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韓国語っておもしろい! - 公益財団法人国際文化フォーラム

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韓国語っておもしろい! - 公益財団法人国際文化フォーラム
ISSN 0919-7265
2008年
10月発行
80
no.
特集
韓国語っておもしろい!
クムホ・アシアナ杯に参加した高校生の声
2008 年 3 月から 8 月にかけて、TJF はクムホ・アシアナ文化財
団、駐日韓国大使館韓国文化院、日中韓文化交流フォーラムと
共催で、日本全国の高校生等を対象とする第 1 回クムホ・アシ
アナ杯「話してみよう韓国語」高校生大会に関する一連の事業
を実施しました。この大会には 500 名近い高校生の応募があり
ました。隣国のことばに興味をもち自ら進んで韓国語を学ぶ者、
流暢な韓国語で自分の考えを語る者、課題の韓国語スキットを
暗記し身ぶり手ぶりを交えて演技する者、日本語で韓国に対す
る思いを伝える者など、さまざまな高校生像に接することがで
きました。これは、日本の高等学校における韓国語教育を中心
に展開してきた事業では十分にとらえられなかったものでした。
これらの高校生にとって、韓国語や韓国とその文化は、どの
ようなものなのでしょうか。応募者の中から選ばれて本選に出
場した高校生と、今夏の韓国研修ツアーに参加した入賞者の声
を紹介します。
特集
p.1
韓国語っておもしろい!
クムホ・アシアナ杯に参加した高校生の声
高校生の韓国語学習地図を塗り変えたクムホ・アシアナ杯「話してみよ
う韓国語」高校生大会
韓国語の世界に浸りきって演じる
韓国語で自分の思いを語る
日本語で韓国・韓国語への思いを語る
韓国の文化と人びとに触れて
シリーズ
p.10
見る聞く考えるやってみる授業 $0
さまざまな文化に対する寛容な態度を育てたい
̶̶音楽を通じての国際理解
TJFニュース
p.12
中学校の第二外国語用日本語教科書、第 3 冊が完成
2008 年大連市中学校日本語教師研修会を開催 ほか
お知らせ p.16
国際文化フォーラム通信 no. 80 2008 年 10 月
高校生の韓国語学習地図を
塗り変えたクムホ・アシアナ杯
「話してみよう韓国語」高校生大会
TJF では、日本国内で「韓国語」
「朝鮮語」
「ハングル」などと呼ばれて
いる隣国のことばを韓国朝鮮語と総称していますが、本号では、
「話
してみよう韓国語」地方大会やクムホ・アシアナ杯高校生大会で使用
された名称にならって韓国語と表記します。
を学んだ高校生の語学力をさらに高めたいという要求もあり
ました。
全国の高校生を対象とした大会の開催
2007 年 10 月、クムホ・アシアナ・グループのパク・サング
2
これまでの TJF の韓国語教育プログラム
会長が、日本の青少年のための韓国語スピーチコンテストを
TJF の韓国語教育プログラムは、高校や大学等における
開催する意向を表明しました。クムホ・アシアナ・グループは、
韓国語教育の現状調査、韓国語教員のための研修、高校教
クムホ・タイヤやアシアナ航空などの企業を有する韓国の企
員のネットワーク活動への支援、高校生のための教材開発に
業グループで、クムホ・アシアナ文化財団を運営し、アジア
対する助成・協力を中心に展開してきました。また、これら
における若い世代の韓国語学習を奨励するため、2006 年か
と併行して、高校生の韓国語学習の動機づけを高め、言語
ら中国で、2008 年からはベトナムで、大学生を対象とする
習得および文化理解を深めてもらうために、学習者である高
スピーチコンテストを開催しています。
校生向けのプログラムにも協力してきました。高校生が韓国
TJF と駐日韓国文化院は、1997 年以来、日本の高校の韓
語を実際に運用したり、韓国でさまざまな体験をしたり、韓
国語教育に関する実態調査や韓国語教師のための研修プロ
国の同世代と交流したりするなど、これらのプログラムは成
グラム、韓国語学習をめぐる公開フォーラムなどの事業実績
果を上げてきました。これらはすべて学校教育のなかの韓国
をもっていたことから、クムホ・アシアナ側からアプローチ
語学習者を対象としてきました。
があり、最終的に TJF が事務局を務めることになりました。
その一つ、
「韓国語を学んで韓国に行こう」プログラム(2001
当初、韓国側は韓国語を流暢に話す高校生のスピーチ大
