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消費者製品に含有される化学物質のリスクに関する リスク

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消費者製品に含有される化学物質のリスクに関する リスク
平成24年度
環境対応技術開発等に関する委託事業
消費者製品に含有される化学物質のリスクに関する
リスクコミュニケーション事業に関する委託事業
実施報告書
平成 25 年 3 月
公益社団法人
日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会
【目次】
Ⅰ 本事業の目的 .................................................................................................................. 1
Ⅱ 事業内容及び実施方法 .................................................................................................... 1
Ⅲ 実施体制及び事業スケジュール ...................................................................................... 2
Ⅳ 事前検討会...................................................................................................................... 3
Ⅴ リスクコミュニケーション・ワークショップ ................................................................. 5
Ⅵ まとめ........................................................................................................................... 14
添付資料
(1)資料1 広報関連
1-1 ワークショップ開催チラシ
1-2 ワークショップ開催告知 web 画像
1-3 NACS 東日本支部広報誌
(2)資料2 事前検討会講演資料 平川秀幸氏
(3)資料3 ワークショップ当日配布資料
3-1 当日プログラム
3-2 情報提供1 鈴木哲氏
3-3 情報提供2 大矢勝氏
3-4 ワークシート「石けん・洗剤 気になることビンゴ」
3-5 ふりかえりシート
3-6 ワークショップ進行表
(4)資料4 ワークショップ結果
4-1 ワーク1のまとめ
4-2 ワーク2のまとめ
4-3 ワーク3のまとめ
4-4 ふりかえりシートのまとめ
Ⅰ 本事業の目的
化学物質は様々な消費者製品に含有され、消費者の快適な生活を支えている一方、使い
方を誤れば、消費者の健康や環境に影響を与えるリスクを伴う化学物質も含有されている。
消費者が安心して消費者製品を使用するためには、そこに含有されている化学物質のリス
クに関する正しい理解を深めることが必要である。そのためには、事業者からの一方的な
情報提供だけではなく、消費者、事業者、専門家等のステークホルダーがリスクに関する
正確な情報を共有し、意思疎通を図るリスクコミュニケーションが必要である。
そこで、本事業では、消費者、事業者、専門家間で、化学物質を含む消費者製品のリス
クに関する情報を共有し、意思疎通を図ることのできる意見交換の場を設定し、ステーク
ホルダー間で消費者製品のリスクに関する情報の共有と理解を深めると同時に、今後の政
策展開のために、参考情報の収集を行う。
Ⅱ 事業内容及び実施方法
1.リスクコミュニケーションの内容
特定の消費者製品や消費者製品カテゴリーに関するリスクをテーマとするリスクコミ
ュニケーションの場を設定した。テーマ、パネリスト、当日の進行方法等については、
経済産業省担当官と調整の上、今回はテーマを石鹸洗剤等とし、パネリストは専門家、
業界団体会員とした。
2.実施方法
参加者の意見をなるべく引き出すために、小グループでのディスカッションを中心と
したワークショップ形式とした。本形式は、小グループで話し合うことで、日頃消費者
が化学物質に抱いている疑問や、業界団体会員等とのコミュニケーションにおける率直
な意見を洗い出すことを目指したものである。また、効果的なワークショップを準備す
るために、事前に専門家を招きリスクコミュニケーション・ワークショップ事前検討会
を行った。
本事業において、公益社団法人消費生活アドバイザー・コンサルタント協会(以下、
NACS)はファシリテーターを務め、リスクコミュニケーションの参加者は、NACS 会員と
した。リスクコミュニケーションにおいて情報提供者となるパネリストとして、研究機
関等の専門家及び業界団体会員に依頼した。参加者の理解を把握するために、ふりかえ
りシートを使ったアンケートを実施し、集計結果をまとめた。
1
Ⅲ 実施体制及び事業スケジュール
1.実施体制
【事務局】
公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会(NACS)環境委員会
主任研究員:大石 美奈子
研究員
:辰巳 菊子、村上 千里、青柳 恵美子
【事前検討会講師】
リスクコミュニケーション専門家:
大阪大学コミュニケーションデザイン・センター准教授 平川 秀幸氏
【リスクコミュニケーション・ワークショップパネリスト】
化学物質専門家:横浜国立大学大学院教授 大矢 勝氏
事業者代表:日本石鹸洗剤工業会 広報委員会 鈴木 哲氏
2.事業スケジュール
平成 24 年 12 月 19 日:リスクコミュニケーション・ワークショップ開催告知及び
受付開始(チラシ配布、ウェブサイト上での告知)
平成 24 年 12 月 26 日:事前検討会開催
平成 24 年 12 月~平成 25 年1月:リスクコミュニケーション・ワークショップの進行に
ついて検討
平成 25 年 2 月 2 日:リスクコミュニケーション・ワークショップ開催
平成 25 年 2 月~3 月:報告書作成
2
Ⅳ 事前検討会
1.実施概要
日時:平成 24 年 12 月 26 日(水)17:00~20:30
会場:東京ウィメンズプラザ 第 2 会議室 B
講師:大阪大学コミュニケーションデザイン・センター准教授 平川 秀幸氏
出席者:横浜国立大学大学院教授 大矢 勝氏
日本石鹸洗剤工業会 鈴木 哲氏
日本石鹸洗剤工業会 原田 房枝氏
経済産業省 製造産業局 化学物質管理課 課長補佐 西森 雅樹氏
経済産業省 製造産業局 化学物質管理課
化学物質リスク評価室
課長補佐 柳原 聡子氏
経済産業省 製造産業局 化学物質管理課 化学物質リスク評価室
リスク評価係長 上羽 賢憲氏
経済産業省 製造産業局 化学物質管理課 特別専門職 何本 仁氏
NACS 環境委員会 大石 美奈子
辰巳 菊子
青柳 恵美子
村上 千里
青木 裕佳子
錫木 圭一郎
スケジュール:
17:00 講師紹介
17:10 平川先生による講義「リスクコミュニケーションの考え方」
18:30 質疑応答
20:00 2 月 2 日開催のリスクコミュニケーション・ワークショップの進め方につい
て
パネリスト及び経済産業省担当官と検討
20:30 終了
2.検討内容
1)講師プロフィール
大阪大学コミュニケーションデザイン・センター准教授
専攻は科学技術社会論
経済産業省の化学物質管理、遺伝子組み換え作物の国内法策定時の委員も歴任
著書:
『リスクコミュニケーション論』
3
(平川秀幸, 土田昭司, 土屋智子:著, 「環境リスク管理のための人材養成」
プログラム:編、2011 年 3 月 10 日、大阪大学出版会)
※3 名の共著で、大阪大学「環境リスク管理のための人材養成プログラム」
の講義をまとめたもの。
2)平川先生による講義「リスクコミュニケーションの考え方」
内容:資料2 事前検討会講演資料 参照
3)講義を踏まえたワークショップへの反映内容
ワークショップの参加者が、リスクコミュニケーションをどの程度理解して参加し
ているかが事前には不明のため、オリエンテーションで「リスク」と「リスクコミ
ュニケーション」についての基本的な情報提供を行うこととした。
<具体的な追加説明内容>
「リスク=危険=被害の重大性×被害の生起確率」
「リスクコミュニケーションの 3 つの段階
第 1 段階 データの開示(技術的情報をそのまま開示)
第 2 段階 情報の提供(教育、宣伝、説得)
第 3 段階 共通認識に基づく意見交換
(インフォメーションではなく、コミュニケーション)
」
今回のワークショップは第 3 段階であることを示すこととした。
4)ワークショップの進め方についてパネリスト及び経済産業省担当官と検討
講義を受講したうえで、パネリスト及び事務局共にリスクコミュニケーションのあ
り方を再確認した。事務局が事前に用意した進行案について説明し、パネリスト及び
経済産業省担当官と話し合い、概ねの合意をみた。
4
Ⅴ リスクコミュニケーション・ワークショップ
1.開催概要
日時:平成 25 年 2 月 2 日
13:30~17:00
会場:こどもの城 906 研修室
パネリスト:日本石鹸工業会 広報委員会 鈴木 哲氏
横浜国立大学大学院教授
大矢 勝氏
参加者:NACS 会員 30 名(当日欠席 2 名、事務局 4 名含む)
オブザーバー:経済産業省化学物質管理課4名、NITE1名、事業者1名
スケジュール:資料3-1当日プログラム 参照
13:30~【オリエンテーション】開会挨拶と進行説明
13:35~【アイスブレイク】自己紹介 with 私がお世話になっている洗剤
13:50~【work1】石けん洗剤 気になることビンゴゲーム
14:10~【情報提供1】事業者が考えるリスクと対応策について
日本石鹸洗剤工業会 広報委員会 鈴木 哲氏
14:20~【work2】
グループディスカッションⅠ
15:10~【休憩】
15:25~【情報提供 2】よりよいコミュニケーションのために
横浜国立大学大学院教授
大矢 勝氏
15:45~【work3】グループディスカッションⅡ
16:15~【work4】全体ディスカッション
よりよいコミュニケーションに向けて
16:30~【クロージング】ふり返りシートの記入と共有
16:50
【終了】
2.実施内容
【オリエンテーション】開会挨拶
1)経済産業省 製造産業局 化学物質管理課
課長補佐 西森 雅樹氏
2)
(公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 副会長 高橋
5
徹
【アイスブレイク】自己紹介 with 私がお世話になっている洗剤
1)自己紹介および本日の対象製品の確認
目的:参加者同士が知り合い、自由な意見が出せるような雰囲気を作る。
対象となる石けん・洗剤には「からだ用」が入らないことの確認。
進め方:①参加者 1 人ずつ、名前、所属、いつも使っている身近な石けん・洗剤名をあ
げ、自己紹介。情報提供者、オブザーバー、スタッフも同様に行った。その
際、できるだけ他の人と異なる石けん・洗剤を挙げてもらった。
②ホワイトボードに書き出した洗剤を、
「からだ用」
「台所用」
「洗濯用」
「掃除
用」「その他」のカテゴリーにグループ分けし、今回は「からだ用」以外を
扱うことを伝え確認した。
結果:台所用;やしの実石けん、食洗器の洗剤、キュキュット、ミヨシ無添加石けん、
泡のちから
清掃用;マジックリン(風呂、トイレ用)
洗濯用;ナノックス、ニュービーズ、液体トップ、ボールド、部屋干し用トップ、
アクロン、ホタテ貝パウダー、アタック、アタック・ネオ、
アタック粉末、竹炭石けん
からだ・顔用;オリーブオイル石けん、シリアのアレッポ、
ロクシタン固形せっけん、牛乳石けん固形 NOVU、
手作り石けん、プロポリス石けん
2)「リスクコミュニケーション」についてのアンケート(挙手)
目的:よりスムーズに意見交換を進めるため、参加者のリスコミに関する認知度や経
験を把握する。
内容:リスクコミュニケーション参加の有無を挙手により答えてもらい、参加したこ
とがある場合は参加した内容を尋ねた。
結果:①今回はじめて聞いた 2 名
②聞いたことはあったが参加は初めて 10 名
③これまでも何度か参加したことがある 12 名
参加分野・消費者用製品(家電等の安全性)
・ペンキ塗料 化学工場周辺住民
6
・ひやりはっと 日常生活のなかの(NACS 主催)・農林水産省
・原子力 放射能汚染 ・食品の放射性物質 ・食品の安全性
・NACS 消費者教育委員会テキスト「製品の安全」使用
3)ファシリテーターが「キーワードシート」を用い、
「リスクコミュニケーション」の
言葉の意味、ならびに、リスクコミュニケーションには三段階があり、本日は第三
段階目の共通認識にも基づく意見交換であることを共有した。
【work1】石けん・洗剤気になることビンゴ
目的:参加者が石けん・洗剤について、気になっていることを挙げてもらう。
他の人の意見を聞くことで化学物質に対する問題意識や関心を高める。
内容:①石けん・洗剤に含まれる化学物質について気になることを各自のビンゴカード
に書きだした。
②気になることを一人 1 件ずつ発表し、内容が発表者と同じ場合は自分のカード
を消し、全部消えるとゲームは終了とした。
③最後まで残った人に全員から拍手を送った。
④出された意見は、物への影響、人への影響、環境への影響、その他で分類し、
模造紙に書き出し全員で共有した。
参考:資料4-1 ワーク1のまとめ
【情報提供1】事業者の考えるリスクと対応策について
日本石鹸洗剤工業会
広報委員会 鈴木 哲氏
7
内容:参考 資料3-2
情報提供1
・work1で出た疑問に対し、提供された情報
Q
誤飲への配慮。
A
誤使用した場合でも、一過性の副作用でとどまり、慢性化することがないよう
配慮している。メーカーとして、どこまで予見しておくべきか、判断し、安全
性を確保している。
Q
河川への影響。
A
環境への影響の一事例として捉えている。東京都と大阪府の代表的な河川水に
おいて、継続的な界面活性剤のモニタリングを行ない、改善されていることを
確認している。その結果は、日本石鹸洗剤工業会のホームページで公開してい
る。
Q
安全への取組。
A1 安全への取組は、
「法規制」「自主基準」「情報提供」により行う。法規制は後
追いになる懸念があるため、自主基準によりタイムリーに取り組む。情報提供
は「製品表示」が中心になるが、メーカーのお客様センター、ウェブなども活
用している。
A2
化粧品の全成分表示に準ずるような、洗剤等の成分情報開示も自主基準とし
て取り組んでいる。
A3
法令は、用途により異なる。食器用洗剤など食品に接触して口に入る可能性
のあるものは食品衛生法の対象である。
A4 家庭用品規制法では 20 物質が該当するが、家庭用洗剤・家庭用洗浄剤で現在
使用されている規制物質は塩化水素、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ムの 4 物質。
A5
塩化水素、硫酸はトイレ用洗浄剤が該当。水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ムはアルカリ性の洗浄剤で、塩素系の洗浄剤・漂白剤もこちらに該当。自主基
準では、リスクのより高い噴霧用途のカビとり剤などは1%以下と厳しくして
いる。
A6
製品表示では、予見される使い方から「使用上の注意」を明記し、起きた場
合の「応急処置」を記載している。内容物の強さ、影響の大きさによって、文
言のきつさが規定されるので、表示の表現は重要である。
A7
漂白成分として次亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウムを記載、これは酸
性物質と混ぜると塩素ガスを発生するリスクがあるため、商品の正面に「混ぜ
るな危険」と明記。裏面にも、×印をつけたマークを表示している(目に入れ
ない、子どもに使わせない、換気をする、など)
。家庭用品品質表示法に基づい
8
ている。最近は GHS 表示が世界的に進んでおり、先行するかたちで GHS を適
用したマークを表示。GHS マークは、手やものが腐食することを表現したマー
クになっている。酸性洗浄剤にも、同様の表示を行っている。
【work2】グループディスカッションⅠ「わかったこと・わからなかったこと」
目的:情報提供を受けて、グループで内容を確認し整理する。疑問に思ったことを出し合
うことで事業者とのコミュニケーションをすすめるポイントを探る。
内容:①グループごとにわかったこと、わからなかったこと、新たに知りたいと思ったこ
とを議論し、出た意見を模造紙に書き出した。
②班ごとに発表し全体で共有した。
参考:資料4-2 ワーク 2 のまとめ
③事業者からの補足説明。
Q
誤飲した際に、吐かせてはいけないのはなぜか?
