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農大卒業生の就農事例集を作成しました
就農している農大卒業生の 事 例 集 ~岩手の大地で輝いています~ 平成 27 年 11 月 岩手県立農業大学校 発行にあたって 歴史と伝統のある本校の卒業生は県内の農業の第一線で活躍しており、まさに本県の農 業の担い手として各地で輝いております。 本事例集では、特に若手の卒業生に焦点をあて、本人に現在の就農状況を記載していた だくとともに、後輩向けのアドバイス、メッセージをいただきました。また、本人に直接 取材し、現場の生の声も聞きながら就農事例集としてまとめたものです。 取材していて、 「農大時代のネットワークが就農してからも大いに役立っている」、 「今で も同級生や先生方と連絡をとっている」ということが異口同音に聞かれました。農大時代 の 2 年間は短いですが、寝食をともに「ともに学び」、「ともに汗して実習する」ことは、 かけがいのない財産として一生の宝物になるものだと思います。 事例集は、在校生のメッセージや在学時代に学んでおけば良かったこと、農大で学んで 良かったことなど、卒業生の視点で農大生へのアドバイスがぎっしり詰まったものです。 本校卒業生が農業の担い手として各地域でさらに発展するとともに、この事例集が本校 学生にとって実り多い学生生活にするための一助となることを祈念しております。 平成 27 年 11 月 岩手県立農業大学校 校長 下村 功 目 次 1 佐藤義剛(H24 年度農産卒、一関市) .................................................................... 1 2 伊藤敬治(H20 年度農産卒、北上市) .................................................................... 2 3 古川佑史・智沙(H16 年度野菜・花き卒、八幡平市) ........................................... 3 4 高野寛子(H12 年度果樹卒、奥州市) .................................................................... 4 5 中里 敬(H12 年度果樹卒、二戸市) .................................................................... 5 6 北村 学(H24 年度花き卒、久慈市) .................................................................... 6 7 馬場 淳(H21 年度花き卒、二戸市) .................................................................... 7 8 廣澤恵美(H16 年度花き卒、大船渡市) ................................................................ 8 9 梶本希・美香(H13 年度酪農卒、八幡平市) ......................................................... 9 10 山崎 敏(H12 年度酪農卒、H13 年度研究卒、岩泉町) .................................... 10 11 嵯峨裕紀(H17 年度肉畜卒、H18 年度研究卒、盛岡市) ..................................... 11 佐 藤 義 剛(さとうよしたけ)氏 卒業年:平成 25 年 3 月 専攻:農産 住所:一関市 1 現在の経営概要 水稲 12ha、作業受託 5ha、麦大豆 3ha 2 経営での担当部門、取組状況、経営の特徴など 現在は、父、祖父とともに水稲、麦、大豆全般の作業を担当しています。 このほか地域の転作受託を行っている農事組合法人一関プロファーのオペレータも担当しており、 いろいろな方から就農に必要なことも学んでいます。この法人は 50~60 代の方が中心で、私は最も 若いオペレーターになります。 また、夏季間は農大時代に取得したラジコンヘリコプターの資格を生かして、ラジヘリによる水稲 防除作業のお手伝いもしております。高齢化等による地域での水稲防除のニーズが高いことから、今 後、私も含め農大の農産専攻 OB3 人でラジヘリによる防除の受託組織を立ち上げる予定です。 3 就農しているなかでの苦労、良かったこと ○ 苦労したことは、技術を覚えること。