∼05年、
韓国国際教育振興院主催。TJFは事務局を担当)は、日本 の高 校
会となることを期待していました。しかし、韓国語の授業が
で韓国語を学ぶ高校生と教師などを対象とするソウルでの 5
1 ∼ 2 コマにすぎない高校が圧倒的に多い現状を考えると、
日間の語学研修事業でした。もう一つは、初級者を対象と
その期待と韓国語学習者の実態との間には大きなギャップが
(2003年∼、駐日
するスピーチコンテスト「話してみよう韓国語」
ありました。すでにスピーチ大会を実施している中国やベト
運営に参加)
韓国文化院ほか主催。TJFは企画、
で、TJF は高校生部門を
ナムでは、韓国語学習と就職が直結しているなど、日本での
応援してきました。
「話してみよう韓国語」は、東京と大阪で
韓国語学習をめぐる状況とは異なっており、そのことを韓国
始まり、2005 年以後は、鳥取、青森、鹿児島、熊本と、し
側に理解してもらうのは、容易ではありませんでした。
だいに広がっています。
「話してみよう韓国語」では、初級
調整を進めていくなかで、まず「話してみよう韓国語」地
レベルの学習者でも楽しく参加できるように、スキット部門
方大会との連携を模索し、韓国語スピーチのほかに、韓国
や K ポップ部門を設けました。これら高校の韓国語学習の段
語スキット部門を設けることに合意しました。一方で、韓国
階に見合った部門を設けたのは、高校生に楽しく学んでもら
語教育の実施校だけを対象にするのではなく、広く全国の高
いたいからでした。
「話してみよう韓国語」地方大会には高
校に参加を呼びかけるという課題もありました。そして、現
校生の応募者が多く、東京・大阪大会では高校生が全応募
在は韓国語を学んでいなくても、韓国語あるいは韓国の文
者の過半数を占め、
中心的な役割を果たしています。一方で、
化に関心をもつ高校生が広く大会に参加できるようにするた
これら地方大会を安定的に実施するための財政基盤の強化
め、日本語エッセイ部門を設けることにしました。
と高校生部門を設けられない地方大会への高校生の参加促
また、より多くの高校生に参加してもらうために副賞の内
進が大きな課題になっていました。さらに、ある程度韓国語
容を充実させました。韓国語ができる、できないにかかわら
国際文化フォーラム通信 no. 80 2008 年 10 月
ず、入賞者全員が参加できる韓国研修ツアーと、各部門の
国語の授業をほとんど導入したことのない進学校も少なから
最優秀賞受賞者が受講できる 3 週間の語学研修を副賞とし
ず含まれています。特に入賞者にその傾向が顕著でした。
ました。語学力より先に、韓国や韓国語に親しみをもっても
クムホ・アシアナ杯高校生大会は、韓国語教育界にとっ
らおうという企画だったともいえるでしょう。
て画期的なプログラムでした。学校教育以外の場で韓国語
を学ぶ高校生が少なからずいること、韓国語や韓国に関心
高校の授業以外の場で韓国語を学ぶ高校生
を抱いている高校生が多様であることが明らかになったこと
こうして 2008 年 3 月から 5 月にかけて募集した第 1 回クム
で、学校教育だけに注目していた関連機関や団体に大きな
ホ・アシアナ杯「話してみよう韓国語」高校生大会(以下、クム
問題提起を行うことができました。学校教育の外で独習して
ホ・アシアナ杯高校生大会)
に応募した高校生は 494 名に上りまし
いる生徒は、学習意欲ばかりでなく、問題意識も高いこと、
た。韓国語スキット部門には 115 組 230 名、韓国語スピーチ
さらに学ぶ理由もさまざまなことがわかりました。
部門には 65 名、日本語エッセイ部門には 199 名の応募があ
母親の母語が韓国語で、その影響で学んだ者、親の仕事
りました。学校で学ぶ生徒だけを対象にした従来の事業で
の関係などで韓国に何年か住んでいた者、在日ゆえに受け
は捕捉できなかった韓国語や韓国文化に関心をもつ高校生
たいじめにもめげず韓国語を学んだ者、K ポップや韓国映画
を一気に引き寄せることができたのです。約 500 名の応募者
が好きで学んだ者、英語圏の短期留学がきっかけで学んだ
が在籍する全国 140 校の中で韓国語授業を導入している高
者など、さまざまな高校生の姿が浮かびあがりました。彼ら
校は 4 割に過ぎません。残り 6 割の高校では、授業として韓
が韓国語や隣国の文化に関心をもったきっかけの一つが「韓
国語を学ぶ機会はほとんどありません。TJF が実施してきた
