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会話文と説明文における単語認知の差異と リスニングスピードに関する考察

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会話文と説明文における単語認知の差異と リスニングスピードに関する考察
会話文と説明文における単語認知の差異と
リスニングスピードに関する考察
米崎啓和
1.はじめに
音 節 拍 リ ズ ム 言 語 (sylab
let
i
med l
anguage) の 母 語 話 者 に と っ て , 強 勢
拍リズム言語 (
st
re
s
st
i
med l
anguage
) の音声を聴き取ることは難しいとさ
s
j
ean& Ge
e,1987
;Eastman1993;Vander
p
lank,1
993;F
iel
d,
れる (Ur
,1984;Gro
2008) 。 また , リ ス ニ ン グ の 際 に は 音 声 を 聴 い て か ら 意 味 理 解 に 至 る ま で
様々な下位技能が関与するが,切れ目のない音声を単語に分節化すること
el
d,2003;Vander
gr
if
t
,2012) 。
は 決 し て 簡 単 な 作 業 で は な い (Ros
t
,2002;Fi
さ ら に , 音 声 を 単 語 と し て 認 知 で き な け れ ば 意 味 理 解 に は 至 らず , 日本人
英 語 学 習 者 に と っ て リ ス ニ ン グ に お け る 単 語 認 知 は 大 き な 弱 点 の lつ と さ
れ る (I
to,1
990) 。 そ れ ゆ え , 日 本 語 母 語 話 者 が 英 語 を 聴 き と る 際 に 如 何
にして単語認知を改善するかはリスニングにおける重要課題である 。
一 方 ,英 語 に お け る リ ス ニ ン グ を 学 習 者 に 教 材 と し て 与 え る 際 に , テキ
ストタイプ (
t
extt
y
pe
) 及び,
リスニングスピード
(
spe
echr
at
e
) を考慮す
ることは重要である。通常リスニング教材として用いるのは,あらかじめ
用 意 さ れ た ス ク リ プ ト を 読 み 上 げ た 形 式 の も の が 圧 倒 的 に 多 い 。なぜなら,
即興の イ ンタビューなどの本物のテキス卜 (
au
t
h
e
n
t
i
ct
e
x
t
)で は ,聴き取り,
特に単語認知の部分で難しすぎると思われるからである 。 また,会話文に
は , ポ ー ズ の 位 置 が 文 法 的 ・意 味 的 切 れ 目 と 必 ず し も 一 致 し な い , 言 いよ
ど み (hes
i
t
a
t
i
o
n) や 繰 り 返 し (
r
e
p
e
t
i
t
i
o
n) , 非 文 法 的 発 話 (ungrammatical
u
t
t
e
r
a
n
c巴 s
) の 存 在 と い っ た 特 徴 が あ り ( 河 野 , 1993;Jones,2008) , 説 明 文
とは聴き取りの際の単語認知の難易度も異なると推測される 。 またこのよ
うなテキス卜特性の違いだけではなく ,音 声言語においては会話文と説明
文では平均的発話スピードも異なる
(
Tauroza& Allison,1990)
そこで本研究では ,実際の本物の会話場面を想定しそれに近い形で録音
された対話形式の文(以下会話文)と説明文テキス卜の読み上げ形式の文
( 以 下 説 明 文 ) に お け る 単 語 認 知 の 違 い を , 機 能 語 ・内容語別,
リスニン
グスピードを変数として調査を実施し ,その結果を元に考察を加え,結論
を導くと共に,教育的示唆についても言及したいo
-145-
2.先 行 研 究
リ ス ニ ン グ テ ス トの 際 に リ ス ニ ン グ 教 材
Buck (2001) は
,
(l
i
s
tening
material
) の 特 性 を つ か む こ と は 大 事 で あ る と 述 べ ,会 話 文 教 材 と 説 明 文 教
材 の違いを次のように説明している 。会 話文教材 は話し 言 葉
(spoken
language
) と 関 連 が 深 く 即 興 性 が 高 い 。 そ し て , 説 明 文 教 材 は書 き言 葉
(
w
r
i
tt
en language) と 関 連 が 深 く , あ ら か じ め 準 備 さ れ た も の を 読 み 上 げ
た 形 式 の も の で あ る 。 また , Flowerdew & Miller(2005) は , 話 し 言 葉 を 書
き起こしたものと書き言葉は異なるとしているが,これは言い換えると,
書き言葉を読み上げたテキストと話し言葉は違うということになる 。前者
の代表が ,説明文であり , 後 者 の 代 表 が 会 話 文 で あ る が , これらは異なる
特徴を持つ。
会 話文の特徴として,単純な統語構 造 ,等位接続詞の多用 ,文中 のポー
ズ ,言 い よ ど み , フ ィ ラ ー の 挿 入 , 繰 り 返 し ,言 い 直 し (
f
al
s
es
t
a
r
t
s) ,非
文 法 文 の 存 在 と ,語 葉 ・文 法 の 訂 正 言 い 直 し (Buck,2001;Osada,2004;Jones,
2008), 音 変 化
, 語 法 上 の 揺 れ , 音 調 単 位 の 短 さ ( 河 野 , 1993), 発 話 速 度 の
速さ (Tauroza& Allison,1990), 強 勢 拍 リズム 言 語 特 有 の 弱 音 節 と 強 音 節 の
区別 が 際 立 つ こ と
(Osada,2004;Jones,2008) な ど が 挙 げ ら れ る が ,
は全て ,音声 からの単語認知を難しくする要因として働く
これ ら
(Voss,1979)。
しかし , 一 方 で は , 説 明 文 に 比 べ て 会 話 文 は 文 構 造 が 単 純 で , 余 剰 性 が 多
く,ポーズの数も多いので認知的負荷が低く, 最低限の単語認知さえでき
れ ば 理 解 し や す い (Rubin,1994;C
a
r
r
i
e
r,1999), と さ れ る 。
河 野 (1993) は , あ ら か じ め 用 意 し た 台 本 を 読 み 上 げ る よ う な 音 声 英 語
は,言 い よ ど み が 少 な く , 語 法 上 の 揺 れ も 少 な い 一 方 で ,文 構 造 が 複雑 で
あ る の に 対 し , 同 じ 音 声 英 語 で も 即 興 の 発 話 は 文 法 的・ 語 法 的 に 乱 れ て 言
いよどみも多い一方で音調単位は短 いとしている 。 そして,会話文におけ
る 文 法 上・ 語 法 上 の 不 整 理 や 言 い 間 違 い , 言 い 直 し は 聴 解 を 困 難 に す る 要
因 で あ る 一 方 ,音 調 単 位 の 短 さ と 文 構 造 の 単 純 さ は 聴 解 を 助 け る 要 因 で あ
る と す る 。 また ,く だ け た 音 声 英 語 ほ ど 脱 落 , 同 化 な ど の 音 変 化 が 起 こ り
やすいとしている 。
また , Osada (2004) は
, 音声による イ ンプットは常に不明瞭であり ,特
にくだけた表現の使われる発話速度の速い会話文にお いて は , 同化
(
a
s
si
m
i
l
a
t
i
o日) や 脱 落 (e
l
i
s
i
o
n) と い っ た 音 変 化 が 起 こ り や す い と し , 会
話文においては話し手が聞き手に単語認知が難しくなるレベルにまで音 を
変化させる傾向が 見 られると報告している 。
一方
, Tauroza& Allison(1990) は , 会 話 文 と 講 義 文 の 発 話 速 度 の 差 に つ
1
4
6
いて ,講 義 文 は 140w.p.