技術は、父や現在オペレータを務めている農事組合法人で 修得しています。 ○ 就農して良かったことは、いろいろな人に会えることです。 4 農大での学生生活(役に立っていること、もっと勉強しておけばよかったこと、思い出など) ○ 私はもともと口下手ですが、全寮制のなかで学んだコミュニケーション、人付き合いが大いに役 立っています。また、ラジヘリの資格取得も、地域での防除を担う即戦力として大いに役に立って います。 ○ 5 簿記など経営的な部分は、もう少し勉強しておけば良かったです。 将来の夢、目標 現在の面積を 20ha 以上に拡大していきたい。また、野菜や果樹など徐々に米以外の品目も導入し ていきたいです。 6 在校生への激励メッセージ 農大時代は、いろいろ遊び歩いたことが思い出として残っています。 いろいろな人とのネットワークを広げてください。また、実習だけで なく、座学もしっかり学んでください。 7 HP、ブログ、Facebook の有無 Facebook に登録しています。 8 取材後記(取材職員記入) 佐藤義剛さんは、高校や農大から続けているサッカーが趣味、現在も市内の社会人チームに参加し ているというスポーツマンです。さわやかな笑顔が印象的でした。地域の担い手の中心が 60 代とい う中で、地域の法人組織の最も若いオペレータとして活躍しており、また、今後、農大 OB3 人でラ ジヘリの防除組織を立ち上げる予定であるなど、笑顔のなかにも自分の役割を自覚し、地域農業を守 っていこうという意欲も伝わってきました。地域からも大いに期待されています。 1 伊 藤 敬 治(いとうけいじ)氏 卒業年:平成 21 年 3 月 専攻:農産 住所:北上市 1 現在の経営概要 水稲 24ha、作業受託 3ha、果樹(りんごなど)2ha 2 経営での担当部門、取組状況、経営の特徴など 水稲とりんごの複合経営ということで、1 年を通して仕事があります。特に秋は水稲とりんごの作 業が競合するため、品種の組み合わせなどにより作業の分散を図っています。 農大卒業後は、2 年間農業研究センターで働きながら、稲作の技術を深めました。現在は、両親と ともに水稲、りんごの作業全般を行っていますが、水稲は代掻き、籾摺りなどを主に担当しています。 このほか岩手県農村青年クラブ連絡協議会の事務局長として、行事の企画・運営やイベント対応な どもこなしています。農村青年クラブでは、定期的な情報交換のほか現地研修や農産物直売などのイ ベント対応があり、活動を通して色々な人脈ができとても役に立っています。 3 就農しているなかでの苦労、良かったこと ○ 農業は自然相手であり、安定した収量を確保することの難しさ、また、今のところ JA 出荷が中 心ですが、米価も下がり気味で市場リスクもひしひしと感じます。 ○ 就農して良かったことは、四季折々の大自然の中で作業ができる。マイペースで仕事ができる。 作ったものをお客様から「美味しい」と言ってもらったときは、とてもうれしく、また、頑張ろう と思います。 4 5 農大での学生生活(役に立っていること、もっと勉強しておけばよかったこと、思い出など) ○ 学生時代の友人とは今でも仲良くしています。実習は大いに役立ちました。 ○ 経営管理や機械操作についてはもっと勉強しておけば良かったと思います。 将来の夢、目標 担い手が減少している中で、自分たちだけがいいのではなく、地域のために役立つようになりたい と思います。 現在の経営に加えて新たな品目(加工用果樹、麻など)を導入したい。 6 在校生への激励メッセージ 農業を始めるにはこれからがチャンスです。そのための技術、知恵、仲間を農大で手にいれましょ う。就農する前提で学ぶのならばもっと積極的に学習時間以外でも先生たちに話を聞いたほうがいい と思います。 7 HP、ブログ、Facebook の有無 Facebook に登録しています。また、岩手県農村青年クラブ連絡協 議会の Facebook、ブログもありますので、そちらも見てください。 8 取材後記(取材職員記入) バイクで走ることが趣味ですが、果樹園などの作業にもバイクでい くそうです。さっ爽としてカッコいいですね。農村青年クラブでは、 事務局長として一番忙しい役割を引き受けて、全体に目配りしながら 縁の下の力持ちとして頑張っています。自分だけ良くなるのではなく、地域が良くなるように努力し ていきたいという、まさに宮沢賢治の精神で頑張っている爽やかでしっかりした青年でした。 2 古 川 佑 史(ふるかわゆうじ)・智 沙(ちさ)氏 卒業年:佑史氏 平成 17 年 3 月 専攻:野菜 住所:八幡平市 (智沙氏 平成 17 年 3 月 専攻:花き) 1 現在の経営概要 水稲 6ha、大豆 30a、露地野菜 80a、施設野菜 20a。