流」であり、彼らの母親が仲介役を果たしている場合も少な
高校や大学等における韓国語教育に関する現状調査の結果
くありません。この意味において「韓流」は一過性のブーム
や韓国語教員のネットワークも活用しましたが、これまで韓
でなかったということもできます。
第 1 回クムホ・アシアナ杯「話してみよう韓国語」高校生大会の概要
参加資格
門 7 名、日本語エッセイ部門 8 名)が通過。
本選時に日本の高等学校またはそれに準ずる専修学校や各
種学校、あるいは高等専門学校の 1 ∼ 3 年次に在籍する人
第 2 次選考
で 20 歳未満の人。ただし、育った環境において主な言語
が韓国語で、最も楽に話せる言語の一つである人は除く。
募集期間
2008 年 3 月下旬∼ 5 月 7 日
審査委員
(アシアナ航空のウェブサイトにクムホ・アシアナ杯高校生
大会のページを開設。全国の高校 5,400 校と関連団体・機
関にチラシ、ポスターを送付)
応募要項
二人で演じる韓国語スキット部門は、課題の韓国語スキッ
ト台本を吹き込んだもの、韓国語スピーチ部門は韓国語の
原稿(1,000 字以内)を吹き込んだもの、日本語エッセイ
部門は日本語の原稿(1,000 字以内、韓国語の単語を一つ
以上入れる)を提出。 応募者数
494 名(韓国語スキット部門 115 組 230 名、韓国語スピー
チ部門 65 名、日本語エッセイ部門 199 名)
第 1 次選考
39 名(韓国語スキット部門 12 組 24 名、韓国語スピーチ部
賞 2008 年 6 月 14 日(土)
、千代田放送会館(東京)
各部門とも、原稿か台本を暗記し、口頭で発表。発表後、
審査委員の韓国語または日本語による質問に答えた。
梅田博之(麗澤大学前学長)
、イ・ユニ(東京成徳大学教
授)
、関川夏央(作家、神戸女学院大学客員教授)
、姜信子
[敬称略]
(作家、恵泉女学園大学客員教授)
最優秀賞:韓国語スピーチ部門・日本語エッセイ部門各 1
名、韓国語スキット部門 1 組(2 名)
計 4 名
優秀賞:韓国語スピーチ部門・日本語エッセイ部門各 2 名、
韓国語スキット部門は 2 組(4 名)
計 8 名
特別賞:韓国語スピーチ部門・日本語エッセイ部門各 1 名、
韓国語スキット部門 1 組(2 名)
計 4 名
入賞者全員に韓国研修ツアー(7 月 28 日∼ 8 月 2 日)
、最
優秀賞受賞者にはさらに、韓国の大学での韓国語研修(3
週間)を副賞として授与した。
3
国際文化フォーラム通信 no. 80 2008 年 10 月
韓国語の世界に浸りきって演じる
韓国語スキット部門
課題の韓国語スキットを暗記し、二人で演じるもの。最後
ト後の審査委員からの質問には緊張した面持ちで答えてい
のセリフは空欄になっていて、自分たちで考えたセリフを入
ました。応募者の出身校をみると、韓国語教育の実施校は
れます。韓国語の入門または初級レベルの学習者を対象と
4 割強、授業以外で学んでいる生徒の応募のほうが多く、学
しています。同じ台本ながら、どの演技もそれぞれ衣装や小
校のクラブや学校以外のところで学習している者、独習して
道具に工夫を凝らすなど、個性あふれるものでした。スキッ
いる者と多様でした。
韓国語スキット部門の本選出場者:12 組
スキット部門の台本:トッポッキ友だち(日本語訳)
発表者
所属学校
石渡茉佑子、安里麻耶
○ 任 礼、大類涼子
大阪府立住吉高等学校 1 年
神奈川県立横浜清陵総合高等学校 2 年
岩本真理子、小野菜摘
山口県立岩国総合高等学校 2 年
大石隆子、秋山奈津実
鳥取県立境高等学校 3 年
☆ 北澤晶子、金亜利紗
慶應義塾湘南藤沢高等部 2 年
◇ 財津美里、鈴木友里絵
青山学院高等部 1 年
清水美南子、荻野桂子
神奈川県立横浜旭陵高等学校 3 年
濵口華子、宗像あゆみ
福島県立あさか開成高等学校 3 年
○ 曲瀬英里佳、武田美春
鹿児島県立鹿児島東高等学校 2 年
松下芽衣、真下祥子
二松学舎大学附属沼南高等学校 2 年
宮野仁見、木内沙紀
千葉県立成田国際高等学校 3 年
安田菜美、長澤美咲
富山商船高等専門学校 2 年
☆:最優秀賞受賞者 ○:優秀賞受賞者 ◇:特別賞受賞者
曲瀬英里佳さん、武田美春さん
……鹿児島県立鹿児島東高等学校 2 年
曲瀬さん:韓国語は選択必修だったから選
択した。韓国語より英語が好きで、英語の
ほうが得意。イギリスに留学し、日英の通
訳者になるのが夢だという。K ポップファン
の武田さんと名コンビ。
[教室で]
( )帰らないの ?
