をしていているが、いずれにしても
ある。購入実績でみると、非メンバーに対し
地区協会のようなものが形成されて、さらに
てメンバーは個人では1.5倍、ビジネスでは2
そこから一人が選ばれて年約4回の中央の会
倍程度に達する。ロイヤリティの観点からも
議に出る。リージョナルの会議は不定期であ
メンバーを中心とした戦略を練っていること
るが、ここで商品・サービス設計等の戦略な
は、経済的にもメリットが大きい。しかしな
ど総会で決定される多くの事項が決定されて
がら、無配であったのが、近年、個人配当に
いる。
考えていこうとする議論がでてきている。ま
こうしてみてくると、ラボバンクのガバナ
ンスシステムは二重になっており、資産規模
と非金融タームに基づく、一人一票でもなけ
れば、株主型でもなく、また、協同組合的と
も少し違う形を採っている。
だ、初期段階であり、結論が出るのは2年後
になる見通しである。
3.ミッション型経営
結果的に彼らが強調したいのは、財務的な
ローカルなところでは、民主主義的な決定
数字ではなくミッションである。ミッション
として、メンバーバンクのメンバー一人一人
は日本では役に立たないものととらえられる
8
信金中金月報 2006.3
が、ヨーロッパでは、ミッションのない経営
をもっている。ここでは、ミッションが一番
は問題があるというとらえ方をされる。ラ
上にきて、次にコードがきて、戦略がきて、
ボバンクは、毎年ミッションの見直しをして
最後にルーティンワークがくるという一貫性
おり、ミッションを考える専門のチームがあ
をいかに保つかがポイントとなっている。上
る。また、ミッションの下にコードがあり、
から下まで考え方が一致していなければ、戦
このうち、社会的コードはミッションに基づ
略的にうまくいかないと見ている。
いて社会的排除の解消や人権の尊重などの
ここまでくると、協同組織をやめてもいい
ように、社会的に何をしたらいいかを整理し
のではという議論が出てくる。しかし、結果
ている。さらに、内部組織コードを設けてお
としてやめなかったのは、単純には、これま
り、労働環境が良好であるとリレーションシ
でやってきて居心地がいいからという経路依
ップバンキングの質も向上するという理論展
存性という点が考えられるが、もう1つは、
開があるように、組織内部の関係のことを指
膨大な内部留保をどう分配するかで行き詰っ
す、内部マーケティングの管理に取り組んで
てしまうためである。のれん代も含めた膨大
いる。
な資産を株式化するにあたり無配当であった
4.日本へのインプリケーション
これまで議論してきたことを整理すると、
ため、相当、一人当たりの配当が生じてきて
おり、のれん代の計算は極めて困難である。
さらに、昨今のヨーロッパの買収の増加をみ
ラボバンクでは、ICT、現金・資産管理、国
ると、資本市場から独立しているということ
際的展開が進んでいる。これらは、ヨーロッ
は、自分たちの戦略を追求するうえでも有利
パの株式型のリーディングバンクと比較して
であったことがあげられる。
も進んでいる。中小企業への進出が進んでい
日本へのインプリケーションとしては、異
ることと、総合金融にシフトしていること、
なる機会があることを認識しなければならな
蓄積資産を活用していること、また、拡張と
いことと、ミッションで“食える”組織を考
言っても水平的な拡張であり、結果的にはこ
えることが重要である。日本でも、中央とロ
れもコンサバティブな意思というのが格付け
ーカルの関係を再考する必要があろう。
また、
機関の見解である。また、保守主義がリスク
10年、20年といった長期的視点で、資本政策
マネジメントにおいて強みを発揮している。
を考える必要がある。また、必ずしも資本主
ヨーロッパならではあるが、社会的レピュテ
義的ガバナンスシステムだけを念頭に置くの
ーションを獲得するための戦略が複雑かつ細
ではなく、ラボバンクのような極めてあいま
かく練られていて、結果的に社会的レピュテ
いなデュアルな意思決定システムもあるとい
ーションの獲得が、経済的なレピュテーショ
うことを認識しておくべきであろう。
さらに、
ンの獲得につながっていくという明確な戦略
日本においても海外戦略、統一ブランド戦略
金融研究会
9
も求められてくるであろう。また、将来的に
ネルデータを取り検証することも考えられ
は預金市場が過熱化してくるということと、
る。さらに、日本で最も遅れているのがキャ
貯蓄率が低下してくることを考え併せると、
ッシュ・マネジメントであり、リレーション
仮説ではあるが信用金庫の金余り状態が恒常
があってのキャッシュ・マネジメント管理で
的に続くとは想定しがたく、外部資本を調達
あり、キャッシュ・マネジメント管理ができ
する戦略は今から考えておく必要があろう。
ると、
格付けシステムも有効に機能してくる。
加えて、信用金庫はICTによるリレーショ
そういう意味では、定点観測体制を構築して
ンシップが可能かということも検討すべきで
いくことが求められており、非財務データ関係
ある。また、店舗削減と無形の経営資源の毀
のアンケート等を継続的に実施し、その変化
損との関係を、ミクロレベルで検証していく
率について分析を進めていくことも必要とな
必要がある。意識がどう変わり、リレーショ
ろう。
ンがどう切断されていくかというようなパ
10
信金中金月報 2006.3
研 究 地方自治体の財政運営
−財政構造・財政規律と地方債務の持続可能性の観点から−
信金中央金庫 総合研究所顧問
藤野 次雄
(横浜市立大学国際総合科学部長)
(キーワード) 都道府県、基礎的財政収支、財政規律、地方債の持続可能性
(視
点)
地域金融機関は、2003年3月に金融庁から発表されたリレーションシップバンキングに関
する報告書およびアクションプログラムで、
不良債権処理と地域経済への貢献を求められた。
この地域金融機関の活動対象である地域経済において、大きくは「官」から「民」への流れ
があるといえ、地方部であるほど、いまだ公的部門の比重は大きい。本稿では、公的部門の
うちでも都道府県レベルの地方自治体の財政運営を、財政構造・財政規律と地方債務の持続
可能性という観点から検討する。
(要
●
旨)
実証分析結果から判断すると、2001年度末の時点において、全国47都道府県のうち42都
道府県で地方債は持続可能であり、都道府県間で格差があるとはいえ、財政構造改革に取
り組み、財政規律が働いてきたことになる。
●
しかし、このような結果は最近の2・3年のデータを推計に含めた効果が大きく、景気の回
復の影響と財政改革への取組みの効果の両面が考えられ、両者を峻別することはできない。
●
神奈川県、愛知県、大阪府といった大都市圏の府県についてのほうが地方債の持続可能性
について、推計期間中のデータだけでは持続可能かどうか判断ができない。これは、前述
の42都道府県との間で、
景気の回復と財政改革への取組みの両方の面でいまだラグ(遅れ)
があるためとも考えられる。
●
沖縄県では従来の財政運営を継続したまま、
地方債を租税で償還することを前提とすれば、
推計期間中では、地方債はいまだ持続可能ではなく、現状では景気回復が遅れているかな
いし国依存の他律的で財政改革が十分進んでいないと推測される。
研 究
11
はじめに
く、ないし地方債務の持続可能性とは、先
行研究にあるように前年度末地方債残高対
地域金融機関は、2003年3月に金融庁から
GDP比が上昇する場合にも、
(擬似的)基礎
発表されたリレーションシップバンキングに
的財政収支対GDP比を上昇させるように財政
関する報告書およびアクションプログラムで、
運営を行って、少なくとも(擬似的)基礎的財
不良債権処理と地域経済への貢献を求められ
政収支の改善を図っているということである。
た。この地域金融機関の活動対象である地域
わが国の政府債務を対象にした政府債務の
経済において、大きくは「官」から「民」への
持続可能性についての実証分析は、国の政府
流れがあるといえ、地方部であるほど、いま
債務や、国と地方を統合した政府債務を対象
だ公的部門の比重は大きい。本稿では、公的
としていて、直接的に地方自治体の債務を対
部門のうちでも都道府県レベルの地方自治体
象とした実証分析はこれまでもなされていな
の財政運営を、財政構造・財政規律と地方債
い。そこで、本稿では、わが国の国の政府債務
務の持続可能性という観点から検討する。
や、国と地方を統合した政府債務を対象とし
さ て、1990年 代 の わ が 国 の 地 方 財 政 は、
た実証分析を、地方の政府債務
(都道府県)に
国の財政と同様に、景気の悪化を受けて税収
適用して実証分析を試みることによって、都
の不足や、国主導による数次の景気対策の財
道府県レベルの地方自治体に財政規律が働い
源を、公債に多く依存してきた。その結果、
ているかどうかの検討をすることにしたい。な
地方財政はかつてないほどの地方債の累増
お、本稿では、地方自治体の財政規律、ない
に直面している。わが国の地方財政(普通会
し財政運営・財政構造の特徴を見ることに主
計)の借入金の残高は、2004年度末で約204
眼を置くため、基礎的収支の改善に関しては
兆円、対GDP比で41%に相当するほどであ
絶対水準ではなくその方向性に関心を置く。
り、1990年代だけで約3倍にも累増した。こ
今回の実証分析結果から判断すると、2001
のような地方債の累積とともに公債費負担が
年度末の時点において、全国47都道府県のう
増加し、地方自治体の財政硬直化が進行した。
ち、42都道府県で地方債は持続可能であり、
個々の地方自治体レベルでは公債費負担比率
都道府県間で格差があるとはいえ、財政構造
は15%が警戒ラインとされているが、90年
改革に取り組み、財政規律が働いてきたこと
代に入って公債費負担比率が上昇し、2002
になる。しかし、このような結果は最近の2・
年度には19.2%にも達している。
3年のデータを推計に含めた効果が大きく、
こうした状況の下で、わが国の政府の財政
景気の回復の影響と財政改革への取組みの効
運営について、財政構造・財政規律と地方債
果の両面が考えられ、両者を峻別することは
務の持続可能性という側面が、問題視されて
できない。また、神奈川県、愛知県、大阪府と
いる。ここでいう地方自治体の財政規律が働
いった大都市圏の府県についてのほうが地方
12
信金中金月報 2006.3
債の持続可能性について、推計期間中では可
的収入でまかなえず、家計や企業といった他
能かどうか判断ができない。これは、前述の
の経済セクターからの借入によって収支を合
42都道府県との間で、景気の回復と財政改革
わせねばならない事態である。これは国民経
への取組みの面でいまだラグ(遅れ)がある
済計算統計では各年度の政府の貯蓄投資差額
ためとも考えられる。最後に、沖縄県では従
となって表れる。
来の財政運営を継続したまま、地方債を租税
こうしたフローの地方財政赤字は当然なが
で償還することを前提とすれば、推計期間中
らストックとしての財政赤字累積に帰結する。
は、地方債はいまだ持続可能ではなく、現状
図表1に示されているように90年代にはいっ
では景気回復が遅れているかないし国依存の
て地方債務残高は急上昇を遂げている。さら
他律的で財政改革が十分進んでいないと推測
に重要なのはこの間、国家財政以上に地方財
される。
政の赤字累積額が増加していることである。
1.地方財政の現状:財政赤字と地方債
まず1990年代のわが国の地方自治体の債
図表2を見ると公債等の長期政府債務残高
は、国家財政では1990年度200兆円から2004
年度548兆円へと2.73倍に増加しているが、
務増加の要因となる地方財政赤字の状況をマ
地方財政では1990年度67兆円から2004年度
クロ的にみてみる。
財政赤字とは一般的には、
204兆円へ3.04倍にも増加している。日本で
政府がその会計年度の支出を租税などの経常
はバブル経済崩壊以降これまで国の政府債務
図表1 地方の借入金残高の推移
(兆円)
200
180
交付税及び譲与税配付
金特別会計借入金残高
160
企業債現在高
140
地方債現在高
120
100
80
60
40
20
0
75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02
(年度)
図表2 公債などの長期債務残高
(単位:兆円)
1990
1995
2000
2004
90→95
90→00
90→04
国
200
297
491
548
1.48倍
2.45倍
2.73倍
地方
67
125
181
204
1.86倍
2.71倍
3.04倍
研 究
13
残高累増の問題がクローズアップされること
た、図表4に示されるように、地方財政の硬
が多いが、その背後では実際には地方財政の
直化の度合いを示す経常収支比率も急速に
政府債務残高も急速に増加してきたのである。
悪化し始め、地方財政全体では1990年度の
このような財政危機は地方自治体の財政運
70.2%から2002年度には90.3%に上昇してい
営に影響を与える。たとえば、財政赤字累
る。この経常収支比率は、経常一般財源総額
積のために公債費負担が15%を、経常収支
に対する公債費や人件費・扶助費など自治体
比率が80%を超え、自治体財政が硬直化し、
の経常的・義務的経費に充てなければならな
財政運営の余裕が著しく低下し、
いわゆる
「財
い経常一般財源部分の比率であり、100%に
政硬直化」が生じていることが考えられる。
近いほど新規施策、投資的事業などへの財政
図表3は、地方一般財源に占める公債費負
運営の自由度が低下することになる。
担の比率であるが、個々の地方自治体でも公
原則的には、累積する財政赤字ゆえに地方
債費負担比率は15%が警戒ラインとされて
自治体の信用力が低下した場合、地方債によ
いるが、90年代に入って公債費負担比率が
る資金調達を市場から拒否される可能性があ
上昇し2002年度には19.2%に達している。ま
る。しかし、現在までの日本の地方財政システ
図表3 公債費負担比率
(%)
25
20
15
10
5
0
1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
(年度)
図表4 経常収支比率
(%)
95
90
85
80
75
70
65
60
14
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002(年度)
信金中金月報 2006.3
ムにあっては、中央政府による地方債起債許
(1975年度)、
の第二次地方財政危機で27府県
可制度や財政投融資資金による地方債引受を
242市町村
(1975年度)
、1990年代の第三次地
含む「地方債計画」
策定によって地方債の発行・
方財政危機で0府県、14市町 村
(1996年度))
消化は制度的に保証され、地方債の引受拒否
としては表面化しないが、その分、図表5に示
という事態は、基本的には生じていないし、生
されるように、地方の債務・借入金残高は増
じないことになっている。しかし、このように
加してくることになる。この結果、地方自治体
資金的手当てを講じているため、地方自治体
に財政錯覚を生じさせ、財政運営・財政規律
側に収支欠損の「赤字団体」
(1950年代半ば
を弛緩させていると指摘されることになる。
の第一次地方財政危機で39府県(1953年度)
、
2,596市町村
(1954年度)
、オイルショック後
ところで、図表6で地方債残高の推移と目
的別構成をみると、地方債残高が1990年度
図表5 地方債残高の対一般財源等との比較
(%)
3.0
2.5
対一般財源総額
対歳入総額
2.0
1.5
1.0
0.5
0
1975
1980
1985
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002(年度)
図表6 地方債残高の推移と目的別構成
(兆円)
140
120
臨時財源対策債
財源対策債
減収補填債
100
80
60
40
20
0
調整債
臨時財政特例債
その他
厚生福祉施設整備事
業債
一般公共事業債
公営住宅建設事業債
義務的教育施設整備
事業債
一般単独事業債
1985 1990 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002(年度)
研 究
15
の52.1兆円から2002年度には134.1兆円へと
2.地方自治体の財政規律、地方債の
持続可能性に関する実証分析
急増していること、なかでも一般単独事業債
(1990年度30.0%⇒2002年度39.1%)
、一般公
共事業債(同6.6%⇒20.1%)の伸びが大き
(1)はじめに
いことが目を引く。
わが国の政府債務の持続可能性について
1990年度には22.5兆円であった普通建設
は、いままでいくつかの実証研究が行われて
事業費は90年代半ばには30兆円前後に急速
いる。
に拡大してきたが、その伸びを主導してきた
第1に、分析対象データによる分類をみて
のは図表7で示されているように国の補助金
みると、地方の政府債務を単独で対象とした
(国庫支出金)のつく補助事業ではなく地方
分析した研究がないことが指摘される。
単独事業であった。90年代に入って地方の
これまでの実証研究では国の政府債務
普通建設事業費が増加してきたのは、バブル
(Fukuda and Teruyama
[1994]
、
加藤
[1997]
)
、
経済崩壊後の景気対策として1992年以降6次
または国と地方政府債務を統合(土居・中里
にわたって策定された「総合経済対策」にお
[1998、2004]
、土居[2000a、2000b、2004]
)
いて地方単独の公共事業が積極的におこなわ
したものを対象とし、分析を行っている。ま
れたためである。
た、最近の実証研究の傾向として、わが国の
政府債務の持続可能性を実証分析するとき、
地方財政が中央集権的に運営されていること
や、国が地方の債務の一部を実質的に負担し
ていることなどから、国と地方の政府債務を
図表7 普通建設事業費の推移
28.4
30.5
47.1
37.9
39.9
31.3
28.1
29.8
28.7
9.2
9
9.5
50.7
9.8
7.9
9.2
8.2
10.7
32.3
32
29.5
26.6
10.2
24.6
25.2
8.7
9.1
28.1
27.9
26.5
8.9
9.3
9.9
9.4
9.6
32.3
16.2
39.3
38.9
19.2
19.6
42.1
40.7
41.4
20.6
20.5
20.4
45
42.9
40.5
40.7
44.6
21.7
22.8
22.5
22.1
19
一般財源等
その他
地方債
国庫支出金
24.4
26
29.8
32.1
27.3
15.3
18.4
1970 1975 1980 1985 1990 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002(年度)
16
信金中金月報 2006.3
統合し、分析するのが妥当であるという考え
よる検定では、財政変数の単位根検定や共和
が主流になってきている。しかし、地方財政
分検定の際にGDPや政府支出の変動を適切
は未曾有の地方債残高を有しており、国が地
に調整していないという問題点があると指摘
方の政府債務を実質的に負担していることを
している。これらに対してBohnの方法は地
考慮しても地方の政府債務を単独の対象と
方自治体の選択可能性の観点からも地方の政
し、その実証分析を行うことに意義があると
府債務の持続可能性を実証分析するにあたっ
考えられる。
ても優れたモデルであると判断できるので、
本稿では、地方の政府債務の持続可能性を
これを採用する。
よりミクロ的な視点から分析するため、都道
府県のデータを用い都道府県ごとの推計を行
(2)地方政府の債務についての定義
う。都道府県ごとに分析することで、地方自
本稿では、地方財政の普通会計のみを対象
治体ごとの財政運営の態度、財政規律の働き
とする。国の交付税および譲与税配布金特別
の程度・方向および比較分析ができることに
会計(交付税および譲与税配布金勘定)の借
なる。
入金に含まれる地方負担分や、他の公営企業
第2に、本稿では、分析手法としては、土
会計は含めない。なぜならば、国の交付税お
居[2000a]に従って、Bohn[1998]の手法
よび譲与税配布金特別会計(交付税および譲
を採用する。土居
[2000a]
にあるように
「Bohn
与税配布金勘定)の借入金に含まれる地方負
が示す政府債務の維持可能性の定義が直感的
担分は、地方自治体全体で負担するものであ
に意味するところは、公債残高がそれほど多
り、各自治体の負担割合が不明確なため、対
くないときに基礎的財政赤字があったとして
象に含めなかった。また、地方の公営企業会
も、原則として公債残高がある水準以上大き
計は、歳入として租税以外の資金(特に財政
くなったときには基礎的財政収支が改善する
投融資資金)を原資として運営され、原則的
ように財政運営し、かつその運営ルールから
に独立採算制をとる公的企業の活動等が含ま
大きく逸脱することはないならば、政府債務
れており、これらは一般の政府活動と区別し
は持続可能である」ということを都道府県レ
て考える必要があるからである。本来、政府
ベルで検定するものである。
債務の持続可能性は、租税で償還すべきもの
本分析以外の実証分析の手法として、土居
のみを対象としているから、租税以外の資金
[2000a]でも指摘しているように、Hamilton
を収入としている他の特別会計や政府関係機
and Flavin[1986]の方法があるが、この方
関などは、対象に含めるべきではないという
法には公債残高の割引率の選択が重要である
単純な想定を行っている。また、政府の保有
にもかかわらず選択基準が明確でないという
する有形固定資産を用いて債務を償還するこ
問題点がある。また、同様に、共和分分析に
とも実際には可能だが、先行研究や本稿が対
研 究
17
象とする政府債務の持続可能性の分析では、
は、
自主財源である地方税収のみを使用する。
政府債務が有形固定資産を用いずに租税だけ
歳出については、歳出総額から公債費、減債
で償還できる水準で持続可能か否かを検証す
基金への積立金を控除したものを使用する。
るものである。
それ故、
本来の意味の基礎的収支ではないが、
まず、この論文で分析対象となる地方の普
通会計の予算制約式を、土居[2000a]が国
絶対水準ではなく、
方向性に関心があるため、
(擬似的)基礎収支として扱う。
(県内
の予算制約、ないし国と地方の予算制約とし
総生産)や
て示したものと同様に定義する。
県民経済計算のデータを使用する。
(1+ ) = +
1
(1)
デフレータ(平成2年基準)は、
兵庫県には、1995年の阪神淡路大震災の
それぞれの変数の意味は、 は実質支出(利
影響を考慮し、
地震ダミーを使用した。また、
払費除く)、 は実質税収、 は実質利子率、
愛媛県については、データが一部欠損値とな
は( 期初における)実質公債残高である。
っているため、今回の分析から除外した。
ここで、 ≡ − とすると、 は基礎的財
政収支を意味する。
(4)Bohnの分析モデル
土居[2000a]が示した、Bohn[1998]の
(3)分析の対象期間と使用するデータ
分析の対象期間は、1975年度以降2001年
度までを考える。使用するデータについて、
本稿は都道府県別に集計されたデータを使用
する。
提示した持続可能性の十分条件は、前年度
末公債残高 対
比( ≡
に 伴 い、 基 礎 的 財 政 収 支 対
)の上昇
比( ≡
)が上昇することである。
より厳密には、
政府債務は都道府県別の地方債残高を使用
=( )
(2)
し、ここから減債基金の積立金残高を控除し
土居[2000a]がいうように、公債残高が
たものを各県の地方政府債務のデータとして
それほど多くないときに基礎的財政赤字があ
使用する。減債基金は将来の地方債償還等の
ったとしても、原則として公債残高がある水
ために積み立てられている資金であるから、
準(すなわち )以上大きくなったときには
地方の債務を厳密に考えるには地方債残高か
基礎的財政収支が改善するように財政運営し
ら積立金残高を控除しておく必要がある。
(すなわち ( ) β 0)
、かつその運営ルー
さて、「はじめに」で述べたように地方自
ルから大きく逸脱することはない(すなわち
治体の財政規律、ないし財政運営・財政構造
が有界である)ならば、政府債務は持続可
の特徴を見ることに主眼を置くため、基礎的
能であるいうことである。これにより、実証
収支の改善に関しては絶対水準ではなくその
分析では、政府債務の持続可能性は(
方向に関心を置く。このため、歳入について
割引現在価値が有限であるとして) ( ) 0
18
信金中金月報 2006.3
の
を満たしているかどうかを検定すればよいこ
とになる。
(6)都道府県別推計結果
1975∼2001年度の都道府県別の普通会計
について、
(3)
、
(4)式を推定した結果は、
図表8に示されている。
(3)
、
(4)式を単純
(5)モデルの定式化
さて、地方政府債務の持続可能性を、土居
最小二乗法で推定すると、土居[2000a]の
[2000a]に従って前述のBohn[1998]の方
推計時と同じく、誤差項に1階の系列相関が
法で検証する。推定式として、Bohn[1998]
強く見られるため、これを除去するべく最尤
は(2)式を
法で推定した。
(3)
、
(4)式における誤差項
β α α
α
ただし、
≡( −
) 、
(
)
)
≡
(1−
:実質政府支出、
部分、
ε (3)
:実質
は、ε=ρε− +ν が成り立つとみなしたの
で、図表8(1)中のρは、この誤差項の1階
の自己相関係数の推定値である。
:実質政府支出の恒常的
(3)式を推計した結果がケース【Ⅰ】
、で
ある。
(3)式において、 の係数βが統計的
の恒常的部分
(3)式 は、
(1)式 を ( )
=β と 線 形 を 仮
に有意にならなかった場合に、
(4)式を推計
定したモデルである。これに基づいて推定
した結果がケース【Ⅲ】である。さらにケー
す る が、
ス【Ⅰ】
【Ⅲ】において、土居[2000a]と
、
の デ ー タ は、 土 居
[2000a]
と同じくBeveridge and Nelson
[1981]
同様に
の係数または
の係数に
decompositionを用いて、政府支出の恒常的要
5%水準で有意な値が得られなかった場合
素( *)と一時的要素に分解し、一時的要
は、その有意な係数が得られなかった変数を
素を実質
外して推計を行った結果が、それぞれケース
で割ったものを
とした。
に つ い て も、 同 様 にBeveridge and
Nelson[1981]decompositionを用いて、県内
総支出の恒常的要素( *)を求め、
≡
ま た、
(2)式 で ( ) β +γ( − )2と2次
α
東京都、神奈川県、愛知県、大阪府は(3)
め、
(4)式により二次の係数を求めた。この
うち、東京都は二次の係数が有意に正となっ
関数を仮定すると、
γ(
および最終型を示したのが図表8である。
式により の一次の係数が有意でなかったた
(1− / *)
( */ )とした。
β
【Ⅱ】
、
【Ⅳ】となっている。この結果の途中
− )2 α
ε たのに対し、神奈川県、愛知県、大阪府は二
α
(4)
次でも有意とならなかった。また、それ以外
とすることもできる。ただし、 は推定期間
の41道府県では、
(3)式により の一次の係
中の の平均値である。本稿では、(3)式と
数が有意に負となったため、
(4)式により二
(4)式を使用し都道府県ごとに推定するこ
次の係数を求めた。このうち、沖縄県では二
ととする。
次の係数が5%水準では有意とならなかった
研 究
19
図表8 都道府県に関する推計結果(1)
定数項
北海道
青森県
岩手県
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅱ】
【Ⅳ】
宮城県
秋田県
山形県
福島県
茨城県
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅲ】
【Ⅳ】
【Ⅱ】
栃木県
【Ⅳ】
【Ⅲ】
△ 0.0597 △ 0.0686 △ 0.0964 △ 0.0885 △ 0.0383 △ 0.0774 △ 0.0723 △ 0.0625 △ 0.0446 △ 0.0364 △ 0.0418
△ 11.0790 △ 7.2720 △ 3.8810 △ 8.2850 △ 8.1410 △ 11.3150 △ 10.8590 △ 9.8570 △ 6.9630 △ 10.4310 △ 9.4980
△ 0.4269 △ 0.5371 △ 0.1117 △ 0.4020 △ 0.3285 △ 0.4950 △ 0.4304 △ 0.2730 △ 0.0680 △ 0.3730 △ 0.3321
△ 8.3370 △ 7.3870 △ 1.1120 △ 4.8660 △ 5.4120 △ 11.4110 △ 8.2080 △ 3.2740 △ 0.6870 △ 4.5660 △ 4.2310
GVAR
0.6852
0.1551
0.3257
0.1849
0.1955
0.1674
0.2537
6.2060
4.6940
3.6740
3.3450
6.6010
5.1680
3.6620
YVAR
( - )2
0.0943
2.0620
0.2293
0.2395
0.2688
0.3113
0.1548
2.0550
2.5230
2.9700
3.7830
2.6260
1.5188
1.9312
2.5827
3.1477
2.1713
2.6338
3.4017
5.0415
2.8682
3.0400
3.3680
5.0040
3.4940
6.3050
5.9130
2.1390
3.6860
1.9950
0.7736
0.8673
0.9724
0.8941
0.7871
0.8500
0.8165
0.7724
0.8695
0.6967
0.7648
6.6110
9.2820
27.4300
9.4570
6.8960
8.9830
7.7040
6.7070
7.6710
4.9280
6.2840
R2
0.9600
0.9730
0.8960
0.9650
0.9050
0.9800
0.9640
0.7370
0.8110
0.8750
0.8940
DW
1.0680
1.0140
1.3660
1.4160
0.8880
1.0400
1.3370
1.1990
1.6480
1.8230
1.2010
ρ
定数項
群馬県
埼玉県
千葉県
【Ⅳ】
【Ⅲ】
【Ⅱ】
東京都
【Ⅲ】
【Ⅱ】
神奈川県
【Ⅲ】
【Ⅱ】
【Ⅳ】
新潟県
富山県
石川県
【Ⅲ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
△ 0.0353 △ 0.0251 △ 0.0324 △ 0.0259 △ 0.0149 △ 0.0123 △ 0.0139 △ 0.0134 △ 0.0526 △ 0.0455 △ 0.0467
△ 5.7150 △ 7.2520 △ 7.6770 △ 9.7390 △ 2.2690 △ 1.5310 △ 3.3340 △ 3.3710 △ 10.4260 △ 10.6540 △ 7.2010
GVAR
△ 0.4433 △ 0.3410 △ 0.1127 △ 0.3676
0.0195 △ 0.1504 △ 0.0765 △ 0.1770 △ 0.4408 △ 0.3543 △ 0.4308
△ 4.3160 △ 4.6930 △ 1.7950 △ 5.9840
0.1700 △ 1.1330 △ 0.8950 △ 1.8460 △ 8.1350 △ 8.7960 △ 6.2910
0.1895
0.3771
0.0590
0.1054
0.2921
0.3909
0.3614
3.3090
3.8550
2.4570
2.0790
6.2380
6.1190
5.1760
YVAR
0.1835
0.1142
0.0928
0.1643
0.1343
0.1997
0.2065
0.1102
2.1540
2.5670
2.5570
2.1970
2.0710
2.2310
2.4100
2.0600
4.0406
2.9582
5.2531
7.9990
5.3954
2.8416
1.9467
1.9098
2.0580
2.7310
4.2990
2.0300
1.7690
5.2840
3.8470
2.3510
0.8349
0.7903
0.8570
0.7648
0.8453
0.9026
0.8307
0.8168
0.8313
0.7456
0.8231
8.2920
6.6740
7.8560
6.1200
8.3490
11.4540
7.8270
7.2370
8.2820
6.1540
8.1830
R2
0.8860
0.9130
0.8230
0.9110
0.7870
0.8250
0.8060
0.8240
0.9610
0.9440
0.9360
DW
0.8920
1.0470
1.6260
1.3290
1.6980
1.3960
1.1590
1.3200
1.0500
0.9290
0.7940
( - )2
ρ
定数項
福井県
山梨県
長野県
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅱ】
【Ⅳ】
岐阜県
静岡県
愛知県
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅱ】
三重県
【Ⅳ】
【Ⅱ】
滋賀県
【Ⅳ】
【Ⅳ】
△ 0.0534 △ 0.0728 △ 0.0573 △ 0.0594 △ 0.0386 △ 0.0175 △ 0.0166 △ 0.0158 △ 0.0500 △ 0.0423 △ 0.0332
△ 7.5080 △ 8.7560 △ 4.3860 △ 7.3110 △ 8.1020 △ 4.4560 △ 4.3450 △ 4.0880 △ 5.7690 △ 11.5000 △ 5.7740
△ 0.4916 △ 0.3126 △ 0.1398 △ 0.2933 △ 0.5261 △ 0.4668 △ 0.1091 △ 0.1925 △ 0.1339 △ 0.4626 △ 0.4949
△ 6.2730 △ 4.2070 △ 1.3220 △ 3.5750 △ 5.7710 △ 5.3510 △ 1.5260 △ 2.1980 △ 1.2430 △ 5.7860 △ 4.8620
GVAR
0.1290
0.1703
0.1713
0.2197
0.2894
3.8520
2.5630
3.0460
4.4050
3.9100
YVAR
0.6445
4.5930
4.6310
0.2712
0.2654
0.2839
2.3690
2.4420
2.3950
2.4801
2.9221
3.9196
3.3526
4.6683
4.0625
7.4075
5.0922
3.2110
3.6130
3.4980
3.2050
3.2730
1.4810
4.5810
3.2280
0.7769
0.8253
0.8886
0.8110
0.7541
0.7397
0.7652
0.7782
0.8786
0.6215
0.7968
6.0960
8.1410
9.9510
7.4750
5.7040
5.9470
6.0170
6.2360
9.4770
3.4760
7.2000
R2
0.9470
0.9000
0.7610
0.8500
0.9400
0.8960
0.7900
0.7980
0.7940
0.8850
0.8690
DW
1.1410
1.3590
0.9110
0.9390
0.9560
1.3460
1.5210
1.4990
1.0480
1.5910
1.0020
( - )2
ρ
20
0.1663
信金中金月報 2006.3
京都府
【Ⅱ】
定数項
大阪府
【Ⅳ】
【Ⅱ】
【Ⅳ】
兵庫県
奈良県
和歌山県
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
【Ⅲ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅲ】
【Ⅳ】
△ 0.0287 △ 0.0228 △ 0.0131 △ 0.0117 △ 0.0234 △ 0.0628 △ 0.0509 △ 0.0884 △ 0.1010 △ 0.0421 △ 0.0274
△ 3.4730 △ 5.5620 △ 1.9800 △ 1.6180 △ 3.6890 △ 8.1620 △ 10.1290 △ 5.5690 △ 8.0370 △ 11.0380 △ 5.3720
△ 0.1876 △ 0.4882 △ 0.1711 △ 0.2704 △ 0.3856 △ 0.3572 △ 0.7692 △ 0.5575 △ 0.5329 △ 0.3781 △ 0.4596
△ 1.7610 △ 5.1240 △ 1.7370 △ 2.1700 △ 4.1350 △ 4.9880 △ 12.5430 △ 5.4680 △ 6.4910 △ 6.4490 △ 5.1230
GVAR
0.2792
0.3134 △ 3.5259
0.1323
0.1855
0.1862
0.4416
0.1959
0.1547
2.5170
2.8530 △ 4.7520
3.2800
4.7510
5.0590
3.3530
5.1970
2.9820
YVAR
1.0877
0.1632
4.4320
( - )2
1.9720
5.1040
3.2431
2.4026
3.0226
3.6888
2.8070
1.5997
3.0864
3.8597
3.1430
1.3180
2.9090
3.7990
6.1750
3.5310
3.4630
3.6990
2.8990
DUMMY
0.8125
5.6690
0.9001
0.7225
0.8764
0.8841 △ 0.0465
0.8239
0.7229
0.9129
0.7625
0.8046
0.8056
10.4110
5.3880
9.4630
9.2050 △ 12.6030
8.0400
5.1570
12.2010
5.6380
6.6010
7.3290
R2
0.8820
0.9150
0.8620
0.8690
0.9670
0.8910
0.9820
0.9590
0.9470
0.9500
0.9290
DW
1.2320
1.4910
0.7190
0.7650
1.8410
0.6930
1.1840
0.8930
1.5420
1.1710
0.8810
ρ
定数項
山口県
徳島県
香川県
高知県
福岡県
佐賀県
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅲ】
【Ⅳ】
【Ⅲ】
【Ⅱ】
【Ⅳ】
長崎県
熊本県
大分県
【Ⅳ】
【Ⅲ】
【Ⅱ】
【Ⅲ】
△ 0.0438 △ 0.0818 △ 0.0490 △ 0.1081 △ 0.0290 △ 0.0869 △ 0.0774 △ 0.0727 △ 0.0711 △ 0.0685 △ 0.0642
△ 6.3160 △ 19.6650 △ 11.4180 △ 6.3020 △ 7.5330 △ 3.7600 △ 7.0800 △ 16.2920 △ 8.9550 △ 4.4570 △ 8.8250
△ 0.5312 △ 0.5514 △ 0.4909 △ 0.4380 △ 0.3126 △ 0.1705 △ 0.5279 △ 0.5426 △ 0.3124 △ 0.1982 △ 0.4449
△ 6.1430 △ 16.2910 △ 7.0900 △ 4.9690 △ 5.1030 △ 1.4330 △ 4.7370 △ 13.0420 △ 5.0510 △ 1.8480 △ 5.3550
GVAR
0.1820
0.1193
0.1334
0.1646
0.0885
0.1877
0.1863
0.6842
0.2126
0.1301
0.1325
4.2090
5.4870
3.8350
5.6500
2.0200
4.4250
5.6110
4.2260
3.7950
3.0100
4.0090
YVAR
( - )2
0.3208
0.1272
0.3965
0.1928
3.9420
1.9700
2.5240
2.5240
3.5582
3.6344
2.0605
3.6823
2.2199
3.2557
4.2758
2.5677
2.2545
3.4850
7.8320
4.7620
3.6350
2.9030
5.0000
5.2000
3.3640
0.8388
0.7017
0.7919
0.9230
0.8359
0.9723
0.8752
0.3970
0.8464
0.9432
0.8369
8.4000
5.2000
5.9260
13.7790
8.3150
28.3350
7.1450
2.1720
9.0210
16.6620
7.6230
R2
0.9480
0.9860
0.9690
0.9800
0.9480
0.9000
0.9720
0.9280
0.9340
0.9040
0.9600
DW
0.9770
1.2590
1.3490
0.8330
1.1290
0.9110
0.8730
2.2930
0.7330
1.0200
1.3810
研 究
21
ρ
定数項
宮崎県
鹿児島県
【Ⅳ】
【Ⅱ】
4.3550
沖縄県
【Ⅳ】
【Ⅱ】
【Ⅳ】
△ 0.0793 △ 0.0966 △ 0.0875 △ 0.0841 △ 0.0894
△ 5.3170 △ 4.4810 △ 9.2400 △ 9.2480 △ 10.0410
△ 0.4959 △ 0.1865 △ 0.4858 △ 0.4997 △ 0.5433
△ 4.8740 △ 1.8760 △ 7.2700 △ 6.5210 △ 7.8400
GVAR
0.1513
0.1101
0.1151
0.1702
0.1673
4.1070
3.1410
4.5090
3.8880
4.1340
YVAR
( - )2
ρ
2.1411
2.4834
2.9720
5.4260
2.0728
1.9480
0.9034
0.9633
0.8881
0.8237
0.8237
10.6530
20.8050
10.1870
6.7960
7.9170
R2
0.9630
0.9170
0.9760
0.9610
0.9680
DW
0.7980
0.9440
0.7700
1.0950
0.9650
図表9 都道府県に関する推計結果(2)
採用した推定
北海道
青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
茨城県
栃木県
群馬県
埼玉県
千葉県
東京都
神奈川県
新潟県
富山県
石川県
福井県
山梨県
長野県
岐阜県
静岡県
愛知県
三重県
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
和歌山県
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
高知県
福岡県
佐賀県
長崎県
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
沖縄県
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅲ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅲ】
【Ⅳ】
【Ⅲ】
【Ⅲ】
【Ⅲ】
【Ⅱ】
【Ⅲ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅱ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅰ】
【Ⅲ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅲ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅲ】
【Ⅳ】
【Ⅲ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅲ】
【Ⅲ】
【Ⅳ】
【Ⅳ】
【Ⅱ】
の
一次の係数
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意でない
有意でない
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意でない
有意に負
有意に負
有意に負
有意でない
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
有意に負
の
二次の係数
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意でない
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意でない
有意に正
有意に正
有意に正
有意でない
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意に正
有意でない
地方債の
持続可能性
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
不確定
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
不確定
持続可能
持続可能
持続可能
不確定
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能
持続可能でない
(注)ただし、有意水準は5%
が、残りの41道府県では二次の係数が有意に
正となった。
が、図表9である。
図表8、9より、神奈川県、愛知県、大阪府
これらの推計結果【Ⅰ】から【Ⅳ】をそれ
では の1次の係数βが有意に正でも負でな
ぞれの都道府県について比較検討し、妥当で
く、ゼロと有意に異ならず、正負いずれかの
あると考えられる推計の結果をまとめたの
確定的符号を有しない。また、沖縄県では係
22
信金中金月報 2006.3
数βが有意に負となった。その他の県では2次
債残高対GDP比( )の上昇しても、縦軸の
関数である(4)式を推計した【Ⅲ】
、
【Ⅳ】の
(擬似的)基礎的財政収支対GDP比( )が近
結果で の2次の係数γが有意に正となった。
年になると上昇していることが理解できる。
以上の結果から、
神奈川県、
愛知県、
大阪府、
他方、神奈川県、愛知県、大阪府といった
沖縄県の4府県以外の42都道府県では、地方
大都市圏においては図表10(2)に示される
債は1975∼2001年度において持続可能であ
ように地方債の持続可能性について、可能か
り、都道府県間で格差があるとはいえ、公債
どうかについて判断ができない。つまり、地
残高対GDP比( )が上昇しても、
(擬似的)
方債は、公債残高対GDP比( )の上昇に伴
基礎的財政収支対GDP比( )が上昇・改善
い基礎的財政収支対GDP比( )が上昇する、
することになり、財政改革が進み財政規律が
逆に低下するという事実は、統計的に有意性
働いていると推測することができる。
しかし、
が認められず、符号条件は統計的にゼロと有
このような結果は、最近の2・3年のデータ
意に異ならず、不確定である。これは、上記
を推計に含めた効果が大きく、景気の回復と
の都道府県との間で、景気回復および財政規
財政改革への取組みの効果の両方が考えら
律の両面で、ラグ(遅れ)があるためである
れ、両者を峻別することはできない。この点
と考えられる。なお、図表10(2)を一見す
を、土居[2000a]における図表を用いて説明
るとV字型をしているように見えるものもあ
すると、図表10(1)のように、近年横軸の公
るが、すべて統計的には有意ではない。
図表10(1)
基礎的財政収支と公債残高
(推計で政府債務が持続可能と判断される県)*一部抽出
北海道
0
0.1
0.15
地方債残高対GDP比
0.2
0.25
東京都
-0.005
-0.010
-0.015
-0.020
-0.025
-0.030
-0.035
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.1
地方債残高対GDP比
0
-0.01
-0.02
-0.03
-0.04
-0.05
-0.06
-0.07
-0.08
-0.09
基礎的財政収支対GDP比
基礎的財政収支対GDP比
0
0.05
基礎的財政収支対GDP比
基礎的財政収支対GDP比
0
-0.02
-0.04
-0.06
-0.08
-0.10
-0.12
-0.14
-0.16
宮城県
0
0
-0.02
-0.04
-0.06
-0.08
-0.10
-0.12
-0.14
-0.16
0
0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 0.16 0.18
地方債残高対GDP比
熊本県
0.05
0.10
0.15
0.20
地方債残高対GDP比
研 究
0.25
23
図表10(2)
基礎的財政収支と公債残高
1 (推計で政府債務の持続可能性
が不確定と判断される県)
最後に、沖縄県は、二次の係数が5%水準
では有意とならず、公債残高対GDP比( )
基礎的財政収支対GDP比
の上昇に伴い基礎的財政収支対GDP比( )
神奈川県
0
が低下するという結果となった(ただし、
-0.005
-0.010
10%水準では有意である。
)
。図表10(3)に
-0.015
-0.020
示されるように、従来の財政運営を継続した
-0.025
まま、地方債を租税で償還することを前提と
-0.030
すれば、推計期間中では、地方債はいまだ持
-0.035
0
0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09
地方債残高対GDP比
基礎的財政収支対GDP比
いるないし他律的で財政規律が十分働いてい
愛知県
0
続可能ではなく、現状では景気回復が遅れて
ないと推測される。
-0.005
-0.010
-0.015
-0.020
(7)パネル分析による実証分析
-0.025
ここでは都道府県のデータを時系列で用い
-0.030
-0.035
-0.040
都道府県分析と同様に愛媛県は除いた46都
道府県が対象となっている。
大阪府
基礎的財政収支対GDP比
0
-0.005
-0.010
-0.015
-0.020
-0.025
-0.030
-0.035
-0.040
-0.045
て、パネル分析による推計を試みた。なお、
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.10
地方債残高対GDP比
パネル分析による推計結果は、図表11の
とおりである。Hausman検定の結果、固定効
果モデルを採用した。ここでも2次の係数が
正となり、地方債は1975∼2001年度(愛知
0
0.02
0.04
0.06
0.08
地方債残高対GDP比
0.10
0.12
図表11 パネル分析による推計結果
(固定効果モデルによる分析)
図表10(3) 基礎的財政収支と公債残高
8 (推計で政府債務が持続可能
8 でないと判断される県)
24
【Ⅲ】
係数
係数
t値
P値
△0.3961
△46.1990
沖縄県
基礎的財政収支対GDP比
0
-0.02
-0.04
-0.06
-0.08
-0.10
-0.12
-0.14
-0.16
-0.18
-0.20
【Ⅰ】
GVAR
YVAR
[.000]
0.1588
4.2500
[.000]
0.05
0.10
0.15
地方債残高対GDP比
信金中金月報 2006.3
0.20
0.25
[.000]
0.1994
15.4424
[.000]
0.2082
6.5070
[.000]
1.9122
2
( - )
0
P値
△0.4655
[.000] △57.5152
0.2697
18.5103
t値
20.2586
[.000]
R2
0.933522
0.951542
DW
0.296884
0.291770
県は1985∼2001年度)において、持続可能
計期間中は、地方債は持続可能ではなく、現
であり、公債残高対GDP比( )が上昇して
状では景気回復が遅れているないし国依存の
も、(擬似的)基礎的財政収支対GDP比( )
他律的で財政改革が十分進展していないと推
が上昇・改善することになり、財政改革が進
測される。
み財政規律が働いていると推測できる。
3.まとめ
今 回 の 実 証 分 析 結 果 か ら 判 断 す る と、
今回の分析の残された課題として、第1に、
データ期間に関して、最近時点になればなる
ほどどの都道府県においても、
(擬似的)基
礎的財政収支が改善する方向にあるが、上述
2001年度末の時点において、全国47都道府
したように景気の回復と財政規律の回復がさ
県のうち、42都道府県で地方債は持続可能
らに続くかどうかについて、今後の推移を注
であり、都道府県間で格差があるとはいえ、
意深く見守る必要があろう。特に、景気回復
財政構造改革に取り組み、財政規律が働いて
に伴って、財政規律が緩むことのないように
いたことになる。しかし、このような結果は
注視する必要があろう。
最近のデータを推計に含めた効果が大きく、
第2に、基礎的財政収支の定義として、本
景気の回復の影響と財政改革の進展、財政規
稿では歳入として地方税のみ考慮し、簡便な
律の回復の両方の影響が考えられ両者のいづ
(擬似的)基礎的収支という概念を用いたが、
れの影響が大きいか、判断できない。また、
歳入から国からの移転を除くとしても、より
神奈川県、愛知県、大阪府といった大都市圏
基礎的収支の概念を厳密化する方向が望まし
のほうが地方債の持続可能性について可能か
いと考えられる。
どうかについて、推計期間中のデータだけで
は判断ができない。これは、他の都道府県と
*本研究は、信金中央金庫から横浜市立大
の間で、景気の回復と財政改革の進展の両方
学に対する平成16年度受託研究による
の面でラグがあるためとも考えられる。沖縄
成果であり、総合研究所および同大学よ
県では従来の財政運営を継続したまま、地方
り研究補助の協力を受けている。
債を租税で償還することを前提とすれば、推
研 究
25
〈参考文献〉
Bohn, H., "The behavior of U.S. public debt and deficits" Quarterly Journal of Economics 113, pp949-963.(1998)
Fukuda, S. and H. Teruyama, "the sustainability of budget deficits in Japan" Hitotsubashi journal of Economics 35, pp109-119
(1994)
Hamilton, J. D. and M. A. Flavin, "On the limitations of government borrowing: A framework for empirical testing" American
Economic Review 76, pp808-816(1986)
加藤久和「財政赤字の現状と政府債務の持続可能性」電力中央研究所報告 Y97001(1997)
土居丈朗・中里透「国際と地方債の持続可能性―地方財政対策の政治経済学―」
『フィナンシャル・レビュー』第 47
号(1998)
土居丈朗「わが国における国債の持続可能性と財政運営」井堀利宏・加藤竜太・中野英夫・中里透・土居丈朗・佐藤正一「財
政赤字の経済分析:中長期的視点からの考察」
『経済分析 政策研究の視点シリーズ』16 号 pp9-35 頁(2000a)
土居丈朗・中里透「公債の持続可能性」井堀利宏編『日本の財政赤字 経済社会総合研究叢書 1』pp53-83, 岩波書店
(2004)
土居丈朗「地方債の持続可能性を探る∼自治体の公債管理政策を検討する」
『地方財務』2000 年 11 月号 pp.2-12.