野菜はミニトマ ト、かぶ、大根、とうもろこし、いちご、ねぎなど約 20 品目を栽培 2 経営での担当部門、取組状況、経営の特徴など 10 人の 5 世代の大家族の中で、両親と農大同期の妻とともに農業をしています。野菜は主に盛岡 市内と八幡平市内の直売施設で販売しています。栽培方法は、有機系の肥料を中心に、また、湧水を 使ったりして「味」にこだわっています。直売所ではやはり価格を安くしすぎる人がいたり、なかな か価格設定が難しいです。でも、消費者からのおいしいとの反応もあり系統出荷とはまた違った楽し みもあります。 このほか乾燥野菜の製造も行っており、ドライトマト、ドライ苺、干し大根など。また、新しい取 組として宮城県の大豆会社と契約栽培を始めています。 3 就農しているなかでの苦労、良かったこと ○ 実際に就農してみて利益が思うように上がらないことが大変です。 ○ 就農して良かったことは、自分のねらいどおりにいった時、好きなことを突き詰めていくこと。 まさに農業もモノづくりですが、モノづくりが大好きです。 4 農大での学生生活(役に立っていること、もっと勉強しておけばよかったこと、思い出など) ○ いろいろな野菜を見たり、体験的に栽培できたことが役に立っています。また、寮生活が楽しか った。友人ができたこともとても良かったです。 ○ 農薬の仕組、作物生理など、理論的な部分をもっと学んでおけば良かった。例えば、農薬散布す るにしても農薬の仕組、作物生理がわかっていれば、一番効きやすい散布方法ができるのではない かと思います。 5 将来の夢、目標 地域農業の中で若い人は自分たちくらいしかいません。将来的には、地域の農業を自分たちで引き 受けたり、担ったりすることができればいいなと思います。 6 在校生への激励メッセージ 農業の未来は、自分で作るしかありません。国でも親でもありません。自分の意思をもってくださ い。世の中には、人まかせの人が多い、行政が悪い、農協が悪いなど 他人のせいにする人が多いが、自らの意志で切り開いてください。 7 HP、ブログ、Facebook の有無 Facebook に登録しています。 8 取材後記(取材職員記入) パートナーの奥様は、花き専攻の同期生だそうです。農大卒業後ほ どなく結婚し、現在は 3 人の子供さんを育てながら、佑史さんのよきパートナーとして、農作業を手 伝っています。佑史さんの趣味、特技は太鼓だそうです。集落や市の主催する盆踊りなどでも活躍し ているそうです。 訪問した時は、ちょうど直売所に出荷するための野菜を袋詰めしていましたが、B 品のミニトマト を長ねぎの細長い袋に入れて売っていました。見た目で差別化、いろいろ考えて販売しています。ま さに自分で創意工夫、模索しながら経営を切り開いていました。 3 高 野 寛 子(たかのひろこ)氏(旧姓渡辺) 卒業年:平成 13 年 3 月 専攻:果樹 住所:奥州市 1 現在の経営概要 りんご 9.1ha、りんご苗木 0.7ha、りんご育種 0.4ha 2 経営での担当部門、取組状況、経営の特徴など 3 児の母として、また、紅果園の共同経営者として、育児から経営全般を夫とともに担っています。 経営の特徴としては、①スマートフレッシュ(鮮度保持剤)処理をしたりんごの周年販売、②紅果 園オリジナル品種(紅ロマン、ゴールドロマン、奥州ロマン、藤原ロマン)による差別化、③りんご ジュースなどの加工品のほかに、藤原ロマンのセミドライフルーツなど積極的な 6 次産業化、④苗木 生産を行うことにより品種更新が容易、消費者ニーズに対応しやすく、また、冬場の従業員の周年雇 用が可能など。 3 就農しているなかでの苦労、良かったこと ○ 大規模なため、現場管理から経理、営業と幅広い業務があり、経営者としての意識改革が必要な こと。 ○ 4 5 良かったことは、りんごを通して、様々な人に出会えること。 農大での学生生活(役に立っていること、もっと勉強しておけばよかったこと、思い出など) ○ 役に立っていることは、学生時代に出会えた友人や先生方とのつながり ○ 農業経営、土壌学、肥料学。技術は現場で覚えられるが、理論的裏付けを学んでおけば良かった。 将来の夢、目標 次の世代にも江刺ブランドを盛り上げてつなげていきたい。 6 在校生への激励メッセージ 自分自身を振り返ると、農大で過ごした2年間はとても充実していました。友人や先生方にも恵ま れ、りんご作りの面白さを感じることができたのは、ここで過ごした2年間があったからだと確信し ています。農大は、様々な分野の先生方が集まっている恵まれた環境です。色々なチャレンジができ るチャンスの場所だと思います。チャレンジして、失敗して、学ぶことができるのは学生生活の特権 なので、ぜひ学生の皆さんには、様々なことにチャレンジ、挑戦してもらいたいと思います。 