A
応急処置で吐かせない理由は、肺に入ることでより危険性が高まるためである。
牛乳や水を飲ませるか、医者で洗浄してもらうことが重要である。
Q
原料調達時において考慮していることは?
A
原料調達については、天然系、石油系ではなく、製品が人、環境に問題があるか
どうかで選ぶべきと考えている。ただ、石油系は枯渇が懸念されているので天然
系に切り替える方向にある。その場合でも、生物多様性への影響など、サステナ
ビリティに配慮している。
Q
皮膚への影響は?
A
安全性については、衣類に残ったものが大丈夫かという点では、洗い流すものは
すすいでいただければ問題ない。すすぎ1回の洗剤については、衣類に残る量が
すすぎ2回と同等の残留量を確認している。界面活性剤の量に起因するのではな
く、性質として衣類に残りにくいものを選択していることによる。量と比例しな
いところが技術革新といえる。
9
Q
塩素系をアルカリ性と表示しない理由は?
A
「混ぜるな危険」は塩素ガスが発生することが最大のリスクと考えている。次亜
塩素酸と強い酸がまざると塩素ガスが発生する。アルカリだから混ぜてはいけな
いのではないので、塩素系と表示している。アルカリ性は付随的な情報であり、
酸性とアルカリ性を単純にまぜれば中和するだけ。中和熱が問題になることはあ
るが、塩素のほうがより大きなリスクである。
Q
モニタリング結果と下水処理の関連は?
A
モニタリング結果と下水処理能力の関係では、下水処理能力の向上は確かに関係
している。その上で、下水処理場で処理されやすい界面活性剤を使い、冬場の微
生物の活性度が低い場合でも分解されるようにしている。
Q
本当の使用量の目安が知りたい。コマーシャルとのギャップがあるのはなぜか?
A
洗濯実態調査は、家庭で実際に洗濯洗剤の使用量を守って使っているか、などを
定量的に調査し、発表している。平均的には標準量が使われている。多すぎると
環境負荷が大きく、少なすぎると汚れ落ちが悪くなる。食器洗い用洗剤で原液を
使う CM については、油汚れなどをきっちりふき取ってから洗っていただくべき
だが、マーケティング上の表現とはギャップがあることは認める。
Q
最新の事故事例(水素爆発等)についてその後のコミュニケーションは?
A1事故例については、昨年の地下鉄内での爆発事故は、業務用の強アルカリ洗浄剤
をアルミ製ボトルに移し替え、持ち帰る際に、洗浄剤のアルカリ成分がアルミニ
ウムと反応して発生したガスの圧力で破裂したもの。家庭用のもので小分けが想
定される形状の製品では起こらない。ただし、法律上は販売することはできるの
で、販売された際には注意喚起できるよう、自主基準で「他の容器に詰め替えな
い旨の表記対象品」を容器形状に係りなく拡大する改正を今年予定している。
A2成分としては、強アルカリ、強酸が該当するが、家庭用の市販品で小分けが想定
されるものについては、配合量が少なかったり、他の成分の影響があったりして、
爆発までは至らない。
Q
家庭用製品でも、アルミと触れる時間が長ければ起きうると聞いている。アルミ
容器に入れないように、と周知して欲しい。
A
想定されるものについては、他の容器に移し替えない旨の表記が入っており、現
状で家庭用製品には懸念される製品はない。自分たちの団体は 23 社で構成されて
おり、石鹸洗剤工業組合には約 60 社、日本洗浄剤工業会も別にある。各団体も加
10
盟する協議会を設けており、そこで調査したが、家庭用途の製品で懸念されるも
のはなかった。加盟していないアウトローは把握できない場合もある。
【情報提供2】よりよいコミュニケーションのために
横浜国立大学大学院教授 大矢 勝氏
説明内容:
・講演資料(資料3−3)参照
・work1・2で出た疑問に対し、提供された情報
○新規物質の安全性はどのようにクリアしているのか?
・ 新規化学物質の問題に関しては、新規物質そのものが少なくなっている。また、環境・
安全面でのハードルが高くなっていて、排除される方向にある。酸・アルカリ、酸化剤
については、酸は金属汚れ、アルカリ・酸化剤は有機汚れ用。危険性については、薄ま
れば影響は少ないが、高濃度時は人体への危険も高い。幼児や認知症老人は誤飲に注意。
化学物質過敏症については、接触する化学物質の量、種類をできるだけ少なくする、建
材のホルムアルデヒドを減らす、といった全体的な取組が必要。
【work3】グループディスカッションⅡ「よりよいコミュニケーションのために」
目的:今までの事業者とのやり取りと専門家の情報提供を受け、誰からどんな情報が欲し
いかをグループ内で話し合い整理することで、よりよいコミュニケーションにつなげ
る。
内容:①よりよいコミュニケーションのために、事業者、行政、その他に望むことについ
て班ごと議論、出された意見を模造紙に書き出した。
②班ごとに発表して全体で共有した。
11
参考:資料4-3 ワーク3のまとめ
【work4】全体ディスカッション「よりよいコミュニケーションのために」
目的:work1,2,3の中で出された課題について、情報提供者の鈴木氏、大矢氏、また、
経済産業省の方などオブザーバーも交え、全体で意見交換をすることで、より良い
コミュニケーションを行う。
内容:work2,3に時間が取られたため、オブザーバーとして参加の経済産業省の方と
NITE の方、また事業者の方からの感想を聞くだけで意見交換はできなかった。
行政、事業者の方などからの感想:
<専門家から>
・これからは、「正直に伝える業者」が得をするような消費者教育が必要だと思った。
<経済産業省から>
・リスコミには、経済産業省、厚生労働省、消費者庁などが関わってくると思う。化学
物質管理課は、企業とのやり取りが中心で、消費者との直接的コミュニケーションは
ほとんどなされてこなかった。今回は、橋渡し役、事故情報の提供などのリクエスト
があったが、消費者の要望に出来るだけ応えていければと考えている。引き続き、消
費者とのコミュニケーションに取り組んでいきたい。
・事故情報については、消費者庁、国民生活センターにデータベースがあり、発信され
ているのではないか。
・NITE の洗剤に関する資料も本日配布予定。
・表示を分かりやすく、といった表示のあり方については規制がいろいろあって全く新
規には難しいが、不安、情報ニーズなどをもとに考えたい。表示がないと不安である
という意見は理解するが、情報量が多すぎると大切な情報が埋もれる懸念もある。
・表示そのものを消費者といっしょに検討してはどうかというご意見をいただいたが、
検討会のなかに委員として消費者代表に参加いただいている。
<NITE から>
・ 本日配布の「身の回りの製品に含まれる化学物質シリーズ 洗剤(家庭用)
」では、物
質名などは後半に記載し、前半はコラムを挿入するなど消費者の疑問にわかりやすく
答えるようにしている。すべてを読む必要はないので、まずは必要な情報から見てい
ただければよい。
<日本石鹸洗剤工業会から>
・ 表示の分かりやすさは、埋もれてしまわないようにすることが重要。製品に表示すべき
情報と、それ以外で発信する情報に分けていく必要がある。ウェブサイトの活用が進ん
12
でいるので、メーカーや工業会のウェブサイトも充実している。是非そちらを参照いた
だきたい。
・ 今後は、消費者視線も入れた情報発信をさらに心がけたい。コミュニケーションの重要
性を実感しており、これからもこのような機会にはできるだけ協力させていただきたい
と思いますので、声掛けをしてほしい。
【クロージング】ふりかえりシートの記入と共有
目的:参加者各自が本日のワークショップへ参加した時間をふりかえり、今後の行動に
つなげる。
内容:①各自でふりかえりシートへ記入。
②各班から2名ずつ発表してもらい全体で共有した。
3.アンケート(ふりかえりシート)の概要と分析
参照:資料4−4 ふりかえりシートのまとめ
・ワークショップに参加したきっかけは多い順に、テーマに関心があった(約 1/3)リスク
コミュニケーションそのものに関心があった(約 1/5)であった。
・石けん洗剤の化学物質について、参加前に疑問に思っていたことは、
「人や環境への影響」
「界面活性剤」
「表示」
「臭い」
「長期保管」等であった。このうち、「人や環境への影響」
「界面活性剤」
「表示」については、参加してわかったが、「長期保管」については最後
までわからなかったという回答であった。
・ワークショップの中では挙がっていなかったが、最終的に残った疑問として「石けん洗
剤の定義」「界面活性剤以外のリスク」があった。情報提供の中で触れられてはいたが、
参加者の理解を得るには至らなかったものと思われる。
・参加者がこれからしようと思ったこととしては、「表示をよく読む」「疑問点をメーカー
や行政に対して声をあげる」「コミュニケーションをとりたい」「さらに勉強をしたい」
等で、ほとんどの参加者は、
「家族・友人・知人」
「NACS 会員」に参加して得た情報を
伝えたいということであった。
13
Ⅵ まとめ
今回の化学物質リスクコミュニケーション・ワークショップにおいて、参加者からは、
石けん・洗剤の化学物質に関して感じていること、疑問に思っていることなど、多くの意
見が出された。これら意見は、消費生活アドバイザーや消費生活コンサルタントとして、
日々の暮らしの中で問題意識を持って生活していることの表れで、幅広い視点から出たも
のであった。
ワークショップでは、これらの意見に対して、専門家や事業者から情報提供がなされる
も、全ての参加者が十分に満足できるコミュニケーションができたとは言い切れず、原因
としては、時間的な制約が大きかったと思われる。
ワークショップ終了後、廊下で個人的に事業者に質問をして説明を受ける数名の参加者
の姿が見られた。これは、ワークショップ内で十分なコミュニケーションができなかった
ためと考えると、今後、望ましいリスクコミュニケーションのためには、以下の 2 点が重
要と考える。
1)ワークショップの時間を増やす。
今回は午後の 3 時間のプログラムであったが、もう1~2時間延ばし、午前からの
開始とすることで、参加者の疑問に対しても十分専門家などとコミュニケーション
ができると考える。
2)時間を増やせない場合のプログラム内容の変更。
work2の全体共有のあと、解消できなかった疑問を整理し、疑問ごとに、新しく
グループを作りなおし、事業者や専門家もグループに参加して直接コミュニケーシ
ョンを深める。その後、グループごとに話し合った内容を発表し、参加者が共有す
る。
その場合は、work2の前の情報提供は1人とし、専門家には上記のグループごと
の話し合いで情報提供してもらう。グループ内のコミュニケーションであれば、参
加者が質問しやすいだけでなく、事業者や専門家にとっても直接コミュニケーショ
ンできるよい機会となると考える。
ただし、専門家と事業者が各 1 名ずつの場合、全部のグループを回ると時間が足
りなくなる。また、全グループに専門家や事業者が加わるとなると、人員確保、費
用負担などの点で課題が出てくる。
このように、課題はあるにしても、今後も消費者、事業者、行政が様々にリスクコミ
ュニケーションを重ねることで、さらに化学物質に対する理解は深まると考える。消費
者と事業者、行政が、どのような内容をテーマとし、どのような方法でリスクコミュニ
ケーションするのがいいのかは、今後とも試行錯誤することが重要と考える。
14
平成 24 年度 経済産業省 化学物質管理課からの委託事業
石けん・洗剤などに含まれる化学物質をテーマに
リスクコミュニケーションを開催します
NACS 環境委員会
私たちが使う製品にはさまざまな化学物質が含まれ、毎日の快適な生活を支えてい
ます。しかしこれら製品の中には、消費者の健康や環境に影響を与えるリスクのある
化学物質を含むものもあります。私たちが安心してこれら製品を使うためには、そこ
に含まれる化学物質について正しく理解をする必要があります。
そこで、暮らしに身近な洗濯用又は台所用石けんや洗剤などを取り上げ、事業者や
専門家を交えてリスクに関するコミュニケーションをはかるワークショップを開催し、
消費者が日頃感じている不安やもっと知りたい情報は何かを探ります。ぜひ多くの
NACS 会員の方々の参加をお待ちしています。
日時 2013 年2月2日(土) 13:30~17:00 (受付開始 13:15)
場所 こどもの城 9階 906号 http://www.kodomono-shiro.jp/access/index.shtml
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前 5-53-1 03-3797-5677
アクセス 1)JR 渋谷駅から徒歩 10 分(東口/宮益坂側)
2)東京メトロ 表参道駅 B2出口から徒歩 8 分
対
象: NACS 会員(事業の目的に鑑み、石けん・洗剤関連事業者の方はご遠慮下さい)
定
員: 30 人(先着順に受け付け、定員になりましたら締め切ります)
参加費: 無料
申
込: [email protected] にメールでお申込み下さい。参加申込の際、
①お名前 ②ご所属 ③連絡先(e-mail、電話)をお知らせ下さい。
※お申込時の個人情報は、今回の講座においてのみ使用させていただきます。
申込締め切り: 2013年1月28日(月)20:00
お問い合わせ先: NACS環境委員会([email protected])
<当日のプログラム (予定)>
参加者によるワークショップ形式で、洗濯用又は台所用石けん・洗剤に関して不安な
点、もっと知りたい点などについて議論するリスクコミュニケーションを行います。
情報提供者として、日本石鹸洗剤工業会広報委員会の鈴木哲氏と横浜国立大学
大矢勝教授にご参加頂きます。
主催 公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会(NACS) 環境委員会
協力 経済産業省 化学物質管理課
石けん・洗剤などに含まれる化学物質をテーマにリスクコミュニケー
ションを開催します
■ NACS会員限定!