(2000b)
土居丈朗「政府債務の持続可能性の考え方」財務省財務総合政策研究所 PRI Discussion Paper Series No.04A-02
(2004)
峯岸直輝「地方財政の仕組みと市町村の財政健全度―三位一体改革の下で、財政健全度の向上が喫緊の課題に―」
『信
金中金月報』2006 年 4 月号(予定)
26
信金中金月報 2006.3
研 究 日米欧州主要銀行の収益性とその背景
信金中央金庫 総合研究所主任研究員
廣住 亮
(キーワード) 米国銀行、欧州銀行、収益性、国際展開、オーバーバンキング
(視
点)
日本の大手銀行では、昨今の不良債権処理一色の経営から脱しつつあり、改めて各行の収
益基盤の強弱や収益構造に光が当たりつつある。
各行の収益面におけるメインテーマは、ここ数年「非金利収益の拡大」であるが、一方で、
最近では脱デフレ・脱ゼロ金利が視界に入ってきたため、金利収益の拡大にも期待が集まる
ようになっている。
また、金融当局も金融機関の「国際競争力」強化を再度掲げるようになり、大手銀行に対
してさらなる収益力強化を求める姿勢を崩していない。
本稿では、こうした収益面では相当程度先行していると考えられている欧米の大手銀行と
日本の主要行の収益構造の相違を概観し、その背景を考察することで、近い将来、こうした
大手行が経営の舵をどう切っていくのか考えるための一助としたい。
(要
●
旨)
米銀では、好調な国内経済に支えられ、リテールを主力とする各銀行の収益はきわめて良
好な状態である。
●
英国では、好況に加え、リテールや中小企業取引での寡占を背景として、銀行は良好な収
益力を維持している。一方、ドイツでは国内経済の不振に加えて、公共金融機関である貯
蓄銀行との競争が激化しており、国内収益力は低下、一部は投資銀行業務に活路を見出そ
うとしている。
●
邦銀主要行グループは、懸案であった不良債権処理もほぼ収束しつつあることもあり、経
費率やその他指標で欧米銀行との大きな差は見られなくなってきている。
したがって、今後さらに収益規模を拡大するためには、総資産および総資本の利益率向
上を図る必要があろうと思われる。ただし、選択肢はさほど多くはなく、国際業務の再展
開やIT等システム投資による省力化等、またはさらなる規制緩和による新規業務参入な
どを総合的にミックスしながら経営展開を図っていくものと思われる。
研 究
27
模によると考えられる。
1.概観
邦銀各行ともバブル崩壊後の不良債権処理
図表1は、株式時価総額順に見た世界の銀
行グループ規模である。
を終え、直近では急速な増益基調にあるもの
の、総資産規模に対してまだ利益水準が低
日本では、主要3グループへの再編が進み、総
い。例えば、図表1の中で、税引前当期利益
資産100兆円規模が国際競争に参入するメル
が1兆円を上回っているのは、11グループあ
クマールとなった観もあるが、その間、欧米で
るが、うち邦銀はみずほフィナンシャルグル
も金融機関の買収・統合の動きは進み、図表
ープのみとなっている(注)1。中でも、上位3
1に見られるとおり株式時価総額ベースで最
グループは2兆円を超える利益規模となって
大のCitigroupは、今般統合した三菱UFJフィ
おり、また、Wells Fargo(米)のように総
ナンシャルグループの約1.6倍に達している。
資産規模が50兆円程度で1兆2,000億円の利
邦銀は総資産規模では世界上位に数えら
益を上げる高収益グループも存在している。
れており、こうした格差の原因は主に利益規
こうした中、邦銀でも、これまで不良債権
図表1 各国銀行グループの規模比較(株式時価総額順)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
本籍国
米
米
英
日
米
スイス
米
英
日
西
米
日
仏
伊
スイス
英
西
英
独
仏
米
英
蘭
仏
加
ベルギー
日
豪
豪
加
銀行グループ名
Citigroup Inc.
Bank of America
HSBC Holdings
三菱UFJFG
JPMorgan Chase Co.
UBS AG
Wells Fargo & Co.
Royal Bank of Scotland
みずほFG
Santander
Wachovia Corp.
三井住友FG
BNP Paribas
Unicredito Italiano
Credit Suisse
Barclays Plc
BBVA
HBOS Plc
Deutsche Bank
Societe Generale
US Bancorp
Lloyds TSB
ABN Amro
Credit Agricole
Royal Bank of Canada
FORTIS
りそなHD
Commonwealth Bank of Australia
National Australia Bank
Bank of Novascotia
株式時価総額
272,841
241,392
223,029
171,254
164,426
138,846
122,675
116,891
114,998
105,780
100,942
99,677
90,222
89,258
84,909
83,443
81,235
81,027
70,764
68,623
64,070
63,777
63,112
63,109
59,575
54,097
52,212
51,082
49,697
47,555
(単位:億円)
総資産
1,751,239
1,310,339
1,506,598
2,018,601
1,365,553
1,808,982
504,862
1,320,986
1,529,212
924,774
581,275
1,058,353
1,456,016
427,280
1,136,084
1,170,682
499,953
896,321
1,350,150
966,065
230,223
637,726
978,174
1,466,795
408,908
778,136
434,880
236,533
333,113
263,053
税引前当期利益
28,534.8
25,040.8
20,777.4
4,690.5
7,343.1
11,130.9
12,707.4
15,762.4
10,366.3
7,127.2
9,006.9
△1,193.0
12,198.8
5,361.9
8,657.7
10,490.2
6,669.4
10,464.2
6,475.8
8,146.7
7,287.7
7,960.3
4,514.7
12,315.7
4,079.3
4,278.7
4,282.2
3,123.5
3,999.0
3,802.0
(注)1.株式時価総額は各国通貨建、総資産・当期利益額は原典において米ドル表示されているため、以下のレートで換算し、
円建表示としている。
・1USD=¥118、1EUR=¥142、1GBP=¥209、1CHF=¥91、¥1AUD=¥88、1CAD=¥103
2.各行総資産、税引前当期利益は2004年12月末(邦銀のみ2005年3月末)データによる。また、三菱UFJFGの総資産・税
引前当期利益は、三菱東京FGとUFJの2005年3月末期を単純合計した。
(出所)株式時価総額がBloombergより06年2月1日終値、総資産・税引前当期利益は『The Banker』(05年7月号)から引用した。
(注)1.2005年3月末のみずほFGの連結税引前当期利益は、約9,341億円と公表されている。原典が米ドル換算であるため、換算
相場の影響(円安)により表示上の上振れが生じている。
28
信金中金月報 2006.3
(1)米国
処理を優先したため遅れていた高収益業務へ
の取組みが、今後さらに活発化すると見られ
上位6グループ(Citigroup、Bank of Amer-
る。本稿では、欧米銀各行と邦銀の大手行グ
ica、JPMorgan Chase、Wells Fargo、Wacho-
ループにおける収益構造の差異を概観し、要
via、US Bancorp)を取り上げる。
因を探ることで、信用金庫の経営環境に大き
各行のプロフィールは、以下のとおり。
な影響を与える邦銀大手行グループの戦略の
図表2は、これら各グループの収益および
今後を占ってみたい。
業務粗利益に対する各収支項目の構成比を示
したものである。
2.日米欧州大手銀行の現状
収益構成では、非金利収益の割合で日欧の
本節では、まず日米欧州の大手銀行を取り
大手銀行とは大きな差はない。ただし、これ
上げ、各行の財務諸表の特徴を概観しながら、
は、金利収入の絶対額も大きいためである。
また、比較している6行の間でも非金利収
評価を加えてみたい。
入割合には差があり、最高のJPMCでは非金
利収入が粗利益の64.3%を占めているのに対
・Citigroup:ニューヨークを中心とする銀行グループのCiticorpと保険大手Travelersグループが統合し成立した米
国初の金融コングロマリットグループであり、現在では保険業務をスピンオフし、国内外での消費者金融およ
び富裕層取引、投資銀行業務に特化している。
・Bank of America(以下、「BoA」という。):西海岸中心のBoAと東海岸南部中心のNations Bankが統合、米国初
の全米を東西に貫く店舗網を持つ銀行グループとなった。その後、2004年には北東部に地盤を持つFleetを買
収し、米国最大のリテール銀行としての地歩を確立している。
・JPMorgan Chase(以下、「JPMC」という。
)
:投資銀行でありモルガン商会の流れを継ぐJP Morgan Co.とロッ
クフェラーの金融グループであるChase Manhattan Bankの名門行同士による統合により成立した。したがって、
大企業取引に強みを持つが、2004年には中西部最大の地域金融グループBank Oneを買収している。
・Wells Fargo:ともに西海岸を地盤とするNorwestがWells Fargoを買収し成立した。リテール、中小企業取引をメ
インにインターネットや軽量店舗を用いた低コスト営業で、
米銀の中でもトップの収益性を持つ地域金融グループ。
・Wachovia:Corestates、First Unionといった地域銀行と統合し、成立した。東海岸中部から南部にかけて地盤
を持つ地域金融グループ。
・US Bancorp(以下、「US Bank」という。):中西部から西海岸にかけ展開する地域金融グループ。強固なリテー
ル網を持ち、同地域のリテール、中小企業取引において高い収益性を持つ。
図表2 大手米銀各グループの収益状況(2004年12月末)
CITIGROUP
金額
構成比
BoA
金額
JPMC
構成比
金額
(単位:百万ドル、%)
WELLS FARGO
構成比
金額
構成比
WACHOVIA
金額
U.S.BANK
構成比
金額
構成比
金利収入
48,742
86.6
41,068
93.2
26,088
75.3
17,289
73.8
18,047
94.0
9,199
76.1
金利費用
14,242
25.3
11,240
25.5
10,842
31.3
3,089
13.2
5,155
26.8
1,966
16.3
貸倒引当金繰入
6,669
11.8
3,555
8.1
2,882
8.3
865
3.7
368
1.9
670
5.5
金利収支(A)
27,831
49.4
26,273
59.6
12,364
35.7
13,335
56.9
12,525
65.2
6,563
54.3
非金利収入(B)
28,461
50.6
17,809
40.4
22,276
64.3
10,094
43.1
6,680
34.8
5,530
45.7
業務粗利益(A)
+(B)
56,291
100.0
44,082
100.0
34,640
100.0
23,429
100.0
19,205
100.0
12,093
100.0
非金利費用
35,035
62.2
24,561
55.7
29,849
86.2
13,900
59.3
11,491
59.8
5,897
48.8
税引前当期利益
21,256
37.8
19,521
44.3
4,790
13.8
9,529
40.7
7,715
40.2
6,196
51.2
当期利益
14,885
26.4
14,796
33.6
3,363
9.7
6,054
25.8
5,412
28.2
4,087
33.8
総資産
944,070
1,063,744
1,060,931
389,878
451,936
197,851
総資本
90,463
110,069
104,978
37,770
47,071
19,280
(注)FDIC(連邦預金保険公社)加盟行ベースの統計となっており、各行発表の連結財務諸表とは計数が異なっている。
(備考)FDIC資料より信金中金総合研究所作成
研 究
29
して、米国内リテール業務を主収益源とする
融業務が主収益源であることには変わりない
地域銀行は総じて低く、最低のWachoviaでは
が、各グループによってその割合は大きく異
34.8%となっている。
なる。消費者金融に注力するCitigroupや小企
また、図表3は非金利収入の内訳を示した
業金融に強みを持つWells Fargoなどは、リ
ものであるが、まず、各行が安定的に収益を
テール業務で7割超の収益を得ているが、大
得ているのが預金関連手数料である。これに
企業向け金融に強みを持つJPMCやFleetを
は、小切手のクリアリング、送金および口座
買収したBoAなどでは、企業金融・投資銀行
維持手数料などが含まれる。また、証券化関
部門の割合が大きくなっている。
連収入(証券化収入、サービシング手数料)
総じて見ると、近年、個人による住宅投資
も近年増加しており、信託や預金といった伝
が活発であった一方、企業業績はITバブル
統的銀行業務関連の手数料に加えて非金利の
崩壊以後停滞気味であったことから、相対的
主収入源として定着しつつある。
にリテール重視の各行の業績が良かったもの
図表4は、各グループの業務別収益状況で
と思われる。また、
「資産管理・運用」でも
ある。各グループともリテール業務と企業金
各行一定の収益を上げている。これは、米ド
図表3 各グループの非金利収入内訳(2004年12月末)
信託関連手数料
預金関連手数料
トレーディング収入
投資銀行手数料
ベンチャーキャピタル
サービシング手数料
証券化収入
保険関連収入
債権売却益
その他
非金利収入計
CITIGROUP
BoA
金額
構成比
金額
構成比
1,490
5.2
1,005
5.6
385
1.4
6,706
37.7
2,435
8.6
1,332
7.5
0
0.0
2,188
12.3
80
0.3
196
1.1
4,987
17.5
1,479
8.3
6,416
22.5
261
1.5
1,052
3.7
249
1.4
70
0.2 △
16 △
0.1
11,545
40.6
4,410
24.8
28,461
100.0
17,809
100.0
(単位:百万ドル、%)
JPMC
WELLS FARGO
WACHOVIA
金額
構成比
金額
構成比
金額
構成比
2,951
13.2
803
8.0
794
11.9
1,871
8.4
2,528
25.0
2,276
34.1
3,293
14.8
323
3.2
172
2.6
2,590
11.6
306
3.0
612
9.2
83
0.4
0
0.0 △
74 △
1.1
983
4.4
1,071
10.6
224
3.4
2,960
13.3
302
3.0
114
1.7
224
1.0
113
1.1
35
0.5
432
1.9 △ 592 △
5.9
175
2.6
6,889
30.9
5,239
51.9
2,353
35.2
22,276
100.0
10,094
100.0
6,680
100.0
U.S.BANK
金額
構成比
715
12.9
1,262
22.8
41
0.7
263
4.8
0
0.0
262
4.7
21
0.4
23
0.4
168
3.0
2,775
50.2
5,530
100.0
(注)各収入はFDIC加盟行での取扱分であり、別途投資銀行やその他専門子会社を持株会社傘下にもつグループの場合、連結損
(注益計算書上での損益とは異なる。
(備考)FDIC資料より信金中金総合研究所作成
図表4 各グループの業務別収益(2004年12月末)
CITIGROUP
(単位:百万ドル、%)
BoA
JPMC
2004
2003
2004
2003
2004
2003
金額
構成比
金額
構成比
金額
構成比
金額
構成比
金額
構成比
金額
構成比
リテール・個人
11,811
72.2
9,491
54.8
6,548
46.3
5,706
52.8
3,473
77.8
2,230
33.2
企業金融・投資銀行
2,038
12.5
5,371
31.0
4,783
33.8
3,265
30.2
3,996
89.5
3,534
52.6
資産管理・運用
1,199
7.3
1,343
7.8
1,584
11.2
1,234
11.4
681
15.2
287
4.3
その他
1,311
8.0
1,116
6.4
1,228
8.7
605
5.6 △ 3,684 △
82.5
668
9.9
合 計
16,359
100.0
17,321
100.0
14,143
100.0
10,810
100.0
4,466
100.0
6,719
100.0
WELLS FARGO
WACHOVIA
U.S.BANK
2004
2003
2004
2003
2004
2003
金額
構成比
金額
構成比
金額
構成比
金額
構成比
金額
構成比
金額
構成比
リテール・個人
4,967
70.8
4,364
70.4
3,593
68.9
2,901
68.0
2,181
52.4
1,929
51.6
企業金融・投資銀行
1,599
22.8
1,446
23.3
1,717
32.9
1,177
27.6
1,079
25.9
850
22.7
資産管理・運用
507
7.2
451
7.3
198
3.8
152
3.6
439
10.5
389
10.4
その他
△
59 △
0.8 △
59 △
1.0 △
294 △
5.6
34
0.8
466
11.2
572
15.3
合 計
7,014
100.0
6,202
100.0
5,214
100.0
4,264
100.0
4,165
100.0
3,740
100.0
(注)税引後当期利益で表示している。なお、出所が異なるため、上表とは数値が異なる。
(備考)各行アニュアルレポート等より信金中金総合研究所作成
30
信金中金月報 2006.3
ルを母国通貨とする故、海外投資家などを対
象とした資金決済、カストディ業務によると
ころが大きいと思われる。
イ.収益構造
図表5は、英国銀行各行の収益構造である。
まず目に付くのは、非金利収入の業務粗利益
に占める割合の高さである。RBSで約64%、
(2)欧州
その他3行も50%代半ばとなっている。
欧 州 で は、 英 国、 フ ラ ン ス、 ド イ ツ3国
こうした収益構造の背景は、各行で異なる
の 主 要9行( 英:Royal Bank of Scotland、
が、
英国経済が近年好況を維持してきたこと、
Barclays、Lloyds TSB、HSBC Bank plc、
競争が少ないこと(上位4行による寡占状態)
仏:BNP Paribas、Societe Generale、 独:
により銀行側に極めて有利な手数料慣行が普
Deutsche Bank、Commerzbank、Bayerische
及していること、保険業務の兼営(RBSお
HypoVereinsbank)を取り上げている。
よびLloyds TSB)などが挙げられる。こう
したことから、各行とも現時点での収益状況
は極めて良好である。
英:The Royal Bank of Scotland(以下、「RBS」という。
)
:もとはスコットランドの大手地銀であったが、業績
不振に陥っていた4大行の一角National Westminster Bankを2000年に買収、英国最大の銀行グループとな
った。
Barclays:設立から300年超の歴史をもつ英国商業銀行の名門、投資銀行業務やカード等にも強みを持つ。
Lloyds TSB:Barclaysとならび、産業革命期からの歴史をもつ名門で、1996年には相互銀行の出自をもつ
TSBグループを買収した。英国内リテール及び保険に強みを持つ。
HSBC Bank plc:旧Midland Bankとして産業革命の中心地バーミンガムに1836年設立され、その後、英4大行
の一角を占めるに至った。1992年にHSBC(香港上海銀)グループの完全子会社となった。
仏:BNP Paribas:1945年ドゴール政権時に国有化されたが、1993年再度民営化、以後、国内リテールと国際企
業金融をコア業務に掲げ、2000年には投資銀行ParibasをTOBにより買収した。
Societe Generale:BNP Paribas同様1945年に国有化され、1987年民営化、以後、国内リテールではBNPや
Credit Agricoleなどと激しい競争を繰り広げている。
独:Deutsche Bank:戦後復興期から1990年代まで「ドイツ株式会社」の機関銀行として、株式保有を通じ強大
な産業支配力を誇った。2000年以降、持合株式の放出と投資銀行業務の強化を進めている。
Commerzbank:19世紀後半に商業者と貸金業者により設立され、伝統的に商業向け・中小企業向けに強い。
Bayerische HypoVereinsbank( 以 下、「HVB」 と い う。
)
: バ イ エ ル ン 州 の 地 銀Vereinsbankと 抵 当 銀 行
Hypothekenbankが98年統合、2000年にオーストリア最大のBank Austriaを買収し、東欧にも強みを持つ。
国内地価下落により業績が低迷し、2005年には伊UniCreditoによる買収提案を受諾している。
図表5 英銀各行の収益構造(2004年12月末)
金利収入
金利費用
貸倒引当金繰入
金利収支(A)
非金利収入(B)
業務粗利益(A)+(B)
非金利費用
税引前当期利益
当期利益
総資産
総資本
金額
RBS
16,696
7,488
1,511
7,697
13,546
21,243
10,846
10,397
4,762
583,467
25,904
構成比
78.6
35.2
7.1
36.2
63.8
100.0
51.1
48.9
22.4
Barclays
金額
構成比
13,665
6,823
1,093
5,749
7,103
12,852
8,350
4,502
3,314
522,089
17,417
英国
106.3
53.1
8.5
44.7
55.3
100.0
65.0
35.0
25.8
(単位:百万ポンド、%)
Lloyds TSB
金額
構成比
10,395
5,475
918
4,002
4,647
8,649
4,917
3,732
2,489
279,843
9,977
120.2
63.3
10.6
46.3
53.7
100.0
56.9
43.1
28.8
HSBC Bank plc
金額
構成比
9,587
5,113
425
4,049
4,637
8,686
6,247
2,592
1,826
110.4
58.9
4.9
46.6
53.4
100.0
71.9
29.8
21.0
289,975
17,961
(備考)各行アニュアルレポートより信金中金総合研究所作成
研 究
31
図表6 独仏各行の収益構造(2004年12月末)
フランス
BNP Paribas
金額
構成比
Societe Generale
金額
構成比
Deutsche Bank
金額
構成比
金額
905,938
30,194
601,089
18,576
840,068
25,904
467,408
11,485
28,332
22,213
678
5,441
12,704
18,145
11,592
6,553
4,668
金利収入
金利費用
貸倒引当金繰入
金利収支(A)
非金利収入(B)
業務粗利益(A)+(B)
非金利費用
税引前当期利益
当期利益
総資産
総資本
(単位:百万ユーロ、%)
ドイツ
HVB
156.1
122.4
3.7
30.0
70.0
100.0
63.9
36.1
25.7
12,324
5,911
541
5,872
10,003
15,875
10,967
4,908
3,465
77.6
37.2
3.4
37.0
63.0
100.0
69.1
30.9
21.8
28,023
22,841
372
4,810
16,736
21,546
17,517
4,029
2,472
130.1
106.0
1.7
22.3
77.7
100.0
81.3
18.7
11.5 △
17,209
11,553
1,813
3,843
4,750
8,593
7,226
1,367
2,278 △
Commerzbank
金額
構成比
構成比
200.3
134.4
21.1
44.7
55.3
100.0
84.1
15.9
26.5
11,352
8,361
836
2,155
3,996
6,151
5,191
960
475
184.6
135.9
13.6
35.0
65.0
100.0
84.4
15.6
7.7
424,879
9,801
(備考)各行アニュアルレポートより信金中金総合研究所作成
また、図表6は同じく仏独主要銀行の収益
一方、ドイツでは東独併合時の過剰融資問
状況である。
題がいまだ片付いておらず、特に国内向け貸
フランスの2行は、過去数年間の国内景気低
出割合の高いHVB、Commerzbankでは不良
迷等による貸出不振からの回復過程にあり、
債権処理負担から収益は低迷している。
また、
相対的に良好な収益状況と言える。しかしな
他の欧米主要行では主収益源となっている国
がら、ユーロ金利が低水準で据え置かれる中、
内リテール業務でも、貯蓄銀行や協同組合銀
フランス国内でのリテール業務での競争激化
行との競合で各行とも疲弊しており、急速な
から金利収支の収益環境は厳しいとされる。
回復は望みにくい状況となっている。
ただし、両行 とも好 調 な 海 外 リテール業 務
ロ.業務別収益状況
(BNP:米国、Societe Generale:東欧)
を維持
しており、欧州内での信用リスク状況の改善
図表7は、先に挙げた欧州主要行の業務別
と相まって、収益環境は上向きとされている。
収益状況を比較したものである。米銀同様各
図表7 欧州各行業務別収益状況
(単位:百万ポンド、%)
RBS
2004
金額
構成比
Barclays
2003
金額
構成比
2004
金額
構成比
Lloyds TSB
2003
金額
構成比
2004
金額
構成比
HSBC Bank plc
2003
金額
構成比
2004
金額
構成比
金額
2003
構成比
英国
リテール
・個人
4,319
53.3
4,051
57.3
1,729
37.6
1,706
44.4
1,651
47.3
1,471
46.5
1,515
58.4
1,273
56.7
企業金融
・投資銀行
4,265
52.6
3,620
51.2
2,651
57.6
2,201
57.2
1,257
36.0
1,038
32.8
834
32.2
926
41.3
資産管理
・運用
468
5.8
402
5.7
429
9.3
171
4.4
750
21.5
502
15.9
411
15.9
340
15.2
保険
862
10.6
609
8.6
168
4.8
166
5.2
その他
△ 1,813 △ 22.4 △ 1,614 △ 22.8 △
8,101
合計
100.0
7,068
100.0
206 △
4,603
4.5 △
100.0
233 △
3,845
6.1 △
100.0
333 △
3,493
9.5 △
100.0
12 △
3,165
0.4 △
100.0
168 △
2,592
(単位:百万ユーロ、%)
BNP Paribas
2004
金額
構成比
金額
構成比
金額
構成比
金額
Deutsche Bank
2004
2003
構成比
3,001
43.3
2,648
47.4
2,788
55.2
2,369
55.3
企業金融
・投資銀行
3,109
44.9
2,375
42.5
1,914
37.9
1,355
31.6
資産管理
・運用
547
7.9
332
5.9
629
12.4
449
10.5
保険
446
6.4
391
7.0
その他
合計
△
178 △
6,925
2.6 △
100.0
160 △
5,586
2.9 △
100.0
276 △
5,055
金額
ドイツ
フランス
リテール
・個人
構成比
金額
信金中金月報 2006.3
100.0
Commerzbank
2004
構成比
金額
2003
構成比
金額
構成比
1,007
23.3
462
12.2
583
70.4
482
−
2,749
63.5
2,704
71.2
318
38.4
289
−
490
11.3
647
17.0
108
13.0
5
−
181 △ 21.9
△3,752
−
828
△2,976
−
5.5
110
2.6
83
100.0
4,283
100.0
4,329
1.9 △
100.0
14 △
3,799
(注)税引前当期利益ベース(Societe Generaleのみ粗利益ベース)での表示となっている。
(備考)各行アニュアルレポートより信金中金総合研究所作成
32
295 △ 13.1
2,244
(単位:百万ユーロ、%)
Societe Generale
2004
2003
2003
6.5 △
100.0
0.4 △
100.0
100.0
行とも「リテール・個人」と「企業金融・投
ルグループ、三井住友フィナンシャルグルー
資銀行」の両主力部門で収益を上げている。
プをとり上げた。
ただし、ドイツでは、リテール分野の競争が
2005年には景気回復に伴い急速な業績回
厳しいこともあり大手行は国内業務から十
復がアナウンスされている各グループである
分な収益を得られていない。このため、大企
が、2004年度決算時点では、図表8のとおり
業向け金融と投資銀行業務に集中している
収益構造に大きな差が生じている。3グルー
Deutsche Bankと国内貸出不振の影響を大き
プとも基礎的な金利収支では大きな差はない
く受けているCommerzbankでは明暗が分か
が、非金利収入では最大2倍程度の差が生じ
れている。また、そのDeutsche Bankでも、リ
ている。また、不良債権償却費用を計上した
テールでも高収益を上げる英仏両国の各行と
三井住友FGが最終赤字となっているが、業
比較すると収益レベルでは見劣りしている。
務粗利益ベースでは同グループは総資産規模
一方、英国4銀行は、強固な国内基盤から
で1.5倍程度あるみずほFGと同規模の利益額
高収益を上げており、例えばRBSでは、リ
となるなど、基礎的収益力は3グループの中
テール・個人部門の収益だけで、総資産規
では最も高いといえる。
模 で は ほ ぼ 同 等 のBNP ParibasやDeutsche
今後、ゼロ金利政策が解除され、適正利鞘
Bankの税引前総利益を上回るなど、
「儲けす
の確保が可能になると金利収支の拡大が見込
ぎ」の社会的批判が出るほどの高収益体質と
まれるが、オーバーバンキングが叫ばれるよ
なっている。
うに金融機関同士の競争は激しく、預金金利
が上昇する一方で貸出金利が競争から低迷す
(3)日本
るなど適正利鞘の確保が困難となる可能性も
日本では、これまで挙げてきた欧米主要行
ある。
に比肩しうる存在として、三菱東京フィナン
シャルグループ(当時)
、みずほフィナンシャ
図表8 邦銀各行の収益構造(2005年3月末)
金利収入
金利費用
貸倒引当金繰入
金利収支(A)
非金利収入(B)
業務粗利益(A)+(B)
非金利費用
税引前当期利益
当期利益
総資産
総資本
三菱東京FG
金額
構成比
1,442,623
77.7
471,231
25.4
109,502
5.9
861,890
46.4
995,090
53.6
1,856,980
100.0
1,135,591
61.2
721,389
38.8
408,318
22.0
108,422,100
4,373,097
みずほFG
金額
構成比
1,584,415
53.2
477,983
16.1
0
0.0
1,106,432
37.2
1,871,238
62.8
2,977,670
100.0
2,034,611
68.3
943,059
31.7 △
627,383
21.1 △
143,076,236
3,905,726
(単位:百万円、%)
三井住友FG
金額
構成比
1,521,726
51.6
350,383
11.9
288,902
9.8
882,441
29.9
2,068,145
70.1
2,950,586
100.0
3,348,023
113.5
108,535 △
3.7
234,201 △
7.9
99,731,858
2,775,728
(備考)各行ディスクロージャー等より信金中金総合研究所作成
研 究
33
3.日米欧州大手銀行の横断的比較
(1)国際展開
自国経済の恩恵もあり自国での収益獲得割合
が大きくなっている。フランスの2行(BNP
Paribas、Societe Generale)でも、英銀2行に
イ.地域別収益動向
比べると小さいものの自国による収益寄与
図表9、10は、これまで見てきた欧米各行の
度は約5割程度で、欧州周辺国を合わせると
地域別収益状況である。一見してわかるとお
収益のおよそ4分の3を欧州域内で得ている。
り、各行のターゲット顧客や戦略、国内市場
これに対して、自国経済不振、オーバーバン
の状況などに応じて相当程度ばらつきがある。
キングといった構造問題を抱えるドイツで
例えば、米銀ではCitigroupが消費者金融を
は、Deutsche Bankにおいて、自国の収益寄
中心に広く国外でも事業展開を行い、
自国
(北
与度は3割程度で北米やその他欧州に約5割
米)の収益依存度が50%以下であるのに対
を依存、HVBでは、自国は大幅な赤字とな
して、米国内リテールを中心とするBoAでは、
っており、かろうじてオーストリアや東欧な
国外部門の収益貢献はごくわずかである。
ど周辺国での収益により支えている。
ま た、英 国2行(RBS、Barclays)は 好 調 な
ロ.貸出金の国内外比率
図表9 米銀各行の地域別収益構造比率
1 (2004年12月末)
図表11では、各行の貸出金残高における
(%)
100
国内外配分比率を示している。CitiGroup以
ラテン
アメリカ
75
外の米銀や英銀(RBS除く)
、邦銀などは国
アジア
内向け貸出金が8割を超えている。
欧州アフリカ
50
25
一方、国外でも広く消費者金融を展開する
北米
0
Citigroup
Bank of America JPMorgan Chase
(注)1.地域別収支状況を公表している銀行のみ。
( 2.税引後当期利益ベース
(備考)各行アニュアルレポートより信金中金総合研究所作成
図表10 欧州各行の地域別収益構造比率
(2004年12月末)
(%)
100
75
50
25
0
-25
-50
-75
その他
南北アメリカ
行は貸出金の4∼5割を国外向けに振り向け
ている。また、邦銀では、三菱東京FGが米
西海岸に銀行子会社を持っており、約2割が
欧州
(その他)
(2)貸出先別貸出金残高
図表12は、各行の貸出金における先別の
RBS
BNP Societe Deutsche
Barclays Paribas Generale Bank
HVB
(注)1.地域別収支状況を公表している銀行のみ。
( 2.税引前当期利益ベース(Societe Generaleのみ粗利益)
(備考)各行アニュアルレポートより信金中金総合研究所作成
34
Paribas、国内向け貸出が伸び悩むドイツ各
国外向け貸出金となっている。
アジア
欧州
(自国)
Citigroup、米銀行子会社を持つRBS、BNP
信金中金月報 2006.3
残高割合を比較したものである。
各行とも
「企
業向け」
、
「不動産」
、
「個人」が主要貸出先で
あることには変わりはないが、同国内でも構
図表11 各行の国内外貸出金残高比率(2004年12月末)
(%)
100
80 海外
60
40
国内
20
0 CITI
BOA
JPM Wells
Lloyds BNP
Chase Fargo Wachovia RBS Barclays TSB ParibasDeutsche HVB 三菱東京 みずほ 三井住友
米国
欧州
日本
(備考)各行アニュアルレポート等より信金中金総合研究所作成
図表12 欧米各行の貸出先別貸出金残高比率(2004年12月)
(%)
100
その他
80
個人
金融機関
60
不動産
40
事業会社
20
0
CITI
BOA
JPM
Chase
Wells
US
Wachovia
Fargo
Bank
米国
RBS Barclays
Lloyds
HSBC Deutsche
TSB
欧州
(注)1.セグメント情報を公表している銀行のみを比較した。
( 2.「不動産」には、住居用住宅ローン(Residential Mortgage)、商業用不動産融資
(2 (Commercial Mortgage)、ホームエクイティローン等不動産担保融資が含まれる。
( 3.RBS、Barclaysの残高に国外分は含まれない。
(備考)各行アニュアルレポートより作成
成は大きく異なっている。
(金融・保険業、不動産業含む)向けとなって
米 国 で はCitigroupやJPMCが 相 対 的 に 住
おり、間接金融のプレゼンスがいまだ大きい
宅ローンを除く個人向け貸出の割合が高く、
せいか、上で見た欧米各行に比べて相当程度
西海岸の2行(BoA、Wells Fargo)では不動
高くなっている(図表13)
。しかし、大企業
産関連が5∼6割を占めている。また、欧州
を中心とした直接金融移行と中小企業へと波
では、英銀でも、RBS、HSBC Bankは中小
及しつつある市場型間接金融の流れから、企
企業を中心とした企業向け貸出が主体となっ
業向け貸出は停滞・減少傾向が強まるものと
ているのに対して、Lloyds TSB、Barclaysで
考えられ、今後は各グループとも消費者金融、
は、不動産向けが多くなっている。
住宅ローン、不動産関連融資などに注力、欧
これに対して、
邦銀では、
各行とも国内向け
貸出金のうち6∼7割が依然として事業会社
米主要銀行並みの残高比率に近づいていくも
のと思われる。
研 究
35
図表13 邦銀各グループの業種別貸出金内訳
三菱東京
金額
構成比
48,190
12.7
−
−
8,909
2.4
−
−
42,476
11.2
35,287
9.3
47,850
12.7
38,353
10.1
−
−
157,236
41.6
79,361
21.0
378,259
100.0
製造業
農林漁業・鉱業
建設業
運輸・情報通信・公益
卸小売業
金融・保険業
不動産業
各種サービス業
地方公共団体
その他
うち住宅ローン
国内貸出計
(単位:億円、%)
みずほ
金額
75,110
1,883
16,217
48,384
69,090
64,573
65,858
98,891
4,302
138,343
91,404
582,656
構成比
12.9
0.3
2.8
8.3
11.9
11.1
11.3
17.0
0.7
23.7
15.7
100.0
三井住友
金額
構成比
56,599
11.3
1,343
0.3
18,299
3.7
28,728
5.7
56,926
11.4
40,896
8.2
69,484
13.9
62,720
12.5
6,564
1.3
158,955
31.8
123,393
24.7
500,514
100.0
(注)1.三菱東京FGの「農林漁業・鉱業」、「運輸・情報通信・公益」、「地方公共団体」計数は開示
されていない。
2.2005年3月末現在
(備考)各グループディスクロージャーより作成
(3)預金による調達
といえよう。一方、
大陸欧州(フランス、
ドイツ)
図表14は、これまで見てきた各行での預
各行は低めとなっているが、これは仏2行が
金の位置づけを指標にしたものである。
保険業務を本体で運営しており、保険関連の
総資産に占める預金の比率(
「預金/総資
負債が多いこと、ドイツに関してはDeutsche
産」)および負債に占める預金の比率(
「預金/
Bankは、投資銀行業務にかかる調達が多く、
負債」
)については、リテール中心の米銀各行
市場からの調達が主となっていることによる。
(BoA、Wells Fargo等)が高めであり、邦銀で
また、預金総額における付利預金の割合
は、三井住友FGが両指標とも70%を超えるな
(
「付利預金/預金」
)を見ると、無利息の小
ど、どちらかと言えばリテール中心の米銀に
切手口座が重要な決済手段である米銀では、
近く資金調達における預金への依存度が高い
付利預金の割合も総じて低く、こうした無利
図表14 各行の預金関連諸指標(2004年12月)
CitiGroup
BoA
JPMC
(単位:%)
Wells Fargo
Wachovia
US Bank
預金/総資産
56.3
63.5
51.6
73.6
68.0
64.9
米
預金/負債
62.3
70.8
57.3
81.4
75.9
71.9
国
貸出金/預金
109.4
82.1
78.2
103.6
76.5
97.8
付利預金/預金
88.9
74.4
74.3
71.7
96.3
75.5
国内預金/預金
37.0
83.7
71.7
93.4
93.1
RBS
Barclays
Lloyds TSB
BNP
SG
90.2
Deutsche
HVB
Commerzbank
預金/総資産
65.8
63.0
57.8
36.6
40.6
39.2
53.1
51.9
欧
預金/負債
70.1
65.3
60.1
38.1
42.1
40.5
54.7
53.3
州
貸出金/預金
106.2
101.3
110.9
135.1
105.6
42.1
130.0
72.8
78.1
92.4
73.1
91.1
94.2
33.2
付利預金/預金
国内預金/預金
69.1
三菱東京
63.5
みずほ
三井住友
預金/総資産
65.8
56.2
71.4
日
預金/負債
68.5
58.2
74.2
本
貸出金/預金
71.6
78.3
77.0
付利預金/預金
86.2
国内預金/預金
81.4
(注)邦銀3行の計数のみ2005年3月末現在
(備考)各行アニュアルレポート等より信金中金総合研究所作成
36
信金中金月報 2006.3
59.2
息の要求払預金口座が重要な低コスト資金調
解し、各行の収益性を比較してみたい。
図表15は、上記による資本収益率の分解
達手段となっていると考えられる。
こうしたことを踏まえて預貸率(
「貸出金
結果を示したものである。まず、
「経費率」
(下
/預金」)を見ると、邦銀3グループはすべて
記図では「1−経費率」で表示した。
)では、
70%台となっているのに対して、米銀の一
米銀と英銀の経費効率性の高さが目立つ。一
部や英仏銀では100%を超えるオーバーロー
方、収益不振にあるドイツの各行では人件費
ンとなっていることが観察される。これは、
等の経費が、収益を圧迫していると言える。
各国の事情にもよるが、貸出の好調と預金に
また、財務レバレッジ比率では、米銀が
よる調達の困難さ(市場金利、貯蓄率、国民
おおむね10倍台で推移しているのに対して、
の金融慣行などのマクロ経済的側面と預金保
欧州や日本では相対的に高い。これは、米銀
険料やALMなどの技術的側面)が考えられ、
が証券化等による資産のオフバランス化を積
邦銀の置かれる現状(貸出不振、預貸率低下
極的に行っていること、そして米銀では貸出
に伴う運用難)とは大きく異なる。
など相対的ハイリスク資産が多いのに対し
て、欧州銀や邦銀では、資産に占める有価証
(4)収益性
券の割合が高く、リスクウエイト勘案後の総
ここでは、少し粗いが、資本利益率(税引
前当期利益ベースROE)を以下のとおり分
税引前当期利益
業務粗利益
経費率
(1−経費率)
×
業務粗利益
総資産
×
総資産
資本
資産ベースでは大きな差にならないことなど
が要因として挙げられる。
=
税引前当期利益
資本
資本利益率
=
(税引前当期利益ROE)
総資産業務
財務レバレッジ比率
粗利益率(ROA)
図表15 各行の収益性指標
(%、倍)
50
ROA
(右軸)
ROE
(右軸)
1−経費率
(左軸)
財務レバレッジ
(左軸)
(%)
40
30
30
20
20
10
10
0
40
CITI BoA JPMC WEF WAC USB RBS BARC LYD HSBC BNP
米国
SG
DB
CMZ HVB 三菱東京みずほ
欧州
0
日本
(注)1.2004年12月末(邦銀3行のみ2005年3月末)現在
( 2.三井住友FGは、2004年税引前当期利益がマイナスであるため、除外した。
( 3.米銀6行はFDIC加盟行ベース(持株会社ベース連結決算とは異なる)。
(備考)FDICおよび各行アニュアルレポートより信金中金総合研究所作成
研 究
37
図表16 自己資本比率および不良債権比率
BIS自己
資本比率
不良債権
比率
JPMC
12.23
Wells Fargo
Wachovia
USBank
BIS自己
資本比率
RBS
11.66
1.58
Barclays
11.53
2.07
0.78
Lloyds
10.00
12.08
0.42
HSBC
12.00
1.94
11.01
0.79
BNP
10.30
4.49
13.10
0.52
Societe Generale
11.86
2.98
−
日本
0.47
不良債権
比率
ドイツ
2.06
11.63
フランス
11.85
BoA
英国
米国
CITIGroup
(単位:%)
BIS自己
資本比率
不良債権
比率
Deutsche
13.20