A: あれ、
B: 宿題してるんだ。( )は ?
A: 先生と話してた。けど、何の宿題してるの ?
B: 英語のドリルだよ。
A: あらら、今まで宿題してたの? 一緒に市内見物行こうよ。
B: 宿題終わってないよ。
A: 大丈夫。早く行こう。
B: ダメ。宿題……。
[市内の市場で]
A: どう? いいでしょ? ( )はこの市場初めてでしょ?
B: うん……私、宿題やんなきゃ……。
A: さあ、ここに座ろう。おばさん、トッポッキ 2 人前ください。
B: 私はお腹すいてないよ……。
A: 一緒に食べよう。
B: この赤いの何? ソーセージ? どうやって食べるの?
A: こうやって食べるの。どう?
B: あー、辛い。けど、本当に美味しい。これ、何て言うの?
A: トッポッキだよ。
B: トッ・ポッ・キ?
A: そう、トッポッキだよ。私たちは今からトッポッキ友だちだからね !
B: トッポッキ友だち? どういうこと?
A:【* * * * *】
( )には名前を入れる。
【*****】に自分たちで考えたセリフを入れる。
財津美里さん、鈴木友里絵さん
……青山学院高等部 1 年
財津さん:中学 3 年のときに選択授業で韓国
語を勉強した。韓国料理を作ったり食べた
りする時間もあり、授業を楽しんだ。高校に
韓国語の授業がないのを残念に思っている。
武田さん:韓国の人気グループ「東方神起(ト
ンバンシンギ)
」が好きで、中学生のときに韓国
語の勉強を始め、今では日常会話はほとん
どこなす。ハングル能力検定の 4 級に合格、
3 級をめざして勉強中。
二人は、選択授業の韓国語会話を選択している。1 年と 2 年で週 2 回、単位
数 4 単位。現在、韓国語のクラブに所属し、週 2 回、韓国映画を観たり、K ポッ
プを歌ったりしている。
4
鈴木さん:中学 3 年のときに選択授業で韓国
語を少し勉強した。韓国の研修ツアーに参
加して、いろいろな刺激を受けた。ツアー
では、選択授業を担当した韓国人の先生に
再会を果たすことができた。
国際文化フォーラム通信 no. 80 2008 年 10 月
韓国語で自分の思いを語る
韓国語スピーチ部門
韓国語スピーチ部門の本選出場者の半数は、
片親が韓国語母語話者です。本選出場者の中で
韓国語スピーチ部門の本選出場者:7 名
発表者
所属学校
スピーチの題名 *
在韓被爆者に会って
高校の授業で韓国語を学んでいる人は 1 名だけで
◇ 入佐孝憲
鹿児島県立鶴丸高等学校 3 年
した。入賞した 4 名のうち 3 名は家族や親戚と韓
○ 岩城愛理
愛知県立西春高等学校 1年
私の小さな記憶の中での旅
石川県立金沢伏見高等学校 3 年
動物との共存
国語で話すことがありますが、語学力をみがくた
めに語学学校に行ったり、独学で勉強したりして
います。
* スピーチの内容はクムホ・アシアナ杯高校生大会の公式サイ
トに掲載される予定です。
尾村綾音
☆ 菊地令華
福岡県立福岡高等学校 1年
生かされて生きる
○ 鈴木友美
東豊学園つくば松実高等学校 1年
奇跡
長谷亮輔
富山商船高等専門学校 3 年
いじめ問題
本山由奈
名古屋市立名古屋商業高等学校 2 年
旅
☆:最優秀賞受賞者 ○:優秀賞受賞者 ◇:特別賞受賞者
「奇跡」
鈴木友美さん
……東豊学園つくば松実高等学校 1 年
ある子ども向けの雑誌の韓国語コーナーに
興味をもち、自分で韓国語の勉強を始めた。
今も近くの韓国語教室に通って勉強を続け
ている。グループで行動するより、独りで
行動するほうが好き。写真を撮るのが趣味。
「え? 何で韓国語なの !?」私が韓国語を勉強している
と知った母は、私にこう言いました。次いで母は、
「やる
なら英語にしなさい!」とも言いました。母は人一倍韓国
に対して抵抗感をもっていたからです。けれど私はいつ
の間にか大好きになっていた韓国語をこのままあきらめき
れず、一人で勉強を進めていました。
私の小学校卒業記念に父が提案した韓国旅行に家族で
行き、母は「韓国は自分が思っていたところと全然違い、
国語を使い、自分の韓国語が通じたときには、ものすごく
人びとが昔の日本のようですごく気に入った」と言ってい
嬉しく感動しました。それと同時にニュアンスや表現の違
ました。それから日本にいる韓国の人とふれあいながら少