私たちが使う製品にはさまざまな化学物質が含まれ、毎日の快適な生活を支えていま
す。しかしこれら製品の中には、消費者の健康や環境に影響を与えるリスクのある化学
物質を含むものもあります。私たちが安心してこれら製品を使うためには、そこに含まれ
る化学物質について正しく理解をする必要があります。そこで、暮らしに身近な洗濯用又
は台所用石けんや洗剤などを取り上げ、事業者や専門家を交えてリスクに関するコミュ
ニケーションをはかるワークショップを開催し、消費者が日頃感じている不安やもっと知
りたい情報は何かを探ります。ぜひ多くの NACS 会員の方々の参加をお待ちしていま
す。
■ 概要
日 時: 平成25年2月2日(土) 13:30~17:00(受付開始13:15)
場 所:こどもの城 9階 906号
対 象:NACS会員限定
(事業の目的に鑑み、石けん・洗剤関連事業者の方はご遠慮下さい)
定 員:30 人
(先着順に受け付け、定員になりましたら締め切ります)
参加費:無料
申 込:[email protected] 宛、メールでお申込み下さい。
参加申込の際、①お名前 ②ご所属 ③連絡先(e-mail、電話)をお知らせ下さい。
※お申込時の個人情報は、今回の講座においてのみ使用させていただきます。
〆 切:平成25年1月28日(月)20:00
お問合せ:NACS 環境委員会([email protected])
案内チラシはこちら
●主催:公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会(NACS) 環境委員会
●協力:経済産業省 化学物質管理課
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アウトライン
日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会(NACS)
平成24年度環境対応技術開発等
(消費者製品に含有される化学物質のリスクに関するリスクコミュニケーション事業)
リスクコミュニケーション・ワークショップ事前検討会
2012年12月26日 東京ウィメンズプラザ
リスクコミュニケーションの考え方
1. リスクコミュニケーションとは何か
2. 「リスク」の考え方とその注意点
3. リスクコミュニケーションの効果的な進め方
4. ワークショップに参加した消費者が得るもの
は何か
平川秀幸
大阪大学コミュニケーションデザイン・センター
リスクコミュニケーションとは?
個人・集団・組織の間で情報や意見を
交換する相互作用的過程。
関係者間の理解と信頼のレベルの向上をもって
成功の証しと考える。(合意は直接の目的ではない。)
リスクの特質についての多種多様なメッセージと、厳密に
リスクについてでなくても、関連する事柄や意見、リスクメッ
セージに対する反応や、リスク管理のための法的・制度的
対処への反応についての他のメッセージを必然的に含む。
(National Research Council, 1989)
リスクアナリシス全体の中での位置づけ
リスクコミュニケーション
リスク評価
Risk assessment
リスク管理
Risk management
利害関係者・一般市民・研究者etc
リスクコミュニケーションの具体的イメージ
国際リスクガバナンスのモデル (Renn, 2005)
管理の領域
評価の領域
事前評価
行動の決定・実施
知識の生成
問題設定
早期警告
スクリーニング
科学的規約の決定
リスク管理
リスクの吟味・検討
実施
リスク評価
・選択肢の実現
・モニターとコントロール
・フィードバック
コミュニケー
ション
意思決定
・選択肢の特定・考案
・選択肢の評価
・選択肢の査定と決定
・ハザード特定&推量
・曝露&脆弱性評価
・リスク推定
懸念・関心の評価
・リスク認知
・社会的懸念
・社会経済的影響
受忍性・受容性の判断
5
環境省「自治体のための化学物質に関するリスクコミュニケーションマニュアル概要」より
リスクコミュニケーションの目的
リスク査定
リスク判定
・受忍性・受容性の判断
・リスク削減措置の必要性
の検討
・リスクプロファイル
・深刻度の判断
・リスク削減方法の選択肢
6
リスクコミュニケーションのポイント (1)
 さまざまな利害関係者を関与させることのメリット
1. リスクとその対処法に関する教育と啓蒙
– 民主的な意思決定を支援する。
2. リスクに関する訓練と行動変容の喚起
– 公益が確実に考慮される。
– よりよい意思決定のために必要な理解を深める。
3. リスク評価・リスク管理機関に対する信頼の
醸成
– 意思決定の基礎となる知見の改善につながる。
– 意思決定にかかる全時間と全費用の節約を可能にする。
– リスク管理を担当する機関に対する信頼性を高める可能性が
4. リスクに関わる意思決定への利害関係者や
公衆の参加と紛争解決
ある。
– より受け入れやすく、より容易に実行可能なリスク管理の意思
(International Risk Governance Council, “Risk Governance: Towards an integrative approach”, IRGC White Paper No 1, 2005.)
決定に導く。
(リスク評価及びリスク管理に関する米国大統領・議会諮問委員会編. 1998. 佐
7
藤雄也・山崎邦彦訳『環境リスク管理の新たな手法』, 化学工業日報社)
8
リスクコミュニケーションのポイント(2)
 双方向的・相互作用的であること
– 行政や専門家の判断を一方的に伝えることは「リスクメッセージ」と呼ば
れ、リスクコミュニケーションとは区別される。
– 公衆だけでなく、行政や専門家も意見・態度・方針を変えうる
 科学的な内容だけでなく、リスクに関する意思決定にかかわるすべて
のメッセージを含む
– リスクの特性やリスク管理措置・政策とその根拠、リスク管理業務と制度
についての説明、それらに対する反応など
– リスクと有害物に対する個人的な意見と感情に関するメッセージ
– 価値観に関するメッセージ
「リスクコミュニケーションについての広い定義は、リスクについての公
の決定が、リスクについてと同じくらい価値観と利害関心についての議論
を必要としていることを暗示する。なぜならリスクは、価値観を考慮せず
にはお互いに比較検討することができないからである。・・・リスクは価値
観を考慮せずには理解することさえできないのである。」(NRC, 1989) 9
リスクコミュニケーションの発展段階
発展段階
関心の中心と目的
– 民主主義における他のコミュニケーションの場合のように、
リスクコミュニケーションの参加者の意図は時に政治的で
ある。すなわち、リスクについてのメッセージは、時にそれ
らを伝えられる人々の信条や行動に影響を与えることが
意図される。リスクコミュニケーションは、有害物やリスク
を含む意思決定、すなわちリスク管理の筋道の中で理解
されねばならない。(NRC)
– リスクコミュニケーションは、情報の伝達以上のものであ
るべきである。その主要な機能は、効果的なリスク管理に
必要なすべての情報と意見が、意思決定過程に統合され
ることを保障することである。(Codex委員会Alinorm 03/41, p.128, para.39)
10
 ハザード(hazard: 危害要因):
特徴と問題点
技術的な情報を
提供、開示、広報
リスク管理者からリスクを被る可能性のあ
る人への情報提供がなされるが、技術的
な情報をそのまま説明してもよく理解され
ず、受け入れられることは少ない。
第2段階
(情報の提供)
教育、宣伝、解説。
説得手法に関心。
情報発信者の意図がよく受け入れられるこ
とに関心が寄せられ、聞き手を説得するた
めにメッセージを工夫するが、自分に都合
のよい点を強調する場合が多い。
責任ある参加を重視し、 説明するだけではなく、相手の意見を聞き、
協働を目指す。
討議する。この段階では、インフォメーショ
手続きにおける公正さ ン(情報)ではなく、コミュニケーション(話し
を追求。
合い)という要素が強く意識される。
関澤純「リスクコミュニケーション:共存へのカギをにぎる情報と意見の交換」、
『化学』54(1), 1999, p.27‐30.より作成
 民主的な政策決定過程の一部である(単なる相
互理解・情報共有に留まらない)
科学的なリスク概念―ハザードとリスク
第1段階
(データの開示)
第3段階
(共通の認識に
基づく意見交換)
リスクコミュニケーションのポイント (3)
11
– 危害の潜在的要因。人の健康や環境などに何らかの危害を及ぼす
性質のある物質やその状態、生物、または装置の操作などの活動。
例: 青酸カリのような有毒な化学物質、腐敗した食品、腸管出血性大
腸菌O157、自動車や原子力発電所の運転など
 リスク(risk) = 被害の重大性×被害の生起確率
例: 自動車事故の死亡リスク=(死亡事故の発生確率)=1万人に1人
発がんリスク = 損失余命(期待される余命の短縮:Loss of Life Expectancy) = ○○日
12
リスク評価とリスク管理
日本の化学物質のリスクランキング(損失余命)
喫煙:全死因
喫煙:肺がん
受動喫煙:虚血性心疾患
ディーゼル粒子
受動喫煙:肺がん
ラドン
ホルムアルデヒド
ダイオキシン類
カドミウム
ヒ素
トルエン
クロルピリホス(処理家屋)
ベンゼン
メチル水銀
キシレン
DDT類
クロルデン
数年~十数年
370
120
14
12
9.9
4.1
1.3
0.87
0.62
0.31
0.29
0.16
0.12
0.075
0.016
0.009
中西準子ほか『環境リスクを計算する』、岩波書店、2003年より
リスクの考え方: 「比較」
リスクの比較さまざま
– リスク同士の比較: 相対関係で大きさを把握
– リスク・トレードオフ: リスクと対抗リスク
– リスクとベネフィット(便益)の比較
– コストとベネフィットの比較
リスク評価(risk assessment)
– ハザードに接することで、人や自然環境にどんな悪影響が、ど
の位の確率で起きるかを科学的に見積もる作業。
リスク管理(risk management)
– リスク評価結果に基づいて、ハザードそのものや暴露をコント
ロールすることによって、リスクをできる限り小さくする。
• 「農薬残留基準」や「一日耐容摂取量」など基準値の設定
– 費用対効果や実行性など社会的・技術的事情も考慮。
13
14
リスクコミュニケーションの効果的な進め方(1)
 「言語行為」としてのリスクコミュニケーション
– 何かを「言う」ことで、何を意味してしまうか
 「懸念評価(concerns assessment)」の必要性
– 人々が何を懸念し、何を懸念していないかを探り、リ
スクコミュニケーションの内容に反映。
– アンケート調査、フォーカスグループ、ワークショップ
など方法はさまざま。
 信頼の条件に留意
– 能力に対する信頼
– 誠実さに対する信頼
– 主要価値類似性
リスクコミュニケーションの効果的な進め方(2)
 「信頼の地雷」 を踏まないための
「リスコミべからず集」が大事
たとえば「考え方」で重要な例:
 「受容(受忍)」の是非は各自の判断または政治的決定
• 科学が答えられるのは「リスクの大きさ」まで。
 「統治者視点」と「当事者視点」の違いは解消できない。
どちらかに還元できない。
• 確率的・統計的・集合的見方と一回性の見方
• 共通認識というより「相互理解」。
• どちらかに還元しようとして「信頼の地雷」を踏まないこと。
低線量被ばくに関する「リスク比較」の例
311以降、低線量被ばくのリスクをレントゲン
やCTスキャン、放射線治療、喫煙と「比較」す
る言説がたびたび聞かれた。
話者は、そう語ることで、リスクの大きさの
把握を容易にし、人々を安心させようとした
のかもしれないが、少なからずの人たちが、
不満や怒りを覚えた。
なぜか?
もう一つ注意点:リスク認知の総合性と規範性
 人間のリスク認知は「(被害)×(発生確率)」だけで
成り立っていない。
 規範的判断(公平性、責任、自己決定、信頼)や、他
の要因まで含めた総合的な「受容れ難さ」の度合い
としてのリスク認知。
– 正義感覚に由来する「感情の公的意味」
– これを「非科学的」と否定的に扱うことはそれだけで「信頼
の地雷」を踏む行為になる。
便益比較
費用対効果
破滅性
制御可能性
自発性
発生確率
未知性
公平性
信頼性
責任
リスク比較がしばしば不適切なのは何故か?