m.(wordsperminute,以 下 同 じ ) 付 近 で , か な り 遅
く, 会 話 文 は 210 w.p.m.付 近 で か な り 速 い と し て い る 。 会 話 文 の 発 話 速 度
) は モ ノ ロ ー グ (monologue
) と違って,
が 速 い 理 由 と し て , 対 話 (dialogue
発 言 権 (c
o
n
t
r
o
l oft
h
ef
]o
or) を 争 わ な け れ ば な ら な い た め , 早 口 に な る と
述べている 。 この考え方に基づくと,標準的会話文のリスニングスピード
は 説 明 文 よ り も 速 い こ と に な る 。ま た , 説 明 文 の 代 表 に 講 義 文 を あ げ る こ
と に つ い て ,Diakidoy,Stylianou,K
a
r
e
f
i
l
l
i
d
o
u,& Papageorgiou(2005) は , 実
際 の 場 面 で 本 物 の 説 明 文 (a
u
t
h
e
n
t
i
co
r
a
lexpositorydiscourse) を 聞 く こ と は
まれであるとし,講義文が代表的であるとしている 。
1990) は ,1単 語 あ た り の 音 節 数 (s
y
l
l
a
b
l
e
sper
さらに ,Tauroza& Allison(
word, 以 下 s
.
p
.
w
.) の 平 均 は 難 解 な 単 語 が 多 い 説 明 文 の 方 が , 単 純 な 単 語
が 使 わ れ る 会 話 文 よ り も 大 き い こ とにも 言 及 し て お り , 実 際 の 発 話 速 度 を
測る単位としては
w.p.mではなく,
1 分 間 あ た り の 音 節 数 (syl
l
a
b
l
e
s per
minute,以 下 s.
p
.
m
.
) を用いて 表 すべきであるとしている 。
Jones (2008) は , 説 明 文 に お い て は , 発 話 速 度 ( リ ス ニ ン グ ス ピ ー ド )
が一定であるのに対し ,会話文では発話速度が自然であり
定速度ではなく, 平 均 的 に 説 明 文 に 比 べ て 速 い と す る
O
1
)
必ずしも一
また,会話文にお
いてはポーズが文中で置かれることが多いのに対し,説明文ではポーズは
文末に来るとする 。 そして ,会話文の方が説 明文に比べて,単語認知の際
の変動要素が多い故に,難易度が高いことが予想、できる,としている 。
さらに, Jones (2008) は , 説 明 文 に お い て は テ キ ス 卜 の 読 み 上 げ に お い
て , 実 際 の 自 然 な リ ズ ム で は な く 過 剰 に 発 音 (over-pronounced) さ れ て い
る リス ニ ン グ 教 材 が 多 い と す る 。 過 剰 な 発 音 と は , 自 然 な 発 話 で あ れ ば 非
常に弱く読まれる音節が,強めに発音されているなど,本来弱 音節になる
可能性の高い音節を強音節で読み,強勢拍リズム言語の強弱のリズムの繰
り返しが実際より弱められていることを言う 。 その結果,説明文のリスニ
ン グ 教 材 の 多 く は 自 然 な 音 韻 リ ズ ム が 故 意 に 歪 め ら れ て い る と 主 張する 。
こ の こ と は , こ れ ら の 音 声 は 実際より,
日本人英語学習者に聴きやすい
こと, 単 語 認 知 が し や す い こ と を 意 味 す る 。 な ぜ な ら 英 語 の 強 勢 拍 リ ズ ム ,
すなわち,弱音節と強音節が繰り返されるリズムと ,強音節の数で発話の
長さが決まる英語の特性,つまり弱 音節は速く弱く,強音節は長く強く読
ま れ る 英 語 の 音 声特性こそが,
リス ニ ン グ に お け る 単 語 認 知 , 特 に 弱 音 節
で読まれることの多い機能語の認知を難しくしているからである
(Ur,
1984;Grosj巴an& Gee,1987;Eastman,1993)。 言 い 換 え る と , 過 剰 な 発 音 は
,
英 語 の 自 然 な リ ズ ム を 崩 し , 音 節 拍 リズム 言 語 の そ れ に 近 づ け る 効 果 を 持
て
コ
。
1
4
7
また, Vanderplank (1993) は
,
リスニングの際の単語認知 には英語の強
弱 の リズ ム が 深 く 関 与 す る と 主 張 す る 。 そ し て , 音 節 拍 リズム 言 語 の 母 語
話 者 が 英 語 の リ ス ニ ン グ を す る 際 に は , 1分 間 に 発 音 さ れ る 強 音 節 の 数 と ,
強音節と単語数の 比が難易度を左右し ,前者の値 (
pacing) が 高 く (high
t
empo) , 後 者 の 比 (spacing) が 低 い (lowproportion) ほ ど , 音 節 拍 リ ズ ム
言 語 の 母 語 話 者 に は 聴 き 取 り や す い と す る 。 こ の 考 え 方 か ら い う と , Jones
(2008) が , 説 明 文 リ ス ニ ン グ 教 材 の 多 く に 見 ら れ る と 主 張 す る 過 剰 な 発 音
は,音節拍リズム 言語の母語話者に聞き取りやすいはずである。
日本人英語学習者は,
日 本 語 が 音 節 拍 リズ ム 故 に , 強 勢 拍 リズ ム の 英 語
を等 間 隔 に 弱 音 節 を 強 音 節 に 構 成 し 直 し て 読 も う と す る 。 そ し て ,聴くと
き も 同 じ シ ス テ ム を 使 う た め , 強 勢 拍 リズ ム の 英 語 の 単 語 認 知 , 特 に 機 能
語 を 聴 き 取 る こ と が 困 難 で あ る と さ れ る (Eastman,1993)。 従 っ て , 日 本 人
