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清川メッキ工業株式会社(PDF形式:1070KB)
ISO 900 1 ISO 事例 No. 140 01 08 老舗メッキ会社が取り組む 先進イノベーション改革 マネジメントシステムで従業員の新卒退職率が激減 清川メッキ工業株式会社は、誰も思いつかなかった 独創的なナノめっき技術による製品の小型化で、省資源、省エネ化を進め 地球環境を守り、いつの時代もお客様に必要とされ、 満足、感動を与える技術を提供し続けています。 清川メッキ工業株式会社 「MS」という)の効果はすぐに得られたわけ ではありませんでした。 I マネジメントシステム活用で I 従業員の新卒退職率が激減 代 表 者:清川肇 清川専務が、大手電機メーカから清川 資 本 金:4,000万円 メッキ工業(株)に戻ったとき、ISOの取り 業務内容:めっき加工業 従業員数:230名(グループ合計) 組みについてある違和感を覚えました。大 所 在 地:福井県福井市和田中1-414 手の仕組みを参考に作ったものの、やや形 URL:http://www.kiyokawa.co.jp/ 式的な面があると感じたのです。 ISO9001認 証取得 か ら3年、社 内 のMS に 対 す る 理 解 が 進 ん だ タ イ ミ ン グ で、 ISO14001にも取り組むこととしました。こ ●1994年:ISO9 0 01認証取得 ●1997年:ISO14001認証取得 の際専務はメーカ勤務時のMSの経験を生か ●20 08年:ISO/IEC17025認定取得 ●2010年:ISO14001-ASRP(Advanced Surveillance and Recertification Procedures) 適合合格 し、業務マニュアルの抜本的改善を進めるこ ととしました。形式的ではなく、実効的で独 自色のあるマニュアルを目指しました。 特に、人材育成には力を入れました。世 I めっき業界初の I ISO9001認証取得 後すぐに辞めてしまうのが実状でした。さ の中では即戦力を求める傾向があります らに1991年頃、バブル崩壊が同社にも追い が、同社はじっくり時間をかけて教育する 打ちをかけました。 方針です。六つの「人ざい」と六つの「きょ 清川メッキ工業株式会社は、1963年創 このような厳しい環境の中、清川社長は う育」という独自の教育システムを構築 業。 「自由なる創始の結果が、大いなる未来 この状況を逆にチャンスだと考え、受注減 し、人材の育成に取り組んでいます。その を拓く」を企業理念に掲げています。スマー であまった時間でISO9001の構築、認証 結果、良い社員が育ち、良い仕事ができ、良 トフォンやパソコンなどに使用される電子 取得に充てることとしました。理由として い顧客が増え、社員はますます仕事に誇り 部品や自動車の制御のための半導体などの は、当時は主要大手も認証は取得しておら を持ち、結果業績も伸びていく、という好 めっきを得意とし、近年では、バイオ、航空 ず、 「お客様から信頼、安心感が向上するの 循環ができました。新卒社員の退職率につ 宇宙、MEMSなどの「ナノめっき」技術によ では」との考えによるものでした。こうして いても、1992 ~ 1997年当時は平均37% り、時代の先端を目指して活動しています。 景気低迷による時間の余裕を逆手に、1994 でしたが、1998年以降は6%と1/6に激減 しかし、創業して間もないころは、めっき 年、めっき業界初のISO9001認証取得とな しました。MSの一環として教育に取り組 =きつい、きたない、危険の3K職場といっ りました。 んだ成果といえます。 たイメージがあり、新卒社員はゼロか入社 しかし、マネジメントシステム(以下、 清川専務は認証取得時の景気サイクルを 30 マネジメントシステム活用事例集 産業分類 金属製品製造業 ◆内部監査力量評価アンケート 意識していると言います。最初のISO9001 また、内部監査の実施も工夫しています。 せることを目指しています。 の場合、認証取得後すぐには新規顧客の獲 特にポイントとなる点は、通常、内部監査 グローバル化の進展により、品質、コス 得や販路拡大にはつながりませんでした。 は監査員が被監査部門を監査・評価します ト、サービス、納期は、世界規模での競争と これは、景気の悪いときに内向きの活動に が、それに加え、監査員を被監査部門が逆 なっています。そのような環境の中、同社 力を注ぐと、開発や営業などの外向きの活 に評価をする仕組みを取り入れているとこ はめっき業界において率先してグローバル 動の力が落ちてしまったからだと分析して ろです。双方向にすることにより、被監査 化を図りさらに、省エネ、水質汚濁防止、環 います。そのため、現在では、開発やマーケ 部門、監査員相互に緊張感を持ったものと 境破壊物質使用の削減、適正管理、環境に ティングイノベーションといった外向きの なり、本来の内部監査の目的を達成するた 良いめっき工法への移行、社員教育の徹底 活動は景気の悪いときに、内部のシステム めに有効に働いています。また、内部監査 を図るなど、品質、環境共に取り組みを進 を大きく変革する活動は景気の良いときに 員が成長していく教育的側面もあります。 めてきました。これらを効率的に行えるの 実施するようにしているそうで、その結果、 持続的に企業業績を向上させ、新規顧客を 獲得することができています。 I 地域貢献活動 も、長きにわたってMSに取り組み基盤が 整っていたからと考えられます。 また、ローカルの視点からは、地域貢献 ISO9001、ISO14001に 続 き、2008年 への活動として、めっき教室の実施にも取 にはISO/IEC17025認定取得、2010年に り組んでいます。小学生などの子どもたち はASRP適合合格となりました。このよう に、めっきを通して仕事の楽しさを伝える な取り組みを通じて、同社では、MSを利用 などの活動により、地域との交流を深める 目標の設定・管理については、お客様満 するという考えに基づき、やがてMSを意 ことで、地元企業としてのイメージ向上に 足度=「お客様にとって一番となる」こと 識しないレベルにまで独自のMSを進化さ もつなげています。 I 目標管理と内部監査で I さらなる動機付け が大切との考え方を基に、試行錯誤で取り 組んできました。 社内では大きく二つの目標設定を掲げて います。一つは「必要目標」で、必ず実施し なければならない使命、達成しなければな らない目標です。品質、顧客との約束、法律 への対応、市場要求などがこの中に入りま す。もう一つは「チャレンジ目標」で達成 しなくても挑戦していくための目標です。 挑戦することに意義があると考えて取り組 みます。 この二つを組合せて設定することで、年月 が経過しても目標が無難なものでなく、意 欲的な設定を維持できる効果があります。 左:清川社長 右:清川会長 マネジメントシステム活用事例集 31