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子宮頸部に発生した神経内分泌腫瘍の1例
子宮頸部に発生した神経内分泌腫瘍の1例 倉敷成人病センター 病理診断科 1) 岡山大学病院 病理部 2) ○ 穂並聖子(CT)1),高田由貴(CT) 1),林佳代子(CT) 1),正岡明日香(CT) 1), 瀬島雅子(CT) 1),小渕喜枝(CT) 1),石原真理子(CT) 1),國友忠義(MD) 【はじめに】 1) ,市村浩一 (MD)2) 【手術検体の組織所見】 子宮頸部の神経内分泌腫瘍は子宮頸部悪性腫 浸潤部の広範囲で CD56、ChromograninA、 瘍の 5%以下と稀な腫瘍であり 1)、細胞診での Synaptophysin が陽性となる神経内分泌腫 正確な組織推定が困難と言われている。CIN 瘍が見られた(図 4,5) 。領域的な壊死を伴い、 及び頸部腺癌を伴った神経内分泌腫瘍の1例 充実細胞巣を形成して増生。腫瘍の胞巣辺縁 を経験したので報告する。 【症例】 部では柵状配列を示す、中型~大型の核を有 した、胞体の広い腺癌細胞が見られた(図 6)。 36 歳女性。H22 年 3 月に不正出血を主訴に 頸部腺癌を伴う LCNEC との診断がついた。 近医受診。組織診にて小細胞癌と診断後、手 【考察】 術目的に当院紹介となった。MRI にて膣腔に 本症例では核小体明瞭でクロマチンの凝集し 突出する 2.4×2.8×1.9cm 大の腫瘤を認め、 た大型核を初め、様々な細胞像を認めた。 再度当院にて生検及び細胞診を施行。陽性を 他の文献でも、他の組織型を合併する頻度が 示し、同年 4 月に手術となった。 【経過】 約 40%と比較的高く、ほとんどが腺癌であっ た 3)。 術後の病理診断は大細胞神経内分泌癌(以下 しかし、核線の存在や裸核状細胞、著明な壊 LCNEC)pT1b1 pN0 M0 であった。しかし、 死性背景が判定に有効と思われた。これらの 小細胞癌との鑑別に苦慮したことから、臨床 所見を認めた場合、神経内分泌腫瘍を考慮に 的には悪性度の高い小細胞癌と考え治療を進 入れ、慎重にスクリーニングする必要がある めた 2)。H23 年 2 月に CT にて肝臓への多発 と考える。 転移が認められ、同年 3 月に肝左葉切除術を 【参考文献】 施行。この時の術後病理診断は小細胞癌。ま 1) 金山 和樹 他:子宮頸部原発大細胞神 た、同年 4 月に肺、残肝に転移が見つかり、 経内分泌癌の一例.日臨細胞誌 6 月に死亡。全経過約1年 3 ヶ月であった。 50:206.2011 【当科初診時の細胞診所見】 2) 田中 都生:(3)子宮頸部小細胞癌、臨床 壊死性背景に、不規則重積性を示す異型細胞 成 績 と 鑑 別 診 断 . 日 臨 細 胞 誌 が多数認められた。裸核状で、核小体腫大を 47:148-149.2008 示し、細~粗顆粒状のクロマチンを有してい 3) 山口 知彦 他:子宮頸部神経内分泌腫 た(図 1) 。大型の集塊として出現し、また、 瘍の細胞学的検討 核線が多く見られた。一部に核腫大、核小体 47(2):86-94.2008 腫大を示す腺癌の性格を有すると思われる細 胞(図 2) 、N/C 比の大きい扁平上皮系の性格 を有すると思われる細胞(図 3)が認められ た。 . 日臨細胞誌 図 1 子宮頸部擦過細胞診(Pap 強拡大) 図 2 子宮頚部擦過細胞診(Pap 強拡大) 図 3 子宮頚部擦過細胞診(Pap 強拡大) 図 4 組織像 (HE 弱拡大) 図 5 組織像 (HE 強拡大) 図 6 組織像 (HE 強拡大)