そして今、農業は様々な側面を持つ産業へと変わってきています。「地方創生」は地域の基幹産業 である農業が大きな役割を担い、それに伴って他産業との連携が必要不可欠となっています。既存の 農業経営者ではない、新たな発想ができる農業経営者が求められている 中、自分の個性が生かせる農業という職業はやりがいのある誇れる職業 です。ぜひ、あなたの個性を地域の農業に生かして、一緒に岩手の農業 を盛り上げましょう。 7 HP、ブログ、Facebook の有無 Facebook に登録しています。 8 取材後記(取材職員記入) 神奈川の非農家から就農の夢をかなえるため、農大に入学し、現在、県内でもトップクラスの果樹 園の共同経営者として夢実現に向けて頑張っています。嫁の立場から共同経営者になり、経営全般の ことを目配りするようになるといろいろ経営管理も必要になり、苦労は絶えないようですが、その分 やりがいもあるようです。高校生当時、就農したいという進路変更に対しては御両親は猛反対したそ うですが、今の寛子さんの姿を見て喜んでいるそうです。これがなにより成功した姿を物語っている のではないでしょうか。江刺りんごの担い手としてますます活躍していくことが期待されます。 4 中里 敬(なかさとたかし)氏 卒業年:平成 13 年 3 月 専攻:果樹 住所:二戸市 1 現在の経営概要 りんご 5.0ha、ブルーベリー80a 2 経営での担当部門、取組状況、経営の特徴など 農大を卒業後、岩手県農業研究センターの臨時職員勤務を経て就農。りんご、ブルーベリーは父親 の代から始めたものですが、自分なりにどうすれば経営が発展するか考え、父親とは異なった 6 次化 の方向を現在も模索しています。ブルーベリーを真空低温濃縮法という方法で火を使わずに、果実の 香りや味を落とすことなく加工、うまさを凝縮した「ブルーベリーのことこと煮」を商品化。りんご も同じ手法で「林檎のころころ煮」も商品化。このほかりんごのドライフルーツなどさまざまな商品 化に取り組んでいます。商品化で難しいところは、イメージ通りにならないこと。商品開発にあたっ ては、加工業者やアドバイザー、小売業者の方々も交えて、試食していただきこれでいけると思った ものが商品となりますが、なかなか商品化への道も簡単にはいかないものです。 3 就農しているなかでの苦労、良かったこと ○ 就農してみて、会計処理も全て私が行っているが、売り上げが思うように利益につながっていな いことがわかりました。利益アップの難しさがあります。 ○ 就農して良かったことは、色々な人と出会えることです。りんごやブルーベリーの商品開発の過 程ではいろいろな方に御世話になり、また、これらの取組みを通じて、人とのつながりが広がりま した。沖縄のレモンと私のりんごを使ったコラボ商品もその一つです。 4 農大での学生生活(役に立っていること、もっと勉強しておけばよかったこと、思い出など) ○ クラスメートとのつながり、ネットワークは今でも役に立っています。 ○ 農大でもっと勉強しておけば良かったことは、いろいろありますが、病害虫防除、土壌関係につ いては、就農してから特に感じるところです。 5 将来の夢、目標 二戸市は農業が中心産業になっており、それらの農業を担っているという誇りを持ち、他産業にも 負けない「農家」として評価されるように頑張りたい。また、若い人の雇用などを通じて地域への恩 返しもしたい。 6 在校生への激励メッセージ 学生時代はいろいろと遊んだ方がいいです。就農すると忙しくて遊ぶ暇がありません。 専門知識やほかのことも含め広く勉強すること、ネットワークづく りも就農する上では重要です。 7 HP、ブログ、Facebook の有無 「権七園」 (屋号)の Facebook あります。 8 取材後記(取材職員記入) 7 年前にも一度学生と一緒に訪問させていただきましたが、現在は 結婚し、子供さんも 3 人おり、また、経営者としても一段とたくま しくなっているように感じました。加工部門は敬さんが就農してから本格的に始めたもので、消費者 のニーズやターゲットを絞り込み、他商品とは異なった差別化も必要ということで、いろいろ苦労も あるようです。まさに今後の農業者に必要な「マーケットイン」という考え方がすっかりなじんでい るようです。今後の二戸の果樹振興を引っ張っていく担い手として期待しています。 5 北 村 学(きたむらまなぶ)氏 卒業年:平成 25 年 3 月 専攻:花き 住所:久慈市 1 現在の経営概要 雨よけほうれんそう 32a(ハウス 16 棟) 2 経営での担当部門、取組状況、経営の特徴など 農大では花きを専攻しましたが、卒業後に地元のほうれんそう農家で 1 年間研修した時に、久慈地 域で専業農家になるためには、ほうれんそうか菌床しいたけしかないとアドバイスを受け、ほうれん そう専業農家を目指すことにしました。 