英 語 学 習 者 に と っ て 説 明文 教 材 の 単 語 認 知 は 会 話 文 教材 に比べて容易であ
る こ と が 予 想、できる 。
一 方 , リス ニ ン グ ス ピ ー ドが 理 解 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て G
r
i
f
f
i
t
h
s(
1992)
は
,
150s.p.m. (127w.p.m.) 近 辺 の 標 準 よ り 遅 い リ ス ニ ン グ ス ピ ー ド は 標 準
的 ス ピ ー ド 225s.p.m. (188w.p.m.) に 比 べ て , リ ス ニ ン グ に お け る 理 解 度 を
有 意 に 高 め る と 報 告 し て い る 。 ま た , Kelch (1985) も , リス ニ ン グ ス ピ ー
ドは理解に有意な影響を 与 えるとしている 。
しかしながら , こ れ ま で 日 本 人 英 語 学 習 者 を 対 象 に 説 明 文 と 会 話 文 の 単
語 認 知 の 難 易 度 の 違 い に つ い て 実 証 的 に 検 証 し た 先 行 研 究 は な い 。 内容語
と機能語に関しては ,F
i
e
l
d (2008) が 様 々 な L1 を 持 つ 英 語 の L2学 習 者 を
対象に検証した結果 ,英語習熟度に関係なく機能語の認知は内容語の認知
より 難 し い と し て い る が , 調 査 協 力 者 の 中 に 日 本 語 母 語 話 者 は 3名 し か い
な い た め , 日 本 人 英 語 学 習 者 に 関 し て 確 か な こ と は 言 え な い 。 ま た ,Kelch
(
1985), G
r
i
f
f
i
t
h
s(
1992) においては,
リスニングスピードと理解度につい
て 議 論 し て お り , リス ニ ン グ ス ピ ー ド が 単 語 認 知 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て の
検 証 は さ れ て い な い 。 さらに, Vanderplank(1993) の 1分 間 に 発 音 さ れ る 強
音節の数と ,強音節と単語数の比の違 い が音節拍リズム言語の母語話者の
英 語 リス ニ ン グ に お け る 単 語 認 知 に 及 ぼ す 影 響 に 関 す る 主 張 に つ い て , 実
証 的 に 検 証 し た 先 行研 究 は な い 。 以 上 の 事 実 に 鑑 み ,本 研 究 で は 次 の よ う
な研究上 の問いを設定した。
3
.研 究 上 の 聞 い
1
説明文と会話文の単語認知の難易度に差はあるのか。
1
4
8
2
その難易度は内容語と機能語で異なるのか。
3. そ の 難 易 度 は リ ス ニ ン グ ス ピ ー ドが遅く な る と 影 響 を 受 け る の か 。
4
日 本 人 英 語 学 習 者 に と っ て リ ス ニ ン グ に お け る 単 語 認 知 は , 1分 間
に発音される強音節の数 (
pacing) が 少 な く
(Iowtempo) ,強 音 節 と 単
語 数 の 比 (spacing) が 高 い (highproportion) ほ ど 難 易 度 が 高 い の か 。
4.調 査
4
.1.調査参加者
日 本 の 国 立 高 等 専 門 学 校 に 在 籍 す る 3・4年 生 149名 が 調 査 に 参 加 し た 。
内訳は, 3年 生 37名 ,4年 生 112名 で あ っ た 。調 査 参 加 者 の L1は H本 語 で
あ る 。 ま た , 調 査 実 施 直 後 に 実 施 さ れ た 調 査 参 加 者 の TOEICの 平 均 は 395.71
点 ( 標 準 偏 差 119.97) で あ っ た 。
4
.
2
.調 査 材 料
単 語 認 知 の た め の 音 声 材 料 と し て は , ア ル ク 社 刊 の 「究 極 の リ ス ニ ン グ 」
シ リ ー ズ の レ ベ ル 1,語 葉 レ ベ ル 1
0
0
0語 の 教 材 の 中 か ら 会 話 文 と 説 明 文
2)
の 音 声 を , そ れ ぞ れ l題 ず つ 用 い た 。 調 査 に 用 い た 「 究 極 の リ ス ニ ン グ 」
シリーズは,会話文は実際の即興の発話に近い形で読まれ,説明文はテキ
ス卜の読み上げにふさわしい読み方をされているため,本調査に適切であ
ると判断した。また,会話文の代表としての対話と説明文の代表としての
モノローグの分類としても適切であると判断したため選ばれた。
さ ら に , 上 記 の 調 査 材 料 の 選 定 に あ た っ て は ,調 査 参 加 者 の 英 語 レ ベ ル
が TOEICで 4
0
0点 足 ら ず で あ る こ と も 考 慮 し た 。使 用 さ れ て い る 単 語 は 中
学 レ ベ ル 又 は 高 校 初 級 レ ベ ル の 単 語 の み で あ り , 同 教 材 の ス ク リ プ トが与
えられ ,調 査 参 加 者 が 文 字 化 さ れ た 単 語 と し て 認 知 し た 場 合 , 意 味 の わ か
らな い 未 知 の 単 語 は ほ と ん ど な か っ た と 思 わ れ る 。
4
.
3
.調査方法
初めに,
149 名 の 調 査 参 加 者
を,聴き取る 音 声のスピードに
より ,0.7倍 速 グ ル ー プ (n= 72)
表 1 事前リスニングテストの記述統計量
グノレープ
n
M
SD
O
.7倍速グループ
72 3l
.5
5
8
.69
l
.0
倍速グループ
7
7 3
0回目
8
.0
3
と 1
.
0倍 速 グ ル ー プ (n= 7
7) の
2グ ル ー プ に 分 け た
3
)。そして,
0
.