HVB
10.40
Commerzbank
12.60
三菱東京
11.76
2.66
みずほ
11.91
2.44
9.94
3.90
三井住友
3.47
4.12
−
(注)1.2004年12月末(邦銀のみ2005年3月末)現在
2.Lloyds TSBおよびCommerzbankの不良債権比率は非公表
(備考)『TheBanker』(2005年7月号)より信金中金総合研究所作成
総資産利益率(ROA)は、米銀グループ
による大きな差は見られない。一方、不良債
が最も高く、次に欧州、邦銀の順となってい
権比率については、邦銀が過去10年超にわ
る。例えば、邦銀はおおむね1%台後半から
たり苦闘してきた不良債権処理にようやく見
2%であるのに対して、米銀では6%台とな
通しのついた時期にあたり、一部米銀の良好
っている銀行グループもあるなど大きな差が
さが目立つものの、数字上では欧米主要行と
ついている。これは、証券化等オフバランス
大きな差はなくなっている。
化による資産圧縮の効果もあるが、同じくド
しかし、外部機関による健全性評価ではい
イツの各行も低収益性となっていることを考
まだ欧米主要行には一歩及ばない。図表17は、
えると、国内市場の競争状況や金利・手数料
格付機関による各行の信用格付を比較したも
体系等の商慣行、規制など彼我の銀行が置か
のである。欧米の主要行はおおむねAA格(長
れる収益環境の相違も要因として考えられる。
期)となっており、改善途上とはいえシング
こうして比較し、邦銀の現状について考え
図表17 各行の外部信用格付
てみると、経費効率性はすでに欧米の水準に
接近しており、追加での経費削減は難しいと
思われる。また、財務レバレッジ比率でも、欧
州銀と同等で、
十分高いと言える。
したがって、
残るリソースはROAであり、欧米と同等の資
産収益率の実現には、資産の限界収益性を向
上させていくしかないと言えるであろう。
(5)健全性
図表16は各行の自己資本比率(BISベース)
と不良債権比率を比較したものである。自己
資本比率については、邦銀を含めた各行とも
おおむね10%超を維持しており、国・地域
38
信金中金月報 2006.3
Moody's
長期
S&P
短期
長期
Fitch
短期
長期
短期
CITIGroup
Aa1
P-1
AA-
A-1+
AA+
F1+
BoA
Aa2
P-1
AA-
A-1+
AA-
F1+
米 JPMC
国 Wells Fargo
Aa3
P-1
AA+
A-1
AA+
F1
Aa1
P-1
AA-
A-1+
AA
F1+
Wachovia
Aa3
P-1
AA+
A-1
AA-
F1+
USBank
Aa2
P-1
AA+
A-1
AA-
F1+
RBS
Aa2
P-1
AA-
A-1+
AA
F1+
英 Barclays
国 Lloyds
Aa1
P-1
AA
A-1+
AA+
F1+
−
−
AA
F1+
−
−
HSBC
Aa2
P-1
AA-
A-1+
AA
F1+
フ BNP
ラ
ン Societe
ス Generale
Aa2
P-1
AA
A-1+
AA
F1+
Aa2
P-1
AA-
A-1+
AA-
F1+
Deutsche
Aa3
P-1
AA-
A-1+
AA-
F1+
A2
P-1
AA
A-1
AA
F1
A2
P-1
AA-
A-2
AA-
F2
A1
P-1
AA
A-1
AA-
F1
A1
P-1
AA
A-1
AA
F1
A1
P-1
AA
A-1
AA-
F1
ド
イ HVB
ツ Commerz
三菱東京※
日 みずほ
本
三井住友
(注)1.2006年1月時点の格付
2.三菱東京FGに関しては、三菱UFJFGの格付を表示
3.みずほFGについては子会社格付(みずほCB)
(備考)各行ウェブサイト等より信金中金総合研究所作成
図表18 各行の自己資本および内訳
自己資本額計
米国
英国
フランス
ドイツ
日本
CITIGroup
BoA
JPMC
Wells Fargo
Wachovia
USBank
RBS
Barclays
Lloyds
BNP
Societe Generale
Deutsche
HVB
Commerzbank
三菱東京
みずほ
三井住友
100,899
92,266
96,807
41,706
39,633
22,352
42,923
25,216
20,525
33,500
25,486
38,735
27,090
17,623
6,623
7,770
6,737
Tier1自己資本
74,415
64,281
68,621
29,060
28,583
14,720
22,694
16,662
11,725
26,200
18,361
25,353
15,721
10,484
4,287
3,941
3,262
繰延税金資産 Tier1 /自己資本 繰延税金資産/
Tier1自己資本
1,350
73.8
1.81
554
69.7
0.86
0
70.9
0.00
0
69.7
0.00
0
72.1
0.00
0
65.9
0.00
0
52.9
0.00
1,038
66.1
6.23
0
57.1
0.00
930
78.2
3.55
192
72.0
1.05
1,468
65.5
5.79
4,133
58.0
26.29
5,811
59.5
55.43
428
64.7
9.98
1,003
50.7
25.45
1,553
48.4
47.61
(注)1.2004年12月末(邦銀は2005年3月末)現在
2.単位は、米国:百万ドル、英国:百万ポンド、仏独:百万ユーロ、日本:十億円および%
3.「繰延税金資産」は繰延税金資産純額(繰延税金資産−同負債計上額)
(備考)各行ウェブサイト等より信金中金総合研究所作成
ルA格の邦銀各行や低迷する独2行とは差が
ある。
また、図表18は、各行の自己資本の質を
検証したものである。米国やフランスの銀行
ではTier1自己資本が自己資本総額に占める
割合が60∼70%台となっており、英独銀や
4.銀行の収益性に影響を与える外部
環境
(1)競争状況
図表19では、各国銀行部門の競争状態を
比較している。
邦銀に比べて、一段高い自己資本の充実度合
銀行数では、米国が圧倒的な多数となっ
となっている。また、繰延税金資産について
ている。これは1994年まで州際業務規制(注)2
見ると、米国、英国、フランスの
図表19 各国の競争関連指標
各行はほとんど計上額がないのに
(単位:行、%)
銀行数
上位行シェア
HHI
米国
8,932
−
※549
英国
426
22
347
の一部や邦銀ではTier1自己資本と
フランス
939
47
597
の対比で5割程度を占める銀行もあ
ドイツ
2,225
33
173
日本
1,515
※28
対して、業績不振の続いたドイツ
り、自己資本の安定性にはいまだ大
きな差があると言わざるを得ない。
−
(注)1.米国および日本のデータは2005年3月、欧州は2003年12月
2.「上位行シェア」は欧州3か国が上位5行の総資産ベース、日本は3グル
ープの預金総額ベースで算出した。
3.日本の銀行数、上位行シェアは国内銀行および協同組織金融4業態(信
用金庫、信用組合、労金、農協)により算出している。
4.「HHI」:ハーフィンダール指数(市場参加者シェア(%)の2乗和)
−数値が大きいほど競争制限的(寡占化)市場とされる。
5.HHIについて米国は預金シェア、欧州は総資産シェアにより算出し
ている。また、日本は市場シェアデータが存在しないため算出してい
ない。
6.米国HHIは、本稿で取り上げた6行の本店所在州(カリフォルニア、
ミネソタ、ニューヨーク、ノースカロライナ)合計で算出した。
(備考)FDIC、ECB、その他資料より信金中金総合研究所作成
(注)2.米国では、1927年マクファデン法により、一部を除き複数州にまたがる銀行の営業は禁止されていた(1994年リーグニ
ール法により撤廃された。)。
研 究
39
があったことや国土の広大さなどから、総
つものの、相対的に銀行数は多く、各地方で
資産10億ドル(約1,100億円)未満のごく小
強固な基盤を持つ地方銀行の存在などによ
規模な銀行が大部分を占め、全土に点在し
り、全国レベルでのプライスリーダーは存在
ているためである(注)3。ここまで見てきた主
しないと言える。しかし、最近10年で都市
要行についても、ニューヨーク(Citigroup、
銀行グループ数は半分以下に集約され、各グ
JPMC)、カリフォルニア(BoA、Wells Fargo)
ループの総資産規模は2倍以上に増大してい
など主要州を基盤としており、全米展開は行
る。このため、銀行側の対顧客価格交渉力は
われていない。こうした意味では一部大都市
確実に強化されているはずであり、今後、金
を除けば、競争は緩くオーバーバンキングに
利上昇期には、一部地域では寡占により金利
は該当しないと言える。
収入を中心に、銀行グループ側に大きな収益
また欧州では、ドイツの銀行数がその他欧
を持たす可能性もある。
州諸国を圧倒している。これは、小規模の協
同組合銀行や貯蓄銀行が多数存在するためで
(2)金利情勢と金利収支
あり、HHI指数も他国を大きく下回るなど、
図表20、21は、各国の長期金利の推移お
過度な競争状態を示している。また、貯蓄銀
よび各行における金利収支(金利収入−金利
行は、州および連邦政府出資のもと設立・運
費用)の対総資産比を示したものである。
営されており、その信用力と採算より公益性
図表20のとおり、2000年以降各国ともに金
を重視する営業スタンスからドイツ国内で民
利低下局面にあり、これに応じて金利収入も
間銀行に不利な競争条件を強いていると言わ
減少したもの、同時に金利費用の低下も伴っ
れている(注)4。
一方、銀行数が5か国で最も少な
い英国であるが、HHI指数はフラン
スより低いなど一見、競争的な銀行
図表20 各国通貨長期金利の推移
(%)
6.5
4.5
小企業金融など一部取引では4大行
3.5
を中心とする大手行が80%を超える
2.5
決定権を握っていると言われている。
これに対して、日本では主要行グ
ループが預金で約3割のシェアを持
英ポンド
5.5
市場にも見える。しかしながら、中
圧倒的シェアを握り、事実上の価格
米ドル
ユーロ
日本円
1.5
0.5
2000
2001
2002
2003
(注)1.各国10年債指標金利の年平均を表示した。
( 2.ユーロ金利は、独10年国債金利を表示した。
2004
(年)
(注)3.総資産10億ドル未満の銀行は全8,932行中8,346行を占めており、その割合は93.3%に達する。
4.ドイツの貯蓄銀行セクターには、州・連邦政府による債務保証が付されていた。しかし、欧州委員会競争当局の指摘により、
2005年7月に廃止された。ただし、出資自体は維持されるため、現時点では信用力に大きな影響は出ていないとされる。
40
信金中金月報 2006.3
たため、各行とも金利収支の対総資産比はこ
維持してきたため証券業務や保険などによる
こ5年で見る限りほぼ横ばいで推移している。
収入が多いことが一因として挙げられる。
ただし、図表21で見られるとおり、各国で
これに対して、邦銀では、低金利環境下で非
対総資産比金利収支の水準は大きく異なる。
金利収入の強化が経営課題として挙げられて
米銀が約3%程度と高い水準で推移してお
いるものの、相対的な割合では、2004年の時
り、一方、ドイツ、フランスの各行は、金利収
点でも欧米各行に比べ低水準となっており、
入の比率は高いものの同時に金利費用も高止
依然として金利収入への依存度が高く、非金
まりしており、金利収支の比率では、趨勢的
利収入割合の明確な向上は見られていない。
に日本を下回る水準となっている。
こうしたことから、邦銀の金利利
鞘も低金利環境の中、国内市場にお
ける競争の緩やかな米英各行には劣
後するものの、現時点では大陸欧州
各行並みの水準を確保していると言
える。すでに反転上昇傾向の現れて
いる金利局面において、市場金利に
対して硬直的である預金・貸出金金
利のALM、営業マネジメントの巧
拙や主要市場での競争状況、貸出先
ポートフォリオの差異などが、以後
の各行の金利収支動向に大きな影響
を与えそうである。
図表21 各行の対総資産比金利収支の推移
(%)
3.5
米国
3
2.5
英国
2
1.5
日本
1
0.5
0
フランス
ドイツ
2000
2001
2002
2003
2004(年)
(注)本稿で取り上げた各グループ(米6行、英4行、仏2行、独3行、日3行)
( の金利収支の対総資産比率を表示した。
(備考)各行アニュアルレポート等より信金中金総合研究所作成
図表22 各国の非金利収入比率の推移
(%)
75
フランス
70
(3)非金利収入比率
65
図表22は、各国における業務粗
60
利益に占める非金利収入の割合の推
55
移を示したものである。
フランス、ドイツの大陸欧州の両
国では60∼70%と米英両国に比べ
高くなっている。これは、両国が歴
史的に銀証分離の進んだ米英両国と
異なり、ユニバーサルバンキングを
ドイツ
英国
50
米国
45
40
35
日本
2000
2001
2002
2003
2004 (年)
(注)1.本稿で取り上げた各グループ(米6行、英4行、仏2行、独3行、日3
(1 行)の業務粗利益に占める非金利収入の比率を表示した。
( 2.業務粗利益算出にあたり、貸倒引当金繰入額は控除していない。し
(1 たがって、前掲各表(図表2、5、6、8)の計数とは一致しない。
(備考)各行アニュアルレポート等より信金中金総合研究所作成
研 究
41
5.今後の邦銀主要行による戦略展開
に対する含意
1980年代後半のバブル経済期以降、それ
こうした成長率の低下による国内成長力の
限界と企業の銀行離れは、邦銀においても根
本的な事業モデル見直しを迫っている。
これまで、本稿では米国、英国、ドイツ、
まで先進国中ではトップの経済成長率を誇っ
フランスおよび日本の大手銀行グループに
ていた日本も約15年におよぶ長期低迷に陥
ついて収益性を中心に比較してきた。この中
った。
で、こうした銀行の競争力に影響を与える要
図表23のとおり、今後はもはや欧州の成
熟国並の成長率が続くものと思われ、銀行部
因が以下のとおりいくつか浮かび上がって
きている。
門においても以前のような国内の高成長をて
①範囲の経済的利益(非金利収入の拡大)
こに規模や業績を拡大することは望むべくも
②競争制限的市場
ない。
③国際展開
また、こうした高成長国から成熟国への経
済ステージシフトは、バブル期以降の不良債
①範囲の経済的利益
権処理の波となり、これまでの成長の原動力
(非金利収入への依存)
であった株式持合や長期取引など企業と銀
ドイツ、フランス両国では、英米や日本の
行の関係を直撃した。このため、この間の規
銀行法体系と異なり、ユニバーサルバンキン
制緩和の流れもあり、大企業を中心にディス
グ制度を維持し、銀行グループが証券業務や
インターミディエーション(脱間接金融)が
保険業務など親和性の高い業務を兼営するこ
進行するなどその関係を大きく変容させつ
とを元々制限していない。このため、前節で
つある。
見たように(図表22)
、独仏各行では、相対的
に非金利収入への依存度は高くなっている。
図表23 各国・地域の実質GDP成長率
図表23および予測
(単位:%)
一方、非金利収入源が充実していると考え
1987
-1996
1997
-2006
2005
2006
られがちな米国の各行では非金利収入額は金
米国
2.9
3.3
3.5
3.3
ユーロ圏
−
2.0
1.2
1.8
利収支額を下回っている。内訳でも近年、貸
ドイツ
2.6
1.3
0.8
1.2
フランス
1.9
2.2
1.5
1.8
英国
2.4
2.8
1.9
2.2
日本
3.2
1.1
2.0
2.0
アジア
7.8
6.7
7.8
7.2
10.0
8.4
9.0
8.2
5.9
6.0
7.1
6.3
中東欧
0.9
3.7
4.3
4.6
中東
3.4
4.6
5.4
5.0
中南米
2.7
2.8
4.1
3.8
中国
インド
(注)2005、2006年は予測
(備考)IMF“World Economic Outlook”(2005年9月)
42
信金中金月報 2006.3
出債権の証券化による手数料収入が拡大して
いるとは言え、リテールを中心業務とする銀
行では、クレジットカード関連と小切手のク
リアリングや口座維持手数料など預金関連諸
手数料が大きな割合を占めている。
こうした非金利収入は、預金・貸出の伝統
的銀行業務による収入(金利収入)に比べて、
景気等外部環境変動との相関が小さく、収益
②競争制限的市場
の安定化につながると考えられており、
近年、
英国では、中小企業向融資のシェアの8割
邦銀が投信販売等による手数料収入を中心と
超 を4大 行(RBS、Barclays、Lloyds TSB、
した非金利収入強化への理論的根拠となって
HSBC Bank)が占めている。これは相次ぐ
いる。
合併により国内銀行の統合が進んだ結果では
(注)
5
Smith, Staikouras, Wood[2003]
でも、
信用リスクの大小(総貸出額)と金利水準が
あるが、こうした寡占状態は、これら4行に
大きな超過収益をもたらしたとされる(注)6。
ほぼ直結する金利収入の多寡に比べて、リテ
ただし、これにより中小企業向金融サービ
ール関連の手数料収入などは相対的に変動が
ス価格の高止まり、サービスの質的改善の停
小さく総収入の安定化につながるとしてい
滞などが生じたとされ、社会的批判と行政の
る。また、保険、不動産業務などは商業銀行
介入を招き、これら4大行は対応を余儀なく
業務との相関がより小さく収益の安定化効果
された。
が大きいとしている。
ただし、貸出による金利収入についても、
一方、ドイツでは、前述したとおりリテー
ルにおける貯蓄銀行および協同組合銀行の
借り手との情報の非対称やスイッチングコス
プレゼンスが大きい(注)7。特に貯蓄銀行につ
トの面から理論的には安定的収益源であるは
いては公的資本により設立されていることか
ずとしている。また、投資銀行業務や証券業
ら、採算より公益性を重視した業務展開を行
務など市場環境に直接的に左右される業務
っているとされ、金融サービスの価格形成を
は、よりボラティリティが高く、総収益の安
歪めているとの指摘もなされている。また、
定化は期待できないとしている。
協同組合銀行など小規模金融機関が多数存在
こうしてみると、グラニュラリティ(小口分
し、
過当競争による低利鞘が恒常化している。
散化効果)の働きやすいリテール業務に関し
こうした国内市場の構造問題がリテール業務
ては安定的収益源となるものの、投資銀行業
の 低 収 益 性 を 生 じ、HVBやCommerzbankな
務化しつつある大企業向け金融業務について
ど国内業務比率の高い銀行の低迷とDeutsche
は、従来以上に収益の変動幅が拡大する可能
Bankによる投資銀行業務への傾斜を招いて
性があり、リスクバッファーとしての自己資本
いる。
の厚さと業務ミックスを総合的に勘案した上
寡占により厚い利鞘をもたらす国内基盤が
でのリスク管理等経営戦略が必要とされる。
英国大手銀行の信用力の源泉となっており、
(注)5.R. Smith, C. Staikouras and G. Wood "Non-interest income and total income stability", Bank of England,
, 2003
6.2000年時点での4大行による中小企業向貸出シェア(金額ベース)は84%、同当座預金シェアは90%となっており、サ
ービス価格とサービスの質の問題から社会的批判が生じた。これを受け、調査を行った競争委員会(日本の公取委に該当)
によると、これら4大行は寡占による価格調整で3年間に7億2,500万ポンド(約1,500億円)の超過収益を得たと指弾された。
7.2005年3月末時点での非金融部門向け貸出金シェアでは、貯蓄銀行セクターが33.2%に達し、商業銀行のシェア(28.5%)
を上回り、国内最大の与信部門となっている。
研 究
43
一方で、国内市場の過当競争と公的金融によ
金融庁が2004年12月に発表した「金融改
る市場メカニズムの歪みがドイツ国内銀行の
革プログラム」では、主要行の不良債権比率
収益力を毀損していると言える。
半減などの目標に目処がついたことを受け、
金融機関の競争力強化を謳っている。
③国際展開
図表23で見たとおり、日本を含む先進諸
これに伴い、金融行政の透明化、利用者保
護の徹底、国際水準の金融システム構築など
国の経済成長率は限定的で、成熟市場ゆえ
が施策として挙げられている。
しかしながら、
国内での業容拡大もシェア拡大が伴わない限
これらが直接主要行の競争力につながるとは
り、こうした成長率が天井となるものと思わ
考えにくい。
日本経済は一時の低迷期を脱しつつあり、
れる。
したがって、アジアや中東欧など経済成長
企業業績の改善に伴い銀行の信用力・収益力
が期待できる地域への投融資が先進国の銀行
にも順風が吹き始めているようにも見える。
部門における成長ドライバーと見なされつつ
しかし、
国内経済の低成長化は避けがたく、
ある。例えば、図表11でも見たとおり、国
I-Sバランスも貯蓄超過・投資不足であるこ
内市場規模が限定的な欧州各行において海外
とに変わりはない。こうした中、欧米主要国
向け融資の割合が大きくなっている。
との比較により見出してきたように、銀行競
母国通貨として主要通貨である米ドルやユ
争力は、米英両国のように完全競争と寡占の
ーロを持つ欧米各行は、国際ローン市場や起
間で銀行に一定の独占利潤を付与できるよう
債市場において優位に立っているとも言え、
に半ば人為的にコントロールするか、大陸欧
邦銀の海外進出には信用力の向上による資金
州諸国のようにユニバーサルバンキングとし
調達力のアップや円のさらなる国際化による
て「範囲の寡占」を認めるなど国策としての
海外市場での流動性向上が必要と思われる。
産業振興策により決定される側面が多分にあ
また、1990年代の経済低迷期に金融当局
ると思われる。
主導のもと海外資産の多くを処分し、撤退を
日本では世論の反発なども予想され、政策
余儀なくされてきたことによる邦銀のプレ
による競争コントロールは難しいと思われ
ゼンス低下という問題もある。このため、欧
る。一方、大企業の直接金融への移行は、依
米銀にいまだ遅れをとっているとも言われ
然として大企業取引に収益の多くを依存する
るリスク管理手法や金融商品開発力などの
邦銀主要行の収益力に負の影響を与え続け
格差もあり、足元であるアジア市場を含め海
る。こうした中、邦銀主要行の取りうる戦略
外への本格的再展開には大きな困難が伴う
としては、信用力の向上などにより競争力回
とも思われる。
復を果たした上で国際展開を行い、アジアな
ど世界の成長センターへのアクセスを確保す
44
信金中金月報 2006.3
ること、規制緩和に伴う新規業務分野へ積極
トやクレジットスコアリングを活用し、審査
的に進出し、当該分野での既存勢力(証券会
の機械化・自動化が可能な短期小口資金貸付
社、保険会社等)との競争において総合金融
へこれまで以上に注力し、審査や管理コスト
機関としてのメリットを活かすことなどが考
のかさむ相対取引的な融資には相応の規模を
えられる。一方で、こうした高収益性分野へ
要求することも考えられる。
のシフトが遅れるような銀行グループは、巨
信用金庫をはじめとする地域金融機関で
大国内銀行として国内リテールや中小企業金
は、こうした「欧米化」ともいえる大手銀行
融などにより大きくコミットし、信用金庫や
の戦略展開に対して、従来より言われている
地方銀行など地域金融機関との競争を激化さ
ことではあるが、取引先との長期的な関係構
せる可能性が高い。
築にこれまで以上に注力する必要があろう。
こうした状況下で、主要行は今後、さらに
これにより、いたずらな価格競争を避け、安
資本収益率を意識した戦略を展開せざるを得
定した収益性を維持する戦略を探ることが可
ないと思われる。例えば、中小企業向貸出に
能となる。
おいても、システム投資によるインターネッ
〈参考文献〉
ECB "EU Banking Sector Stability", Oct. 2005
R. Smith, C. Staikouras and G. Wood "Non-interest income and total income stability", Bank of England, Working Paper no.198,
2003
C. Walkner, Jean-Pierre Raes “Integration and consolidation in EU banking - an unfinished business”, European Commission
Economic Paper Series No.226, Apr.2005
『The Banker』(2005年7月号)
各行アニュアルレポート等
研 究
45
研 究 超一流銀行の条件(前編)
信金中央金庫 総合研究所上席主任研究員
青木 武
(キーワード) 米国金融機関、生産性、ステークホルダー
(視
点)
日本の金融機関は、最悪の金融危機的な状況を脱し、本来の力をとり戻しつつある。今後
は、各金融機関とも平凡な業績の金融機関にとどまるのではなく、超一流と呼ばれる水準を
目指して努力していくことになるだろう。
米国には約9,000もの金融機関があるが、そのうちの本当のトップクラス、つまり長期間
成功している金融機関は、他の平均的な水準にとどまっている金融機関と、何が違うのであ
ろうか? 本稿では、米国金融機関約9,000行のうち、長期間高収益をあげ、繁栄している超
一流銀行14行をピックアップし、同じような規模を持ち、比較的類似した環境にありなが
ら平均的な水準にとどまっている比較対照銀行14行と比較することにより、超一流銀行の
条件について定量・定性分析を試みる。
(要
●
旨)
超一流銀行は強い経営理念をもち、しかもその理念を実行するためのメカニズムが機能し
ている。また、出資者だけでなく、顧客、職員、地域社会などのステークホルダーの利益
も重視している。
●
超一流銀行は、比較対象銀行と比べて貸出金利は高く、預金金利は低く、非金利収入は多
く、非金利費用(経費等)の割合は低い傾向がある。このどれかが突出している、という
よりは、どの点でも優れている。
●
超一流銀行は、比較対象銀行と比べ、収入に対する経費の割合が低いが、これは人件費な
どの水準が低いというよりは、同じ経費でもより多くの収入を得ている。つまり、生産性
(職員一人当たり収入等)がかなり高くなっている。
●
超一流銀行は、比較対象銀行ほど規模の成長を優先させていない。他金融機関の買収も行
うが、慎重に価格を査定し、地元のコミュニティにも配慮している。
(備考)本稿は、編集の都合上、2回に分けて発刊いたします。
46
信金中金月報 2006.3
目次
1 .調査手法
2 .どのくらい違うのか?−定量的分析−
(1)収益性
(2)安全性
(3)効率性
(4)コミュニティへの貢献
(5)成長性
前編
3 .定性分析
(1)経営・メカニズム
(2)職員満足
(3)顧客満足
(4)コミュニティからの評判等
後編
4 .考察
取材協力先(注)1
参考文献
参照した新聞・雑誌記事等
別紙 調査対象銀行のデータ(2004年12月末現在)
はじめに
超一流とまでは言えない「比較対象企業」を
比較し、超一流と一流の違いは何か、につい
1990年代の米国のビジネス書ベストセラ
て徹底して調査している。その具体的な結果
ーの一つに、スタンフォード大学のジェリー・
などについては、同著自体を参照していただ
ポラス、ジム・コリンズ著の“Built to Last”
きたいが、強い企業理念を持つと同時に、絶
(邦題「ビジョナリー・カンパニー」
)がある。
えず進化を遂げること、さらにそうした基本
これは、「長期間繁栄しており、尊敬されて
理念を実行するメカニズムとして、強い企業
いるような企業は、そうではない企業と比較
文化、大胆な目標、試行錯誤でもとにかくや
して何が違うのか?」について研究・調査し
ってみるという進取の気性、自分のためでは
た、興味深い著作である。同著における調査
なく企業を作るために働くリーダー等が必要、
方法もユニークかつ説得力がある。
同著では、
という研究結果となっている。
50年以上の歴史があり、産業界から尊敬さ
本稿は、同様の研究を米国の金融機関に絞
れている18社の「ビジョナリー・カンパニー」
って行うことはできないか、ということが出
と呼ばれる超一流企業と、それらと同じよう
発点となっている。米国には約9,000もの金
な背景を持ち、類似した業界で同じような長
融機関があるが、そのうち比較的長期間成功
い歴史をもち、
一流の優れた企業ではあるが、
している金融機関は、他の平均的な業績にと
(注)1.本稿作成にあたり、巻末にあるとおり、超一流銀行の経営者や職員の方々に貴重な時間を割いていただき、多大なご協
力をいただいた。この場をお借りしてお礼申し上げたい。
研 究
47
どまっている金融機関と、何が違うのか?に
保険公社のデータベースによりデータが入
ついて調査を試みた。日本の金融機関も、最
手可能な期間の最初と最後、つまり1992
悪期は脱し、今後は、超一流の金融機関を目
年12月末と2004年12月末のいずれも、総
指していくことになるだろう。その際の戦略
資産利益率(ROA)が1.5%以上であるこ
策定に、本稿がいささかでもお役に立てば幸
とを第一条件とした。2004年の米国金融
甚である。
機関全8,975行のROAの単純平均は1.03%、
1.調査手法
中間値は1.01%である。全行のROAを並
べてみて、丁度上位20%に相当する点が
まず、成功している金融機関を定義する必
1.5%である。つまり、全体的に収益性が
要がある。第一に、成功しているからには、
高いと言われる米国金融機関にとっても、
財務的な業績が優れている必要がある。金融
1.5%というROAは十分に高く、成功して
機関の健全性にとって収益は重要であること
いる銀行と呼ぶにふさわしい。もっとも、
は言うまでもなく、さらに、金融機関とはい
一時的に高い収益を達成することはさほど
え企業であるからには、出資者のために利益
困難でもないが、長期間高いレベルを保つ
をあげ、企業価値を上げなければならない。
ことは難しい。よって、データが入手でき
ただし、それは管理できないようなリスクを
る一番古い1992年末と、直近の2004年末
とり、一時的に大きな収益を得ることを意味
のいずれもROAが1.5%の金融機関を対象
しない。また、未知の要素が大きい新設銀行
とした。さらに、たまたま1992年と2004年
ではなく、長期間サバイバルしている実績の
の2年間だけROAだけ高かった銀行を排除
ある、つまりある程度の歴史のある銀行で
す る た め、1992年∼2004年 ま で の13年 間
あることが望ましい。さらに、米銀の多くは
のROAの平均が1.5%を下回る銀行を排除
資産規模の小さなコミュニティバンクである
した。
が、あまりに規模が小さい金融機関の場合で
②比較的新しい新設銀行が、勢いのある間、
は、日本の金融機関にとって参考になりにく
高い収益率を稼ぐことは可能だろう。
また、
いことから、ある程度の資産規模も必要と思
一人のカリスマ的な創業者兼経営者の活躍
われる。加えて、米国特有のクレジットカー
で、10∼20年の間、高い収益率を維持す
ド専業銀行や産業銀行の場合は、日本の金融
ることも可能だろう。ただし、1933年の大
機関にとって直接的には参考になりにくいか
恐慌、第2次世界大戦、そして1980年代の
ら、これらを除外することとする。よって、
米国金融危機をサバイバルし、なおかつ現
次のような超一流銀行の条件を設定した。
在でも高いROAを達成することは容易で
①超一流の銀行であれば、まず、収益的に成
はない。このため、本稿における超一流銀
功していることは不可欠である。連邦預金
行の条件として、大恐慌のあった1933年よ
48
信金中金月報 2006.3
り前に設立されていることを条件とした。
う。これをもって、机と椅子を持っているこ
③大恐慌より前に設立されている、という
とが超一流の条件であることを「発見」して
ことは70年以上もの歴史のある金融機関
も無意味である。なぜなら、超一流ではない
であることを意味する。この70年間の間、
銀行もオフィスには机と椅子があるからであ
安定的に収益を上げ続けることは重要で
る。このため、超一流の銀行を比較する対象
あるが、70年もかかっていまだに小規模
としての銀行を比較対象銀行として選定する
にとどまっているのであれば、超一流の銀
必要がある。比較対象銀行の条件は次のとお
行とは言い難い。また、あまりに小さな金
りである。
融機関の場合は、日本の読者にとって必ず
①比較対象銀行は、超一流銀行には及ばない
しも参考にならない。このため、2004年、
までも、それなりの収益性を上げている必
1992年とも、総資産は3億ドル(約330億
要がある。なぜなら、三流の銀行と超一流
円(注)2)を超える金融機関を対象とした。
銀行を比較しても、超一流銀行は少なくと
④さらに、日本の金融機関と比較して、ビジ
も二流以上である理由がわかるだけで、超
ネスモデルが大きく異なっていれば、やは
一流がなぜ二流や一流ではなく、超一流な
り参考となりにくいことから、米国特有の
のかはわからない。よって、比較対象企業
銀行、つまりクレジットカード専業銀行、
は、十分に優良な銀行、少なくとも1992年、
産業銀行等は、収益性が高い場合でも除外
2004年のいずれも赤字ではなく、ROAは
した。
おおむね0.5∼1%前後であることを条件と
このような条件を設定した結果、2004年
した。
12月末時点でデータが入手可能な全金融機
②比較対象銀行は、超一流銀行と境遇が似て
関8,975行のうち、わずか0.16%にあたる14
いる銀行である必要がある。同じような境
行が対象となった。全金融機関数の0.16%
遇の銀行なのに、片や超一流、片やまずま
ということは、日本の全金融機関を426行庫
ずの銀行になっているのはなぜか?を探る
(2005年4月1日現在の銀行+信用金庫数)と
のが本稿の目的だからである。よって、超
すると、該当するのは0.7行庫のみ、という
一流銀行の各14行について、比較対象銀
まさに超一流と呼ぶにふさわしい優良銀行で
行はそれぞれの歴史の長さ、規模、地域環
ある。
境が比較的近い銀行を選定した。例えば、
ただし、この超一流銀行同士を比較して、
比較対象銀行はいずれも第二次世界大戦終
共通点を見出しても、超一流銀行がなぜ超一
了の年である1945年よりは設立が古い銀
流なのかはわからない。例えば、この14行
行であり、多くは1933年の大恐慌よりも
のいずれもオフィスには机と椅子があるだろ
古い銀行である。
(注)2.本稿では、$1=¥110換算している。
研 究
49
③規模的にも、超一流銀行と同様に少なくと
もカリフォルニア州を拠点としており、総
も2004年時点の総資産で3億ドル(330億
資産は約3,000億円である。両行とも設立は
円)以上の銀行とした。
1905∼1907年と古くからの歴史を持つ銀行
④ビジネスモデルについても、同様にクレジ
である。このように両行は共通した環境に
ットカード専業銀行等の特殊な銀行は除外
ある銀行といえるが、実際にROAを見ると、
した。
前者が後者を大きく上回っている。こうした
この結果、次の14行ずつ、計28行が本稿
差がどこから生じるのか、を可能な限り解明
の研究対象として選び出された(図表1)
。
図表1の左が超一流銀行、その右がその超
一流銀行に対応する比較対象銀行である。便
宜上、各銀行に番号をつけている。超一流銀
行は100番台、比較対象銀行は200番台であ
る。直接的な比較対象を示すのが下2桁の番
しようと試みるのが、
本稿の趣旨である。
(な
お、
[107-1]
、
[207-3]等の数字は巻末の参
照新聞・雑誌記事を示している。
)
2.どのくらい違うのか?―定量的分
析―(注)3
号である。例えば、2列目のロングビーチ商
まず、超一流銀行と比較対象銀行が、同じ
工銀行(102)は、カリフォルニア州を拠点
ような環境で育ちながら、どこがどのくらい
とした総資産約3,600億円の銀行である。一
異なるのか、について分析してみたい。
方、同行に対応するメカニクス銀行(202)
図表1
超一流銀行
名称
比較対象銀行
2004年 ROA
(%)
名称
2004年 ROA
(%)
ケミカル(101)
1.79
第一国法信託(201)
0.31
ロングビーチ商工(102)
1.71
メカニクス(202)
1.03
シチズン(103)
1.61
第一海洋(203)
0.56
アソシエイト(104)
1.61
スカイ(204)
1.29
第一金融(105)
1.53
北方市民(205)
1.19
パーク(106)
1.75
ユニザン(206)
0.48
フィフス・サード(107)
1.80
チャーターワン(207)
0.27
S&T(108)
1.75
第一ソース(208)
0.90
モンロー(109)
1.51
エドワーズビル(209)
1.09
ウエスト(110)
1.80
シチズン信託(210)
0.82
アラスカ第一(111)
1.71
バナー(211)
0.81
リージェンシー貯蓄(112)
2.50
ノースショア(212)
0.46
ワシントンS&L(113)
1.83
連邦第三S&L(213)
0.62
ローズデールS&L(114)
1.59
ブラッドフォード(214)
0.47
平均
1.75
0.74
(備考)信金中金総合研究所作成
(注)3.データ出典は特に断りがない場合、連邦預金保険公社(FDIC)データベース。各行の詳細なデータは巻末の別紙を参照
50
信金中金月報 2006.3
(1)収益性
り、有意な差ではないが、超一流銀行の方
①金利収入
がやや貸出資産を獲得できており、その結果
まず、金融機関の基本的な収入の源である
運用利回りがやや高くなっている可能性もあ
金利利鞘についてみると、図表2のとおり、
る(注)5。一方の貸出金利回りについては、超
超一流銀行は運用利回りが高く、調達利回り
一流銀行が単純平均で6.06%、比較対象銀行
が低く、結果として金利利鞘が厚い、という
が5.80%と(注)6、有意な差ではないものの、
収益構造の基本がしっかりしていることがわ
やはり超一流銀行の方がやや高い貸出金利を
かる。一方、比較対象金融機関は、運用利回
課すことができている。その理由としては、
りは全金融機関平均並みであり、調達利回り
③住宅ローンよりも金利の高い事業性ローン
が高く、その結果として利鞘が薄くなってい
や消費者ローンが多い、または④ローンの種
る(注)4。
類にかかわらず金利が高い、ことが考えられ
まず、運用利回りについては、優位な差と
る。実際、貸出金の内容については、超一流
は言えないものの、超一流銀行の方が比較対
銀行がやや貸出金における事業性資金の割合
象銀行よりも高い傾向にある。金融機関の運
が高く、比較対象銀行は住宅ローンが多いと
用利回りが高い、ということは、①債券運用
いう傾向がある(図表3)
。もっとも、米国
よりも貸出の比率が高い(つまり預貸率が高
では住宅ローンを売却することが珍しくない
い)、または②貸出金利が高い、のいずれか
ため、年末の貸出金の残高だけで実際の融資
または両方が考えられる。実際、預貸率は超
活動の実態を判断することは困難である。
一流で93.0%、比較対象で89.9%となってお
このように、超一流銀行の金利収入が多い
図表3 2004年12月末の貸出金の内訳
1 (単純平均)
図表2 2004年12月の利鞘の状況
(%)
6.00
(%)
70.0
5.00
60.0
4.00
50.0
3.00
2.00
30.0
1.00
20.0
0.00
事業性
40.0
運用利回
超一流(単純平均)
調達利回
比較対象
(単純平均)
金利利鞘
全金融機関
(加重平均)
住宅
個人
10.0
0.0
超一流
比較対象
全金融機関
(注)4.本稿では、諸比率を計算するための数値を合計してから比率を算出する場合を「加重平均」、銀行ごとに比率を計算し
て、その比率を単純に平均した場合を「単純平均」と称している。加重平均の方が米銀業界全体としての傾向をつかめるが、
大規模金融機関の影響を強く受ける。単純平均の場合は、金融機関の規模が反映されないため、「典型的な米国の銀行」に
近い数値となる。
5.2グループの平均の差の有意水準については、90%でt検定をしている。巻末の別紙参照
6.この項目に関しては、比較対象銀行のうち、チャーターワン銀行は異常値として除外している。
研 究
51
理由としては、
①貸出の比率(つまり預貸率)
②非金利収入
が高く、さらに②貸出金の利回りが高く、こ
次に、収入源について、上記のような金利
れは③金利が比較的高い事業性の貸出が多い
収入だけでなく、手数料収入などの非金利収
ためと考え得ると同時に、④貸出金自体の金
入が米銀の成功の秘訣とも言われている。実
利も高いことが考えられる。つまり、ホーム
際に、超一流銀行の非金利収入が割合として
ランのような決定的な要素があるわけではな
多いのかどうかを見ると、図表4のようになる。
く、様々な項目において、少しずつであるが、
米銀の非金利収入は、特定の銀行、主に大
超一流銀行は比較対象銀行を上回っており、
銀行に集中している。2004年12月末の米銀
それらが積みあがって金利収入が多い、とい
8,975行のうち、わずか12行が全非金利収入
う結果となっている。
の50%を稼いでいる。このため、非金利収入
一方、調達利回りについては、超一流銀行
を見る場合、金融機関の規模を勘案した加重
は比較対象銀行よりも有意に低い水準となっ
平均の場合と、比率を単純に平均した単純平
ている。預金の内訳をみると、預金における
均では様子が大きく異なる。大銀行における
リテール預金の割合が超一流銀行で86.1%、
非金利収入が大きいため、
加重平均にすると、
比較対象銀行で85.0%、全金融機関平均で
全金融機関の収入のうちの40%以上は非金
82.5%と、両グループ間で有意な差はない。
利収入となる。ただし、銀行ごとに比率を計
ただし、預金のうち金利を付与しない当座預
算してそれを単純に平均すると、非金利収入
金などの割合は超一流銀行で18.5%、比較対
の収入における割合は17%程度にとどまり、
象銀行で11.0%、全金融機関平均で15.6%と
中間値だと15%となる。つまり、典型的な
なっており(いずれも単純平均)
、超一流銀
米国金融機関の場合は、非金利収入は全体の
行は比較対象銀行よりも有意に高い水準にあ
収入の6分の1程度である。超一流銀行の場
る。つまり、超一流銀行は、顧客サービスな
合、14行中圧倒的に規模が大きなフィフス・
どが優れているため、営業基盤が強く、当座
サード銀行の非金利収入が50%と多いため、
預金に代表される無金利の決済性預金を多く
獲得できている。比較対象銀行とはいえ十分
図表4 収入合計に対する非金利収入の割合
(%)
45.0
に成功している銀行なので、リテール預金を
40.0
集められないほど営業基盤が弱いわけではな
35.0
いが、無金利の決済性預金を多く集められる
ほどは強くはなく、超一流銀行と比較すると
高金利で預金を集めている傾向があるとも考
えられる。
30.0
信金中金月報 2006.3
比較対象
20.0
全金融機関
15.0
10.0
5.0
0.0
52
超一流
25.0
加重平均
単純平均
加重平均にすると大きくなるが、単純平均に
ト銀行が有利となりやすい。こうしたことか
すると、比較対象金融機関とほとんど差はな
ら、超一流銀行は経費率が低いはずである。
く、全金融機関の平均よりもやや高い程度
米国では、経費率の計算は次のとおり、総
である。ただし、これは非金利収入が重要で
収入に対する金利費用以外の費用の割合とな
はないことを意味しない。なぜなら、これは
っている。
金利収入と合わせた総収入合計と比較しての
非金利収入の相対的な高さだからである。例
経費率=
非金利費用
金利収入−金利費用+非金利収入
えば、職員1人あたりの非金利収入額を計算
つまり、分母が預金平残ではなく、総収入
すると、超一流銀行で4万8,000ドル、比較対
となっている。ここでいう総収入の計算上、
象銀行で2万9,000ドルと、超一流銀行の方が
金利費用を引く理由は、金利収入は市場金利
66%も高くなっている。つまり、超一流銀
の変動で大きく変動するため、ネット化して
行は、金利収入も多いため、金利収入の多さ
利鞘のみ収入と見なしている。この経費率に
と比較して非金利収入が特別に多いわけでは
ついては、超一流銀行は42.2%、比較対象銀
ないが、比較対象銀行と比較すると、やはり
行は66.8%、全金融機関平均で77.3%となっ
かなり高いといえる。
ている(いずれも単純平均)
。つまり、平均
なお、非金利収入の内訳の中では、預金関
的な金融機関では、粗利の3/4は経費として
連手数料がやや高く、また「その他非金利収
使ってしまい、最終的な利益は1/4が残るこ
入」が高い。
「その他非金利収入」の内訳は
とになる。ただし、このように全金融機関平
不明であるが、多くの場合は、関連子会社と
均の経費率が高い理由は、米国の金融機関の
の連結ベースで含まれる収入がここにあた
大部分が小規模だからであり、金融機関の規
る。よって、超一流銀行は、連結子会社にお
模によりウエイト付けした加重平均にすると
いて、様々な収入を得ている場合が多いとい
経費率は58%までに下がる。いずれにして
える。例えば、フィフス・サード銀行(107)
も、超一流銀行の多くは経費率が圧倒的に低
においては、決済業務関連など様々な子会社
く、超一流銀行を超一流にしている最大の要
をもっており、これが相当な非金利収入源と
因の一つがこの低い経費率である。経費が少
なっている。
ない分だけ、収入のうち利益として残る分が
多くなり、結果としてROAは高くなる。
③経費
日本でも、米国でも、金融機関の経費のう
金融業務はコモディティビジネスと言わ
ち主要かつ最大のものは人件費である。よっ
れ、差別化が難しい業務である。どの銀行の
て、超一流銀行の経費率が低い、ということ