研修を経て H26 年 9 月からほうれんそうを栽培開始。本格的に栽培するのは今年(H27)がはじ めてとなります。栽培をやめた農家から農地とハウスを引き継ぎましたが、当初は雑草がかなり繁茂 していたため、植え付ける状態にするのが大変でした。病害虫にも悩まされました。現在は、家族な ど 4 人で年間 5 回転の栽培を目指しています。4H クラブやグリーンバズ(ほうれんそう栽培者の技 術研さんのグループ)にも積極的に参加し、技術対策、病害虫防除などを学んでいます。 3 就農しているなかでの苦労、良かったこと ○ 非農家出身なので、就農するまでが大変でした。特に農地やハウスを探して売買が成立するまで が大変。農地や施設は就農支援資金や農協資金を利用して取得しました。 ○ 就農して良かったことは、自分の農地で自分のほうれんそうを出荷できること。とてもやりがい のある仕事だと思います。 4 農大での学生生活(役に立っていること、もっと勉強しておけばよかったこと、思い出など) ○ ピザ窯を作り、ピザを焼いてクラスメートなどに振る舞ったりしたことが、思い出として残って います。農大で人と人のつながりができたこと、日々勉強・実習に励んだことが今役立っています。 ○ 経営関係(簿記など)の勉強や専攻以外の作物の栽培など、浅くてもいいから広く勉強しておけ ば良かったなと思います。 5 将来の夢、目標 品質の良い、クレームのこないほうれんそうを栽培したい。将来的には規模を 1ha まで拡大する。 研修先の農家は管内でもトップクラスになるが、追い越して久慈地域でのトップを目指したい。 6 在校生への激励メッセージ あっという間の卒業となります。1 日は 24 時間しかありません。全 力で遊んで、全力で勉強してください。 7 HP、ブログ、Facebook の有無 なし。 8 取材後記(取材職員記入) 北村さんは社会人を一度経験しましたが、就農するために農大に入 学し、青年就農給付金なども有効に活用し、昨年度から就農という夢の第一歩を力強く踏み出してい ます。1 年間、栽培の研修をしたこともあり、ハウスではりっぱなほうれんそうが生育していました。 農大出身で非農家から農業に参入するケースはあまりないのですが、一つのモデルとして成功し、後 輩への道筋を示してもらえると思います。ほうれんそうは手作業が中心のため、大変な部分はありま すが、父親をはじめ家族全員が応援してくれており、経営が軌道に乗るのに時間はかからないと思い ます。久慈ほうれんそうの担い手として期待します! 6 馬 場 淳(ばばまこと)氏 卒業年:平成 22 年 3 月 専攻:花き 住所:二戸市 1 現在の経営概要 水稲 20a、水稲育苗受託、スプレーマム 25 万本、小菊 10a 施設野菜 40a、露地野菜 1ha 2 経営での担当部門、取組状況、経営の特徴など 農大を卒業後、すぐに実家で就農しました。家ではスプレーマム、小菊などの花きを中心にした経 営ですが、春先は水稲育苗(受託)、夏場は花き栽培、秋から冬にかけては、促成アスパラやほうれ んそう、春菊など年間を通してビニールハウスをフルに活用した生産効率の高い経営を行っています。 二戸市には施設栽培農家が少なく、冬場の産直は品薄であり、野菜などの供給量が追いつかないのが 現状であるため、現在は、水稲部門を縮小し、冬春季の野菜を拡大する方向で取り組んでいます。 経営理念として思っていることは、農業を通して、お客様に笑顔と感動を届けるということ、農業 から地域を元気にしていきたいということです。 3 就農しているなかでの苦労、良かったこと ○ 農業は自然相手ということもあり、新品目を導入した当初は思うように収量が確保できない。試 行錯誤しながら軌道に乗るまでに何年かかかるということが難しいところです。 ○ 就農して良かったことは、農業はやりがいのある仕事。自然の中でのびのびと仕事ができる。自 分で意思決定して仕事ができることなど。 ○ お客さんから自分の販売した花について「良かった」などの言葉をかけてもらった時はとてもう れしいです。 4 農大での学生生活(役に立っていること、もっと勉強しておけばよかったこと、思い出など) ○ 良かったことは、先生をはじめクラスメートなどいろいろな人脈ができたことです。いまでもつ ながりがあり、役に立っています。 ○ 農大時代にもう少し実践的に実習などできればと思っています(段取りから一連の作業を自分で する) 。また、経営やマーケテイングも必要です。 5 将来の夢、目標 将来的には、地域からの雇用も受け入れるなどしながら規模を拡大し、農業で地域を元気にしてい きたい。