7倍 速 グ ル ー プ に は , 機 械 的 に 遅 く し た
音 声 を 聴 か せ た 。 ま た ,こ の 2 グ ル ー プ が 英 語 聴 解 力 に お い て 等 質 で あ る
ことを確認するためのリスニングテストを実施した。 リスニングテストに
1
49
は ,実 用 英 語 検 定 試 験 の 過 去 問 題 よ り 準 2級 と 2級 の 問 題 を 各 30問 ず つ 用
い て , 計 60問(満点、 60点 ) の テ ス ト を 課 し た 。 表 lは 事 前 に 課 し た リ ス
ニ ン グ テ ス ト の 記 述 統 計 量 で あ る 。 こ の 結 果 を 元 に t検 定 を 行 っ た 結 果 ,
2グ ル ー プ の 聞 に 英 語 聴 解 力 の 差 は 見 ら れ な か っ た
=
(
/
(147)
1.046,P
.297ns,r= .086)
表 2に 調 査 材 料 に 用 い た 会 話 文 と 説 明 文 の グ ル ー プ 別 リ ス ニ ン グ ス ピ ー
ド (w.p.m.及 び s.p.m.) と 1語 あ た り の 平 均 音 節 数 (s
.
p.
w.) を , 表 3 に ,
標 準 速 度 (1
.0 倍 速 ) に お け る 会 話 文 と 説 明 文 の 1 分 間 あ た り の 強 音 節 数
(pacing) 及 び 強 音 節 。単 語 数 の 比 (spacing) を 示 す 。 ま た 参 考 ま で に ,
表 2には,
Tauroza& Al
1ison(1990) の 調 査 に お け る , 英 国 母 語 話 者 の 平 均
ank(1993) の 調 査 で 用 い ら れ た 元 英 国 首
的 発 話 速 度 を , 表 3には, Vanderpl
相サッチャ一氏のデータも併記する 。
表 2 会話文 ・説 明文のリスニングスピードと 平均音節数
テキス トタイプ
会話文
説明文
グループ
O
.7倍速 グ ル ー プ
l
.0
倍速グループ
基圏直 直 員 主J
室主Y
O
.7
倍速グループ
l
.0
倍速グループ
英国母語話者(参 考ゾ
1
1
ノハーングスピード
ヴ
1
7
(w.p.m.)
(
s
.
p
.m
.)
平均音節数
(s.P.w.)
7
2
7
7
124.90
152.66
1
.2
2
1
78.43
21
8.
09
l
.2
2
2
0
8
.7
0
263.30
1
.2
6
7
2
99.04
1
4l
.04
l
.4
2
7
7
1
4l
.4
8
2
0l
.4
8
l
.4
2
1
4
1
.7
0
1
9
4
.50
1
.3
7
*
T
a
u
r
o
z
a&A
l
l
i
s
o
n(
19
9
0
) による英国母語話者 の平均発話速度
p
a
c
i
n
g
)と強 音節
表 3 1分間あたりの強 音節 数 (
単語数の比 (
s
p
a
c
i
n
g
)
E_
u
量
・
spacmg
キ
キ
{
直
値
tempo
p
r
o
p
o
r
t
l
o
n
l
o
w
M
r
s
.T
h
a
t
c
h
氾r
(
V
a
n
d
e
r
p
l
a凶(,1
9
9
3
)
41
-43
1 4.
v
e
r
y
h
i
g
h
0
h
i
g
h
今 回の調 査 に用いた 会話文
h
i
g
h
3
.4
60
今回の調 査 に用いた説明 :
文
74
v
e
r
yh
i
g
h
1
.9
l
ow
*
p
a
c
i
n
gの tempoが低く spacmgの p
r
o
p
田h
onが高 い発話は聴き取りにくし、 (
v
a
n
d
e
r
p1
a
此,1
9
9
3
)
テキス トタイプ
臼
表 2 に あ る 通 り , 1分 間 当 た り の 音 節 数 (
s
.p.m.) で 見 る と , 今 回 の 調 査 材
料における会話文と説明文の聞に大きなリスニングスピードの差はない。 し
かし ,平均的英国母語話者の会話文の発話速度に比べるとかなり遅い。 ま
1ison(
1990) の 説 明 文 は 主 に 非 母 語 話 者 向 け の 講 義 文 の デ
た , Tauroza & Al
ー タであり , 標 準 的 ス ピ ー ド よ り 遅 い こ と が 予 想 さ れ る 。 そ う 考 え る と ,
今回の会話文及び説明文は,非母語 話 者 向 けの発話速度であり ,標準的母
語話者の発話速度に比べるとかなり遅いと思われる 。そ れ で も 究 極 の
150
リ ス ニ ン グ 」 シ リ ー ズ の 中 で は , 会 話 文 , 説 明 文 共 に 3段 階 の 中 の 最 も 速
い ス ピ ー ド で あ る こ と を 付 け 加 え て お く 。 ま た , 表 3の と お り , 今 回 の 調
査 に お け る 会 話 文 は 説 明 文 に 比 べ て 1分 間 あ た り の 強 音 節 数 が 少 な く , 強
音節に対する単語数の比が高い。
な お , 機 能 語 と 内 容 語 の 判 別にあたっては, Quir
k,Greenbaum,Leech,and
Svar
t
v
i
k (1985) の 分 類 に 基 づ き , 前 置 詞 ・代 名 詞 ・決 定 詞 ・接 続 詞 ・法 助 動
詞 ・be,have
,doな ど の 第 l助 動 詞 を 機 能 語 , 名 詞 ・形 容 詞 ・一 般 動 詞 ・副 詞
を内容語として区別した。
4.4.調査手順
単語認知の測定には,以下の方法を用いた 。 初めに 会話 文,続いて説明
文 の 音 声 を巻き 戻 す こ と な し に l度 の み 流 し た 。 そ し て , 調 査 参 加 者 に は ,
ポーズは任意の場所で入ることを予告し,ポーズが入るたびに ,ポーズの
直 前 の 4-5語 を 書 き 取 る よ う に 指 示 し た 。 ポ ー ズ は 10秒 間 と し た 。 直 前 の
4-5 語 に 限 定 し た 理 由 は , 短 期 記 憶 容 量 に 関 す る 影 響 を 排 除 す る た め で あ
り , ポ ー ズ を 10秒 間 と し た 理 由 は , 4-5語 を 書 き 取 る の に 十 分 な 時 間 で あ
る と 共 に 度 書 い た 答 え を 見 直 す 余 裕 を 与 えない時間と判断したためで
ある 。 ま た , は っ き り と し た 語 数 を 指 定 せ ず 4-5語 と し た の は , 調 査 参 加
者が書き取る際に単語の数を数えるという余分な認知的負荷をかけるのを
防ぐためである 。
単語認知のテスト形式として,通常のクローズ形式の書き取りを採用し
なかった理由としては,クローズテストでは単語の切れ目のヒント,及び,