商品も似たり寄ったりであるため、銀行間の
は、人件費率も低いはずである。超一流銀行
競争は価格競争になりやすく、つまり低コス
は、比較対象銀行と比較して単に安月給なの
研 究
53
か、それとも同じ給料でも職員がよく働くの
図表5 人件費比率の比較
で収入や預金量と比較して人件費が相対的に
45.0
低くなるのか、またはその両方なのかを調査
40.0
してみると、次のような結果となる。まず、
(%)
35.0
30.0
2004年12月の超一流銀行の一人当たり人件
25.0
費の単純平均は571万円相当($1=¥110)
、
20.0
比較対象銀行は565万円と、わずかながら超
一流銀行の方が高くなっている。
少なくとも、
超一流銀行が安月給というわけではない。次
に、総収入(金利収入−金利費用+非金利
39.5
36.3
22.4
15.0
10.0
5.0
0.0
1.6
2.3
1.8
超一流2004.12 比較対象2004.12 信用金庫2004.3
人件費/総収入
人件費/預金
収入)および預金量(末残)に対する人件費
するに同じ給料でもよりよく働く人を雇って
の割合を見ると、図表5のようになる。参考
いると言ったほうが正確である。
までに、2004年3月期の信用金庫のデータも
なお、預金量比較で見ても、超一流銀行の
比較している。超一流銀行は、収入のうち約
方が比較対象銀行よりも人件費率が低いが、
22%を人件費として支払っているが、比較
その違いは総収入比較の場合ほど顕著ではな
対象銀行は36%を支払っている。また、預金
い。このことから、日本でよく使われる預金
量と比較しても超一流銀行の方がやや人件費
量を分母とした経費率や人件費率は、実際に
率が低い。このことから、次のようなことが
は大きな重要な違いを、小さな違いとしか表
言えるだろう。まず、超一流銀行は必ずしも
さないという問題を暗示している。
安月給というわけではなく、人件費が絶対水
経費率(非金利費用/総収入)が低いこと
準として低いわけではない。ただし、収入に
は、このように超一流銀行と比較対象銀行の
おける人件費の割合が低く、つまり、同じ人
違いにおける顕著な特徴である。図表6にも
件費をかけた場合、比較対象銀行よ
図表6 ROAと経費率(2004年12月)
(%)
りも多くの収入を得ていることを意
3.00
味している。実際、人件費1ドルを
2.50
かけた場合に得られる総収入額の単
較対象銀行2.8ドルと大きく異なっ
ている。このように、超一流銀行は
ROA
純平均は、超一流銀行4.8ドル、比
2.00
1.50
超一流
比較銀行
1.00
人件費の水準が低いというよりは、
0.50
生産性が高いため、同レベルの人件
0.00
0.00 10.00 20.00 30.00 40.00 50.00 60.00 70.00 80.00 90.00 (%)
経費率
費でも高い収入を得られている。要
54
信金中金月報 2006.3
あるとおり、超一流銀行で経費率が60%を
ROAの差の1.01%となる。
)
。これを見ると、
超えている銀行はなく、比較対象銀行で経費
超一流銀行は、金利収入が多く、金利費用は
率が50%を下回っている銀行もない。超一
少なく、貸倒引当は少なく、非金利収入が多
流と比較銀行の大きな差の要因の一つは、超
く、非金利費用は少ない。もちろん利益が多
一流銀行の多くは経費をよく管理している、
くなるため、支払う税金は多くなり、その分
という点にある。経費を管理できる経営者、
はマイナスとなる。このように、超一流銀行
そして行内の諸制度が、超一流となるための
が比較対象銀行よりも優れている点は、単に
重要な条件の一つといえる。
運用成績がよい、といった単一の理由による
以上の収益性の違いを総括したのが図表7
ものではなく、主に貸出金などからの金利収
である。2004年12月末の単純平均ベースで
入が高くかつ預金金利支払いなどの金利費用
の超一流銀行のROAは1.75%、比較対象銀
が低いと同時に、手数料収入などの非金利収
行は0.74%と、1.01%ポイントの差がある。
入が高くかつ経費などの非金利費用が低く、
この差がどこから来るのかを図示したものが
さらに不良債権が少ないという5つの要素に
この図表7である(グラフでは、費用項目は
より優れた結果を出していることがわかる。
マイナス表示にしている。例えば、金利費用
が+0.41%ということは、超一流銀行は総資
産に対する金利費用が対象金融機関よりも
(2)安全性
不良債権が少ないことが、超一流の条件で
0.41%ポイント低い、ということ。つまり、
あることは容易に想像がつく。実際、不良債
グラフの数値を合計すれば、両グループの
権および償却額の貸出金等に対する割合を示
図表7 ROAの分析
(%)
0.60
0.50
0.41
0.40
0.41
0.25
0.20
0.05
0.00
0.01
0.00
-0.20
-0.40
-0.60
-0.61
-0.80
金利収入
金利費用
貸倒引当 非金利収入 非金利費用 証券売益
税金
特別利益
研 究
55
した図表8を見ると、超一流、比較対象とも、
含まれているためである。対象銀行にもカリ
全金融機関平均よりも不良債権等の割合が少
フォルニアの銀行はあるが、こちらはバブル
なく、特にまだ米国金融機関の破綻が多くあ
の影響をほとんど受けなかったサンフランシ
った1992年当時は、平均よりも大きく下回
スコ近郊の銀行であることも影響している。
っており、安定的な資産の健全性が成功の鍵
超一流、対象銀行とも平均よりは不良債権
であることがわかる。ただし、超一流銀行が
の比率はかなり低い傾向があり、両グループ
常に比較対象銀行よりも不良債権の割合が
間で有意な差はない。つまり、資産の質は超
低いわけではなく、1992年においてはむし
一流と一流の差、というよりも、金融機関と
ろやや高かった。もっとも、これは14行中、
して成功するためには当然必要な前提条件で
超一流銀行には1990年代初頭の不動産バブ
あるとも言える。ただし、僅差ではあるが、
ルの影響を受けた南カリフォルニアの銀行が
超一流銀行は不良債権比率が現在は低く、こ
図表8 不良債権・償却額の貸出金に対する
1 比率
(%)
れが低い償却・引当負担へとつながっている。
(3)生産性
4.50
4.00
先述のとおり、超一流銀行と比較対象銀行
3.50
との最大の違いは、その生産性にあるように
3.00
2.50
思われる。そこで、
職員1人あたりの収入(金
2.00
利収入−金利費用+非金利収入)を見ると、
1.50
図表9のようになる。超一流銀行は少ない職
1.00
員数で多くの収入を得ることができており、
0.50
0.00
1992
超一流(単純平均)
2004
比較対象(単純平均)
全金融機関
(加重平均)
しかもその生産性はこの12年間で飛躍的に
上昇している。一方、比較対象企業の生産性
図表9 常勤職員一人当たり収入
(千ドル)
300
250
200
1992年
150
2004年
100
50
0
56
超一流単純平均
信金中金月報 2006.3
比較対象単純平均 全金融機関中間値 全金融機関加重平均
はあまり改善していない。全金融機関を見る
このように、法令の遵守が徹底し、金融機
と、中間値ではやや上昇、平均では大きく上
関に期待される公的な役割を、その期待を上
昇している。これは、特に大銀行の生産性が
回るほど達成するためには、まず財務的に余
この12年間に飛躍的に上昇しているからで
裕がある金融機関の方が、
より果たしやすい、
ある。ただし、超一流銀行のうちトップ10
ということは言えるだろう。また、超一流銀
クラスの大銀行は1つだけであり、その他の
行は地域のコミュニティに貢献しているから
多くは中堅銀行である。超一流銀行は、規模
こそ、地域での評判がよく、それが低コスト
にかかわらず生産性が高く、しかもそれが大
での預金調達などの収益面で貢献している可
きく改善しているところに成功の秘訣があり
能性もある。
そうであり、かつ超一流と普通の銀行との違
いの決定的な要因の一つとなっていると考え
られる。
(5)成長性
成長性については、両グループの1992年
∼2004年までの12年間の平均総資産成長率
(4)コミュニティへの貢献
(それぞれの単純平均の幾何平均)を見ると、
米国には、地元のコミュニティに貸出を行
超一流銀行で11.9%、比較対象銀行で15.2%
っているか、低所得者層に対して不当に差別
であり、有意な差ではないものの、意外なこ
的な扱いをしていないかどうかを検査する
とに比較対象銀行の方が超一流銀行を上回っ
CRA検査がある。その結果は公表されてお
ている。ただし、全金融機関加重平均は6.6%
り、4段階の格付けがされる。この格付けを
であり、いずれのグループも平均以上の成長
数値におきかえ、4を最高、3を合格、2を不
率を遂げている金融機関が多い。2桁成長率
合格、1を最低の格付けとして、超一流、比
を遂げた金融機関は、それぞれ14行中、超
較対象銀行それぞれ14行の直近検査の比較
一 流 で5行、 比 較 対 象 で8行 と な っ て お り、
をしてみると、平均は超一流で3.3、比較対
比較対象銀行に多い。ROAが低い比較対象
象で3.1であり、
有意な差とは言えない。なお、
銀行の方が成長率は高い、ということは、成
いずれも優良な銀行であるため、合格を示す
長にはリスクが伴うため、比較的成長志向の
最高位か合格の格付けのみであり、不合格で
強い銀行はROAが安定しない、ということ
ある3∼4番目の格付けはなかった。ただし、
も考えられる。また、成長のためのインフラ
過去3回の検査結果に広げて見てみると、超
投資などを行っているため、
経費が高くなり、
一流銀行では過去3回の検査中、1回でも最
その結果ROAは低くなっているのかもしれ
高位を獲得した銀行は、14行中半数の7行あ
ない。
るのに対し、比較対象では14行中2行のみと
なっている。
なお、銀行は上場すると、株主からのプレ
ッシャーから、企業を成長させようとする傾
研 究
57
向があると一般的には言われるが、超一流・
拠地とした総資産約1.5兆円規模の大型地方
比較対象の両グループとも、上場と総資産成
銀行であるが、アソシエイト銀は期間中21
長率との間には明確な関連は見られない。
回、スカイ銀は32回もの買収を行っている。
米銀の有力な成長手段の一つが合併・買収
また、フィフス・サード銀(107)
、チャー
であるが、超一流銀行、比較対象銀行とも、
ターワン銀(207)も中西部を中心とした総
大規模な金融機関は合併・買収を多く行って
資産5∼6兆円規模の大型スーパー地銀であ
いる傾向がある。ただし、調査期間中(1992
るが、前者は対象期間中12回、後者は22回
∼2004年)、一回も合併・買収を行っていな
の買収を行っている。いずれも、比較対象銀
い銀行も超一流で6行、比較対象で2行あり、
行の方が、回数が多くなっていることから、
つまり内部成長を重視している金融機関も少
比較対象銀行は買収により手っ取り早く規模
なくない。
を拡大することを好む傾向があることがうか
アソシエイト銀行(104)
、その比較対象
がえる。
銀行であるスカイ銀行はいずれも中西部を本
〈取材協力〉
シチズン銀行
フィフス・サード銀行
パーク銀行
S&T銀行
〈参考文献〉
Collins, J. & Porras, J.I., Built to Last: Successful Habits of Visionary Companies, Harper Business, New York, 1994
青木武「米銀のビジネスモデル」『信金中金月報』
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研 究
59
別紙
調査対象銀行のデータ(2004年12月末現在)
番号
101
銀行名
Chemical Bank and
Trust Company
本拠地州
総資産 国内店舗 職員数
ROA
(億円) 数(店) (人)
ミシガン
(単位は指示がない場合は%)
職員当り非
不良債 職員あた
平均総資 リスクア
リテール 無利息預金 非金利収入
ROE 運用利回り 調達利回 金利利鞘 預貸率 貸出金利回
金利収入額 経費率 権+償却 り収入 CRA検査 産成長率 セット自己
預金/預金 /預金 /総収入
(千ドル)
/貸出金 (千ドル)
(92−04) 資本比率
1,806
60
567
1.79
15.77
5.12
0.84
4.28
75.29
5.87
93.29
13.06
23.89
36.35
48.69
0.24
152
3
10.4
20.16
Farmers and Merchants
102
カリフォルニア
Bank of Long Beach
3,278
18
537
1.71
8.72
4.85
0.43
4.43
57.71
6.22
89.70
33.83
9.65
23.83
35.59
0.48
247
4
5.6
40.04
The Citizens National
103
Bank
メリーランド
1,345
23
229
1.61
17.72
5.24
0.88
4.36
98.73
5.62
91.85
31.97
13.67
32.53
44.28
0.10
238
3
7.9
13.90
Associated Bank,
104
National Association
ウィスコンシン 15,408
196
2,890
1.61
22.93
4.93
1.46
3.48 111.04
5.08
87.99
16.46
29.19
60.85
48.34
0.89
208
3
26.8
10.79
105
First Financial Bank,
National Association
オハイオ
1,909
37
488
1.53
27.93
5.62
1.63
3.99
94.82
5.80
82.27
18.20
34.96
68.22
53.41
0.76
195
4
6.6
10.76
The Park National
106
Bank
オハイオ
1,829
30
548
1.75
32.95
5.44
1.34
4.10
83.73
5.79
90.14
24.83
25.62
39.64
45.09
0.70
155
3
7.5
11.05
107 Fifth Third Bank
オハイオ
62,488
389 11,517
1.80
23.21
4.90
1.33
3.57 118.72
4.41
96.50
29.44
50.59 166.48
51.21
0.98
329
3
45.5
12.76
108 S&T Bank
ペンシルベニア
3,225
48
774
1.75
16.69
5.46
1.52
3.95 103.49
5.69
91.15
10.30
22.02
38.85
44.31
0.35
176
3
8.8
11.36
109 Monroe Bank & Trust
ミシガン
1,709
24
396
1.51
15.34
5.76
1.95
3.81
84.42
6.32
83.29
13.93
19.56
32.40
48.83
3.53
166
3
7.4
15.39
110 West Bank
アイオワ
1,253
10
129
1.80
21.71
5.08
1.42
3.66
82.88
5.74
77.68
21.74
18.25
61.71
31.29
0.22
338
3
10.5
11.63
First National Bank
111
Alaska
アラスカ
2,362
27
704
1.71
8.46
5.41
0.43
4.99
76.14
7.55
94.70
40.24
24.65
47.09
55.85
1.53
191
4
4.7
31.84
Regency Savings Bank,
112
イリノイ
A FSB
1,509
12
158
2.50
20.50
7.19
2.00
5.19
99.96
8.13
72.58
4.64
9.40
42.48
31.02
2.62
452
4
11.8
14.23
Washington Federal Savings
113
ワシントン
and Loan Association
8,294
115
749
1.83
12.31
5.94
2.38
3.56 114.82
6.64
73.41
0.00
4.52
15.85
19.25
0.25
351
3
8.4
26.86
635
8
77
1.59
8.37
5.58
1.67
3.90
99.67
5.95
81.23
0.31
2.58
7.52
34.06
0.19
292
3
5.2
37.68
単純平均
7,646
71
1,412
1.75
18.04
5.47
1.38
4.09
92.96
6.06
86.13
18.50
20.61
48.13
42.23
0.92
249
3.3
11.9
19.18
標準偏差
15,672
101
2,880
0.23
7.12
0.57
0.55
0.50
16.49
0.89
7.49
12.09
12.30
36.70
10.05
0.98
87.13
0.45
10.69
10.11
インディアナ
1,517
27
444
0.31
3.06
4.83
2.06
2.77
91.63
5.63
93.09
14.28
29.33
32.59
77.11
4.07
111
3
11.2
15.10
202 The Mechanics Bank
カリフォルニア
2,716
29
558
1.03
10.45
5.38
1.20
4.18
73.85
6.03
79.93
23.31
14.37
27.66
64.50
0.44
192
3
10.3
13.84
203 First Mariner Bank
メリーランド
1,320
25
535
0.56
8.59
5.63
1.96
3.67
91.86
6.35
83.21
19.16
30.97
31.30
83.39
0.77
101
3
42.8
10.15
204 Sky Bank
オハイオ
16,237
301
3,536
1.29
14.89
5.53
1.65
3.89 100.06
5.77
84.91
4.46
22.21
37.31
50.42
1.87
168
3
36.1
10.83
Citizens & Northern
205
Bank
ペンシルベニア
1,203
19
324
1.19
12.80
5.61
2.22
3.39
84.55
5.57
89.28
14.77
15.83
19.99
62.46
1.70
126
4
7.5
15.66
Unizan Bank, National
206
Association
オハイオ
2,821
44
574
0.48
4.53
5.27
2.32
2.95
98.79
6.38
86.22
10.17
21.97
33.88
62.96
1.99
154
3
15.5
13.69
オハイオ
55,982
668
8,128
0.27
2.02
1.78
0.64
1.14 115.96
5.18
92.03
14.04
29.49
22.15
59.65
0.57
75
3
22.8
10.53
208 1st Source Bank
インディアナ
3,819
64
1,055
0.90
8.44
4.97
1.54
3.43
79.63
5.94
89.33
13.51
37.66
59.00
70.75
1.35
157
3
8.0
13.93
The Bank of
209
Edwardsville
イリノイ
1,139
14
371
1.09
11.69
4.90
1.38
3.52
64.96
5.83
91.78
10.09
29.34
36.56
63.30
2.08
125
3
9.2
14.24
Citizens Bank and
210
Trust Company
ミズーリ
1,137
25
298
0.82
10.39
5.01
1.86
3.16
77.78
6.68
89.69
6.16
18.96
23.48
63.69
0.89
124
3
13.7
12.46
211 Banner Bank
ワシントン
3,181
53
778
0.81
9.02
6.15
2.24
3.91 106.36
5.34
68.47
12.11
14.86
22.30
67.11
0.87
150
3
18.5
11.26
North Shore Bank,
212
FSB
ウィスコンシン
1,956
40
452
0.46
4.42
4.71
1.66
3.05
92.95
4.94
85.44
8.09
20.09
27.85
79.57
0.64
139
3
6.9
20.40
Third Federal Savings and
213
オハイオ
Loan Association of Cleveland
9,033
42
973
0.62
6.52
4.92
2.83
2.09 101.54
5.80
76.35
2.03
11.77
22.41
59.02
0.53
190
3
6.9
14.34
439
6
73
0.47
5.08
5.21
2.16
3.05
78.69
0.00
80.13
1.95
5.13
8.42
71.59
0.34
164
3
3.5
13.52
7,322
97
1,293
0.74
7.99
4.99
1.84
3.16
89.90
5.39
84.99
11.01
21.57
28.92
66.82
1.29
141
3.1
15.2
13.57
14,094
0.97
0.53
0.76
13.55
1.56
6.67
5.97
8.60
11.15
8.55
0.97
32.15
0.26
1.574 △2.260
3.845
0.536
1.389
0.424
2.078 △0.239
1.873 △6.972 △1.023
4.355
40%
81%
32%
94%
19%
92%
114
201
207
Rosedale Federal Savings
メリーランド
and Loan Association
First National Bank &
Trust
Charter One Bank,
National Association
214 Bradford Bank
メリーランド
単純平均
標準偏差
2グループの差の検定
(t値)
差の有意水準
全金融機関平均
(単純平均)
90%t値
1.77
173
2,062
0.32
3.71
0.058 △0.480
0.126
9.648
4.682
5%
10%
36%
10
全金融機関平均
(加重平均)
データ出典:連邦預金保険公社(FDIC)
60
信金中金月報 2006.3
234
100%
100%
86%
96%
100%
100%
67%
100%
11.12
2.53
1.542 △0.796
2.013
85%
56%
93%
N.A.
21.34
1.03
10.20
5.59
1.53
4.07 502.53 N.A.
82.51
15.60
16.97
65.26
77.31
1.13
305 N.A.
1.29
13.27
5.02
1.49
3.53
81.63
17.03
40.78
96.80
58.04
1.36
237 N.A.
91.69 N.A.
6.6
13.21
調 査 地域別にみた日本経済の景況判断
−地域間の格差は大きいが、ほぼ全地域で緩やかな回復に向けた動き−
信金中央金庫 総合研究所研究員
丸山 順
(キーワード) 地域経済、地域の景況感、地域格差
(要
旨)
日本経済は緩やかながらも息の長い回復が続いている。設備投資が引き続き景気のけん引
役となっているほか、雇用・所得環境の改善により、個人消費も底堅さを増してきた。02
年1月を谷とする現在の景気拡大局面は1月で48か月に達し、
「バブル景気(拡大局面51か月)」
や「いざなぎ景気(57か月)
」を越える可能性が高まってきた。景気動向を地域別にみると、
東海地方など製造業の集積が厚い地域や大都市圏の景気が総じて堅調な反面、地方圏では回
復の遅れが指摘されている。ただ、弱含みの動きが続いていた北海道でも、05年後半には
持直しの動きがみられ、景気回復のすそ野が徐々に広がっている。
本稿では、全国を10の地域に分けて景気動向を分析してみた。各地域の景況判断は、以
下のように要約できる。
1 .北海道
2 .東北
3 .北関東・甲信越
4 .首都圏
5 .北陸
6 .東海
7 .近畿
8 .中国
9 .四国
10.九州
:景気は低調な推移が続く。ただ、観光など一部には明るさも
:製造業には持直しの動き。非製造業の低迷が景気回復の足かせ
:生産は緩やかに回復。個人消費も底堅く推移
:個人消費は底堅く、景気は全体として緩やかに回復
:生産の増加に支えられて、景気は緩やかに回復
:製造業がけん引し、景気は回復が持続。雇用情勢は最も良好
:生産に回復の兆し。個人消費も上向きつつあり、景気は緩やかに回復
:製造業をけん引役に景気は緩やかに回復。雇用は山陽と山陰で明暗
:低迷を脱し、緩やかな持直しの動き。生産活動は一進一退
:生産の持直しで景気は全体としても緩やかに回復。沖縄は観光が好調
(参考)本稿において原則とした地域区分
北海道
東北
北関東・甲信越
首都圏
北陸
東海
近畿
中国
四国
九州北部
九州
南九州
北海道
青森県
茨城県
埼玉県
富山県
岐阜県
滋賀県
鳥取県
徳島県
福岡県
熊本県
岩手県
栃木県
千葉県
石川県
静岡県
京都府
島根県
香川県
佐賀県
大分県
宮城県
群馬県
東京都
福井県
愛知県
大阪府
岡山県
愛媛県
長崎県
宮崎県
秋田県
新潟県
神奈川県
山形県
山梨県
福島県
長野県
三重県
兵庫県
広島県
高知県
奈良県
山口県
和歌山県
鹿児島県
沖縄県
(備考)本稿は2006年1月末時点のデータに基づき記述されている。
調 査
61
1.北海道―景気は低調な推移が続く。
ただ、観光など一部には明るさも
日本経済は、全体では踊り場を脱し、自律
の公共工事請負金額は05年も前年比6.4%減
少した。国・地方とも引き続き緊縮財政を余
儀なくされるとみられ、公共投資に依存しな
い経済構造への転換が求められている。
回復に向かいつつあるが、北海道は依然とし
企業の生産活動も停滞している。7∼9月
て低調な推移が続いている。ただ、観光など
の鉱工業生産は、前期比0.1%減と下げ止ま
一部には明るさもみえてきた。
りの兆しもうかがわれるが、前年比では4.6%
日銀短観の業況判断D.I.(全産業)をみる
減と大きく落ち込んでいる。業種別では、主
と、全国平均では再び水面上に浮上し、緩
力の食料品・たばこ工業(注)3が7∼9月に前期
やかながらも息の長い回復が持続している一
比4.5%増と3期ぶりに増加したが、前年比で
方で、北海道は大幅なマイナスが続いている
は8.9%減と7期連続で前年割れとなった。電
(図表1)。過去の景気拡大局面をみてみると、
気機械、金属製品といった業種も低迷状態を
バブル景気(86年11月を谷、91年2月を山と
脱しきれていない。
し、拡大局面51か月)においては、全国と
企業活動の低迷を反映して、雇用情勢も
北海道の業況判断D.I.はおおむね同じ軌跡を
厳しい状況が続いている。7∼9月の有効求
たどった。また、90年代の回復期には、北
人倍率(季調値)は、0.59倍と4∼6月(0.55
海道の業況判断D.I.が全国の水準を上回って
倍)から小幅改善したが、
全国平均(7∼9月、
さえいたことを考えると、2000年以降の北
海道の低迷ぶりは顕著である。
中小・零細企業の景況感を表す、信金中央
金庫総合研究所の中小企業景気動向調査をみ
ても(注)1、北海道の業況判断D.I.(総合)は、
図表1 日銀短観(業況判断D.I.)
(%ポイント)
50
40
30
0
9.6を下回る結果となった。北海道の企業マ
-10
インドは全般的になお冷え込んでいる。
-20
的に他地域よりも公共投資に依存する割合が
(注)
2
高く
、小泉政権下での緊縮財政の影響を
より強く受けたことが挙げられよう。北海道
全国
(全産業)
10
10∼12月でマイナス15.1と全国のマイナス
こうした格差の一因として、北海道は構造
予測
20
-30
バブル景気
-40
-50
85
北海道
(全産業)
87
89
91
93
95
97
99
01
03
(備考)1.シャドー部分は景気後退期
( 2.日銀、同札幌支店、内閣府資料より作成
05
(年)
(注)1.調査対象は信用金庫の取引先1万6,000社程度で、資本金は2,000万円未満の企業が約7割を占める。
2.域内総支出に占める、公的総固定資本形成(=公共事業費)の構成比をみると(県民経済計算、02年度)、全国平均の6.0%
に対し、北海道は11.2%と約2倍となっている。
3.北海道の製造業出荷額の業種別構成比は、食料・飲料等が41.4%と最も高い割合となっている(工業統計表、03年)。そ
の他では、石油・石炭(9.3%)、パルプ・紙等(8.2%)の割合が高い。
62
信金中金月報 2006.3
0.97倍)と比べると大きく見劣りする。7∼
05年9月末で前年比4.1%増加している。
9月の完全失業率(原数値)は5.2%と全国平
また、全国的な景気回復が北海道にも波及
均(4.3%)を大きく上回った。日銀短観の
する動きも散見される。日銀短観の設備投
雇用人員判断D.I.(過剰−不足)が12月に全
資計画(全産業)をみると、05年度計画は
産業で1となるなど、リストラの進展もあっ
前年比9.4%増となっており(04年度は8.0%
て、雇用の過剰感は薄れているものの、企業
増)
、企業の投資マインドは堅調に推移して
は新規採用には依然として慎重な構えを崩し
いる。
ていない。
来道者数の前年比が、04年半ばを境に回
この結果、個人消費も伸び悩んでいる。大
復傾向にあることも好材料だ(図表3)
。全
型小売店販売額(既存店ベース)は、7∼9
国的な消費回復の動きに加えて、05年7月に
月に前年比3.9%減と4∼6月(△3.3%)から
世界遺産に登録された知床や、ユニークな動
マイナス幅が拡大した。全国でも7∼9月は
物の展示が好評な旭山動物園(旭川市)の効
2.4%減となったことからすると、北海道が
果が出ているとみられる。観光客の増加は、
際立って落ち込んでいるわけではない。
ただ、
小売など観光関連企業の回復につながるだけ
全国的には、雇用情勢の改善→所得増→個人
消費の回復という好循環が機能し始めている
のに対して、北海道では、そうした自律回復
の動きはまだまだ期待できそうにない。景気
ウォッチャー調査の先行き判断D.I.(家計動
向関連)も、10∼12月に49.7と横ばいを示す
50を下回った。
一方で、住宅投資は回復に転じている。住
宅着工戸数は、7∼9月に前年比5.6%増と4期
ぶりにプラスへ転じ、10月(42.0%増)と11
月(56.1%増)には大幅な伸びを示した(図
図表2 北海道の住宅着工戸数
(%)
60
前年比寄与度(分譲一戸建て)
前年比寄与度(分譲マンション)
50
前年比寄与度(給与住宅)
40
前年比寄与度(貸家)
前年比寄与度(持家)
30
総数(前年比)
20
10
0
-10
-20
-30
-40
04/1 04/4 04/7 04/10 05/1 05/4 05/7 05/10
図表3 来道者数の推移
(千人)
1,400
るが、内訳をみると、持家や分譲一戸建てが
1,200
ョンの好調が最近の増加をけん引している。
こうした住宅投資の増加もあって、信用金庫
の貸出金は個人向けを中心に底堅い伸びを維
持している。個人向けのうち、住宅ローンは
(%)
1,600
表2)。前年に落ち込んだ反動も一因とみられ
低調な反面、札幌を中心に貸家と分譲マンシ
(年月)
(備考)国土交通省資料より作成
1,000
8
来道者数
(左目盛)
6
前年比
(右目盛)
4
2
800
0
600
-2
400
-4
200
-6
0
04/4
04/7 04/10 05/1
05/4 05/7 05/10
-8
(年月)
(備考)北海道観光連盟資料より作成
調 査
63
◇北海道の主要経済指標
①日銀短観・業況判断D.I.
04年
05年
(全産業)
−
−
△ 20.00 △ 18.00 △ 16.00 △ 20.00 △ 22.00 △ 17.00 △ 15.00 △ 12.00 △ 18.00
04/1Q
04/2Q
04/3Q
04/4Q
05/1Q
05/2Q
05/3Q
06/1Q
(製造業)
−
−
△ 8.00 △ 3.00
(非製造業)
−
−
△ 24.00 △ 24.00 △ 22.00 △ 27.00 △ 26.00 △ 20.00 △ 17.00 △ 17.00 △ 21.00
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
−
−
△ 42.10 △ 29.60 △ 20.70 △ 23.10 △ 39.20 △ 34.70 △ 18.90 △ 15.10 △ 36.10
(製造業)
−
−
△ 38.40 △ 22.10 △ 19.60 △ 11.40 △ 41.10 △ 35.80 △ 18.00 △ 10.00 △ 34.70
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
−
−
44.70
51.40
51.10
44.50
④鉱工業生産
−
−
△ 1.60
0.30
0.60
0.30
0.60 △ 5.50 △ 0.10
0.20 △ 0.20
0.40
0.30
0.50 △ 4.00 △ 4.60
(前期比)
(前年比)
0.20
0.00 △ 5.00 △ 7.00 △ 6.00 △ 9.00
05/4Q
46.10
50.80
50.80
(既存店、前年比)△ 5.10
△ 5.70 △ 5.60 △ 3.70 △ 5.20 △ 4.60 △ 3.30 △ 3.90
(百貨店、既存店、前年比)△ 5.90
△ 8.80 △ 5.80 △ 4.00 △ 4.90 △ 4.40 △ 2.50 △ 2.50
⑤大型小売店販売額
⑥有効求人倍率
(倍)
0.54
0.51
0.52
0.56
0.59
0.58
0.55
0.59
⑦完全失業率
(%)
5.70
6.90
5.60
5.30
5.40
5.90
5.00
5.20
5.00 △ 9.00 △ 12.70 △ 3.00
5.60
⑧住宅着工戸数
(前年比)△ 1.30
⑨信用金庫貸出金
(前年比)
0.70
0.70
0.90
1.30
0.70
0.40
1.70
0.40
(個人向け、前年比)
3.40
5.30
5.20
3.10
3.40
3.40
2.20
1.70
△ 1.60 △ 1.50 △ 0.50 △ 0.80 △ 0.60
0.50
0.00
(法人向け、前年比)△ 0.80
12.70 △ 6.30
1.00 △ 9.00
48.90
(備考)1.各経済指標の出所は以下のとおり。
(備考)1.①:日本銀行札幌支店、②および⑨:信金中金総合研究所、③:内閣府、④および⑤:北海道経済産業局、⑥:厚生労働省、
⑦⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.①と②の06年1Qは見通し
(3.③は月次D.I.の単純平均。⑥は年、四半期ともに月次計数(季調値)の単純平均
に、今後の動向が注目される。
2.東北―製造業には持直しの動き。
非製造業の低迷が景気回復の足かせ
企業の生産活動は、前年の水準を下回って
いるものの、緩やかな持直しに転じている。
7∼9月の鉱工業生産は、前期比0.2%増と2期
連続のプラスを達成した。東北地方で大きな
IT関連を中心に製造業は持ち直してきた
ウエイトを占める電子部品・デバイス(前期
ものの、非製造業は低迷が続いている。雇用
比2.3%増)や情報通信機械(8.8%増)がい
情勢は依然として厳しく、全般的な景気回復
ずれも2期連続でプラスとなったことが大き
には、なお時間を要するとみられる。
12月 調 査 の 東 北 の 日 銀 短 観・ 業 況 判 断
D.I.(全産業)は、マイナス10と9月調査(△
18)からは上昇したが、全国(5)の水準を
大きく下回っている。業種別にみると、製造
業(9月: △8→12月:6) は 大 幅 に 改 善 し、
4期ぶりのプラスとなったが、非製造業はマ
イナス20と停滞が続いている。より規模の
図表4 中小企業景気動向調査
4 (業況判断D.I.)
(D.I.)
0
-10
-20
-30
-40
小さい企業を対象とした、信金中金の中小企
-50
業景気動向調査(業況判断D.I.)でも、同様
-60
01
の傾向がうかがわれる(図表4)
。
64
信金中金月報 2006.3
予測
東北(総合)
東北(製造業)
02
03
(備考)信金中金総合研究所作成
04
05
06
(年)
い。約2割のウエイトを占める電子部品・デ
バイスの在庫循環図をみると(図表5)
、在
図表5 在庫循環図
4 (電子部品・デバイス、東北)
160
140
120
100
80
60
40
20
0
-20
-40
-60
-60
庫水準が適正かどうかの分岐点となる45度
在庫︵前年比、%︶
線を左上から右下に切り下げており、在庫調
整はすでに一巡している。今後は、シリコン
サイクル(半導体景気循環)の底入れに伴い、
IT関連の生産が増勢を保つと予想されるこ
とから、鉱工業生産全体でも緩やかな回復が
期待できよう。
ただ、日銀短観によると、05年度の東北の
設備投資計画は、前年比1.1%増と小幅な伸
2000年1月
2005年11月
-40
-20
0
20
出荷(前年比、%)
40
60
(備考)東北経済産業局資料より作成
びにとどまると見 込 まれている。04年 度 に
に比して出遅れている。7∼9月の有効求人倍
12.4%増と全国平均(5.5%増)を大幅に上回
率(季調値の平均)は、0.69倍と4∼6月(0.70
る高い伸びを示した反動とみられるが、電機
倍)から小幅低下した。月次データの推移で
関連以外の製造業の集積に乏しいことが東北
は、02年1月(0.38倍)をボトムとして回復傾
の生産や設備投資の動きを不安定にしている。
向にあったが、最近では勢いが鈍化している
前述したように、非製造業の停滞が東北の
(図表6)
。県別にみると、宮城・山形・福島
景気回復の足かせとなっている。日銀短観の
が比較的高水準で推移しているのに対し、青
非製造業の業況判断D.I.は、92年9月調査以降
森・岩手・秋田は厳しい状況が続いており、
マイナスで推移するなど、浮上の兆しがみら
東北内でも2極化している。南東北は、相対
れない。12月は9月に比べて5ポイント改善し
的に首都圏に近いという立地面でのメリット
たものの、その水準はマイナス20と
図表6 有効求人倍率(季調値)
全国平均(0)に大きく水を開けられ
1.1
た格好だ。うち、建設業はマイナス
1.0
25と他の非製造業と比べても低い
(倍)
東北
岩手
秋田
福島
0.9
青森
宮城
山形
0.94
0.8
水準にあるが、
東北は北海道と同様、
0.81
0.78
0.7
公共投資への依存度が高く(注)4、建
0.6
0.69
0.64
設業の低迷が全体の足を引っ張っ
0.43
0.4
ている。05年の公共工事請負金額も
0.3
前年比6.7%減少した。
0.2
00
この結果、雇用情勢の回復も全国
0.55
0.5
01
02
03
04
05
(年)
(備考)1.直近の数字は05年11月
( 2.厚生労働省資料より作成
(注)4.域内総支出に占める、公的総固定資本形成の構成比は、全国の6.0%に対し東北は9.1%(県民経済計算、02年度)
調 査
65
◇東北の主要経済指標
①日銀短観・業況判断D.I.
04年
05年
(全産業)
−
−
04/1Q
04/2Q
04/3Q
04/4Q
05/1Q
05/2Q
05/3Q
05/4Q
06/1Q
△ 15.00 △ 17.00 △ 14.00 △ 16.00 △ 22.00 △ 17.00 △ 18.00 △ 10.00 △ 13.00
(製造業)
−
−
(非製造業)
−
−
△ 27.00 △ 32.00 △ 28.00 △ 27.00 △ 26.00 △ 22.00 △ 25.00 △ 20.00 △ 21.00
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
−
−
△ 37.30 △ 33.00 △ 24.40 △ 25.20 △ 35.30 △ 31.00 △ 26.80 △ 17.90 △ 30.40
(製造業)
−
−
△ 27.60 △ 17.50 △ 12.70 △ 10.60 △ 33.10 △ 33.20 △ 21.90 △ 9.10 △ 26.60
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
−
−
47.60
50.20
44.00
45.60
45.10
④鉱工業生産
−
−
△ 0.50
1.60
1.70 △ 3.10 △ 1.20
1.40
0.20
7.20
7.20
7.60
(前期比)
(前年比)
5.40
3.00
7.00
10.00
49.20
1.00 △ 13.00 △ 9.00 △ 8.00
41.40
△ 2.30 △ 4.40 △ 3.20 △ 4.60 △ 4.80 △ 3.80 △ 3.80
(百貨店、既存店、前年比)△ 3.40
0.50 △ 5.00 △ 3.50 △ 5.40 △ 3.70 △ 2.80 △ 2.90
⑥有効求人倍率
(倍)
0.65
0.61
0.63
0.67
0.68
0.69
0.70
0.69
⑦完全失業率
(%)
5.40
6.20
5.70
5.10
4.70
5.60
5.20
4.70
(前年比)△ 0.60
△ 6.40
0.70
0.40
1.20
8.10 △ 7.70 △ 0.50
(前年比)△ 2.10
△ 2.20 △ 2.00 △ 1.60 △ 2.10 △ 1.60 △ 1.10 △ 1.50
⑧住宅着工戸数
⑨信用金庫貸出金
(個人向け、前年比)
0.00
(法人向け、前年比)△ 4.30
0.30
0.30
0.20
1.00
49.70
0.10 △ 2.20 △ 1.30 △ 2.70
(既存店、前年比)△ 3.60
⑤大型小売店販売額
6.00
0.00
0.20
0.00 △ 0.10
△ 5.00 △ 4.90 △ 3.90 △ 4.30 △ 3.20 △ 2.30 △ 2.50
(備考)1.各経済指標の出所は以下のとおり。
(備考)1.①:日本銀行仙台支店、②および⑨:信金中金総合研究所、③:内閣府、④および⑤:東北経済産業局、⑥:厚生労働省、
⑦⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.①と②の06年1Qは見通し
3.③は月次D.I.の単純平均。⑥は年、四半期ともに月次計数(季調値)の単純平均
4.③は新潟を含む。
が大きいと考えられる(注)5。足元では、雇用
庫の貸出金をみても、住宅ローンの残高は
環境の格差はやや縮小しているが、中長期的
05年9月末で前年比0.1%増とほぼ横ばいにと
には、工場の集積している宮城・山形・福島
どまり、個人向け全体では0.1%減にとどま
の3県と北東北との雇用環境の格差は、さら
った。また、不動産業向けの貸出は前年比
に拡大する可能性もある。
0.8%増と全国(13.8%増)を大幅に下回り、
大型小売店販売額(既存店ベース)は、7
∼9月に前年比3.8%減と依然として4%程度
のマイナスで推移している。家電販売など一
部に動意はみられるものの、個人消費は低迷
法人向け全体も2.5%減少した。
3.北関東・甲信越―生産は緩やかに
回復。個人消費も底堅く推移
状態を脱し切れていない。人口の大都市圏へ
製造業の集積が厚い北関東・甲信越は、生
の流出もあって、住宅投資も低調に推移して
産活動の持直しで景気は回復基調を取り戻し
いる。住宅着工戸数は、7∼9月に前年比0.5%
ている。雇用情勢も明るさを増していること
減と2期連続の前年割れとなった。他地域で
から、個人消費も底堅く推移しよう。
は好調なマンションの着工戸数も4.7%減と
落ち込んでいる。
こうした住宅投資の停滞もあって、信用金
日銀短観(全産業)をみると、首都圏を含
む関東・甲信越の業況判断D.I.は、プラス9
と9月調査(6)から3ポイント改善した。北
(注)5.04年の工場立地件数をみると、宮城(48件)、福島(36件)、山形(25件)の順に多い。逆に岩手(18件)、青森(16件)、
秋田(13件)は比較的少なかった(経済産業省「工場立地動向調査」より)。
66
信金中金月報 2006.3
関東・甲信越に限定した信金中金の中小企業
内経済への波及効果は大きいといえる。
景気動向調査をみると、業況判断D.I.は10∼
7∼9月 の 鉱 工 業 生 産( 含 む 首 都 圏 ) は、
12月でマイナス2.4と依然として水面下では
前期比0.3%減と2期連続で減少したが、10∼
あるが、全国(△9.6)の水準を大きく上回
11月の水準は7∼9月を1.6%上回っている。7
る結果となった(図表7)
。特に、製造業は
∼9月を業種別にみると、一般機械は前期比
10∼12月にプラス11.7と7∼9月(△3.6)か
1.1%増と3期連続でプラスとなったほか、電
ら大幅に改善、全地域で最高の水準を記録し
気機械も2.5%増加するなど、主要業種は回
た。小売業(△18.3→△22.2)だけは前回調
復している(注)6。企業収益の拡大や生産の底
査から悪化したが、北関東・甲信越の景況感
入れを受けて、企業の投資マインドも高まっ
は全般的に改善傾向が続いている。
ている。中小企業景気動向調査の設備投資実
県民経済計算(02年度)で、北関東・甲
施企業割合(製造業)をみると、北関東・甲
信越の域内総生産に占める産業別の構成比
信越は、36.7%と東海(36.6%)を上回り、全
をみてみると、製造業は28.0%と地域別では
地域で最も高い結果となっている(図表8)
。
東海(31.9%)に次いで2番目に高く、全国
製造業以外でも、北関東・甲信越は総じて
(19.7%)を大きく上回っている。県別でも、
底堅い。10∼12月の建設業の業況判断D.I.