やりがいのある農業をしていきたい。 6 在校生への激励メッセージ 恥をかくことを恐れずに、積極的にいろいろなことに取り組んでい ってください。 7 HP、ブログ、Facebook の有無 Facebook あります。 8 取材後記(取材職員記入) 馬場さんは、農大 2 年生の時に 23 歳以下の若者がものづくりやサービスの技術を競う技能五輪全 国大会「フラワー装飾」部門で銀賞(準優勝)を受賞しました。現在もその特技を生かし 4H クラブ の会長として二戸市と連携しながら、来年の国体に向けて町内にハンギングバスケットで彩りをそえ る取組を進めています。馬場さんは、いろいろなアイデアを持っており、創造力がとても豊かで、行 動力もあります。自分の経営についても色々な構想を持ち、積極的に経営改善を進めています。また、 地域活動などにも積極的に関わっており、今後、二戸市の農業の力強い担い手になっていくことでし ょう。 7 廣 澤 恵 美(ひろさわめぐみ)氏 卒業年:平成 17 年 3 月 専攻:花き 住所:大船渡市 1 現在の経営概要 花壇苗 26a(ハウス 10 棟) 、年間 15 万鉢出荷 2 経営での担当部門、取組状況、経営の特徴など 我が家の経営は、ビニールハウスで多種(約 80 種類)の花壇苗を生産しています。生産鉢数のう ち、農協を通して関東・東北の市場への出荷が7割、地元の産直などでの販売が 3 割です。父、母、 私のほかに、4 人くらいのパートさんにも手伝ってもらって作業をしています。 特に出荷が多い時期は春と秋です。秋は、大船渡市の夏の涼しさを生かして生産したガーデンシク ラメンなどを 9 月頃から主に関東の市場へ出荷します。春は多品目を生産し、地元での販売に力を入 れています。 このほか気仙地方農村青年クラブ連絡協議会では副会長として、仲間づくりや、情報交換などにも 積極的に参加しています。同世代の農業者との交流はとても楽しく、励みになります。 3 就農しているなかでの苦労、良かったこと ○ 花は野菜と異なり、一品目で長期出荷が難しく、年間を通してバランスよく組み合わせていくこ とがポイントです。また、花には出荷適期がありそれを逃すと安くなったり、きれいに咲いてくれ ないなど難しいところがあります。 ○ 就農して良かったことは、花を管理することができて毎日が楽しいです。農業は自分のペースで できることもいいところです。また、花苗を買った消費者からの「きれいに咲いた」というような 声を聞くと、うれしくなります。 4 農大での学生生活(役に立っていること、もっと勉強しておけばよかったこと、思い出など) ○ 寮生活がとても楽しかったことが思い出として残っています。良かったことは、いろいろありま すがネットワーク、人とのつながりができたことです。 ○ 農大時代は、実習などで疲れて座学はなかなか身に入りませんでしたが、実際に農業をしている と、もう少し栽培の裏付けとなる理論的なことをしっかり勉強しておけばよかったなと思います。 5 将来の夢、目標 市場出荷と地元での販売を両立させることにより、経営の安定化を図ります。また、地元の消費者 に品質の良い花苗の提供やガーデニングの楽しみ方を提案することにより、花の魅力を知ってもらい、 地元で販売拡大をしたい。 6 在校生への激励メッセージ 私にとって、農大で経験した様々なことは、今でも大切な思い出に なっています。皆さんも学生生活を楽しんでください。 7 HP、ブログ、Facebook の有無 なし 8 取材後記(取材職員記入) 廣澤園芸は、恵美さんのお父さんが約 20 年前に花壇苗を中心に新規に立ち上げましたが、現在は 御両親とともにさらに経営を発展させるべく頑張っています。ハウスは自宅からは約 10km 離れたと ころにありますが、1 年を通してほとんどが花のハウスにいるそうです。取材している時も花につい て触れるときは生き生きと話してくれ、本当に花が好きなんだなと感じました。また、農業者として の実績を確実に積み上げ、平成 23 年 11 月に大船渡市の女性農業委員に就任されたほか大船渡市復興 推進委員会の委員にも就任され、女性の視点で復興や地域農業の発展に向けて活動されています。 8 梶 本 希(かじもとのぞみ)・美香(みか)氏 卒業年:平成 14 年 3 月 専攻:酪農 住所:八幡平市 美香氏 本科 平成 14 年 3 月、研究科 平成 15 年 3 月 専攻:酪農 1 現在の経営概要 経産牛 34 頭、育成牛 20 頭 2 経営での担当部門、取組状況、経営の特徴など 農大を卒業後、農大で実習助手として酪農についての実践的な技術を学び、就農することを夢見て いました。