 リスクの社会的意味の次元を無視してるから
– レントゲン等医療被曝は、メリットあり、選択権あ
りだが、今回の事故による被曝は、メリットなし、
選択権もなしであり、疾病リスクは低くとも、受け
容れ難さの度合いは大きい。
– 喫煙との比較は、子供や非喫煙者にとっては何
の意味もない。
米国疾病予防管理センター(CDC)のトレーニング教材『危機・
緊急時のリスクコミュニケーション』など、各種ガイダンスでも、
安易なリスク比較は慎むべしとされている。
20
農林水産省「
健康に関するリスクコミュニ
ケーションの原理と実践の入門書」
リスクコミュニケーション:神話と対策
 神話:リスクコミュニケーションプログラムに必要な時間や資源が充分ない。
– 対策:スタッフ全員を、もっと効果的なコミュニケーションができるように教育する。
住民を参加させるための時間を確保するようにプロジェクトを組む。
 神話:リスクについて国民に公表することは、住民を落ち着かせるよりも必
要以上に恐怖心を持たせることになりかねない。
– 対策:国民に彼等の懸念や不安を表明する機会を提供することによって、恐怖
心が生じる可能性を減らす。
 神話:コミュニケーションは啓蒙教育より重要でない。国民は真のリスクを理
解すれば、それを受け入れるであろう。
– 対策:国民にどのように対応するプロセスについて、データを説明する方法につ
いてと同じように注意を払う。
 神話:環境に関係する健康問題を解決する方法が見つかるまで、公表する
べきではない。
– 対策:リスク管理の選択肢に関する情報を公開して討議し、利害関係のある地
域社会を解決法の立案に参加させる。
 神話:このような問題は難しすぎて国民は理解できない。
– 対策:国民があなたの政策に賛成しないことと、高度に専門的な問題を誤解して
22
いることを、はっきりと分離して考えるべきだ。
リスクコミュニケーションの神話:別バージョン
 神話:専門的な判断は専門家に任せるべきである。
– 対策:国民に情報を提供する。地域社会の不安に耳を傾ける。政策立案時に、
様々な専門を持つスタッフを参加させる。
 神話:リスクコミュニケーションは、自分の仕事ではない。
– 対策:公務員として国民に対して責任がある。コミュニケーションを仕事に統合す
ることを身につけ、同僚もそうするよう手助けする。
 神話:国民は少しでも情報を提供すると、限りなく情報を欲しがる。
– 対策:国民がわずかでも情報を欲しがっている時に、その要望に従えば、彼等
が際限なく情報を求める可能性は低くなる。闘争の場を避けること。国民を早く
から、そして多くの機会に参加してもらう。
 神話:国民の言うことに従うと、公衆衛生にとってそれほどの脅威ではない
問題に、ただでさえわずかな資源を投入することになる。
– 対策:早めに国民に耳を傾けることによって論争を避けるとともに、あまり重要で
ない問題に不相応なエネルギーを費やすことがないようにする。
 神話:活動家グループは、根拠無き不安を掻き立てる元凶である。
– 対策:活動家は国民の怒りを集束する働きをする。環境グループの多くは理性
的で責任感がある。彼等と対立するよりも協力するべきである。
Chess C, Hance BJ, Sandman PM 1988. Improving Dialogue with Communities: A Short Guide to Government Risk Communication. New Jersey Department of Environmental Protection.
23
1. 化学物質は危険なものと安全なものに二分される
2. 化学物質のリスクはゼロに出来る
3. 大きなマスメディアの情報は信頼出来る
4. 化学物質のリスクについては、科学的にかなり解明され
ている
5. 学者は、客観的にリスクを判断している
6. 一般市民は科学的なリスクを理解出来ない
7. 情報を出すと無用な不安を招く
8. たくさんの情報を提供すれば理解が得られる
9. 詳しく説明すれば理解や合意が得られる
10. 一方的な情報提供や説明会、意見公募等がリスクコミュ
ニケーションである
日本化学会リスクコミュニケーション手法検討会・浦野紘平編著『化学物質のリスクコミュニケーション手法ガイド』
リスク情報提供の7大原則
1.
リスコミの7つの原則 (行政・企業向け)
国民を協力者として受け入れ参加させる。
目標は知識ある国民を養成することであり、国民の不安を払拭したり行動を変えることではない。
2.
慎重に計画を立て、努力の結果を評価する。
目標、聴衆、媒体が異なれば違った行動が必要である。
3.
国民の特定の不安に耳を傾ける。
国民は、しばしば統計や細かい事実より、信用、信頼性、能力、公正さ、共感により関心を持つ。
4.
正直、率直、公明正大な態度をとる。
信用および信頼を得るのは難しい。それらは一度失えば再び獲得することは殆ど不可能である。
5.
信頼できる情報源と協力する。
組織間の対立や意見の相違は、国民とのコミュニケーションを一層困難にする。
6.
マスメディアの要望を満たす。
マスメディアは、通常、リスクよりも政治、複雑よりも単純、安全よりも危険に関心を示す。
7.
明瞭に、思いやりを込めて話す。
病気、傷害、死亡などを悲劇として認めることを、妨げるような努力をしてはならない。国民はリ
スク情報を理解しても、行政とは意見が一致しないかもしれない;一部の人々はそれだけでは
満足しないだろう。
Covello V, Allen F. 1988. Seven Cardinal Rules of Risk Communication. U.S. Environmental Protection Agency, Office of Policy Analysis, Washington, D.C
1.市民団体や地域住民等を正当なパートナーとし
て受け入れ、連携すること
2.コミュニケーション方法を慎重に計画をたて、そ
のプロセスを評価すること
3.人々の声に耳を傾けること
4.正直に、率直に、開かれた態度で行うこと
5.他の信頼できる機関と調整し、協力すること
6.メディアの要望を理解して応えること
7.相手の気持ちを受け止め、明瞭に話すこと
日本化学会リスクコミュニケーション手法検討会・浦野紘平編著『化学物質 の
リスクコミュニ. ケーション手法ガイド』 より
25
26
リスコミの7つの原則 (市民団体等向け)
大事なのは信頼関係の構築
1. 相手の立場を理解し、対立者と思わず、話し合
うこと
2. 結果だけでなく、プロセスに注目し、常に整理、
反省して改善すること
3. 信頼できる情報の確保に努め、相手に応じた
情報を発信すること
4. 感情的にならず、要点を冷静に伝えること
5. 相手の提案を批判するのみでなく、代りの案を
提案すること
6. 他からの批判や提案を謙虚に聞くこと
7. 他の市民団体、学者、弁護士等との協力関係
を築くこと
27
不信がある状況では、疑心暗鬼が広がり、相
手にとって必要な正しい情報も、正しいものと
して受け取ってもらえなくなる。
相手の信頼をいかに得るかがリスクコミュニ
ケーションの最大の鍵。そのためには
– 共感 = 相手の感情や悩み、問題を理解する
– 共考 = 相手と一緒に考え意思決定する
ことが大切。
28
失敗したリスクコミュニケーションの例
失敗したリスクコミュニケーションの例
 1986年4月26日チェルノブイリ事故直後、5月2日にイギリス
のカンブリア地方(ピーターラビットで知られる湖水地域)に
放射性物質を含んだ雨が降った。
 さらに、行政や科学者は、牧羊農家とコミュニケーションを取
らず、牧羊(羊の行動と農地の状況)に関する専門知識や農
場経営の実際を無視して、的外れな測定や実験を行ったり、
農家にとって非常識な“対策”を提案し続けた。
 放牧されている羊が汚染されたが、政府の科学者は「雨で汚
染された草を食べたから羊が汚染された。汚染されてない草
を食べ始めれば放射能レベルはすぐに下がるから心配な
い」と述べた。
 ところが現実はそうはならず、羊の監視と出荷停止は2年も
続いた。
 科学者は土壌が一様に雨で汚染されるという前提を置いた
が、現地は複雑な地形のため、測定値はばらついた。
 また、科学者たちは、放射性セシウムは土壌中に化学的に
固定され、草の根から吸収されることはないと考えていたが、
実際はそうではなく、羊を汚染し続けた。
29
何が問題だったか?
 農家たちが最も失望したのは、科学者たちが判定を下すとき
の傲慢とも言える確信や、誤りを認めるのを拒んだり、農家
の知識を一切信用しない態度だった。
 そのうえ、1950年代に近くの原子力施設で起きた火災による
放射能汚染がまだ残っていたのを政府がわざと無視しようと
していたこともわかり、牧羊農家の行政や科学者に対する信
頼は最低レベルとなった。
30
成功したリスクコミュニケーションの例
• 「汚染は一様」という前提
 チェルノブイリからわずか16kmにある国境の向こう側、ベラ
ルーシの寄宿学校に入っている子どもたちが、長期休暇で
親元に帰ると、汚染レベルが上昇することが観察された。
• 放射性セシウムは土壌中に化学的に固定されるとい
う前提(これは低地の粘土質土壌では成り立つが、
丘陵地帯の酸性泥炭土では成り立たない。)
 そこで国際協力としてフランスチームが現地に入った。最初
は住民を「教育」しようとしたが、住民からは全然信用されな
かった。
 科学的な誤り
 コミュニケーションとしての誤り
 そこでチームにいたコミュニケーション専門家の意見により、
村民が何に困っているかの聞き取り調査を始めた。
• 牧羊に関する農家の専門知識や助言、農場経営に
関する農家の必要や懸念を無視し続けた。
• 農家にとって、人が間違うのは当たり前のことだが、
科学者たちは傲慢とも言える確信や、誤りを認めな
い態度をとり続けた。
• 過去の原子力事故の影響を政府が隠蔽しようとした。
31
 そこで重要な6つの問題が見つかり、それの解決に「共に」
当たることで、子どもたちの放射線防護に関しての成果が得
られた。
32
成功したリスクコミュニケーションの例
 実際にどこが危ないのか母親たちがわかっていなかったた
め、子どもたちが遊ぶ場所をチームと母親たちが一緒に測
定して回って、森の中など子どもが遊んだら特に危ないとこ
ろを洗い出していったのである。
 さらに当時、汚染を理由に牛乳の摂取は禁止されていたが、
育ち盛りの子どもに牛乳禁止は母親から見ればジレンマ
だった。そこで子どもの栄養についてもチームが相談に乗っ
た。
 住民からの信頼をチームは得ることができ、住民は知識と子
どもたちのリスクの軽減を得た。
成功の要因は?
「教育」という一方向的で「上から目線」のやり
方・態度ではなく、まず、村民が何に困ってい
るかを聞き取り調査することから始めた。
問題を解決するに当たっても、母親たちと一
緒に測定するなど、協働した。
つまり・・・
まず、相手の問題や事情を理解し、一緒に解
決しようとすること。
そうすることで信頼を得て、相手が気づいて
いない・理解していない問題を指摘し、解決
のサポートを行ったこと。
33
ワークショップ型の取り組み(1)
BSE熟議場
– JST受託研究「アクターの協働による双方向的リス
クコミュニケーションのモデル化研究」(代表者:
飯澤理一郎・北大農学研究院)
– JST科学コミュニケーションセンター「リスクに関す
る科学技術コミュニケーションのネットワーク形成
支援」プログラム受託事業「市民参加型で暮らし
の中からリスクを問い学ぶ場作りプロジェクト」
(代表:吉田省子・北海道大学)
34
ワークショップ型の取り組み(2)
 DEMOCS (deliberative meeting of citizens)
– 英国のNGO “New Economics Foundation”が開発した科学
技術政策ゲーム
– カードゲームの形式を取った政策分析ツールで、科学技
術をはじめとした複雑な課題について一般市民が無理な
くディスカッションに参加できるようにデザインされている。
– 6人程度の参加者により1 時間半から、2 時間かけて実施
– プレイヤーは、カードを使いながら、先端科学技術を取り
巻く様々な議論を学び、他の参加者と意見交換をしなが
ら、自己の意見を形成する。ゲームの最後には、自分の
政策意見を投票する。
36
リスクコミュニケーションから消費者が得るもの
Decide (DEliberative CItizens’ DEbates)
 何をどの程度恐れるべきか、恐れなくてよいかの自己判
断の目安
 リスクについての考え方とその多面性についての理解
 DEMOCSを用いた国際プロジェクト
– http://www.playdecide.org/
 2006年1月に欧州科学センター・博物館ネット
ワーク(ecsite: http://www.ecsite.net/)が開始
– 科学的見方と社会的見方、統治者視点と当事者視点
 行政・企業のリスク管理の取り組みを知ることも大事
 他の人たちの考え方や知識、経験を知ることも大事
 「自分事」の意識と「自己効力感」
– 同年5月までに欧州各地で100回以上開催
– 現在もFUNDという新しいプロジェクトが進行中
 テーマ
– いかに「自分の関わり方」の問題であるかを意識
– 異種間移植、ナノテクノロジー、幹細胞研究、遺伝子
診断、神経科学、HIV/AIDS、気候変動など11件
37
 「情報の集め方」を知ることも大事。
– ○ ○の情報はどこを探せば見つかるか、誰(どの機関)
に聞けばいいか?
