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̶1̶ 「コンプレッション系アンダーウエアの開発」 ミズノ(株) 商品開発本部
「コンプレッション系アンダーウエアの開発」 ミズノ(株) 商品開発本部 技術開発部 ウエア開発課 副主事 永橋緑 近年、スポーツアパレル市場において注目を集めているアイテムとして「機能性スポーツアンダ ーウエア」が挙げられる。機能性スポーツアンダーウエアは、大きく分類すると①体温調整系、② コンプレッション・サポート系となり、特に話題を呼んでいるのは②「コンプレッション・サポー ト系」タイプの機能性スポーツアンダーウエアである。 「コンプレッション・サポート系」アンダーウエアの市場規模は 2008 年度の実績は約 130 億円、 2009 年度の見込みは約 158 億円(前年比 121%)と今後、更なる市場拡大が期待されている。 当社でも、これまでの経験とアスリートたちの声、そしてテクノロジーを結集させて生み出した スポーツウエア BIO GEAR(バイオギア)を 2003 年より発売している。タイトフィットなトップス はプラクティスシャツやゲームシャツのアンダーウエアとして野球・ソフトボールウエア市場に浸 透した。2007 年には、ゴルフといったパーソナルスポーツカテゴリーへも本格的に参入した。タ イトフィットなウエアに抵抗感を示すゴルファーも少なくなかったが、口コミ(機能性に対する高 い評価)と話題性も手伝って、ゴルフウエア市場へも浸透した。更に、2008 年にはトップスのコン プレッション系アンダーウエアがレイヤードファッションのコーディネートアイテムとして用い られるようになり、ランニングやアウトドア市場へも拡大した。 BIO GEAR(バイオギア)は持てる力を最大に発揮し、思い描いたパフォーマンスを実現するため に「コンディション」・「動作」・「着心地」の3つをウエアテクノロジーによってコントロール するウエアである。 また、機能・特長によって下記の 3 つのカテゴリーに分かれている。 ① 正しい動きへナビゲート ‒BIO GEAR NAVI② 自由でスムーズな動きを実現 ‒BIO GEAR ACTIVE③ 関節・筋肉をしっかり保護 ‒BIO GEAR PROTECTION今回は具体的に当社で開発を行ってきた①正しい動きへナビゲートするカテゴリーの正しい姿 勢に導くウエア『姿勢 NAVI』について紹介する。 ̶1̶ 気温変化に対応して 温度調節する 「プレ ミアムサーモスタッ トスーツ」 (株)AOKI 商品開発室 室長 柴田清 弘 1.はじめに AOKIはお客様のニーズに応えるべく、安心してお買い上げいただける信頼性のある商品開発 のため、満足いただける商品作り、また、独自の商品開発により業界内での差別化を行うために2 002年9月に商品開発室を組織した。次に、お客様のニーズの情報を得るために店舗で大学のイ ンターンシップを活用してお客様が要求している機能性、素材の特性(風合い、物性)とスーツの 着用快適性のアンケート調査を実施してきた。この結果を基に短期、中長期による商品開発を産学 共同研究で行なってきた。この産学共同研究開発は衣生活を快適にサポートすることを目指し、各 生活シーンでの衣生活を快適にするために人間工学に基づいた研究と解析を行ない、多くの快適衣 生活商品群を作り上げてきた。 その結果、商品開発室は過去8年間に10件の商品を産学共同研究によって開発した。これらの商 品の中で、気温変化にあわせて温度を調節する「プレミアムサーモスタットスーツ」の商品に対す る開発経緯と商品内容と展開について紹介する。 2.気温変化に対応して温度を調節する「プレミアムサーモスタットスーツ」 店舗で20代から50代のお客様に対して秋冬スーツに求める機能について調査を実施した。そ の結果、お客様の50%の人が軽くて暖かいスーツを要求していることがわかった。