(中
茨城(31.6%)
、
栃木(34.9%)
、
群馬(32.3%)
小企業景気動向調査)は、マイナス6.9と水
の3県は、県内総生産の3割以上を製造業が
面下だが、全国(△9.5)の水準を上回った。
占めていることから、製造業の回復による域
公共工事請負金額の推移をみると、05年に
図表7 中小企業景気動向調査
7 (業況判断D.I.、北関東・甲信越)
図表8 設備投資実施企業割合(製造業)
(D.I.)
20
10
0
全業種
小売業
建設業
製造業
卸売業
サービス業
不動産業
(%)
45
40
北関東・甲信越
35
-10
-20
30
東海
-30
近畿
25
-40
-50
20
全国
-60
-70
01
02
03
(備考)信金中金総合研究所作成
04
05
(年)
15
01
02
03
04
05
(年)
(備考)信金中金総合研究所作成
(注)6.製造業の出荷額全体に占める品目ごとの割合をみると、北関東・甲信越は、電気機械(23.5%)、一般機械(12.4%)、輸
送用機械(12.0%)などが高い(工業統計表、03年)。
調 査
67
は10.2%増加したが、これは04年10月に発生
(△4.9%)をピークに徐々に縮小している。
した新潟中越地震の復興需要から、新潟(05
大型小売店のうち、百貨店の売上が回復して
年は49.3%の増加)の請負金額が急増してい
いる。百貨店の販売額(既存店ベース)は、
ることによる。今後は、公共投資の押上げ効
7∼9月こそ前年比1.7%減と4∼6月からマイ
果は一巡しようが、北関東・甲信越の公共投
ナス幅が拡大したが、11月には4.4%増と04
資依存度(県民経済計算、02年度)は、3.7%
年2月(4.9%増)以来の高い伸びを記録した
と全国(6.0%)を下回り、
全地域で最も低い。
公共投資に過度に依存しない経済構造も、景
(図表9)
。
図表9 大型小売店販売額(既存店ベース)
気にプラスに働いている。
(%)
6
大型小売店販売額(北関東・甲信越)
雇用情勢も着実に改善している。7∼9月
4
百貨店販売額(北関東・甲信越)
の有効求人倍率は、1.10倍となった。2期連
2
百貨店販売額(静岡)
続の上昇で、節目となる1倍を5期連続で上
0
回った。県別では、茨城が0.86倍とやや低い
-2
水準となったが、群馬は1.47倍と都道府県別
-4
では愛知(1.69倍)に次ぐ高水準を記録した。
-6
個人消費にも回復の兆しがみえる。大型小
-8
売店販売額(既存店ベース)は、7∼9月に
-10
前年比2.8%減と依然として前年の水準を下
回っているが、マイナス幅は04年10∼12月
大型小売店販売額(静岡)
-12
04/1 04/4 04/7 04/10 05/1 05/4 05/7 05/10
(年月)
(備考)1.北関東・甲信越は静岡を含む。
( 2.関東経済産業局資料より作成
◇北関東・甲信越の主要経済指標
①日銀短観・業況判断D.I.
04年
05年
04/1Q
(全産業)
−
−
−
6.00
8.00
6.00
3.00
6.00
6.00
9.00
(製造業)
−
−
−
13.00
16.00
14.00
8.00
10.00
10.00
13.00
(非製造業)
−
−
−
1.00
2.00
1.00 △ 1.00
3.00
3.00
8.00
−
−
△ 25.20 △ 21.00 △ 14.90 △ 17.40 △ 25.00 △ 19.90 △ 12.30 △ 2.40 △ 11.40
△ 10.80 △ 4.20 △ 3.50 △ 2.50 △ 19.90 △ 14.20 △ 3.60
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
04/2Q
04/3Q
04/4Q
05/1Q
05/2Q
05/3Q
(製造業)
−
−
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
−
−
48.20
52.80
④鉱工業生産
−
−
0.70
0.90
1.00 △ 2.70
2.40 △ 0.20 △ 0.30
5.20
5.30
5.30
0.40
(前期比)
(前年比)
3.90
49.50
44.00
0.10
43.50
47.40
48.70
△ 2.30 △ 3.90 △ 2.70 △ 4.90 △ 4.70 △ 2.90 △ 2.80
(百貨店、既存店、前年比)△ 3.20
△ 1.00 △ 4.00 △ 1.90 △ 5.30 △ 4.70 △ 1.40 △ 1.70
⑥有効求人倍率
(倍)
1.00
0.92
0.97
1.04
1.09
1.06
1.09
1.10
⑦完全失業率
(%)
4.10
4.00
4.20
4.00
3.50
3.80
3.70
3.60
⑧住宅着工戸数
(前年比)
1.00
5.60 △ 12.40
9.00
4.90
5.50
11.00
5.00
⑨信用金庫貸出金
(前年比)△ 0.70
△ 1.80 △ 1.40 △ 1.00 △ 0.70 △ 0.30
0.10
0.10
0.10
0.20
(個人向け、前年比)
0.60
(法人向け、前年比)△ 2.20
0.80
0.70
0.50
0.60
0.30
06/1Q
11.70 △ 0.90
51.00
0.50 △ 0.80
(既存店、前年比)△ 3.50
⑤大型小売店販売額
05/4Q
△ 3.40 △ 3.30 △ 2.70 △ 2.20 △ 0.90 △ 0.80 △ 0.60
(備考)1.各経済指標の出所は以下のとおり。
(備考)1.①:日本銀行、②および⑨:信金中金総合研究所、③:内閣府、④および⑤:関東経済産業局、⑥:厚生労働省、
⑦⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.②の06年1Qは見通し
3.③は月次D.I.の単純平均。⑥は年、四半期ともに月次計数(季調値)の単純平均
4.①、④ともに首都圏を含む。③は新潟を除く。⑤は静岡を含む。⑦は新潟を除く。
68
信金中金月報 2006.3
住宅投資は堅調な推移が続いている。7∼
と、全産業の業況判断D.I.は、10∼12月でマ
9月の住宅着工戸数は前年比5.0%増と5期連
イナス14.1と、全国(△9.6)の水準を下回
続で増加した。特に、分譲住宅は、マンショ
っている。もっとも、7∼9月(△18.2)から
ン(41.8%増)
、一戸建て(27.5%増)とも
は大きく改善し、先行きもマイナス13.5と改
に好調で、28.5%増と5期連続で2ケタの増加
善が見込まれており、徐々に持ち直す方向に
率を記録した。05年8月に開業した「つくば
ある。
エクスプレス」により、沿線で駅周辺にマン
ここで、首都圏の域内総生産に占める産業
ションの建設が相次いでいることも、着工戸
別の構成比(県民経済計算、02年度)をみ
数を押し上げているとみられる。
てみると、全国と比べてサービス業、不動
景気の回復に合わせて、信用金庫の貸出
産業、卸・小売業などの割合が高い(図表
金も底入れしたようだ。05年9月末は前年比
10)
。サービス業の構成比は23.2%と全地域
0.1%増とわずかながら2期連続でプラスとな
で最も高く、特に、情報サービス、人材派遣
った。個人向けは住宅投資の堅調を反映して、
など成長分野である対事業所サービスのウエ
住宅ローン(2.5%増)が伸びている。また、
イトが他地域に比べて高いとみられ、人口の
不動産業が高い伸び(6.4%増)となったほか、
都心回帰の動きも相まって、首都圏では非製
生産の回復から製造業が下げ止まりつつある
造業が景気をけん引していると考えられる。
ことから、近く法人向けの貸出金も前年比で
全国10地域別の人口増加率をみると、04年
プラスへ転じる可能性がある。
までの5年間で、東北、四国が1.2%減少する
4.首都圏―個人消費は底堅く、景気
は全体として緩やかに回復
一方、首都圏は3.0%の大幅増加を記録して
図表10 域内総生産の産業別構成比(02年度)
(%)
100
首都圏には、大企業の本社機能が集中して
おり、人口の流入、地価の底入れもあって、
景気は全体として緩やかな回復を続けている
90
80
60
数字は発表されていないが、神奈川の業況判
50
40
28(全国12)
、非製造業がプラス10(全国0)
、
30
全産業がプラス18(全国5)といずれも全国
20
平均を大幅に上回っている。
10
ただ、首都圏も零細企業の回復は遅れてい
る。信金中金の中小企業景気動向調査をみる
0
9.0
23.2
20.2
6.7
6.3
対家計非営利
サービス
政府サービス
サービス業
運輸・通信業
70
と考えられる。日銀短観では、首都圏だけの
断D.I.をみてみると、12月で製造業がプラス
7.2
14.1
9.0
12.6
卸・小売業
13.6
電気・ガス
・水道
5.9
建設業
5.4
首都圏
金融・保険業
6.6
15.9
14.3
不動産業
製造業
19.7
鉱業
全国
農林水産業
(備考)内閣府資料より作成
調 査
69
図表11 地域別の人口増加率
北海道 東北
北関東
首都圏 北陸
・甲信越
東海
近畿
中国
四国
九州
全国
96年
0.1
0.0
0.3
0.4
0.1
0.3
0.2 △ 0.1 △ 0.1
0.2
0.2
97年
0.0
0.0
0.2
0.5 △ 0.0
0.3
0.3 △ 0.1 △ 0.1
0.1
0.2
98年 △ 0.1 △ 0.0
0.2
0.6 △ 0.0
0.4
0.3 △ 0.1 △ 0.1
0.1
0.2
99年 △ 0.1 △ 0.1
0.0
0.4 △ 0.2
0.2
0.2 △ 0.1 △ 0.2
0.1
0.2
00年 △ 0.1 △ 0.1
0.2
0.6 △ 0.1
0.3
0.1 △ 0.2 △ 0.2
0.1
0.2
96∼00年 △ 0.2 △ 0.2
1.0
2.6 △ 0.2
1.6
1.1 △ 0.5 △ 0.7
0.5
1.1
01年 △ 0.1 △ 0.1
0.3
0.7 △ 0.0
0.4
0.2 △ 0.0 △ 0.1
0.1
0.3
02年 △ 0.2 △ 0.3 △ 0.1
0.5 △ 0.2
0.3 △ 0.0 △ 0.2 △ 0.3
0.0
0.1
03年 △ 0.2 △ 0.3
0.0
0.6 △ 0.1
0.3
0.0 △ 0.1 △ 0.2 △ 0.0
0.1
04年 △ 0.3 △ 0.4 △ 0.1
0.4 △ 0.2
0.2 △ 0.0 △ 0.2 △ 0.4 △ 0.0
0.1
3.0 △ 0.7
1.6
0.8
00∼04年 △ 0.8 △ 1.2
0.3
0.3 △ 0.7 △ 1.2
0.2
(備考)人口は各年の10月1日時点。総務省「人口推計」より作成
いる(図表11)
。
をみると、電気機械(17.2%)や輸送用機械
非製造業の中でも、特に、不動産関連が好
(15.9%)の割合が高い。鉱工業の生産・出荷・
調である。首都圏は、丸の内や汐留などに代
在庫の状況をみると、電子部品・デバイスの
表される都心の再開発の活発化から、05年9
在庫調整は全国的にすでに一巡している。今
月の市街地価格指数が前年比2.9%上昇する
後はシリコンサイクルの底入れによるIT関
など、バブル崩壊の代名詞の一つでもあった
連の需要増や、世界経済の拡大持続から、首
地価の下落に歯止めがかかり、上昇へ転じて
都圏の生産活動も徐々に増勢を取り戻そう。
。中小企業景気動向調査でも、
いる(図表12)
雇用情勢は着実に改善している。7∼9月
不動産業の業況判断D.I.は10∼12月でプラス
の有効求人倍率は、1.04倍と節目となる1倍
1.1と水面上に浮上している。
を2期連続で上回った。ただ、地域別にみる
また、商業用不動産だけでなく、住宅投資
も堅調に推移している。7∼9月の住宅着工
図表12 市街地価格指数(前年比)
(%)
20
戸数は前年比6.7%増と2期連続で増加した。
15
内訳では、分譲マンションが20.3%増と3期
10
連続で増加したほか、貸家も12.4%増と2期
5
連続で増加した。
中小企業景気動向調査でも、
0
建設業は10∼12月でマイナス6.9と全国(△
9.5)を上回っている。
製造業の生産活動も、底入れから回復に向
かうことが期待できよう。首都圏の製造業出
荷額(工業統計表、03年)の業種別構成比
70
信金中金月報 2006.3
全国
-5
-10
-15
首都圏
-20
-25
90/3 92/3 94/3 96/3 98/3 00/3 02/3 04/3(年月)
(備考)日本不動産研究所資料より作成
◇首都圏の主要経済指標
①日銀短観・業況判断D.I.
04年
05年
04/1Q
(全産業)
−
−
−
04/2Q
6.00
04/3Q
8.00
04/4Q
6.00
05/1Q
3.00
05/2Q
6.00
05/3Q
6.00
05/4Q
9.00
14.00
8.00
10.00
10.00
13.00
1.00 △ 1.00
3.00
3.00
8.00
06/1Q
(製造業)
−
−
−
13.00
16.00
(非製造業)
−
−
−
1.00
2.00
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
−
−
△ 29.50 △ 22.00 △ 19.30 △ 19.90 △ 20.20 △ 18.60 △ 18.20 △ 14.10 △ 13.50
△ 20.80 △ 14.60 △ 13.90 △ 10.70 △ 10.10 △ 12.70 △ 11.90 △ 6.90 △ 8.20
(製造業)
−
−
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
−
−
52.40
52.70
④鉱工業生産
−
−
0.74
0.95
1.04 △ 2.70
2.44 △ 0.21 △ 0.31
5.21
5.30
5.30
0.41
(前期比)
(前年比)
3.92
51.10
46.20
0.11
46.70
50.90
51.30
0.53 △ 0.83
(既存店、前年比)△ 3.40
△ 1.90 △ 3.90 △ 2.50 △ 5.00 △ 3.60 △ 2.40 △ 2.30
(百貨店、既存店、前年比)△ 2.60
△ 0.80 △ 3.30 △ 2.00 △ 4.10 △ 2.90 △ 1.10 △ 0.50
⑤大型小売店販売額
⑥有効求人倍率
(倍)
0.84
0.77
0.80
0.84
0.94
0.95
1.02
1.04
⑦完全失業率
(%)
4.60
4.80
4.50
4.40
4.50
4.60
4.60
4.20
⑧住宅着工戸数
(前年比)
3.20
9.70 △ 8.10 △ 2.80
1.30
6.72
⑨信用金庫貸出金
(前年比)△ 0.20
0.10
0.40
(個人向け、前年比)
1.20
(法人向け、前年比)△ 1.20
15.47 △ 1.60
△ 0.10 △ 0.30 △ 0.20 △ 0.20
4.30
2.80
1.80
0.20
54.70
1.20 △ 4.10 △ 4.60 △ 4.50
△ 2.40 △ 2.20 △ 1.50 △ 1.20
2.30
2.60
2.90
(備考)1.各経済指標の出所は以下のとおり。
(備考)1.①:日本銀行、②および⑨:信金中金総合研究所、③:内閣府、④および⑤:関東経済産業局、⑥:厚生労働省、
⑦⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.②の06年1Qは見通し
3.③は月次D.I.の単純平均。⑥は年、四半期ともに月次計数(季調値)の単純平均
4.①、④ともに北関東・甲信越を含む。
と、埼玉(0.86倍)と千葉(0.82倍)は全国
のプラスを記録した。05年後半については、
平均(0.97倍)を下回っている。神奈川は1.04
株価の上昇による資産効果が個人消費を押し
倍と首都圏全体と同水準であり、首都圏の雇
上げた可能性もあろう。
用情勢は東京(1.45倍)がけん引している。
雇用情勢の改善を主因に、個人消費は底堅
さを増している。大型小売店販売額(既存
5.北陸―生産の増加に支えられて、
景気は緩やかに回復
店)の前年比は、7∼9月に2.3%減と引き続
製造業の生産増加に支えられて、景気は回
きマイナスとなったが、マイナス幅は直近の
復している。ただ、個人消費や住宅投資の伸
ピークである04年10∼12月(△5.0%)から
び悩みで、回復テンポは緩慢なものにとどま
は縮小傾向にある。これは、都心の百貨店販
っている。
売が上向いていることが主因とみられる。7
北陸の景況感をみると、製造業の回復から
∼9月の百貨店販売額(既存店)は前年比0.5%
改善傾向にある
(図表13)
。日銀短観
(全産業、
減と、マイナス幅は4∼6月(△1.1%)から
業況判断D.I.)は、12月にプラス3と水面上
大きく縮小した。月後半に気温が低下した
に転じ、
全国(5)とほぼ同水準まで上昇した。
11月には冬物衣料の売行きが好調だったこ
業種別では、製造業がプラス6と3期連続で
ともあって、百貨店販売額が前年比4.4%増
プラスを維持している。信金中金・中小企業
の大幅増を記録、大型小売店販売額は2.0%
景気動向調査の10∼12月調査の結果をみる
増と、うるう年で嵩上げされた04年2月以来
と、総合の業況判断D.I.はマイナス14.0と全
調 査
71
図表13 北陸の景況感の推移
図表14 北陸の鉱工業生産指数
14 (四半期ベース、季調値)
(D.I.)
10
予測
0
-10
日銀短観
(業況判断D.I.、全産業)
-20
-30
-40
中小企業景気動向調査
(業況判断D.I.、総合)
-50
-60
01/3 01/9 02/3 02/9 03/3 03/9 04/3 04/9 05/3 05/9 06/3
(年月)
(備考)日銀金沢支店、信金中金総合研究所資料より作成
(2000年=100)
135
130
125
120
115
110
105
100
95
90
85
80
75
70
01
鉱工業生産
一般機械
電子部品・デバイス
化学
繊維
02
03
04
05 (年)
(備考)中部経済産業局資料より作成
国(△9.6)を大きく下回ったが、製造業は
むなど、
製造業が北陸経済をけん引している。
プラス0.5と全国(△1.0)を上回るなど、製
非製造業でも、景況感は徐々に底上げさ
造業は中小・零細企業まで回復の動きが浸透
れている。日銀短観の業況判断D.I.は、12月
している。
にプラス1と9月(△11)から大幅に改善し
北陸は、製造業のウエイトが比較的高く、
た。不動産(9月:20→12月:56)が大幅に
製造業の回復が域内経済に与える影響は大き
上昇したほか、サービス業(△12→2)がプ
い(注)7。生産の動きをみると、7∼9月の鉱工
ラスへ転じたことが主因である。先行き判断
業生産は前期比1.8%増と3期連続で増加、前
は、不動産が0に反落すると見込まれている
年比でも3.4%増と堅調な伸びを示した(図
ため、非製造業全体でもマイナス5と再び水
表14)。ウエイトの高い上位4業種では、繊
面下に転じることが予想されているが、景気
維が減少の一途を辿っているが、他の3業種
回復のすそ野は徐々に広がっている。サービ
(一般機械、電子部品・デバイス、化学)は
ス業などの改善から、非製造業も改善傾向を
おおむね回復しており、北陸の生産を押し上
維持できよう。
げている。製造業の生産・営業用設備判断
北陸の雇用情勢は良好に推移している。7
D.I.(日銀短観、過剰−不足)は、12月にプ
∼9月の有効求人倍率は、1.13倍と前期(1.19
ラス2と低水準にとどまっており、設備の過
倍)から低下しているが、5期連続で節目と
剰感も薄れている。設備投資計画をみても、
なる1倍を超えている。企業の徹底的なリス
製造業は05年度に前年比6.4%増と大幅に増
トラ実施と景気回復により、労働需給は逼
加した04年度(35.6%増)に続き増加を見込
迫に転じている。日銀短観の雇用人員判断
(注)7.域内総生産に占める製造業の構成比は、北陸は23.9%と東海(31.9%)、北関東・甲信越(28.0%)に次いで高い(県民経済計算、
02年度)。
72
信金中金月報 2006.3
D.I.(過剰−不足)は、12月にマイナス11と9
に51.2と3期連続で50を上回っており、個人消
月(△4)から雇用の不足感が一段と強まっ
費は徐々に回復へ向かうことが期待できよう。
た。先行き判断もマイナス13となっており、
住宅投資も伸び悩んでいる。住宅着工戸数
雇用情勢は売り手市場の様相を呈している。
は、7∼9月に前年比13.1%減と3期連続で前
一方、北陸は、公共投資への依存度が比較
年の水準を下回った。内訳をみると、持家
的高い(注)8ことが景気の足かせとなっている。
(△15.2%で4期連続のマイナス)と貸家(△
05年の公共工事請負金額は、富山(前年比
20.9%で3期連続のマイナス)が減少傾向に
3.9%増)と福井(16.4%増)の増加で北陸
あるのに対し、分譲住宅は83.0%増と大幅に
全体でも1.6%増加したが、公共投資のトレ
増加、全体を下支えしている(分譲住宅のう
ンドは引き続き削減方向となる公算が大き
ち、マンションは149.4%増)
。
い。建設業の景況感は、低調な推移が続きそ
前述したように、日銀短観では不動産の業
況判断D.I.が12月でプラス56と、04年後半以
うだ。
雇用情勢は相対的に良好だが、
個人消費は、
降のマンションブームを追い風に活況を呈し
大型小売店販売額
(既存店ベース、
福井を除く)
ていたが、中小企業景気動向調査による不動
が7∼9月に前年比3.6%減少するなど、伸び悩
産業の業況判断D.I.は、10∼12月でマイナス
んでいる。ただ、景気ウォッチャー調査の先
23.2と規模の違いによる格差が著しい。ただ、
行き判断D.I.(家計動向関連)は、10∼12月
マンション建設の好調を受けて、信用金庫の
◇北陸の主要経済指標
①日銀短観・業況判断D.I.
04年
05年
(全産業)
−
−
04/1Q
04/2Q
04/3Q
04/4Q
05/1Q
05/2Q
05/3Q
△ 4.00 △ 4.00 △ 5.00 △ 6.00 △ 4.00 △ 4.00 △ 4.00
8.00
(製造業)
−
−
−
−
△ 15.00 △ 20.00 △ 15.00 △ 15.00 △ 7.00 △ 10.00 △ 11.00
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
−
−
△ 30.60 △ 25.50 △ 21.80 △ 22.00 △ 28.50 △ 25.60 △ 22.60 △ 14.00 △ 22.30
△ 15.70 △ 11.20 △ 8.40 △ 10.30 △ 20.90 △ 7.80 △ 5.90
(製造業)
−
−
−
−
52.00
④鉱工業生産
−
−
(前期比)
(前年比)
3.90
52.80
4.00
52.20
2.00 △ 1.00
7.00
6.00
06/1Q
3.00 △ 2.00
(非製造業)
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
13.00
05/4Q
46.80
46.50
49.70
48.00
1.10
1.70 △ 0.30 △ 1.20
0.30
2.60
1.80
4.30
6.00
1.50 △ 0.90
1.30
3.40
4.00
(既存店、前年比)△ 2.30
0.00 △ 2.80 △ 2.80 △ 3.70 △ 4.30 △ 4.60 △ 3.60
(百貨店、既存店、前年比)△ 2.30
△ 1.30 △ 2.70 △ 1.80 △ 3.20 △ 4.30 △ 1.40 △ 2.70
⑤大型小売店販売額
⑥有効求人倍率
(倍)
1.00
0.90
0.97
1.04
1.09
1.16
1.19
1.13
⑦完全失業率
(%)
3.70
4.50
3.70
3.30
3.40
4.10
3.30
3.00
(前年比)
1.10
△ 3.10 △ 2.70
2.90
7.40 △ 1.90 △ 11.40 △ 13.10
⑧住宅着工戸数
⑨信用金庫貸出金
(前年比)△ 0.70
(個人向け、前年比)△ 0.30
(法人向け、前年比)△ 1.80
6.00
4.00
1.00 △ 5.00
0.50 △ 11.70
49.60
△ 1.50 △ 0.70 △ 0.70 △ 0.70 △ 0.70 △ 0.80 △ 0.70
0.70
0.10 △ 0.70 △ 0.30 △ 0.30 △ 0.40 △ 0.90
△ 2.60 △ 1.70 △ 1.50 △ 1.80 △ 2.70 △ 3.30 △ 2.70
(備考)1.各経済指標の出所は以下のとおり。
(備考)1.①:日本銀行金沢支店、②および⑨:信金中金総合研究所、③:内閣府、④および⑤:中部経済産業局、⑥:厚生労働省、
⑦⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.①と②の06年1Qは見通し。①の04年4Q以前は旧ベース
3.③は月次D.I.の単純平均。⑥は年、四半期ともに月次計数(季調値)の単純平均
4.⑤は福井を除く。⑦は新潟を含む。
(注)8.域内総支出に占める、公的総固定資本形成は、北陸は8.7%と全国(6.0%)を上回る(県民経済計算、02年度)。
調 査
73
図表15 信用金庫の法人向け貸出金の推移
15 (北陸)
(%)
3
2
製造業向け(前年比寄与度)
建設業向け(前年比寄与度)
卸売業向け(前年比寄与度)
小売業向け(前年比寄与度)
不動産業向け(前年比寄与度)
各種サービス向け
(前年比寄与度)
その他(前年比寄与度)
法人向け計(前年比)
ただ、東海でも零細企業までは、景気回復
効果が浸透していない。信金中金・中小企業
景気動向調査の業況判断D.I.をみると、10∼
12月は総合でマイナス6.4と7∼9月(△12.7)
1
からマイナス幅は大きく縮小しているが、依
0
然として水面下にある。全国の10∼12月(△
9.6)を上回ってはいるものの、格差はさほど
-1
大きくない。製造業はプラス2と水面上に転
-2
じたが(7∼9月は△4.4)
、先行きは再びマイ
-3
ナス(△3.4)が予想されており、企業の姿勢
-4
04/3
04/6
04/9
04/12
05/3
05/6
(備考)信金中金総合研究所作成
05/9
(年月)
は慎重である。自動車産業などを中心に大企
業の収益は好調を続けているものの、自動車
法人向け貸出金のなかでは、不動産業向けの
部品などの関連企業は厳しい競争にさらされ
みがプラスに寄与している(図表15)
。製造
ていることなどが、中小・零細企業の景況感
業は、生産活動の持続的な回復に伴って、資
がそれほど改善していない原因と考えられる。
金需要が底入れする可能性もあろう。
6.東海―製造業がけん引し、景気は
回復が持続。雇用情勢は最も良好
企業の生産活動は再び増勢を強め、東海の
経済を大きく押し上げている。
鉱工業生産は、
04年後半に一時的に停滞したものの、05年
には再び増勢を強めている(図表16)
。7∼9
企業の生産活動は好調に推移、景気は回復
月こそ0.8%増と伸び率はやや鈍化したが、3
を続けている。雇用情勢は全地域で最も良好
期連続で増加を示し、前年比では5.1%増と
で、個人消費も緩やかに増加している。住宅
02年7∼9月以来13期連続でプラスとなった。
投資も堅調に推移するなど、東海は日本経済
をリードする地域となっている。
日銀短観12月調査によると、東海の業況
判断D.I.は、全産業がプラス11、製造業がプ
ラス17、非製造業がプラス5と高水準を維持
した。9月調査比ではいずれも横ばいだが、
図表16 鉱工業生産の推移(東海、季調値)
(2000年=100)
135
130
125
110
105
景気押上げ効果が一巡したことを考慮すれ
95
ば、東海経済の好調さが改めて確認されたと
85
01
信金中金月報 2006.3
自動車総合(除く二輪自動車、3か月移動平均)
115
100
74
鉱工業生産(除く自動車総合)
120
愛 知 万 博(05年3月25日∼9月25日 ) に よ る
いえよう。
鉱工業生産
90
02
03
(備考)中部経済産業局資料より作成
04
05
(年)
業種別にみると、約3割のウエイトを占める
10∼12月で36.6%と高水準に達している(7
自動車総合(除く二輪自動車)は、02年の
∼9月は36.1%)
。生産の拡大が設備投資の増
景気回復をけん引したあと、上下の波を描い
加を呼び、それが生産の拡大をもたらす相乗
ているものの、トレンドとしては引き続き拡
効果が地域全体で生まれている。
大傾向にある。また、05年春以降は、一般
雇用情勢も改善が著しい。7∼9月の有効
機械や電気機械が増勢を強め、全体の生産を
求人倍率は1.37倍と全地域で最も高い水準と
押し上げている。自動車関連だけではなく、
なった。県別にみると、愛知・三重が抜きん
幅広い業種で生産が拡大している。東海の製
出ている(足元の低下には愛知万博の終了
造業出荷額は地域別では最もシェアが高く、
が影響)
。岐阜・静岡は地域内では低いが、
引き続き日本経済全体のけん引役となろう
東海4県はすべて全国の水準を上回っている
(図表17)。
(図表18)
。また、完全失業率(原数値)も7
設備投資も好調である。日銀短観の設備
∼9月で3.3%と低水準が続くなど、雇用情勢
投資計画をみると(静岡を除く3県、12月調
は逼迫気味である。
雇用情勢の好調を主因に、
査)、自動車、一般機械、電機をリード役に、
景気ウォッチャー調査も現状判断D.I.(家計
05年度は前年比16.5%増と04年実績(9.6%
動向関連)が10∼12月に52.2と3期連続で50
増)を大きく上回る高い伸びが見込まれてい
を超えた。先行き判断も53.3と4期連続で50
る(静岡は、04年度17.0%増、05年度27.9%
を超えている。
増)。投資上積みの動きは、零細企業にも波
個人消費も徐々に底堅さを増している。大
及している。中小企業景気動向調査におけ
型小売店販売額(既存店ベース)は、7∼9
る、製造業の設備投資実施企業割合をみると、
月に前年比1.0%減と依然としてマイナスで
図表17 製造業出荷額の地域別割合(03年)
はあるが、マイナス幅は縮小傾向にある。特
(%)
100
90
北海道(2.0)
東北(5.8)
に、東海の中心部である名古屋市では、前年
図表18 有効求人倍率(季調値)
80
北関東・甲信越
(13.6)
70
首都圏(19.7)
1.6
60
北陸(2.7)
1.4
1.42
1.33
1.2
1.17
1.14
1.0
0.99
50
東海(23.6)
40
(倍)
1.8
30
近畿(15.4)
0.8
20
中国(7.6)
0.6
10
0
(備考)信金中金総合研究所作成
四国(2.7)
北九州(3.7)
南九州(3.3)
0.4
00
全国
岐阜
愛知
01
東海
静岡
三重
02
03
1.59
04
05
(年)
(備考)1.直近の数字は05年11月
( 2.厚生労働省資料より作成
調 査
75
◇東海の主要経済指標
①日銀短観・業況判断D.I.
04年
05年
04/1Q
(全産業)
−
−
−
04/2Q
7.00
04/3Q
14.00
04/4Q
13.00
05/1Q
8.00
05/2Q
11.00
05/3Q
11.00
05/4Q
11.00
06/1Q
(製造業)
−
−
−
13.00
21.00
20.00
11.00
16.00
17.00
17.00
(非製造業)
−
−
−
1.00
4.00
5.00
5.00
5.00
5.00
5.00
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
−
−
△ 22.50 △ 19.30 △ 16.00 △ 14.60 △ 16.00 △ 18.30 △ 12.70 △ 6.40 △ 8.70
△ 14.30 △ 7.70 △ 7.60 △ 5.90 △ 10.80 △ 10.20 △ 4.40
(製造業)
−
−
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
−
−
④鉱工業生産
−
−
(前期比)
(前年比)
⑤大型小売店販売額
8.90
(既存店、前年比)△ 2.80
(百貨店、既存店、前年比)
⑥有効求人倍率
−
54.50
56.20
2.30
2.70
11.20
11.30
51.90
46.60
48.80
52.90
53.90
0.30 △ 2.60
4.70
2.20
0.80
3.80
4.70
5.10
11.30
2.60
△ 1.80 △ 3.60 △ 3.30 △ 2.70 △ 3.80 △ 1.30 △ 1.00
−
−
−
−
−
−
−
−
(倍)
1.16
1.05
1.14
1.18
1.27
1.28
1.35
1.37
(%)
3.50
3.70
3.50
3.60
3.20
3.20
3.30
3.30
⑧住宅着工戸数
(前年比)
0.80
1.90 △ 7.00
6.70
2.30
4.30
5.00
8.60
⑨信用金庫貸出金
(前年比)△ 0.20
0.10 △ 0.10
0.00 △ 0.20 △ 0.10
0.10
0.50
4.10
1.80
1.30
1.20
⑦完全失業率
(個人向け、前年比)
1.90
(法人向け、前年比)△ 1.20
2.00 △ 3.40
54.90
3.40
1.90
1.20
−
−
△ 1.70 △ 1.90 △ 0.80 △ 1.20 △ 1.00 △ 0.70 △ 0.10
(備考)1.各経済指標の出所は以下のとおり。
(備考)1.①:日本銀行、②および⑨:信金中金総合研究所、③:内閣府、④および⑤:中部経済産業局、⑥:厚生労働省、
⑦⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.②の06年1Qは見通し
3.③は月次D.I.の単純平均。⑥は年、四半期ともに月次計数(季調値)の単純平均
4.④、⑤ともに静岡を除く。
比4.3%増と2期連続で増加している。愛知万
博効果もあって、百貨店は9.1%増と好調で
あり、中心部では個人消費は回復傾向が鮮明
となっている。
住宅投資も堅調に推移している。7∼9月
7.近畿―生産に回復の兆し。個人消
費も上向きつつあり、景気は緩やか
に回復
近畿の製造業は、相対的に底堅く推移、生
産活動にも回復の兆しがみられる。家計のマ
の住宅着工戸数は、前年比8.6%増と5期連続
インド好転で、個人消費も上向きつつあり、
でプラスとなった。持家(12.3%減)の減少
景気は緩やかに回復している。
傾向は他地域と同様だが、貸家(30.2%増)
日銀短観の業況判断D.I.(全産業)は、12
と分譲住宅(16.0%増)が好調であり、着工
月でプラス9と9月から2ポイント改善し、全
戸数全体の押上げに貢献した。
国平均(5)に比べて、高水準を維持してい
東海地区では、貸出金も小幅ながら伸びて
る( 図 表19)
。 ま た、 信 金 中 金・ 中 小 企 業
いる。05年9月末の信用金庫貸出金は、前年比
景気動向調査をみると、全産業の業況判断
0.5%増と6月末(0.1%増)から伸び率が小幅
D.I.は10∼12月でマイナス0.2とゼロ近辺ま
上昇した。特に、不動産業向け(8.0%増)や
で改善し、全国(△9.6)の水準を大きく上
住宅ローン(5.6%増)が堅調な伸びを示して
回った。ペースは緩やかだが、景気は着実に
いる。法人向けの伸び率は、マイナス幅が縮
上向いている。
小に向かっており、景気の拡大の持続を受け
なかでも、製造業の景況感の改善が目立
て、先行きはプラスへ転じる可能性が大きい。
っている。日銀短観では、12月の業況判断
76
信金中金月報 2006.3
D.I.が、プラス14と9月から2ポイント改善し
増と3期連続の増加を示した。電子部品・デ
た(全国平均は12)
。また、信金中金・中小
バイスの在庫は11月に前年比7.2%減と2か月
企業景気動向調査の業況判断D.I.は、10∼12
連続で減少、在庫調整が完了している。この
月にプラス9.6と4期ぶりにプラスとなり、全
結果、鉱工業全体の在庫循環も、調整一巡
地域で最も水準が高かった。他の業種をみて
のメドとなる45度線上にある(図表20)
。在
も、近畿の水準は他地域と比較して高く、中
庫調整の進展に伴い、生産は緩やかな回復に
小・零細企業の健闘ぶりが現れている。
転じつつある。化学など他の主力業種の生産
近畿の鉱工業生産は、前年比ではほぼ一貫
がもたつくなど懸念材料もあるが、生産活
してプラスを維持するなど、相対的に底堅
動は緩やかな回復を維持できる公算が大き
かったものの、04年秋以降は全国同様に踊
い(注)10。
り場に陥っていた。鉱工業生産の前期比は、
景気回復の持続により、企業の設備投資に
04年7∼9月以降、増減を繰り返した。こう
対する姿勢もより積極的になってきた。日
したなか、7∼9月の鉱工業生産は前期比1.5%
銀短観の05年度の設備投資計画(12月調査)
増と高い伸びを示し、2期ぶりに増加した。
では、全産業が前年比11.6%増(04年度2.9%
特に、主要業種の一部では、回復傾向が鮮明
増)
、製造業が16.0%増(同5.3%増)と大幅
である(注)9。堅調な設備投資を追い風に、一
な増加が見込まれている。
般機械が7∼9月に前期比3.0%増と8期連続で
雇用情勢も緩やかに改善している。7∼9月
増加したほか、電子部品・デバイスも12.0%
の有効求人倍率は、0.91倍と4∼6月(0.87倍)
図表19 近畿の景況感の推移
図表20 在庫循環図(近畿)
(D.I.)
20
10
予想
10
在庫︵前年比、%︶
0
-10
日銀短観
(業況判断D.I.)
-20
-30
-5
-15
-15
02
03
04
05
(備考)日銀大阪支店、信金中金総合研究所資料より作成
2005年11月
0
-10
中小企業景気動向調査
(業況判断D.I.)
-40
-50
01
5
06
(年)
2000年1月
-10
-5
0
5
出荷(前年比、%)
10
15
(備考)1.福井を含む。
( 2.近畿経済産業局資料より作成
(注) 9.製造業出荷額のうち、電気機械(18.7%、電子部品・デバイスを含む)、一般機械(12.8%)、食料・飲料等(12.1%)、
化学(11.3%)などの割合が高い(工業統計表、03年)。
10.化学の生産は、7∼9月に前年比0.7%減と2期連続で減少するなど弱含んでいる。ただ、日銀短観によると、化学の設備
投資は05年度に前年比32.8%の増加が計画されており、今後の生産は回復するとみられる。
調 査
77
から上昇し、1倍台に迫った。ただ、県別では
アなどは前年割れが続いているものの、マイナ
ややバラついている。2府4県のうち、1倍を超
ス幅は縮小しており、持直しの兆しがみえる。
えているのは滋賀
(7∼9月:1.11倍)
と大阪
(1.03
住宅投資も底堅い。7∼9月の住宅着工件
倍)のみで、和歌山(0.76倍)
・奈良(0.75倍)
数は、前年比7.3%増と2期連続の増加を記録
は低水準にとどまっている。滋賀・大阪・兵庫・
した。プラスに寄与したのは貸家(10.5%増)
京都では工場の立地が増えており、これが雇
と分譲マンション(40.5%増)で、傾向は全
用情勢の改善につながっている(注)11。
図表21 大型小売店販売額
(近畿、既存店ベース、前年比)
雇用情勢は全国並みであるのに対し、景気
(%)
には楽観的な見方が多い。例えば、10∼12
4
月の景気ウォッチャー調査(現状判断D.I.、
2
家計動向関連)は56.2と全地域で最も高かっ
0
大型小売店販売額
百貨店
スーパー
コンビニエンスストア
-2
た。先行き判断も56.4と高水準である。
-4
この結果、個人消費は回復しつつある。大
型小売店販売額(既存店ベース、福井を含む)
-6
は7∼9月に前年比2.2%減と依然マイナスだ
-8
が、百貨店は0.1%増と2期連続でプラスとな
った(図表21)
。スーパーやコンビニエンススト
-10
00
01
02
03
04
05(年)
(備考)1.福井を含む。
( 2.近畿経済産業局資料より作成
◇近畿の主要経済指標
①日銀短観・業況判断D.I.
04年
05年
04/1Q
(全産業)
−
−
△ 5.00
04/2Q
2.00
04/3Q
5.00
04/4Q
6.00
05/1Q
5.00
05/2Q
6.00
05/3Q
7.00
05/4Q
9.00
06/1Q
7.00
(製造業)
−
−
0.00
9.00
12.00
15.00
10.00
12.00
12.00
14.00
11.00
0.00
1.00
2.00
4.00
3.00
(非製造業)
−
−
△ 9.00 △ 4.00 △ 1.00 △ 3.00
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
−
−
△ 18.60 △ 9.50 △ 8.70 △ 7.00 △ 14.80 △ 9.00 △ 8.00 △ 0.20 △ 5.50
(製造業)
−
−
△ 9.50
6.50
3.00
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
−
−
54.43
56.90
53.17
④鉱工業生産
−
−
2.01
2.20
6.14
5.71
(前期比)
(前年比)
⑤大型小売店販売額
5.83
(既存店、前年比)△ 3.30
(百貨店、既存店、前年比)△ 1.80
2.60 △ 7.10 △ 3.80 △ 0.60
47.53
51.33
54.07
0.41 △ 0.71
0.51 △ 0.10
1.52
7.60
1.01
1.12
3.75
48.40
0.00
9.60
3.10
57.70
△ 2.00 △ 2.80 △ 4.00 △ 4.10 △ 3.60 △ 2.00 △ 2.20
0.80
0.10
⑥有効求人倍率
(倍)
0.76
△ 0.80 △ 0.20 △ 3.30 △ 2.50 △ 1.30
0.70
0.76
0.78
0.82
0.83
0.87
0.91
⑦完全失業率
(%)
5.60
6.00
5.70
5.80
4.90
5.70
5.10
5.10
⑧住宅着工戸数
(前年比)
1.10
△ 3.10 △ 4.90
6.50
5.83 △ 0.92
5.10
7.30
⑨信用金庫貸出金
(前年比)△ 1.40
△ 1.40 △ 1.50 △ 1.40 △ 1.40 △ 0.50 △ 0.10
0.60
(個人向け、前年比)△ 1.10
△ 0.90 △ 1.20 △ 1.10 △ 1.10 △ 0.70 △ 0.60 △ 0.30
(法人向け、前年比)△ 2.00
△ 2.20 △ 2.10 △ 1.90 △ 2.00 △ 1.00 △ 0.40
0.60
(備考)1.各経済指標の出所は以下のとおり。
(備考)1.①:日本銀行大阪支店、②および⑨:信金中金総合研究所、③:内閣府、④および⑤:近畿経済産業局、⑥:厚生労働省、
⑦⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.①と②の06年1Qは見通し
3.③は月次D.I.の単純平均。⑥は年、四半期ともに月次計数(季調値)の単純平均
4.④、⑤ともに福井を含む。
(注)11.04年の工場立地件数は、兵庫(68)、大阪(47)、京都(36)、滋賀(32)、奈良(8)、和歌山(3)となっており、奈良
と和歌山の少なさが目立っている(経済産業省「工場立地動向調査」より)。
78
信金中金月報 2006.3
国と共通している。
動向調査では、10∼12月の業況判断D.I.(総
05年9月末の信用金庫貸出金は前年比0.6%
合)はマイナス6.4と7∼9月(△22.1)から
増とプラスへ転じた。不動産業(6.7%増)
大きく改善した。製造業はプラス1.0と水面
が好調を維持したほか、卸売業が3.0%増加、
上に浮上しており、中国地方では中小・零細
法人向け全体でも0.6%増と伸びが高まった。
企業を含めて、製造業の景況感が相対的に良
反面、住宅ローンは1.3%増と伸び悩み、個
好である。
人向けは0.3%減と低迷した。
実際、中国の鉱工業生産は、02年4∼6月
8.中国―製造業をけん引役に景気は緩
やかに回復。雇用は山陽と山陰で明暗
生産活動の持直しから、景気は緩やかな回
復基調を取り戻しつつある。雇用情勢も上向
いているが、山陽と山陰では明暗が分かれ、
中国地方の経済は2極化している。
以降、一貫して前年の水準を上回っており、
回復トレンドが続いている。7∼9月の鉱工
業生産は前期比0.4%減と2期連続で減少した
が(4∼6月は0.1%減)
、落込み幅はわずかで
底堅いといえよう。
一般に、同じ中国といっても、山陽(岡山、
広島、山口)の景気は良く、山陰(鳥取、島根)
中国の景況感は、改善に向けた動きがやや
は悪いといわれている。そこで、中国の県別
緩慢である(図表22)
。日銀短観の業況判断
の鉱工業生産(2000年=100、季節調整値)の
D.I.をみると、全産業で12月はマイナス2と9
推移をみてみると、04年半ばまでは、山陽と
月からは1ポイント改善したが、
全国平均(5)
山陰では大きな格差があった(図表23)
。た
を下回った。製造業はプラス7と全国(12)
だ、その後は、山口は比較的高い水準を維持
との格差がさほど大きくないが、非製造業は
しているものの、岡山、広島の生産は回復一
全国の0に対し中国はマイナス9と大きく出
服の状況にあり、その一方で、島根の生産は
遅れている。一方、信金中金・中小企業景気
徐々にその水準を切り上げている。山口は、4
図表22 中国の景況感(業況判断D.I.)の推移
図表23 鉱工業生産指数
(季調値、3か月移動平均)
(D.I.)
