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古米化とタンパク質の変化 - 秋田県総合食品研究センター

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古米化とタンパク質の変化 - 秋田県総合食品研究センター
単年度試験研究成績
(作成
平成16年3月)
研究課題名:県産米及び穀類の新規需要を開拓するための加工技術の開発
(古米化とタンパク質の変化)
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室:食品開発部門資源利用担当
研究期間:継・中
担当者:大能俊久
平15年度(平15∼19年度) 協力・分担関係:
1.目的
米を貯蔵すると、炊飯した際の米飯の硬さや粘りが変化してくる。古米は一般的に好ま
れないが、それは古米米飯が硬くて粘らないためである。この古米化によるテクスチャー
変化の原因については、1970年頃から①遊離脂肪酸の関与②細胞壁の架橋構造③タン
パク質の重合や変性、などの説が出ているが、詳しく分かっていない。今年度のような不
作の年には政府保管の備蓄米(古米)を食べなければならないが、古米のテクスチャーを
改良する安価で有用な方法も見つかっていないのが実状である。
平成14年度から古米に関わる研究を進めていく中で、古米米飯のテクスチャー変化に
タンパク質が関与していることを見いだした。これらの変化はタンパク質がSS結合を形
成することで起こると推察しているが、確証を得ていない。そこで、本年度は、古米化に
よるタンパク質の重合を明らかにすることを目的とした。
2.方法
1)新米と古米、還元剤、酸化剤と米飯テクスチャー
秋田県産あきたこまち普通精米(新米、古米)をそのまま1.6倍量の炊飯溶液に1時間
浸漬後、ナショナル電気炊飯器SR-W100で炊飯し、2時間後の米飯テクスチャーをテンシプレッサー
で測定した。炊飯溶液として蒸留水、8mMNa 2SO 3、5mMKIO 3、を用いた。
無洗米はSJ無洗米をそのまま、あるいは30℃で60日貯蔵(無洗米古米)して使用した。
2)研削した新米、古米の米飯テクスチャー
新米、古米を歩留まり95∼73%まで研削した精米について、1)と同様にテクスチャー
の測定を行った。
3)外層粉から抽出したタンパク質のSDSを用いたnative-PAGE
2)で研削した際の無洗米新米、古米の5%外層粉から、1%SDSを含む10mMNaOH水溶液で
タンパク質を1時間抽出した。その後、Laemmliの方法に準じてSDSを用いたnativePAGEにかけた。
3.成果の概要
還元剤、酸化剤溶液と米飯テクスチャーの関係を表1に示した。まず、蒸留水で炊飯した場
合は普通精米も無洗米も、古米でバランス度の低下が認められた。還元剤(Na 2SO 3)を加えるこ
とにより、特に古米の硬さが改良されて新米と差がなくなり、バランス度が上昇した。酸化剤
(KIO 3 ) を加えた場合は、逆に新米古米ともにバランス度がやや低下した。このことから、
タンパク質のSS重合が米飯の硬さに関係していると予想した。
また、新米、古米の外層を研削すると、両者のテクスチャーの差は小さくなった(表2)。
その中でも特に無洗米で5%外層を削るだけでバランス度の差が小さくなっていた。無洗米外層粉
の抽出タンパク質のnative-PAGEにおいて、古米はグルテリンの酸性サブユニット(37∼39
kDa)と塩基性サブユニット(22∼23kDa)が減少しており、両者の重合体(57kDa)のバンド
が増えていた(図1)。無洗米の古米では、このような酸化重合した外層のタンパク質の一
部が、米飯を硬くしていると推測している。
表1
精米
普通精米(新米)
〃
〃
普通精米(古米)
〃
〃
無洗米(新米)
無洗米(古米)
表2
精米
普通精米新米73%
普通精米古米73%
普通精米新米93%
普通精米古米93%
無洗米新米95%
無洗米古米95%
還元剤、酸化剤と米飯テクスチャー
炊飯溶液
硬さ(N) 粘り(N) バランス度
蒸留水
32.0
10.1
0.318
Na2SO 3
31.8
10.4
0.333
KIO 3
31.8
9.7
0.310
蒸留水
35.9
9.3
0.260
Na 2SO 3
31.9
9.4
0.299
KIO 3
37.0
8.8
0.240
蒸留水
27.6
9.3
0.343
蒸留水
35.1
9.8
0.283
研削した場合のテクスチャー
炊飯溶液
硬さ(N) 粘り(N) バランス度
蒸留水
24.4
8.3
0.343
蒸留水
24.9
8.5
0.343
蒸留水
28.9
9.2
0.324
蒸留水
31.7
9.1
0.289
蒸留水
28.4
9.8
0.350
蒸留水
29.7
9.4
0.323
A:無洗米新米外層粉
B:無洗米古米外層粉
glu:グルテリン
pro:プロラミン
57k
glu(重合)
glu(酸性サブユニット)
37∼39k
glu(塩基性サブユニット)
pro(重合)
pro
22∼23k
13k
A B
図1 外層粉に含まれるタンパク質のnative-PAGE
4.今後の問題点と次年度以降の計画
今回、1%SDSを含む10mMNaOH水溶液で抽出を行ったが、抽出時間に伴ってタンパク質が
変化していることが分かっている。変化を起こしにくいタンパク質の抽出方法やどのタン
パク質がテクスチャーを硬くするのか等について、引き続いて明らかにしていく。また、
古米のテクスチャー改良についても検討していきたい。
5.結果の発表、活用等
学会での発表を予定している。
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