この要望に応 えるべく、軽くて薄い素材で、温度変化に対応して温度を調節が可能な素材開発に着手した。 この問題を解決する手段として、軽くて薄いは糸番手を細くすることにより対応が可能である。 次に、温度変化に対応して温度を調節するパラフィン系樹脂に着目し、これをマイクロカプセルに 封じ込め活用することを検討した。 「TVCF発表記者会見風景」 マイクロカプセル化したパラフィン樹脂を織物に付着させ ることによりマイクロカプセル内のパラフィン系樹脂が温度 変化に伴い相変化することで、発熱、吸熱を繰返し、温度調 節を行なう素材を開発した。この素材で作られたスーツを着 用することにより、秋冬において軽い素材でありながら衣服 内温度が調節され、快適な着心地が得られるスーツに変身し、 尚かつ長い期間着用が可能になる。 パラフィン系樹脂マイクロカプセルを付着させた織物から 作られたスーツで、環境試験室を使用して温度変化によるス ーツの表面温度をサーモビュアで測定した。また、サーマル マネキンを使用して着用中の各部位の温度変化も測定して評 価をした。 この結果、気温25℃を境にスーツの温度を自動的に調節するマイクロカプセルによるセンサー スーツを開発できた。このことにより、気温の変化による身体への影響を和らげ、快適な着心地を 保つことができるスーツを商品化した ̶2̶ 角層に存在する老化 因子「 AGEs」の肌のキメへの影響 ―レンゲソウエキス の効果― ポーラ化成工業(株) 皮膚薬剤研究部 主任研究員 多田明弘 蛋白糖化反応により生成する最終糖化産物(advanced glycation end products; AGEs)は真皮 に存在し、皮膚の弾力性低下、柔軟性低下及び黄色化の原因であることを報告している。真皮の AGEs に関する研究は数多く報告されているが、角層(表皮)の AGEs に関する研究報告はほとん ど無い。本講演では、ヒトの角層に AGEs が存在することを見出し、ヒト角層 AGEs と肌状態との 関連性について検討した結果を紹介する。また、角層に存在する AGEs を除去する素材として見出 したレンゲソウエキスの効果についても述べる。 2007 年 10 月に静岡県在住の健常成人女性 40 名(20∼56 歳、平均年齢 38.1 歳)を被験者とし て、顔頬部を対象に肌測定を実施した。頬部よりセロハンテープで採取した角層をスライドグラス に転写し、AGEs の免疫組織染色によりヒトの角層に AGEs が存在することを見出した。続いて、 染色した画像を用いて、グレード 1 から 5 までの 5 段階の評価グレードを作成した。作成したグレ ード評価を用いてヒト角層 AGEs を評価できる事が確認できたため、肌状態との関連性について検 討した。 真皮との関連性を検討した結果、角層 AGEs は、年齢、真皮 AGEs 量(AGEs index)、皮膚弾力 性(Ur/Uf)のいずれとも相関が認められなかった。真皮 AGEs 量とこれらパラメーターでは、年 齢と AGEs index と Ur/Uf の間ではいずれも有意な相関が認められていることから、角層 AGEs は真皮の AGEs とは異なる挙動を示し、加齢に伴い増加する真皮の AGEs とは違う、加齢以外の 因子が角層 AGEs の生成に起因していることが示唆された。続いて、表皮の柔軟性、粘弾性との関 連性を検討した結果、表皮柔軟性(Δf(5 g))とは相関しなかったが、表皮粘弾性(ΔΔf(5 g))と相 関し、角層 AGEs が多くなるにつれて表皮粘弾性は失われていくことが明らかとなった。このこと から、表皮粘弾性に関わる水分量以外の新たな因子として、角層 AGEs が表皮粘弾性に寄与してい る可能性が示唆された。さらに、皮膚表面形態との関連性について検討した結果、平均間隔(RSm) や等方性との相関は認められなかったものの、平均粗さ(Ra)との相関が認められ、角層 AGEs が少なくなるにつれて皮溝が深くなっていくことが明らかとなった。