– 専門論文ならCiNii論文検索。より広くは国会図書館サー
チ。
• CiNii: http://ci.nii.ac.jp/
• 国会図書館サーチ: http://iss.ndl.go.jp/
 情報の「ポートフォリオ」という考え方
– 科学の不確実性、訂正可能性に留意
– 専門家の意見には幅。信頼してもよい「範囲」を考える。
– 単なる知識提供・学習ではなく、それによって行動変容と「こう
すれば自分でもできる」という自己効力感が大事
– リスクに対してどう対処すればよいか。身近なリスク管理
– 生活に対する主体的関わりの向上へ
平成 24 年度 経済産業省 化学物質管理課からの委託事業
消費者製品に含有される化学物質のリスクに関するリスクコミュニケーション
目的:暮らしに身近な洗濯用又は台所用石けんや洗剤などを取り上げ、事業者や専門家
を交えてリスクに関するコミュニケーションをはかり、消費者が日頃感じている
不安やもっと知りたい情報は何かを探る。
日時:2013 年2月2日(土)
場所:こどもの城 9階
13:30~17:00 (受付開始 13:15)
906号
対象: NACS 会員
<本日のプログラム >
主催
協力
13:30~
【オリエンテーション】開会挨拶
13:35~
【アイスブレイク】自己紹介 with 私がお世話になっている洗剤
13:50~
【work1】石けん洗剤
14:10~
【情報提供1】事業者が考えるリスクと対応について
日本石鹸洗剤工業会 広報委員会 鈴木哲
気になることビンゴゲーム
14:30~
【work2】グループディスカッションⅠ
15:10~
【休憩】
15:25~
【情報提供2】よりよいコミュニケーションのために
横浜国立大学大学院教授 学術博士 大矢勝
氏
15:45~
【work3】グループディスカッションⅡ
16:15~
【work4】全体ディスカッション
よりよいコミュニケーションに向けて
16:30~
【クロージング】ふり返りシートの記入と共有
16:50
【終了】
氏
公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会(NACS) 環境委員会
経済産業省 化学物質管理課
NACS:消費者製品に含有される化学物質のリスクに関するリスクコミュニケーション事業
日本石鹸洗剤工業会の
安全性(ヒト・環境)に係わる活動
2013年2月2日
広報委員 鈴木 哲
1
日本石鹸洗剤工業会の概要
•
•
設立年月日: 1950年(昭和25年)9月
会員
http://jsda.org/w/00_jsda/1about_1b.html
– 正会員23社
– 賛助会員37社・団体
•
活動概要(平成23年度 基本活動方針)
– 温暖化ガスの発生抑制、資源の有効活用を通して、持続可能な経済社会を実現させる
べく、循環型社会の形成などが、各分野で積極的に行なわれています。また、我々の暮
らしに不可欠な化学物質を、より適切に管理し、有効に活用していくために、国の化学
物質管理の主要な法律の改正が、国際的な流れとの整合性を図りながら設定検討が
進められています。特に、原料として各種の化学物質を使用する我々業界は、ヒトへの
安全はもとより、環境影響にも配慮した製品を消費者が安心して使っていただけるよう
に、工業会活動を継続する必要があります。そして、多くの成果を公表し、化学物質に
ついての情報を伝え、話し合うといったリスクコミュニケーションを推進していく必要もあ
ります。このような対応が求められる一方、技術革新により、消費者やユーザーの皆様に
喜んでいただける高付加価値製品の開発を進めていかなければなりません。
このような認識のもと、当工業会の平成23 年度の活動基本方針は次の通りといたします。
•
•
•
•
公正な自由競争を基本とし、活力と創造性に富んだ業界活動を推進する
循環型社会の形成に向けた業界の取り組みを継続する
広報活動を強化充実し、業界製品の正しい知識の啓発、普及活動を推進する
海外の関連団体との協力関係をさらに発展させ、諸課題に対応する
2
組織
GHS表示検討WG
成分表示WG
洗濯実態調査、他
GHS検討WG
コミュニケーション
部門
3
製品安全に関する考え方(広報誌より)
洗剤に配合される成分の基本要件は、人に重篤な悪影響(がん、奇形など)を与え
ないことです。
製品においては、通常使用時に人に副作用などの影響がないことはもちろん、仮
に誤使用した場合も、応急処置をすれば一過性の副作用で済むことが、使用上の
安全性を担保することになります。また、使用者が危険性を充分認知できる表示を
行なうことも重要です。
http://jsda.org/w/02_anzen/riskcomm-series_03.html
安全への取組み
製品表示
お客様センター
WEB
啓発 など
情報提供
(工業会・企業)
自主基準
(業界団体)
■飲食器用洗浄剤 ■洗剤等の成分情報開示 ■GHS表示(塩素系漂白剤・
洗浄剤、酸性洗浄剤、台所用洗剤) ■洗剤成分の機能名表示 ■柔軟仕上げ
剤の品質表示 ■「除菌」と表示できる基準 ■洗浄剤・漂白剤等安全対策協議
会の自主基準 など
表示・
その他(国)
法規制
(国)
化学物質管理、
製品安全
家庭用品品質表示法
不当景品類及び不当表示防止法、他
化審法、食品衛生法(台所洗剤)、
薬事法(シャンプー・ボディソープ等)、
有害物質含有家庭品規制法、消防法、
安全確保マニュアル作成の手引き、他
使える成分・使用範囲・
提供情報等は法律
で規制 ( ヒト健康・
環境影響に配慮 )
◆ 安全確保への必要要件
「法規制」+「業界自主基準」+「情報提供(製品表示、啓発 等)」
洗剤類と製品安全に係る代表的法令の位置付け
評価される
性質
用 途
人体への影響
急性
毒性
一般化学品
(洗濯用・住宅用
の洗剤など)
農薬
薬 事 法
毒物及び劇物取締法
食品添加物など
(台所用洗剤)
変異原性 環境経由の慢 生態毒性
(発がん性)
性毒性など
オゾン層
食品衛生法
有害物質を含有する
家庭用品規制法
労 働 安 全 衛 生 法
医薬品
化粧品
医薬部外品など
慢性毒性 等
環境保全
化管法
化管法
*
(PRTR制度)
(PRTR制度)*
化学物質の審査及び
製造等の規制に関する法律
農薬取締法
*特定化学物質の環境排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律
「家庭用品規制法」に基づく規制基準(20物質)
家庭用洗剤・家庭用洗浄剤で現在使用されている規制物質は塩化水素(酸性洗浄剤)、
水酸化ナトリウム・水酸化カリウム(いずれも塩素系洗浄剤・塩素系漂白剤)に限定
塩化水素
硫酸
水酸化ナトリウム
水酸化カリウム
住宅用の洗浄剤で液体状の
もの(製剤たる劇物を除く。)
塩化ビニル
メタノール
家庭用エアゾール製品
DTTB
ディルドリン
繊維製品のうち、おしめカ
バー、下着、寝衣、手袋、くつ
した、中衣、外衣、帽子、寝具
及び床敷物
家庭用毛糸
ホルムアルデヒド
繊維製品のうち、おしめ、おし
めカバー、よだれ掛け、下着、
寝衣、手袋、くつした、中衣、
外衣、帽子、寝具で24ヶ月以
下の乳幼児用のもの
トリフェニル錫化合物
トリブチル錫化合物
有機水銀化合物
繊維製品のうち、おしめ、おしめカ
バー、よだれ掛け、下着、衛生バ
ンド、衛生パンツ、手袋及びくつし
た
家庭用接着剤
家庭用塗料
家庭用ワックス
くつ墨及びくつクリーム
テトラクロロエチレン
トリクロロエチレン
家庭用エアゾール製品
家庭用の洗浄剤
APO
TDBPP
ビス(2,3-ジブロモプロピ
ル)ホスフェイト化合物
繊維製品のうち、寝衣、寝具、カー
テン及び床敷物
ジベンゾ[a,h]アントラセン
ベンゾ[a]アントラセン
繊維製品のうち、下着、寝衣、
ベンゾ[a]ピレン
手袋、くつした及びたび
かつら、つけまつげ、つけひ
げ又はくつしたどめに使用さ
れる接着剤
クレオソート油を含有する家庭用
の木材防腐剤及び木材防虫剤
クレオソート油及びその混合物で
処理された家庭用の防腐木材及
び防虫木材
洗浄剤の基準
有害物質
基準
基準設定の考え方
・塩化水素
・硫酸
酸の量として
10%以下及び
所定の容器強度
を有すること
容器の破損等により
内容物がこぼれ、人
体に被害を及ぼさな
いようにするもの
S49.10.1
皮膚障害
粘膜の炎症 (S55.4.1
吸入によって 一部改正)
肺障害
・水酸化ナトリウム
・水酸化カリウム
アルカリの量とし
て5%以下及び
所定の容器強度
を有すること
容器の破損等により
内容物がこぼれ、人
体に被害を及ぼさな
いようにするもの
皮膚障害
粘膜の炎症
※業界自主基準
洗浄剤:4%以下
カビ取剤:1%以下
毒性
施行
S55.4.1
製品表示から得られる情報(1)
製品表示は、性能と安全を両立できる化学物質の使用法を示した
もの。消費者と事業者をつなぐ手段
【台所洗剤の表示イメージ】
〔裏面〕
品名/台所用合成洗剤, 用途/食器・調理用具・野菜・果物, 液性/中性,
成分/界面活性剤(40% アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム,
アルキルアミンオキシド),安定化剤,粘度調整剤,正味量/270mL
使用量の目安/水1Lに対して0.75mL(料理用小さじ1杯は約5mL)
使用上の注意 ●子供の手の届くところにおかない。●上記用途外に使用しない。
●使用後は水で手をよく洗い、お肌のお手入れを。●荒れ性の方や長時間使う
場合、また原液等をスポンジに含ませて使うときは炊事用手袋を使う。●野
菜・果物を洗うときは5分以上つけたままにしない。●流水の場合、野菜・果
物は30秒以上、食器・調理用具は5秒以上、ため水の場合は水をかえて2回
以上すすぐ。●うすめた液を長時間おくと変質することがあるので、使用のつ
どうすめて使う。
○○○○株式会社 〒・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・ TEL・・・・・・・・・・・・
正味量
○○○ ml
会社ロゴ
プラ
マーク
ボトル:○○○
キャップ:○○○
バーコード
応急処置 ●万一飲み込んだときは水を飲ませる。目に入ったときは、
こすらずに水でよく洗う。異常がある場合は、医師に相談する。
【洗濯用洗剤の
表示イメージ】
〔裏面〕
製品表示から得られる情報(2)
必ずご使用前に表示をお読み下さい。
JSDA-GHS対応済み
使用方法
●衣類の絵表示を確かめる
用途: 綿・麻・合成繊維のお洗濯用
・下記の絵表示のある衣類には使用しないで下さい
中性表示のもの
(毛・絹など)
水洗いでき
ないもの
●洗剤は水によく溶かしてからご使用ください。
・衣類に直接ふりかけて使用すると、溶け残りや蛍光ムラの原因になります。
・注水のタイミングや洗剤投入ケース等を上手に利用し、洗剤が一ヶ所にかたよらないようにしてください。
●がんこな汚れはぬるま湯でつけ置き洗いすると効果的です。
●衣類を大切にするために
・色落ちしやすいものは、仕分け洗いをし、初めて洗うときは別洗いでためしてください。
・きなりや淡い色の衣類は、蛍光増白剤の入っていない洗剤をお使いください。
・ランジェリーなどのデリケートな衣類・小物は洗濯ネットに入れて洗いましょう。
●漂白剤を併用する場合は酸素系漂白剤をご使用ください
使用上の注意
●乳幼児の手の届くところに置かない。 ●用途外に使わない。
●使用後は手を水でよく洗い、クリームなどで手入れをする。
●荒れ性の方や洗剤をブラシにつけて洗うときは炊事用の手袋をする。
応急処置
●飲み込んだときは水又は牛乳をのませる。●目に入ったときはこすらずすぐに水で充分洗い流す。
●異常があるときは商品を持参し、医師に相談する。
品名
洗濯用合成洗剤
液性
弱アルカリ性
成 分
界面活性剤(○○%アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、純石けん分(脂肪
酸ナトリウム)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、水軟化剤(アルミノけい酸
塩)、アルカリ剤(炭酸塩)、溶解促進剤、酵素安定化剤、酵素、蛍光増白剤
製品表示から得られる情報(3)
〔表面〕
【家庭用品品質表示法 特別表示事項】
●品名/衣料用漂白剤 ●成分/次亜塩素酸ナトリウム(塩
素系)、水酸化ナトリウム(アルカリ剤) ●液性/アルカリ性
用
途
必
ず
使
用
前
に
使
い
方
と
使
用
上
の
注
意
を
よ
く
お
読
み
く
だ
さ
い
危険
白物衣料専用(白物衣料でも使えないものがありますので注意してください。)
重篤な眼の損傷
皮膚刺激
●食べ物、飲み物、血液、
●黄ばみ・黒ずみの漂白 ●衣料の除菌・
(JSDA-GHS)
汗によるシミの漂白
除臭 ●赤ちゃんの衣料の漂白
(洗たく機洗い)●洗たく用洗剤といっしょに
(つけ置き洗い)●30分ぐらい(2時間以内)
使
洗たく槽に入れて洗う。
浸し、水ですすぐ。(生地を痛めたりすること
い
(ステンレス槽可)
があるので2時間以上は浸さない。)
方
●1Lの水に10ml(キャップ半分弱)
使 の ●洗たく機(水30L)なら70ml(200mlの
*キャップ1杯は約25mL
用 目 コップで約1/3杯)、洗いおけ(水5L)
量 安 なら12ml(キャップ約1/2杯)
使えるもの
●水洗いできる白物のせんい製品(木綿、麻、ポリエステル、アクリル)
★ワイシャツは
黄変に注意
【ワイシャツのイラスト】
使えないもの
【エンソサラシ不可のイラスト】
●一部の樹脂加工されたせんい製品(ワイシャツのえり・そで口など)では黄変
することがあるので、使用量の目安を守り、2時間以上は浸さない。
万一黄変した場合は、還元系漂白剤で元に戻ります。
●毛、絹、ナイロン、アセテート及びポリウレタンのせんい製品
●色物・柄物のせんい製品 ●金属製の付属品(ファスナー、ボタン、ホック等の
留具)がついた衣料 ●獣毛のハケ ●原液を10倍に水で薄めた液を目立たない
部分につけ、5分ほどで変色するものには使わないでください。 ●せんい自体
が変質して黄ばんだものは、漂白剤でも元に戻りません。
使用上の注意 ●用途外に使わない。 ●原液で使わない。 ●熱湯で使わ