10
予測
日銀短観
(全国)
0
115
110
島根
山口
岡山
100
日銀短観
(広島)
95
90
-30
中小企業景気動向調査
(中国)
-40
-50
01
鳥取
広島
105
-10
-20
(2000年=100)
85
80
日銀短観
(中国)
02
03
04
75
05
(備考)日銀広島支店、信金中金総合研究所資料より作成
06
(年)
70
01
02
03
04
05
(年)
(備考)各県資料より作成
調 査
79
割強のウエイトを占める化学工業が堅調に推
設備投資は堅調に推移している。日銀短
移しており、他県よりも良好な状態を維持で
観 の 設 備 投 資 計 画(12月 調 査 ) で は、05
きている。岡山は主要業種の低迷が響き、広
年度の設備投資は前年比11.8%増と04年度
島は最もウエイトの高い輸送機械(17.1%)
(14.0%増)に続き、2ケタの伸びが見込まれ
は自動車生産の好調により回復基調にある
ている。非製造業は4.2%減少する見通しだ
が、他の業種は力強さを欠いている(注)12。島
が、製造業は22.1%増と大幅な増加が見込ま
根は、主要業種である鉄鋼、電子部品・デバ
れている。
イス、一般機械などが回復しており、広島や
岡山に引けをとらない水準まで回復してきた。
雇用面に目を向けると、山陽と山陰とでは
大きな格差がある。7∼9月の有効求人倍率
一方、鳥取の生産は大きく落ち込んだ状況
は、1.02倍と2期連続で1倍を超えており、全
が続いており、格差が解消されたわけではな
国平均(0.97倍)を上回った。ただ、県別に
い。ただ、鳥取で5割弱のウエイトを占める
みると、岡山を中心に山陽地方が1倍を大き
電気機械は、在庫調整が一巡している。
く上回る一方で、山陰は直近でも0.8倍台に
シリコンサイクルは、05年夏場から秋に
とどまっている(図表24)
。景気の水準の違
かけて底打ちしており、鳥取の生産も今後は
いに加えて、工場立地の動向によって明暗が
緩やかな回復へ向かうことが期待できよう。
分かれている(注)13。
◇中国の主要経済指標
①日銀短観・業況判断D.I.
04年
05年
(全産業)
−
−
04/1Q
04/2Q
04/3Q
04/4Q
05/1Q
05/2Q
05/3Q
05/4Q
06/1Q
△ 10.00 △ 9.00 △ 7.00 △ 4.00 △ 6.00 △ 2.00 △ 3.00 △ 2.00 △ 3.00
(製造業)
−
−
(非製造業)
−
−
△ 17.00 △ 20.00 △ 17.00 △ 12.00 △ 10.00 △ 8.00 △ 11.00 △ 9.00 △ 10.00
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
−
−
△ 29.40 △ 22.70 △ 23.20 △ 14.00 △ 23.60 △ 21.50 △ 22.10 △ 6.40 △ 11.10
(製造業)
−
−
△ 21.20 △ 12.70 △ 13.80 △ 1.90 △ 19.20 △ 12.20 △ 8.80
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
−
−
50.70
④鉱工業生産
−
−
1.80
(前期比)
(前年比)
⑤大型小売店販売額
7.63
(既存店、前年比)△ 3.84
(百貨店、既存店、前年比)△ 3.90
0.00
8.51
7.00
53.50
7.00
5.00
1.00
44.60
2.04 △ 1.62
2.62
2.00 △ 0.16 △ 0.40
5.23
3.63
6.80
51.60
7.00
50.60
10.20
46.10
5.00
2.91
50.50
△ 1.20 △ 4.80 △ 4.70 △ 4.70 △ 3.20
0.60 △ 0.40
0.91
0.87
0.92
0.90
0.94
0.96
1.00
1.02
⑦完全失業率
(%)
4.30
4.40
4.50
4.20
3.90
3.60
3.80
3.50
(前年比)
9.71
2.00
2.10
29.92
7.90
(前年比)△ 0.80
(個人向け、前年比)
0.10
(法人向け、前年比)△ 1.70
1.00 △ 5.00
53.00
4.10
(倍)
⑨信用金庫貸出金
6.00
△ 1.70 △ 4.74 △ 4.20 △ 4.70 △ 3.20 △ 2.00 △ 2.80
⑥有効求人倍率
⑧住宅着工戸数
7.00
12.10 △ 0.50 △ 1.13
△ 1.00 △ 0.70 △ 0.90 △ 0.80 △ 0.90 △ 1.40 △ 1.40
1.90
0.10
0.10
0.10
0.00 △ 0.20 △ 0.20
△ 2.70 △ 1.70 △ 2.00 △ 1.70 △ 2.60 △ 2.70 △ 2.50
(備考)1.各経済指標の出所は以下のとおり。
(備考)1.①:日本銀行広島支店、②および⑨:信金中金総合研究所、③:内閣府、④および⑤:中国経済産業局、⑥:厚生労働省、
⑦⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.①と②の06年1Qは見通し
3.③は月次D.I.の単純平均。⑥は年、四半期ともに月次計数(季調値)の単純平均
(注)12.岡山では化学、電気機械、鉄鋼、輸送機械などが主要業種。広島では輸送機械、鉄鋼、一般機械など。
13.04年の工場立地動向調査をみると、工場立地件数は広島(24件)と岡山(12件)が比較的多かった。山口は8件にとどまっ
たが、生産活動が高水準で推移していることが雇用を支えている。一方、山陰では島根が5件、鳥取が3件とわずかにとどまっ
た。
80
信金中金月報 2006.3
図表24 有効求人倍率(季調値)
は全般的に持直しの動きが見受けられる。厳
(倍)
1.4
中国
島根
広島
1.3
1.2
しいながらも、雇用情勢は緩やかに改善、個
鳥取
岡山
山口
1.33
1.20
1.14
1.1
1.07
1.0
0.9
0.86
0.81
0.8
0.7
産活動は一進一退で推移しており、景気回復
の足取りは重い。
日銀短観の業況判断D.I.(全産業)は、12
月にマイナス8と全国平均(5)に比べ大き
く見劣りする結果となった。製造業は9月比
0.6
0.5
00
人消費にも底堅さがうかがわれる。ただ、生
8ポイント改善のプラス12と全国平均と同水
01
02
03
04
05
(年)
(備考)1.直近の数字は05年11月
( 2.厚生労働省資料より作成
準だったが、非製造業は2ポイント改善のマ
イナス21と全国平均(0)を大きく下回った。
さらに、鳥取と島根の公共投資に対する依
全国的には景気回復の動きが徐々に非製造業
存度は全国的にみても高く、このことも山陽
へも波及しているが、四国では顕在化してい
と山陰の経済格差を助長している(注)14。公共
ない。信金中金・中小企業景気動向調査で
事業費の削減による建設業等への悪影響は、
も、業況判断D.I.(総合)は10∼12月でマイ
山陽に比べて山陰の方が大きく、雇用情勢の
ナス19.0と全地域で最低水準となり、回復の
低迷に結び付いているとみられる。
遅れが著しい(図表25)
。製造業がマイナス
個人消費は、中国地方全体としては、持ち
直しつつある。百貨店の販売額(既存店ベー
ス)の前年比が回復に向かっており、雇用情
勢の改善を追い風に、個人消費は今後も底堅
く推移しそうだ。一方、住宅着工戸数が2期
連続で前年割れとなるなど、住宅投資は増加
一服の状況にあるが、岡山(7∼9月:前年
比12.5%増)や山口(7.5%増)では堅調な
伸びが続いている。
5.4、不動産業がマイナス2.6と、一部業種で
図表25 中小企業景気動向調査
(業況判断D.I.、四国)
(D.I.)
0
-10
-20
-30
-40
-50
9.四国―低迷を脱し、緩やかな持直
しの動き。生産活動は一進一退
景気は低調な推移が続いていたが、景況感
総合
卸売業
サービス業
不動産業
-60
-70
01
02
03
04
製造業
小売業
建設業
05
(年)
(備考)信金中金総合研究所作成
(注)14.域内総支出に占める、公的総固定資本形成は、島根が14.9%、鳥取が11.2%と高い(県民経済計算、02年度)。岡山(7.2%)、
山口(6.5%)、広島(6.4%)は比較的低い。
調 査
81
はマイナス幅が縮小し、回復への動きがみら
響いている。製造業は12.4%増と大幅な増加
れるが、他の業種は厳しい。特に小売業(△
(04年度は8.5%増)
、投資面
が計画されており
37.1)や卸売業(△34.9)の景況感は冷え込
でも製造業と非製造業の格差が目立っている。
んだままである。
企業の生産活動は一進一退が続いている。
雇用情勢は、厳しいながらも、緩やかに改
善している。7∼9月の有効求人倍率は、0.85
7∼9月の鉱工業生産は、前期比0.2%増と2期
倍と4∼6月(0.84倍)から小幅改善し、失業
ぶりに増加したが、前年比では1.2%減と2期
率も低下傾向にある。県別では、香川の有効
連続のマイナスとなった。月別にみると、05
求人倍率が四国で唯一1倍を超えている(7
年夏場頃を境に、上向きに転じつつあるが、
∼9月は1.20倍)
。香川は、他の3県と比較し
力強さには欠けている。主要業種の多くは回
て工場の立地件数が多いことが寄与してい
復に向けた動きがみられるが、最もウエイト
る。四国で最も水準の低い高知は、7∼9月
の大きい食料品・たばこ工業の減少が止まら
で0.49倍にすぎず、香川との差は歴然として
ないことが、四国の生産活動の足かせとなっ
いる。他の2県(徳島、愛媛)は、0.85倍と
(注)
15
ている(図表26)
。在庫調整の一巡で、電
四国の平均水準並みとなっている。
気機械は7∼9月に前期比9.6%増と2期連続で
増加したが、その効果は減殺されている。
四国では、公共投資への依存度が高い(注)16
ことも景気回復の足かせとなっている。公共
工事請負金額をみると、05年は徳島(13.5%
増)と香川(19.0%増)が増加したが、公共
住宅投資は、方向感がとらえにくい動きを
示している。住宅着工戸数は、7∼9月に前
年比横ばいと3期ぶりに下げ止まった。内訳
図表26 鉱工業生産指数
(四半期ベース、季調値)
(2000年=100)
140
事業はすう勢的になお減少傾向をたどる公算
130
が大きい。四国経済の活性化には、なお時間
120
を要しよう。
110
一方、日銀短観(12月調査)によると、05年
100
度の設備投資計画は前年比4.6%増と04年度
90
のマイナス
(△4.3%)からプラスに転じる見通
80
しとなっている。全国の計画に比べて、伸び率
70
は低いが、これは非製造業が1.6%減と、04年
度(△12.6%)に続いてマイナスであることが
60
01
鉱工業生産
一般機械
電気機械
化学
パルプ・紙・紙加工品
食料品・たばこ
02
03
04
05 (年)
(備考)信金中金総合研究所作成
(注)15.製造業出荷額では、食料・飲料等(17.3%)、電気機械(12.7%)、化学工業(11.4%)、パルプ・紙等(11.3%)などの
割合が高い(工業統計表、03年)。
16.域内総支出に占める、公的総固定資本形成は、四国は9.3%と全国(6.0%)を上回る。県別にみても、高知(14.5%)、
徳島(9.9%)、愛媛(9.0%)、香川(6.1%)といずれも全国より高い(県民経済計算、02年度)。
82
信金中金月報 2006.3
をみると、持家(△8.3%)が2期連続、
貸家(△
10∼12月で49.8と50割れとなったが、12月単
8.9%)は4期連続で減少したが、分譲マンシ
月では55.0の高水準を示している(図表27)。
ョンが229.9%増と大幅に伸びたことで、分
先行き判断は10∼12月で50.8と2期連続で50
譲住宅全体でも88.7%増と2期ぶりにプラス
を上回っている。
へ転じた。
05年9月 末 の 信 用 金 庫 貸 出 金 は、 法 人 向
けが前年比0.8%減とマイナス幅が大きく縮
小したが、不動産業向けが15.3%増と6月末
図表27 景気ウォッチャー調査
(家計動向関連、四国)の推移
(2.6%増)から大幅に伸びたことが主因であ
(D.I.)
る。反面、住宅ローンは9月末に前年比1.7%
60
増と伸び率が6月末(2.8%増)から鈍化、個
55
人向け全体ではマイナス0.6%と減少へ転じ
50
先行き判断D.I.
45
た。資金需要は、依然として低迷している。
40
個人消費は底堅く推移している。7∼9月の
現状判断D.I.
35
大型小売店販売額(既存店ベース)は、前年比
30
1.1%減とマイナスではあるが、百貨店は0.2%
25
減と横ばい圏まで持ち直してきた。景気ウォッ
チャー調査の現状判断D.I.
(家計動向関連)は、
20
01
02
03
04
05
(年)
(備考)内閣府資料より作成
◇四国の主要経済指標
①日銀短観・業況判断D.I.
04年
05年
(全産業)
−
−
04/1Q
04/2Q
04/3Q
04/4Q
05/1Q
05/2Q
05/3Q
05/4Q
06/1Q
△ 17.00 △ 17.00 △ 14.00 △ 11.00 △ 11.00 △ 10.00 △ 12.00 △ 8.00 △ 7.00
(製造業)
−
−
(非製造業)
−
−
△ 29.00 △ 31.00 △ 29.00 △ 25.00 △ 21.00 △ 22.00 △ 23.00 △ 21.00 △ 20.00
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I.(総合)
−
−
△ 21.50 △ 24.10 △ 25.50 △ 13.60 △ 24.50 △ 18.30 △ 21.90 △ 19.00 △ 22.90
(製造業)
−
−
△ 23.80 △ 19.50 △ 24.60 △ 2.30 △ 22.70 △ 10.00 △ 17.30 △ 5.40 △ 20.00
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
−
−
48.80
49.73
50.00
50.20
④鉱工業生産
−
−
△ 1.90
0.00
1.00 △ 0.90
2.40 △ 2.80
0.20
5.20
3.60
3.00 △ 1.70
1.20 △ 0.30 △ 1.20
(前期比)
(前年比)
2.50
2.00
7.00
10.00
48.33
10.00
46.20
5.00
47.10
6.00
4.00
(既存店、前年比)△ 2.90
△ 1.70 △ 3.90 △ 3.20 △ 2.70 △ 3.10 △ 0.70 △ 1.10
(百貨店、既存店、前年比)△ 3.40
△ 1.00 △ 3.50 △ 6.00 △ 3.30 △ 3.30 △ 1.60 △ 0.20
⑤大型小売店販売額
⑥有効求人倍率
(倍)
0.77
0.74
0.77
0.78
0.77
0.80
0.84
0.85
⑦完全失業率
(%)
4.90
4.90
4.30
4.80
5.40
4.40
4.30
3.80
2.80 △ 13.60
9.20
1.40 △ 3.20 △ 6.40
0.00
⑧住宅着工戸数
⑨信用金庫貸出金
(前年比)△ 0.50
(前年比)△ 0.10
(個人向け、前年比)
2.60
(法人向け、前年比)△ 2.80
△ 0.20 △ 1.40 △ 0.80 △ 0.10 △ 0.40
2.50
1.70
1.50
2.60
1.60
12.00
14.00
50.43
0.00 △ 0.40
2.50 △ 0.60
△ 2.80 △ 4.60 △ 3.30 △ 2.80 △ 2.40 △ 2.70 △ 0.80
(備考)1.各経済指標の出所は以下のとおり。
(備考)1.①:日本銀行高松支店、②および⑨:信金中金総合研究所、③:内閣府、④および⑤:四国経済産業局、⑥:厚生労働省、
⑦⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.①と②の06年1Qは見通し
3.③は月次D.I.の単純平均。⑥は年、四半期ともに月次計数(季調値)の単純平均
調 査
83
10.九州―生産の持直しで景気は全
体としても緩やかに回復。沖縄は観
光が好調
州の中でも明暗が分かれている。製造業は九
州北部がプラス1.8、南九州がプラス1.0と水準
に大きな違いはなく、非製造業で格差が開い
た。非製造業を業種別でみると、卸売(九州北
弱含んでいた生産が、05年夏場以降、持
直しの動きが鮮明となり、景気は全体として
南九州:△12.4)
、小売
(九州北部:△2.2、
部:8.3、
南九州:△19.3)
などで格差が大きかった。
も緩やかに回復している。個人消費が持ち直
弱含んでいた生産活動に動意が出てきた。7
しているうえ、住宅投資も堅調に推移するな
∼9月の鉱工業生産は、前期比1.6%減と5期連
ど、徐々に明るい材料が増えてきた。
続で減少、前年比でも4.3%減と2期連続でマ
日銀短観の業況判断D.I.(全産業)は、12
イナスとなった。ただ、月別にみると、昨年夏場
月 に プ ラ ス3と9月 か ら3ポ イ ン ト 改 善 し た
を境に持直しの動きが鮮明となっている。10
(図表28)。製造業がプラス10と04年9月(12)
∼11月の鉱工業生産は、7∼9月を3.3%も上
以来の高水準となったほか、非製造業もゼロ
回っている。7∼9月についても、主要業種の動
とマイナスを脱しており、景気は緩やかなが
きをみると(注)17、食料品・たばこ工業は前期比
らも着実に回復している。
3.9%増と2期ぶりに増加、電子部品・デバイス
信金中金・中小企業景気動向調査の10∼12
工業も前期比0.2%増と7期ぶりに増加した。
月調査をみると、九州北部の業況判断D.I.(総
先行きを占ううえでは、変動の大きい電子
合)は、プラス0.4(7∼9月△8.5)と全地域の中
部品・デバイスの動向が重要である。電子部品・
で唯一プラスへ転じた。これに対して南九州
デバイスの在庫水準は前年を大きく下回って
はマイナス5.2と依然として水面下にあり、九
おり、調整はすでに完了している(図表29)。
図表28 九州の景況感(業況判断D.I.)
図表29 在庫循環図
(電子部品・デバイス、九州)
(D.I.)
予測
5
100
0
-5
-10
在庫︵前年比、%︶
日銀短観
(全産業)
-15
-20
-25
中小企業景気動向調査
(総合、南九州)
-30
-35
-45
01
02
03
04
05
(備考)日銀福岡支店、信金中金総合研究所資料より作成
60
40
2000年1月
20
0
-20
-40
中小企業景気動向調査
(総合、九州北部)
-40
80
-60
-40
06
(年)
2005年11月
-20
0
20
出荷(前年比、%)
40
60
(備考)九州経済産業局資料より作成
(注)17.製造業出荷額のうち、食料・飲料等(22.3%)、電気機械(16.9%、電子部品・デバイスを含む)、輸送用機械(16.4%)
などの割合が高い(工業統計表、03年)。
84
信金中金月報 2006.3
シリコンサイクルの底入れもあって、
今後は、
図表30 沖縄の観光客数の推移
在庫積増しのための生産増も期待できよう。
600
九州の製造業出荷額の業種別構成比を地域別
500
15
400
10
300
5
200
0
にみると、電子部品・デバイスのウエイトは
南九州で15.4%と九州北部(6.0%)のほぼ2
倍となっている。県別には、
鹿児島(21.2%)
、
熊本(16.5%)
、宮崎(15.0%)
、大分(14.3%)
となっており、半導体関連の需要回復は主に
南九州の生産回復に寄与しそうだ。
一方、九州北部では、輸送用機械の出荷額
の割合が高い(注)18。九州北部には国際競争力
の強い自動車産業が集積しており、生産は底
堅い推移が予想される。
(千人)
(%)
100
0
03/1
20
前年比
(右目盛)
-5
観光客数
(左目盛)
03/7
04/1
04/7
05/1
05/7
(備考)沖縄県資料より作成
-10
(年月)
加が期待できよう。
九州の雇用情勢は、7∼9月の有効求人倍
率が0.66倍と、地域別では北海道(0.59倍)
九州の設備投資動向をみると、日銀短観の
に次ぐ低い水準にとどまるなど依然として厳
12月調査では、全産業が05年度に4.9%増と
しい状況だが、緩やかながらも改善基調は維
04年度(6.2%増)に続き増加を計画している。
持している。この結果、個人消費も持ち直し
全国の伸びに比べれば低い伸びだが、製造業
ている。大型小売店販売額(既存店ベース)
は05年度に13.6%増と04年度(38.7%増)に
は7∼9月に前年比1.9%減と4∼6月(△2.9%)
続き大幅な増加が計画されている。製造業が
からマイナス幅が縮小し、百貨店(既存店ベ
引き続き九州の景気回復をけん引しよう。
ース)は7∼9月に0.4%増加した。景気ウォ
こうしたなか、沖縄は、製造業のウエイト
ッチャー調査(沖縄を除く)の家計動向関連
が極めて低く、観光産業に大きく依存する産
(現状判断D.I.)は、10∼12月に52.9と2期連
業構造となっている(注)19。そこで、観光客数
続で50を上回り、先行き判断も54.0となるな
の推移を前年比でみると、04年後半には大
ど、個人消費は今後も底堅く推移しよう。
型台風の相次ぐ襲来で大きく落ち込んだが、
住宅投資は堅調が続いている。7∼9月の
05年春以降は回復に転じ、沖縄県経済に恩
住宅着工戸数は、前年比2.0%増と6期連続で
恵をもたらしている(図表30)
。05年の観光
増加した。北部と南部で多少のバラつきはあ
客数は、550万人と過去最高を記録、前年比
るものの、貸家と分譲住宅を中心に、九州全
では6.7%増となった。全国的な個人消費の
体では増加傾向にある。
回復に伴って、今後も沖縄への観光客数は増
信用金庫の貸出金動向は、九州北部と南九
(注)18.九州北部では、25.0%と東海(39.4%)に次いで全地域で2番目に輸送用機械の割合が高い。
19.県民経済計算(02年度)によると、沖縄の県内総生産に占める第3次産業の割合は、84.6%と都道府県別では2番目に高く、
1位の東京都(84.8%)とほぼ並ぶ。
調 査
85
州とで明暗が分かれている。05年9月末で、
九州北部で前年比0.8%増加したのに対し、
南九州では1.3%減と低迷した。不動産業向
けや住宅ローンは両地域で伸びているが、製
造業向けが九州北部で9月末にプラスへ転じ
図表31 県(域)内総支出に占める公的総固
11 定資本形成の割合
(%)
14
12.2
12
10
8.4
8
る(6月:△0.4%→9月:0.6%増)一方で、
6
沖縄
鹿児島
宮崎
大分
熊本
南九州計
長崎
佐賀
九州の懸念材料は、他の地方圏同様に、公
共事業への依存度が高いことである(図表
8.2
7.8
福岡
九州北部計
ていないことが響いた。
九州 計
4
9.1
10.7
9.4
6.0
全国
南九州(△8.7%→△8.5%)では下げ止まっ
10.3 10.5
9.4
12.8
(備考)内閣府「県民経済計算(02年度)」より作成
31)。沖縄の12.8%を筆頭に、県内総支出に
負金額は、05年も前年比7.0%減少しており、
占める公的総固定資本形成の割合が10%を
建設関連においては、いかにして民間需要を
超える県も多く、公共事業の削減が九州の経
掘り起こすか、業容の多様化を図るかが課題
済に与える影響は大きい。九州の公共工事請
となろう。
◇九州の主要経済指標
04年
05年
(全産業)
−
−
(製造業)
−
−
(非製造業)
−
−
△ 12.00 △ 9.00 △ 12.00 △ 10.00 △ 7.00 △ 5.00 △ 4.00
0.00 △ 3.00
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I. (総合)
−
−
△ 12.70 △ 17.50 △ 17.50 △ 8.70 △ 18.00 △ 12.10 △ 8.50
0.40 △ 2.60
<九州北部>
(製造業)
−
−
△ 2.10 △ 11.40 △ 13.20
1.80
②中小企業景気動向調査・業況判断D.I. (総合)
−
−
△ 18.90 △ 17.50 △ 17.90 △ 13.50 △ 18.90 △ 10.60 △ 14.90 △ 5.20 △ 12.60
<南九州>
△ 5.20 △ 5.00 △ 20.40
①日銀短観・業況判断D.I.
04/1Q
04/2Q
04/3Q
04/4Q
05/1Q
05/2Q
△ 6.00 △ 2.00 △ 4.00 △ 4.00 △ 3.00 △ 1.00
4.00
10.00
12.00
7.00
3.00
4.00
05/3Q
0.00
7.00
10.00
6.00
2.70 △ 14.20 △ 3.10 △ 6.90
(製造業)
−
−
−
−
49.00
④鉱工業生産
−
−
2.00
3.50 △ 0.30 △ 1.10 △ 0.20 △ 1.30 △ 1.60
7.50
7.30
(前期比)
(前年比)
⑤大型小売店販売額
5.50
(既存店、前年比)△ 4.90
(百貨店、既存店、前年比)△ 4.30
48.40
5.70
0.50 △ 15.00 △ 8.80 △ 7.50
44.60
2.00
47.70
51.10
53.00
3.70
1.00 △ 10.40
55.00
0.40 △ 2.80 △ 4.30
△ 3.00 △ 5.30 △ 5.60 △ 5.40 △ 5.10 △ 2.90 △ 1.90
△ 1.10 △ 5.00 △ 5.80 △ 5.20 △ 6.40 △ 1.00
0.40
⑥有効求人倍率
(倍)
0.58
0.55
0.57
0.59
0.60
0.63
0.65
0.66
⑦完全失業率
(%)
5.50
5.50
5.60
5.60
5.30
5.30
5.20
5.10
⑧住宅着工戸数
(前年比)
6.60
△ 3.70
1.00
17.50
11.00
13.80
3.90
2.00
⑨信用金庫貸出金
(前年比)
0.10
△ 0.70 △ 0.40 △ 0.20
0.10 △ 0.20 △ 0.30 △ 0.40
(個人向け、前年比)
1.00
△ 0.10
1.00
(法人向け、前年比)△ 1.00
06/1Q
3.00
③景気ウォッチャー調査 (現状判断D.I.)
52.00
05/4Q
0.00
0.80
0.70
0.30 △ 0.60 △ 0.60
△ 1.50 △ 1.70 △ 1.00 △ 1.00 △ 1.30 △ 0.90 △ 1.00
(備考)1.各経済指標の出所は以下のとおり。
(備考)1.①:日本銀行福岡支店、②および⑨:信金中金総合研究所、③:内閣府、④および⑤:九州経済産業局、⑥:厚生労働省、
⑦⑦:総務省、⑧:国土交通省
2.①と②の06年1Qは見通し
3.③は月次D.I.の単純平均。⑥は年、四半期ともに月次計数(季調値)の単純平均
4.③、④は沖縄を除く。
86
信金中金月報 2006.3
(参考)日銀短観、信金中金・中小企業景気動向調査の地域別一覧表
日銀短観
全産業
製造業
信金中金・中小企業景気動向調査
非製造業
総合
製造業
卸売業
小売業
サービス業
建設業
不動産業
5
12
0
△09.6
△01.0
△08.7
△26.6
△14.3
△09.5
△00.9
全国
(△02) (△08) (△03)(△16.1)(△09.0)(△14.4)(△30.9)(△20.6)(△18.6)(△02.6)
△12
1
△17
△15.1
△10.0
△16.2
△24.3
△25.4
△11.9
9.3
北海道
(△15) (△09) (△17)(△18.9)(△18.0)(△09.4)(△31.0)(△19.8)(△17.0)(△04.5)
△10
6
△20
△17.9
△09.1
△14.0
△39.1
△19.1
△21.8
△12.1
東北
(△18) (△08) (△25)(△26.8)(△21.9)(△18.7)(△40.6)(△27.9)(△34.1)(△20.0)
北関東・
△02.4
11.7
△03.1
△22.2
△10.7
△06.9
△05.0
9
13
8 (△12.3)(△03.6)(△06.4)(△18.3)(△23.6)(△27.4)(△06.6)
甲信越
(△06) (△10) (△03) △14.1
△06.9
△04.8
△32.7
△17.8
△08.7
1.1
首都圏
(△18.2)(△11.9)(△14.0)(△32.8)(△22.9)(△14.0)(△02.1)
3
6
1
△14.0
0.5
△20.4
△22.9
△20.3
△20.2
△23.2
北陸
(△04) (△06) (△11)(△22.6)(△05.9)(△32.0)(△36.5)(△31.3)(△30.6)(△20.4)
11
17
5
△06.4
2.0
△09.6
△19.1
△11.4
△12.8
0.0
東海
(△11) (△17) (△05)(△12.7)(△04.4)(△13.1)(△32.3)(△05.4)(△25.0)(△00.0)
9
14
4
△00.2
9.6
△06.7
△18.5
△01.4
△01.3
4.0
近畿
(△07) (△12) (△02)(△08.0)(△00.6)(△12.5)(△26.4)(△10.3)(△08.9)(△08.9)
△02
7
△09
△06.4
1.0
△07.8
△16.9
△03.3
△16.9
△05.3
中国
(△03) (△07) (△11)(△22.1)(△08.8)(△17.2)(△36.7)(△34.4)(△29.5)(△37.5)
△08
12
△21
△19.0
△05.4
△34.9
△37.1
△16.3
△25.0
△02.6
四国
(△12) (△04) (△23)(△21.9)(△17.3)(△34.4)(△38.5)(△20.8)(△12.1)(△07.5)
0.4
1.8
8.3
△02.2
△18.0
4.2
3.0
九州北部
3
10
0 (△08.5)(△06.9)(△04.2)(△12.5)(△21.4)(△11.5)(△05.3)
九州
(△00) (△07) (△04) △05.2
1.0
△12.4
△19.3
△05.4
△ 2.6
7.4
南九州
(△14.9)(△07.5)(△14.3)(△27.0)(△21.3)(△18.6)(△00.0)
(備考)1.日銀短観は12月調査(カッコ内は9月調査)。信金中金・中小企業景気動向調査は10∼12月(カッコ内は7∼9月)
2.日本銀行、同各支店、信金中金総合研究所資料より作成
<参考文献>
荒井宏文、峯岸直輝「2004年の地域経済の回顧と人口動態―輸出産業の集積、公共投資依存度、人口動態が地域間格
差の主因」『信金中金月報』(2005年5月号)
信金中金総合研究所「第122回全国中小企業景気動向調査」
『信金中金月報』
(2006年2月号)
全国地方銀行協会「地方経済天気図(06年1月)」
内閣府「地域経済動向(05年11月)」
日本銀行「地域経済報告(06年1月)」
調 査
87
解 説 中小企業における新「会社法」の活用ポイント
−会社法の諸制度を経営に活用するという発想が必要−
信金中央金庫 総合研究所研究員
谷地向 ゆかり
(キーワード) 会社法、株式会社、機関、取締役会、監査役、会計参与、取締役の任期、
事業承継
(視
点)
2006年5月施行予定の新「会社法」
(以下、会社法という。
)においては、中小の株式会社
に関する制度が大幅に改正されている。
現行法では、株式会社は大企業のための会社制度と位置づけられていた。しかし、実際に
は中小企業が株式会社制度を選択していることも多く、
制度と現実の乖離が指摘されていた。
会社法では、このような現実を踏まえ、中小企業が株式会社制度を利用することを認めた
うえで、中小企業に見合った柔軟な運営ができるようにしている。
そこで、本稿では、本年5月の会社法施行に先立ち、会社法を活用することで、既存の中
小企業においてどのようなことができるかという観点から、
会社法のポイントを概説したい。
(要
●
旨)
会社法では、有限会社制度が廃止され、株式会社制度に一本化されている。これにより、
株式会社制度は、大規模企業のための会社制度ではなく、小規模企業から大規模企業まで
が広く利用できる会社制度として位置づけられた。
●
会社の機関、すなわち、株主総会や取締役会等についての選択肢が増加しており、名目的
な取締役・監査役を廃止して、株主総会と取締役1人という機関構成にすることもできる。
●
中小企業が任意に会計監査人を置くことも可能となる。例えば、短期間で株式の上場を目
指すベンチャー企業においては、早い段階から上場審査に向けた社内体制の整備に取り組
むことができることとなる。
●
多数の株主を擁する中堅企業においては、
株主と経営者が適切にその役割を分担するため、
取締役会・監査役を維持する方が望ましいこともあろう。
●
会社が株主に対して株式の売渡しを請求することができる制度の創設や、議決権を制限し
た株式にかかる規制緩和等は、中小企業が事業承継の際に活用できるものと考えられる。
●
中小企業においては、今回の法整備の機会を前向きにとらえ、今後は法を遵守するのみな
らず、法を経営に活用していくという発想も求められることになろう。
88
信金中金月報 2006.3
法では有限会社や合名・合資会社制度を利用
はじめに
することが想定されていた。これらの会社に
新「会社法」
(以下、
会社法という。
)とは、
おいては、出資者その他の利害関係者が少な
これまで「商法第2編」
、
「有限会社法」
、
「株
いことから、
会社運営に関する規定は少なく、
式会社の監査等に関する商法の特例に関する
株式会社に比べ柔軟な運営ができることとさ
法律」等に規定されていた会社関連法制が
れていた。
再編成されるとともに、さまざまな制度が見
しかしながら、実際には1人から数人程度
直され、一つの法典にまとめられるものであ
の出資者しかいない中小企業が株式会社制度
る。2005年6月の国会ですでに成立しており、
を選択していることも多く、制度と現実の乖
2006年5月に施行される予定である(図表1)
。
離が指摘されていた。
会社法による改正点は多岐にわたるが、な
会社法においては、このような現実を踏ま
かでも中小の株式会社に関する制度が大幅に
え、中小企業が株式会社制度を利用すること
改正されている。
を認めたうえで、中小企業に見合った柔軟な
現行法では、株式会社は不特定多数の出資
運営ができるようにしている。
者から資金を集め、大規模な事業を行う企業
そこで、本稿では、本年5月の会社法施行
のための会社制度として位置づけられてい
に先立ち、会社法を活用することで、既存の
た。そのため、現行法は、会社に関わる多数
中小企業においてどのようなことができるか
の利害関係者の利害を調整するため、会社運
という観点から、会社法のポイントを概説し
営に関する数々の詳細な規定を置いていた。
たい。
一方、少数の出資者からなる会社は、現行
1.会社法における中小企業の位置づけ
図表1 会社法の概要
現行法では、有限会社と株式会社が区分さ
れ、さらに株式会社が資本金、負債の規模に
商法第2編
よって小会社、中会社、大会社に区分されて
有限会社法
株式会社の監査
等に関する商法
の特例に関する
法律 等
(備考)信金中金総合研究所作成
会社法
2005年6月成立
2006年5月施行予定
いた(図表2)
。
これに対し、会社法では、まず有限会社が
廃止され、株式会社に一本化される(注)1。
これにより、株式会社は大規模企業のため
の会社制度ではなく、小規模企業から大規模
企業までが広く利用できる会社制度として位
(注)1.既存の有限会社については、会社法施行後も「特例有限会社」として現行の有限会社法とほぼ同様の規律を受けること
ができるよう立法上の手当てがなされている。
解 説
89
図表2 会社区分の変更イメージ
【現行法】
【会社法(株式会社)
】
公開会社でない会社
公開会社
①大会社でなく、
かつ公開会社で
ない会社
③大会社ではない
公開会社
② 大 会 社 で あ り、
かつ公開会社で
ない会社
④大会社かつ公開
会社
有限会社(注)1
小会社
資本 金1億円 以下か つ負
債200億円未満
中会社
資本 金1億円 超かつ 負債
200億円未満
大会社でない会社
株式会社
みなし大会社(注)2
大会社
大会社
資本 金5億円 以上ま たは
負債の額200億円以上
(注)1.既存の有限会社は、会社法施行後も「特例有限会社」として現行の有限会社法とほぼ同様の規律を受けることができる
よう立法上の手当てがなされている。
2.中会社のうち、大会社に関する規定の適用を受ける旨定款で定めた会社
(備考)信金中金総合研究所作成
置づけられた。
また、会社法においては、現行の小会社・
社」という区分が置かれることにより、株式
会社は、
中会社の区分が廃止され、
「大会社」と「大
①大会社でなく、かつ公開会社でない会社
会社でない会社」に区分されている。
②公開会社ではない大会社
さらに、新たに「公開会社」という区分が
置かれ、
「公開会社」と「公開会社でない会社」
に区分されている。
③大会社ではない公開会社
④大会社かつ公開会社
図表3 公開会社と公開会社でない会社
「公開会社」とは、定款で株式の譲渡制限が
定められていない会社を指す(図表3)
。
すべての株式に譲
渡制限がない会社
「公開会社」というと、上場企業をイメー
ジすることが多いと思われるが、会社法にお
いては、会社の全株式を社長が1人で保有し、
公開会社
一部の株式に譲渡
制限がない会社
実質的に社長が1人で経営しているような会
社であっても、定款に株式の譲渡制限が定め
すべての株式に譲
渡制限がある会社
られていなければ、
「公開会社」になる。
株式会社のなかに、「大会社」と「公開会
90
信金中金月報 2006.3
(備考)信金中金総合研究所作成
公開会社でない会社
(=株式譲渡制限会社)
図表4 会社法における株式会社の区分
株式会社
①大会社でなく、かつ公開会社でない会社
大会社
②公開会社
ではない
大会社
公開会社
④大会社かつ
公開会社
③大会社
ではない
公開会社
2.機関構成の柔軟化―中小企業の選
択肢が大幅に増加―
会社法においては、中小企業の機関構成の
選択肢が大幅に増加する。
会社の機関とは、株主総会、取締役会、
(代
表)取締役、監査役等、会社の意思決定や業
(備考)信金中金総合研究所作成
の4つに区分されることとなる(図表4)
。
既存の株式会社の99%以上は、資本金5億
円未満の会社である(図表5)
。
また、非上場企業においては、定款に株式
の譲渡制限が定められていることが多い。
務執行、監査等を行う合議体や人を指す。
現行法では、原則として会社の種類(有限
会社、株式会社)と、株式会社における規模
区分(小会社、中会社、大会社)に応じ、一
定の機関を置くことが法定されており、大会
社が小会社と同じ機関構成を採ることができ
したがって、既存の株式会社の多くは「大
ないのはもちろん、小会社が大会社と同じ機
会社でなく、かつ公開会社でない会社」
(前
関構成を採ることも認められていなかった。
掲図表2、4における①)に該当することと
例えば、現行法においては、株式会社のう
ち小会社は、株主総会、取締役会、監査役と
なろう。
そこで、本稿においても、中小企業は「大
いう3つの機関を置くこととされているが、
会社でなく、かつ公開会社でない会社」に該
これらの機関に加え、任意に監査役会、会計
当することを前提に、中小企業にかかる会社
監査人を置くことはできない。
法の改正点をみていくこととする。
これに対し会社法では、大会社や公開会社
については、一定程度以上の厳格な機関構成
の採用を義務付けているものの、中小企業
図表5 資本金規模別割合(株式会社)
資本金5億円以上
0.9%
については、機関構成を大幅に柔軟化してい
る。会社法の規定に則り各機関を組み合わせ
ると、中小企業が選択できる機関構成は17
種類におよび(図表6)
、中小企業はこのな
かから自社に適したものを選択することがで
きる。
資本金5億円未満
99.1%
(備考)国税庁「平成15年度会社標本調査結果」より信金中
( 金総合研究所作成
解 説
91
図表6 中小企業(大会社でなく、かつ公開会社でない会社)が採用できる機関構成
①
株主総会
取締役
②
株主総会
取締役
監査役(注)1
③
株主総会
取締役
会計参与
④
株主総会
取締役
監査役(注)1
会計参与
⑤
株主総会
取締役
監査役
会計監査人
⑥
株主総会
取締役
監査役
会計参与
会計監査人
(注)
1
⑦
株主総会
取締役会
監査役
⑧
株主総会
取締役会
監査役会
⑨
株主総会
取締役会
会計参与
⑩
株主総会
取締役会
監査役(注)1
会計参与
⑪
株主総会
取締役会
監査役会
会計参与
⑫
株主総会
取締役会
監査役
会計監査人
⑬
株主総会
取締役会
監査役会
会計監査人
⑭
株主総会
取締役会
委員会
会計監査人
⑮
株主総会
取締役会
監査役
会計参与
会計監査人
⑯
株主総会
取締役会
監査役会
会計参与
会計監査人
⑰
株主総会
取締役会
委員会
会計参与
会計監査人
(注)1.②、④、⑦、⑩では、監査役の監査範囲を会計に関するものに限定することが可能
(備考)1.網掛けは現行法上も認められている機関構成
①、②:現行の有限会社(ただし、②の場合、監査役の監査範囲が会計に関するものに限定されている。)
⑦:現行の小会社、中会社(ただし、小会社については、監査役の監査範囲が会計に関するものに限定されている。)
⑬、⑭:現行の大会社、みなし大会社
2.信金中金総合研究所作成
(1)実質的に社長が1人で経営する小規模会
も多かった。
社の場合
∼名目取締役、取締役会、監査役を廃止し、
簡易な構成に∼
イ.名目的な取締役等の問題点
名目的とはいえ、取締役等に就任すると、
現行法では、株式会社は3人以上の取締役
会社債権者から責任追及を受ける可能性があ
を選任し、取締役会を構成しなければならな
る。このため、これらに就任してくれる人を
いこととなっていた。加えて、1人以上の監査
確保することが難しい場合も少なくなかった。
役を置くことが必要とされていたことから、
3人以上の取締役と1人以上の監査役を確
少なくとも3人の取締役と1人の監査役の計4
保しなければならないという現行法の規定
人の役員を確保しなければならなかった。
は、会社を設立する際のハードルとなってい
このため、会社の全株式を社長が所有して
たのはもちろん、会社設立後も、何からの理
おり、実質的に社長1人で経営しているよう
由で取締役等に欠員が出た場合に、補充が難
な小規模な株式会社においては、経営にまっ
しいという問題があった。
たく関与していない社長の親族・友人等に、
名目的に取締役等になってもらっている場合
92
信金中金月報 2006.3
ロ.名目取締役等を廃止、取締役を1人にす
社債権者が取締役等に損害賠償を求めても、
ることも
債権回収の実効性は極めて低いことが予想さ
会社法では、取締役は1人でもよく、取締
れる。そのため、このような取締役等の維持を
役会や監査役を置かないこともできるように
望む会社債権者は少ないのではないだろうか。
なる。したがって、名目的な取締役、取締役
会、監査役を廃止し、株主総会と社長(取締
(2)短期間で株式上場を目指すベンチャー
企業の場合
役)1人という簡易な機関構成(図表6の①)
∼早い段階から会計監査人を選任し、会計の
にすることもできる(図表7)
。
適正性を確保∼
取締役会や監査役を廃止すると、会社の信
用度が低下するのではないか、取引先、特に
現行法では、会計監査人を置くことができ
金融機関からの信頼が損なわれるのではない
るのは大会社のみであり、小会社および中会
かという不安もあろう。
社は会計監査人を置くことができなかった。
しかし、中小企業において、取締役会を開
中会社は、みなし大会社(注)2になれば大会
催せずに業務執行にかかる意思決定を行なっ
社と同様に会計監査人を置くことができる
ている例は少なくない。このようなことは、
が、この場合、社外監査役が半数以上を占め
当然取引先も知っているものと思われる。ま
る監査役会か、社外取締役が過半数を占める
た、取締役等が社長の親族である場合、取引
監査委員会等を併せて設置しなければならな
先が、取締役等の経営監視機能を信頼あるい
いため負担が重かった。
は期待していることは少ないのではないだろ
イ.急成長するベンチャー企業の会計ニーズ
うか。
また、取締役等が社長の親族等である場合、
特に社長と生計を同じくする家族の場合、会
しかし、短期間で株式の上場を目指すベン
チャー企業においては、早い段階から会計監
査人の監査を受け、会計の適正性
図表7 会社法施行後に可能な機関構成(1)
会社法施行後
現在
社長1人
取締役会
たと思われる。
株主総会
株主総会
社長1人
社長1人
実際、ジャスダック、マザーズ
等の新興市場においては、会社設
取締役
社長1人
親族2人
を確保したいと考える場合もあっ
立後1∼2年で上場を果たした例
もある。早期に会計監査人を設置
監査役
監査役
親族1人
(備考)信金中金総合研究所作成
なし
し、社内体制を整えることで、上
場審査に備えたいというニーズも
(注)2.中会社のうち、大会社に関する規定の適用を受ける旨定款で定めた会社を指す。
解 説
93
あろう。
を有する監査役であることが必要であり、監
査役の監査権限を会計に関する事項に限定す
ロ.会社規模に関わりなく会計監査人を置く
ることはできない。
ことが可能に
(3)多数の株主を擁する中堅企業の場合
会社法では、会社の規模に関わりなく、監
∼取締役会、監査役を維持して株主の権限を
査役を設置すれば会計監査人を設置すること
ができるようになる(図表6の⑤、⑥、⑫∼
抑制∼
⑰および図表8)
。
すでに述べたように、会社法では、取締役
は1人でよく、取締役会や監査役を置かない
なお、この場合の監査役は、業務監査権限
こともできるようになる。
図表8 会社法施行後に可能な機関構成(2)
ただし、取締役会、監査役を廃
会社法施行後
現在
止すると、株主の権限が強まるこ
株主総会
VC
株主総会
社長1人
ベンチャー
キャピタル3社
取締役会
社長1人
ベンチャー
キャピタル3社
取締役会
社長1人
VC
その他2人
社長1人
その他2人
とに注意が必要である(図表9)
。
株主と取締役が一致している場
合には、株主の権限が強まっても
問題はない。
また、株主の意見を会社経営に
監査役
監査役
1人
1人
積極的に取入れたり、株主の経営
監視機能を高めるという観点から
会計監査人
なし
会計監査人
1人
は、株主権限が強まることは決し
て悪いことではない。
(備考)信金中金総合研究所作成
図表9 機関構成による株主権限のイメージ
しかしながら、多数の株主を擁
強
し、所有と経営の分離が進んだ会
取締役会を設置せず、かつ
監査役を設置しない。
取締役会または監査役のい
社において、株主の権限が過度に
強まると、会社経営が混乱する可
能性もある。
ずれか一方のみを設置する。
イ.取締役会設置・非設置による
弱
取締役会および監査役を設
置する。
(備考)1.監査役には、業務監査権限を持たない監査役を含まない。
2.信金中金総合研究所作成
94
信金中金月報 2006.3
差異
会社法では、取締役会を設置して
いる会社において、株主総会が決
議できるのは法令および定款で定
図表10 取締役会・監査役設置の有無による差異
取締役会を設置する
監査役を設置する
株主総会の権限
(295Ⅰ、
Ⅱ)
(注)
2
株主提案権(303、305)
取締役の報告義務
(357Ⅰ)
監査役を設置しない
監査役を設置する
監査役を設置しない(注)1
法令・定款で定められた事項のみ
会社に関する一切の事項
原則として総株主の議決権の100分の1以上
または300個以上の議決権を有する株主
1個以上の議決権を有する株主
監査役に報告
会社に回復すること
株主の違法行為差止め請
のできない損害が生
求権(360Ⅰ、Ⅲ)
じるおそれ
株主の取締役会召集権・
出席権(367Ⅰ、Ⅲ、Ⅳ)
取締役会を設置しない
(注)1
株主に報告
会社に著しい損害が
生じるおそれ
なし
株主の取締役会議事録閲
裁判所の許可が必要
覧請求権(371Ⅱ、Ⅲ)
監査役に報告
会社に回復すること
のできない損害が生
じるおそれ
株主に報告
会社に著しい損害が
生じるおそれ
あり
裁判所の許可は不要
(注)1.監査役を設置しているものの、当該監査役の権限を会計監査のみに限定している場合を含む。
2.公開会社における株主提案権については、原則として上記以上の議決権を6箇月以上引続き有する株主のみ。
(備考)信金中金総合研究所作成
められた事項のみとされている(図表10)
。
においては、この報告を全株主に対して行う
これに対して、取締役会を設置していない
必要があるとされている。このため、多数の
会社の場合、株主総会が会社に関する一切の
株主を擁している会社においては、相当の負
事項を決議する権限を持つこととされてい
担になるものと思われる。
る。株主は、一定の要件を満たせば株主総会
また、監査役を設置している会社において
に議題等を提出することができることとされ
は、株主が取締役の違法行為の差止めを請求
ているため、
株主総会の権限に制限がないと、
する場合の要件が、監査役を設置していない
株主から想定外の提案が相次ぎ、対応に苦慮
会社に比べ厳格化されている。これは、取締
する事態になることも考えられる。
役の違法行為の差止めを請求するのは、第一
義的には監査役の役割であることによる。
ロ.監査役設置・非設置による差異
さらに、取締役会および監査役を設置して
会社法では、監査役を設置している会社に
いる場合には、株主が取締役会の招集を請求
おいては、取締役は会社に著しい損害をおよ
することはできず、さらに株主が取締役会の
ぼすおそれのある事実を発見した場合は、直
議事録の閲覧を請求するためには、裁判所の
ちに監査役に報告しなければならないとされ
許可を得なければならない。
ている。
これに対し、取締役会を設置しており、か
一方、監査役を設置していない会社、およ
つ監査役を設置していない場合には、株主は
び監査役を設置しているものの当該監査役の
一定の要件の下、取締役会の召集を請求する
権限を会計監査のみに限定している会社(以
ことや、株主自ら取締役会を召集することが
下、監査役を設置していない会社という。
)
できることとされている。さらに、株主が召
解 説
95