文脈のヒントを与えることになることが挙げられる 。 また,ポーズを与え
ると,その直前に聴いた音声の逐語的記録を次の発話を聴くまでは保持す
J
a
rve
l
l
a,1971) と い う 心 理 言 語 学 的 根 拠 が あ り , 本 調 査 に お け る 方 法
る (
は,自然な 音声の流れの中での単語認知を測る手法として適切であると判
断したため採用したo
リ ス ニ ン グ ス ピ ー ドの違う 2 つ の グ ル ー プ に 対 し , 同 じ 音 声 の 同 じ 個 所
でポーズを入れ,調査参加者はポーズの直前に聴こえたと判断した 単語を
4-5 語 書 き 取 っ た 。 ま た , ポ ー ズ は 会 話 文 と 説 明 文 に そ れ ぞ れ 8 か 所 ず っ
とした 。 ま た , 書 き 取 り 結 果 の 正 解 ・不 正 解 の 判 断 は ポ ー ズ の 直 前 の 4語
に 限 定 し た 。 従 っ て , 採 点 の 対 象 と な っ た の は そ れ ぞ れ 8か 所 の ポ ー ズ に
そ れ ぞ れ 4語 ず つ , 計 32語 ( 機 能 語 18語 , 内 容 語 14諾 ) ず つ で あ る o 表
4は 書 き 取 り の 採 点 対 象 と な っ た 音 声 の ス ク リ プ ト で あ る べ
mム
可
RU
1ム
表 4 書き取りの対象となった音声のスクリプト
A つんつ d 4 A Rd b
ハ
i
月 Q U
会話文
i
si
nt
h
eh
os
p
i
t
a
l
w
i
l
lbea
l
lr
i
g
h
t
t
oe
a
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f
t
e
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i
n
n
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r
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ok
i
l
lhim
t
hemt
ocomeh
e
r
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k
i
n
gthemt
ocome
whowouldm
a
r
r
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r
uD a
ts
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h
o
o
lnow
説明文
g
o
o
da
tm
a
k
i
n
gb
a
s
k
e
t
s
2 downt
ot
h
er
i
v
e
r
3 g
oa
c
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o
s
st
her
i
v
e
r
4 weret
e
n
ts
forc
a
m
p
i
n
g
5 g
e
tt
her
ebyc
a
r
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hep
l
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7 b
u
tnoneo
f
t
he
m
8 andb
e
a
u
t
i
f
u
li
ti
s
イタリック体は機能語を 示す
なお,書き取りの採点にあたって,配慮した点は以下の通りである。
①
書 き 取 ら れ た 数 語 を l語 ず つ 判 定 し , 単 語 が 適 切 に 分 節 化 で き て い な
いもの,すなわち 単語の切れ目で間違えて いるものは,それ らの該当単語
i
v
e
r→ f
o
r ever, were t
e
n
t
sf
o
r
の 範 囲 に 渡 っ て 全 て 誤 答 と み な し た (the r
camping → wonstoncare, non巴 of → nanaなど)。
②
l
r, b/
vな ど ) が
単 語 が 正 し く 分 節 化 で き て い て , か つ , 音 素 の 区 別 (l
正 しく,音声から単語が正しく認知されていると判断された場合は,綴り
u
t
i
f
u
l→
が 違 っ て い て も 正 答 と み な し た (b巴a
beutifu
,
l basket →
bascket
など)
③
書 き 取 ら れ る べ き 4語 の 内 , 先 頭 の 語 が ブ ラ ン ク で あ る 場 合 , 最 後 の
語 が ブ ラ ン ク で あ る 場 合 ,ま たは , 途 中 の 語 が ブ ラ ン ク で あ る 場 合 は , 全
て,残りの書き取られた単語が正しく認知できていれば,それらの語のみ
を正答とみなした。
④
ポ ー ズ の 直 前 か ら 数 え て 5語 以 上 の 部 分 が 書 き 取 ら れ て い た 場 合 , 又
は 余 分 な 単 語 が 挿 入 さ れ て い た 場 合 (bycar → byacarな ど ) は , そ れ ら
の 単 語 は 全 て 採 点 対 象 外 と し , 直 前 の 4語 の 範 囲 内 に お い て 正 解 と な る 単
語を全て正答とみなした。
ま た , 全 て の デ ー タ は 会 話 文 ・説 明 文 , 機 能 語 ・内 容 語 別 に 正 答 数 を 分
子,聴き取るべき 単語の総数を分母とするそれぞれの認知率(%)として
処理した。
5
.結 果
表 5 に 単 語 認 知 テ ス ト の 記 述 統 計 量 を 示 す 。 ま た , 国 lは そ れ を グ ラ フ
化したものである 。
﹄ム
司
つ
ん
RU
表 5 単語認知テストの 記 述統計量 (
n 二 149)
グループ
説明文単語認知率(%)
機能語
内容 語
会話文単語認知 率 (%)
機 能語
内容 語
n
M
SD
A
f
SD
A
f
O
.7
倍 速 グ ル ー プ 72 20.83 13.15 56.65 15.07
1
.0倍速グルー プ 77 15.66 9.96 49.72 15.25
70
70
60
~・
ゐ
ー
ー
-
.
.
60
50
50
.
40
40
,
30
ー""
・
20
"
.
30
10
10
会話文 0.7立
会話文
説明文
1
.0
70
A
f
SD
.
戸
60
50
40
- ー 向容語
.
.
.,ー
30
,,"
20
SD
35.65 16.71 64.19 1
4.2
1
25.47 13.74 56.49 1
8.64
20
-・・ 機能語
'
.