ない。 ●容器を強く持ってキャップを開けると原液が飛び出す恐れがあるの
で注意する。 ●使用する時は炊事用手袋を使用する。 ●眼や皮ふ、衣類
に液が付かないよう注意する。 ●水や他のものを入れたり、つめかえたりし
ない。破裂することがある。 ●効果が落ちるので、酸素系や還元系漂白剤
と併用・混合しない。 ●金属製及びメラミン製の容器を使わない。 ●直射
日光を避け、高温の所に置かない。
だり、あるいは気分が悪くなった時は
使用をやめてその場から
離れ、洗顔、うがい等をする。
※いずれも受診時は商品を持参する。
○○○○株式会社 〒・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・ TEL・・・・・・・・・・・・
ボトル:○○○
【プラマーク】 キャップ:○○○
ラベル:○○○
正味量 ○○○ml
バ
ー
応急処置 ●目に入った時は失明の恐れがある。こすらずただちに流
水で15分以上洗い流し、痛みや異常がなくても直後に必ず眼科医に受
診する。 ●飲み込んだ時は、吐かずにすぐ口をすすぎ、コップ1~2杯
の牛乳か水を飲む等の処置をし、医師に相談する。 ●皮ふについた
時は、すぐ水で充分洗い流す。 ●使用中、目にしみたり、せき込ん
ー
1.塩素系の洗浄剤
■「まぜるな危険」
■「塩素系タイプ」
■酸性タイプの製品と一緒に使う(まぜ
る)と有害な塩素ガスが出て危険。
目に入った時は、すぐ水で洗う。
子供の目に触れないようにする
必ず換気を良くして使用する。
〔裏面〕
【衣料用漂白剤(塩素系)の
表示イメージ】
コ
ド
製品表示から得られる情報(4)
〔表面〕
酸性タイプ
○○○○○○○
○○○○○○○
○○○○○○○
【家庭用品品質表示法 特別表示事項】
2.酸性タイプの洗浄剤
■「まぜるな危険」
■「酸性タイプ」
■「塩素系の製品と一緒に使う(まぜる)と
有害な塩素ガスが出て危険」
〔裏面〕
【トイレ用洗剤(酸性タイプ)
の表示イメージ】
研究所評価~実使用条件での確認と表示
• 実使用条件での受け容れ性確認
労働現場と違い
安全教育の機会なし
化学物質の使い手(消費者)の主な情報源は製品
• 製品への注意表示
(安全に使ってもらうために)
– 適切な使用方法
ISO/IECガイド51「安全面-規格に安全に
関する面を導入するためのガイドライン」
– 保管方法
7.4.2 安全使用のための情報
7.4.2.1 情報の種類
– 万が一の場合の
(中略)
原則として、ありあまる又は必要のない情
応急処置
報は、安全について本質的である情報の価
値を減少させる傾向にあるので、そのよう
– 法律&
なものは避けることが望ましい。
業界自主基準対応
リスコミに向けての取組み(1)
• 情報収集 ⇒ 情報開示、啓発活動へ活用
– 成分・製品情報(成分の特性、ヒト安全性、環境影響、
環境モニタリング)
– トラブル事例(対象物への影響、用途外使用、
過剰使用)
– 統計データ など
• 自主基準の制定 ⇒ 安全対策、理解促進
– 表示・表現のルール統一
– 使用成分の規制・使用量の制限 など
主要界面活性剤の河川モニタリング
サンプリング地点:都市近郊4河川7地点(3,6,9,12月)
(B)
(A)
(C)
(A)
(B)
(C→B)
(A)
<選定根拠>
・魚類が生息・・・A,B,C類型水域
・上水道の水源を含む
・都市近郊、家庭排水が流入する地点
<調査委託先(第三者機関)>
・一般財団法人 化学物質評価研究機構
・株式会社環境管理センター
環境モニタリングの例
①荒川 治水橋 試料採取地点
バケツを投げて採水
バケツを投げて採水
②江戸川 金町 試料採取地点
橋からバケツを
橋からバケツを
下ろして採水
下ろして採水
JSDAでの環境リスク評価状況
JSDA WEB: http://jsda.org/w/00_jsda/9books_a.html#5-3
環境影響
( μg/L)
PNEC
人の健康
(μg/kg体重/日)
PEC
TDI
EHE
出 典
注)JSDA: WEBで公表
LAS(直鎖アルキルベンゼン
スルホン酸塩)
270
31
3,000
290 環境: 水環境学会誌(2010)
人: 2004 JSDA
AE(ポリオキシエチレン
アルキルエーテル)
110
3.5
6,000
9.5 2004 JSDA
DAC(ビス水素化牛脂ジメチ
ルアンモニウムクロリド)
94
2.7
100
23 2004 JSDA
AO(アルキルジメチル
アミンオキシド)
23
0.1
500
13.5 2010 JSDA
AES(ポリオキシエチレン
アルキルエーテル硫酸塩)
76
7.7
2,500
5.7 2011 JSDA
FWA-1
8.4
0.85
5,240
3.0 2007 JSDA
FWA-5
36
6.4
1,900
0.4
蛍光増白剤
PNEC(Predicted No Effect Concentration):予測無影響濃度
PEC(Predicted Environment Concentration):予測環境中濃度(モニタリングの最大値)
TDI(Tolerable Daily Intake):耐容1日摂取量
EHE(Estimated Human Exposure):ヒト推定暴露量
リスコミに向けての取組み(2)
• WEBでの情報発信
– 「安全と環境」「石けん/洗剤知識」「役立つ情報」
「家庭用製品一覧表(会員社の製品名と主成分等)」
「環境年報」「トラブル事例」 など
• 冊子での情報発信
– 「暮らしの中の石けん・洗剤」「石けん・洗剤Q&A」
「石けん・洗浄剤・仕上げ剤等誤飲・誤用の応急処置」
「洗剤の安全性・環境適合性」 「環境年報」
「各種専門資料」 など ※ WEB版含め一部無料
• 啓発活動
– 「セミナー開催(不定期)」「講師派遣」「情報作成協力」
洗剤に関する行政資料
• 独立行政法人 製品評価技術基盤機
構(nite):
身の回りの製品に含まれる化学物質
シリーズ 「洗剤(家庭用)」
http://www.safe.nite.go.jp/shiryo/product/productinfo.html
• 環境省:
かんたん化学物質ガイド
「洗剤と化学物質」
http://www.env.go.jp/chemi/communication/guide/index.html
(本日配布)
http://jsda.org/w/index.html
安全への取組み
製品表示
お客様センター
WEB
啓発 など
情報提供
(工業会・企業)
自主基準
(業界団体)
■飲食器用洗浄剤 ■洗剤等の成分情報開示 ■GHS表示(塩素系漂白剤・
洗浄剤、酸性洗浄剤、台所用洗剤) ■洗剤成分の機能名表示 ■柔軟仕上げ
剤の品質表示 ■「除菌」と表示できる基準 ■洗浄剤・漂白剤等安全対策協議
会の自主基準 など
表示・
その他(国)
法規制
(国)
化学物質管理、
製品安全
家庭用品品質表示法
不当景品類及び不当表示防止法、他
化審法、食品衛生法(台所洗剤)、
薬事法(シャンプー・ボディソープ等)、
有害物質含有家庭品規制法、消防法、
安全確保マニュアル作成の手引き、他
使える成分・使用範囲・
提供情報等は法律
で規制 ( ヒト健康・
環境影響に配慮 )
◆ 安全確保への必要要件
「法規制」+「業界自主基準」+「情報提供(製品表示、啓発 等)」
◆ 安全の達成
行政・企業・消費者の3者が、各々の責任を果たすことで成り立つ
ご清聴ありがとうございます
2013年2月2日 NACS環境委員会
石けん・洗剤などに含まれる
化学物質のリスクコミュニケーション
よりよいコミュニケーションのために
横浜国立大学 大矢 勝
1.日本の洗剤論争史
石けん運動の過去と現在
2.消費者と事業者の認識・意見のギャップ
各種論点の整理
3.海外でのコミュニケーションの事例
HERAのリスクアセスメントより
4.日本でのコミュニケーションの事例
生協の洗剤政策転換時の取り組みより
5.今後の課題
これまでのコミュニケーションの反省点より
1
社会のルールとは?(1)
リンゴを分けるなら
A
A
B
強者
A
B
B
弱者
公平に分けるという
感覚は、必ずしも共
有されている訳では
ない
界面活性剤以外の物質に関して
【Q】 新規化学物質に問題はないのか?
【A】 新規化学物質は少ない。環境・安全面でのハードルが高
い(欧州REACHなど)。生分解性の低い物質等を中心に
排除される方向に。
REACH:欧州で取り入れられた川上から川下までの化学物
質規制。新規物質だけでなく従来の物質に関しても環境・
安全データを要求。
【Q】 酸・アルカリ・酸化剤などの危険性は?
【A】 酸は金属汚れ、アルカリ・酸化剤は有機汚れ用。これらは
薄まることによって影響少なくなる。高濃度時には注意(幼
児・認知症老人の誤飲等)
【Q】 化学物質過敏症に関して
【A】 接触する化学物質の種類・量を少なくする必要。建材のホ
ルムアルデヒドなどを中心に根本的解決が必要。
3
石けん・合成洗剤論争の経緯
1951 合成洗剤国産第一号登場
1961 合成洗剤有害説登場(肝臓障害)
ABSの発泡問題が報道される
合成洗剤の有害性を論じた粉石けん販売用パンフレットが発行される
1962 合成洗剤の有害性を主張する記者会見や書籍発行
合成洗剤による誤飲中毒死事件の報道(裁判で1965年に原告敗訴)
1967 LAS等の界面活性剤に対する催奇性の研究が発表される(~1970年代半ば)
1976 LAS等の催奇性が公式に否定される
1977 琵琶湖で大規模な赤潮が発生し石けん推進運動が活発に
1979 滋賀県の琵琶湖富栄養化防止条例制定
1980 無リン洗剤が発売される
合成洗剤反対運動が分裂
1983 「合成洗剤の毒性とその評価」(厚生省編集)が発行される
1986 石けん推進運動の風化が報道される
1994 パーム油の環境問題の報告が石けん運動にショックを与えたと報道
1996 超コンパクト型洗剤が登場
1997 日生協「水環境と洗剤」の発行(一般的な合成洗剤の有害性否定?)
2000 コープとうきょうでLAS・蛍光剤配合洗剤の取扱がはじまる(2002さいたま)
2006 多くの関東地区生協でLAS・蛍光剤配合洗剤の取扱がはじまる(~2008)
2008 びわ湖会議(「琵琶湖を守る水環境保全県民運動」県連絡会議)が解散
4
洗剤論争の論点(合成洗剤の問題点)
環境問題
国際的に
共通
・ABSの発泡問題
・リンの問題
・APEの環境ホルモン問題
国内ローカ ・(LASの生分解性)
ル
・合成系の魚毒性
・下水処理場への影響
環境問題関連
ABS発泡問題・リンの富栄養化
安全性関連
肝臓障害・催奇性など
安全性問題
・皮膚への影響
※「合成v.s.石けん」ではない
・急性毒性 ・慢性毒性
・催奇形性 ・肝臓障害
・発癌、発癌補助性
・体内蓄積性
○
×
消費者運動が
実を結ぶ
消費者運動の
誤情報
5
石けん運動の分裂
石けん運動
(1962 - )
1980年分裂
穏健派
環境を重視
石けんを推進
高級アルコール系を容認
LAS・蛍光増白剤には慎重
運動として中途半端に
消費者運動の活気を失う
過激派
人体安全性を重視
全ての合成洗剤を否定
石けん以外を認めない
非科学的情報を誘発
 悪質商法を誘発
6
LASの人体への影響について
急性毒性
誤飲事故等には注意必要だが使用上の問題は
無い(万一の誤飲時も嘔吐性あり)。
慢性毒性
通常の使用で問題なし。野菜・果物洗浄に洗剤
を用いない場合には危険性はほぼゼロ。
発癌・発癌補助 発癌性は認められていない。発癌補助性は界面
性
活性剤(石けんを含む)ならば実験的に発現の
可能性あり。但し実際の生活上は問題無し。
催奇形性
学術レベルで否定的判断が下されている。
肝臓障害
慢性毒性症状の一部。通常の使用(慢性毒性で
問題のない状況)では問題なし。
皮膚障害
界面活性剤は何らかの形で皮膚に影響。但し
「合成洗剤⇔石けん」の問題ではない。
体内蓄積性
一般の界面活性剤に体内蓄積性は無い。
7
石けんと合成洗剤の環境影響
水生生物毒性
一般にLAS等の合成界面活性剤が石けんより
毒性が強いとされる(金属石けん生成のため)
生分解性
界面活性剤は究極分解性で特に問題なし。生
分解速度は石けん・AS・AES・AE>LAS。
EDTAやポリアクリル酸は究極分解率でも問題
あり。
有機物汚濁負
荷
界面活性剤の単位重量あたりで比較すると大差
ないが、標準使用濃度で比較すると負荷は石け
んが合成洗剤を大きく上回る
原料エネルギー 単位重量では石けんは他の界面活性剤よりコス
コスト
トが小さいが、一回の洗浄操作での使用量で比
較すると石けんが不利。
総合的なリスク
評価
古いタイプの評価では石けんが有利だが、新た
な方法では石けんの優位性が消失。
8
海外でのコミュニケーションの事例
Human & Environmental Risk Assessment of
Household Detergent Cleaning Products
HERA:1999年に次の目的で設立
1) リスクアセスメントの手法で洗剤類に含まれる化学物質
の安全性情報と評価結果を提供できることを示す
2) リスクベースの規制への有用で実践的な手法を提供する
・産業界が責任を持って素早く対応できる
・ハザードのみの化学物質管理を避ける(+リスク)
・他の製品類、他の地域での先導的な役割を果たす
界面活性剤10種、助剤8種、漂白剤5種、溶剤3種、香料4種、酵素2種、
他物質5種、合計37種について調査(関連全材料の90%重量以上をカ
バー) LASが81ページ、AEが244ページ、AESが57+36ページなど
データは下記のページで公開
http://www.heraproject.com/RiskAssessment.cfm
9
HERAのコミュニケーションの取り組み
ステークホルダーへの説明会
2000年~2005年にかけて、欧米16か国において、行政12回、
NGO3回、産業界26回、混合型14回実施 →【情報提供型】
基本姿勢
・HERAは莫大な量の化学物質情
報を提供するが、それらのデータ
が意味するものは何かを理解し
なければ消費者は化学物質を気
持ちよく使用することができなくな
る
・消費者とのコミュニケーション手