集請求等を行った取締役会に出席し、意見を
用が想定されているのは、主に会計監査人を
述べることもできることとされている。
また、
置いていない中小企業である。
株主が取締役会の議事録の閲覧を請求する場
合、裁判所の許可は必要ない。
会計参与になれるのは、税理士、公認会計
士等の会計の専門家に限られており、これら
このように、取締役会や監査役の設置・非
の専門家が計算書類の作成に主体的に関与す
設置により、株主が会社経営に関与できる度
ることで、計算書類の信頼性を高めるねらい
合いが異なる。そのため、多数の株主を擁す
がある。
る中堅企業の場合には、株主と経営者が適切
に役割分担をするという観点から、これらの
ロ.取締役任期の伸長∼2年ごとの再任手続
差異を十分に考慮したうえで、今後の機関構
きが不要に∼
成を検討すべきであろう。
現行法上、取締役の任期は2年を超えるこ
とができないとされていた(注)3。
(4)機関にかかるその他の改正ポイント
イ.会計参与の創設∼計算書類の信頼性の
これに対し、会社法においては、中小企業
の取締役の任期を10年まで伸長することが
向上∼
できることとされている(注)4。したがって、
会計参与とは、取締役等と共同で計算書類
取締役の任期を伸長すれば、現在2年ごとに
を作成する機関である(図表11)
。会計参与
行っている取締役再任手続きにかかる手間や
は、すべての株式会社で任意に設置すること
コストを削減することができる。
ができる。なお、会計参与の設置が義務付け
そもそも、現行法上、取締役の任期を2年
られることはなく、設置するか否かは会社の
としている趣旨は、株主に対して定期的に取
自由な判断に委ねられている。会計参与の利
締役の信任を問うことにある。株主が日々入
図表11 会計参与制度
れ替わる上場企業においては、2年という短
計算書類の取締役等との共同作成
職務内容
会計参与報告の作成
株主総会における計算書類の説明
計算書類の保存、株主・債権者への開示 等
資格要件
責
公認会計士または税理士
(監査法人、税理士法人を含む。)
任 会社・第三者への損害賠償責任
設置の要否 任意
(備考)信金中金総合研究所作成
(注)3.現行法上の委員会等設置会社を除く。
4.委員会設置会社および公開会社を除く。
5.会社法339条参照
96
信金中金月報 2006.3
い期間ごとに取締役の信任を問うことも妥当
であると思われるが、株主の変動が少なく、
株主と取締役が一致していることも多い中小
企業においては、頻繁に取締役の信任を問う
必要性は低い。
ただし、取締役を任期の途中で解任した場
合には、当該取締役から損害賠償を請求され
る可能性がある(注)5。この場合の損害賠償は、
残存任期が長ければ長いほど高くなると考え
与したことのない子B、子Cの3人が相続する
られるため、注意が必要である。
と、後継者であるAの経営権が不安定になっ
なお、会社法においては、監査役の任期も
10年まで伸長することが可能である。
3.事業承継の際に活用できる諸制度
たり、A、B、Cが会社の経営権をめぐって争い、
会社経営が混乱するおそれがある(図表12)。
会社法では、会社にとって好ましくない者
が株式を取得し、会社経営に悪影響を及ぼす
現行法では、会社にとって好ましくない者
ことを防ぐために利用できる制度として、相
が会社株式を取得し、会社経営に悪影響を及
続人等に株式の売渡しを請求できる制度が創
ぼすことを防ぐために、株式に譲渡制限を付
設されている。また、株主の議決権を制限し
けることができる。
た株式を発行したり、株主ごとに議決権等を
しかし、相続や合併による株式の取得は譲
定めることで、会社にとって好ましくない者
渡制限の対象外であるため、会社にとって好
が株式を取得した場合の、会社経営への影響
ましくない者の株式の取得を防止することは
を抑えることもできるようになる。
難しい。
このため 例えば社長が死亡し、社長が保
(1)株式の売渡請求権
有していた会社株式を、後継者として会社経
会社法では、定款で定めることにより、相
営に携わってきた子Aと、会社経営に一切関
続等により取得された株式(注)6について、会
図表12 会社株式の相続例
社が株式取得者に対して、売渡請求をするこ
とが可能になった(図表13)
。
会社は、相続があったことを知った日から
社長・被相続人
(会社株式を保有)
子A
(後継者)
配偶者
(相続開始前に死亡)
子B
子C
(非後継者) (非後継者)
図表13 株式の売渡請求権の行使要件
請求期限
相続等があったことを知った日から1
年以内
請求方法
株主総会の特別決議(総株主の議決
権の過半数を有する株主が出席し、
かつその議決権の3分の2以上の賛成)
売渡価格
当事者間の協議または裁判所による
決定
財
剰余金分配可能額の範囲内
会社株式の他に相続財産がなければ、A、B、Cが
会社株式を均等に相続するのが原則
後継者以外に会社株式が分散することで、会社経
営が混乱するおそれがある。
(備考)信金中金総合研究所作成
源
(備考)信金中金総合研究所作成
(注)6.譲渡制限株式に限る。
解 説
97
1年以内に、株主総会の特別決議(注)7により、
株式の取得者に対し売渡しを請求することが
できる。売渡しの際の株式の価格は、当事者
間で協議して決定することになるが、協議が
整わない場合には裁判所に価格決定の申立を
することができる。
なお、会社が株式を取得するにあたっては、
剰余金分配可能額の範囲内でしか取得できな
いので注意を要する。
図表14 議決権制限株式の発行限度
【現行法】
公開会社
公開会社でない会社
(株式譲渡制限のない会社) (株式譲渡制限会社)
発行済株式総数の
2分の1以下
発行済株式総数の
2分の1以下
【会社法】
公開会社
公開会社でない会社
(株式譲渡制限のない会社) (株式譲渡制限会社)
発行済株式総数の
2分の1以下
制限なし
(備考)信金中金総合研究所作成
(2)議決権制限株式・議決権についての属
人的な定め
限会社において認められている制度を株式会
社に取り入れたものである。
相続に先立って、後継者以外の者に相続さ
あらかじめA、B、Cに少数の株式を取得
れる株式を議決権制限株式にしておくとい
させたうえで、株主ごとに属人的な定め、す
う方法もある。議決権制限株式とは、株主の
なわちB、Cの議決権を制限する定めを置く
議決権の全部または一部に制限のある株式
ことで、議決権制限株式を利用した場合と同
を指す。
様の効果を持たせることができるようになる。
現行法では、議決権制限株式は発行済株式
総数の2分の1までとされていたため、上述
の例において、B、Cが取得する株式が発行
おわりに
現行法においては、株式会社は大企業のた
済株式総数の2分の1を超える場合には、B、
めの、有限会社や合名・合資会社は中小企業
Cが取得するすべての株式を議決権制限株式
のための会社制度として位置づけられてい
にすることはできなかった。
た。そのため、株式会社には大企業にふさわ
しかし、会社法においてはこのような制限
しい厳格かつ詳細な規定が、
有限会社や合名・
がなくなるため(注)8、B、Cが取得する分の株
合資会社には株式会社に比べ簡易な規定が採
式を議決権制限株式にしておくことが可能と
用されていた。
なる(注)9(図表14)
。
しかしながら、実際には多くの中小企業が
また、会社法では、議決権について株式の
株式会社制度を選択している。これらの中小
種類ごとにではなく、株主ごとに属人的な定
企業においては、当然のことながら、大企業
めができることとなった。これは、現行の有
向けに作られた株式会社制度の厳格かつ詳細
(注)7.総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、かつその議決権の3分の2以上の賛成
8.公開会社でない会社(株式譲渡制限会社)に限る。
9.ただし、株式の経済的価値が異なれば、遺留分による調整がされることがある。
98
信金中金月報 2006.3
な規定に沿った運営を行うことは難しい。ま
さらに、会社法においては、主に中小企業
た、現行の株式会社制度においては、中小企
の利用を見込んだ様々な制度が創設されてい
業にとっては無意味な規定も数多く含まれて
る。本稿で取り上げた機関構成の柔軟化や会
いた。このため、
多くの中小企業においては、
計参与の創設、取締役任期の伸長、事業承継
株式会社制度に対する関心が低く、株式会社
の際に利用できる諸制度等のほかにも、会社
制度を経営に活用しようという発想を持つこ
設立手続きの簡素化、合併等の組織再編にか
とも難しかったものと思われる。
かる規制緩和等が行われている。
会社法においては、現行の有限会社制度が
中小企業の経営者においては、こうした法
株式会社制度のなかに取り込まれるかたち
整備の機会を前向きにとらえ、今後は法を遵
で、これらの制度が一本化された。これによ
守するのみならず、法を経営に活用していく
り、株式会社制度は中小企業が無理なく利用
という発想も求められることになろう。
できる制度となった。
〈参考文献〉
相澤哲『一問一答新・会社法』商事法務(2005年7月)
赤羽貴・永井和明『新会社法と金融実務』銀行法務21、経済法令研究会(2005年9月)
江頭憲治郎『会社法制の現代化に関する要綱案の解説』商事法務No1721∼1729、商事法務(2005年2月∼2005年4月)
酒巻俊雄他『新会社法と中小会社の実務対応』中央経済社(2005年8月)
中小企業経営研究会『最終チェック17+3 新会社法』中小企業経営研究会(2005年10月)
中小企業庁『よくわかる中小企業のための新会社法33問33答』中小企業庁財務課(2005年11月)
鳥飼重和他『中小企業の新「会社法」対策Q&A 135問135答』TKC出版(2005年9月)
葉玉匡美『新・会社法100問』ダイヤモンド社(2005年11月)
宮島司『新会社法エッセンス』弘文堂(2005年9月)
弥永真生『リーガルマインド会社法(第9版)』有斐閣(2005年9月)
解 説
99
信金中金だより
信金中央金庫総合研究所活動状況(1月)
1. レポート等の発行
発行日
06.1.4
06.1.4
06.1.10
06.1.16
レポート分類
通巻
タ
イ
ト
ル
内外金利・為替見通し 17-10 ─
上海通信
5
─
香港だより
31
─
中小企業景況レポート 122 10∼12月期業況はバブル崩壊後の最高水準を9年ぶり
06.1.16
06.1.25
(特別調査─平成18年の経営見通し)
貿易投資相談ニュース 129 ─
産業企業情報
17-11 中小企業における新「会社法」の活用ポイント─会社
執 筆
斎藤大紀
─
─
─
者
に更新
─
谷地向ゆかり
法の諸制度を経営に活用するという発想が必要─
2. 講座・講演・放送等の実施
実施日
06.1.5
06.1.6
種類
講演
講演
06.1.6
講演
06.1.10
講演
06.1.10
06.1.11
06.1.13
放送
講演
講演
06.1.13
講演
06.1.16
講座
06.1.17
講演
06.1.18
講演
06.1.18
06.1.19
06.1.19
講演
講演
講演
06.1.19
∼1.20
06.1.21
06.1.23
∼1.24
06.1.24
講演
06.1.26
06.1.26
∼1.27
06.1.30
∼1.31
放送
講演
100
講演
講演
講演
講演
タ
イ
ト
ル
最近の経済・金融情勢について
最近の経済・金融情勢について
講座・講演会・番組名称 場所・放送局等
講 師 等
経済講演会
東京三協信用金庫 斎藤大紀
新春講演会
国分寺町事業所 斎藤大紀
協会
業務別審査態勢の強化 建設業・ 業務別審査態勢の強化 ぐんま信用金庫 長山宗広
不動産業
建設業・不動産業
日本経済を語る
四国地区信用金庫理事 信金中央金庫
武富將
長懇談会
四国支店
物価動向と量的緩和解除の展望
ブルームバーグ・テレビ ブルームバーグ 角田匠
新年の経済展望と地域経済
平成18年新年祝賀会
白根商工会
斎藤大紀
2006年の景況見通し
足利ロータリークラブ 足利ロータリー 藤津勝一
例会
クラブ
各市町村での地域活性化について ロータリークラブ講演会 熊谷ロータリー 笠原博
クラブ
貨幣・物価と中央銀行の金融政策 信金中央金庫寄付講座 慶應義塾大学
日本銀行金融研究所
翁邦雄氏
新年の経済見通しと金融情勢
資金担当役員会議
信金中央金庫
斎藤大紀
岡山支店
新年の経済見通しと金融情勢
埼玉縣信用金庫与野信 埼玉縣信用金庫 斎藤大紀
和会
リレバンと中小企業資金調達円滑化 渉外研修
青梅信用金庫
鉢嶺実
第二創業と企業再生への道
はちしん青年経営塾
八戸信用金庫
鉢嶺実
帯広・十勝の地域づくり街づくり 平成17年度共同研究
帯広信用金庫
笠原博
に関する研究
チームミーティング
地域振興支援実務研修
地域振興支援実務研修 信金中央金庫
長山宗広、
奥津智彦
岡山支店
最近の経済・金融情勢について
講演会
西京信用金庫
斎藤大紀
地域振興支援実務研修
地域振興支援実務研修 信金中央金庫
長山宗広、
奥津智彦
神戸支店
地域コンサルティングについて
小樽市地域コンサルテ 北海信用金庫
笠原博
ィングに係る勉強会
アメリカにおける地域経済の変化 ラジオ深夜便
NHKラジオ
青木武
地域振興支援実務研修
地域振興支援実務研修 信金中央金庫
長山宗広、
奥津智彦
四国支店
地域振興支援実務研修
地域振興支援実務研修 信金中央金庫
長山宗広、
奥津智彦
中国支店
信金中金月報 2006.3
統 計 1.信用金庫統計
(1)信用金庫の主要勘定概況············ 101
(2)信用金庫の店舗数、合併等 ········ 103
(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金 ···· 104
(4)信用金庫の預金者別預金············ 105
(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金 ···· 106
(6)信用金庫の貸出先別貸出金 ········ 107
(7)信用金庫の余裕資金運用状況 ···· 108
2.金融機関業態別統計
(1)業態別預貯金等 ··························· 109
(2)業態別貸出金 ······························· 110
統計資料の照会先:信金中央金庫 総合研究所
Tel 03-3563-7541 Fax 03-3563-7551
(凡 例)
1.金額は、単位未満切捨てとした。
2.比率は、原則として小数点以下第1位までとし第2位以下切捨てとした。
3.記号・符号表示は次のとおり。
〔 0 〕ゼロまたは単位未満の計数 〔─〕該当計数なし
〔△〕減少または負
〔…〕不詳または算出不能
〔*〕1,000%以上の増加率
〔 p 〕速報数字
〔 r 〕訂正数字
〔 b 〕b 印までの数字と次期以降との数字は不連続
4.地区別統計における地区のうち、関東には山梨、長野、新潟を含む。東海は静岡、愛知、岐阜、三重の
4県、九州北部は福岡、佐賀、長崎の3県、南九州は熊本、大分、宮崎、鹿児島の4県である。
※ 信金中金総合研究所のホームページ(http://www.scbri.jp/)よりExcel形式の統計資料をダウンロードすることができます。
1.(1)信用金庫の主要勘定概況(2005年12月末)
○預 金
12月の全国信用金庫の預金は、月中1兆5,284億円、1.4%増と、前年同月(1兆5,109億円、1.4%増)と同様
に増加した。
① 要求払預金は、各種自振口資金の流出がみられたものの、年金振込金の滞留、ボーナス預金の受入れ、
月末休日による残高高どまり等から、月中1兆3,923億円、3.7%増と、前年同月(1兆2,355億円、3.5%増)
と同様に増加した。
② 定期性預金は、個人向け国債等他商品へのシフトがみられたものの、ボーナス預金の受入れや、預金増
強キャンペーンの実施等から、月中1,408億円、0.1%増と、前年同月(3,155億円、0.4%増)と同様に増加
した。
③ 外貨預金等は、月中48億円、1.0%減少した。
なお、2005年12月末の預金の前年同月比増減率は、1.6%増となった。
○貸出金
貸出金は、月中1兆396億円、1.6%増と、前年同月(9,458億円、1.5%増)と同様に増加した。
① 割引手形は、月末休日による商手決済の翌月へのズレ込みや、季節的要因による持込手形の増加等から、
月中3,375億円、18.0%増と、前年同月(3,495億円、16.9%増)と同様に増加した。
② 貸付金は、住宅ローンの実行、季節的資金需要の増加、月末休日による回収分の翌月へのズレ込み等から、
月中7,020億円、1.1%増と、前年同月(5,962億円、0.9%増)と同様に増加した。
なお、2005年12月末の貸出金の前年同月比増減率は、0.4%増となった。
○余資運用資産
余資運用資産は、月中4,781億円、0.9%増と、前年同月(5,859億円、1.1%増)と同様に増加した。
主な内訳をみると、預け金は、月中603億円、0.2%増となった。
金融機関貸付等は、買入手形が増加したものの、コールローンが減少したことから、月中1,500億円、4.5%
減となった。
有価証券は、外国証券(73億円減)が減少したものの、国債(703億円増)、地方債(336億円増)、社債(791
億円増)
、株式(294億円増)等が増加したことから、月中2,209億円、0.7%増となった。
統 計
101
信用金庫の主要勘定増減状況(2005年12月末)
区
分
現
(
(
(
産
項
目
(
(
負
債
項
目
会
会
員
勘
定
員
勘
定
普
通
出 資 金
優
先
出 資 金
優 先 出 資 払 込 金
資
本
準 備 金
そ の 他 資 本 剰 余 金
利
益
準 備 金
特
別
積 立 金
前
期
繰 越 金
未 処 分 剰 余 金
土 地 再 評 価 差 額 金
株 式 等 評 価 差 額 金
処 分 未 済 持 分
自己優先出資払込金
自 己 優 先 出 資
高
増
1,804,010
243,058 )
(
20,765,191
19,185,875 )
(
43,500 )
(△
31,130
△
1,000
1,100
26,030
△
2,999
0
336,076
△
300,047
△
7,015
△
30,147,656
8,495,778
3,476,511
32,187
11,672,846
619,216
56
818,280
4,910,608
△
122,169
53,391,127
63,172,388
62,287,021 )
(
2,210,519
60,961,869
6,863,379
51,120,319
2,978,169
110,311,154
108,975,033 )
(
38,154,125
3,015,154
32,933,433
1,274,478
219,939
672,600
△
38,517
71,693,860
65,247,483
6,446,376
△
463,168
△
110,068,095
162,971
△
△
550,543
57.1
資
金
(小 切 手 ・ 手 形)
預
け
金
(信 金 中 金 預 け 金)
(譲 渡 性 預 け 金)
金 融 機 関 貸 付 等
金 融 機 関 貸 付 金
買
入
手
形
コ ー ル ロ ー ン
買
現
先 勘 定
債券貸借取引支払保証金
買 入 金 銭 債 権
金
銭
の 信 託
商 品 有 価 証 券
有
価
証
券
国
債
地
方
債
短
期
社
債
社
債
株
式
貸
付
信
託
投
資
信
託
外
国
証
券
そ の 他 の 証 券
小
計
貸
出
金
(月
中
平
残)
割
引
手
形
貸
付
金
手
形
貸
付
証
書
貸
付
当
座
貸
越
預
金
・ 積 金
(月
中
平
残)
要
求
払 預 金
当
座
預
金
普
通
預
金
貯
蓄
預
金
通
知
預
金
別
段
預
金
納 税 準 備 預 金
定
期
性 預 金
定
期
預
金
定
期
積
金
外
貨
預 金 等
実
質
預
金
譲
渡
性 預 金
借
用
金
預
貸
率
残
△
5,850,367
594,203
63,490
0
36,233
0
370,414
4,461,241
139,565
672
185,351
0
805
0
0
(単位:百万円、%)
前 月 比 増 減
△
△
△
△
減
額
増 減 率
218,372
96,602 )
(
60,337
36,019 )
(
7,500 )
(△
1,500
△
0
1,100
2,600
△
0
0
15,312
△
4,524
△
258
△
220,991
70,394
33,620
701
79,177
29,412
0
14,654
7,374
△
406
478,106
1,039,641
448,598 )
(
337,546
702,096
181,567
510,234
10,293
1,528,456
682,248 )
(
1,392,370
486,747
1,148,417
12,710
75,933
332,484
△
1,047
140,891
280,710
139,819
△
4,805
△
1,431,854
5,204
△
30,067
△
12,503
948
6,100
0
6,100
0
272
314
202
282
270
0
155
0
0
△
△
△
△
信金中金月報 2006.3
月
前年同月比
月中増減額
月中増減率
増 減 率
6.2
235,521
13.9
2.0
4.5 )
(
116,688 )
(
84.5 )
(△ 12.7 )
1.2
352,586
1.7
5.2
1.7 )
(
293,798 )
(
1.5 )
(
3.2 )
3.5 )
(
4,000 )
(
10.5 )
(△ 30.5 )
57.0
15,195
26.4
24.5
─
0
─
─
─
0
─
─
58.3
15,195
32.0
39.1
70.0
0
0.0
42.8
─
0
─
△ 100.0
16.1
20,877
5.4
△ 12.0
8.4
△
755
△
0.2
△
0.6
23.4
△
392
△
4.1
△ 56.1
8.0
△
37,104
△
0.1
4.2
13.4
62,706
0.8
8.9
14.6
△
2,637
△
0.0
15.5
*
0
0.0
─
5.0
△
94,106
△
0.8
△
1.4
14.7
△
1,438
△
0.2
17.6
21.1
0
0.0
△ 83.0
19.8
△
10,279
△
1.4
11.8
1.1
8,556
0.1
2.6
91.3
95
0.1
1.2
3.3
585,927
1.1
4.3
0.4
945,806
1.5
△
0.5
0.3 )
(
405,622 )
(
0.6 )
(△
0.6 )
8.3
349,556
16.9
△
7.5
0.7
596,249
0.9
△
0.2
7.2
162,372
2.2
△
7.5
2.0
469,823
0.9
1.1
1.5
△
35,946
△
1.1
△
4.7
1.6
1,510,993
1.4
1.6
1.7 )
(
832,678 )
(
0.7 )
(
1.6 )
7.2
1,235,564
3.5
5.8
7.0
494,509
21.2
5.6
7.6
1,134,369
3.8
6.7
2.3
△
2,585
△
0.1
△
1.2
8.3
91,591
61.7
3.7
14.9
△
483,289
△ 45.2
△ 16.0
1.7
968
2.5
△
0.1
1.1
315,589
0.4
△
0.3
0.4
439,969
0.6
0.1
7.1
△
124,381
△
1.7
△
5.2
4.7
△
40,159
△
8.3
6.4
1.6
1,394,305
1.3
1.6
30.1
5,043
4.1
63.3
4.0
△
18,639
△
3.4
1.7
前年同月比
増 減 率
13.7
△
65.9 )
(△
0.2
△
0.1 )
(△
14.7 )
(
4.5
△
0.0
─
9.0
△
0.0
△
─
4.3
△
1.4
△
3.5
△
0.7
0.8
0.9
2.2
0.6
4.9
0.0
△
1.8
0.1
△
0.3
0.9
1.6
0.7 )
(
18.0
△
1.1
2.7
△
1.0
0.3
△
1.4
0.6 )
(
3.7
19.2
3.6
1.0
△
52.7
△
33.0
2.7
△
0.1
△
0.4
△
2.1
△
1.0
1.3
3.0
5.1
0.2
0.1
10.6
─
20.2
─
0.0
0.0
0.1
29.5
0.1
─
─
─
─
(備考)1.預貸率=貸出金/預金・積金× 100(預金には譲渡性預金を含む。)
(備考)2.前年同月比増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
102
前
3.3
1.8
45.6
─
16.9
─
3.4
3.0
17.1
△ 85.4
△
4.4
△ 100.0
─
─
─
△
△
年
252
900
0
0
0
0
0
0
0
261
396
0
11
0
0
同
△
△
0.0
0.1
0.0
─
0.0
─
0.0
0.0
0.0
5.3
0.2
0.0
─
─
─
2.4
3.6
147.8
─
126.7
△ 100.0
△
0.3
1.5
19.6
99.6
△
6.0
─
─
─
─
1.(2)信用金庫の店舗数、合併等
信用金庫の店舗数、会員数、常勤役職員数の推移
年月末
2002.03
03.03
04.03
04.06
9
12
05.01
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
06.01
本 店
(信用金庫数)
349
326
306
306
304
301
301
299
298
298
298
298
297
297
297
296
294
294
292
店 舗 数
支 店
出張所
合 計
7,781
7,673
7,471
7,452
7,398
7,347
7,344
7,329
7,312
7,309
7,301
7,291
7,273
7,268
7,243
7,222
7,209
7,206
270
264
282
281
273
270
269
272
269
272
276
279
283
284
290
290
291
292
8,400
8,263
8,059
8,039
7,975
7,918
7,914
7,900
7,879
7,879
7,875
7,868
7,853
7,849
7,830
7,808
7,794
7,792
会 員 数
(単位:店、人)
常 勤 役 職 員 数
職 員
男 子
女 子
計
91,451
38,851
130,302
87,922
37,086
125,008
84,345
35,051
119,396
84,696
36,381
121,077
83,744
35,395
119,139
82,878
34,655
117,533
82,603
34,435
117,038
82,375
34,284
116,659
81,431
33,342
114,773
82,876
35,514
118,390
82,682
35,363
118,045
82,253
34,988
117,241
81,956
34,689
116,645
81,695
34,448
116,143
81,297
34,091
115,388
81,151
33,922
115,073
80,990
33,833
114,823
80,624
33,388
114,012
常勤役員
8,981,084
9,001,391
9,091,805
9,112,262
9,121,880
9,136,429
9,139,656
9,144,344
9,134,192
9,139,669
9,144,928
9,150,605
9,151,288
9,152,619
9,156,610
9,160,953
9,165,485
9,175,347
2,734
2,557
2,396
2,385
2,373
2,358
2,355
2,351
2,342
2,340
2,336
2,308
2,306
2,302
2,301
2,296
2,295
2,291
合 計
133,036
127,565
121,792
123,462
121,512
119,891
119,393
119,010
117,115
120,730
120,381
119,549
118,951
118,445
117,689
117,369
117,118
116,303
信用金庫の合併等
年 月 日
2003年 7 月 7 日
2003年 7 月 7 日
2003年 7 月22日
2003年 7 月22日
2003年10月20日
2003年10月20日
2003年10月20日
2003年11月 4 日
2004年 1 月13日
2004年 1 月19日
2004年 1 月19日
2004年 2 月 9 日
2004年 2 月 9 日
2004年 2 月16日
2004年 3 月22日
2004年 7 月12日
2004年 7 月20日
2004年10月12日
2004年11月15日
2004年11月22日
2005年 1 月 4 日
2005年 2 月14日
2005年 2 月14日
2005年 3 月14日
2005年 7 月19日
2005年10月17日
2005年11月21日
2005年11月21日
2006年 1 月10日
異 動 金 庫 名
芝
東調布
一宮
愛北
津島
東京東
小岩
赤穂
伊那
秋田
五城目
富山
射水
福岡ひびき
新北九州
門司
築上
能登
共栄
王子
太陽
荒川
日興
直江津
高田
北伊勢
上野
高松
さぬき
鹿児島相互
川内
興能
(高浜信組)
金沢
福光
下関
豊浦
彦根
近江八幡
大阪
南大阪
大牟田
柳川
足利
小山
伊勢崎太田
北海
古平
阪奈
八光
(大分県信組) 杵築
仙台
塩竈
高鍋
西諸
広島
大竹
新川水橋
滑川
多摩中央
八王子
太平
直方
新金庫名
芝
いちい
東京東
アルプス中央
秋田
富山
福岡ひびき
のと共栄
城北
上越
北伊勢上野
高松
鹿児島相互
興能
金沢
下関
滋賀中央
大阪
大牟田柳川
足利小山
アイオー
北海
大阪東
(大分県信組)
杜の都
高鍋
広島
にいかわ
多摩
金庫数
325
323
322
321
320
319
315
314
311
310
309
308
307
307
306
305
304
303
302
301
301
300
299
298
297
296
295
294
292
異動の種類
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
合併
名称変更
合併
合併
合併・解散
合併
合併
合併
合併
合併
統 計
103
1.(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金
預金種類別預金
(単位:億円、%)
預金計
年 月 末
2001.03
02.03
03.03
04.03
6
9
04.12
05.01
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1,038,043
1,028,198
1,035,536
1,055,175
1,070,958
1,070,466
1,085,557
1,073,341
1,078,486
1,074,324
1,085,423
1,079,152
1,088,655
1,087,221
1,088,765
1,089,613
1,089,159
1,087,826
1,103,111
前年同月比
増 減 率
1.7
△ 0.9
0.7
1.8
1.5
1.5
1.6
1.6
1.6
1.8
2.1
1.7
1.6
1.6
1.6
1.8
1.5
1.6
1.6
要求払
230,205
297,903
312,842
328,610
341,198
340,543
355,831
342,412
349,189
350,807
362,751
356,172
363,761
360,798
362,335
365,972
367,280
367,617
381,541
前年同月比
増 減 率
7.3
29.4
5.0
5.0
4.9
5.5
5.8
5.5
5.4
6.7
7.7
6.6
6.6
6.7
6.9
7.4
6.5
7.0
7.2
定期性
801,008
723,681
716,192
720,951
724,892
725,012
725,305
726,009
724,527
717,300
718,091
718,034
719,880
721,770
721,524
718,954
717,139
715,529
716,938
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
0.4
6,829 △ 20.0
△ 9.6
6,613 △ 3.1
△ 1.0
6,500 △ 1.7
0.6
5,614 △ 13.6
△ 0.0
4,866
5.1
△ 0.1
4,910 △ 4.2
△ 0.3
4,419
6.4
△ 0.1
4,919
18.9
△ 0.1
4,769
17.5
△ 0.4
6,216
10.7
△ 0.4
4,580
1.7
△ 0.6
4,945
8.6
△ 0.6
5,013
3.0
△ 0.7
4,652
10.0
△ 0.7
4,905
3.9
△ 0.7
4,686 △ 4.5
△ 0.8
4,739
10.9
△ 0.8
4,679 △ 2.9
△ 1.1
4,631
4.7
実質預金
1,033,760
1,024,192
1,032,788
1,052,971
1,069,538
1,068,785
1,083,009
1,071,968
1,077,044
1,072,219
1,082,752
1,077,678
1,087,371
1,084,624
1,087,463
1,087,757
1,087,771
1,086,362
1,100,680
前年同月比
増 減 率
1.6
△ 0.9
0.8
1.9
1.5
1.6
1.6
1.7
1.7
1.8
2.0
1.7
1.7
1.6
1.6
1.8
1.6
1.6
1.6
譲渡性預金
105
114
244
789
938
1,099
1,252
1,109
1,303
999
1,184
1,111
1,394
1,405
1,462
1,326
1,437
1,681
1,629
前年同月比
増 減 率
△ 13.3
7.9
113.7
223.1
44.1
20.0
63.3
14.8
52.3
26.6
65.4
34.8
48.6
43.7
21.1
20.6
25.1
39.9
30.1
(備考)1.預金計には譲渡性預金を含まない。
(備考)2.実質預金は預金計から小切手・手形を差引いたもの。
(備考)3.2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
地区別預金
年 月 末
2001.03
02.03
03.03
04.03
6
9
04.12
05.01
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
年 月 末
2001.03
02.03
03.03
04.03
6
9
04.12
05.01
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
(単位:億円、%)
北海道
53,392
54,596
55,302
56,194
57,357
56,869
58,882
56,990
57,170
57,186
57,863
57,328
58,307
57,978
57,977
57,638
57,625
58,068
59,695
近
畿
207,950
201,814
201,600
205,213
208,296
208,501
210,818
209,303
210,071
209,461
212,010
210,965
212,695
212,546
212,868
213,535
214,020
213,536
216,153
前年同月比
増 減 率
3.2
2.2
1.2
1.6
1.5
2.0
2.0
1.7
1.7
1.7
1.6
1.2
1.6
1.7
1.4
1.3
1.0
0.9
1.3
前年同月比
増 減 率
0.7
△ 2.9
△ 0.1
1.7
1.6
1.5
1.8
1.9
1.9
2.0
2.5
2.2
2.1
2.0
2.1
2.4
2.5
2.4
2.5
東
北
39,684
39,036
39,462
39,896
40,639
40,438
41,067
40,597
40,782
40,036
40,836
40,457
40,773
40,634
40,683
40,518
40,708
40,594
41,041
中
国
49,578
49,651
50,175
50,456
51,106
50,911
51,687
50,987
51,438
51,044
51,615
51,109
51,784
51,582
51,714
51,572
51,495
51,270
51,913
前年同月比
増 減 率
2.1
△ 1.6
1.0
1.0
0.7
0.7
0.5
0.5
0.4
0.3
0.6
0.5
0.3
0.2
0.2
0.1
△ 0.0
0.1
△ 0.0
前年同月比
増 減 率
0.1
0.1
1.0
0.5
0.1
0.1
1.0
1.2
1.6
1.1
1.7
1.0
1.3
1.0
1.3
1.2
0.9
0.7
0.4
東
京
194,416
190,125
193,270
196,903
199,329
199,504
201,919
199,994
201,060
200,759
202,302
201,265
202,650
202,677
202,495
203,468
203,396
203,419
205,991
四
国
17,773
18,064
18,206
18,625
18,887
18,954
19,263
19,089
19,200
19,286
19,453
19,456
19,695
19,705
19,714
19,766
19,637
19,677
19,939
前年同月比
増 減 率
1.2
△ 2.2
0.8
1.8
1.4
1.5
1.3
1.2
1.3
1.9
2.0
1.6
1.6
1.6
1.7
1.9
1.5
1.9
2.0
前年同月比
増 減 率
3.3
1.6
0.7
2.3
2.1
2.5
2.6
2.4
2.5
3.5
3.9
4.0
4.2
4.0
4.0
4.2
3.3
3.8
3.5
関
東
199,809
198,309
197,820
201,888
205,068
204,838
208,026
205,579
206,371
205,375
207,339
205,933
207,716
207,425
208,072
208,032
207,891
207,522
210,703
九州北部
17,940
17,916
17,984
18,298
18,751
18,665
19,087
18,830
18,966
18,597
19,085
18,940
19,124
19,146
19,188
19,041
19,128
19,046
19,319
前年同月比
増 減 率
1.0
△ 0.7
0.4
2.0
1.6
1.6
1.6
1.6
1.4
1.7
1.9
1.3
1.2
1.3
1.3
1.5
1.1
1.3
1.2
前年同月比
増 減 率
3.0
△ 0.1
0.3
1.7
0.8
1.1
1.7
1.4
1.7
1.6
2.3
1.9
1.9
2.2
2.3
2.0
1.6
1.5
1.2
(備考)1.沖縄地区は全国に含めた。
(備考)2.東京・関東地区の2003年3月の増減率は、地区間の事業譲渡を調整して算出
(備考)3.南九州地区・全国の2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
104
信金中金月報 2006.3
北
陸
31,560
31,829
32,313
32,710
33,249
33,031
33,312
32,991
33,146
33,050
33,317
33,145
33,407
33,357
33,416
33,331
33,307
33,276
33,659
南九州
24,392
23,556
23,746
24,219
24,541
24,525
25,117
24,695
24,628
24,085
24,493
24,375
24,541
24,572
24,531
24,475
24,466
24,363
24,727
前年同月比
増 減 率
2.6
0.8
1.5
1.2
1.3
0.7
0.6
0.5
0.4
1.0
0.9
0.7
0.4
0.6
0.6
0.9
0.8
1.1
1.0
前年同月比
増 減 率
1.0
△ 3.4
0.8
1.9
1.1
0.9
1.0
1.5
1.6
1.0
2.3
1.7
1.5
1.7
1.3
1.3
0.9
0.6
△ 0.0
東
海
200,034
201,901
204,281
209,402
212,288
212,782
214,966
212,887
214,266
213,983
215,642
214,770
216,436
216,086
216,617
216,769
216,052
215,623
218,546
全国計
1,038,043
1,028,198
1,035,536
1,055,175
1,070,958
1,070,466
1,085,557
1,073,341
1,078,486
1,074,324
1,085,423
1,079,152
1,088,655
1,087,221
1,088,765
1,089,613
1,089,159
1,087,826
1,103,111
前年同月比
増 減 率
3.5
0.9
1.1
2.5
1.9
2.1
2.0
2.1
2.1
2.1
2.4
2.0
1.9
1.9
1.8
1.8
1.7
1.6
1.6
前年同月比
増 減 率
1.7
△ 0.9
0.7
1.8
1.5
1.5
1.6
1.6
1.6
1.8
2.1
1.7
1.6
1.6
1.6
1.8
1.5
1.6
1.6
1.(4)信用金庫の預金者別預金
(単位:億円、%)
年 月 末
預金計
2001.03
02.03
03.03
04.03
6
9
04.12
05.01
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1,037,617
1,027,696
1,035,334
1,054,774
1,070,956
1,070,465
1,085,555
1,073,340
1,078,485
1,074,223
1,085,421
1,079,151
1,088,653
1,087,220
1,088,763
1,089,612
1,089,157
1,087,825
1,103,110
年 月 末
一般法人預金
2001.03
02.03
03.03
04.03
6
9
04.12
05.01
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
年 月 末
2001.03
02.03
03.03
04.03
6
9
04.12
05.01
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
200,268
182,602
173,622
175,652
176,093
178,967
184,607
174,643
174,309
178,067
184,444
176,870
177,155
180,001
174,200
181,345
178,309
178,644
186,837
要求払
3,569
12,046
11,804
9,929
12,665
11,564
10,154
11,798
12,060
10,292
10,506
14,368
12,975
10,906
13,594
12,164
11,825
13,636
10,441
前年同月比
増 減 率
1.7
△ 0.9
0.7
1.8
1.5
1.5
1.6
1.6
1.6
1.8
2.1
1.7
1.6
1.6
1.6
1.8
1.5
1.6
1.6
個人預金
前年同月比
増 減 率
△ 0.4
△ 8.8
△ 4.9
1.1
0.8
1.1
0.5
△ 1.4
△ 1.4
1.4
3.8
0.7
0.6
0.5
0.4
1.3
△ 1.0
1.0
1.2
要求払
前年同月比
増 減 率
3.9
237.4
△ 2.0
△ 15.8
△ 11.0
△ 3.3
1.8
23.0
25.6
3.7
△ 11.3
3.3
2.5
1.0
4.4
5.2
24.6
4.3
2.9
定期性
792,296
802,012
820,195
842,751
851,169
850,091
863,937
859,332
864,889
861,039
866,517
860,570
869,500
868,157
871,740
867,853
871,741
867,927
879,663
69,649
85,538
84,315
88,396
89,404
92,295
99,046
88,933
88,851
93,657
99,974
93,057
93,743
96,752
90,912
98,079
94,945
95,955
104,457
20,719
10,738
10,366
10,554
15,453
14,145
12,657
12,552
11,666
9,410
10,534
11,850
14,284
14,489
14,080
13,407
12,888
12,547
12,173
前年同月比
増 減 率
3.1
1.2
2.2
2.7
2.2
2.0
2.1
2.0
2.0
2.2
2.3
2.1
2.1
2.1
2.1
2.1
1.9
1.9
1.8
要求払
前年同月比
増 減 率
11.2
22.8
△ 1.4
4.8
4.4
4.4
3.1
△ 0.7
△ 0.4
5.9
10.9
5.1
4.8
4.6
4.6
6.2
1.4
5.3
5.4
定期性
153,271
195,149
211,169
226,091
235,714
233,048
244,003
238,588
244,256
243,198
249,912
244,912
254,127
250,966
254,458
252,417
257,750
254,484
264,251
130,298
96,760
88,922
86,899
86,322
86,312
85,187
85,326
85,125
84,078
84,131
83,482
83,097
82,939
82,979
82,962
83,076
82,422
82,105
前年同月比
増 減 率
8.0
27.3
8.2
7.0
6.6
7.0
7.5
7.0
6.5
7.5
8.1
7.6
7.8
7.9
8.1
8.3
7.6
8.1
8.3
定期性
638,772
606,630
608,742
616,073
614,853
616,392
619,105
619,861
619,748
616,915
615,699
614,775
614,540
616,432
616,518
614,698
613,315
612,835
614,856
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
2.0
240
0.5
△ 5.0
220 △ 8.3
0.3
273
24.1
1.2
576
110.9
0.6
591
85.7
0.2
641
57.3
0.0
818
50.2
0.2
872
57.7
0.3
874
54.4
0.1
915
58.7
0.1
894
49.0
0.1
872
51.6
△ 0.0
822
39.0
△ 0.0
748
22.2
△ 0.1
753
17.0
△ 0.2
727
13.3
△ 0.3
665 △ 2.4
△ 0.3
597 △ 22.9
△ 0.6
546 △ 33.1
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
△ 5.7
309 △ 4.1
△ 25.7
293 △ 5.0
△ 8.1
376
28.2
△ 2.2
349 △ 7.3
△ 2.5
358
1.4
△ 2.1
350 △ 9.2
△ 2.3
365 △ 2.0
△ 2.2
374
2.4
△ 2.4
324 △ 6.6
△ 3.1
323 △ 7.4
△ 3.4
330 △ 3.9
△ 3.7
323 △ 6.7
△ 3.6
306 △ 14.3
△ 3.8
301 △ 13.5
△ 3.6
300 △ 16.7
△ 3.8
294 △ 15.9
△ 3.5
279 △ 23.5
△ 3.4
259 △ 29.7
△ 3.5
266 △ 27.0
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
△ 0.2
611
33.9
△ 48.1
200 △ 67.1
△ 3.4
118 △ 41.2
1.8
298
152.7
△ 3.0
371
77.8
2.8
190
266.5
△ 1.2
22 △ 60.1
△ 0.2
7 △ 41.2
△ 1.2
2 △ 97.7
△ 10.8
349
17.2
△ 8.3
1 △ 97.9
△ 11.8
85
340.4
△ 7.5
110 △ 70.1
△ 7.9
60
438.6
△ 9.1
166
8.2
△ 5.1
77 △ 59.3
△ 4.6
85 △ 19.2
△ 4.3
223 △ 17.0
△ 3.7
37
64.8
金融機関預金
20,141
20,084
19,217
15,579
15,195
15,497
14,168
14,997
15,549
15,055
13,410
15,397
14,619
13,596
14,974
14,756
14,300
14,838
13,948
公金預金
24,903
22,990
