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デング熱とはどんな病気? - 株式会社八王子薬剤センター
おくすりQ&A デング熱とはどんな病気? Q. デング熱とはどんな病気ですか? A. デング熱とはデングウイルスによる感染症です。人 から人へうつることはなく、デングウイルスを持っ たネッタイシマカやヒトスジシマカという蚊によっ て感染します。また蚊がウイルスに感染した人(症 状が出ていない人も含む)を刺すと、1週間ほどで 蚊の体内でウイルスが増えます。その蚊に他の人が 刺されるとウイルスに感染する可能性があります。 蚊 に 刺 さ れ て か ら 2 日∼15 日(多 く は 3∼7 日) 後に、38∼40℃の高熱や頭痛、眼窩痛、関節痛、筋 肉痛、発しんなどが現れます。ほとんどの場合1週 間ほどで回復しますが、ごくまれに重症化して出血 症状やショック症状が生じる「デング出血熱」を起こすことがあります。またデ ング熱と診断した医師は直ちに保健所に届け出なければなりません。 Q. 日本でも感染しますか? A. デングウイルスを媒介する蚊が生息す る地域は、熱帯・亜熱帯を中心に全世 界で 100 か国以上あり、年間で約 1 億人 の感染者がいるともいわれています。 日本ではヤブ蚊とも呼ばれるヒトスジ シマカが生息しています。2014 年には、 約 70 年ぶりの国内感染が報告されたた め注意が必要です。 図 . デング熱・デング出血熱の発生地域 Q. デング熱に使われるお薬にはどのようなものがありますか? A. 対症療法として解熱鎮痛剤や輸液を用いるにとどまります。痛みや発熱には、ア セトアミノフェンという解熱鎮痛剤が使われます。デング熱に感染すると血小板 が減少し出血を起こしやすくなるので、出血を助長するアスピリンなどのサリチ ル酸系の鎮痛・解熱剤は控えなくてはなりません。また出血がひどいと輸血や輸 液を必要とする場合もあります。 デングウイルスには有効なワクチンやウイルスを抑える薬がまだ開発されてい ないため、感染予防のためには蚊に刺されないことが最も重要です。蚊の多い場 所では虫除けスプレーを使う、長袖・長ズボンを着用し肌の露出を避けるなどの 予防策を徹底しましょう。 執筆薬剤師 濱中 亜寿香 236-4 第236号 今月の内容 ・喘息についてお話しします!∼その3∼喘息の危険因子 ・体液について ・デング熱とはどんな病気? イヌサフラン(ユリ科) ヨーロッパや北アフリカに自生する多年草。地下に大きな鱗茎(りんけい)があり、 秋に高さ 15∼20cm ほどの花をつけます。花は淡紅紫色で花被片(かひへん)は 6 枚、 雄しべも 6 本です。全草に含まれるコルヒチンは猛毒ですが、植物の倍数体を作る作 用があるので作物の品種改良に使い、少量を通風の発作予防に使います。時々鱗茎 をタマネギと、葉をギョウジャニンニクと間違えた中毒事件が起きています。 写真・文 指田 豊 2015 年 9 月発行 発行者 八王子薬剤センター 茂木 徹 東京都八王子市館町 1097 電話 042-666-0931 協 力 八王子薬剤師会 236-1 喘息についてお話しします! ∼その3∼ ちょっとお耳を…… 体液について 喘息の危険因子 喘息を起こす危険因子は、患者個人に基づくもの(個人因子)と環境に基づくもの(環 境因子)に分類されます。個人因子には、遺伝やアレルギー体質(アトピー素因)、男女 差(15 歳未満の子どもの喘息は、女子よりも男子に多い傾向がある)、肥満などがあります。 環境因子は、喘息を引き起こすもの(発病因子)と喘息を悪化させるもの(増悪因子)に 分類されますが、発病因子が増悪因子になることもあります。具体的にはアレルゲン(喘 息のアレルギーを起こす原因物質)やウイルス感染、喫煙、食物、鼻炎、運動、気象、薬 物などです。 今回は喘息の危険因子の中でも、主に身の周りにある環境因子について紹介します。 ●アレルギーに関係する環境因子(アレルゲン) 80 70 (n=463) 71.9 57.9 60 50 52.5 42.5 40.6 40 32.6 30 21.6 20.5 20 19.4 10 8.6 その他 3.7 月経・妊娠 薬剤 植物 ペット タバコ 睡眠不足 運動 アルコール 花粉 ストレス 疲労 ほこり 0 16.0 13.6 6.5 5.6 天候 そば殻・羽毛 枕のそば殻やふとんの羽毛もアレルゲンになり ます。 図 1.喘息発作の要因 秋山一男『アレルギー・免疫』2012; 19(7) から引用 花粉 喘息の原因となる花粉は、スギやブタクサ、ヨモギなど数多くあります。