段なくリスクアセスメントを行うの
は今日の社会では不十分だ
一般消費者とのリスクコ
ミュニケーションは海外
ではあまりない
10
生協の洗剤政策変更について
生協連:第5回洗剤普及実践交流会講演
(2003)
ちばコープ:学習会講師担当(2006)*9回
ユーコープ→リスク管理委員会(2007)
市民生協やまなし・
コープしずおか→学習会講師(2007-08)
おおさかパルコープ→学習会講師(2011)
LAS・蛍光増白剤配合合成洗剤に対する否定的見解を示して
いたが、その方針を変更
※ 理由説明のためのコミュニケーションが必要
参考
大矢勝(インタビュー)、「生協・コープネット事業連合系列で“LAS系洗
剤解禁”へ」クリーンエイジNo.209 (2007) pp.3-5
大矢勝、「洗剤の動向からポスト・コンシューマリズムを考える」、繊維
製品消費科学、49(3) (2008) pp.16-17
11
ちばコープ広報誌の記述より
【なぜ商品政策を見直したのか?】
1980年代後半から洗剤の安全性や環境負荷への科学的評価、組合員の洗
濯の仕方や考え方、洗剤の成分や価格、洗濯機の性能などが大きく変わっ
てきました。しかしちばコープではそうした変化を十分に整理できず、ま
た、組合員の皆さんにも新しい情報を提供できませんでした。
こうした不十分さを率直にお詫びするとともに、この間の変化をきちん
と把握し、環境や安全面での科学的な評価を加え、より多くの方の参加で
水環境を守る取り組みを進めるために衣料用洗剤に関する商品政策を見直
しました。
(学習会配布資料「商品政策を見直して洗剤の品ぞろえを広げていきま
す」より)
◇通常の使用では安全面に問題無し
◇環境面で全ての洗剤類は一長一短
◇洗剤の使用量の削減が大切
◇組合員の79%がLAS系洗剤を使用
(ちばコープでの購入は8%)
※これらの事情を考慮し、
①洗剤使用量削減策の推進、
②組合員の選択の権利の尊
重、の観点から商品政策を
見直す。
12
LAS洗剤見直しの背景
地球環境視点
→ライフサイクルアセスメント・リスクアセスメント
等の最近の評価法ではLAS系洗剤が必ずしも劣るとは言
い切れなくなった。
LASの生分解性について
→酸素消費量でみる生分解速度は比較的低いが、毒性
の低下する一次分解までは比較的速やかに進行する。
経験的な側面から
→全世界中で50年以上にわたり広く使用されてきたが
特に問題は見当たらない。
◇途上国都市部河川での濃度が問題になったことがあ
るが日本には当てはまらない。
◇欧州でLASの分解性が問題視されたことがあるが、リ
スクアセスメントで問題なしとされた。
13
界面活性剤のLCA分析事例
界面活性剤の製造に要するエネルギー比(GJ/1000kg)
出典:武井玲子、洗濯の科学、41巻 4号 1996年
界面活性剤
プロセス
輸送
EMR
総合計
界面活性剤
プロセス
輸送
EMR
総合計
LAS(石油)
22.7
1.3
36.9
60.9
SAS(石油)
18.7
1.0
32.2
51.9
AS(石油)
30.3
1.2
41.7
73.2
AE3(石油)
30.3
1.4
51.5
83.2
AS(パーム核油)
21.5
1.7
32.6
55.7
AE7(石油)
27.7
1.3
49.9
78.9
AS(ヤシ油)
18.0
1.9
42.5
62.4
AE3(パーム核油)
22.2
1.8
46.4
70.4
AS(パーム油)
16.9
1.7
33.4
52.0
AE7((パーム核油)
21.8
1.7
46.6
70.1
AES(石油)
31.9
1.6
39.5
73.0
AE3(ヤシ油)
19.1
2.0
55.0
76.1
AES(パーム核
油)
24.6
1.9
38.3
64.8
AE7(ヤシ油)
19.6
1.9
52.6
74.1
AE11(パーム油)
19.5
2.2
60.1
81.8
AES(ヤシ油)
22.0
2.1
45.4
69.5
APG(パーム核油)
26.6
2.0
32.1
60.7
石けん(パーム核
油+牛脂)
19.6
1.5
31.6
52.7
APG(ヤシ油)
24.3
2.2
38.6
65.1
石けん(パーム核
油+パーム油)
9.8
2.0
34.4
46.1
石けん(ヤシ油+
牛脂)
18.9
1.6
33.6
54.0
石けん(ヤシ油+
パーム油)
9.0
2.0
36.3
47.3
SAS:第2級アルカンスルホネート
APG:アルキルポリグルコシド
AE3、AE7、AE11の各数字はエチレンオ
キサイドの付加モル数
14
市販洗剤に含まれる界面活性剤の
エネルギーコスト(kJ/洗濯1回)
洗剤の種類
合成A
(LAS+AE+AES)
合成B(AE)
粉石けんA
粉石けんB
粉石けんC
(純石けん)
界面活性剤 標準使用量 生産に要す
(g/30L) るエネル
が含まれる
割合
ギー(kJ)
37%
20
509
32%
70%
70%
97%
15
35
40
35
367
1225
1400
1698
15
界面活性剤界のリスク評価
古いタイプのリスク評価(予想環境濃度/毒性LC50)
総トン数(1991yr)
除去率(%)
LC50(mg/L)
PEC/LC50(×10-3)
LAS
AE
AES
16,154
95
4
8,934
95
4
3,798
96
4
石けん
13,187
95
20
15.5
8.6
2.9
2.5
“Risk assessment: A case study on surfactants”,
Tenside Surfactant Detergent, 37 (2000) pp.35-40
オランダ環境省・オランダ洗剤工業会の共同研究
環境中予測濃度/最大許容濃度の比で評価する手法
・下水処理の調査 → 河川(排水口下流1km地点)の濃度予測
・水生生物の急性毒性・無影響濃度等 → 最大許容濃度推定
16
LASの最大許容濃度算出用データ例
生物種
採用値
無影響濃度データ内訳
3.8
緑藻(セレナス
0.58, 0.61, 1.0, 4.4, 4.9, 4.9, 8.2,
トルム属)
11, 17mg/Lの幾何平均
ファットヘッドミ
ノー
0.87
ニジマス
0.34
4.8, 3.9, 0.30, 0.52, 1.1, 1.5, 0.34,
0.39, 0.5, 0.5, 0.63, 0.7, 1, 2mg/L
の幾何平均
0.23, 0.3, 0.35, 0.43, 0.89, 0.35,
0.16mg/Lの幾何平均
全19生物のデータから最終的には250μg/Lの
最大許容濃度(MPC値)を採用
17
環境リスク評価結果
LAS
AE
AES
最大許容濃度 (μg/L)
予想環境濃度 k=0.00
(μg/L)
k=0.14
250
9.2
6.4
110
1.3
0.9
400
2.9
2.1
石けん
27
50
35
k=0.70
k=0.00
3.7
0.04
0.5
0.01
1.2
<0.01
20
1.9
予想濃度/許
容濃度
(PEC/MPC)
k=0.14
0.03
0.01
<0.01
k=0.70
0.02
<0.01
<0.01
PEC:環境予想濃度 MPC:最大許容濃度
PEC/MPCが1を下回れば問題がないと見なす
k:自浄作用係数(速度定数)
1.3
0.74
※ HERAプロジェクトで新たなリスク評価結果が発表されて
いる
18
生分解度と遊泳阻害・表面張力の比較 (LAS)
経過時間(Hour)
0.4
0.2
M.Oya, J.Oleo Sce, 59(1) 3139 (2010)
生分解度の上昇の初期の段階で
表面張力の上昇
遊泳阻害率の低下
14
4
19
2
24
0
28
8
33
6
38
4
43
2
48
0
52
8
96
48
0
0
遊泳阻害率・生分解度
0.6
表面張力(mN/m)
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0.8
0
経過時間(Hour)
30mg/L
1
0.2
336
360
360
312
336
240
264
288
192
216
144
168
72
96
120
24
48
0
0
0.4
264
288
312
0.2
0.6
192
216
240
0.4
0.8
120
144
168
0.6
80
70
60
50
40
30
20
10
0
48
72
96
0.8
1
0
24
80
70
60
50
40
30
20
10
0
表面張力(mN/m)
1
遊泳阻害率・生分解度
20mg/L
表面張力(mN/m)
遊泳阻害率・生分解度
10mg/L
経過時間(Hour)
19
LASの生分解過程
・・・ SPC
界面活性と毒性の
大部分を消失。
一次分解(MBAS)に
ほぼ一致。
20
【淡水産魚類】
LAS(15魚種)
AE(12魚種)
AES(11魚種)
AOS(11魚種)
AS(6魚種)
脂肪酸Na(5魚種)
【海産魚類】
LAS(7魚種)
AE(4魚種)
0.10
注)●は仔魚のデータ
1.0
10
100
LC50 (mg/L)
図1 魚毒性(LD50 )一覧
日本水環境学会編「Q&A水環境と洗剤改訂版」ぎょうせい、p10
5より
21
各種界面活性剤の水生生物毒性
メダカ
オオミジンコ
カイミジンコ
1000
100
M.Oya, J.Oleo Sci., 56(5), 237-243 (2007)
D e t- 3
D e t- 2
D e t- 1
SO AP
LB
AE12
AE8
AES
1
AS
10
LAS
半数致死濃度 (m g/ L )
10000
22
地球環境問題への対応と見るべき
今回のLAS・蛍光増白剤配合洗剤をめぐる方針転換の捉
え方
×安全性重視姿勢の後退
○地球環境問題対応型の科学的消費者環境の整備
これまでの消費者運動・消費者教育
身近な安全性を最重視
→量販店等の一般消費社会に広まった。消費者運動の
成果として高く評価できる。
今後の消費者運動・消費者教育
「価格」→「安全」→「地球」へ
→地球環境問題と身近な安心・安全をバランスさせた
冷静で科学的な態度を身につけることが望まれる。
※科学的な基準に従う意思決定が尊重される
23
各種学習会や取り組みでの反省より
◇「私たちが取り組んできた石けん推進運動は間違いだった
のですか?」
→石けん推進運動は決して間違いではない。石けん推進を核
とした消費者運動があったから今日がある。
◇「今まで石けんが良いと伝えてきたのに、どのように説明
すればいいのですか?」
→大変慎重な科学的検証の結果、合成洗剤を否定する根拠が
否定された。検証中の石けん推進は当然である。「信頼でき
る新たな情報によって方針が転換された」と伝えればよい。
◇「全く話を受け入れてくれない人にどう対応したらいいの
でしょうか?」
→論理的コミュニケーションを成立させるためのルールを消
費者教育に取り入れる必要?
24
非論理的コミュニケーション例
【A】 化学物質①は毒性が明らかになっています。その化学物
質①を含む商品②は製造・販売・使用を禁止すべきです。
【B】 化学物質①に毒性があるとする説は科学的に否定されて
います。そのことをご存知ですか?
【A】 たとえ毒性がなくても商品②は禁止すべきです。
【B】 毒性以外に商品②を排除すべき理由はあるのですか?排
除を求めるならば、その理由を明示すべきです。
【A】 あなたの要求は不当です。とにかく私たちが商品②の排
除を求めているのですから禁止すべきです。
【B】 理由がないのに排除を求めるというのは科学的ではありま
せん。
【A】 私は科学的です。科学的でないのはあなたです。とにかく
私たちの要求を受け入れなさい。
消費者情報に関する科学的論議のモラルが共有されるべき?
25
化学物質・気になることビンゴ
石けん・洗剤
ふりかえりシート
2月2日
名前
ワークショップに参加した感想を、次の文章を完成させる形で書いてください。
私がこの WS に参加
しようと思ったきっかけは、
今日参加してわかったことは、
私がこれから
しようと思ったことは、
石けん洗剤の化学物質について、
前から疑問に思っていたことは、
最後まで わからなか
ったことは、
今日のはなしを、だれに、
どう伝えようと思いましたか
work1 石けん・洗剤気になること(物・人・環境・その他への影響)
物への影響
人への影響
環境への影響
その他への影響
アルミ箔が溶けるようなもので拭
手荒れ肌荒れ
き掃除しても大丈夫か?
界面活性剤が川に流れた後分解するのか、
洗濯物と洗剤量のバランス
大丈夫なのか
本来の入れ物ではないものに入
掃除用洗剤使用時の換気の必要
れて電車の中で爆発した事件の
性
原因は?
強い洗剤を毎日使っても下水に影響はない
か
消臭・除菌・抗菌等と書かれているが成
分の表示がないので気になる
長期保存での変化(いつまで使え
洗濯物のすすぎ残りの影響
るか)
界面活性剤等の原料調達現場での生物多
様性等を破壊するような環境問題
新規物質の安全性はどのようにクリアし
ているのか
車用の洗剤の草木への影響
何でできているの?石油から?
化学物質だから悪いのか
CM:油汚れの落とし方(ギトギト油のお
皿を、泡たっぷりのスポンジで洗うのは
いかがなものか)
「用量は適切に」と書きながらこのような
CMを作るメーカーの見識を疑う
除菌剤の人への影響
臭いの影響
有毒ガスの発生(混ぜると危険)
クリーニング溶剤の残留による化
学やけど
子供の誤飲
天然だからいいのか
work2 わかったこと、わからなかったこと
わかったこと
界面活性剤の調査をしている
こと
わからなかったこと
石けん、洗剤、洗浄剤の言葉の定
義が不明⇒業界と法律の定義が
違う?
新たに知りたくなったこと
界面活性剤の含有量の割合が高い
ものの人や環境への影響が気になっ
た
応急処置の表記内容が製品ご P.4「製品安全に関する考え方」の
とに違うこと
図の区分とイメージしている使用方
法等が不明瞭⇒4つの区分の上の
2つの区分
自主基準が結構重いこと
原料調達時のこと
⇒どこで、どんなふうに調達して、
どんな影響があるの?
表示の基準
実際にモニタリングを行い、結 皮膚への影響
果も良いこと(界面活性剤)
⇒個人によって違いがあるは
⇒合成洗剤も捨てたモンじゃな ず・・・。
い?