いにぶつかり、自分の思いを相手に伝える難しさを知り、
しずつ母の韓国に対する抵抗感はなくなり、今では大の
語学だけでは通用しない部分……歴史の重要性も強く感
韓国好きです。
じました。
私は中学校に入ってすぐ、いじめが原因で学校に行け
こんな経験を何度も重ねていくうちに、私には「自信」
なくなってしまいました。精神的に疲れ、自信もなくし自
というものが生まれ、今では堂々としていられるようにな
分さえも見失っていました。そんな私を見かねた両親が
りました。昔からの夢である異文化交流も、韓国の人と
私を半年に一度ずつ韓国に連れていってくれました。後
話したり、市場に行ったとき値切ってみるなど、少しずつ
で知ったのですが、韓国に行くと私の顔が生き生きして
とても小さなことですが、果たしています。
いたとのことです。現地では韓国語を使い、実際に韓国
今は、まだすごく大きな夢ですが、韓国に留学して生
の人と話をしたり、旅行はいつもフリーで行くため、私が
きている韓国語をもっと学び、日韓の架け橋になれるよう
終始、母や父の通訳をしたりと結構忙しく、旅行中に食
な人間になりたいと思っています。
べた料理の味はいつも覚えていないほどです。実際に韓
★スピーチ原稿は韓国語。日本語の原稿より一部抜粋しました。
5
国際文化フォーラム通信 no. 80 2008 年 10 月
日本語で韓国・韓国語への思いを語る
日本語エッセイ部門
日本語エッセイ部門は日本語の作文(1,000字以
日本語エッセイ部門の本選出場者:8 名
内、
韓国語の単語を一つ以上入れる)
にもとづいて予選審
発表者
所属学校
エッセイの題名 *
それは 4 月1日に始まった
査を行い、本選ではそれを口頭で発表するもの
☆ 井田晟子
筑紫女学園高等学校 2 年
です。この部門の応募者は全部門の応募者の 4
○ 梅本有奈
長崎県立中五島高等学校 2 年
伝えたい音
◇ 酒井めぐみ
東洋英和女学院高等部 2 年
チュミガモエヨ(趣味は何ですか)
割を占め、これまで韓国語とは無縁だった高校
杉本礼衣奈
からの応募者も少なくありませんでした。
○ 高木舞
北海道旭川商業高等学校 3 年
愛知県立旭丘高等学校 3 年
おもてなし
「壁」を越えて
武田和浩
愛知県立岡崎商業高等学校 3 年
彼が笑顔で返してくれたもの
長田義則
京都府立宮津高等学校 3 年
マンファが繋ぐ未来:日本と韓国
土志田るり子 慶應義塾湘南藤沢高等部 2 年
* エッセイの内容はクムホ・アシアナ杯高校生大会の公式サイ
トに掲載される予定です。
チルミンチョ(七面鳥)
☆:最優秀賞受賞者 ○:優秀賞受賞者 ◇:特別賞受賞者
「伝えたい音」
「冬のソナタ」という韓国ドラマに、ペ・ヨンジュンとい
う俳優が出演し、おばさまたちの圧倒的人気を呼んだ。
その結果、
日本中に韓流ブームが巻き起こる。そんななか、
EXILE でもジャニーズタレントでもなく、韓国俳優にはま
梅本有奈さん
……長崎県立中五島高等学校 2 年
長崎県の五島列島に住んでいる。韓国語に
関心があることを知っていた担任の教師か
ら、クムホ・アシアナ杯高校生大会への応
募を勧められた。九州本土に行くのも東京
に行くのも初めて。韓国に行くのも、もちろ
ん初めてだった。
る人物がいた。それが、私だ。
きっかけは母だった。毎日、しつこいぐらいに韓国ドラ
6
マを見るよう勧めてくる。初めは、まったく興味がなかっ
い。しかし、韓国語を使えば、素直に言えるから不思議
た。周囲の友だちも誰も見ていない。私は友だちに笑わ
だ。日本語では伝えられない気持ちも、韓国語なら表現
れると思って、見る素振りさえ見せなかった。しかし、あ
できる。韓国ドラマに覚えた単語が出てくると、やる気が
る日をきっかけに、私の考えは変わることとなる。母のし
湧いてきた。もっともっと、自分の気持ちを表に出せるよ
つこさに負け、少しだけならと見ることにしたのだ。
う、韓国語を勉強しようと思った。
すると、私はすぐに夢中になった。普段はあまり感動し
私は、高校を卒業後、本格的に韓国語を学ぶつもりだ。
ない私が、心を動かされたのだ。しかも、ウォンビンとい
そして、将来、韓国に行きたい。そこで友人をつくり、困
う俳優に惹かれ、私は彼の虜となった。その日から、私