E
10
説明文
会話文
説明文
図 1 単語認知テストの結 果 (会話文 ・説明文別、機能語 ・内容語別単語認知 率 (%))
このデータを元に,
リ ス ニ ン グ ス ピ ー ド (0.7 倍 速 ・1.0 倍 速 , 被 験
A
者 間 ) , B: テ キ ス ト タ イ プ (会 話 文 ・説 明 文 ,被 験 者 内 ) , C :認 知 語 ( 機
能 語 ・内 容 語 , 被 験 者 内 ) の 2X2X2, 3要 因 混 合 計 画 分 散 分 析 を 用 い て 分
析 し た 結 果 を 表 6に 示 す
5
)。
表 6 単語認知テストにおける 3要因混合計画分散分析の結果 (n
平方和
変動因
自由 度 平 均 平 方
有意確 率 効 果 量
(F)
2
(p)
15.739
92.764
2
.037
η 0)
.000*
*
* .027
*
*
000*
156
045
001
U ハ
ハ
U
﹁
h
U ハ
H
V
っd AU
ψmyψmy
ψぬ
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向 ψmy
ψY
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U ハU
ハ
ハ
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H
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74
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115
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147
i
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00
8357.7
8
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1
531
14104.36
309
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1
52.
05
1
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7046756
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、 Fし / t
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、
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語司
寸× ﹃ 作 ×
、
ハ
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-
三互差互
c 交 誤 交 2-誤 全
528657
A80
809
1
8357.
78
78058.72
1
41
04.36
30
9
.7
9
22350.80
r
4・
円' F
円
h
υ
1 i 1よ A守 1 i 1よ aqQJ
リスニングスピード
S:被 験 者 誤 差
B
: テ キストタイ プ
交互作用 (AXB
)
誤 差 (SX B)
A
1
4
9
)
分散比
***:p < .
OO
I
分 散 分 析 の 結 果 , 2次 の 交 互 作 用 は 有 意 で は な く
.169 n
s,partialη
(
F(I, 147) = 1
.907, p
.001
) , 1次 の 交 互 作 用 は , テ キ ス ト タ イ プ × 認 知 語
の み 有 意 で あ っ た (F(
l,147)= 11
.320, p = .
001,p
a
r
t
i
alη2=.
003) 。 また,
739, p = .
000
リ ス ニ ン グ ス ピ ー ド の 主 効 果 も 有 意 で あ っ た (F(I,147)= 15.
﹄ム
司
RU
q
J
く
001,p
a
r
t
i
a
1η2= .027) 。 認 知 語 の そ れ ぞ れ の レ ベ ル に お け る テ キ ス ト タ
イプの単純主効果及び,テキストタイプのそれぞれのレベルにおける認知
語 の 単 純 主 効 果 の 検 定 の 結 果 を 表 7に 示 す 。
表 7 認知語のそれぞれのレベノレにおけるテキストタ イプの単純主効果及び
テキストタイプのそれぞれのレベルにおける認知語の単純主効果 (n 149)
分散比有意確率効果量
平方和
要因
自由度平均平方
語語
能容
機内
IP1p
ププ
イイ
タタ
rtrL
-
一
文文
話明
一
会説
一
語語
スス 一
キ キ 差一
知知孟
アテ謹認認墨
(
F)
(p)
ηp2)
1
1283.1
1 94.233 .000**キ
224
.8
28 .000*
*
* .076
3
810.91 3l
294
119.74
90843.27 893.991 .000*
*
* .487
6
6
0
0
4
.1
7 649.549 000*
*
* 353
.6
2
1
0l
294
キ**: p < .
001
1
1
283.1
1
3810.91
35202.31
90843.27
6
6
0
0
4
.1
7
29874.93
単純主効果の検定において,機
能 語 に お け る テ キ ス トタ イ プ の 単
I70
純 主 効 果 (F(
l
, 294)
1
94.233, P
.000 < .001,p
a
r
t
i
a
lη2 = .224) ,
50
内 容言吾におけるテキストタ イ プの
4
0
単 純 主 効 果 (F(I,294)= 31
.828, p
001,p
a
r
t
i
a
1η2 = .487) , 説 明 文
本中本
1
649.549. p
p<.
0
01
10
。
会話文
における認知語の単純主効果 (
F(I,
294)
-・ー 機能語
2
0
会話文における認知語の単純主効
く
ー唱ー 内容語
**本
30
a
r
t
i
a
l1
) 2= .
076)
.000 < .001,p
果 (F(
I,294) = 893.991. P = .000
60
説明文
.000 < .001, 図 2 テキストタイプ及び認知語の単純主効果
(縦軸は単語認知率(%))
partia1η.353) は 全 て 有 意 で あ
った(図 2
)
これらの結果より , リスニングスピードの 遅 さ は 単 語 認知に プラスの効
果 を 及 ぼ す こ と , 会 話 文 の 単 語 認 知 は 認 知 語 に 関 係 な く 説 明 文 よ り も難 し
いこと,機能語の認知は内容語の認知に比べて難しいこと,そして,テキ
ストタイプ×認知語に交互作用 が見られたことより,機能語と内容語の認
知率の差は会話文においての方が説明文の場合よりもより大きいこと ,が
示された。
154
6
.考 察
ま ず , 研 究 上 の 聞 い lに 関 し て , 認 知 語 に 関 係 な く 会 話 文 の 単 語 認 知 は
説明文に比べて難しいといえる 。 このことは先行研究をふまえ た調査前の
予 想 に も 一 致 す る 。今 回 の 教 材 に お け る 会 話 文 は , Tauroza&Allison(1990)
に お け る 平 均 的 英 国 人 英 語 母 語 話 者 の 会 話 文 の 発 話 速 度 263.30s.p.mに 比
べ る と か な り 遅 い 218.09s.p.mであり ,リ ス ニ ン グ ス ピ ー ド の 観 点 か ら 言 う
48
s.
p.m と そ れ ほ ど 変 わ ら な い レ ベ ル で あ っ た が ,そ れ で
と , 説 明 文 の 201.
も会 話 文 の 単 語 認 、 知 は 説 明 文 に 比 べ て 有 意 に 困 難 で あ っ た 。 す な わ ら 英 語
のリスニングにおいて単語認知を難しくしているのは , リスニングスピー
ド以外にも,テキストタイプ,そしてそれに伴う強勢拍リズム 言 語特有の
英 語 の リズ ム で あ り , 弱 音 節 の 認 知 と 頻 繁 に 生 じ る 音 の 脱 落 や 同 化 な ど の
1993)
音 変 化 へ の 対 応 で あ る と 考 え ら れ る の。 そ の 意 味 で は , Vanderplank (
の主張するとおり,
リス ニ ン グ に お け る 単 語 認 知 の 難 易 度 は w.p.m.あ る い
p
.
m
.と い っ た 尺 度 で 測 る こ と は 無 意 味 で あ り , 英 語 の 強 弱 リズ ム を 考
は s.