パートナー(妻)も牛が好きだったこともあり、本科卒業後、それぞれ酪農の技術を磨き、 結婚して八幡平市でヘルパーのかたわら小さな牛舎を借りてようやく牛飼いをスタートすることが できました。私たち 2 人とも非農家出身です。非農家から酪農を開始することはとても難しいと言わ れていますが、農大やヘルパー時代の人とのつながりから多くの人に支援していただいたおかげと思 っております。 現在は、八幡平市で廃業した牧場を引き継ぎ、34 頭(経産牛)の酪農専業農家として頑張っていま す。さらに、妻が中心になり夢であった乳製品の加工にも取り組み、自家産の牛乳を使った十数種類 のジェラートを商品化しており、イベントなどで販売しております。盛岡市の小綿商店では常時販売 しております!ぜひ食べてみてください!! 3 就農しているなかでの苦労、良かったこと ○ これまで酪農をしていて苦労と思うことはないです。毎日午前 3 時に起きて牛の管理をしていま すが、それも慣れ毎日が楽しいです! ○ そのためには、経営でいろいろな工夫をしています。我が家の最大の特徴は、粗飼料生産、育成 牛などは全てアウトソーシング(委託)していることです。アウトソーシングすることにより、2 人の作業は飼養管理に専念でき、ゆとりある生活ができます。 4 農大での学生生活(役に立っていること、もっと勉強しておけばよかったこと、思い出など) ○ いろいろな人に出会ったことです。酪農はもちろんですが、分野の違う米や野菜の仲間とのつな がりも役に立っています。 ○ もっと勉強しておけば良かったことは、特にないです。正確にいうと、一通り座学でも実習でも 学んでもすぐには役に立たない、実際に就農する中で技術が磨かれると思います。 5 将来の夢、目標 酪農をはじめとした農業は八幡平市の基幹産業です。自分だけ良ければいいのではなく、酪農を通 して他産業ともつながりを持ち、地域の活性化を図りたい。 6 在校生への激励メッセージ 長期的な目標を持ち、決断すること。私も酪農家を夢見て計画を立 てたが、25 歳の時に酪農家としてやろうと決断し、現在に至っている。 7 HP、ブログ、Facebook の有無 Facebook あり「Nozomi kajlmoto」で検索してください。 8 取材後記(取材職員記入) 奥様の美香さんは農大時代のクラスメートです。現在、第 3 子を身ごもっているということで牛舎 にはこれませんでしたが、濃厚な味として評価が高いジェラートの商品開発など手がけています。2 人ともとても明るい人柄で、話しているだけで酪農の未来が明るく、楽しくなり、元気をもらえます。 非農家から酪農家になった成功事例です。酪農で就農を目指している人はぜひとも見学してみてくだ さい。 9 山 崎 敏(やまざきさとし)氏 卒業年:本科 平成 12 年 3 月、研究科 平成 13 年 3 月 専攻:酪農 住所:岩泉町 1 現在の経営概要 乳牛 経産牛 35 頭、育成牛 15 頭、草地 19ha 2 経営での担当部門、取組状況、経営の特徴など 農大を卒業後、北海道で 1 年半酪農の研修をして地元に戻り酪農経営を引き継ぎ、現在は家族 5 人 で従事しています。就農後草地面積を拡大し、自給率を 100%にし、今の規模で最大限の生産を目指 しています。乳牛改良にも力を入れており、自分で人工授精をしながら乳牛を改良し共進会の出品を 目指しています。また、就農してからは経営関係はもちろんのこと、飼育牛 1 頭ごとの繁殖データな ど細かなことも全て記録し管理しています。飼養管理や経営管理で問題点が見つかったときは、必ず 過去のデータを詳細に検討することにより、解決策が見いだされ、収益の進捗管理や雌子牛の出生率 を高めること、牛の繁殖成績など大いに役に立っています。この結果、1 頭あたりの産乳量が 9,500kg、 平均分娩間隔は 400 日という成績が可能になりました。 また、地域では酪農家の研究グループを組織し、乳質改善、草地などさまざまなテーマに対して普 及センターとも連携しながら改善に取り組んでいます。 3 就農しているなかでの苦労、良かったこと ○ 実際に経営者として、経営をしてみて、金銭面や労働力をうまく確保して回していく難しさを感 じました。利益を上げることの難しさを実感しました。 ○ とにかく働くことで牛や草地から利益が返ってくることを知りました。働けば働くほど豊かにな ることだと思います。やる気、本気でやれば必ず利益は上がってきます。 4 農大での学生生活(役に立っていること、もっと勉強しておけばよかったこと、思い出など) ○ 基本的な勉強をできたこと、たくさんの友人ができたことが良かったです。 ○ 今でも当時の教科書を読み返すことがある。本当に基本は大事だと思うので、もっと熱心に勉強 しておけば良かったと思います。 