っているときには、
「ケンチャナヨ?」と、手を差し伸べら
と母には共通の趣味が生まれた。だが、何度も見ている
れる人になりたい。そして、
「カムサハムニダ」と言われ
うちに、私は「韓国語」という言語自体に興味をもつ。韓
る人になりたい。人と人との関わりのなかで挨拶というも
国語の響きに魅せられ、
「私も話せるようになりたい」と
のは大事である。心に思っていても、ことばで言えないと
思うようになったのだ。
相手には伝わらない。だから、自分の気持ちを素直に言
私は自分の気持ちを人に伝えるのが苦手だ。親に「あり
える韓国語と出会えた私は本当に幸せ者だ。
がとう」というのも恥ずかしく、あまり口にしたことがな
★日本語エッセイの原稿より一部抜粋しました。
国際文化フォーラム通信 no. 80 2008 年 10 月
「チュミガモエヨ(趣味は何ですか)
」
酒井めぐみさん
……東洋英和女学院高等部 2 年
韓国語はほとんどできないが、英語圏に短
期留学した経験もあり、英語によるやりとり
ができる。研修ツアーでは、ベトナムの大
学生と英語で交流を図った。
ある日、私たちは世界遺産でもある水原華城に行くこ
とにした。交通手段はタクシー。運転手さんは優しそう
なおじさんだった。しばらく乗っていると父が「私の家内
は韓国語の番組を日本で見て学んでいるんですよ」と英
語でその運転手さんに話しかけた。
「何か話してごらん
よ」といわれ、母は唯一覚えたお決まりフレーズをとっさ
に言った。
「チュミガモエヨ?」これは確か、趣味は何で
国語だから当たり前なのだが)韓国語で何かを話し始めたではな
すか、という意味だったと思う。 チュミ というのが日本
いか。私たちはあっけにとられて何も分からず、ただ韓国
語の 趣味 に似ているから、これだけはなんとなく覚え
語が耳から耳へ通り抜けていくだけであった。
ていた。
思わず笑いがこみ上げてきた。落ち着いて考えてみる
運転手さんは「アンニョンハセヨ」や「カムサハムニダ」で
と当たり前のことなのだ。 趣味は何ですか と聞いたのだ
はない予想に反したことばが耳から入ってきたから、おぉ、
から、返事がくるに決まっている。なのに、そこまでは頭
この人はしゃべれるぞ、と思ったのだろう。予期せぬこと
が回らなかったのだ。
が起こってしまった。母は何も意味など考えず知っている
それから 6 年。母のお決まりのフレーズはもちろん……
フレーズを言って、それだけで満足していた。でもそれで
「チュミガモエヨ !?」
終わらなかったのだ。運転手さんはペラペラと流暢に(母
★日本語エッセイの原稿より一部抜粋しました。
「彼が笑顔で返してくれたもの」
武田和浩さん
……愛知県立岡崎商業高等学校 3 年
3 年生になってから、学校の課題研究授業
で韓国語講座を選択し、勉強している。韓
国語に興味をもったのは、近所に住む韓国
語を話す人と韓国語で話をしたいと思った
ことがきっかけ。
僕の家の近くには韓国語を話す人がいます。その人は、
数年前に近所にやってきました。毎朝、日本語で「おはよ
うございます」と挨拶をしています。それまでの僕は、話
してみようなんて思わず、彼を見かけても、気にもせず
素通りをしていました。
初めて「おはようございます」と、挨拶したとき、一瞬
キョトンとされました。しかし、すぐに「おはようございま
緊張していたので、少し大きな声になってしまったこと
す」とニッコリと微笑んで返してくれました。このとき僕
や、普段の挨拶と違うということもあってか、彼はビック
は、そんな当たり前の挨拶に、すごく感動しました。そし
リしていました。が、すぐに「안녕하세요 .」と、返ってき
て、せっかく近所にそういう人がいるのだから、韓国語で
ました。初めて挨拶したときのようなあの笑顔に、僕はま
会話ができるようになったら楽しいだろうなぁと思い、韓
た感動をしました。
国語の講座を選び勉強を始めました。
いつか、彼やその他の韓国の人たちと、すべて韓国語
韓国語の勉強を始めて少ししたある日、いつものように
でいろんな事を話して、堂々と「韓国が好き」と言えるよ
学校に行くときに、また彼に会いました。そこで僕は、勇
うになりたいです。僕にとってその記念すべき第一歩が
気を出して一つの行動を起こしました。僕はドキドキしな