慮、に入れるべきであるという主張が裏付けられたことになる 。ま た , 会 話
文においては話し手が聞き手に単語認知が難しくなるレベルにまで音を変
化 さ せ る 傾 向 が あ る (Osada,2004) こ と も 関 係 し て い る と 思 わ れ る 。
次 に 研 究 上 の 問 い 2に つ い て , テ キ ス ト タ イ プ に 関 係 な く 機 能 語 の 認 知
は 内容 語 の 認 知 に 比 べ て 困 難 で あ っ た 。 こ れ に は , 機 能 語 は 弱 音 節 で 発 音
されることが多く,音変化 によって一層認知が難しくなることが原因であ
ると恩われる 。 しかし,テキストタイプとの聞に交互作用があり,機能語
と内 容 語 の 認 知 率 の 差 は 説 明 文 に お い て の 方 が 会 話 文 の 場 合 よ り も 縮 ま る
という結果であった 。 す な わ ち ,会 話 文 の 場 合 , 説 明 文 よ り も 単語 認 知 の
難易度は増すが,機能語の聴き取りは内容語との比較においても会話文に
お い て 難 易 度 が 一 層 増 す。 そして ,会 話 文 に お い て は , 弱 音 節 で 発 音 さ れ
ることの多い機能語の認 知は , さらに難しい。 これには,説明文における
弱 音 節 の 発 音 が Jones (2008) の 言 う よ う に 過 剰 に 発 音 さ れ , や や 強 勢 が 置
か れ す ぎ て い る た め ,英 語 本 来 の リ ズ ム が 会 話 文 ほ ど 自 然 で は な い こ と が
関係しているのかもしれない。そして,弱音節で発音 されることの多い機
能 語 の 聴 き 取 り は ,説 明 文 に お い て は , 内 容 語 よ り 難 し い と は い え , 日 本
人英語学習者には比較的認知しやすいという結果になった。一方,強弱の
リズ ム が 際 立 つ 白 然 な リ ズ ム の 会 話 文 に お い て は , 弱 音 節 で 発 音 さ れ る こ
と の 多 い 機 能 語 の 認 知 は 一 層難しく , 内 容 語 と の 難 易 度の差は広がった。
以上が,説明文において会話文よりも内容語と機能語の認知率の差が縮ま
っ た こ と の 解 釈 で あ る 。 ま た , リズ ム が 自 然 で あ る た め , 音 変 化 も 会 話 文
にu
RU
1ム
に お い て の 方 が よ り 頻 繁 で あ っ た こ と も 関 係 し て い る の か も し れ な い 的。
研 究 上 の 聞 い 3に 関 し て , リ ス ニ ン グ ス ピ ー ド が 遅 く な る と 単 語 認 知 は
容易になるという結果であった。G
r
i
f
f
i
t
h
s (1992) で は , 150s.p.m近 辺 の リ
スニングスピー ドはリスニング理解を助けるという結果であっ たが,それ
が ど の 下 位 技 能 に プ ラ ス の 効 果 が あ る の か に 関 し て , リアルタ イ ム 処 理 時
聞が伸びたことに効果があるのか,あるいは ,その他の下位技能に影響を
及 ぼ し た の か に つ い て は , 本 研 究 で は 明 ら か に で き て い な い が , 150s.p.m
程 度 の 標 準 よ り 遅 い リス ニ ン グ ス ピ ー ド が 少 な く と も 単 語 認 知 に は 影 響 を
及 ぼ 寸 こ と が 明 らか に な っ た 。
一 方で,
リス ニ ン グ ス ピ ー ドと テ キ ス ト タ イ プ , リ ス ニ ン グ ス ピ ー ドと
認 知 語 の 間 に 交 互 作用はなく,
リス ニ ン グ ス ピ ー ド の 影 響 で 機 能 語 文 は 内
容 語 の 認 知 が 他 方より 上 昇 す る と か , 会 話 文 文 は 説 明 文 の 単 語 認 知 が ど ち
ら か に 比 べ て よ り 一 層 上 昇 す る と い っ た こ と は な か っ た 。 すなわち,
リス
ニングスピードが遅くなっても会話文は説明文よりも単語認知が困難であ
りその 差 が 縮 ま る こ と は な い
O
これ は 機 能 語 と 内 容 語 の 単 語 認 知 の 難 易 度
の 差 に つ い て も 同 じ こ と が 言 える 。 そして,
リス ニ ン グ ス ピ ー ド を 遅 く し
て も , 会 話 文 の 機 能 語 は 最 も 認 知 が 難 し い と い う こ と を 意 味 する
O
上述の
研 究 上 の 問 い lに 対 す る 考 察 に お い て も 述 べ た 通 り , 会 話 文 に お け る 機 能
語 の 認 知 に は リス ニ ン グ ス ピ ー ド 以 外 の 要 素 , 英 語 の 強 弱 の リ ズ ム へ の 対
応と,それに伴う弱音節 の認知と音変化 への対応が大きく関わっていると
考えられる
6)
。
最 後 に , 研 究 上 の 問 い 4 について, Vanderplank(
1993) の 主 張 の 通 り
分 間 あたりの強音節数が少なく ,強音節に対する単語数の比が高い会話文
の 方 が 1分 間 あ た り の 強 音 節 数 が 多 く , 強 音 節 に 対 す る 単 語 数 の 比 が 低 い
説 明文 よ り も 単 語 認 知 が 難 し く ,音 節 拍 リ ズ ム の 母 語 話 者 で あ る 日 本 人 英
語 学 習 者 に は 聴 き 取 り に く か っ た 。 これ に は , 強 勢 拍リ ズム 言 語 で あ る 英
語の特性が深く関わっていると思われる 。少なくとも今回の結果からは
Vanderplank(1993) の 主 張 は 裏 付 け られ た こ と に な る 。 し か し 回 の 調 査
の 結 果 で あ る と と も に , 今 回 の 調 査 は 全 く 異 な る テ キ ス ト タ イ プ の リス ニ
ン グ 教 材 の 聞 で の 比 較 で あ る た め , 今 回 の 結 果 だ け で 1分 間 あ た り の 強 音
節 数 (pacing) 及 び 強 音 節 に 対 す る 単 語 数 の 比 (spaci
ng) と単 語 認 知 の 難
易度について議論することはできない。 これに関しては,同テキストを違
う 母 語 話 者 が 録 音 した教材 で 再 調 査 を す る 必 要 が あ る と 思 われる 。
156
7
.まとめ
今 回 の 調 査 で は 以 下 の 4点 が 明 ら か に な っ た 。