皮膚表面のキメに対するこれ らパラメーターの関与はまだ十分に明らかにされていないが、角層 AGEs がキメの一部である皮溝 の深さに関与していることは興味深い知見であると考える。 AGEs を除去する素材として見出したレンゲソウエキスは、採取した角層およびヒトの皮膚に塗 布しても、角層の AGEs を除去する効果を有することが認められた。 ̶3̶ 中国人女性と日本人女性の肌状態および美容に関する意識の 相違について (株)フ ァン ケル 総 合研 究所 化粧 品 研究 所 機能性 成分 開発・評価 ク ゙ ルー プ ク ゙ルー プ マネ ー ジ ャー 桜 井 哲人 1. 緒言 近年、化粧品各社において日本のみならずグローバルな視点での化粧品開発が進められており、 その国ごとの消費者の肌にあった化粧品の提供が望まれている。中でも中国は大きなマーケットで あり、中国人女性の肌特長および美容に関する意識を調査することは極めて重要であると考える。 そこで、中国人女性(北京、上海)の肌状態および美容に関する意識の調査を行い、日本人と比較 した結果、興味深い結果が得られたので報告する。 2. 肌状態の調査方法 2-1. 調査対象 中国は 245 名(北京 120 名、上海 125 名) 、日本は 202 名で、いずれも 20∼60 代女性。 2-2. 実施時期と実施環境 実施は、両地域ともに 6 月から 8 月にかけて行った。実施環境は以下のとおりである。 1).中国:温度 22∼23℃、湿度 50∼60% 2).日本:温度 23 1℃、湿度 40 2% (恒温恒湿室にて測定) 2-3. 評価方法 評価項目は目尻のシワ、頬のキメ、角層状態についてはラメラ液晶構造、重層剥離、細胞の 大きさ、有核細胞の有無について行い、目視評価でスコア化した。さらに年代ごとに分け国別 または地域別に比較を行った。 3. 肌状態の結果 3-1.シワ・キメの状態 シワの状態について、中国と日本のシワスコアは同程度であった。北京と上海を比べると 40 代以降で上海が、シワスコアが高い(深い)傾向であった。キメの状態は中国が日本と比べて キメスコアが高い(キメが明瞭)傾向であった。上海と北京では、若年層で上海が、キメスコ アが高い傾向であった 3-2.角層の状態 中国は日本に比べ、ラメラ液晶構造、重層剥離、細胞面積のスコアは高く、有核細胞のスコ アが低い傾向であった。腕においても同様の傾向が確認され、年代ごとにおいて結果の偏りは 少なかった。 4. 美容に関する意識調査 4-1.調査方法 2008 年 11 月に日本人 416 名(化粧品支出額 1001 円/月) 、中国人 476 名(化粧品支出額 101 人民元/月)の女性に対してインターネットでアンケート調査を行った。アンケートは化粧品に 対する価値観、普段使用するアイテムなどの設問を設定した。 4-2.結果 インターネットを汎用する、いわゆる 都会波女性 において、中国は日本と比較して、美容 や健康に関する情報の入手に積極的である 、 キレイでいるために時間やお金を費やしている 人の回答率が高く、美容に関しての意識の高さが示唆された。化粧品での使用アイテムでは、 中国は日本と比較して、マスクやパックの使用率が高く、ファンデーションの使用率が低かっ た。 5. まとめ 肌状態については、6∼8 月で期間が限定されるが、日本人と中国人で肌状態が類似する項 目(シワ)、異なる項目(キメ、角層)があり、スキンケア、紫外線、湿度などの外的要因、食 事、生活リズムなどの内的要因が複雑に関連し、肌状態が特徴づけられていることが示唆され た。美容に関する意識については、インターネット使用者に限定されるが、中国人の方が美容 ̶4̶ に関する意識が高く、パック、マスクなどのスペシャルアイテムに代表される付加的な商品へ の使用率が高いことが示唆された。 ̶5̶