5 将来の夢、目標 岩泉町の生乳の半分は、私の住んでいる大牛内地域で生産していますが、担い手が高齢化していま す。若い担い手を育てていきたいと思い、小中学校の酪農体験や出前授業なども引き受けています。 我が家の長女にも、若き酪農の担い手として活躍することを期待しています。 6 在校生への激励メッセージ 農業で家族を養っていくことは、本当に大変な時代ですが、肝を据 えて強い信念を持って頑張ってほしいと思います。 7 HP、ブログ、Facebook の有無 なし。 8 取材後記(取材職員記入) 山崎さんは 4 世代が同居する 8 人家族です。奥様とは北海道研修の 時に出会ったことが縁になったそうです。子供さんは 3 人とも娘さん。長女には北海道のリードマン コンテスト(牛引きのコンテスト)に出場させたいと、将来の後継者としても期待していました。山 崎さんは全ての記録をデータとして残しているそうですが、これらがいろいろな場面で役に立ってい るとのことです。質問に対しても裏付けられたデータをもとに自信をもってテキパキとお話ししてい ただきました。まさに、これからの農業経営者として最も重要な経営マネージメントを実践している ことはぜひとも見習いたいものです。 10 嵯 峨 裕 紀(さがゆうき)氏 卒業年:本科 平成 17 年 3 月、研究科 平成 18 年 3 月 専攻:肉畜 住所:盛岡市玉山区 1 現在の経営概要 和牛繁殖牛 50 頭、子牛 30 頭、削蹄師として年間 1,600 頭の削蹄 2 経営での担当部門、取組状況、経営の特徴など 農大研究科を卒業後にすぐに就農。和牛繁殖経営を両親とともに経営。経営の特徴としては、放牧 を取り入れたり、フリーストール牛舎(外壁なし)の活用、手づくりによる牛舎の増棟により省力化、 低コスト化を図っている。技術面では、早期母子分離による分娩間隔の短縮にも試行錯誤しながら取 り組んでおり、平均分娩間隔は 385 日くらいと地域平均より短い。また、昼間分娩技術を導入したこ とにより、約 9 割は日中に分娩しており、夜間の分娩作業という苦労は回避できています。 一方、繁殖牛の管理のほか、削蹄師としても年間約 1,600 頭の牛の削蹄を行っています。 「第二の 心臓」といわれる蹄は牛の健康管理にも重要で、乳牛などは管理を怠ると乳量減につながると言われ ている。削蹄は農大 OB の先輩と協力しながら地域貢献の意味合いも込め続けていきたいと考えてい ます。 3 就農しているなかでの苦労、良かったこと ○ 学んだことと実際に現場に入ったときの技術のギャップがあること。例えば、「早期母子分離」 の飼養管理は農大で学んだことがすぐに現場に生かせると思ったが、現場に生かすためには子牛の 飼育状況を観察しながらそれぞれの状況に応じた管理が必要であり、試行錯誤しながら実際に役に 立つ技術として習得するまでに 3 年くらいかかった。 ○ 就農して良かったことは、最初は苦労したが、自分の思うような生産物を生産し、評価していた だいたとき。 4 農大での学生生活(役に立っていること、もっと勉強しておけばよかったこと、思い出など) ○ 学生時代の友人とは今でも連絡を取り合い、励ましたり、情報交換している。農大での実習は大 いに役立った。 ○ 現場で役に立つ技術を覚える必要がある。そのためには、実習にも主体的に取り組み、いろいろ 失敗してみることがよいと思う。 5 将来の夢、目標 当初は家を継ぐことが目標だったが、地域の畜産農家が減少、衰退しているのを見ると何としても 増頭しながら地域の畜産を盛り上げていきたいと思いました。また、繁殖牛では腕を磨き県内でもト ップになりたいと思っています。 6 在校生への激励メッセージ 農大では、特に就農を志す人は、仲間づくり、そして先生方とのつ ながりが大事です。一生物の出会いがあるのが農大だと思います。そ して、学生生活を楽しんでください。 7 HP、ブログ、Facebook の有無 Facebook に登録しています。また、岩手県農村青年クラブ連絡協 議会の Facebook、ブログもありますので、そちらも見てください。 8 取材後記(取材職員記入) 当日は生後 1 か月の息子さんもおりました。奥様との出会いも農大が縁になっているそうです。嵯 峨さんは、現在の岩手県農村青年クラブ連絡協議会の会長としても活躍。青年クラブは、いろいろな 情報交換、悩みを語り合ったり、また、息抜きの場でもあるそうです。就農する人はぜひとも 4H ク ラブへとのこと。また、月間アキュートには「うし日記」をかれこれ 5 年間執筆していますが、読者 からも反響があり、元気をもらっているそうです。自家の経営、削蹄師の仕事、4H クラブなどなど 多忙な中でも、全て前向きに取り組むバイタリティあふれる青年です。 11