がら、彼に言いました。
「안녕하세요(アンニョンハセヨ)!」
「안녕하세요 .」なんです。
★日本語エッセイの原稿より一部抜粋しました。
7
国際文化フォーラム通信 no. 80 2008 年 10 月
韓国の文化と人びとに
触れて
6 日間の韓国研修ツアー
2 日目の歓迎式でデュオの伝統弦楽器奏者、ベトナムの大学生らとともに記念撮影。
7 月 28 日(月)から 8 月 2 日(土)まで、入賞者のうち 11 名
を通じてさまざまなことを体験しました。また、日本全国か
が韓国研修ツアーに参加しました。研修ツアーの趣旨は、韓
ら参加した高校生との出会いも得がたいものになったようで
国の歴史や伝統を体験的に知ること、個人や家族の旅行で
す。ツアーでは、クムホ・アシアナ杯のベトナム大会入賞者
は経験できない韓国を知ることにありました。アサンのリゾ
の大学生 20 名と行動を共にすることもありました。
ート施設、キョンジュの石窟庵、仏国寺などを訪ねたり、ア
最優秀賞受賞者は、研修ツアー後、さらに慶煕大学の国際
シアナ航空のトレーニングセンターで乗務員の訓練を受けた
教育院で 3 週間の語学研修を受けました(都合により今回参加でき
り、ホームステイしたりするなど、参加した高校生はツアー
なかった韓国語スキット部門の2名は2009年に参加予定)
。
韓国研修ツアーの日程( 2008 年 7 月 28 日∼ 8 月 2日実施)
韓国研修ツアーに参加して
期日
旅程
1日目
・日本の四つの空港(羽田、名古屋、福岡、熊本)から出発、ソウルのキ
ムポまたはインチョン空港に到着[ホテル泊]
・クムホ・アシアナビルで歓迎式、
伝統弦楽器とギターによるデュ
エット公演を鑑賞(ベトナム大会入
一度、韓国に行ってみたかっ
た。大学でさらに韓国語を勉
強したい。
賞者と合同)
・アシアナ航空トレーニングセン
ターで乗務員と同じユニフォー
ムを着用して訓練を体験、記念
2日目 撮影
・クムホ美術館を見学後、イン
サ洞を散策
・ソウル外国語高等学校の日本
語科の生徒宅へ[ホームステイ]
ホームステイ宅の高校生と一緒にノレ
バン(高校生もよく行くカラオケ)に行った。
韓国の高校生の乗りのよさに感動した。
歓迎式にて
初めての韓国旅行。ロッテワールド
のバイキング(海賊船)が一番おもし
ろかった。
アシアナ航空トレーニングセンターにて
ホームステイ先のお母さんがいつも歌
を口ずさんでいる陽気な人で、とても
親切にしてくれた。英語も日本語も通
じなかったが、楽しかった。
SI
C
・ホームステイ宅で朝食後、国立中央博物館へ
・慶煕大学国際教育院で歓迎式(ベトナム大会入賞者と合同)、終了後キ
3 日目 ャンパス・ツアーを行う
・ロッテワールド・ツアー
・ソウル外国語高等学校の日本語科の生徒宅へ[ホームステイ]
MU
・ホームステイ宅で朝食後、アサ
ン(ソウルから南へバスで 1時間半)へ
・アサン・スパビス水上リゾート
4 日目 で遊ぶ(ベトナム大会入賞者と一緒に)
・アサンからキョンジュへ(バスで
さらに南へ 3 時間)
[ホテル泊]
キョンジュ近郊のレストランにて
泊めてもらった家の高校生と一緒に
COEX(ショッピングモール)に行った。映
画館に行ったり、本屋に寄ったり、CD
を買ってもらったりした。
・石窟庵、仏国寺を見学(ベトナ
ム大会入賞者と合同)
5 日目
・昼食後、ソウルへ。夕食兼歓
送会(ベトナム大会入賞者と合同)
研修中に出会った高校生たちと、竹島(ドク
SI
C
[ホテル泊]
MU
ト)問題、経済問題から好きなタレントにい
仏国寺にて
6 日目
8
ロッテワールドのコーヒー
カップが一番楽しかった。
・キムポまたはインチョン空港から羽田、名古屋、福岡、熊本空港
へ
たるまで、英語で話すことができた。
国際文化フォーラム通信 no. 80 2008 年 10 月
3 週間の韓国語研修を受けて
★菊地さんと井田さんは、それぞれ韓国語スピーチ部門と日本語エッセイ部門の最優
秀賞を受賞、研修ツアーのあと、慶煕大学国際教育院で 3 週間の語学研修を受けた。
韓国語を通してさまざまな人とつながった
今回私が参加した慶煕大学の語学研修プログラムには 24 ヵ国、156 名の方が
参加していました。エジプトやドイツ、ルーマニア、タイ、ベトナム、アメリカ、