稲やイチゴの 花粉でも喘息が起こることがあります。 カビ カビがアレルゲンとなり発症した喘息は重症化しやすい傾向にあります。日本では湿気 が多くカビが繁殖しやすいため、特に注意が必要です。 食物 卵や牛乳、チョコレート、ピーナツ、魚介類、野菜(竹の子、ほうれんそう、山芋、な す)、そば、香辛料、みかんなどで喘息が起こることもあります。 アスピリン ア ス ピ リ ン と い う 薬 や、ア ス ピ リ ン と 同 じ 作 用 の あ る 非 ス テ ロ イ ド 性 消 炎 鎮 痛 薬 (NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs) によって喘息発作が起こることがあり、 これを「アスピリン喘息」といいます。NSAIDsは、解熱剤や鎮痛剤、風邪薬、痛み止めの湿布、 塗り薬などに入っている場合があります。子どもではまれですが、成人喘息の約 10%がア スピリン喘息だといわれています。特に鼻茸(鼻腔内で鼻の粘膜がきのこ状に膨らんだもの) がある人や肥満した人、中年以降の女性が発症しやすいので注意しなければなりません。 ●アレルギーに関係しない環境因子 激しい運動やウイルス感染、飲酒、ストレスも喘息を悪化させます。風邪などのウイル ス感染は、感染そのものが喘息を併発しうるアトピーの発症の誘因になったり、気道過敏 性を亢進させて喘息を悪化させたりします。また不安定な気象(気温の急激な低下や季節 の変わり目、台風の接近など)や、たばこや線香の煙の吸入、満腹状態、女性では月経や 妊娠なども喘息発作の誘因になります。 次回は喘息の予防についてお話しします。 東京医科大学八王子医療センター 呼吸器内科 一和多 俊男 236-2 ■体液とは 体内の水分は血液やリンパ液などの「体液」として存在しています。一般的に体内 の水分は体重の約 50∼60%を占めています。誕生時や幼児期にはその割合が高く 70%程度を占めるといわれています。一方高齢や肥満になると水分の割合が低くなる といわれています。 (%) 風邪 ハウスダスト ダニやふけ、髪の毛、カビ、衣類などをまとめ て室内塵(ハウスダスト)と呼びます。ハウスダ ストの中でもダニによって喘息が発症したり悪化 したりすることが多く、生きているダニも、その 死骸もアレルゲンとなります。季節によって異な り ま す が、一 般 的 に ハ ウ ス ダ ス ト 1g に 対 し 約 1000 匹のダニがいるといわれています。 だいぶ涼しくなってきましたが、夏は脱水症を起こさずに健康に過ごせましたか? 今回は体の水分である「体液」についてお話しします。 ■体液の役割 体液は、体内を循環して私たちの生命に関わるさまざまな役割を果たしています。 ①体温を一定に保つ 体液には体温を一定に維持する働きがあります。ヒトの体温は 35℃∼37℃前後に 保たれています。この温度帯では、酵素が効率よく働き、体の代謝も活発に行われます。 激しい運動や発熱などで体温が上がった時には、皮膚への血液の循環量が増えます。 すると体液が汗となって体外に排出され、熱が逃げることで、体温を一定範囲内に抑 えることができるのです。 ②酸素などを運搬する 体液には、酸素や栄養分、二酸化炭素、老廃物(体内のゴミ)を運搬する大事な働 きがあります。口から入れた食べ物や飲み物の栄養素は、消化管から吸収されて体内 に入ります。また酸素は肺から血液へと取り込まれます。栄養素と酸素はともに、細 胞外液の血漿(けっしょう)で組織まで運ばれ、一つひとつの細胞まで届けられます。 一方、細胞内で生じた老廃物や二酸化炭素は、細胞外液によって細胞の外へ運び出さ れます。運び出された老廃物や二酸化炭素は、尿や呼気として体外に排泄されます。 ■体液が減少したらどうなるか 体液が減少すると脱水症になります。体重の減少率を目安とし、体重減少が1∼2% の場合は軽度の脱水症となり、のどが渇いたり尿量が少なくなったりします。さらに 脱水症が進むと倦怠感や頭痛、嘔吐、めまい、体のほてりなどが生じます。脱水症は 夏の暑い日だけでなく、下痢・嘔吐などが認められる場合や、風邪・肺炎などの発熱 時にも起こることがあります。また高齢者は体内の水分量が少ないため、日ごろから 脱水症にならないよう注意が必要です。 涼しくなり行楽シーズンになりますが、まだ暑い日も見受けられます。こまめな水 分補給を心がけ、体液の量を減らさないように注意しましょう。腎機能が低下してい る方や心疾患のある方、医師から水分制限をされている方は、指示を守って水分摂取 を行ってください。 執筆薬剤師 三ツ木 梨絵 236-3