22,292
20,785
28,493
25,904
22,838
24,362
23,732
20,055
21,045
26,307
27,373
25,460
27,844
25,652
24,801
26,410
22,656
政府関係
前年同月比 預 り 金
増 減 率
△ 22.1
2
△ 0.2
2
△ 4.3
1
△ 18.9
0
△ 11.9
0
△ 13.8
0
△ 9.0
0
4.2
0
3.8
0
△ 3.3
0
△ 11.1
0
△ 2.8
0
△ 3.7
0
△ 0.2
0
△ 2.3
0
△ 4.7
0
6.6
0
△ 4.9
0
△ 1.5
0
前年同月比
増 減 率
0.9
△ 7.6
△ 3.0
△ 6.7
△ 6.2
0.5
△ 0.0
9.8
10.3
△ 3.4
△ 10.0
△ 3.8
△ 3.8
△ 4.0
△ 2.8
△ 0.9
7.2
△ 0.1
△ 0.7
譲渡性預金
105
114
244
789
938
1,099
1,252
1,109
1,303
999
1,184
1,111
1,394
1,405
1,462
1,326
1,437
1,681
1,629
(備考)1.日本銀行『預金現金貸出金調査表』より作成。このため、
『日計表』による
(3)
預金種類別預金、地区別預金の預金計とは
(備考)1一致しない。
(備考)2.2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
統 計
105
1.(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金
科目別貸出金
年 月 末
2001.03
02.03
03.03
04.03
6
9
04.12
05.01
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
(単位:億円、%)
貸出金計
661,879
639,805
626,342
622,364
615,321
622,105
629,296
620,383
619,366
620,948
618,219
613,898
615,243
619,498
616,620
623,513
620,399
621,327
631,723
割引手形
前年同月比
増 減 率
△ 3.6
△ 3.3
△ 2.1
△ 0.6
△ 0.7
△ 0.5
△ 0.5
△ 1.1
△ 1.1
△ 0.1
0.2
△ 0.0
0.0
△ 0.0
0.0
0.2
△ 0.1
0.2
0.4
33,932
28,762
24,051
22,388
21,682
20,832
24,118
21,074
20,401
20,555
22,005
19,639
19,607
21,568
18,902
19,111
18,700
18,729
22,105
貸付金
前年同月比
増 減 率
6.7
△ 15.2
△ 16.3
△ 6.9
△ 5.9
△ 6.3
△ 7.5
△ 16.9
△ 17.8
△ 8.1
0.6
△ 9.5
△ 9.5
△ 8.9
△ 8.4
△ 8.2
△ 17.6
△ 9.1
△ 8.3
627,946
611,043
602,291
599,975
593,638
601,273
605,177
599,309
598,965
600,393
596,213
594,258
595,636
597,930
597,718
604,401
601,698
602,597
609,618
前年同月比
増 減 率
△ 4.1
△ 2.6
△ 1.4
△ 0.3
△ 0.5
△ 0.3
△ 0.2
△ 0.4
△ 0.4
0.1
0.1
0.3
0.3
0.3
0.3
0.5
0.4
0.5
0.7
手形貸付
97,975
90,943
84,739
77,758
71,481
73,854
74,024
72,073
72,137
71,918
68,773
66,464
66,413
66,953
66,820
68,330
67,133
66,818
68,633
前年同月比
増 減 率
△ 9.1
△ 7.1
△ 6.8
△ 8.2
△ 8.6
△ 7.6
△ 7.5
△ 7.9
△ 7.6
△ 7.4
△ 7.4
△ 7.2
△ 7.0
△ 6.8
△ 7.3
△ 7.4
△ 7.4
△ 7.6
△ 7.2
証書貸付
493,986
485,532
484,045
490,499
491,932
495,820
500,898
497,248
496,760
498,000
498,348
498,370
500,069
502,039
501,634
505,431
505,231
506,100
511,203
前年同月比
増 減 率
△ 2.9
△ 1.7
△ 0.3
1.3
1.1
1.1
1.1
0.9
0.9
1.5
1.6
1.6
1.6
1.6
1.7
1.9
1.8
2.0
2.0
当座貸越
35,984
34,567
33,506
31,717
30,223
31,598
30,254
29,986
30,067
30,473
29,091
29,423
29,153
28,937
29,262
30,639
29,333
29,678
29,781
前年同月比
増 減 率
△ 6.5
△ 3.9
△ 3.0
△ 5.3
△ 5.5
△ 4.4
△ 4.7
△ 4.1
△ 3.7
△ 3.8
△ 4.7
△ 4.0
△ 3.5
△ 3.7
△ 3.5
△ 3.0
△ 2.7
△ 3.0
△ 1.5
(備考)2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
地区別貸出金
年 月 末
2001.03
02.03
03.03
04.03
6
9
04.12
05.01
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
年 月 末
2001.03
02.03
03.03
04.03
6
9
04.12
05.01
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
(単位:億円、%)
北海道
29,377
29,521
29,628
29,855
28,524
29,485
30,313
29,481
29,574
29,999
29,459
29,051
29,029
29,237
29,200
29,610
29,707
29,663
30,593
近
畿
136,814
130,271
124,418
122,626
121,845
122,425
123,521
121,850
121,622
121,978
122,233
121,457
121,620
122,599
121,873
123,271
122,921
123,184
125,416
前年同月比
増 減 率
△ 2.7
0.4
0.3
0.7
0.9
1.3
0.7
0.0
0.3
0.4
1.0
1.8
1.7
1.5
1.2
0.4
△ 0.0
0.1
0.9
前年同月比
増 減 率
△ 5.5
△ 4.7
△ 4.4
△ 1.4
△ 1.5
△ 1.4
△ 1.4
△ 2.1
△ 1.9
△ 0.5
0.1
△ 0.2
△ 0.1
△ 0.1
0.1
0.6
0.3
1.1
1.5
東
北
24,875
24,520
24,413
23,865
23,242
23,543
23,624
23,352
23,406
23,463
23,235
22,941
22,966
23,062
23,009
23,184
23,170
23,191
23,380
中
国
31,863
30,826
30,140
29,815
29,412
29,702
29,852
29,494
29,591
29,537
29,269
28,914
28,996
29,179
29,036
29,275
29,059
29,069
29,457
前年同月比
増 減 率
△ 0.8
△ 1.4
△ 0.4
△ 2.2
△ 2.0
△ 1.6
△ 2.1
△ 2.4
△ 2.2
△ 1.6
△ 1.2
△ 1.4
△ 1.1
△ 1.2
△ 1.2
△ 1.5
△ 1.5
△ 1.1
△ 1.0
前年同月比
増 減 率
△ 4.7
△ 3.2
△ 2.2
△ 1.0
△ 0.7
△ 0.9
△ 0.8
△ 1.2
△ 1.0
△ 0.9
△ 0.5
△ 1.4
△ 1.4
△ 1.3
△ 1.5
△ 1.4
△ 1.7
△ 1.3
△ 1.3
東
京
131,381
125,915
124,445
123,525
123,115
123,743
125,326
123,555
123,201
123,026
123,043
122,109
122,684
123,667
122,756
123,856
123,478
123,774
125,602
四
国
11,060
10,974
10,823
10,800
10,628
10,774
10,874
10,731
10,715
10,753
10,629
10,583
10,627
10,633
10,628
10,727
10,601
10,587
10,666
前年同月比
増 減 率
△ 2.8
△ 4.1
△ 2.1
△ 0.7
△ 0.9
△ 0.8
△ 0.8
△ 1.4
△ 1.3
△ 0.4
△ 0.2
△ 0.6
△ 0.3
△ 0.4
△ 0.2
0.0
△ 0.3
0.2
0.2
前年同月比
増 減 率
△ 0.3
△ 0.7
△ 1.3
△ 0.2
△ 1.4
△ 0.8
△ 0.1
△ 0.9
△ 0.7
△ 0.4
△ 0.4
△ 0.6
△ 0.0
△ 0.2
△ 0.4
△ 0.4
△ 1.3
△ 1.3
△ 1.9
関
東
125,418
120,357
116,756
116,513
115,517
117,045
118,592
117,144
116,879
117,256
116,611
116,091
116,319
116,893
116,464
117,845
117,014
117,219
118,889
九州北部
11,797
11,551
11,575
11,406
11,184
11,311
11,502
11,362
11,371
11,364
11,284
11,176
11,223
11,346
11,323
11,408
11,412
11,432
11,631
前年同月比
増 減 率
△ 6.0
△ 4.0
△ 1.9
△ 0.2
△ 0.2
0.0
0.1
△ 0.4
△ 0.6
0.6
0.7
0.6
0.6
0.6
0.5
0.6
0.0
0.2
0.2
前年同月比
増 減 率
△ 1.9
△ 2.0
0.2
△ 1.4
△ 1.7
△ 1.0
△ 0.4
△ 0.7
△ 0.8
△ 0.3
0.0
△ 0.0
0.3
0.7
1.1
0.8
0.5
0.8
1.1
(備考)1.沖縄地区は全国に含めた。
(備考)2.東京・関東地区の2003年3月の増減率は、地区間の事業譲渡を調整して算出
(備考)3.南九州地区・全国の2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
106
信金中金月報 2006.3
北
陸
20,088
19,287
19,061
18,768
18,580
18,703
18,940
18,661
18,632
18,633
18,575
18,451
18,424
18,543
18,496
18,565
18,469
18,416
18,741
南九州
16,530
15,972
15,489
15,470
15,336
15,586
15,892
15,687
15,615
15,362
15,223
15,187
15,161
15,192
15,234
15,329
15,322
15,329
15,518
前年同月比
増 減 率
△ 1.4
△ 3.9
△ 1.1
△ 1.5
△ 0.7
△ 0.7
△ 0.7
△ 1.4
△ 1.6
△ 0.7
△ 0.6
△ 0.4
△ 0.8
△ 0.9
△ 0.9
△ 0.7
△ 1.1
△ 1.4
△ 1.0
前年同月比
増 減 率
△ 2.5
△ 3.3
△ 3.0
△ 0.1
0.6
0.5
0.6
0.6
0.3
0.6
1.2
0.9
0.1
△ 0.1
△ 0.2
△ 0.3
△ 0.5
△ 0.7
△ 1.0
東
海
121,487
119,553
118,573
118,715
116,943
118,796
119,853
118,060
117,752
118,485
117,572
116,900
117,159
118,117
117,573
119,414
118,219
118,432
120,793
全国計
661,879
639,805
626,342
622,364
615,321
622,105
629,296
620,383
619,366
620,948
618,219
613,898
615,243
619,498
616,620
623,513
620,399
621,327
631,723
前年同月比
増 減 率
△ 1.3
△ 1.5
△ 0.8
0.1
△ 0.1
0.0
△ 0.2
△ 0.7
△ 0.8
△ 0.1
0.4
0.2
0.1
0.2
0.3
0.5
△ 0.0
0.5
0.7
前年同月比
増 減 率
△ 3.6
△ 3.3
△ 2.1
△ 0.6
△ 0.7
△ 0.5
△ 0.5
△ 1.1
△ 1.1
△ 0.1
0.2
△ 0.0
0.0
△ 0.0
0.0
0.2
△ 0.1
0.2
0.4
1.(6)信用金庫の貸出先別貸出金
(単位:億円、%)
年 月 末
貸出金計
企業向け計
前年同月比
増 減 率
前年同月比
構成比
増 減 率
構成比
製造業
増 減 率
2001.03
02.03
03.03
661,877
639,803
626,341
△
△
△
3.6
3.3
2.1
100.0
100.0
100.0
459,368
435,084
415,266
△
△
△
4.3
5.2
4.5
69.4
68.0
66.3
04.03
6
9
12
05.03
622,363
615,319
622,104
629,294
620,947
△
△
△
△
△
0.6
0.7
0.5
0.5
0.1
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
405,336
400,204
405,257
411,017
404,453
△
△
△
△
△
2.3
2.2
1.6
1.6
0.1
65.1
65.0
65.1
65.3
65.1
82,022
80,845
81,511
83,493
79,376
6
9
12
615,241
623,511
631,722
0.0
0.2
0.4
100.0
100.0
100.0
400,718
407,695
415,004
0.1
0.6
0.9
65.1
65.3
65.6
78,001
79,282
81,428
年 月 末
卸売業
2001.03
02.03
03.03
04.03
39,320
36,758
34,242
33,039
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 3.9
5.9
△ 6.5
5.7
△ 6.8
5.4
△ 3.5
5.3
6
9
12
05.03
32,441
32,689
33,621
32,326
△
△
△
△
4.0
3.8
3.7
2.1
31,863 △
32,594 △
33,569 △
1.7
0.2
0.1
6
9
12
年 月 末
2001.03
02.03
03.03
04.03
6
9
12
05.03
6
9
12
小売業
46,558
42,824
39,615
37,328
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 6.7
7.0
△ 8.0
6.6
△ 7.4
6.3
△ 5.7
5.9
5.2
5.2
5.3
5.2
36,586
36,632
36,058
34,509
△
△
△
△
6.0
5.3
6.8
7.4
5.1
5.2
5.3
33,935
34,141
34,293
△
△
△
7.1
6.7
4.8
サービス業 前年同月比
(各種サービス) 増 減 率 構成比
地方公共団体
前年同月比
102,545 △
94,053 △
86,148 △
飲食店
構成比
建設業
前年同月比
増 減 率
構成比
4.1
8.2
7.9
15.4
14.7
13.7
78,299
71,366
65,273
△
△
△
5.4
8.8
8.5
11.8
11.1
10.4
△
△
△
△
△
4.7
4.5
3.5
3.2
3.2
13.1
13.1
13.1
13.2
12.7
61,786
59,001
60,444
61,279
59,463
△
△
△
△
△
5.3
4.8
4.2
4.2
3.7
9.9
9.5
9.7
9.7
9.5
△
△
△
3.4
2.7
2.4
12.6
12.7
12.8
57,123
58,623
59,607
△
△
△
3.1
2.9
2.6
9.2
9.4
9.4
不動産業
15,623
14,524
13,622
12,684
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 6.1
2.3
△ 7.0
2.2
△ 6.2
2.1
△ 6.8
2.0
5.9
5.8
5.7
5.5
12,526
12,456
12,353
11,812
△
△
△
△
6.3
6.0
5.7
6.8
2.0
2.0
1.9
1.9
83,358
85,104
86,796
92,942
5.1
5.5
6.1
12.9
13.5
13.6
13.7
14.9
5.5
5.4
5.4
11,589
11,481
11,417
△
△
△
7.4
7.8
7.5
1.8
1.8
1.8
94,618
96,850
98,269
13.5
13.8
13.2
15.3
15.5
15.5
前年同月比
構成比
増 減 率
個 人
80,128 △
77,123 △
86,079
3.8
3.7
─
12.1
12.0
13.7
11,762
13,527
15,680
0.5
15.0
15.9
1.7
2.1
2.5
190,747
191,192
195,395
83,956
83,353
83,992
84,233
80,908
△
△
△
△
△
2.4
2.4
1.9
2.3
3.6
13.4
13.5
13.5
13.3
13.0
16,932
15,293
15,615
16,224
18,529
7.9
12.1
11.8
10.8
9.4
2.7
2.4
2.5
2.5
2.9
200,095
199,822
201,232
202,053
197,965
80,333 △
80,851 △
81,816 △
3.6
3.7
2.8
13.0
12.9
12.9
17,371
17,284
18,081
13.6
10.7
11.4
2.8
2.7
2.8
197,152
198,532
198,637
前年同月比
構成比
増 減 率
△
71,861
74,989
78,140
82,306
前年同月比
構成比
増 減 率
△ 1.8
10.8
4.3
11.7
4.2
12.4
5.3
13.2
住宅ローン 前年同月比
構成比
増 減 率
2.2
0.2
2.1
28.8
29.8
31.1
123,501
127,347
134,682
1.8
3.1
5.7
18.6
19.9
21.5
△
2.4
1.6
0.9
0.8
1.0
32.1
32.4
32.3
32.1
31.8
143,110
143,772
144,922
146,884
143,956
6.2
5.2
3.5
2.9
0.6
22.9
23.3
23.2
23.3
23.1
△
△
△
1.2
1.2
1.6
32.0
31.8
31.4
144,394
145,956
147,674
0.4
0.7
0.5
23.4
23.4
23.3
(備考)1.日本銀行『業種別貸出金調査表』より作成。このため、『日計表』による (5) 科目別・地区別貸出金の貸出金計とは一
(備考)1致しない。
(備考)2.企業向け計には、海外円借款、国内店名義現地貸を含む。
(備考)3.2003年3月の業種分類の見直しに伴い、製造業の対象業種から「出版業」が除かれ、従来の「出版・印刷業」に代えて
(備考)1「印刷業」のみが対象となったことから、増減率の算出においては、出版業・印刷業とも除いて算出した。また「サービス業」
(備考)1は「各種サービス」となり、飲食店等を含む。
(備考)4.2005年3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
統 計
107
1.(7)信用金庫の余裕資金運用状況
(単位:億円、%)
年 月 末
現
2001.03
02.03
03.03
04.03
6
9
04.12
05.01
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
14,238
19,391
17,492
16,040
15,385
15,158
19,237
17,348
15,645
19,162
17,584
17,297
16,105
16,355
15,495
15,745
15,189
15,856
18,040
年 月 末
2001.03
02.03
03.03
04.03
6
9
12
05.01
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
年 月 末
2001.03
02.03
03.03
04.03
6
9
04.12
05.01
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
金
金融機関
買入金銭
預 け 金
貸 付 等 うちコール う ち 債 券 貸 借
うち譲渡性
債
権
預 け 金 うち信金中金預け金
ロ ー ン 取引支払保証金
183,867(
25.1) 2,553
166,783(
28.8) 11,180
7,556
―
4,134
182,044(△ 0.9)
845
159,156(△ 4.5) 3,004
2,104
―
2,084
194,070(
6.6)
883
159,131(△ 0.0) 2,654
1,654
1,000
3,274
196,398(
1.1)
910
154,855(△ 2.6) 2,175
1,575
0
3,095
207,344(△ 0.4)
510
193,808(△ 0.9)
578
498
0
4,232
206,143(
6.9)
410
166,545(
2.0) 1,119
1,119
0
3,439
210,465(
5.2)
420
195,406(
3.2)
725
625
0
4,005
208,091(
5.9)
400
193,875(
4.1)
691
611
0
3,782
213,959(
3.5)
390
199,134(
1.7)
768
668
0
3,667
199,157(
1.4)
290
150,939(△ 2.4) 2,472
1,555
0
3,142
222,345(
7.8)
480
208,331(
6.8)
837
737
0
3,412
219,612(
6.3)
490
205,818(
5.4)
580
510
0
3,645
227,835(
9.9)
490
213,816(
10.3)
629
579
0
3,758
217,657(
8.4)
460
203,609(
9.1)
534
494
0
3,915
215,718(
3.4)
520
200,594(
3.3)
518
488
0
3,839
209,322(
1.5)
410
172,021(
3.3) 1,038
728
0
3,560
209,114(△ 0.9)
500
193,806(
0.3)
445
405
0
3,452
207,048(
0.1)
510
191,498(△ 0.4)
326
286
0
3,513
207,651(△ 1.2)
435
191,858(△ 1.7)
311
260
0
3,360
有価証券
221,566(
236,169(
248,064(
268,761(
281,796(
277,917(
278,968(
279,949(
283,005(
287,574(
278,770(
280,561(
282,057(
286,957(
293,040(
294,130(
299,462(
299,266(
301,476(
国
11.7)
6.5)
5.0)
8.3)
9.1)
2.5)
4.2)
4.5)
6.5)
7.0)
2.3)
2.5)
0.1)
1.2)
4.3)
5.8)
7.7)
7.1)
8.0)
貸付信託 投資信託
58
24
17
2
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
14,226
8,034
5,176
5,650
6,315
6,519
6,831
6,893
6,910
6,745
7,346
7,679
7,797
7,919
7,728
7,776
8,172
8,036
8,182
債
50,807(
58,911(
62,730(
73,655(
78,190(
76,097(
74,933(
75,610(
78,216(
82,465(
75,776(
76,348(
76,635(△
78,777(△
80,857(
82,122(
84,774(
84,253(
84,957(
外国証券
36,743(
39,660(
41,917(
46,121(
48,751(
48,485(
49,677(
49,787(
49,240(
47,983(
48,024(
48,113(
48,009(△
48,897(△
50,153(
49,288(
49,657(
49,179(△
49,106(△
地方債
34.6)
15.9)
6.4)
17.4)
24.3)
4.5)
8.9)
8.8)
14.4)
11.9)
2.1)
4.2)
1.9)
0.6)
4.8)
7.9)
14.1)
13.4)
13.4)
20,554
24,778
24,914
26,755
29,244
29,675
30,329
30,554
30,956
31,460
30,855
31,081
31,518
32,307
33,217
33,584
34,070
34,428
34,765
短期社債
―
―
0
0
1
2
3
4
3
3
142
261
459
519
509
93
349
314
321
社
債
92,497(
99,328(
108,534(
110,483(
113,591(
111,146(△
111,153(△
111,067(△
111,614(
111,680(
110,028(△
110,374(△
110,854(△
111,722(△
113,765(
114,432(
115,405(
115,936(
116,728(
余資運用 信金中金
その他の 資 産 計 利 用 額
(B)
証
券 (A)
7.4)
346 439,243 166,783
7.9)
442 445,987 159,156
5.6)
565 468,216 159,131
10.0)
643 489,360 154,855
6.2)
619 512,578 193,808
1.5)
630 507,102 166,545
2.6)
638 516,770 195,406
3.3)
635 513,216 193,875
2.7)
639 520,393 199,134
4.0) 1,102 514,265 150,939
1.3) 1,034 526,018 208,331
0.7) 1,049 524,765 205,818
1.4) 1,072 533,452 213,816
0.1) 1,092 528,519 203,609
2.1) 1,114 531,712 200,594
1.6) 1,187 526,842 172,021
1.1) 1,223 530,757 193,806
0.7) 1,217 529,130 191,498
1.1) 1,221 533,911 191,858
公社公団債
6.7) 15,595
7.3) 21,166
9.2) 27,267
1.7) 33,875
0.8) 37,211
1.7) 37,083
1.4) 37,854
1.2) 38,097
0.0) 38,674
1.1) 39,070
1.8) 38,369
1.8) 38,579
2.3) 38,639
1.3) 39,277
1.3) 40,666
2.9) 41,378
3.2) 42,112
3.4) 42,633
5.0) 42,968
預貸率 (A)
/預金
63.7
62.2
60.4
58.9
57.4
58.0
57.9
57.7
57.3
57.7
56.8
56.8
56.4
56.9
56.5
57.1
56.8
57.0
57.1
42.3
43.3
45.2
46.3
47.8
47.3
47.5
47.7
48.1
47.8
48.4
48.5
48.9
48.5
48.7
48.2
48.6
48.5
48.3
金融債
31,849
34,374
37,894
34,274
34,586
33,661
32,789
32,635
32,700
32,452
31,926
32,075
32,306
32,419
32,861
32,988
33,105
33,147
33,440
金銭の
信 託
4,057
3,103
2,463
2,729
3,089
3,202
3,275
3,265
3,245
2,678
2,992
2,993
2,987
3,020
3,012
2,964
3,010
3,045
3,000
その他
45,052
43,787
43,372
42,334
41,793
40,401
40,509
40,334
40,239
40,158
39,732
39,720
39,907
40,024
40,237
40,065
40,187
40,155
40,319
信金中金月報 2006.3
198
188
197
159
152
121
91
86
102
78
74
74
77
79
87
80
82
72
70
株
式
6,325
4,987
4,206
5,449
5,079
5,358
5,399
5,395
5,422
6,131
5,560
5,651
5,709
5,720
5,692
5,642
5,807
5,898
6,192
預証率 (B)
/預金(B)
/
(A)
21.3
22.9
23.9
25.4
26.2
25.9
25.6
26.0
26.2
26.7
25.6
25.9
25.8
26.3
26.8
26.9
27.4
27.4
27.2
16.0
15.4
15.3
14.6
18.0
15.5
17.9
18.0
18.4
14.0
19.1
19.0
19.6
18.7
18.3
15.7
17.7
17.5
17.3
(備考)1.( )内は前年同月比増減率
(備考)2.預貸率=貸出金/預金× 100(%)、預証率=有価証券/預金× 100(%)(預金には譲渡性預金を含む。)
(備考)3.2005 年 3月以降の増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
108
商品有価
証
券
37.9
35.6
33.9
31.6
37.8
32.8
37.8
37.7
38.2
29.3
39.6
39.2
40.0
38.5
37.7
32.6
36.5
36.1
35.9
2.(1)業態別預貯金等
(単位:億円、%)
年 月 末
2002.03
信用金庫
前年同月比
増 減 率
1,028,198 △ 0.9
国内銀行
前年同月比
増 減 率
6,790,535
2.2
(債券、信託
を含む。)
大手銀行
前年同月比
増 減 率
4,416,792
2.9
うち預金
前年同月比 うち都市銀行 前年同月比
増 減 率
増 減 率
2,699,067
9.4
2,308,919
9.8
(債券、信託
を含む。)
地方銀行
前年同月比
増 減 率
1,813,848
1.5
03.03
1,035,536
0.7
6,798,976
0.1
4,424,063
0.1
2,760,299
2.2
2,377,699
2.9
1,813,487 △
04.03
1,055,175
1.8
6,798,238 △
0.0
4,420,297 △
0.0
2,842,197
2.9
2,456,008
3.2
1,825,541
0.0
0.6
04.06
1,070,958
1.5
6,820,754
2.6
4,413,657
4.1
2,801,267
1.7
2,415,082
2.1
1,849,677 △
0.0
9
1,070,466
1.5
6,766,095
1.8
4,390,204
2.7
2,812,367
1.4
2,422,226
1.5
1,818,903
0.1
12
1,085,557
1.6
6,805,698
1.9
4,397,021
2.5
2,797,507
1.4
2,410,195
1.7
1,868,042
2.3
05.01
1,073,341
1.6
6,796,554
2.1
4,421,376
2.7
2,811,261
1.8
2,416,332
1.5
1,842,403
2.3
2
1,078,486
1.6
6,820,506
1.9
4,434,605
2.5
2,812,815
1.4
2,421,313
1.3
1,851,089
2.2
3
1,074,324
1.8
6,902,096
1.5
4,483,596
1.4
2,862,150
0.7
2,470,227
0.5
1,878,876
2.9
4
1,085,423
2.1
6,909,364
1.4
4,488,501
1.3
2,857,610
1.1
2,470,674
1.1
1,880,588
2.8
5
1,079,152
1.6
6,923,710
1.3
4,516,268
1.5
2,884,859
1.2
2,493,531
0.9
1,871,665
2.0
6
1,088,655
1.6
6,884,387
0.9
4,452,269
0.8
2,826,387
0.8
2,436,783
0.8
1,889,928
2.1
7
1,087,221
1.6
6,885,087
1.2
4,469,765
1.3
2,842,706
1.2
2,451,494
1.2
1,874,942
2.3
8
1,088,765
1.6
6,889,376
1.6
4,481,817
1.9
2,854,432
1.8
2,458,084
1.8
1,869,112
2.2
9
1,089,613
1.7
6,921,267
2.2
4,512,694
2.7
2,891,335
2.8
2,492,478
2.9
1,866,778
2.6
10
1,089,159
1.5
6,825,597
0.7
4,436,708
0.7
2,843,473
1.1
2,447,815
0.8
1,851,876
0.6
11
1,087,826
1.6
6,943,078
1.5
r 4,535,528
1.8
r 2,899,499
1.4
2,498,956
1.3
r 1,868,722
1.1
12
1,103,111
1.6
6,925,680
1.7
4,492,384
2.1
2,848,176
1.8
2,449,615
1.6
1,885,784
0.9
06.01
年 月 末
2002.03
第二地銀
前年同月比
増 減 率
559,895 △ 1.4
信用組合
前年同月比
増 減 率
153,541 △ 14.9
労働金庫
前年同月比
増 減 率
125,200
6.8
農業協同組合
前年同月比
増 減 率
735,373
2.0
郵便貯金
前年同月比
増 減 率
2,393,418 △ 4.2
預貯金等合計
前年同月比
増 減 率
11,226,265
0.2
03.03
561,426
0.2
148,362 △
3.3
131,619
5.1
744,202
1.2
2,332,465 △
2.5
11,191,160 △
0.3
04.03
552,400 △
1.6
152,526
2.8
135,713
3.1
759,764
2.0
2,273,820 △
2.5
11,175,236 △
0.1
04.06
557,420
0.4
154,072
2.0
140,395
2.8
772,433
1.9
2,261,879 △
2.6
11,220,491
1.3
9
556,988
0.6
155,056
2.1
138,731
2.6
769,848
2.3
2,216,348 △
3.6
11,116,544
0.7
12
540,635 △
3.2
156,737
2.1
140,959
2.1
783,907
2.2
2,193,705 △
4.6
11,166,563
0.6
05.01
532,775 △
3.0
155,504
2.1
140,265
2.2
778,575
2.3
2,179,251 △
5.0
11,123,490
0.6
2
534,812 △
3.1
155,950
2.0
140,289
2.1
780,957
2.2
2,174,407 △
5.2
11,150,595
0.4
3
539,624 △
2.3
156,095
2.3
138,604
2.1
776,685
2.2
2,141,490 △
5.8
11,189,294
0.1
4
540,275 △
2.3
157,121
2.6
140,826
2.0
780,703
2.2
p 2,135,640 △
6.0
p 11,209,077
0.0
5
535,777 △
3.0
156,417
2.2
140,028
1.8
778,768
2.0
p 2,110,906 △
6.5
p 11,188,981 △
0.1
6
542,190 △
2.7
157,974
2.5
142,541
1.5
788,275
2.0
p 2,110,407 △
6.6
p 11,172,239 △
0.4
7
540,380 △
2.7
158,141
2.5
142,596
1.6
787,684
2.0
p 2,095,013 △
6.7
p 11,155,742 △
0.2
8
538,447 △
2.7
158,409
2.5
141,764
1.5
789,084
2.0
p 2,087,917 △
6.8
p 11,155,315 △
0.0
9
541,795 △
2.7
159,594
2.9
140,895
1.5
785,263
2.0
p 2,066,556 △
6.7 pr 11,163,188
0.4
10
537,013
1.2
158,914
2.4
141,039
1.7
789,231
1.8
p 2,062,472 △
6.8
p 11,066,412 △
0.5
11
538,828
1.4
158,537
2.6
140,640
1.8
788,402
1.7
p 2,042,425 △
6.8
p 11,160,908 △
0.0
12
547,512
1.2
144,005
2.1
p 2,044,351 △
6.8
p 2,029,897 △
6.8
06.01
r
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』、日本郵政公社ホームページ等より作成
(備考)2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数
(備考)3.国内銀行 ・ 大手銀行には、全国内銀行の債券および信託勘定の金銭信託 ・ 貸付信託 ・ 年金信託 ・ 財産形成給付信託を含
(備考)0めた。
(備考)4.預貯金等合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の預貯金残高の合計により算出した。
統 計
109
2.(2)業態別貸出金
(単位:億円、%)
年 月 末
信用金庫
大手銀行
都市銀行
地方銀行
2001.03
661,879
前年同月比
増 減 率
△ 3.6
2,746,303
前年同月比
増 減 率
△ 1.5
2,133,507
前年同月比
増 減 率
△ 0.8
02.03
639,805
△
3.3
2,601,800
△
5.2
2,035,627
△
03.03
626,342
△
2.1
2,451,214
△
5.7
2,072,578
04.03
622,364
△
0.6
2,344,621
△
4.3
1,958,921
△
5.4
6
615,321
△
0.7
2,280,592
△
4.1
1,910,458
△
4.7
9
622,105
△
0.5
2,298,590
△
3.2
1,920,894
△
04.12
629,296
△
0.5
2,262,020
△
4.2
1,885,334
05.01
620,383
△
1.1
2,242,250
△
4.2
2
619,366
△
1.1
2,240,982
△
3
620,948
△
0.2
2,243,788
4
618,219
0.1
5
613,898
△
6
615,243
7
619,498
8
第二地銀
465,931
前年同月比
増 減 率
△ 7.8
0.1
444,432
△
4.6
119,082
△ 10.8
△
0.5
429,130
△
3.4
91,512
△ 23.1
1,352,081
△
0.0
420,236
△
2.0
91,234
△
0.3
1,324,230
△
0.4
413,043
△
0.0
90,456
△
0.0
3.6
1,330,223
△
1.1
415,191
△
0.2
91,404
△
0.1
△
5.3
1,373,768
1.5
404,221
△
4.6
92,358
△
0.0
1,864,138
△
5.4
1,362,481
1.2
398,503
△
5.1
91,546
△
0.4
3.8
1,868,226
△
4.2
1,365,368
1.2
398,228
△
5.1
91,519
△
0.4
△
4.3
1,869,540
△
4.5
1,372,381
1.5
403,403
△
4.0
91,836
0.6
2,225,183
△
2.9
1,845,500
△
3.5
1,363,867
2.0
400,287
△
3.4
91,306
0.6
0.0
2,204,388
△
3.6
1,825,122
△
4.6
1,353,910
2.1
397,502
△
3.7
90,893
0.5
△
0.0
2,200,208
△
3.5
1,824,916
△
4.4
1,354,582
2.2
399,866
△
3.1
91,048
0.6
△
0.0
2,220,799
△
2.7
1,842,977
△
3.7
1,363,445
2.4
403,692
△
2.7
91,693
0.8
616,620
0.0
2,223,418
△
2.8
1,836,246
△
4.3
1,359,672
3.0
401,630
△
2.5
91,579
0.9
9
623,513
0.2
2,266,669
△
1.3
1,875,833
△
2.3
1,369,059
2.9
405,462
△
2.3
92,434
1.1
10
620,399
0.2
2,251,223
△
0.5
1,868,922
△
1.1
1,364,726
1.1
403,561
1.6
92,093
0.6
11
621,327
0.2
2,264,277
0.1
1,879,404
△
0.3
1,371,472
1.7
406,130
2.4
92,405
0.9
12
631,723
0.3
2,272,945
0.4
1,885,112
△
0.0
1,397,941
1.7
414,620
2.5
年 月 末
2001.03
02.03
03.03
04.03
6
9
04.12
05.01
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
△
労働金庫
76,213
81,054
87,266
92,664
92,663
93,555
94,852
94,317
94,664
94,887
94,769
94,771
94,625
94,639
94,201
94,624
95,066
95,454
95,568
農業協同組合
前年同月比
増 減 率
3.2
6.3
7.6
6.1
5.3
4.3
3.3
3.1
3.1
2.3
2.3
2.3
2.1
2.0
1.2
1.1
1.0
1.0
0.7
220,078
217,357
215,147
214,871
214,190
214,500
212,704
212,134
212,304
212,986
212,152
212,515
212,188
212,356
213,290
212,976
212,387
211,993
1,357,418
4.5
1,359,864
1.8
1,352,514
公的金融機関
前年同月比
増 減 率
△ 0.3
△ 1.2
△ 1.0
△ 0.1
0.3
△ 0.0
△ 0.3
△ 0.3
△ 0.4
△ 0.8
△ 1.0
△ 0.8
△ 0.9
△ 0.9
△ 0.6
△ 0.7
△ 0.8
△ 0.7
1,731,885
1,693,486
1,617,238
1,531,569
1,522,584
1,496,693
1,480,807
1,470,876
1,463,396
1,457,114
1,449,983
1,447,292
1,441,328
1,431,664
1,419,478
1,405,866
1,397,416
前年同月比
増 減 率
0.1
△ 2.2
△ 4.5
△ 5.2
△ 5.2
△ 4.6
△ 4.8
△ 4.9
△ 4.8
△ 4.8
△ 4.8
△ 5.2
△ 5.3
△ 5.6
△ 5.8
△ 6.0
△ 6.2
うち中小
企業向け
293,556
288,025
279,743
274,726
272,745
277,060
277,263
272,692
271,484
270,971
270,052
266,806
268,237
266,903
263,937
265,100
262,742
前年同月比
増 減 率
1.2
信用組合
前年同月比
増 減 率
△ 1.3
△ 1.8
△ 2.8
△ 1.7
△ 2.0
△ 0.3
△ 0.9
△ 1.4
△ 1.5
△ 1.3
△ 0.8
△ 1.4
△ 1.6
△ 3.7
△ 3.8
△ 4.3
△ 4.5
うち住宅
金融公庫
759,220
726,516
671,999
605,947
595,953
578,784
568,428
563,239
557,460
550,993
546,390
543,893
538,538
532,064
525,630
519,488
514,832
510,273
133,612
合
前年同月比
増 減 率
1.8
△ 4.3
△ 7.5
△ 9.8
△ 9.6
△ 8.7
△ 8.7
△ 8.8
△ 9.0
△ 9.0
△ 9.2
△ 9.5
△ 9.6
△ 9.7
△ 9.9
△ 10.2
△ 10.5
△ 10.8
前年同月比
増 減 率
△ 6.1
計
7,393,319
7,156,880
6,870,363
6,669,640
6,553,079
6,562,261
6,550,026
6,492,490
6,485,827
6,497,343
6,455,766
6,415,169
6,409,088
6,437,786
6,419,888
6,470,603
6,436,871
前年同月比
増 減 率
△ 1.2
△ 3.1
△ 4.0
△ 2.9
△ 2.8
△ 2.4
△ 2.6
△ 2.7
△ 2.6
△ 2.5
△ 1.9
△ 2.2
△ 2.1
△ 1.9
△ 1.8
△ 1.3
△ 1.2
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』より作成
(備考)2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数
(備考)3.公的金融機関は、日本政策投資銀行、国際協力銀行、国民生活金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業
(備考)0金融公庫、公営企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫の合計
(備考)4.公的金融機関のうち中小企業向けは、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫の合計
(備考)5.合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の貸出金残高の合計により算出した。
110
信金中金月報 2006.3
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ISSN 1346−9479
2006年(平成18年)3月1日 発行
2006年3月号 第5巻 第3号(通巻396号)
発 行 信金中央金庫
編 集 信金中央金庫 総合研究所
〒104−0031 東 京 都 中 央 区 京 橋3−8−1
TEL 03(3563)7541 FAX 03(3563)7551
<本誌の無断転用、転載を禁じます>
信 金 中 金 月 報 2 0 0 6 年
月号
3
Shinkin Central Bank Monthly Review
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