1. 会 話 文 に お け る 単 語 認 知 は 説 明 文 に 比 べ て 難 し い 。
2
リ ス ニ ン グ ス ピ ー ド に 関 係 な く 機 能 語 の 認 知 は 内容 語 に 比 べ て 難 し
い 。ま た テ キ ス ト タ イ プ と の 関 係 で は 会 話 文 に お い て の 方 が 機 能 語 と 内
容語の認知率の差は広がる。
3. 150s.p.m近 辺 の 標 準 よ り 遅 い リ ス ニ ン グ ス ピ ー ド は , 単 語 認 知 に プ
ラ ス の 効 果 を 及 ぼ す 。 し か し , リ ス ニ ン グ ス ピ ー ド の 差 が ,単 語認、知に
おける会話文と説明文の差及び機能語と内容語の差に影響を与えるこ
とはない 。
4. 強 勢 拍 リ ズ ム 言 語 で あ る 英 語 の リ ス ニ ン グ に お け る 単 語 認 知 は ,
Vanderplank(1993) の 主 張 す る よ う に
1分 間 に 発 音 さ れ る 強 音 節 の 数
が 少 な く , 強 音 節 と 単 語 数 の 比 が 高 い ほ ど ,日本人英語学習者にとって
難易度が高い。
今回の調査では,会話文の機能語の聴き取りはリスニングスピードが遅
くなっても音節拍リズム 言語母語話者である日本人英語学習者には難しい
ことが明らかになった 。 また,これには英語の強弱のリズムが深く関係し
ており , 強 音 節 に 挟 ま れ る 弱 音 節 の 割 合 が 高 く な る ほ ど 難 易 度 が 増 す と 思
われる 。 英 語 は 強 音 節 の 数 で 発 話 の 長 さ が 決 ま る 典 型 的 な 強 勢 拍 リ ズ ム 言
語であり,弱音節の数がどれだけ増えても発話の長さが伸びるわけではな
く , そ れ だ け 弱 音 節 の 部 分 が 弱 く , 速 く , 省 略 さ れ て 読 ま れ る (Ur,1984)。
この傾向は即興で話される 会話調の発話の場合により顕著に現われる。そ
れに対して,教材化されたリスニングテキス卜,特に説明文教材には,弱
音 節 を 過 剰 に 発 音 す る 傾 向 が 見 ら れ (Jones,2008), 音 節 拍 リ ズ ム 言 語 話 者
に聴き取りやすい発音となっている 。
このことから得られる教育的示唆として次のようなことを挙げて本研究
を 締 め く く り た い 。 まず,
リスニングを行う際には,教材の種類,テキス
トタイプを十分に吟味する必要がある。そして学習者には ,英語の強勢拍
リズムの特性を十分に理解させ,弱 音節を聴き取るストラテジーを与える
必要がある。その 際,ボトムアッ プからの情報のみに頼るのではなく ,予
測 を 含 め た トッ プ ダ ウ ン か ら の 情 報 を 加 え て , 聴 き 取 る こ と の で き な か っ
た音 節 を 補 う 必 要 が あ る
o
加えて, 音 読 や シ ャ ド ウ イ ン グ の 際 に , 強 勢 拍
リ ズ ム の 英 語 を 等 間 隔 に 弱 音 節 を 強 音 節 に 構 成 し 直 し て 読 む (Eastman,
1993) の で は な く , 英 語 の リ ズ ム に 忠 実 に 弱 音 節 を 弱 く , 速 く , 省 略 し て
読 む 必 要 が あ る 。ま た , ひ と ま と ま り で 読 ま れ る out0
/t
he,shouldhaνebeen
ワd
RU
1ム
などの機能語の塊を,音変化 を経た形で音読する必要がある 。
リ ス ニ ン グ に お け る 単 語 認 知 に つ い て は , テキストタ イ プ,認 知 語 , リ
ス ニ ン グ ス ピ ー ド 以 外 に も 様 々 な 変 数 が 関 与する。今後,
1分 間 あ た り の
強音節数及び強音節に対する単語数の 比 と単語認知の難易度の関係を始
め , 強 勢 拍 リ ズ ム 言 語 特 有 の 強 弱 の リ ズ ム と 音 節 拍 リズム 言 語 の 母 語 話 者
の リス ニ ン グ に お け る 単 語 認 知 の 難 易 度 の 関 係 な ど に つ い て よ り 一 層 の 研
究が行われることが望まれる 。
注
1
) 自然な発話速度としては,
165-180w.p.m.(Foulke, 1968), 160-190w.p.
m.
(Tauroza& A
l
l
i
s
o
n,1990) な ど の 先 行 研 究 が あ る 。
2
) 会 話 文 と説 明 文 の 単 語数はそれぞれ, 342語
, 382語であった。
3
)調査参加者のグループ分けは授業クラス単位で行ったため
2グループの
人 数は同じではない。
4
)採点対象となった機能語の中で強音節 として発音されているものは,説明
文 7番 の noneの み で あ っ た 。
5
) デ ー タ 解 析 に は , オ ン ラ イ ン ソ フ トの ANOVA4を用 いた 。
6
) 会 話 文 6番 及 び 8番 に お け る 機 能 語 t
he
m,t
o,up,a
tの 正 答 率 が 特 に 低 か っ
houldl
e
a
r
nt
os
t
o
pa
s
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ocome.'と い う 文 脈 の
た o 6番 に お い て は ‘ 1s
中で‘ come'
の直後にポーズが入り, 8番 で は ‘
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now.
'という文脈の中で‘ now'
の直後にポーズが入った。いずれの場合も弱音
節が連続する ‘
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の部分は ,それぞれ強音節を含む内容語
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g'と
‘ come'
及び‘ p
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c
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l'
の 問 に挟 ま れ て , 非 常 に 速 く 弱 く
である‘ a
音 が つ な が っ て 読 ま れ る た め ,対 応 が 難 し か っ た た め と 恩 わ れ る 。
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