中国などさまざまな国の、人種も文化も言語も違う人々が共に学ぶ光景は、私に
とって初めてのものでした。それゆえに緊張して、最初はどうすればいいかわか
菊地令華さん
……福岡県立福岡高等学校 1 年
母親は韓国人だが、家庭ではふだん日本語で
話す。父親も仕事で韓国語を使っている。家
庭的には韓国語学習に関して、とても恵まれ
た環境にある。
りませんでした。不安が募っていた最初の授業の日、話しかけてくださったのは
クラスメイトのベトナムの方でした。
「アンニョンハセヨ!」そんなごく当たり前
の一言に始まり、年はいくつか、どこに住んでいるのか、韓国語を学び始めてど
れくらいかなど、韓国語でいろいろなことを話しました。本当に一緒に会話でき
ることが嬉しくてたまらなくなり、不安なんてどこかに吹き飛んでしまいました。
そのとき、何よりも強く感じたのは、人種の違う人とも韓国語を通してつなが
ることができる喜びです。たとえ住む国が違っても一つの言語を通してコミュニ
ケーションをとれることは素晴らしいと思いました。
情に触れ、あたたかい気持ちになった
韓国にいて嬉しかったのは、韓国人の「情」というものに触れたときでした。
ある週末に、ルームメイトの知り合いの韓国のアジュンマ(おばさん)の家に泊ま
ることになったときのことです。お互い面識のない人の家にいきなり泊まること
はあつかましく失礼ではないかと、とても心配していたのですが、アジュンマ
井田晟子さん
……筑紫女学園高等学校 2 年
仏教系の伝統ある私学に在籍。日本語エッセ
イ部門の最優秀賞を受賞して、韓国語の研修
を受けることになり、以前から勉強していた
韓国語学習にさらに熱が入った。
はそういうことはまったく気にせずあたたかく迎えてくれました。そのことにと
ても驚かされました。
家を親切に案内してくれ、食事をたくさん食べるように何度も何度も勧
めてくれました。些細なことでも常に気をつかってくれて、とても嬉しくて
あたたかい気持ちになりました。私は韓国語ができるわけではないのです
が、何とかお礼の気持ちを伝えたくて「カムサハムニダ」を繰り返しました。
最後にアジュンマがルームメイトに「良い友だちを連れてきたね」と言ったのを
聞いたとき胸が熱くなりました。
第 2 回クムホ・アシアナ杯「話してみよう韓国語」高校生大会の概要
■参加資格
本選時に日本の高等学校またはそれに準ずる専修学校や各種学校、あるい
は高等専門学校の1∼3年次に在籍する人で20歳未満の人が参加できます。
ただし、育った環境において主な言語が韓国語で、最も楽に話せる言語の
一つが韓国語である人は参加できません。
■応募要項
韓国語スキット部門:参加申込書(2 名分)
、韓国語で吹き込んだカセット
テープ、MD、CD-R などを提出。
韓国語スピーチ部門:参加申込書、韓国語の原稿(1,000 字以上 1,200 字
以内)
、原稿の日本語訳、韓国語の原稿を自分で吹き込んだカセットテープ、
MD、CD-R などを提出。
日本語エッセイ部門:参加申込書、日本語の原稿(1,000 字以上 1,200 字
以内)を提出
締切:2009 年 1 月 16 日(金)
本選:2009 年 3 月 21 日(土)
[東京にて開催予定]
■賞[予定]
最優秀賞: 韓国語スピーチ部門・日本語エッセイ部門各 1 名、韓国語ス
キット部門 1 組(2 名)
計 4 名
賞状、トロフィー、韓国研修ツアー(7 月末∼ 8 月初めの 1
週間)
、韓国の大学での韓国語研修(3 週間)
優秀賞:
韓国語スピーチ部門・日本語エッセイ部門各 2 名、韓国語ス
キット部門 2 組(4 名)
計 8 名
賞状、トロフィー、韓国研修ツアー
特別賞:
韓国語スピーチ部門・日本語エッセイ部門各 1 名、韓国語ス
キット部門 1 組(2 名)
計 4 名
賞状、トロフィー、韓国研修ツアー
指導教師賞: 韓国語スキット部門の最優秀賞を獲得したペアを指導した
教師 1 名
賞状、韓国研修ツアー(引率者の一人として参加)
http://jp.flyasiana.com/ で詳細を確認してから応募してください。
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