塩素系HCl=アルカリ性
⇒知ってはいたが、目的が安
定化とは。
製品表示の表現のキツサ
⇒内容物のキツサ
業界の定義
⇒消費者イメージとギャップ
他に安定化する方法は?
何故「アルカリ性」と表示しない?
消費者のリスク認識に対する直接 香り成分の影響は?など先程の疑問
の答えは・・・。
への答え
洗浄剤の基準がしっかり決めら 使用量の目安とコマーシャルでの
(本当の使用量の目安)
れている。わりと低い。
イメージの差
台所用に食品衛生法が適用さ
れる
応急処置は洗剤の強さによる 吐かせていけないのはなぜか?
こと
どういう段階か内容を知りたい!
意外ときちんと表示に書かれて P.3洗濯実態調査とは?内容は?
いた。実は読んでいなかった。
石けんと洗剤の違い(業界の定 石けんと洗剤の違い(実質的な違
GHSについてもっと知りたい。
義は判った)
いがわからない)
関連している法律がわかった モニタリング結果と下水処理との関 最新の事故事例(水素爆発等)に対
連が不明
するコミュニケーション
河川モニタリングをしていること 「応急処置」の表現文言と内容の
が初めてわかった。
強さとの関連が不明
原料の調達現場がわからない(知り
たい)
wark3 よりよいコミュニケーションのために
事業者に
行政に
石けん、洗剤、洗浄剤の基礎的知
識を一般消費者向けに啓発してほ
社内の販売視点と技術視点を統
しい。
一させた上で、消費者に正しく伝え
⇒1980年代に論議が盛んだった
てほしい(⇒テレビCM等)
頃は石けんや洗剤の情報量が多
く、消費者が自分で判断できた
その他
To:NACS
NACSの中の消費者教育委員会と
環境委員会がタイアップして対外
的にもっと周知していく
製品の表示をもっとわかりやすく 製品表示の読み分けや表示が表
表示内容を統一(パターン)してほ す目的等の一般情報を周知してほ
しい
しい。
web
啓発
(メーカー)
直接消費
者に伝える
小売⇒POPで紹介
新しい商品など
“消費者の声”に答える
表示にQRコードをつけては?
CMでの情報
資料の提供
⇒手にとれるところに置く
家庭内や身のまわりの人と話す
事故情報の提供
使用している人(モニター)
全てをつなぐデジタル情報(双方向で)ツイッター
消費者啓発をもっと行う
表示を大きく、わかりやすく
(小)学校での教育
わかりやすい言葉で
⇒化学的なことに興味を抱けるよ
うに
事業者と消費者の橋渡しを行う
性能の根拠を示してほしい(すす
ぎ1回など)
消費者は
もっと表示を読む。
情報を求める。
不安をはっきりさせる。
ネガティブ情報の積極的な開示。 事業者、消費者に経済産業省は ※空欄
何をしてくれているのでしょうか?
わかりやすい表示のた
めの情報提供
事業者の論理のみでの情報提供 リスクコミュニケーションの好事例
消費者も商品の特性と使い方を良
に終わらせない
として、日本の洗剤問題を取り上
く知りましょう
⇒リスクコミュニケーションを再考 げ、世界に発信・紹介する。
リスクコミュニケーションの環境整
備(事例紹介、情報提供)
これからの
リスクコミュニケーション
ふりかえりシートまとめ シート記入者数23名
項
目
私
が
こ
の
ws
に
参
加
し
よ
う
と
思
っ
た
き
っ
か
け
は
記載内容
毎日の生活に欠かせない化学物質なので知っておきたいと思った
洗剤により皮膚のかゆみが出る家族がおり、化学物質やその安全性を知りたいと思った
化学物質のリスクと、石けんは合成洗剤とどう違うのか
テーマに関 化学物質とか過敏症に関心があった
心があった
県の消費生活センターに勤めているが、柔軟剤の臭いで体調が悪くなる相談を受けてから
以前から、石けん・洗剤について興味があった。TES試験でも洗剤についての知識が要求され、多
少勉強した。
身近なのに知らない分野だったから
以前の業務と関係が深かったから
今回は取り上げられませんでしたが、美容師さんとシャンプーについて色々と話した事がきっかけ
で、リスクコミュニケーションに興味を持ちました。
リスコミに 日頃食品安全のリスクコミュニケーションを業務として行っているので、NACSが開催するワーク
関心があっ ショップに興味を持ちました。
大石委員長からお誘い頂き参加しました。
た
「リスクコミュニケーション」に関心があったから
参加の勧誘があった。リスクコミュニケーションに関心があった
リスコミの大切さを知りたいと思った
案内をみて
仲間からのお誘い
大石さんからのお誘い、支部広報委員会取材
たまたま誘われたので。動機不純→結果オーライ
昨年、消費生活アドバイザーの資格を取ったので、勉強のため
環境委員会からのお誘い
友人に紹介されて
人から誘われて
主催の環境委員会メンバーです
環境委員会の一員として関与
項
目
石
け
ん
洗
剤
の
化
学
物
質
に
つ
い
て
、
前
か
ら
疑
問
に
思
っ
て
い
た
こ
と
は
記載内容
下水処理場への負担はどれくらいか
環境汚染について
人や環境 除菌剤の噴霧式の製品の安全性と効能効果について。
への影響 環境負荷や健康影響がない濃度で効果はあるのか。
人に対して本当に安全なのか。自然界に流れ出たものは本当に安全なレベルなのか。
皮膚への影響
界面活性剤
界面活性剤の含有量が商品により異なり、すすぎ回数等にも違いが出る。化学物質の残量等につ
界面活性 いて疑問を持っていた
剤
1回のすすぎでどうしてOKなのか?
界面活性剤ばかりに注目していて良いの?
抗菌、除菌、消臭などの記載が目立っているが、剤名の記載がほしい。なぜ表記しないのか。
表示
成分表示だけではそれぞれの成分の内容がわからない
化学変化
だけで汚れ 化学変化だけで、本当に汚れがおちるのか?特に風呂用のバスマジックリン等は、「こすらずに落ち
は落ちるの る」とある。
か
長期保管
長期保管における変化
臭い
それ程ないが、消費者ニーズによるのか手早く汚れのひどくなったものをきれいにさせるための強い
洗浄剤が本当に必要かもっとこまめな掃除をすることで、強力な洗浄剤が要らないことを伝えてほし
い。
臭いのこと。臭いばかにならないか
研究が進んでいるので、農薬などと同様に、身体に害のある成分、蓄積されるような化学物質は使
われていないと思っていたが確信がなかった
多少不安に思っていました
石けん洗剤=化学物質という等式に違和感があります。“化学物質”というと日用品より危険物質と
いうイメージになります。
以前から洗剤問題に取り組んでいる方たちは現在どのように考えているのか?
基本的には疑問はなかった。むしろ、使用量との関係が気になっていた
あまり疑問を感じたことはなかった。
新しい技術開発の方向性と消費者が何を選ぶか、普及するかに関心
化学は疑問の山
特にないが、今回出席して興味が出ました
特になし
項
記載内容
目
今
台所洗剤が食衛法の規制あったこと
日
琵琶湖での推進運動の後、石けんVS洗剤論争があったのがなぜ収束したのか分かった
参 人や環境
加 への影響 皮膚接触以外、安全性・環境に与える影響など問題ないと思った
し
メーカーも努力していて環境にやさしい洗剤作りをしていること
て
開発が進んでおり、成分が環境等にとってよくなっていること
わ
界面活性剤にも、より「分解しやすい」ものがある。
か
塩素系のハイターがアルカリ性だった
っ
た
こ 界面活性 界面活性剤の含有量の多少によりすすぎ回数が減るのではなく、界面活性剤の種類による
誤飲時は、吐かせない
と
剤
は
一回ですすぎが済むのは、界面活性剤が衣類に残りにくい形であること
(一回のすすぎでOKなのは)成分が異なるから。
応急措置の注意
誤飲時の対処法や、危険表示が差別化されていること。
リスコミがうまくいった例に洗剤がなっていること。
表示
表示、症状による応急処置の書きぶりが異なる
応急処置の表示区分
誤飲の場合は吐かせちゃだめ
表示で「異常のある場合は医者に」と「医者に」の違い
業界団体からの具体的な情報発信のありか、内容の概要
製品表示の決まりごと、読み解き方
石けん論争から今に至るまでの道すじがリスクコミュニケーションだった
石けん、合成洗剤論争におけるリスクコミュニケーションがよいコミュニケーションとして評価されて
いるということ。確かに現在あまり生分解性などは気にせずに購入、使用しています
基本的にRISKがあると考えてRISKを減らす努力がされているかという視点が必要。
これまでの業界とNACSとのコミュニケーションが意外に少なかったこと
石けん洗剤といっても非常に幅が広く関係法規も多いこと
生分解度について
河川のモニタリングをしていること。
メーカーがリスクコミュニケーションを行っていること
洗剤のリスクコミュニケーションが良い事例であること
私はネガティブなイメージをもっていた
せっけん運動の歴史と、その活かす方向性。
どちらかと言うと私も技術者寄りなので、鈴木さんの御苦労がわかりました。頑張ってください。
化学物質について理解が深まった
合成洗剤も安心して使えそうなこと
項
記載内容
目
最
石けんと洗剤の定義
後
定義
石けん・洗剤・洗浄剤の業界での定義?
ま
石けん、洗剤、洗浄剤の区分
で
わ
洗剤の化学物質は界面活性剤だけ?他の添加物は?
か 界面活性
ら 剤以外のリ 今日は界面活性剤について多く取り上げられたが、その他の原材料のリスク等についてあまりふれ
られていなかった
な
スク
か
界面活性剤だけでなく、他にも注意すべき物質があるのか
っ 長期保管
長期保管における変化。
た
長く同じものを使用しての皮膚への影響
こ
プロモーションは消費者のどの部分を見て決めているのか?消費者はイメージを求めていないので
と
は?プロモーションの考え方が理解できない
は
GHSについてもっと詳しく知りたかった
大矢先生に質問ができなかった
洗剤等について、日本石鹸洗剤工業会に話を聞こうと電話をしたが、「各メーカーに聞くように」と業
界としての考え方等聞けなかったが、消費者の意見を取り入れていきたいと今日は言われていた。
リスコミをやって安全性は認知されたのか
やはり化学物質の安全性・・・。大丈夫と言われても
使い方の説明を読まないと使えないものはやっぱり不完全品?
行政側は過去の「洗剤問題」にどのような意識をもちどう総括されるのか。あるいはそのような事を
考えているか。
消費者が使う分は消費者庁が関わっているが、業務用はどこが主管か?
除菌剤に頼り過ぎて体の抵抗力に影響があるかどうか。
行政の取組み
メーカーや行政のリスクコミュニケーションが今のままでいいのか
表示を改良する手順と時期
製品事故情報
石鹸についての情報はもう少し欲しいと思った。
自然からの材料は安全かどうか?
使用している化学物質はどのように作られ、どのような効果があるのか
私たちが知りたいリスクと事業者が伝えたいリスクにギャップがある。もやもや感は品質表示をみて
も解消しない。
消費者が価格よりも企業の姿勢や努力を評価して買い物をするような社会になるにはどうすればよ
いか・・・。
原材料調達現場での持続可能な配慮の情報提供を今後行おうと
項
目
私
が
こ
れ
か
ら
し
よ
う
と
思
っ
た
こ
と
は
記載内容
表示をよく
読む。疑問
点をメー
カー行政に
声をあげる
表示をよく読み情報を自ら求めていこうと思った
表示をもっとしっかり読む
支部会員への情報発信
使い方をきちんと読むこと
表示を良く見ようと思いました
表示を良く見る
製品の原材料について細かく見ることが必要だと思う。HP等もチェックしようと思った
疑問を疑問のままにしない
説明事項はきちんと読む
製品の表示を読み込むこと
洗剤や柔軟剤の分量を正しく使用するようにする
表示をきちんと読むこと
裏面表示をよく読む
表示をめんどくさがらずに読む。
新情報のキャッチが重要
時間のある時、HPを見て、疑問を直接メール等しよう。
洗剤を買いに行く時、眼鏡を持っていく。
買う時、使う時、しっかり表示を見る。
わからないと思った時は、メーカー・行政に声をあげていく
再度、表示についての勉強のやりなおし
コミュニ これを機に、もう少し業界とのコミュニケーションが図れたら
ケーション 積極的に情報を取りに行く姿勢を忘れないようにしたいということ
化学の勉強
勉強
洗剤・石けんの違いから勉強します
もっと深く勉強したい
消費者教育を広める考え方についてリスクコミュニケーションを活用したい
工業会のWebを見てみようと思います。
得た情報を他の人に伝える
製品をもっとよく見て選ぶ(人任せにしない)
項
目
今
日
の
話
を
、
誰
に
、
ど
う
伝
え
よ
う
と
思
い
ま
し
た
か
記載内容
まず家族、次に友人に、表示を良く見ましょうと伝えたい
家族に話します
まず家族に、一緒に石けん洗剤についてリスクコミュニケーションしてみたい。
家庭と会社のパートさん
息子の妻たちに、そして仲間とのティータイムに。
娘たちに。
まさに石けん運動まっただ中に母がいたので、報告したい
家族、友 とりあえず子供たちとお母さん仲間。夫は手おくれだから・・・。
人、知人 家族、知人
まずは家族
家族、友人、知人、職場の友人
家族、職場の人
家庭に持ち帰りたい
家族へまずは表示を良く見ようねと伝えたいと思います
サークル仲間の主婦に洗剤の情報にもっと関心持つように話す
会社の人
支部会員
話す機会は無いと思うが、日々活動している小中学校の食育授業で、家庭科室の洗剤、薄めて使
用している例が非常に多い。誤った使い方だと思う。
NACS会員
とりあえずNACSの所属している分科会員と共有したい
NACSの会員 家族
委員会メンバーにつたえます
洗剤の変化
N.A.
N.A.
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